特許第5966097号(P5966097)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オリンパス株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5966097-内視鏡リプロセッサ 図000002
  • 特許5966097-内視鏡リプロセッサ 図000003
  • 特許5966097-内視鏡リプロセッサ 図000004
  • 特許5966097-内視鏡リプロセッサ 図000005
  • 特許5966097-内視鏡リプロセッサ 図000006
  • 特許5966097-内視鏡リプロセッサ 図000007
  • 特許5966097-内視鏡リプロセッサ 図000008
  • 特許5966097-内視鏡リプロセッサ 図000009
  • 特許5966097-内視鏡リプロセッサ 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5966097
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】内視鏡リプロセッサ
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/12 20060101AFI20160728BHJP
   G02B 23/24 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
   A61B1/12
   G02B23/24 Z
【請求項の数】4
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-559061(P2015-559061)
(86)(22)【出願日】2015年9月16日
(86)【国際出願番号】JP2015076296
【審査請求日】2015年12月3日
(31)【優先権主張番号】特願2015-23439(P2015-23439)
(32)【優先日】2015年2月9日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076233
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 進
(74)【代理人】
【識別番号】100101661
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100135932
【弁理士】
【氏名又は名称】篠浦 治
(72)【発明者】
【氏名】高田 拓生
【審査官】 佐藤 高之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−076143(JP,A)
【文献】 特開2009−119061(JP,A)
【文献】 特開2009−118962(JP,A)
【文献】 特開2010−119592(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00−1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡を収容して薬液に接触させる処理槽と、
前記処理槽に貯められた前記薬液の温度を測定する処理槽温度測定部と、
前記処理槽よりも前記薬液の貯留容積が大きい薬液タンクと、
前記薬液タンク内部の前記薬液を加温する加温部と、
前記加温部により加温された前記薬液の一部を前記薬液タンクから前記処理槽に移送する第1移送部と、
前記処理槽の前記薬液を前記薬液タンクに移送する第2移送部と、
前記処理槽温度測定部、前記第1移送部および前記第2移送部に接続されており、前記処理槽温度測定部による測定結果が所定の閾値よりも低い場合、前記処理槽温度測定部による測定結果が所定期間変化しなくなるまで、前記第1移送部および前記第2移送部を制御して前記処理槽と前記薬液タンクとの間で前記薬液を循環させる制御部と、
を含むことを特徴とする内視鏡リプロセッサ。
【請求項2】
内視鏡を収容して薬液に接触させる処理槽と、
前記処理槽に貯められた前記薬液の温度を測定する処理槽温度測定部と、
前記処理槽よりも前記薬液の貯留容積が大きい薬液タンクと、
前記薬液タンク内部の前記薬液を加温する加温部と、
前記加温部により加温された前記薬液の一部を前記薬液タンクから前記処理槽に移送する第1移送部と、
前記処理槽の前記薬液を前記薬液タンクに移送する第2移送部と、
前記薬液タンクに貯められた前記薬液の温度を測定する薬液タンク温度測定部と
