(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記送信制御部は、前記第1往復遅延時間を取得した環境と同一の環境である第1環境及び前記第1環境とは異なる第2環境において、前記パケットを前記親機に対して送信し、
前記算出部は、
前記第1環境において前記パケットに対する応答パケットを前記親機から受信するまでの時間を第2往復遅延時間として取得するとともに、前記第2環境において前記パケットに対する応答パケットを前記親機から受信するまでの時間を第3往復遅延時間として取得する取得部と、
前記第1往復遅延時間と前記第1環境における前記第2往復遅延時間との差分を差分時間として算出する第1算出部と、
前記第2環境における前記第3往復遅延時間を、前記差分時間に基づいて補正することで第4往復遅延時間を算出する第2算出部と、
算出した前記第4往復遅延時間に基づいて、前記通信装置と前記親機との間のスループットを算出する第3算出部と、
を備える請求項1に記載の通信装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、無線LANの標準規格であるIEEE802.11nでは、送信データを多数連結することで1回のフレーム送信で大量のデータを送信するフレームアグリゲーションという機能が規定されている。フレームアグリゲーション機能を動作させるためには、複数のフレームが送信待ちの状態になっている必要があり、例えば、一定サイズ以上のパケットを送信する場合に、当該パケットが複数のフレームに分割され、フレームアグリゲーション機能により一括で送信される。
そのため、pingを用いたスループット測定において、ユーザの無線利用時の状態に合ったスループットを測定するために、フレームアグリゲーション機能が動作するように、一定サイズ以上のICMPパケット(Echo Request、Echo Reply)を送受信しなければならない。
【0007】
ここで、
図8(A)に、pingのパケットサイズと、往復遅延時間(RTT:Round-Trip Time)及び当該往復遅延時間から算出されるスループットとの関係を示す。なお、
図8(及び後述する
図4)では、夫々の関係を単純化し、模式的に示している。
図8(A)に示すように、パケットサイズが10000バイト未満の場合、実際の無線利用時に比べて低いスループットが算出される。これは、フレームアグリゲーションではパケットサイズが大きいほど効率が向上すること、及びパケットサイズが小さいほど通信時間に対してICMPの処理時間が支配的になることを理由としている。他方、パケットサイズが20000又は30000バイトを超える辺りから算出結果が安定し、実態と合ったスループットが算出されることが分かる。
【0008】
このように、pingを用いて正確なスループットを測定するための1つの方法として、パケットサイズを大きくする方法があるが、単にパケットサイズを大きくしたのでは、以下に示す問題が生じてしまう。
図8(B)を参照して、パケットサイズを大きくした場合に生じる問題について説明する。なお、
図8(B)では、理解を容易にするために、具体的なモデルケースを用いているが、以下に示す問題は、このようなケースに限られるものではない。
【0009】
TV放送等の映像コンテンツを宅内の好きな場所で視聴できるように、ユーザが所有する通信装置に映像コンテンツを配信する映像配信サービスが知られている。このような映像配信サービスでは、
図8(B)に示すように、宅内に映像配信装置を設置し、通信装置と映像配信装置とが無線LANのアクセスポイントを介して通信することで映像コンテンツの配信が行われる。
映像配信サービスを導入する場合、先ず、ユーザ宅において十分なスループットが確保できるか確認する必要がある。スループットの測定では、本来であれば、通信装置−映像配信装置間のスループットを測定する必要があるものの、サービス導入前のユーザ宅では、映像配信装置が設置されていないため、通信装置−アクセスポイント間のスループットを測定することになる。
【0010】
ここで、上述のように、pingを用いたスループット測定では、パケットサイズを大きくする必要があるが、パケットサイズを大きくすると、パケットのフラグメント及びデフラグメントが発生してしまう。この点、通信装置や映像配信装置のような通信の終端にある装置では、パケットのフラグメント(及びデフラグメント、以下省略)を行うことが想定されている一方で、アクセスポイントのように通信を中継する装置では、パケットのフラグメント等を行うことが想定されていない。そのため、通信装置−アクセスポイント間のpingの往復遅延時間は、通信装置−映像配信装置間の往復遅延時間よりも、アクセスポイントのフラグメント等にかかる余分な時間の分だけ長くなってしまう傾向があり、結果、測定するスループットも実際のスループットよりも低く算出されてしまう傾向がある。
【0011】
