特許第5965996号(P5965996)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5965996
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】使用済燃料の受動冷却システム
(51)【国際特許分類】
   G21C 19/07 20060101AFI20160728BHJP
   G21C 9/00 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
   G21C19/06 L
   G21C9/00 K
【請求項の数】9
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-513580(P2014-513580)
(86)(22)【出願日】2012年5月24日
(65)【公表番号】特表2014-517304(P2014-517304A)
(43)【公表日】2014年7月17日
(86)【国際出願番号】US2012039251
(87)【国際公開番号】WO2012166491
(87)【国際公開日】20121206
【審査請求日】2015年4月3日
(31)【優先権主張番号】13/151,714
(32)【優先日】2011年6月2日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501010395
【氏名又は名称】ウエスチングハウス・エレクトリック・カンパニー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100091568
【弁理士】
【氏名又は名称】市位 嘉宏
(72)【発明者】
【氏名】セドラシク、ゲイリー、エル
(72)【発明者】
【氏名】マルホレム、ルーク、ジー
(72)【発明者】
【氏名】クヴァラ、マイケル、エイ
(72)【発明者】
【氏名】スターリング、ジャスティン、ディー
【審査官】 青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭56−125696(JP,A)
【文献】 特開昭61−070492(JP,A)
【文献】 特開平07−318679(JP,A)
【文献】 特開昭63−253295(JP,A)
【文献】 特開平02−098688(JP,A)
【文献】 特開平10−057737(JP,A)
【文献】 特開平04−142497(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 9/00
G21C 19/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉内の燃料取扱エリア(101)から崩壊熱を除去する、使用済燃料の受動冷却システムであって、使用済燃料プール(15)と濾過システムとを含み、
使用済燃料プール(15)は燃料取り扱いエリア(101)に配置され、水と、原子炉炉心から取り出され、崩壊熱を発する使用済燃料とを収容するものであり、使用済燃料プールの水が沸騰する際に、発生した蒸気が燃料取扱エリア(101)内の空気と混合して微粒子を含有する蒸気と空気の混合物を生成するとともに、燃料取扱エリア(101)の内部と外部との間の差圧を発生させ、
前記濾過システムは微粒子を少なくとも部分的に除去するものであり、
第1の端部が燃料取扱エリア(101)に接続され、第2の端部が大気(155)に接続された排出路(115)と、
燃料取扱エリア(101)排出路(115)とのインターフェース部分に位置し、前記混合物を燃料取扱エリア(101)から排出路(115)に排出する少なくとも1つの温度作動式ダンパー(105)を有して成る、第1のベント機構と、
排出路(115)に位置し、繊維を含有するマットを少なくとも1つ含んで成り、前記混合物から前記微粒子の少なくとも一部を該マットに捕捉することによって、濾過された混合物を生成するように構成されたエアフィルタを少なくとも1つ有する空気濾過装置(125)と、
前記少なくとも1つのエアフィルタの下流に位置し、前記濾過された混合物を大気(155)中に放出するように構成された第2のベント機構を含むものであり、
前記蒸気と空気の混合物は、前記燃料取扱エリア(101)の内部と外部との間の差圧により、前記少なくとも1つのエアフィルタに圧入される、使用済燃料の受動冷却システム。
【請求項2】
さらに、空気濾過装置(125)に接続された少なくとも1つのドレン(135)を含み、ドレン(135)は燃料取扱エリア(101)内の蒸気と空気の混合物から発生した復水を燃料取扱エリア(101)または他の適当な放出ポイントに戻すように構成されている、請求項1に記載の受動冷却システム。
【請求項3】