前記処理槽温度測定部、前記薬液タンク温度測定部、前記第1移送部および前記第2移送部に接続されており、前記処理槽温度測定部による測定結果が所定の閾値よりも低い場合、前記処理槽と前記薬液タンクとの温度差が所定範囲に収まるまで、前記第1移送部および前記第2移送部を制御して前記処理槽と前記薬液タンクとの間で前記薬液を循環させる制御部と、
を含むことを特徴とする内視鏡リプロセッサ。
【請求項3】
内視鏡を収容して薬液に接触させる処理槽と、
前記処理槽よりも前記薬液の貯留容積が大きい薬液タンクと、
前記薬液タンクに貯められた前記薬液の温度を測定する薬液タンク温度測定部と、
前記薬液タンク内部の薬液を加温する加温部と、
前記加温部により加温された前記薬液の一部を前記薬液タンクから前記処理槽に移送する第1移送部と、
前記処理槽の前記薬液を前記薬液タンクに移送する第2移送部と、
前記薬液タンク温度測定部、前記第1移送部および前記第2移送部に接続されており、前記薬液タンク温度測定部による測定結果が所定期間変化しなくなるまで、前記第1移送部および前記第2移送部を制御して前記処理槽と前記薬液タンクとの間で前記薬液を循環させる制御部と、
を含むことを特徴とする内視鏡リプロセッサ。
【請求項4】
内視鏡を収容して薬液に接触させる処理槽と、
前記処理槽に貯められた前記薬液の温度を測定する処理槽温度測定部と、
前記処理槽よりも前記薬液の貯留容積が大きい薬液タンクと、
前記薬液タンクに貯められた前記薬液の温度を測定する薬液タンク温度測定部と、
前記薬液タンク内部の前記薬液を加温する加温部と、
前記加温部により加温された前記薬液の一部を前記薬液タンクから前記処理槽に移送する第1移送部と、
前記処理槽の前記薬液を前記薬液タンクに移送する第2移送部と、
前記処理槽温度測定部、前記薬液タンク温度測定部、前記第1移送部および前記第2移送部に接続されており、前記処理槽と前記薬液タンクとの温度差が所定範囲に収まるまで、前記第1移送部および前記第2移送部を制御して前記処理槽と前記薬液タンクとの間で前記薬液を循環させる制御部と、
を含むことを特徴とする内視鏡リプロセッサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡を薬液に接触させる内視鏡リプロセッサに関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野において使用される内視鏡は、使用後に例えば洗浄液や消毒液等の薬液を用いたリプロセスが施される
【0003】
内視鏡にリプロセスを施すための薬液には、効果を十分に発揮させるために温度が所定の値以上である必要があるものが存在する。例えば日本国特開平11−76143号公報の段落[0003]に開示されている内視鏡洗浄装置では、薬液を貯留する薬液タンクに、薬液を加温する加温部を設けている。
【0004】
例えば日本国特開平11−76143号公報の段落[0003]に開示されている内視鏡洗浄装置のように、薬液タンク内において薬液を加温する場合、処理槽の壁面の温度が薬液の温度よりも低ければ、薬液が薬液タンクから処理槽内に移送されることによって当該薬液の温度が低下する可能性がある。処理槽内において薬液の温度が所定の値を下回った場合には、加温部によって再び薬液を加温するための待機時間が発生し、内視鏡に対して洗浄処理を施すのに要する時間が長くなる。
【0005】
本発明は、上述した問題点を解決するものであって、リプロセスの実施に要する時間を短縮することができる内視鏡リプロセッサを提供することを目的とする。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様による内視鏡リプロセッサは、内視鏡を収容して薬液に接触させる処理槽と、前記処理槽に貯められた前記薬液の温度を測定する処理槽温度測定部と、前記処理槽よりも前記薬液の貯留容積が大きい薬液タンクと、前記薬液タンク内部の前記薬液を加温する加温部と、前記加温部により加温された前記薬液の一部を前記薬液タンクから前記処理槽に移送する第1移送部と、前記処理槽の前記薬液を前記薬液タンクに移送する第2移送部と、前記処理槽温度測定部、前記第1移送部および前記第2移送部に接続されており、前記処理槽温度測定部による測定結果が所定の閾値よりも低い場合、前記処理槽温度測定部による測定結果が所定期間変化しなくなるまで、前記第1移送部および前記第2移送部を制御して前記処理槽と前記薬液タンクとの間で前記薬液を循環させる制御部と、を含む。
