(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5966005
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】微調整用に構成された切削体
(51)【国際特許分類】
B23C 5/08 20060101AFI20160728BHJP
B23C 5/24 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
B23C5/08 Z
B23C5/24
【請求項の数】19
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-520788(P2014-520788)
(86)(22)【出願日】2012年7月8日
(65)【公表番号】特表2014-520683(P2014-520683A)
(43)【公表日】2014年8月25日
(86)【国際出願番号】IL2012000276
(87)【国際公開番号】WO2013011499
(87)【国際公開日】20130124
【審査請求日】2015年5月15日
(31)【優先権主張番号】61/509,261
(32)【優先日】2011年7月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】306037920
【氏名又は名称】イスカーリミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シモン アサド
【審査官】
山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−095894(JP,A)
【文献】
実開平01−092313(JP,U)
【文献】
特表2011−516288(JP,A)
【文献】
特開2011−156656(JP,A)
【文献】
独国特許出願公開第10011113(DE,A1)
【文献】
独国特許発明第3607528(DE,C1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23C 5/08,5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円盤状切削工具の切削工具本体であって、該切削工具本体は、
本体部、本体部から半径方向に延びる切削部、および、付勢部材を含み、
上記本体部は、半径方向内側部分、および、上記半径方向内側部分と上記切削部の間に配置された半径方向外側部分を含み、
上記半径方向外側部分は、隣接する第一および第二セクションを含み、
上記第一セクションは、上記半径方向内側部分と上記切削部の間に延びて、上記第二セクションに隣接する面を含み、
上記第二セクションは、上記第二セクションに隣接する面に対して横方向に延びる付勢面、および、上記付勢部材を保持し、上記第二セクションに隣接する面に結合された付勢部分を含み、
上記第一セクションは、上記付勢部材による上記付勢面への力の印加による上記付勢部材の作動で弾性的に曲がるように構成されており、それにより、その微調整のため上記切削部の位置を変更することを特徴とする切削工具本体。
【請求項2】
請求項1の切削工具本体であって、さらに、少なくとも1つの追加の切削部を含み、凹部が、隣接する切削部の間に形成されることを特徴とする切削工具本体。
【請求項3】
請求項1または2の切削工具本体であって、第一の方向が、上記本体部から上記切削部へと定義され、隣接する切削部の間の各凹部は、上記第一の方向と平行に延びることを特徴とする切削工具本体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかの切削工具本体であって、上記第二セクションは、上記付勢部分と上記付勢表面の間に配置される間隙を備えて形成されることを特徴とする切削工具本体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかの切削工具本体であって、上記間隙は、細長い付勢溝の一部であることを特徴とする切削工具本体。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかの切削工具本体であって、付勢溝が、上記本体部から上記切削部へと定義される第一の方向に直交する方向に延びることを特徴とする切削工具本体。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかの切削工具本体であって、上記第二セクションは、上記切削部の曲げ運動を制限するために、上記内側部分と上記付勢部分との間に結合されたアンカー部分を含むことを特徴とする切削工具本体。