少なくとも1つのドレンは2つのドレン(135,140)である、請求項2に記載の受動冷却システム。
【請求項4】
一方のドレン(135)は前記少なくとも1つのエアフィルタの上流に配置され、他方のドレン(140)は前記少なくとも1つのエアフィルタの下流に配置されている、請求項3に記載の受動冷却システム。
【請求項5】
第2のベント機構は、少なくとも1つのフェールオープン式または重力作動式のダンパーを含む、請求項1に記載の受動冷却システム。
【請求項6】
前記第1および第2のベント機構は、それぞれ2つのダンパー(105,110および145、150)を含み、該2つのダンパーの一方はバックアップ用である、請求項1に記載の受動冷却システム。
【請求項7】
第1のベント機構から放出される蒸気と空気の混合物は、第2のベント機構から放出される濾過された蒸気と空気の混合物と比較して、より多くの微粒子を含有する、請求項1に記載の受動冷却システム。
【請求項8】
原子炉は、加圧水型原子炉および沸騰水型原子炉からなる群から選択される、請求項1に記載の受動冷却システム。
【請求項9】
微粒子は放射性微粒子を含む、請求項1に記載の受動冷却システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は原子力発電所の受動冷却システムに関し、より具体的には原子力発電所の燃料取扱エリアにおける使用済燃料の受動冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
原子炉による発電は、放射性物質が核分裂することによって達成される。核反応は激発性であるため、原子力発電所は、公衆の健康と安全を確保するべく実践的に設計する必要がある。
【0003】
通常の発電用原子炉では、使用済みになった原子燃料を定期的な間隔で原子炉から取り出し、新鮮な燃料と交換する。使用済燃料は、原子炉から取り出された後も崩壊熱を発し、放射性のままである。したがって、安全な保管施設を設けて使用済燃料を受け入れている。加圧水型原子炉等の原子炉では、使用済燃料の貯蔵プールが設けられる。使用済燃料プールは、ある水位の水を含むことにより使用済燃料を水中で貯蔵するように設計されている。使用済燃料プールは、典型的にはコンクリートで構成され、深さが少なくとも40フィートである。水位の制御・監視に加えて、使用済燃料プール内にある燃料の劣化を防止するために水質も制御・監視される。また、使用済燃料が発する熱を除去するために、使用済燃料プール内の水は継続的に冷却される。
【0004】
一般に、原子力発電所は使用済燃料プール冷却系を含み、この系は貯蔵された使用済燃料が発した崩壊熱を使用済燃料プール内の水から除去するように設計される。崩壊熱を除去することによって、使用済燃料プールの水温を許容規制限度内に維持する。使用済燃料プール冷却系は典型的には使用済燃料プールポンプを含み、このポンプによって使用済燃料プール内からの高温水を熱交換器を通して循環させ、冷却された水を使用済燃料プールに戻す。一実施態様では、使用済燃料プール冷却系は、2系統の機器を含む。各系統は、1つの使用済燃料プールポンプ、1つの使用済燃料プール熱交換器、1つの使用済燃料プール脱塩装置、および1つの使用済燃料プールフィルタを含む。2系統の機器は吸水ヘッダと排水ヘッダを共有する。また、使用済燃料プール冷却系は、系の運転に必要な配管類、バルブ、および計器類を含む。この実施態様では、一方の系統が継続的に使用済燃料プールを冷却および浄化している間、他の系統は水の輸送、格納容器内燃料交換用水貯蔵タンクの浄化、または運転中の系統のバックアップとして利用可能である。
【0005】
図1は、従来技術による通常運転中の使用済燃料プール冷却(SFPC)系10を示す。SFPC10には使用済燃料プール15がある。使用済燃料プール15にはある水位の水16があり、原子炉(図示せず)から使用済燃料プール15に移送された使用済燃料(図示せず)が極めて高温であるため、水16は高温である。SFPC系10は系統A、Bを含む。系統A及びBを用いて使用済燃料プール15内の水を冷却する。先に述べたように、系統AまたはBの一方を運転して使用済燃料プール15の冷却と浄化を行い、他方をバックアップ用とするのが典型的である。系統A、BはそれぞれSFPCポンプ25、熱交換器30、およびSFPC脱塩・フィルタ装置45を含む。これらの系統は、吸水ヘッダ20と排水ヘッダ50を共有している。系統AとBの各々において、水は吸水ヘッダ20を介して使用済燃料プール15を出て、SFPCポンプ25を介してSFPC熱交換器30に圧送される。SFPC熱交換器30では、フローライン40がコンポーネント冷却水システム(CCWS、図示せず)からの水をSFPC熱交換器30に通し、CCWSに戻す。SFPC熱交換器30に(使用済燃料プール15から)入る水からの熱は、フローライン40によって提供される水に伝達され、フローライン40を介してCCWSに戻される。冷却された水はSFPC熱交換器30を出て、SFPC熱交換器30の下流に配置されたSFPC脱塩・フィルタ装置45を通る。浄化・冷却された水は、脱塩・フィルタ装置45を出て、共通の排出ヘッダ50を介して搬送され、使用済燃料プール15に戻される。