また、本発明の別の態様による内視鏡リプロセッサは、内視鏡を収容して薬液に接触させる処理槽と、前記処理槽に貯められた前記薬液の温度を測定する処理槽温度測定部と、前記処理槽よりも前記薬液の貯留容積が大きい薬液タンクと、前記薬液タンク内部の前記薬液を加温する加温部と、前記加温部により加温された前記薬液の一部を前記薬液タンクから前記処理槽に移送する第1移送部と、前記処理槽の前記薬液を前記薬液タンクに移送する第2移送部と、前記薬液タンクに貯められた前記薬液の温度を測定する薬液タンク温度測定部と前記処理槽温度測定部、前記薬液タンク温度測定部、前記第1移送部および前記第2移送部に接続されており、前記処理槽温度測定部による測定結果が所定の閾値よりも低い場合、前記処理槽と前記薬液タンクとの温度差が所定範囲に収まるまで、前記第1移送部および前記第2移送部を制御して前記処理槽と前記薬液タンクとの間で前記薬液を循環させる制御部と、を含む。
【0007】
また、本発明の別の態様による内視鏡リプロセッサは、内視鏡を収容して薬液に接触させる処理槽と、前記処理槽よりも前記薬液の貯留容積が大きい薬液タンクと、前記薬液タンクに貯められた前記薬液の温度を測定する薬液タンク温度測定部と、前記薬液タンク内部の薬液を加温する加温部と、前記加温部により加温された前記薬液の一部を前記薬液タンクから前記処理槽に移送する第1移送部と、前記処理槽の前記薬液を前記薬液タンクに移送する第2移送部と、前記薬液タンク温度測定部、前記第1移送部および前記第2移送部に接続されており、前記薬液タンク温度測定部による測定結果が所定期間変化しなくなるまで、前記第1移送部および前記第2移送部を制御して前記処理槽と前記薬液タンクとの間で前記薬液を循環させる制御部と、を含む。
【0008】
また、本発明の別の態様による内視鏡リプロセッサは、内視鏡を収容して薬液に接触させる処理槽と、前記処理槽に貯められた前記薬液の温度を測定する処理槽温度測定部と、前記処理槽よりも前記薬液の貯留容積が大きい薬液タンクと、前記薬液タンクに貯められた前記薬液の温度を測定する薬液タンク温度測定部と、前記薬液タンク内部の前記薬液を加温する加温部と、前記加温部により加温された前記薬液の一部を前記薬液タンクから前記処理槽に移送する第1移送部と、前記処理槽の前記薬液を前記薬液タンクに移送する第2移送部と、前記処理槽温度測定部、前記薬液タンク温度測定部、前記第1移送部および前記第2移送部に接続されており、前記処理槽と前記薬液タンクとの温度差が所定範囲に収まるまで、前記第1移送部および前記第2移送部を制御して前記処理槽と前記薬液タンクとの間で前記薬液を循環させる制御部と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施形態の内視鏡リプロセッサの概略的な構成を示す図である。
図2】第1の実施形態の内視鏡リプロセッサの薬液導入処理のフローチャートである。
図3】薬液導入処理において、所定の体積の薬液を処理槽内に導入した状態を示す図である。
図4】第1の実施形態の内視鏡リプロセッサの薬液導入処理の変形例を示すフローチャートである。
図5】第2の実施形態の内視鏡リプロセッサの概略的な構成を示す図である。
図6】第2の実施形態の内視鏡リプロセッサの薬液導入処理のフローチャートである。
図7】第3の実施形態の内視鏡リプロセッサの薬液導入処理のフローチャートである。
図8】第4の実施形態の内視鏡リプロセッサの概略的な構成を示す図である。
図9】第4の実施形態の内視鏡リプロセッサの薬液導入処理のフローチャートである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明の好ましい形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図においては、各構成要素を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、構成要素毎に縮尺を異ならせてあるものであり、本発明は、これらの図に記載された構成要素の数量、構成要素の形状、構成要素の大きさの比率、および各構成要素の相対的な位置関係のみに限定されるものではない。
【0011】
なお、以下の説明において、上方とは比較対象に対してより地面から遠ざかった位置のことを指し、下方とは比較対象に対してより地面に近づいた位置のことを指す。また、以下の説明における高低とは、重力方向に沿った高さ関係を示すものとする。
【0012】
(第1の実施形態)
以下に、本発明の実施形態の一例を説明する。内視鏡リプロセッサ1は、内視鏡50および内視鏡50の付属品52の少なくとも一方に対して、洗浄液や消毒液等の薬液を用いたリプロセスを施す装置である。ここでいう再生処理とは特に限定されるものではなく、水によるすすぎ処理、有機物等の汚れを落とす洗浄処理、所定の微生物を無効化する消毒処理、全ての微生物を排除もしくは死滅させる滅菌処理、またはこれらの組み合わせ、のいずれであってもよい。
【0013】
図1に示すように、内視鏡リプロセッサ1は、制御部2、電源装置3、処理槽4、薬液タンク5、第1移送部6、第2移送部7、加温部8および処理槽温度測定部10を含む。
【0014】