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかの切削工具本体であって、上記付勢部分は、上記付勢面よりも上記切削部により近いことを特徴とする切削工具本体。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかの切削工具本体であって、上記付勢部分は、上記付勢面に向けられ、その中心を通って延びる孔の中心軸を有する、ネジ付き孔を備えて形成されることを特徴とする切削工具本体。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかの切削工具本体であって、上記本体部は円盤状であり、ネジ付き孔は、半径方向に延びることを特徴とする切削工具本体。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかの切削工具本体であって、付勢溝の方向は、半径方向に垂直な接線方向であることを特徴とする切削工具本体。
【請求項12】
請求項9〜11のいずれかの切削工具本体であって、孔の中心軸は、上記付勢面と88.5〜92.5度の角度αを形成することを特徴とする切削工具本体。
【請求項13】
請求項9〜11のいずれかの切削工具本体であって、非付勢状態において、孔の中心軸は、上記付勢面と、好ましくは92.5度より大きくない鈍角αを形成することを特徴とする切削工具本体。
【請求項14】
請求項9〜13のいずれかの切削工具本体であって、非付勢状態において、角度αが、90度以外(α≠90°)であることを特徴とする切削工具本体。
【請求項15】
請求項9〜14のいずれかの切削工具本体であって、ネジ付き孔および/または上記付勢部材が、さらに、回転抑制配置を含むことを特徴とする切削工具本体。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれかの切削工具本体であって、上記回転抑制配置は、パッチ、または、標準DIN 913 ISO 4026によって規定されるよりも小さいピッチであることを特徴とする切削工具本体。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれかの切削工具本体であって、上記切削部は、その一側で上記本体部に結合されるだけであり、上記切削工具本体の他の部分に影響を及ぼすことなく、上記切削部の曲げを可能にし、上記本体部は、さらに、上記切削部の下方に延びる細長い付勢溝を含み、上記切削部の局所的で均一な曲げをさらに可能にし、上記付勢部分および上記付勢面は、上記付勢溝の両側に配置されることを特徴とする切削工具本体。
【請求項18】
工作機械であって、請求項1〜17のいずれかの切削工具本体を複数含むことを特徴とする工作機械。
【請求項19】
請求項18の工作機械であって、切削工具本体の各々が、少なくとも1つの隣接する切削工具本体に当接することを特徴とする工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願の主題は、一般的には、金属加工機での使用のために設計され、切り屑の除去用に設計された工具、特に、切削本体、および、そのような切削本体を複数有する工具に関する。より詳細には、各切削本体は、その一つ以上の切削部の位置の微調整または調整用に構成される。
【背景技術】
【0002】
工具は、一つ以上の切削本体を備え、加工物に、同時に、一つ以上のスロットまたは溝を切削するか、加工物を切り離すように構成され得る。
【0003】
そのような切削本体は、各々、一体の刃先を有する切削部を備え、挿入ポケット内に刃先を有する切削インサートを保持するように構成され得る。
【0004】
切削部、結果としてその刃先の位置の調整または微調整は、高精度の切削操作のための正確な位置決めを可能にし得る。
【0005】
様々な切削本体と工具は、特許文献1〜6に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4,547,100号明細書
【特許文献2】米国特許第6,056,484号明細書
【特許文献3】米国特許第6,702,526号明細書
【特許文献4】米国特許第7,086,812号明細書
【特許文献5】米国特許第7,402,010号明細書
【特許文献6】米国特許第6,431,799号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