【0006】
近年、原子炉メーカーは、受動的な発電所設計、すなわち、オペレータの介入またはオフサイトの電力なしに原子炉事故事象を緩和する発電所を提案している。ウエスチングハウス・エレクトリック・カンパニー・エルエルシーは、AP1000受動的発電所設計を提供している。AP1000設計は、高度な受動的安全機能と広範な発電所の簡素化を含むことによって、発電所の安全性、建設、運転および維持管理を強化している。AP1000の設計は、自然力に依存する安全機能を強調している。AP1000設計の安全系は、圧縮ガス、重力による流れ、自然循環流および対流等の自然動力を用いる。これらの安全系は、能動的コンポーネント(例えば、ポンプ、ファンまたはディーゼル発電機等)を使用せず、安全等級サポートシステム(例えば、AC電力、コンポーネント冷却水、水道水、HVAC)なしで機能するように設計されている。AP1000の燃料取扱エリアでは、主たる燃料保護手段は受動的な手段によって提供され、使用済燃料プールの貯水の沸騰により崩壊熱が除去されるように設計されている。したがって、極端な場合には、使用済燃料プールは沸騰することがある。
【0007】
能動的使用済燃料プール冷却系が完全に故障した場合を想定すると、使用済燃料の冷却は使用済燃料プール内の水の熱容量によって提供される。プール水が沸騰することにより崩壊熱が除去される間、補給水を受動的手段により使用済燃料プールに提供することによって、プールの水位を使用済燃料の上に維持する。使用済燃料プール水が沸騰すると、大量の蒸気が燃料取扱エリアに放出される。蒸気は燃料取り扱いエリア内の空気と混合するが、圧力が蓄積されるのを防ぐにはこのエリアから蒸気を放出しなければならない。蒸気/空気混合物は、燃料取扱エリアから大気中に放出する。この結果、浮遊放射性汚染物質が大気中に放出される可能性がある。
【0008】
分析の結果、許容限度内である最小の放射線量が沸騰開始から生じ得ることが判明している。しかしながら、原子炉の燃料取扱エリア内の使用済燃料プールの沸騰開始から大気中に放出される放射線量をさらに低減する使用済燃料濾過システムおよび方法を提供できれば好都合である。該システムおよび方法は、設計および実装が簡単であり、原子炉で使用済燃料プールの沸騰が起きた場合に放射性微粒子を除去するのに有効である受動的な機構であることが望ましい。
【発明の概要】
【0009】
本発明の一態様は、原子炉内の燃料取扱エリアから崩壊熱を除去する、使用済燃料の受動冷却システムであって、使用済燃料プール沸騰事象に際して発生した微粒子の大気中への放出を減らすためのものを提供することである。受動冷却システムは、使用済燃料プールと濾過システムとを含む。使用済燃料プールは燃料取り扱いエリアに配置され、水と、原子炉炉心から取り出され、崩壊熱を発する使用済燃料とを収容するものであり、使用済燃料プールの水が沸騰する際に、発生した蒸気が燃料取扱エリア内の空気と混合して微粒子を含有する蒸気と空気の混合物を生成するとともに、燃料取扱エリアの内部と外部との間の差圧を発生させる。前記濾過システムは微粒子を少なくとも部分的に除去するものであり、第1の端部が燃料取扱エリアに接続され、第2の端部が大気(155)に接続された排出路と、燃料取扱エリア排出路とのインターフェース部分に位置し、前記混合物を燃料取扱エリアから排出路に排出する少なくとも1つの温度作動式ダンパー(105)を有して成る、第1のベント機構と、排出路に位置し、繊維を含有するマットを少なくとも1つ含んで成り、前記混合物から前記微粒子の少なくとも一部を該マットに捕捉することによって、濾過された混合物を生成するように構成されたエアフィルタを少なくとも1つ有する空気濾過装置と、前記少なくとも1つのエアフィルタの下流に位置し、前記濾過された混合物を大気中に放出するように構成された第2のベント機構を含むものである。前記蒸気と空気の混合物は、前記燃料取扱エリアの内部と外部との間の差圧により、前記少なくとも1つのエアフィルタに圧入される。
【0010】
ある実施態様では、受動冷却システムは空気濾過装置に接続された少なくとも1つのドレンを含み、ドレンは燃料取扱エリア内の蒸気と空気の混合物から発生した復水を燃料取扱エリアまたは他の適当な放出ポイントに戻すように構成してもよい。さらなる実施態様では、受動冷却システムは2つのドレンを含む。さらに別の実施態様では、一方のドレンは前記少なくとも1つのエアフィルタの上流に配置され、他方のドレンは前記少なくとも1つのエアフィルタの下流に配置されている。