制御部2は、内視鏡リプロセッサ1の後述する各構成要素の動作を、所定のプログラムに基づいて制御する装置であり、例えば演算装置、記憶装置、補助記憶装置および入出力装置等を具備して構成されるコンピュータを含む。制御部2の制御については後述する。
【0015】
電源装置3は、制御部2やその他の内視鏡リプロセッサ1の構成要素に電力を供給する。電源装置3は、商用電源等の外部から得た電力を各構成要素に供給する構成であってもよいし、一次電池、二次電池又は発電装置等の自らが電力を生じる構成であってもよい。
【0016】
処理槽4は、本実施形態では一例として、上方に向かって開口する開口部を有した桶状の部材であり、内部に内視鏡50を配置することができる。処理槽4の上部には、開口部を開閉する蓋部材4aが設けられている。
【0017】
処理槽4は、内部に少なくとも所定の体積V1の液体を貯留可能な容積を有する。所定の体積V1は、例えば処理槽4内に配置された内視鏡50の全体を液体中に浸漬することができる値である。なお、処理槽4の容積は、前記所定の体積V1よりも大きい体積の液体を貯留可能であってもよい。図示しないが、処理槽4内には、貯留している液体の体積が所定の体積V1より大きいか否かを検知する水位センサが設けられており、制御部2は、前記水位センサによる検知結果に基づいて、処理槽4内に貯留する液体の体積を制御する。
【0018】
処理槽4内には、薬液導入口4d、排液口4cおよび処理槽温度測定部10が設けられている。薬液導入口4dは、後述する第1移送部6に連通する開口部である。薬液導入口4dは、処理槽4内に所定の体積V1の液体を貯留した場合の液面よりも上方に配置されている。排液口4cは、処理槽4の底面又は底面近傍において開口する開口部である。排液口4cは、後述する第2移送部7に連通している。
【0019】
処理槽温度測定部10は、処理槽4内に貯留されている液体の温度を測定する。処理槽温度測定部10は、制御部2に電気的に接続されており、処理槽温度測定部10による測定結果は、制御部2に入力される。
【0020】
また、処理槽4内には、循環口4e、循環ノズル4f、コネクタ部4gおよび付属品ケース21が設けられている。
【0021】
循環口4eは、処理槽4の底面又は底面近傍において開口する開口部である。循環ノズル4fは、処理槽4内に開口する開口部である。循環口4eと循環ノズル4fとは、循環管路24を介して連通している。
【0022】
循環ノズル4fと循環管路24との間には、切替弁26が配設されている。切替弁26には、水導入管路38の一端が接続されている。図示しないが、切替弁26は、制御部2に接続されている。切替弁26は、循環ノズル4fと循環管路24とを連通した状態、および循環ノズル4fと水導入管路38とを連通した状態、と切り替えることができる三方弁である。
【0023】
水導入管路38の他端は、水導入弁39に接続されている。水導入弁39は、液体である水を吐出する水道栓40にホース41を介して連通する。図示しないが、水導入弁39は、制御部2に接続されている。水導入弁39を開状態とし、切替弁26を循環ノズル4fと水導入管路38とを連通した状態とした場合には、水が循環ノズル4fから吐出され、処理槽4内に導入される。
【0024】
循環管路24には、循環ポンプ25が設けられている。図示しないが、循環ポンプ25は、制御部2に接続されている。切替弁26を循環管路24と循環ノズル4fとを連通した状態とし、循環ポンプ25を稼働することによって、処理槽4内の液体は、循環口4eから吸い出された後に、循環管路24および循環ノズル4fを経由して処理槽4内に戻る。すなわち、循環ポンプ25の稼働により、処理槽4内に貯留されている液体に流れが生じる。
【0025】
コネクタ部4gは、接続チューブ51を介して内視鏡50の管路に連通し、内視鏡50の管路等の内部に液体や空気等の流体を導入する部位である。コネクタ部4gには、コネクタ管路22の一端が連通している。コネクタ部4gは、コネクタ管路22を介して後述する送液ポンプ29およびエアコンプレッサ30に連通する。
【0026】
付属品ケース21は、内部に内視鏡50から取り外した付属品52を収容する空間を有する。付属品52とは、例えば、吸引ボタン、送気送水ボタン、鉗子栓等である。付属品ケース21の内部は、ケース管路23の一端が連通している。付属品ケース21は、ケース管路23を介して後述する送液ポンプ29およびエアコンプレッサ30に連通する。
【0027】
コネクタ管路22およびケース管路23の他端は、切替部28に接続されている。また、切替部28には、分岐管路27および送気管路31の一端が接続されている。分岐管路27の他端は、循環管路24の循環口4eから循環ポンプ25までの間の区間に連通している。送気管路31の他端は、大気に開放されている。なお、送気管路31の他端には、エアフィルタが設けられていてもよい。