図8(B)で例示した映像配信サービスの場合、測定したスループットを元にサービスの導入や配信する映像の画質(高画質/低画質)等をアドバイスすることがある。そのため、測定したスループットが実際のスループットよりも低い場合、事業者側にとってみればサービス導入の機会を逃してしまうことに繋がり、また、ユーザ側にとってみれば本来であれば高画質の視聴ができるにも関わらず低画質での視聴を勧められてしまう可能性がある。
このようにpingを用いてアクセスポイントとの間(無線区間)のスループットを測定する場合、フレームアグリゲーションとの関係からデータサイズを大きくしなければ正確な測定ができない一方で、フラグメント等との関係からデータサイズを大きくすると正確な測定ができないという問題がある。
【0012】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、無線区間のスループットを正確に測定可能な通信装置及び算出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の態様においては、電波を発信する親機と無線接続された通信装置であって、パケットを前記親機と無線接続された他の通信装置に対して送信する送信制御部と、前記パケットに対する応答パケットを、前記他の通信装置から受信する受信制御部と、前記パケットを送信してから前記応答パケットを受信するまでの時間を、自身と前記親機との接続状態及び前記他の通信装置と親機との接続状態に応じて補正した第1往復遅延時間に基づいて、前記通信装置と前記親機との間のスループットを算出する算出部と、を備える通信装置を提供する。
【0014】
また、前記送信制御部は、前記第1往復遅延時間を取得した環境と同一の環境である第1環境及び前記第1環境とは異なる第2環境において、前記パケットを前記親機に対して送信し、前記算出部は、前記第1環境において前記パケットに対する応答パケットを前記親機から受信するまでの時間を第2往復遅延時間として取得するとともに、前記第2環境において前記パケットに対する応答パケットを前記親機から受信するまでの時間を第3往復遅延時間として取得する取得部と、前記第1往復遅延時間と前記第1環境における前記第2往復遅延時間との差分を差分時間として算出する第1算出部と、前記第2環境における前記第3往復遅延時間を、前記差分時間に基づいて補正することで第4往復遅延時間を算出する第2算出部と、算出した前記第4往復遅延時間に基づいて、前記通信装置と前記親機との間のスループットを算出する第3算出部とを備えることとしてもよい。
【0015】
また、前記第1算出部は、前記親機の種別毎に前記第1環境における前記差分時間を算出し、前記第2算出部は、前記第3往復遅延時間を算出した前記親機の種別に応じた前記差分時間に基づいて、前記第4往復遅延時間を算出することとしてもよい。
【0016】
また、前記算出部は、前記パケットを送信してから前記応答パケットを受信するまでの時間の二分の一の時間を前記第1往復遅延時間として算出することとしてもよい。
【0017】
また、前記送信制御部は、前記他の通信装置に対して所定サイズよりも大きいパケットを送信することとしてもよい。
【0018】
本発明の第2の態様においては、電波を発信する親機と無線接続された通信装置において前記親機との間のスループットを算出する算出方法であって、パケットを前記親機と無線接続された他の通信装置に対して送信するステップと、前記パケットに対する応答パケットを、前記他の通信装置から受信するステップと、前記パケットを送信してから前記応答パケットを受信するまでの時間を、自身と前記親機との接続状態及び前記他の通信装置と親機との接続状態に応じて補正した第1往復遅延時間に基づいて、前記通信装置と前記親機との間のスループットを算出するステップと、を含む算出方法を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、無線区間のスループットを正確に測定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[第1実施形態の概要]
初めに、
図1を参照して、無線区間のスループットを正確に算出する通信装置1の第1実施形態の概要について説明する。
図1に示すように、第1実施形態では、通信装置1、アクセスポイント2及び他の通信装置3を用いて無線区間(通信装置1−アクセスポイント2間)のスループットを測定する。アクセスポイント2は、無線LANのアクセスポイント(親機)であり、周囲に電波を発信することで無線LAN環境を構築する。通信装置1,3は、任意の端末装置であり、本実施形態では、スマートフォン、携帯電話、タブレットPC、ゲーム機等の携帯型の通信装置を用いる。通信装置1,3は、アクセスポイント2を介して互いに接続される。
【0022】