【0011】
ある実施態様では、第2のベント機構は、少なくとも1つのフェールオープン式または重力作動式のダンパーを含む。さらに別の実施態様では、第1および第2のベント機構は、それぞれ2つのダンパーを含み、該2つのダンパーの一方はバックアップ用である。
【0012】
ある実施態様では、第1のベント機構から放出される蒸気と空気の混合物は、第2のベント機構から放出される濾過された蒸気と空気の混合物と比較して、より多くの微粒子を含有する。
【0013】
代替的な実施態様では、原子炉は加圧水型原子炉または沸騰水型原子炉である。
【0014】
別の実施態様では、エアフィルタは高効率粒子空気(HEPA)フィルタを含む。
【0015】
さらに別の実施態様では、微粒子は放射性微粒子を含む。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】従来技術による使用済燃料プール冷却系を略示する。
【0018】
図2】本発明のある実施態様による受動的な使用済燃料冷却システムを略示する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、受動的な冷却システム、および加圧水型原子炉等の原子炉内の燃料取扱エリア内の少なくとも1つのエアフィルタの使用により、使用済燃料プールの沸騰事象の結果として大気中へ放出される放射性微粒子等の微粒子を減少させることに関する。
【0020】
原子炉では、使用済燃料プールは燃料取扱エリアに位置している。使用済燃料プールは水を収容しており、炉心から取り出された使用済燃料を貯蔵する。使用済燃料は、原子炉炉心から取り出されて使用済燃料プール内に移送された後も、崩壊熱を発生し、放射性のままである。したがって、原子炉に使用済燃料プール冷却系を設けることによって、崩壊熱を除去し、使用済燃料プールの水温を許容限度に維持する。能動および/または受動的な使用済燃料プール冷却系が使用可能である。本明細書で前述したように、図1は、当技術分野で公知の能動的使用済燃料プール冷却系の一例を示す。受動的な使用済燃料プール冷却システムは、使用済燃料プール内の水が沸騰することによって、使用済燃料が発した崩壊熱を除去するように設計することができる。使用済燃料プール内の水が沸騰した結果、大量の蒸気が燃料取扱エリアで発生する。蒸気は燃料取扱エリア内の空気と混合する。蒸気と空気の混合物は、例えば放射性微粒子や浮遊放射性汚染物質である微粒子や汚染物質を含有している場合がある。また、使用済燃料プール内の水が沸騰する結果、燃料取扱エリア内の温度と圧力が増大する。蒸気と空気の混合物を燃料取扱エリアから排出路を介して大気中に排出することによって、燃料取扱エリアにおける圧力の蓄積を防止する。蒸気と空気の混合物が放出された結果、浮遊放射性汚染物質が大気中に放出された可能性がある。
【0021】
本発明の受動的冷却システムは、蒸気と空気の混合物を濾過する手段を提供する。ベント機構が燃料取扱エリアに配置される。ベント機構は、蒸気と空気の混合物を燃料取扱エリアに接続された排出路に放出するように構成される。ベント機構は、少なくとも1つの温度作動式ダンパーを含むものであってよい。温度が上昇すると、該少なくとも1つの温度作動式ダンパーが開いて燃料取扱エリアから排出路に蒸気と空気を排出する。一実施態様では2つの温度作動式ダンパーがあり、一方がバックアップ用とされる。
【0022】
少なくとも1つのエアフィルタを燃料取扱エリアから大気へ延びる排出路に配置すれば、温度作動式ダンパーを介して蒸気と空気の混合物が大気中に排出される前にエアフィルタを通すことができる。燃料取扱エリア内の差圧により蒸気と空気の混合物はエアフィルタに圧入される。エアフィルタは、使用済燃料プールの沸騰事象の結果として燃料取扱エリアで発生した蒸気と空気の混合物から微粒子および汚染物質を除去することができる。微粒子および汚染物質には放射性の微粒子と浮遊放射性汚染物質が含まれる。また、エアフィルタは大気中に排出される放射性粒子および浮遊放射性汚染物質のレベルを低減するのに有効である。エアフィルタは、使用済燃料プールの沸騰事象の前、最中、そして後に亘って利用可能である。分析の結果、放射性微粒子の放出レベルは、米国原子力規制委員会が定める許容限度内であることが判明している。しかしながら、本発明のエアフィルタによれば、放射性微粒子および汚染物質の放出が十分に許容限度内であることが一層確実になる。
【0023】
本発明に使用するためのエアフィルタは、能動的手段なしに、蒸気、空気またはそれらの混合物から微粒子および/または汚染物質を除去することが可能な、当技術分野で公知の多種多様なフィルタを含むことができる。一実施態様では、フィルタは、高効率微粒子空気(HEPA)フィルタである。一般に、HEPAフィルタは、ランダムに配置された繊維のマットで構成される。繊維はファイバーグラスのような様々な材料から成るが、これらに限定されるものではない。典型的には、HEPAフィルタは、粒子を繊維または繊維に埋め込まれた粒子に付着させることによって捕捉するように作動するものである。