微調整用に構成された新規および改良された切削本体を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本出願の主題の第1の態様によれば、その切削部の位置の微調整のために構成された、切り屑除去金属加工機のための切削本体が提供される。
【0009】
より正確には、切削本体は、本体部、本体部から延びる切削部、および付勢部材を含み得、本体部は、内側部分と、内側部分と切削部の間に配置された外側部分を含み、外側部分は、隣接する第一および第二セクションを含み、第一セクションは、内側副部と切削部との間に延在して、第二セクションに隣接して面を含み、第二セクションは、第一セクションの面に対して横方向に延びる付勢面を含み、付勢部分は、付勢部材を保持して第一セクションの面部と結合されており、第一セクションは、付勢部材による付勢面への力の印加による付勢部材の作動によって弾性的に曲がり、それにより、その微調整のために切削部の位置を変更するように構成されている。
【0010】
第一セクションは、例えば、それが切削本体の隣接部分よりも小さい厚さを有することによって、曲がるように構成され得ることが理解されるであろう。そのような隣接部分は、内側部分であり得る。
【0011】
本出願の主題の別の態様によれば、切削部の位置を微調整するように構成された、本体部から延びる切削部を含む切削本体が提供され、本体部は、内側部分と、内側部分と切削部との間に配置された外側部分を含み、外側部分は、弾性的に曲がるように構成されたセクションと、付勢部材を保持するように構成され、弾性的に曲がるように構成されたセクションよりも切削部に近く配置された付勢部分を含む。
【0012】
本出願の主題のさらに別の態様によれば、切削部の位置を微調整するように構成された本体部から延びる切削部を含む切削本体が提供され、切削部は、その一側で本体部に接続されるのみで、切削本体の他の部分に影響を与えることなく、切削部の曲がりを可能にし、本体部は、さらに、切削部の下方に延びる付勢溝を含んで、さらに、その曲がりを可能にし、および、付勢部分と付勢面が、付勢溝の対向側に配置されて、付勢部分と付勢面は、付勢部材と協働するように構成されて曲がりを可能にする。
【0013】
本出願の主題のさらに別の態様によれば、付勢部分と付勢面とを有する本体部を含む切削本体が提供され、切削部は、第一の方向に本体部から延びており、付勢部材は、端面を有し、付勢部材は、付勢部材の端面が付勢面と接触して、付勢部分によって保持されており、付勢部材は、第一の方向とほぼ反対方向に付勢面に対して第一の力を印加し、付勢部材は、横方向に付勢部分に対して第二の力を印加し、それによって、その微調整のために切削部の位置を変更することを特徴とする。
【0014】
本出願の主題のさらなる態様によれば、複数の切削本体を含む工作機械が提供される。切削本体の各々は、上記および下記で説明する態様のいずれをも有し得る。
【0015】
本出願の主題のさらに別の態様によれば、上記または下記で説明されるどの態様をも有する、切削本体の微調整方法が提供される。この方法は、以下の工程を含み得る。
a.第一の方向への付勢部材の移動を介して付勢面に対し付勢部分を移動させ、それにより、第一のセクションに、第一の較正方向に曲がり、そこから延びる切削部の位置を変更することをもたらし得る工程、
b.所定の角度に達したときに、第一の方向への付勢部材の移動を停止する工程、
c.第一の方向と反対の第二の方向に付勢部材を移動させ、第一の方向と反対の第二の較正方向に切削部を移動させるため第一セクションの弾性を可能にする工程、および、
d.所望の微調整位置に到達するとき付勢部材の移動を停止する工程。
【0016】
上述は要約であり、上記態様のいずれかは、さらに、他の態様のいずれかに関連して説明された態様、または、以下に説明される態様のいずれかを含み得ることが理解されるであろう。具体的には、以下の態様が、単独または組み合わせて、上記のいずれかの態様に適用可能である。
A.切削本体は、隣接する切削部の間に形成され得る、凹部を備えて形成され得る。
B.切削部は、その両側の凹部によって取り囲まれ、独立した曲げを可能にし得る。切削部は、切削部の大部分に沿って、その下方に延びる付勢溝に関連付けられ、切削部の均一な曲げを提供し得る。切削部は、切削部の曲げ運動を制限するように構成され得るアンカー部分に関連付けられ得る。
C.第二セクションは、付勢部分と付勢面との間に配置される空隙を備えて形成され得る。間隙は、細長い付勢溝の一部であり得る。付勢溝は、例えば、本体部が円盤状である場合には、接線方向に延び得る。第二セクションは、関連付けられた切削部の曲げ移動を規制または制限するための、内側部分と付勢部分との間に接続されたアンカー部分を含み得る。
