(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1記載の分岐コネクタにおいて、上記ケーブル保持手段は、上記ケーブルを挿入保持する、該ケーブルの全径が収まる深さのケーブル保持溝であって、該ケーブル保持溝の内面には、該ケーブル保持溝に挿入したケーブルのケーブル延長方向の移動及び該ケーブル保持溝からの離脱に抵抗を与える脱落防止突起が形成されている分岐コネクタ。
請求項2記載の分岐コネクタにおいて、上記ケーブル保持溝は、上記一対の分割ハウジングが閉じられた状態で、上記中継コンタクトを中心としてケーブル延長方向の両側に位置するように形成されている分岐コネクタ。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら本発明の一実施形態について説明する。なお、以下の説明中の前後、左右、及び上下の方向は、図中の矢印の方向を基準としている。
本実施形態の分岐コネクタ10は、大きな構成要素として絶縁ハウジング15と中継コンタクト50を具備している。
絶縁ハウジング15は絶縁性の合成樹脂材料により構成した一体成形品であり、第一分割ハウジング16、第二分割ハウジング30、及び第一分割ハウジング16と第二分割ハウジング30を接続する連結部としての第一、第二接続部46、47を一体的に具備している。
【0019】
第一分割ハウジング16の厚み方向の一方の面(
図1の上面)の外周縁部には外周壁17が形成してあり、外周壁17の一方の面(
図1の上面)は平面からなる外周側第一対向面17aにより構成してある。第一分割ハウジング16の外周壁17(外周側第一対向面17a)より内周側は、外周側第一対向面17aより(
図1、
図3の下方へ)一段凹んだ内周側凹部17bにより構成してあり、内周側凹部17bの底面(
図1、
図3の上面)は外周側第一対向面17aと平行な平面からなる内周側第一対向面17cにより構成してある。この内周側第一対向面17cより内周側に位置する中央部分は、内周側第一対向面17cより(
図1、
図3の下方へ)一段凹んだ中央第一凹部17dにより構成してあり、中央第一凹部17dの底面(
図1、
図3の上面)は外周側第一対向面17aと平行な平面からなる中央第一対向面17eにより構成してある。中央第一凹部17dと中央第一対向面17eにより、コンタクト取付溝18が形成してある。コンタクト取付溝18は、固定部18aと、固定部18aの左右方向中間に位置し、固定部18aの前後幅を狭めて固定部18aを左右一対に区切る中間凸部18bと、を有している。一対の固定部18aの底面(中央第一対向面17e)には略円柱形状の位置決め突起18cが突設してある。
第一分割ハウジング16の外周壁17の外周側第一対向面17aには、一方の固定部18aの前後両側に位置しかつ互いに同一直線上に位置する一対の第一ケーブル取付溝19と、他方の固定部18aの前後両側に位置しかつ互いに同一直線上に位置する(第一ケーブル取付溝19と平行をなす)一対の第二ケーブル取付溝20と、が凹設してある。第一ケーブル取付溝19及び第二ケーブル取付溝20の正面形状は半円形である。第一分割ハウジング16の外周壁17の前後面には、前後の第一、第二ケーブル取付溝19、20より下方位置から前後方向に延びた平板状の蓋部21と22が設けてある。蓋部21と22の対向面21aと22a(
図1乃至
図4の上方の面)は、第一、第二ケーブル取付溝19、20の最深底面と同一の高さに位置する。蓋部21と22は、対向面21aと22aの左右側両縁部と外周壁17の前後面との間に、外周側第一対向面17aから対向面21aと22aに向かって傾斜した傾斜面21b、22bを有する三角補強材が設けてある。
第一分割ハウジング16の一方の側面(展開状態で第二分割ハウジング30と反対側の側面)には、一つのロック用突起25(ロック手段)と、2つの仮ロック用突起26(仮保持手段)が突設してある(
図9参照)。さらに第一分割ハウジング16の当該側面と反対側の側面(展開状態で第二分割ハウジング30側の側面)には一つのロック用突起27が突設してある。