【0024】
本発明においては、エアフィルタは大気に向かう空気を濾過する受動的手段を提供する。蒸気と空気の混合物は、燃料取扱エリアの内部と外部との間の差圧によってエアフィルタに圧入される。したがって、ファン等の能動的手段を使用して蒸気と空気の混合物をエアフィルタに送り込む必要がない。
【0025】
燃料取扱エリアと大気との間の排出路には、エアフィルタと濾過経路を一体化する様々なデザインを含めることができる。一実施態様では、少なくとも1つのエアフィルタを収容するハウジングが、排出路内に配置されている空気濾過装置内に配置される。空気濾過装置は、濾過された蒸気と空気の混合物を大気中に放出するベント機構を含む。ベント機構は、少なくとも1つのフェールオープン式または重力作動式ダンパーを含む。少なくとも1つのフェールオープン式または重力作動式排出ダンパーは、エアフィルタの下流に配置される。排出ダンパーの数は変えることができ、冗長化のために排出ダンパーは複数とすることが普通である。したがって、通常運転中は、フェールオープン式または重力作動式の排出ダンパーによって、エアフィルタを大気から隔離することができる。さらに、フェールオープン式または重力作動式の排出ダンパーは、使われないとき(例えば、原子炉プラントの通常運転時)に、エアフィルタを損傷しないように保護する働きもある。
【0026】
本発明においては、第1ベント機構から放出される蒸気と空気の混合物は、排出ダンパーから放出される濾過された蒸気と空気の混合物と比較して、より多くの微粒子を含有する。
【0027】
ある実施態様では、空気濾過装置は、凝縮した蒸気を空気濾過装置から燃料取扱エリアまたは他の適切な排出ポイントに戻す少なくとも1つの水ドレンまたはドレン通路を含み、放射能を含んでいるかもしれない復水が偶発的に放出される可能性を低減する。一実施態様では、空気濾過装置は2つのドレンを含む。一方のドレンは、空気濾過装置内に位置するエアフィルタの前方に配置され、他方のドレンは後方、例えばエアフィルタの後または背面に配置される。
【0028】
例えば使用済燃料冷却系が利用できず、使用済燃料プールの水が加熱され沸騰して崩壊熱が除去されるような緊急事態の際、排出ダンパーが開くことにより、エアフィルタが燃料取扱エリアから蒸気または/空気を受け入れ、蒸気と空気が大気中に排出される前に放射性微粒子等の微粒子を除去することができる。原子炉の通常運転時には、排出および/または温度作動式ダンパーによって、エアフィルタおよび排出/濾過経路は燃料取扱エリアから隔離される。
【0029】
図2は、本発明の一実施態様による受動的な使用済燃料冷却システム100を示す。使用済燃料冷却システム100は、使用済燃料プール15と図2に示す水位16の水を含む。また、使用済燃料冷却システム100は、燃料取扱エリア101と排出路115を含む。排出路115の第1端部は燃料取扱エリア101に接続され、排出路の第2端部は大気155に接続されている。図2では、使用済燃料プール15は、燃料取扱エリア101内に配置されている。燃料取扱エリア101は、ダンパー105,115を含み、これらダンパーは温度作動式で、開くと燃料取扱エリア101からの蒸気/空気を排出路に放出することができる。ダンパー105,110は、燃料取扱エリア101と排出路115の第1端部の間、例えばインターフェース部分に、配置されている。排出路115には空気濾過装置125が配置される。ある実施態様では、空気濾過装置125は1つ以上のHEPAフィルタ130を含む。排出路115内の蒸気/空気は、空気濾過装置125に入り、HEPAフィルタ130を通過する。HEPAフィルタは、蒸気/空気混合物から微粒子と汚染物質を除去することができる。濾過された蒸気/空気混合物は次いでHEPAフィルタ130を出て、空気濾過装置125に接続されたダンパー145、150を通過し、大気155中に排出される。ダンパー145、150はフェールオープンで、モータ式または空気圧式、あるいは重力によって作動する形式のものである。空気濾過装置125はさらにドレン135、140を含む。蒸気/空気から凝縮した任意の凝縮物、例えば水は、ドレン135,140に回収し、燃料取扱エリア101に戻すことができる。ドレン135はHEPAフィルタ130の上流に配置され、ドレン140は、HEPAフィルタ130の下流、例えば後方に、配置される。
【0030】
本発明を様々な特定の実施態様に即して説明したが、当業者は、本発明が添付の特許請求の範囲の思想および範囲内で変更して実施可能であることを認識するであろう。

図1
図2