上述したように、pingを用いたスループット測定では、フレームグリゲーションとの関係からデータサイズを大きくしなければならない一方で、データサイズを大きくするとパケットのフラグメント及びデフラグメントが必要になる。また、アクセスポイント2のような通信を中継する装置では、パケットのフラグメント等の処理に時間がかかってしまうため、通信装置1−アクセスポイント2間でpingを用いたスループット測定を行うと、実際の通信時とは異なるスループットが測定されてしまう。
【0023】
そこで、第1実施形態の通信装置1では、アクセスポイント2に対してpingを送信するのではなく、アクセスポイント2と無線接続された他の通信装置3に対してpingを送信することで無線区間のスループットを測定する。
【0024】
他の通信装置3は通信の終端にある装置であり、フラグメント等の処理にかかる時間が通信装置1の実際の通信時における処理時間と実質的に変わらない。また、アクセスポイント2は単にpingを中継すればよいため、アクセスポイント2においてフラグメント等の処理をする必要がなく、不要な遅延が生じない。
他方、他の通信装置3は、アクセスポイント2に無線接続されるため、通信装置1−アクセスポイント2間に比べて、通信装置1−他の通信装置3間は、無線区間が多くなってしまう。
【0025】
そこで、第1実施形態の通信装置1では、通信装置1−他の通信装置3間でのpingの往復遅延時間を補正して無線区間のスループットを算出する。補正の詳細は後述するが、最も単純には、通信装置1は、通信装置1−他の通信装置3間でのpingの往復遅延時間の二分の一の時間を無線区間の往復遅延時間として、スループットを算出する。
【0026】
このように第1実施形態の通信装置1では、アクセスポイント2を介して他の通信装置3との間でpingの往復遅延時間を取得するとともに、当該往復遅延時間を補正してスループットを算出することで、無線区間のスループットを正確に算出することができる。
このようなスループットの算出方法を上述した映像配信サービスの導入時に適用した場合、サービス提供者は、通信装置1,3を2台所持してユーザ宅を訪れ、当該ユーザ宅に設置されたアクセスポイント2を介して2台の通信装置1,3間でpingの応答を行うことで、ユーザ宅内の無線区間のスループットを正確に算出することができる。
【0027】
[通信装置1の構成]
続いて、第1実施形態の通信装置1の構成について説明する。
図2は、第1実施形態の通信装置1の機能構成を示すブロック図である。
図2に示すように、通信装置1は、通信部11と、記憶部12と、制御部13と、を含んで構成される。
【0028】
通信部11は、送信アンテナ及び受信アンテナを含んで構成され、制御部13から出力された信号を変調してRF(Radio Frequency)信号を生成し、送信アンテナを介してアクセスポイント2等の外部機器に対して無線送信する。また、通信部11は、受信アンテナを介して受信したRF信号を復調して制御部13に出力する。
記憶部12は、ROM及びRAM等のメモリ又はハードディスク等の記憶媒体である。記憶部12は、制御部13を機能させるためのプログラム及び制御部13が動作する際に生成されるデータを記憶する。
【0029】
制御部13は、例えば、CPUにより構成され、記憶部12に記憶されている各種プログラムを実行することにより、送信制御部131、受信制御部132及び算出部133として機能する。
【0030】
送信制御部131は、アクセスポイント2と無線接続された他の通信装置3に対して、当該アクセスポイント2を経由して、所定サイズよりも大きいICMPの要求パケット(Echo Request)を送信する。なお、所定サイズは、少なくともフレームグリゲーションが動作するサイズであり、正確なスループットを算出するためには、20000又は30000バイトを超えるサイズであることが好ましい。
受信制御部132は、要求パケットに対する応答パケット(Echo Reply)を、アクセスポイント2を経由して他の通信装置から受信する。
【0031】
算出部133は、要求パケットを送信してから応答パケットを受信するまでの時間を取得する。また、算出部133は、当該時間を、通信装置1とアクセスポイント2との接続状態及び他の通信装置3とアクセスポイント2との接続状態に応じて補正して、第1往復遅延時間(第1RTT)を算出する。
【0032】
接続状態としては、例えば、通信装置1,3の夫々とアクセスポイント2との間のリンク速度や通信装置1,3における受信電波強度(RSSI)等を用いることができ、以下では、接続状態としてリンク速度を用いる。pingの応答時間をリンク速度に基づいて補正する場合、算出部133は、以下の式に基づいて応答時間を補正する。
第1RTT=(Link_Speed_2)/(Link_Speed_1+Link_Speed_2)×pingの応答時間
同式において、Link_Speed_1は、通信装置1とアクセスポイント2との間のリンク速度であり、Link_Speed_2は、他の通信装置3とアクセスポイント2との間のリンク速度である。