【0020】
第二分割ハウジング30の厚み方向の一方の面(
図1の上面)の外周縁部には外周壁31が突設してあり、外周壁31の一方の面(
図1の上面)は平面からなる外周側第二対向面31aにより構成してある。第二分割ハウジング30の外周壁31(外周側第二対向面31a)より内周側に位置する部分は外周壁31より一段凹んだ内周側凹部31bにより構成してあり、内周側凹部31bの一方の面(
図1の上面)は外周側第二対向面31aと平行な平面からなる内周側第二対向面31cにより構成してある。内周側第二対向面31cには、左右一対の断面U字形の第一、第二押圧溝32a、32bを有するケーブル押圧突起32が突設してある。さらに内周側第二対向面31cには、各ケーブル押圧突起32の前後両側に左右一対としてそれぞれ形成した計8つの金具進入溝(図示せず)が凹設してある。ケーブル押圧突起32は、中央突起32cと、中央突起32cの左右方向両側に突起32d、32eを有し、中央突起32cと一方の突起32dとの間に第一押圧溝32a、中央突起32cと他方の突起32eとの間に第二押圧溝32bが形成してある。
【0021】
内周側第二対向面31cには、ケーブル押圧突起32の第一押圧溝32aの前後両側に位置しかつ互いに同一直線上(及び第一押圧溝32aと同一直線上)に位置する一対の第一ケーブル取付溝33と、ケーブル押圧突起32の第二押圧溝32bの前後両側に位置しかつ互いに同一直線上(及び第二押圧溝32bと同一直線上)に位置する(第一ケーブル取付溝33と平行をなす)第二ケーブル取付溝34が凹設してある。前側の第一ケーブル取付溝33及び第二ケーブル取付溝34は第二分割ハウジング30の外周壁31の前壁を貫通しており、後側の第一ケーブル取付溝33及び第二ケーブル取付溝34は外周壁31の後壁を貫通している。第一ケーブル取付溝33及び第二ケーブル取付溝34の断面形状は半円形である。
【0022】
第二分割ハウジング30には、前後面から突出するケーブル支持腕部35と36が形成してある。外周壁31の外周側第二対向面31a及びケーブル支持腕部35と36の上面(
図1乃至3において上方の面)には、第一と第二ケーブル取付溝33と34と同一直線上に位置する第一ケーブル保持溝35a、36aと第二ケーブル保持溝35b、36bが設けてある。前方側のケーブル支持腕部35及び後方側のケーブル支持腕部36は、第一ケーブル保持溝35a及び36aの前端側部分及び後側部分(
図3、
図4及び
図6の前方側及び後方側)が、左右に空隙37c、38cにより分離分割した一対の突出片37aと37a及び一対の突出片38a、38bによって形成してある。同様に前方側のケーブル支持腕部35及び後方側のケーブル支持腕部36は、第二ケーブル保持溝35b及び36bの前端側及び後端側(
図3、
図4及び
図6の前方側及び後方側)部分が、左右に空隙37dと38dにより分離分割した一対の突出片37bと37b及び一対の突出片38bと38bによって形成してある。各一対の突出片37a、38a、37b、38b、特にケーブル支持腕部35と36の左右外側の突出片は、左右方向に弾性的に撓み、間隔(空隙37c、38c、37d、38dの左右方向の幅)が可変である。各一対の突出片37a、38a、37b、38bは、前後端部の下端部から、互いに対向する爪部が突設してある。第一ケーブル保持溝35a、35bと第二ケーブル保持溝35bと36bは、第一、第二ケーブル60、65を全径に渡って挿入
保持する(全径が収まる)深さの溝である。
【0023】
第一ケーブル保持溝35aと36aの前後端部の上方開口部寄り(突出片37aと38aの各対向面)には、一対の脱落防止突起35c、35cと一対の脱落防止突起36c、36cとが設けてある。同様に第二ケーブル保持溝35b、36bの前後端部の上方開口部寄り(突出片37bと38bの各対向面)には、一対の脱落防止突起35d、35dと一対の脱落防止突起36d、36dが設けてある。脱落防止突起35cと36c及び35dと36dは、第一及び第二ケーブル60及び65が第一及び第二ケーブル保持溝35aと36a及び35bと36bに挿入されるのを、各一対の突出片37a、38a及び一対の突出片37b、38bが左右方向の間隔(一対の脱落防止突起35c、36c、35d、36dの間隔)が広がるように撓んで許容する。