D.付勢部分は、付勢面よりも切削部により近くであり得る。付勢部分は、付勢面に向けられ、その中心を通って延びる孔中心軸を有する、ネジ付き孔を備えて形成され得る。付勢部分は、付勢部材を保持するように構成され得る。ネジ付き孔および/または付勢部材は、回転抑制配置を含み得る。そのような配置は、以下に例示されるもののような回転工具における付勢部材の使用においてさえも、かかる使用に限定されないが、正確な所望の位置の維持を支援し得ることが見出された。回転抑制配置は、そのネジに固定されるパッチであり得ることが見出された。金属加工工具、特に回転工具の切削本体を微調整するように形成された付勢部材の移動を防止するためのパッチの使用は、これまで未知であると考えられる。回転抑制配置は、ネジ付き孔のネジであり得、ネジは、DIN 913、ISO 4026で定義されるよりも小さいピッチで形成される。
E.第一の方向は、本体部から切削部へと定義され得る。より正確には、第一の方向は、付勢部分の中心軸と同軸であり得る。第二の方向は、第一の方向と直交するとして定義され得る。本体部が長尺の実施例においては、第一の方向は、長手方向であり得る。本体部が円盤状である具体例においては、第一の方向は、半径方向であり得る。隣接する切削部の間の各凹部は、第一の方向に平行に延び得る。付勢溝は、第二の方向に延び得る。本体部が円盤状である具体例においては、付勢溝の方向は、第一の方向及び軸方向の双方に垂直、すなわち、接線方向であり得る。
F.本体部は円盤状であり得る。そのような場合においては、隣接する切削部の間の各凹部は、半径方向に延び得る。ネジ付き孔は、半径方向に延び得る。孔の孔中心軸は、88.5から92.5度の間で、付勢面との角度αを形成し得る。いくつかの具体例では、角度αは鈍角であり得るが、好ましくは92.5度より大きくない。非付勢状態では、孔の中心軸は、付勢面と鈍角αを形成し得る。そのような場合において、見出された最も好ましい鈍角は、これまでのところ、91.5°である。非付勢状態においては、孔の中心軸は、付勢面と鋭角αを形成し得る。そのような場合において、見出された最も好ましい鋭角は、これまでのところ、88.5度である。以下に示される例のような、いくつかの具体例によれば、第一のセクションにより近くで付勢面に接触するように付勢部材を作動させることが、第一のセクションからより遠くで付勢面に接触する場合よりも小さな力をもたらし得るので、鈍角が、最も好ましいことが理解されるであろう。したがって、切削体は、付勢部材の作動に影響を受けにくく、正確に調整することが簡単であり得る。しかし、切削体が、曲げに対して抵抗性である(例えば、異なる厚さ、または、用いられる材料によって)具体例においては、鋭角αが好適であり得ることが想定される。
G.切削部は、切削体の他の部分に影響を与えることなく、切削部の曲げを可能にするために、その一側で、本体部に接続されるだけであり得る。本体部は、切削部の局所的で均一な曲げをさらに可能とするため、切削部の下方に延びる細長い付勢溝を含み得る。付勢部分と付勢面は、付勢溝の両側に配置され得る。
H.切削体のいずれか、または、それぞれは、少なくとも1つの隣接する切削体に当接し得る。
I.本体部は、円盤状であり、本体中心軸を有し得る。
J.第一の力は、概して、半径方向内方に付勢部材によって印加され得る。
K.第二の力は、概して、軸方向に、付勢部分を介して、付勢部材によって印加され得る。
L.微調整の方法は、上述の工程(a)の前に、隣接する切削体を、互いに当接する態様で、固定する工程を含み得る。
M.微調整の方法は、付勢面から離れて付勢部分を移動させることによって、付勢面に対して付勢部分を移動させることを含み得る。
【0017】
本出願の主題をよりよく理解するため、および、いかに同じものが実際に実施され得るかを示すために、次に、添付の図面に参照がなされるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1A】切削工具およびそれ用のネジ込み具の斜視図である。
【
図2A】
図1A〜1Cに示された切削工具の切削本体の正面図であり、付勢部材や切削インサートを含まない。
【
図2C】
図2Bにおける部分Aの拡大図であり、さらに付勢部材と切削インサートを含む。
【0019】
適切と考えられる場合には、参照番号は、対応または類似する要素を示すために図面間で繰り返され得る。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下の説明においては、本出願の主題の様々な態様が説明されるであろう。説明の目的のため、本出願の主題の完全な理解を提供するように、特定の構成および詳細部分が十分に詳細に説明される。しかし、本出願の主題は、本明細書に提示される特定の詳細部分なしに実施され得ることは、当業者に、また明らかであろう。