【0033】
同式によれば、通信装置1,3においてアクセスポイント2との接続状態が同じ(リンク速度が同じ)場合、第1往復遅延時間は、pingの応答時間の二分の一となる。
映像配信サービスの導入時を例にすると、ユーザ宅を訪れたサービス提供者は、通信装置1,3の双方を所持した状態でpingの応答時間を取得する。一人のサービス提供者が通信装置1,3の双方を所持している場合、通信装置1,3の位置が近傍にあり、アクセスポイント2との接続状態が近似するため、取得した応答時間を二分の一することで、容易に第1往復遅延時間を取得することができる。
【0034】
算出部133は、補正の結果得られた第1往復遅延時間に基づいて、通信装置1とアクセスポイント2との間(無線区間)のスループットを算出する。具体的には、算出部133は、以下の式に基づいて無線区間のスループットを算出する。
スループット[Mbps]=パケットサイズ[Byte]×8×2/第1RTT[msec]/1000
【0035】
[通信装置1の処理]
以上、本実施形態に係る通信装置1の構成について説明した。続いて、通信装置1が無線区間のスループットを算出する際の処理の流れについて説明する。
図3は、通信装置1の処理の流れを示すシーケンス図である。
【0036】
初めに、ステップS1において、通信装置1では、測定開始操作を受け付ける。この操作を受け付けると、通信装置1は、アクセスポイント2を経由して他の通信装置3に対して要求パケット(Echo Request)を送信する。他の通信装置3では、要求パケットを受信すると、アクセスポイント2を経由して通信装置1に対して応答パケット(Echo Reply)を返信する。通信装置1では、応答パケットを受信すると、pingの応答時間を取得する。
【0037】
このpingの応答を所定回数繰り返すと、通信装置1は、ステップS2において、第1往復遅延時間(第1RTT)を取得する。具体的には、通信装置1は、所定回数分のpingの応答時間の平均値や中央値等の任意の値を接続状態に基づき補正することで、第1往復遅延時間を取得する。また、通信装置1は、取得した第1往復遅延時間からスループットを算出する。
このようにしてスループットを算出すると、ステップS3において、通信装置1は、算出したスループットを所定の態様で出力し、処理を終了する。
【0038】
[測定結果例]
以上、第1実施形態の通信装置1について説明した。続いて、本発明者らが実際に行ったスループットの測定結果例を
図4に示す。本発明者らは、アクセスポイント2、アクセスポイント2に無線接続された他の通信装置3、及びアクセスポイント2に有線接続された映像配信装置(
図8(B)参照)の夫々に対して、通信装置1から要求パケットを送信し、往復遅延時間やスループットを算出した。
【0039】
図4(A)において、往復遅延時間101は、通信装置1と他の通信装置3との間のpingの応答時間であり、往復遅延時間101Aは、通信装置1と他の通信装置3との間のpingの応答時間を二分の一した時間である。また、往復遅延時間102は、通信装置1とアクセスポイント2との間のpingの応答時間であり、往復遅延時間103は、通信装置1と映像配信装置との間のpingの応答時間である。
また、往復遅延時間101A,102,103の夫々に基づいて算出したスループットを、
図4(B)では、夫々、スループット111A,112,113としている。
【0040】
図4(A)に示すように、往復遅延時間102,103を比較すると、アクセスポイント2に対して所定サイズ以上の要求パケットを送信した場合、フラグメント等の処理に時間がかかるため、映像配信装置に対して要求パケットを送信した場合よりも、応答時間が遅延する。その結果、
図4(B)に示すように、通信装置1とアクセスポイント2との間で算出されるスループット112は、通信装置1と映像配信装置との間で算出されるスループット113よりも遅くなる。
【0041】
また、
図4(A)の往復遅延時間101,103に示すように、アクセスポイント2に無線接続されている他の通信装置3を通信相手とする場合、無線区間が増えるため、映像配信装置を通信相手とする場合よりも、応答時間が遅延し、スループットも遅くなる(不図示)。
【0042】
他方、往復遅延時間101A,103に示すように、上記実施形態のように往復遅延時間101を補正した場合の往復遅延時間101Aは、往復遅延時間103と略一致することが確認できた。
その結果、
図4(B)に示すように、往復遅延時間101A,103に基づき算出されるスループット111A,113も略一致し、本実施形態の通信装置1により、無線区間のスループットを正確に測定できることが確認できた。
【0043】
[第1実施形態の効果]
以上説明した第1実施形態の通信装置1によれば、通信装置1は、アクセスポイント2と無線接続された他の通信装置3との間のpingの応答時間を、通信装置1,3とアクセスポイント2との接続状態に応じて補正することで、無線区間(通信装置1−アクセスポイント2間)のスループットを測定する。