【0028】
分岐管路27には、送液ポンプ29が設けられている。図示しないが、送液ポンプ29は、制御部2に接続されている。処理槽4内に液体が貯留されている状態において送液ポンプ29を稼働することによって、処理槽4内に貯留されている液体が、循環口4e、循環管路24および分岐管路27を経由して切替部28に移送される。
【0029】
送気管路31には、エアコンプレッサ30が設けられている。図示しないが、エアコンプレッサ30は、制御部2に接続されている。エアコンプレッサ30を稼働することによって、空気が送気管路31を経由して切替部28に移送される。
【0030】
切替部28は、分岐管路27および送気管路31と、コネクタ管路22およびケース管路23との接続状態を切り替える。図示しないが、切替部28は制御部2に接続されている。切替部28は、分岐管路27および送気管路31とコネクタ管路22とが連通した状態と、分岐管路27および送気管路31とケース管路23とが連通した状態とを切り替える。切替部28の切り替え動作に応じて送液ポンプ29およびエアコンプレッサ30から送出された流体は、コネクタ部4gおよび付属品ケース21のいずれかに導入される。
【0031】
なお、切替部28には、アルコール水溶液を送出するアルコール送出部が接続されており、切替部28はアルコール送出部がコネクタ管路22およびケース管路23のいずれかと連通するようにする構成を有していてもよい。
【0032】
薬液タンク5は、液体状である薬液を貯留する。薬液タンク5に貯留される薬液の種類は、滅菌液、消毒液または洗浄液等、特に限定されるものではない。本実施形態では一例として、薬液タンク5には、薬液である消毒液が貯留される。
【0033】
薬液タンク5は、処理槽4に貯留可能な液体の前記所定の体積V1よりも大きい体積V2の薬液を貯留する容積を有する。なお、図示しないが、薬液タンク5内には、貯留している薬液の体積が所定の体積V2より大きいか否かを検知する水位センサが設けられている。薬液タンク5は、処理槽4よりも下方に配置されている。薬液タンク5は、後述する第1移送部6および第2移送部7を介して、処理槽4と接続されている。
【0034】
薬液タンク5には、加温部8が配設されている。加温部8は、薬液タンク5内の薬液を加温する。加温部8は、薬液タンク5内の薬液の温度が所定の温度T1よりも低い場合に薬液タンク5内の薬液を加温することで、薬液タンク5内の薬液の温度を所定の温度T1以上に保つ。所定の温度T1は、例えば薬液が消毒液である場合には、薬液の消毒効果が十分に発揮される温度範囲内の値である。
【0035】
第1移送部6は、薬液タンク5内に貯留されている薬液を処理槽4に移送する。第1移送部6は、第1管路6aおよび薬液ポンプ6bを含む。第1管路6aは、薬液導入口4dと、薬液タンク5の内部とを連通する管路である。
【0036】
薬液ポンプ6bは、第1管路6aに設けられている。薬液ポンプ6bは、薬液を薬液タンク5から薬液導入口4dに向かって移送する。薬液ポンプ6bは、制御部2に接続されている。薬液ポンプ6bを稼働することによって、薬液タンク5に貯留されている薬液が、薬液導入口4dを通って処理槽4内に導入される。
【0037】
第2移送部7は、処理槽4に貯留されている薬液を薬液タンク5に移送する。第2移送部7は、第2管路7aおよび開閉弁7bを含む。第2管路7aは、排液口4cと、薬液タンク5の内部とを連通する管路である。開閉弁7bは、第2管路7aを開閉する電磁開閉弁である。開閉弁7bは、制御部2に接続されている。
【0038】
また、第2管路7aの開閉弁7bよりも薬液タンク5側には、排出管路7dの一端が接続されている。排出管路7dの他端は、例えば内視鏡リプロセッサ1の外部の排液設備に接続される。第2管路7aと排出管路7dと分岐部には、三方弁7cが設けられている。三方弁7cは、第2管路7aが排液口4cと薬液タンク5とを連通する状態、および第2管路7aが排液口4cと排出管路7dとを連通する状態、を切り替える。三方弁7cは、制御部2に接続されている。なお、第2管路7aおよび排出管路7dの少なくとも一方には、ポンプが設けられていてもよい。
【0039】
開閉弁7bを閉状態とし、処理槽4内に水道水や薬液等の液体を導入すれば、当該液体が処理槽4に貯留される。また、開閉弁7bを開状態とし、三方弁7cを第2管路7aが排液口4cと薬液タンク5とを連通する状態とすれば、処理槽4に貯留されている薬液が重力によって薬液タンク5内に移送される。また、開閉弁7bを開状態とし、三方弁7cを第2管路7aが排液口4cと排出管路7dとを連通する状態とすれば、処理槽4に貯留されている液体が排出管路7dを経由して内視鏡リプロセッサ1の外部に排出される。
【0040】