【0021】
この非限定的な実施例においては回転工具である、金属切削操作用の工具10を示す
図1A〜1Cを参照すると、工具10は、複数の切削本体12と、切削本体12を微調整するための、この実施例においてはアレンキーであり得る、標準の回転/締付具11(
図1A)を含む。
【0022】
この非限定的な実施例において、互いに直接に隣接して配置された5つの切削本体12が存在する(
図1Cに示されるように、工具10は、隣接する切削本体12間に間隙を持たない。)。より正確には、各切削本体12は、隣接する各切削本体12に当接させて固定され得る。そのような配置は、複数の、近接して間隔をあけた切削が行われることを可能にし得る。
【0023】
中央開口18が切削本体12の中央に形成され得る。本体の中心軸A
Cは、切削本体12の中央部または中心点20を通過することができ、この実施例では、中央開口18の中心点と一致し得る。切削本体12が回転工具に使用されるように構成されている具体例においては、切削本体12は、本体の中心軸A
Cの周りを回転するように構成され得る。
【0024】
図2Bを参照すると、各切削本体12は、そこから切削部16が半径方向外側に延びている本体部14と、それぞれ関連する各切削部16に関連付けられ、関連する各切削部16を配向させるように構成された付勢部材17(
図2C)を含み得る。
【0025】
本明細書および特許請求の範囲において、用語「軸方向」と「半径方向」を含む方向への言及は、本体の中心軸A
Cに対してなされる。
【0026】
切削部16は、本体部14の周りに、周方向に、均等または他の状態で配置され得る。
切削部16は、隣接する切削本体12の切削部16に対して千鳥状に配置され得る(
図1Aに良く示される)。各切削部16は、隣接する切削部16に未接続、または、言い換えると、隣接する切削部16から離れて配置され得る。より正確には、各切削本体12は、隣接する切削部16間に形成された凹部19(
図2A)を備えて形成され得る。各凹部19は、本体部14に延びることができ、この実施例の円盤状工具では、半径方向D
Rに延び得る。各切削部16は、隣接する切削部16の位置とは無関係の曲げ動作のために構成され得る。
【0027】
各切削部16は、(例えば、
図1Cの側面図に示されるように)平面形状を有し得る。
【0028】
特に、
図2Cを参照すると、各切削部16は、本体部14から延び、対向する上端部16Aで終端し得る。各切削部16は、互いに平行であり得、本体部14から上端部16Aまで延び得る、軸方向に対向する第一および第二の主側面16B、16Cを有し得る。各切削部16は、第一および第二の主側面16B、16C間に、厚みT
C(
図2B)の大きさを有し得る。
【0029】
特に
図2Aを参照すると、各切削部16は、第一および第二の副側面16D、16Eを有し得る。第一および第二の副側面16D、16Eは、関連付けられた切削部16の対向側部に配置され得る。第一および第二の副側面16D、16Eは、それぞれ、本体部14、上端部16A、および、第一および第二の主側面16B、16Cの間に延び得る。
【0030】
図1Bに最もよく示されるように、この非限定的な実施例では、各切削部16は、着脱自在にそこに固定されるインサート22をさらに有し得る。各インサート22は、切削本体12に沿って周囲に配置された、切刃24を有する。本出願の主題は、どの特定のタイプの切削部16、インサート22、または、切刃24にも限定されないことが理解されるであろう。いずれの場合においても、いくつかの具体例によれば、各切削部16は、インサート22が装着される、ポケット26(
図2A)を備えて形成されている。
【0031】
図2Aに最もよく示されるように、本体部14は、円盤状であり得る。
【0032】
図2Bから最もよく理解されるように、本体部14は、内側部分39、および、内側部分39と各切削部16との間に延びる外側部分40を含み得る。
【0033】
図2Aおよび2Bから理解されるように、内側部分39は、円筒形状を有し得る。
【0034】
図2Aに最もよく示されるように、内側部分39は、内周端28、外周端29、および、それらの間に延びる第一および第二の側面30、32の間に画定される。
【0035】
図2Bを参照すると、内側部分39は、半径方向深さD
Hの大きさを有し得る。そのような半径方向深さD
Hは、内周端28と外周端29の間に画定され得る。
【0036】