【0024】
第一及び第二ケーブル60及び65が第一及び第二ケーブル保持溝35aと36a及び35bと36bに挿入されると、一対の脱落防止突起35c、36c及び35d、36dが第一及び第二ケーブル60及び65を挟圧するように、各一対の突出片37a、38a及び一対の突出片37b、38bが弾性的に左右方向の間隔が狭まる方向に撓む。したがって、第一及び第二ケーブル保持溝35aと36a及び35bと36bに挿入された第一及び第二ケーブル60及び65がケーブル延長方向に移動しようとするのを抵抗を与えつつ許容し、かつ第一及び第二ケーブル保持溝35aと36a及び35bと36bから離脱しようとする力に抵抗を与えて容易に抜けないように抜け止めとして作用しつつ、一定以上の外力による離脱を可能とする。この抜止作用は、第二分割ハウジング30の上下(表裏)を反転させても維持される。
【0025】
ケーブル支持腕部35と36の第一と第二ケーブル保持溝35aと35bは、上方(
図1、
図3の上方)の開口を規制する突出片37a、38a、37b、38bの上面が、外周側第二対向面31aより上方に位置し、かつ外周側第二対向面31aと平行な平面である中央対向面35eと36eと、外周側第二対向面31aから前後方向上方に傾斜した対向斜面35fと36f及び対向斜面35fと36fを経て、中央対向面35eと36eと同一平面上に位置する外側対向面35gと36gを形成している。
【0026】
第二分割ハウジング30の側面(展開状態で第一分割ハウジング16とは反対側の側面)には第一突片39が突設してあり、第一突片39に形成した貫通孔40の内面には係合突起41(ロック手段)が突設してある。第一突片39のケーブル押圧突起32側の面には、貫通孔40の前後両側縁部とそれぞれ連続する前後一対の仮ロック溝39a(仮保持手段)が凹設してある(
図2、
図4、
図10参照)。仮ロック溝39aは第一突片39の突出方向(
図2では上下方向)に沿って延びており、その係合突起41側の端部(
図2では上端部)は閉塞している。さらに第二分割ハウジング30の第一突片39と反対側の側面には第二突片42が突設してあり、第二突片42には貫通孔43が形成してある。この第二突片42の突出量(
図1、
図3の上下寸法)は第一突片39より小さい。
【0027】
第一分割ハウジング16と第二分割ハウジング30は、第一分割ハウジング16側から直線的に延びる前後一対の第一接続部46と、第二分割ハウジング30側から直線的に延びる前後一対の第二接続部47と、第一接続部46と第二接続部47を接続する屈曲容易部48によって連結されている。前後一対の第一接続部46と前後一対の第二接続部47は、展開状態で互いに同一平面上に位置する。
【0028】
図6等に示すように屈曲容易部48は、前後の第一接続部46及び第二接続部47より薄肉としてある。前後の第一接続部46と第二接続部47は、前後方向(第一ケーブル60及び第二ケーブル65の分岐コネクタ10に支持された部位の延長方向と平行又は略平行な方向)に延びる屈曲容易部48を折曲げ線として、
図1、
図3等において谷折り(第一分割ハウジング16の外周側第一対向面17aと第二分割ハウジング30の外周側第二対向面31aが接近する方向に折曲げ)可能(容易)である。さらに第一接続部46は、第二接続部47より曲げ剛性が小さく設定されている。
【0029】
第一分割ハウジング16、第一接続部46、屈曲容易部48、第二接続部47及び第二分割ハウジング30は、
図1−
図7に示す展開状態(第一分割ハウジング16、第二分割ハウジング30、第一接続部46及び第二接続部47が同一平面上に位置する状態)にしたときに、自律的にこの展開状態を維持する程度の強度(剛性)を備えている。
【0030】