次に、制御部2による内視鏡リプロセッサ1の制御について説明する。図2は、内視鏡リプロセッサ1において、薬液タンク5から処理槽4内に薬液を導入する薬液導入処理のフローチャートである。薬液導入処理は、例えば薬液が消毒液である場合には、内視鏡に対して消毒処理を施す場合に実行される。なお、薬液導入処理の開始時点において、処理槽4内は液体を貯留していない状態であり、薬液タンク5は所定の体積V2の薬液を貯留している状態である。また、薬液導入処理の開始時点において、三方弁7cは、第2管路7aが排液口4cと薬液タンク5とを連通する状態である。
【0041】
薬液導入処理では、まずステップS10において、所定の体積V1の薬液を、薬液タンク5から処理槽4内へ移送する。すなわち、開閉弁7bを閉状態とした後に、第1移送部6を制御して薬液ポンプ6bを稼働させ、所定の体積V1の薬液を、薬液タンク5から処理槽4内へ移送する。ステップS10の実行によって、図3に示すように、処理槽4は所定の体積V1の薬液を貯留した状態となり、薬液タンク5は体積V2から体液V1を差し引いた体積V3の薬液が残留した状態となる。なお、図3では、薬液導入処理に用いられない構成や内視鏡50等の記載を省略してある。
【0042】
次にステップS20において、処理槽温度測定部10による測定結果が、所定の閾値Tthよりも低いか否かを判定する。すなわち、処理槽4に貯留されている薬液の温度が、所定の閾値Tthよりも低いか否かを判定する。閾値Tthは、前記所定の温度T1以下の値であり、かつ例えば薬液が消毒液である場合には、薬液の消毒効果が十分に発揮される温度範囲内の値である。
【0043】
ステップS20において、処理槽温度測定部10による測定結果が、所定の閾値Tth以上であると判定した場合には、薬液導入処理を正常終了する。この判定(ステップS20のNO)がなされた場合、処理槽4内に貯留されている薬液の温度が、薬液が効果を十分に発揮する範囲内であり、好ましい状態で処理槽4内において薬液を用いた処理を続いて実行することができる。
【0044】
一方、ステップS20において、処理槽温度測定部10による測定結果が、所定の閾値Tthよりも低いと判定した場合には、ステップS30に移行する。ステップS30では、第1移送部6および第2移送部7を制御して、処理槽4に貯留された薬液のうち少なくとも一部を、薬液タンク5に残留している薬液と置き換える動作を開始する。
【0045】
ステップS30における第1移送部6および第2移送部7による薬液の移送の制御形態は、処理槽4から薬液が溢れ出さない条件下において、所定の期間中に、処理槽4に貯留された薬液のうち少なくとも一部が、薬液タンク5に残留している薬液と置き換えられるものであれば、特に限られるものではない。第1移送部6の薬液ポンプ6bを稼働する期間と、第2移送部7の開閉弁7bを開状態とする期間と、が重なっていてもよいし、重なっていなくてもよい。言い換えれば、処理槽4から薬液タンク5に薬液を移送する期間と、薬液タンク5から処理槽4に薬液を移送する期間と、は重なっていてもよいし、重なっていなくてもよい。
【0046】
すなわち、ステップS30では、所定の体積V4の薬液を薬液タンク5から処理槽4に移送する動作と、前記所定の体積V4の薬液を処理槽4から薬液タンク5に移送する動作と、を交互に繰り返す制御を行ってもよい。また、ステップS30では、薬液を所定の流量Qで薬液タンク5から処理槽4に移送する動作と、薬液を前記所定の流量Qで処理槽4から薬液タンク5に移送する動作と、を同時に行い、薬液を薬液タンク5と処理槽4との間で循環させる制御を行ってもよい。
【0047】
ステップS30の実行により、薬液タンク5に残留している閾値Tth以上の温度T1である薬液が処理槽4内に移送され、処理槽4内の閾値Tthより低い温度の薬液が薬液タンク5内に移送されるため、処理槽4内に貯留される薬液の温度が上昇し始める。なお、ステップS30では、処理槽4と薬液タンク5との間で薬液を置き換える動作と同時に、加温部8を制御して薬液タンク5内の薬液を加温する動作を実行してもよい。
【0048】
次にステップS40において、処理槽温度測定部10による測定結果が、所定の閾値Tthよりも低いか否かを判定する。すなわち、処理槽4に貯留されている薬液の温度が、所定の閾値Tthよりも低いか否かを判定する。
【0049】
ステップS40において、処理槽温度測定部10による測定結果が、所定の閾値Tth以上であると判定した場合には、ステップS50に移行する。ステップS50では、ステップS30で開始した処理槽4と薬液タンク5との間で薬液を置き換える動作を、停止する。そして、薬液導入処理を正常終了する。
【0050】
一方、ステップS40において、処理槽温度測定部10による測定結果が、所定の閾値Tthよりも低いと判定した場合には、ステップS60に移行する。ステップS60では、ステップS30の実行開始から所定の時間が経過したか否かを判定する。