これにより、フレームグリゲーションが動作するのに十分なサイズのパケットを用いてスループットを測定することができるため、無線区間のスループットを正確に算出することができる。
【0044】
[第2実施形態の概要]
続いて、通信装置1の第2実施形態について説明する。第1実施形態では、2つの通信装置1,3間のpingの応答時間を補正することで正確なスループットを算出することとしている。このような第1実施形態の方法では、ユーザ宅を訪れるサービス提供者が2台の通信装置1,3を持っていかなければならないが、第2実施形態では、2台の通信装置1,3を持っていくことに伴う煩わしさを更に解消することとしている。
【0045】
初めに、
図5を参照して、第2実施形態の概要について説明する。
無線区間のスループットの算出に他の通信装置3を用いる理由は、既に説明したように、アクセスポイント2のフラグメント等にかかる余分な時間による影響を除去するためである。第2実施形態では、先ず、ユーザ宅に訪れる前に、サービス提供者の社内設備等の第1無線環境下において当該余分な時間を算出しておき、ユーザ宅では、通信装置1とアクセスポイント2との間でのpingの応答時間を、算出しておいた時間で補正することで、1台の通信装置1のみで無線区間のスループットを算出する。
【0046】
具体的には、
図5(A)に示すように、同一の第1無線環境において、通信装置1と他の通信装置3との間で第1実施形態のように第1往復遅延時間を取得するとともに、通信装置1とアクセスポイント2との間で第2往復遅延時間を取得し、第1往復遅延時間と第2往復遅延時間の差分時間を算出する。
続いて、
図5(B)に示すように、ユーザ宅等の無線環境が異なる第2無線環境において、通信装置1とアクセスポイント2との間で第3往復遅延時間を算出し、第1無線環境で算出しておいた差分時間に基づいて補正する。
【0047】
ここで、差分時間は、同一の無線環境下で取得した第1往復遅延時間及び第2往復遅延時間から算出されているため、通信装置1等に比べてアクセスポイント2が余分にかかるフラグメント等の処理時間、言い換えると、無線環境に関係なく、アクセスポイント2のハードウェアに起因するアクセスポイント2に固有の時間をあらわしている。
そのため、通信装置1とアクセスポイント2との間で第3往復遅延時間を、アクセスポイント2に固有の差分時間に基づいて補正することで、他の通信装置3を用いることなく無線区間のpingの応答時間を正確に算出することができる。
【0048】
なお、以下に示す説明では、通信装置1は、通信装置1,3の間のpingの応答時間を補正することで第1往復遅延時間を取得することとしている。この点、サービス提供者の社内設備等の第1無線環境下であれば、アクセスポイント2に有線接続された映像配信装置が存在するため、通信装置1は、通信装置1及び映像配信装置間のpingの応答時間自体を第1往復遅延時間として取得することとしてもよい。
【0049】
[第2実施形態の通信装置1の構成]
図6は、第2実施形態の通信装置1の機能構成を示すブロック図である。なお、第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
図6に示すように、第2実施形態の通信装置1では、算出部133が取得部134、第1算出部135、第2算出部136及び第3算出部137を更に備える構成となっている。
【0050】
取得部134は、第1無線環境において、通信装置1と他の通信装置3との間、及び通信装置1とアクセスポイント2との間でpingの応答を行うことで、上述した第1往復遅延時間及び第2往復遅延時間を取得する。ここで、取得した第1往復遅延時間及び第2往復遅延時間は、差分時間の算出に用いられるところ、差分時間は、アクセスポイント2に固有の時間であるため、取得部134は、アクセスポイント2の種別(型番等)毎に第1無線環境における第2往復遅延時間を算出することが好ましい。
また、取得部134は、第2無線環境において、通信装置1とアクセスポイント2との間でpingの応答を行うことで、上述した第3往復遅延時間を取得する。
【0051】
第1算出部135は、同一の第1無線環境において取得した第1往復遅延時間と第2往復遅延時間との差分を差分時間として算出する。なお、第2往復遅延時間をアクセスポイント2の種別毎に取得している場合には、第1算出部135は、当該種別毎に差分時間を算出する。
【0052】
第2算出部136は、第2無線環境における第3往復遅延時間を、第1算出部135が算出した差分時間に基づいて補正(第3往復遅延時間−差分時間)することで、アクセスポイント2が余分にかかるフラグメント等の処理時間を除去した第4往復遅延時間を算出する。なお、アクセスポイント2に固有の処理時間を除去するためには、第2算出部136は、第3往復遅延時間を算出したアクセスポイント2と同一の種別のアクセスポイント2に対して予め算出しておいた差分時間に基づいて補正し、第4往復遅延時間を算出することが好ましい。