中継コンタクト50は、ばね弾性を備えた銅合金(例えばリン青銅、ベリリウム銅、チタン銅)やコルソン系銅合金の薄板を順送金型(スタンピング)を用いて図示形状に成形加工したものであり、表面にニッケルメッキで下地を形成した後に、錫銅めっきや錫めっき(あるいは金めっき)を施している。
【0031】
中継コンタクト50は、左右方向に延びる平板状の基片51と、基片51の前後両側縁部の一方の端部に突設した基片51に対して直交する方向に延びる平板状の一対の第一ケーブル圧接片52と、基片51の前後両側縁部の他方の端部に突設した基片51に対して直交する方向に延びる平板状の一対の第二ケーブル圧接片54と、を一体的に備えている。基片51の左右二か所には円形の位置決め孔51aが形成してある。前後の第一ケーブル圧接片52と第二ケーブル圧接片54には、基片51側に向かって直線的に延びるスリットからなる第一圧接用溝53と第二圧接用溝55がそれぞれ形成してある。第一圧接用溝53の状態開口部は先端部52aにより上方に向かって広がる略V字状に形成され、第二圧接用溝55の上端開口部は先端部54aにより上方に向かって広がる略V字状に形成されている。
【0032】
前後一対の第一ケーブル圧接片52と第二ケーブル圧接片54は、幅狭部(くびれ部)52bと54bを介して基片51と接続されている。左右方向に位置する第一ケーブル圧接片52と第二ケーブル圧接片54の対向縁部の間隔は、幅狭部52bと54bの対向縁部の間隔より狭い。幅狭部52bと54bの間には、遊び部51bが設けてある。第一ケーブル圧接片52と第二ケーブル圧接片54の間には、インシュレーター等、他の部材が介在しない。
【0033】
中継コンタクト50は、第一ケーブル60及び第二ケーブル65を導通接続するものである。
第一ケーブル60と第二ケーブル65は、導電性及び可撓性を有する材料(例えば銅やアルミニウム)からなる芯線61、66(撚り線や単線)の表面をチューブ状かつ可撓性及び絶縁性を有する被覆62、67でそれぞれ覆ったものである。第一ケーブル60は配線対象物(例えば自動車等)の内部に最初から配線しかつ配線対象物の電源と接続するケーブルである。一方、第二ケーブル65は第一ケーブル60に対して後から追加で接続するケーブルであり、その一端(前端)には電子機器や電気機器(例えばカーナビゲーションシステム)等が接続してある。
【0034】
絶縁ハウジング15、中継コンタクト50、第一ケーブル60、及び第二ケーブル65を一体化して、第一ケーブル60と第二ケーブル65を電気的に接続しながら分岐コネクタ10を組み立てるには、まず組み立て作業者が手等により
図3、
図4に示す展開状態にある第一分割ハウジング16のコンタクト取付溝18に対して中継コンタクト50の下部を嵌合する。具体的には、遊び部51bを中間凸部18bに嵌合させながら基片51をコンタクト取付溝18の底部に嵌合し、さらに第一ケーブル圧接片52の基片51側の半部(
図1−
図4では下半部)を対応する固定部18aに嵌合しかつ第二ケーブル圧接片54の基片51側の半部を対応する固定部18aに嵌合する。すると基片51の一対の位置決め孔51aに対して第一分割ハウジング16の一対の位置決め突起18cが嵌合するので(
図2、
図10、
図12)、中継コンタクト50が第一分割ハウジング16に対して位置決めされる。中継コンタクト50を第一分割ハウジング16に取り付けると、前後の第一ケーブル取付溝19を通る軸線上に前後の第一圧接用溝53が位置し、かつ、前後の第二ケーブル取付溝20を通る軸線上に前後の第二圧接用溝55が位置する。
【0035】
続いて、組み立て作業者が手等により、第一ケーブル60及び第二ケーブル65を共に前後方向に延びるようにケーブル押圧突起32の第一と第二押圧溝32aと32bに位置合わせし、前後の脱落防止突起35cと36c、35dと36dによる抵抗に抗して押込む(
図2、
図7参照)。その際、各突出片37a、38a、37b、38bは弾性力に抗して撓み、対向する脱落防止突起35cと36c、35dと36dの間隔を広げる。第一ケーブル60及び第二ケーブル65が第一ケーブル保持溝35aと36a及び第二ケーブル保持溝35bと36bに押し込まれると、対向する脱落防止突起35cと36c、35dと36dの間隔が狭まり、第一ケーブル60及び第二ケーブル65が第一ケーブル保持溝35aと36aの底部及び第二ケーブル保持溝35bと36bの底部と脱落防止突起35cと36c及び35dと36dの間に挟持される。これにより第一ケーブル60及び第二ケーブル65は、ケーブル延長方向の移動が抵抗を受けながら可能なので、