【0051】
ステップS60において、ステップS30の実行開始から所定の時間が経過していないと判定した場合には、ステップS40に戻る。
【0052】
すなわち、ステップS30で処理槽4に貯留された薬液のうち少なくとも一部を、薬液タンク5に残留している薬液と置き換える動作を開始した後に、所定の時間以内で処理槽4に貯留されている薬液の温度が、所定の閾値Tth以上となれば、薬液導入処理を正常終了する。この場合、処理槽4内に貯留されている薬液の温度が、効果を十分に発揮する範囲内であり、好ましい状態で処理槽4内において薬液を用いた処理を続いて実行することができる。
【0053】
一方、ステップS60において、ステップS30の実行開始から所定の時間が経過したと判定した場合には、ステップS70に移行する。ステップS70では、ステップS30で開始した処理槽4と薬液タンク5との間で薬液を置き換える動作を、停止する。そして、ステップS80に移行し、異常終了処理を実行する。ステップS80の異常終了処理では、例えば処理槽4内の薬液を全て薬液タンク5内に移送し、加温部8によって薬液を再び加温する。なお、ステップS80の異常終了処理では、例えば警報音の出力や警告表示の出力等によって、処理槽4に貯留された薬液の温度が閾値Tth以上とならないことを使用者に知らせてもよい。
【0054】
このように、ステップS30で処理槽4に貯留された薬液のうち少なくとも一部を、薬液タンク5に残留している薬液と置き換える動作を開始した後に、所定の時間以内で処理槽4に貯留されている薬液の温度が、所定の閾値Tth以上とならなければ、薬液導入処理を異常終了する。
【0055】
以上に説明したように、本実施形態の内視鏡リプロセッサ1は、内視鏡50を収容して薬液に接触させる処理槽4と、処理槽4内に貯留された薬液の温度を測定する処理槽温度測定部10と、処理槽4よりも薬液の貯留容積が大きい薬液タンク5と、薬液タンク5内の薬液を加温する加温部8と、加温部8により加温された薬液の一部を薬液タンクから処理槽4に移送する第1移送部6と、処理槽4内の薬液を薬液タンク5に移送する第2移送部7と、処理槽温度測定部10、第1移送部6および第2移送部7に接続された制御部2と、を含む。そして、制御部2は、薬液タンク5から処理槽4内に薬液を導入する薬液導入処理において、処理槽温度測定部10による測定結果が所定の閾値Tthよりも低い場合、第1移送部6および第2移送部7を制御して処理槽4に貯留された薬液のうち少なくとも一部を薬液タンク5に残留している薬液と置き換える。
【0056】
本実施形態の内視鏡リプロセッサ1では、処理槽4と薬液タンク5との間で、少なくとも一部の薬液を置き換えることによって処理槽4内に貯留されている薬液の温度を即時に上昇させるため、加温部8によって薬液を再加熱する必要が無く、リプロセスの実施に要する時間を短縮することができる。
【0057】
図4に、本実施形態の内視鏡リプロセッサ1の変形例を示す。図4は、第1の実施形態の内視鏡リプロセッサ1の薬液導入処理の変形例を示すフローチャートである。
【0058】
前述の第1の実施形態では、ステップS30の実行によって処理槽4と薬液タンク5との間で薬液を置き換える動作を開始した後に、ステップS40に示すように、処理槽4に貯留された薬液の温度が閾値Tth以上となった場合に、前記置き換える動作を停止する。
【0059】
一方、本変形例では、図4のステップS41に示すように、ステップS30の実行によって処理槽4と薬液タンク5との間で薬液を置き換える動作を開始した後に、処理槽4に貯留された薬液の温度変化勾配が所定の閾値より小さくなった場合に、前記置き換える動作を停止する。ここで、処理槽4に貯留された薬液の温度変化勾配とは、処理槽温度測定部10による測定結果の単位時間あたりの温度変化量のことである。
【0060】
すなわち、本変形例では、ステップS30において開始した処理槽4と薬液タンク5との間で薬液を置き換える動作を、処理槽4に貯留された薬液の温度変化が予め定めた値よりも緩やかになった、もしくは温度変化が無くなった場合に、停止する。
【0061】
本変形例の内視鏡リプロセッサ1においても、処理槽4と薬液タンク5との間で、少なくとも一部の薬液を置き換えることによって処理槽4内に貯留されている薬液の温度を即時に上昇させるため、加温部8によって薬液を再加熱する必要が無く、リプロセスの実施に要する時間を短縮することができる。
【0062】
本ステップに図2に示す所定時間の経過確認のステップS60および異常終了処理のステップS80を加えてもよい。この場合、S41からS30に戻るステップの途中にS60が入り、S60がNOの場合にはS30に、S60がYESの場合にはS80へと進む。
