(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5965997
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】点火プラグのための電極、ならびにこれを製造する方法
(51)【国際特許分類】
H01T 13/20 20060101AFI20160728BHJP
H01T 13/28 20060101ALI20160728BHJP
H01T 21/02 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
H01T13/20 B
H01T13/20 E
H01T13/28
H01T21/02
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-513952(P2014-513952)
(86)(22)【出願日】2012年4月12日
(65)【公表番号】特表2014-519169(P2014-519169A)
(43)【公表日】2014年8月7日
(86)【国際出願番号】EP2012056643
(87)【国際公開番号】WO2012167972
(87)【国際公開日】20121213
【審査請求日】2014年2月4日
(31)【優先権主張番号】102011077279.0
(32)【優先日】2011年6月9日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501125231
【氏名又は名称】ローベルト ボッシュ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・クレチュマール
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・ベンツ
(72)【発明者】
【氏名】ヨッヒェン・フィッシャー
【審査官】
段 吉享
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−238499(JP,A)
【文献】
特開2003−217792(JP,A)
【文献】
特開2004−095214(JP,A)
【文献】
特開平06−045049(JP,A)
【文献】
特開2001−015245(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01T 13/20
H01T 13/28
H01T 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極(2)を製造する方法において、
電極基本材料(4)を準備し、
前記電極基本材料(4)の電極表面(20)上にボール形状の貴金属部材(5)を配置し、
前記貴金属部材(5)を、前記電極表面(20)の対向面(21)側から前記電極基本材料(4)に溶着して、前記対向面(21)における溶接継目の最大の幅(B)に対する、前記電極表面(20)に対して垂直方向の溶接継目の最大の長さ(T)の比率を有する溶接継目が式T/B≧3を満たすようにし、
溶着後の前記貴金属部材(5)と前記電極表面(20)が同一の平面を形成するようにし、
前記貴金属部材(5)の材料の50容積%未満が前記溶接継目(6)をなすように前記電極基本材料(4)と溶かし合わされることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記溶接はファイバレーザによって行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、点火プラグのための電極、ならびにこれを製造する方法に関するものであり、電極基本材料の上での貴金属部材の卓越した長期耐久性が提供される。
【背景技術】
【0002】
特許文献1より、貴金属小板が電極の基本材料にレーザ溶接によって溶着された、点火プラグのための電極が公知である。この場合、基本電極と貴金属小板の相互に溶かし合わされた材料からなる、貴金属小板の50容積%を上回る広い溶融区域が生じる。そのため、多量の高価な貴金属を電極の製造に使用することが必要である。しかしながら、このことは電極の高い製造コストにつながる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】ドイツ特許出願公開第10205078A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
それに対して、請求項1の構成要件を備える本発明の電極は、電極のための貴金属の量を有意に減らすことができるという利点を有している。本発明によると、3よりも大きい、またはこれに等しい、電極表面における溶接結合部の最大の幅Bに対する、電極の表面に対して垂直方向における溶接結合部の最大深さTの比率を有する、貴金属部材と電極基本材料との間の溶接結合部が生成される(T/B≧3)。貴金属部材と電極基本材料との溶接のときにこのような比率を守ることで、溶接継目が大きくなりすぎず、貴金属部材の多すぎる材料が溶接結合部の溶融区域で消費されないことが保証される。それにより、小さい貴金属部材の使用にもかかわらず十分な貴金属を電極で提供する、点火プラグのための電極を製造することができる。それによって電極の長期耐久性を有意に改善することができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