図1、
図2及び
図7に示した展開状態の分岐コネクタ10に対する第一ケーブル60及び第二ケーブル65の延長方向の位置調整が可能である。第一ケーブル60及び第二ケーブル65が第一ケーブル保持溝35aと36a及び第二ケーブル保持溝35bと36bから離脱しようとすると離脱を阻止する抵抗を受けるので、分岐コネクタ10を上下逆さまにしても、第一ケーブル60及び第二ケーブル65が、第一ケーブル保持溝35aと36a、及び第二ケーブル保持溝35bと36bから容易に抜け落ちない。また、第一ケーブル60及び第二ケーブル65は、一定以上の付勢力により第一ケーブル保持溝35aと36a及び第二ケーブル保持溝35bと36bから離脱させることが可能なので、分岐コネクタ10の交換、分岐コネクタ10に着脱する第一、第二ケーブルの変更が容易である。
【0036】
第一ケーブル60及び第二ケーブル65を左右方向(第一ケーブル60及び第二ケーブル65の分岐コネクタ10によって支持される部位の延長方向に対して直交又は略直交)に並べ、第一ケーブル保持溝35aと36aに嵌合保持した状態のまま、第二分割ハウジング30の外周側第二対向面31aが第一分割ハウジング16の外周側第一対向面17aに対向するように、前後の屈曲容易部48を中心に第二分割ハウジング30(前後の第二接続部47)を第一分割ハウジング16(前後の第一接続部46)に対して接近するように回転させる。すると、第一突片39より突出量(上下寸法)が小さい第二突片42の第一突片39側先端に形成した傾斜面がロック用突起27の上部に形成した傾斜面に当接し、さらに第二接続部47側に位置するケーブル押圧突起32の第一押圧溝32aが、第二ケーブル65の中間部を第二ケーブル圧接片54の第二圧接用溝55の奥側(下方)に僅かに押し込みながら前後の第二ケーブル圧接片54の間の空間に入り込む。
【0037】
手等により第二分割ハウジング30を前後の屈曲容易部48を中心に第一分割ハウジング16に対して接近する方向にさらに回転させると、第二突片42は
右方向(ロック用突起27が突出する方向)への微小な弾性変形を伴いながらロック用突起27の傾斜面を
右斜め下方へ摺動し、第一接続部46及び第二接続部47が弾性変形し始める。その際、第二接続部47に比べて弾性変形し易い(撓み易い)第一接続部46の先端が下方に変位するため、屈曲容易部48の位置(折り曲げ位置)も下方に移動して第二分割ハウジング30が第一分割ハウジング16と略平行状態となりながら第一分割ハウジング16側に接近する。
さらに第二接続部47と反対側に位置するケーブル押圧突起32の第一押圧溝32aが、第一ケーブル60の中間部を第一ケーブル圧接片52の先端部52aに対して第一圧接用溝53の延出方向又はこれに近い方向に押し当てるので、第一ケーブル60が先端部52aとケーブル押圧突起32とによって挟持される。
【0038】
第二分割ハウジング30を第一分割ハウジング16側へさらに回転させると、第一分割ハウジング16の前後の仮ロック用突起26が第一突片39の前後の仮ロック溝39aに嵌合して仮ロック溝39aの下端面と係合する(
図10)。このように前後の仮ロック用突起26と仮ロック溝39aが係合することにより第一分割ハウジング16と第二分割ハウジング30は
図10に示す仮保持状態となる。これにより、圧接前(中継コンタクト50に対して芯線61、66が接触する前)の第一ケーブル60及び第二ケーブル65が第二分割ハウジング30(第一ケーブル保持溝35a、36aと第一押圧溝32a、及び第二ケーブル保持溝35b、36bと第二押圧溝32b)と、中継コンタクト50の先端部52a、54aとにより挟持されるとともに、第二分割ハウジング30が第一ケーブル60及び第二ケーブル65から受ける反力によって第一分割ハウジング16に対して開いてしまうことを防止できる。