本実施例におけるように、内周端28は、回転軸(不図示)との接続のために構成された凹部34(
図2A)を備えて形成され得る。しかし、用途ごとに、内側部分39は、べたの、または、均一な構造を有し得、別の言い方をすれば、内側部分39は、凹部、または、凹んだ領域を欠き得る。
【0037】
第一および第二の側面30、32は、本体の中心軸A
Cに垂直に(この実施例においては、半径方向D
Rを含む半径方向の平面に)延び得る。
【0038】
次に
図2Cを参照すると、外周端29は、外側部分40との交点に配置され得る。
【0039】
外側部分40は、隣接する第一および第二セクション40A、40Bを含み得る。
【0040】
また、
図2Bを参照すると、第一セクション40Aは、内側部分39と切削部16との間に延び得る。第一セクション40Aは、対向する第一および第二面40A1、40A2を有し得る。
【0041】
第一面40A1は、内側部分の第一の側面30と、関連する切削部16の第一の主側面16Bとの間に延び得る。第二の面40A2は、内側部分39に向けて、関連する切削部16の第二の主側面16Cから延び得る。
【0042】
第二セクション40Bは、内側部分39から半径方向外側に、第一セクション40Aから軸方向外方に配置され得る。第二セクション40Bは、付勢部分36Aと、大体において、半径方向の外側に面している、付勢面35を含み得る。第2の部分40Bは、また、アンカー部分36B(
図2A)を含み得る。
【0043】
付勢面35の定義に続き、第一セクション40Aのより正確な定義は、それが、付勢面35に隣接して終端する内側部分39から、付勢部分36Aの上縁37Aに隣接して始端する関連する切削部16まで延びるということである。
【0044】
付勢部分36Aは、第一セクション40Aの第二面40A2から延び得る。付勢部分36Aは、その上縁37A及び下縁37Bの間に延び得る。上縁および/または下縁37A、37Bは、第二の面40A2に垂直に延び得る。上縁37Aは、下端37Bよりも、本体の中心軸A
Cから遠くに配置され得る。下縁37Bは、付勢面35から離れた位置で終端し得る。別の言い方をすれば、下縁37Bと付勢面35との間に間隙37Cが存在し得る。付勢部分36Aは、内ネジ付きの孔36A1(
図2B)を備えて形成され得る。付勢部分36Aは、細長であり得る(例示的な翼状の形状が示される、
図2Aに最もよく示される。)。そのような細長部は、関連する切削部16の第二副側面16Eに関連付けられた凹部19から、同じ切削部16の第一副側面16Dに関連付けられた、もう一つの凹部19に向かう方向に延び得る。細長部は、関連付けられた切削部16の凹部19間の距離の大部分に沿って延び得る。
【0045】
下縁37Bは平坦であり得る。平坦な下縁37Bは、本体の中心軸A
Cに対し接線方向(D
T)に延び得る。
【0046】
上縁37Aは、湾曲され得る。湾曲した上縁37Aは、付勢面35の一部と平行に延び得る。
【0047】
ネジ付き孔36A1と整列する付勢面35の一部は、外周端29の一部と一致し、別の言い方をすれば、外周端29の一部を共に構成し得る。
【0048】
孔中心軸A
B(
図2B)は、ネジ付き孔36A1の中心を通って延び得る。ネジ付き孔36A1は、半径方向に延び得る。別の言い方をすれば、孔中心軸A
Bは、切削本体12の中心20と交差し、または、切削本体12の中心20に近接して延び得る。非付勢状態において、すなわち、付勢部材17が付勢面35に力を印加していないときに、付勢面35は、ネジ付き孔36A1の穴中心軸A
Bと角度α(
図2Bに示されるように、すなわち、そのような角度は、側面視で見られ得る。)を形成し得る。所望の用途に応じ、角度αは、88.5度〜92.5度の間であり得る。この非限定的な実施例においては、角度αは91.5°である(
図2Bおよび2C中の付勢面35の傾斜は、視認を容易にするために誇張されている。)。鈍角、例えば91.5度は、付勢部材17の調整において切削部16の感度を低減することから、鋭角、例えば88.5度よりも有利であると考えられる。しかしながら、そのような増幅された感度が望まれる場合があり得る。したがって、角度は、88.5度<A<92.5度の条件を満たすことが好ましい。同様に、90度の角度が実行可能であるが、角度αは90度以外(α≠90度)であることが好ましく、それは、付勢部材17を最初に移動させるために必要な力に影響を与え得る。非付勢状態における角度αと無関係に、いくつかの具体例による曲げ動作は、88.5度と92.5度の間の、関連する切削部16の移動範囲を可能にし得る。そのような範囲は、微調整のために十分であり、締付具11の少ない回転数を必要とし得る。