従属請求項は、本発明の好ましい発展例を示している。
【0006】
貴金属材料の50容積%またはこれ以下が、溶接継目で電極基本材料と溶かし合わされるのが好ましい。それにより、溶接継目が過度に厚くならず、点火プラグの長期の耐久性のために十分な貴金属材料が存在することが保証される。
【0007】
溶接前の貴金属部材の容積は0.015から0.2mm
3の範囲内、好ましくは0.075から0.15mm
3の間、さらに好ましくはほぼ0.1mm
3であるのが特別に好ましい。
【0008】
本発明による電極の特別に良好な長期耐久性が実現されるのは、貴金属部材がボールである場合である。ボールは0.3から0.75mm、好ましくは0.4から0.6mm、さらに好ましくはほぼ0.5mmの直径を有しているのが好ましい。
【0009】
別案として貴金属部材は、好ましくは0.4から2.6mmの間の直径をもつ円筒状の形態を有する貴金属小板である。車両エンジンについては、直径は好ましくは0.4から0.8mmの間であり、好ましくは0.5から0.7mmの間、特別に好ましくはほぼ0.6mmである。据置型のガス発動機については、直径は好ましくは2.2から2.6mmの間であり、好ましくはほぼ2.4mmである。貴金属小板の厚みは好ましくは0.2から0.7mmの範囲内、好ましくは0.25から0.6mm、特別に好ましくはほぼ0.3mmである。車両エンジンについては、厚みは好ましくはほぼ0.3mmであり、据置型のガス発動機については好ましくはほぼ0.6mmである。
【0010】
溶接継目は電極表面に対して実質的に垂直方向に設けられているのが特別に好ましい。別案として、溶接継目は電極表面に対して角度をなして、好ましくは0°から60°の角度をなして設けられてい
る。
【0011】
本発明の別の好ましい実施形態では、溶接継目は貴金属部材の外側円周に中断なしに形成されている。さらに好ましくは、溶接継目の最大の幅は0.1から0.3mmの範囲内にあり、特別に好ましくは約0.2mmである。最大深さは、好ましくは0.3から0.9mmの範囲内であり、特別に好ましくは0.6mmである。
【0012】
さらに本発明は、本発明による電極を備えている点火プラグ、ならびに電極を製造する方法を対象としており、第1のステップでは電極基本材料が準備され、貴金属部材が電極基本材料の表面に配置される。次いで、貴金属部材が電極基本材料に溶着されて、外面に存在する溶接結合部の幅Bに対する、溶接結合部の深さTのアスペクト比が≧3となるようにされる。このとき溶接はレーザによって、特にファイバレーザによって行われるのが特別に好ましい。さらに好ましくは貴金属部材のうち50容積%またはこれ以下の割合が溶接され、それにより、まだ十分に純粋な貴金属が貴金属部材に存在することになり、それによって電極の長期耐久性が非常に良好となり、多すぎる量の高価な貴金属を使用しなくてすむ。
【0013】
次に、添付の図面を参照しながら、本発明の実施例について詳細に説明する。図面には次のものが示されている:
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1の実施例に基づく、点火プラグの燃焼室側の端部を示す模式的な部分破断側面図である。
【
図2】
図1のアース電極を示す模式的な部分平面図である。
【
図3】
図1のアース電極を示す模式的な断面図である。
【
図4】本発明の第2の実施例に基づくアース電極を示す模式的な断面図である。
【
図5】本発明の第3の実施例に基づくアース電極を示す模式的な断面図である。
【
図6】本発明の第4の実施例に基づくアース電極を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下において、
図1から
図3を参照しながら、本発明の第1の実施例に基づく点火プラグ1のための電極について説明する。
【0016】
図1の模式図を見ると明らかなように、点火プラグ1は、アース電極2と、点火プラグの中心軸X−Xに配置された中心電極3とを含んでいる。説明している本実施例では、本発明による電極はアース電極2である。ただし付言しておくと、本発明による電極は中心電極3であってもよく、または、これら両方の電極が本発明による方法で製作されていてもよい。
【0017】
図1から明らかなとおり、アース電極2は、他方の電極のほうを向き、その際に中心軸X−Xに対して垂直方向に配置された面20を有している。中心電極3は、アース電極のほうを向き、同じく中心軸X−Xに対して垂直方向を向く面30を有している。
【0018】
アース電極2は、貴金属を含まない材料、たとえばニッケル合金からなる電極基本材料4を含んでいる。さらにアース電極2は、溶接結合部6によって電極基本材料4に取り付けられた貴金属部材5を含んでいる。貴金属部材5は、本実施例ではボールであり、溶接結合部6は、
図2に示すように、ボールの周囲で環状に構成されている。
【0019】
図3の拡大図に見られるとおり、溶接結合部6は、溶接結合部6が軸方向に最大深さTを有するように、すなわち、中心軸X−Xに対して平行な溶接継目の最大の長さを有するように構成されている。さらに溶接結合部6は、面20と平行に最大の幅Bを表面に有している(