【0039】
図10に示したように、絶縁ハウジング15が仮保持状態になると、第二接続部47及び第二分割ハウジング30(外周側第二対向面31a)が水平面(第一分割ハウジング16の外周側第一対向面17a及び内周側第一対向面17c)と略平行になるので、このときの第二接続部47と反対側のケーブル押圧突起32の第一押圧溝32aによる第一ケーブル60の押圧方向は第二接続部47側のケーブル押圧突起32の第二押圧溝32bによる第二ケーブル65の押圧方向と略平行となる。より詳細には、ケーブル押圧突起32の第一と第二押圧溝32aと32bによる第一ケーブル60と第二ケーブル65の押圧方向は上下方向と略平行となる。このように第二接続部47及び第二分割ハウジング30が水平面と略平行になった状態で仮ロック用突起26と仮ロック溝39aが係合すると、第一分割ハウジング16に対して第二分割ハウジング30が大きく傾斜する場合と比べて、第一ケーブル60と第二ケーブル65が中継コンタクト50によって安定した状態で略均等に支持される。
【0040】
また、第一ケーブル60と第二ケーブル65はケーブル押圧突起32の第一ケーブル保持溝35aと36a及び35bと36bによって保持されており、作業者が別作業の準備のために分岐コネクタ10(絶縁ハウジング15)から手を離したとしても上記仮保持状態が解除されることがないので、(仮保持されない場合と比べて)分岐コネクタ10の組立作業性(第一ケーブル60と第二ケーブル65の接続作業性)が良好である。
さらにこの仮保持状態では、第一分割ハウジング16(外周側第一対向面17a)及び第二分割ハウジング30(外周側第二対向面31a)は互いに離れた状態にあるため、作業者は第一ケーブル60と第二ケーブル65が中継コンタクト50の先端部52a、54aで形成された第一、第二圧接用溝53、55のV字溝内に正しく載置されているか否かを、第一分割ハウジング16(外周側第一対向面17a)及び第二分割ハウジング30(外周側第二対向面31a)の間に形成された隙間から視認できる。
【0041】
第一ケーブル60と第二ケーブル65が中継コンタクト50の先端部52a、54aに載置されていること(第一圧接用溝53と第二圧接用溝55の真上に位置すること)を確認した後に、図示を省略した一般的な工具(例えば、プライヤー)によって第一分割ハウジング16及び第二分割ハウジング30をそれらの外周側第一対向面17a、外周側第二対向面31aどうしが接近する方向に略平行に押圧して、係合突起41をロック用突起25に対して係合させかつ第二突片42の上端とロック用突起27の下端とを係合させる(第一分割ハウジング16のロック用突起27を第二突片42の貫通孔43に係合させる)(
図11、
図12参照)。これにより第一分割ハウジング16と第二分割ハウジング30は外周側第一対向面17aと外周側第二対向面31aが面接触し(又は微小隙間を形成しながら対向し)、さらに自由状態(直線状態)に復帰した第一接続部46と第二接続部47の対向面どうしが面接触(又は微小間隔を形成しながら対向)する。その結果絶縁ハウジング15は、第一ケーブル取付溝19、33と第二ケーブル取付溝20、34が第一ケーブル60の被覆62と第二ケーブル65の被覆67の二つの部位にそれぞれ嵌り込んだ(接触した)閉状態に保持(ロック)される。
【0042】
さらにケーブル押圧突起32は、第一ケーブル60及び第二ケーブル65の中間部を第一、第二圧接用溝53、55の奥側(底面側)にさらに押し込むので、第一ケーブル60が先端部52aから第一圧接用溝53の略中央部まで押し込まれかつ第二ケーブル65が先端部54aから第二圧接用溝55の略中央部まで押し込まれる。このとき、ケーブル押圧突起32の第一と第二押圧溝32aと32bによる第一ケーブル60と第二ケーブル65の押圧方向が上下方向(第一圧接用溝53及び第二圧接用溝55の延長方向)と略平行となる。さらにこのとき、第一ケーブル圧接片52及び第二ケーブル圧接片54の先端部52a、54a(
図1−