【0053】
第3算出部137は、第2算出部136が算出した第4往復遅延時間に基づいて、通信装置1とアクセスポイント2との間(無線区間)のスループットを算出する。なお、スループットの算出方法は、第1実施形態と同様である。
【0054】
[第2実施形態の通信装置1の処理]
以上、第2実施形態に係る通信装置1の構成について説明した。続いて、第2実施形態の通信装置1が無線区間のスループットを算出する際の処理の流れについて説明する。
図7は、第2実施形態の通信装置1の処理の流れを示すシーケンス図である。
【0055】
初めに、ステップS11において、通信装置1は、第1無線環境において測定開始操作を受け付ける。この操作を受け付けると、通信装置1は、アクセスポイント2を経由して他の通信装置3に対して要求パケット(Echo Request)を送信する。他の通信装置3では、要求パケットを受信すると、アクセスポイント2を経由して通信装置1に対して応答パケット(Echo Reply)を返信する。通信装置1では、応答パケットを受信すると、pingの応答時間を取得する。
他の通信装置3との間でpingの応答を所定回数繰り返すと、通信装置1は、ステップS12において、所定回数分の応答時間(平均値等)を接続状態に基づき補正(例えば、二分の一)することで、第1往復遅延時間(第1RTT)を取得する。
【0056】
続いて、通信装置1は、アクセスポイント2に対して要求パケット(Echo Request)を送信する。アクセスポイント2では、要求パケットを受信すると、通信装置1に対して応答パケット(Echo Reply)を返信する。通信装置1では、応答パケットを受信すると、pingの応答時間を取得する。
アクセスポイント2との間でpingの応答を所定回数繰り返すと、通信装置1は、ステップS13において、所定回数分の応答時間(平均値等)から第2往復遅延時間(第2RTT)を取得する。
【0057】
続いて、ステップS14において、通信装置1は、ステップS12で取得した第1往復遅延時間とステップS13で取得した第2往復遅延時間との差分を算出し、差分時間として保持する。
【0058】
その後、第2無線環境に移ると、ステップS21において、通信装置1は、測定開始操作を受け付ける。この操作を受け付けると、通信装置1は、第2無線環境を構築するアクセスポイント2に対して要求パケット(Echo Request)を送信する。アクセスポイント2では、要求パケットを受信すると、通信装置1に対して応答パケット(Echo Reply)を返信する。通信装置1では、応答パケットを受信すると、pingの応答時間を取得する。
第2無線環境において、アクセスポイント2との間でpingの応答を所定回数繰り返すと、通信装置1は、ステップS22において、所定回数分の応答時間(平均値等)から第3往復遅延時間(第3RTT)を取得する。
【0059】
続いて、ステップS23において、通信装置1は、ステップS22で取得した第3往復遅延時間をステップS14で算出した差分時間で補正することで、第4往復遅延時間(第4RTT)を算出する。また、通信装置1は、ステップS24において、算出した第4往復遅延時間からスループットを算出し、ステップS25において、算出したスループットを所定の態様で出力し、処理を終了する。
【0060】
[第2実施形態の効果]
以上説明した第2実施形態の通信装置1によれば、アクセスポイント2のフラグメント等の処理にかかる余分な時間(差分時間)を予め算出しておき、通信装置1に保持しておく。そして、無線区間のスループットを実際に測定する際に、通信装置1−アクセスポイント2間で取得した往復遅延時間を差分時間に基づいて補正することで、アクセスポイント2に固有の余分な時間を除去する。
これにより、1台の通信装置1のみで無線区間のスループットを正確に算出することができる。
【0061】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。特に、装置の分散・統合の具体的な実施形態は以上に図示するものに限られず、その全部又は一部について、種々の付加等に応じて、又は、機能負荷に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。
【解決手段】通信装置1は、アクセスポイント2に無線接続された他の通信装置3に対して要求パケットを送信する送信制御部131と、要求パケットに対する応答パケットを他の通信装置3から受信する受信制御部132と、要求パケットを送信してから応答パケットを受信するまでの時間を、自身とアクセスポイント2との接続状態及び他の通信装置3とアクセスポイント2との接続状態に応じて補正した第1往復遅延時間に基づいて、無線区間のスループットを算出する算出部133とを備える。