図2も参照)。溶接結合部6の幅Bは、溶接結合部6の表面における点火プラグの中心軸X−Xから半径方向への溶接継目の最大の長さとして定義される。本実施例の溶接結合部6はファイバレーザによって製作されており、それにより、溶接結合部6を可能な限り均一に製作するための高い放射品質が保証される。このとき溶接結合部6については、貴金属部材5の材料と電極基本材料4が両方とも溶融され、相互に溶かし合わされた材料が溶接結合部6を形成する。このとき面20と平行な最大の幅Bに対する、軸方向X−Xにおける溶接結合部6の最大の長さのアスペクト比は3よりも大きいか、またはこれに等しい(T/B≧3)。
図3から明らかなように、このとき貴金属部材
5の容積の50%未満が溶接結合部6に取り込まれる。それにより、大きい貴金属容積(本実施例では80%以上)が存在したまま残され、それによって非常に高い点火プラグの長期耐久性が、貴金属の最低限の使用量で得られる。本実施例では、最大の幅Bは0.2mmであり、軸方向X−Xの最大の長さは0.7mmであり、したがって3.5のアスペクト比が得られる(0.7/0.2=3.5)。
【0020】
このとき、電極基本材料4に貴金属部材5を取り付けるための溶接プロセスは1回のステップで行われ、それからアース電極2が90°だけ折り曲げられる。ボール状の貴金属部材の当初の直径は、ここでは0.5mmである。すなわち本発明の方法について特にファイバレーザの使用は、非常に一定の幅と、点火プラグの軸方向X−Xでの非常に一定の長さとを有する、非常に正確な溶接継目が得られるようにすることを可能にする。別案として、ファイバレーザに代えて、これ以外のレーザを溶接に利用することもできる。
【0021】
このように本発明は驚くべき簡単な仕方で、点火プラグでどのようにすれば貴金属を節約することができ、それによって点火プラグの長期耐久性が落ちないようにするかという道を指し示すものである。貴金属の節約により、特に点火プラグの製造を有意に安価にすることができる。点火プラグは大量生産部品なので、それによって大きな節減のポテンシャルがもたらされる。さらに付言しておくと、アース電極2と中心電極3が両方とも、本発明による≧3のアスペクト比の定義に基づいて溶接された貴金属部材を有していれば、点火プラグの長期耐久性をいっそう改善することができる。
【0022】
図4から
図6は本発明の別案の実施形態を示しており、同じ部品ないし機能が同じ部品には、第1の実施例と同じ符号が付されている。
【0023】
図4は、貴金属からなる小板を貴金属部材50として使用することを示している。貴金属小板は小さな円柱として構成されており、溶接結合部6によって電極基本材料4に溶接されている。
図1から
図3の第1の実施例では、軸方向X−Xにおける溶接継目の深さが、溶接結合部の軸方向の長さをほぼ定義していたのに対して、第2の実施例では、溶接継目6の軸方向の長さは大部分が貴金属部材50の側方の円周縁に形成されている。電極の表面における最大の幅Bに対する最大深さTのこのアスペクト比も3よりも大きいか、またはこれに等しい。
【0024】
図5の第3の実施例では、第2の実施例の場合と同じく、貴金属部材50として貴金属小板が使用される。しかし主な溶接方向は、第3の実施例では第2の実施例のときのように中心軸X−Xに対して実質的に平行ではなく、約40°の角度αをなすように選択されている。それにより、部分的に貴金属部材50よりも下方に位置する、漏斗形をした溶接結合部6が得られる。この溶接結合部6においてもアスペクト比はT/B≧3であり、このとき溶接結合部6の幅Bは、中心軸X−Xに対して半径方向を向く溶接継目6の最大の長さを、表面に投影することによって与えられる。
【0025】
図6は本発明の第4の実施例を示しており、やはり当初はボールであった貴金属部材5が、アース電極2の向かい合う対向側21から溶接されている。それにより、一方では上記の各実施例のような環状の溶接継目が生じるのではなく、対向側21から貴金属部材5の脚部領域まで達する、実質的に円筒状の溶接継目が生じている。このとき溶接結合部60は、中心電極のほうを向く面20で、貴金属部材5から外に出ないように製作されている。このようにして、中心電極のほうを向く、貴金属部材5の特別に広い面がもたらされる。
【0026】
この実施例の溶接結合部60は、点火プラグの中心軸X−Xに構成されており、貴金属部材5に向かう方向で若干テーパ状になって終わっている。第4の実施例の幅Bは、対向面21における溶接結合部60の直径に相当する。中心軸X−Xの方向に延びる溶接結合部60の長さは、アース電極2における溶接結合部の深さTに相当する。点火プラグの火花発生領域で、他方の電極のほうを向く貴金属部材5の面全体を利用できるという上に述べた利点のほか、第4の実施例は、点状の溶接が可能であるという利点をさらに有しており、それにより、電極と溶接装置の間の相対運動が必要ないので、溶接設備のための設備コストを明らかに削減することができる。
【0027】
このように本発明では、少ない貴金属使用量にもかかわらず非常に高い長期耐久性を有する、点火プラグのための改善された電極を提供することができる。本発明では、溶接継目が比較的小さく抑えられることも保証することができる。特に本発明によると、貴金属部材を0.015から0.2mm
3の範囲内の容積で溶接可能にすることが可能であり、貴金属容積の50%未満が電極基本材料と溶かし合わされる。
【符号の説明】
【0028】
2 アース電極
3 中心電極
4 電極基本材料
5 貴金属部材
6 溶接結合部
20 中心電極の中心軸に対して垂直方向に配置されたアース電極表面
50 貴金属部材
60 溶接結合部
α 電極表面に対する溶接接合部の角度
B 溶接接合部の最大の幅
T 中心軸における溶接接合部の最大の深さ