図4では上端部)が第二分割ハウジング30の各金具進入溝に嵌合するので、金具進入溝の内面によって、第一ケーブル圧接片52及び第二ケーブル圧接片54の第一圧接用溝53と第二圧接用溝55の両側に位置する部位の外側(互いに離れる方向)への開き動作(第一圧接用溝53と第二圧接用溝55の幅が広がる)のが規制される。そのため、第一圧接用溝53の内面(左右両面)によって第一ケーブル60の被覆62の左右両側部が確実に破られかつ第二圧接用溝55の内面(左右両面)によって第二ケーブル65の被覆67の左右両側部が確実に破られる。従って、絶縁ハウジング15が閉状態に保持されたときに、第一圧接用溝53の内面(一対の対向面)が芯線61の両側部に対して均等且つ確実に接触(圧接)し、かつ第二圧接用溝55の内面(一対の対向面)が芯線66に対して均等且つ確実に接触(圧接)し、分岐コネクタ10の内部において第一ケーブル60の芯線61と第二ケーブル65の芯線66が中継コンタクト50を介して互いに電気的に導通する。
【0043】
また、芯線61、66の両側部の一方に対して第一圧接用溝53や第二圧接用溝55の内面が過度に強く当たることがないので、芯線61、66の一部が第一圧接用溝53や第二圧接用溝55によって切断されることがない。そのため芯線61、66の機械的強度が低下しないので、第一ケーブル60や第二ケーブル65に引張力が作用しても芯線61、66が完全に切断するおそれは小さい。従って、第一ケーブル60及び第二ケーブル65と中継コンタクト50の接触信頼性を高めることが可能である。
【0044】
第一分割ハウジング16と第二分割ハウジング30が閉状態に(嵌め合わされて)保持(ロック)された状態では、第一分割ハウジング16の蓋部21と22の対向面21aと22aが、第一ケーブル保持溝35a、36aと第二ケーブル保持溝35b、36bの開口部(
図1ないし
図4の上方の開口部)を塞いでいる。より詳細には、蓋部21と22の対向面21aと22aが、第一と第二ケーブル60と65の外周面及び中央対向面35eと36e、外側対向面35gと36gに線接触及び面接触(又は微小間隔を形成しながら対向)し、蓋部21と22の傾斜面21bと22bが対向斜面35fと36fに面接触(又は微小間隔を形成しながら対向)している。このように構成すると、第一分割ハウジング16と第二分割ハウジング30が閉状態(ロック状態)となったときに、第一分割ハウジング16と第二分割ハウジング30の外周側第一対向面17aと外周側第二対向面31aに密着し、第一ケーブル60や第二ケーブル65の被覆62、67の表面に(中継コンタクト50との電気的導通を妨げることなく)密着するので、仮に分岐コネクタ10の外側において加わった外力によって第一ケーブル60や第二ケーブル65が振られて屈曲したとしても、第一ケーブル60や第二ケーブル65の屈曲に起因する動きや応力が中継コンタクト50との圧接部に伝達することを抑止し、接触信頼性を維持できる。
【0045】
中継コンタクト50は、第一、第二ケーブル圧接片52、54と基片51とを幅狭部52b、54bで接続し、第一ケーブル圧接片52と第二ケーブル圧接片54の隙間(間隔)が狭く、この隙間にインシュレータ等が配置されないので、中継コンタクト50の大きさ、特に左右方向の幅が小さくなり、小型軽量化が可能である。
【0046】
第一分割ハウジング16と第二分割ハウジング30を閉状態にしたとき(嵌め合わせたとき)に、第一分割ハウジング16の外周側第一対向面17aや内周側第一対向面17cと第二分割ハウジング30の外周側第二対向面31aや内周側第二対向面31cとが接触せずに微小な隙間を形成しながら対向する可能性がある。そこで、本発明の他の実施形態では、
図12、