【0049】
第二セクション40Bは、付勢溝42を備えて形成され得る。間隙37は、付勢溝42の一部を構成し得る。付勢溝42は、関連する切削部16の第二副側面16Dに関連した凹部19に開口し得る、第一の端部42Aを有し得る。付勢溝42は、関連する切削部16の第一副側面16Eと関連付けられた凹部19と、本体部14の内部部分39にとの間に終端する、閉じた第二の端部42Bを有し得る。付勢溝42は、接線方向D
Tに延び得る。付勢溝42は、付勢部分36Aの下縁37B(
図2B)、付勢面35(
図2C)、第一セクション40Aの第二面40A2(
図2B)の間に画定され得る。
【0050】
付勢溝42は、切削本体12に局所的な柔軟性を提供するように構成され得ることが理解されるであろう。さらに具体的には、付勢溝42は、内側部分39と、関連する切削部16との間に配置された領域で、内側部分39に対する外側部分40の柔軟性を提供する。付勢溝42の延びは、関連付けられた切削部16全体に対して均一な曲げ動作を可能にするため、関連する切削部16の延びに対応し得る。
【0051】
凹部19はまた、局所的な柔軟性を可能にし得る。凹部19は、切削部16を互いから隔離する役割を果たし得る。従って、凹部19は、関連する切削部16の全体に均一な曲げ動作を可能にし得る。注目すべきことに、凹部19は、切削部16間に形成され得、また、外側部分40に形成され得る。
【0052】
アンカー部分36B(
図2A)は、外周端29から付勢部分36Aに延び得、それによって、それらの間に結合部または首部を形成する。アンカー部分36Bは、隣接する付勢溝42と、そこに隣接する関連する凹部19との間に画定され得る。アンカー部分36Bは、関連付けられた切削部16の曲げ動作を規制し得る。別の言い方をすれば、アンカー部分36Bは、関連付けられた切削部16の曲げ動作を制限し得る。曲げに対するそのような規制や制限は、柔軟性を高めるように設計される要素を相殺し得る。
【0053】
また、各付勢溝42は、第一端42Aから延びて、隣接する付勢溝42まで拡がること、すなわち、第二の端部42Bが形成されないことも実行可能であると理解されるであろう。しかしながら、アンカー部分36Bを設けることは、場合によっては、関連付けられた切削部16の過度の延び(すなわち、過度の曲げ)を制限するために有利であり得る。
【0054】
この非限定的な例において、付勢部材17は、外部ネジ17Cを備えたネジであり得る。付勢部材は、例えば、非ネジ切りレバーまたはクランプ部材のようなネジ以外であり得ることが理解されるであろう。付勢部材17は、付勢面35と係合する平坦な端部17Aを有し得る。付勢部材17は、上縁37Aと付勢面35との間の長さよりも短い長さを有し得、その結果、ネジ付き孔36A1に取り付けられたとき、関連付けられた切削部16に向かう方向において、付勢部分36Aから突出しない。回転抑制機構17Bと共に構成されることは、付勢部材17にとって、有利であり得ると考えられる。そのような回転抑制機構17Bは、切削操作中、ネジの外部ネジ17Cに、少なくともネジ付き孔36A1に係合される部分に固定される、例えば、ナイロン製パッチであり得る。そのようなパッチは、関連付けられた切削本体16の切削操作中、ネジ付き孔36A1における付勢部材17の望ましくない回転を阻止するように構成され得る。適切な例のパッチは、商品名「Tuflok(登録商標)」として、Bossardグループにより販売されている。パッチは、代替的に、または付加的に、ネジ付き孔36A1に適用され得る。あるいは、そのような回転抑制機構17Bは、小さなピッチ、すなわち、国際標準化機構(ISO)によって定義されるよりも小さい、例えば、標準のDIN 913、ISO 4026で定義されるよりも小さいピッチのネジを有する付勢部材17であり得る。
【0055】
作動中、付勢部材17は、ネジ付き穴36A1に挿入され得る。付勢部材17は、それが付勢面35に接触するが、そこに力を加えない状態まで、すなわち、切削本体12が、付勢されていない状態まで、工具11(
図1A)を介して、回転させられ得る。切削操作のための調整の間、すべての付勢部材17が、最初に、ネジ付き孔36A1内の先に回転させられ得、その結果、それは、付勢面35に力を印加する。第1セクション40Aは、内側部分39よりも柔軟であるので、これは、この非限定的な実施例において、(第1セクション40Aの)厚みT
Cの大きさが、(内側部分39の)半径方向深さD
Hの大きさよりも小さいことの結果であるが、第一セクション40Aは、方向D
Bに曲る(