図13に示したように、第一分割ハウジング16の内周側凹部17bに、防水用ゲル70を介在(嵌合)させた。防水用ゲル70は、平面形状が内周側第一対向面17cと同一であって、中継コンタクト50の周囲を囲む角筒形状に形成されている。防水用ゲル70の高さは、第一分割ハウジング16と第二分割ハウジング30を閉じたときに、第一、第二ケーブル60、65に接触する部分が変形して、第一、第二ケーブル60、65の外周に密着し、かつ第二分割ハウジング30の内周側第二対向面31cに密着する高さである。このように構成すると第一分割ハウジング16と第二分割ハウジング30が閉状態(ロック状態)となったときに、防水用ゲル70が、第一、第二分割ハウジング16、30の内周側第一対向面17cと内周側第二対向面31cに密着して中継コンタクト50の周囲を密閉し、第一ケーブル60や第二ケーブル65の被覆62、67の表面に(中継コンタクト50との電気的導通を妨げることなく)密着するので、水や埃などが第一ケーブル60及び第二ケーブル65の芯線61、66に接触するおそれをさらに低減できる。
【0047】
また、防水用ゲル70が第一ケーブル60及び第二ケーブル65に密着するので、仮に分岐コネクタ10の外側において加わった外力によって第一ケーブル60や第二ケーブル65が振られて屈曲したとしても、第一ケーブル60や第二ケーブル65の屈曲に起因する動きや応力が中継コンタクト50との圧接部に伝達することを抑止し、接触信頼性を維持できる。
【0048】
防水用ゲル70には、その上面(
図12、
図13の上方の面)に、第一分割ハウジング16と第二分割ハウジング30を閉じたときに第一、第二ケーブル60、65が嵌合する半円状の嵌合溝を予め形成してもよい。半円状の嵌合溝により、防水用ゲル70と第一、第二ケーブル60、65との密着度が高くなる。
【0049】
以上、本発明を上記各実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形を施しながら実施可能である。
本実施形態では第一、第二ケーブル60、65の脱落を防止する脱落防止突起35cと36c、35dと36dを第一ケーブル保持溝35a、36aと第二ケーブル保持溝35b、36bに設けたが、脱落防止突起は、ケーブル押圧突起32の第一押圧溝32aと第二押圧溝32bに設けてもよい。
【0050】
中継コンタクト50は、第二ケーブル65を圧接するタイプであるが、第二ケーブル65を圧着するタイプであってもよい。この場合、第二ケーブル65は、予め中継コンタクト50に圧着接続しておき、この状態で中継コンタクト50を第一分割ハウジング16に装着する。この実施形態では、中継コンタクト50の一対の第一と第二圧接用溝53と55の一方の代わりに、ケーブル圧着端子を形成する。第二分割ハウジング30には、残存する圧接用溝に対応させて一つのケーブル支持腕部35または36を設ける。
【0051】
逆に、各ケーブルの分岐コネクタ10によって支持された部位の延長方向に対して直交又は略直交する方向に並べた3本以上のケーブルを分岐コネクタ10で接続してもよい。この場合は一つの中継コンタクトに(左右方向に並んだ)三対以上の圧接用溝を形成してもよい。また、複数の中継コンタクトのそれぞれに圧接用溝を形成し、少なくとも一つの中継コンタクトに二対以上の圧接用溝を形成し、各圧接用溝にケーブル(芯線)を圧接してもよい。
【0052】
(単一又は複数の)中継コンタクトが3つ以上の圧接用溝を備える場合に、第一分割ハウジングの左右二か所に二つの第二分割ハウジングを接続部を介して回転可能に接続し、少なくとも一方の第二分割ハウジングによって複数のケーブルを押圧(中継コンタクトに対して圧接)するようにしてもよい。
【課題】接続部で接続された一対の分割ハウジングを閉じる前の状態において、中継コンタクトを有しない側の分割ハウジングにケーブルを確実に保持することができる分岐コネクタを提供する。
【解決手段】接続部で接続された開閉可能な一対の分割ハウジング;及び上記一対の分割ハウジングのいずれか一方に支持された、圧接用溝を有する中継コンタクト;を備え、上記一対の分割ハウジングを嵌め合わせたときに上記中継コンタクトの圧接用溝内に導電性の芯線の外周部を絶縁性の被覆で覆ったケーブルを挿入し絶縁性被覆を切断して導通させる分岐コネクタにおいて、上記中継コンタクトを備えない分割ハウジングに形成した、上記中継コンタクトの圧接用溝に圧接するケーブルを抜止保持するケーブル保持溝;を有する分岐コネクタ。