図2C、曲りは示されていない。)。初期付勢は、この非限定的な実施例においては、曲げ範囲の限界、例えばα=92.5度であり得る、所定の最大曲げ角度までである。各切削部16は、非付勢状態と最大曲げ角度との間の所望の曲げ角度、この非限定的な実施例においては91.5°である曲げ角度に到達するまで、次いで、反対方向に付勢部材17を回転させることによって、所望の位置に校正され得る(
図2B)。
【0056】
非付勢状態が、88.5度のような鋭角を有する場合に、最初の回転は、90度の所定の最大曲げ角度までであり得、所望の位置は、非付勢状態の88.5度と最大曲げ角度との間の所望の曲げ角度に到達するまで、反対方向に付勢部材17を回転させることによって達成され得る。
【0057】
第一セクション40Aの材料の弾性は、第一セクション40Aが、最初の最大曲げ角度から所望の曲げ角度に戻ることを可能にする。
【0058】
各切削本体12は、例えば鋼である、弾性材料から製造され得ることが理解されるであろう。しかしながら、切削本体が、複数の材料から製造される場合には、少なくとも本体部14、より具体的には、少なくともその第一セクション40Aが、好ましくは弾性材料で製造されることが理解されるであろう。
【0059】
ネジ付き孔36A1(
図1Cに最もよく示される。)の半径方向の向きのあり得る利点は、半径方向は、他の方向よりも、より容易に観察され、および/または、アクセスし得るので、そこに配置された付勢部材17を回転させるためのアクセスの容易性であり得る。言い換えると、本出願の主題は、複数の切削本体が、互いに直接近接して装着または装填されること、および、この位置にあって調整されることを可能にする。
【0060】
実現可能な代替の配置が可能であること、例えば、ネジ付き孔36A1は、第二面40A2または切削部16に対して傾斜し得ることが理解されるであろう。同様に、軸A
Bは、第二面40A2または切削部16に対して傾斜し得、付勢面35は、例えば、第2面40A2または切削部16に対して垂直であり得る。
【0061】
この非限定的な実施例においては、工具10は、複数のスロットまたは溝の同時切削用に構成される、いわゆる溝フライスであり、所望により、また、工作物の同時複数分割を実行するように構成され得る。しかしながら、他のタイプの回転工具、または、特に複数の刃を有するタイプの非回転工具が、本出願の主題に従って、工具または切削本体を構成し得ることが理解されるであろう。回転切削部または工具に関する、説明された要素および方向の名称は、非回転切削部または工具に、準用して変更されることが理解されるであろう。例えば、上述の半径方向は、細長いブレード状工具に対して、第一の方向または長手方向であり得る。すべてのそのような場合において、付勢部材は、付勢表面に一方向に第一の力を付加し、横方向に第二の力を付加し、それにより、切削部の位置を、その微調整のために変更する。
【0062】
特に、示された非限定的な実施例において、付勢部材17は、切削部16の、すなわち、切削インサート22または切刃24に関連する、どのクランプ機構とも異なる。より正確には、切削部16は、付勢要素又は部分を欠いている。従って、切削部16において、ネジ孔、付勢部材または部分のような付勢要素または部分に起因する厚みの制限はない。この構成のあり得る利点は、切削部が付勢要素を収容するために必要な幅に限定されないということ、および、特に、隣接する複数の切削本体が存在する場合には、非常に薄い切削、または、複数の切削が達成され得るということであり得る。ネジ付き孔36A1の向き(すなわち、この実施例では、半径方向に配向されている。)は、示されたコンパクトな構成であっても、操作者にアクセスを可能とすることが理解されるであろう。
【0063】
さらに、この非限定的な実施例においては、(a)付勢部材17、(b)付勢面35、および、(c)ネジ付き孔36A1の一つ以上が、関連付けられた切削部16と、切削本体12の中心20の間に配置される。別の言い方をすれば、付勢部材17および/または付勢面35および/またはネジ付き孔36A1は、切削部16よりも切削本体12の中心20に近い位置に配置される。
【0064】
本出願の主題の他のあり得る利点は、切削部の位置の調整を可能にするため、切削本体が、その切削部および本体部の交点において柔軟であるように構成され提供されるということである。柔軟領域に加えて、切削部は、柔軟性を調節するか、または切削部の過剰な移動を安定化または制限するために、アンカー構成を有し得る。
【0065】
本出願の主題は、特定の実施例を参照して説明されたが、説明は、全体として例示することを意図されており、示された具体例に、本出願の主題を限定するものとして解釈されるべきではない。