【0063】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。以下では第1の実施形態との相違点のみを説明するものとし、第1の実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付し、その説明を適宜に省略するものとする。
【0064】
図5に示す本実施形態の内視鏡リプロセッサ1は、薬液タンク5に薬液タンク温度測定部11を備える点が、第1の実施形態と異なる。薬液タンク温度測定部11は、薬液タンク5内に貯留されている薬液の温度を測定する。薬液タンク温度測定部11は、制御部2に電気的に接続されており、薬液タンク温度測定部11による測定結果は、制御部2に入力される。
【0065】
図6は、第2の実施形態の内視鏡リプロセッサ1の薬液導入処理のフローチャートである。
【0066】
本実施形態では、図6のステップS42に示すように、ステップS30の実行によって処理槽4と薬液タンク5との間で薬液を置き換える動作を開始した後に、処理槽温度測定部10による測定結果と、薬液タンク温度測定部11による測定結果との差が、所定の範囲内に収まった場合に、前記置き換える動作を停止する。
【0067】
本実施形態の内視鏡リプロセッサ1においても、処理槽4と薬液タンク5との間で、少なくとも一部の薬液を置き換えることによって処理槽4内に貯留されている薬液の温度を即時に上昇させるため、加温部8によって薬液を再加熱する必要が無く、リプロセスの実施に要する時間を短縮することができる。
【0068】
本ステップに図2に示す所定時間の経過確認のステップS60および異常終了処理のステップS80を加えてもよい。この場合、S42からS30に戻るステップの途中にS60が入り、S60がNOの場合にはS30に、S60がYESの場合にはS80へと進む。
【0069】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。以下では第2の実施形態との相違点のみを説明するものとし、第2の実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付し、その説明を適宜に省略するものとする。
【0070】
図7は、第3の実施形態の内視鏡リプロセッサ1の薬液導入処理のフローチャートである。
【0071】
前述した第2の実施形態の内視鏡リプロセッサ1の薬液導入処理では、処理槽温度測定部10による測定結果が所定の閾値より低いか否かの判定を行い(ステップS20)、処理槽温度測定部10による測定結果が所定の閾値より低い場合に、ステップS30以降の処理槽4と薬液タンク5との間で薬液を置き換える動作を実行する。
【0072】
一方、本実施形態の内視鏡リプロセッサ1は、図7に示すように、処理槽温度測定部10による測定結果が所定の閾値より低いか否かの判定を行わない点が第2の実施形態と異なる。
【0073】
すなわち、本実施形態の薬液導入処理では、まず、ステップS10において、所定の体積V1の薬液を、薬液タンク5から処理槽4内へ移送する。
【0074】
次にステップS30において、第1移送部6および第2移送部7を制御して、処理槽4に貯留された薬液のうち少なくとも一部を、薬液タンク5に残留している薬液と置き換える動作を開始する。
【0075】
ステップS30の実行により、薬液タンク5と処理槽4との間で薬液が循環するため、処理槽4および第1移送部6の薬液と触れる箇所の温度が、薬液タンク5に貯留されていた薬液の温度T1に近づく。
【0076】
例えば、外気温が低い場合等において処理槽4の壁面の温度が温度T1以下である場合にステップS10を実行すれば、処理槽4に貯留される薬液の温度は温度T1よりも低くなる。しかし、ステップS30を実行することによって、薬液タンク5に残留していた温度T1の薬液が薬液タンク5と処理槽4との間で循環するため、処理槽4に貯留される薬液の温度が上昇し始める。なお、ステップS30では、処理槽4と薬液タンク5との間で薬液を置き換える動作と同時に、加温部8を制御して薬液タンク5内の薬液を加温する動作を実行してもよい。
【0077】
次にステップS42に示すように、ステップS30の実行によって処理槽4と薬液タンク5との間で薬液を置き換える動作を開始した後に、処理槽温度測定部10による測定結果と、薬液タンク温度測定部11による測定結果との差が、所定の範囲内に収まった場合に、前記置き換える動作を停止する。
【0078】
本実施形態の内視鏡リプロセッサ1においても、処理槽4と薬液タンク5との間で、少なくとも一部の薬液を置き換えることによって処理槽4内に貯留されている薬液の温度を即時に上昇させるため、加温部8によって薬液を再加熱する必要が無く、リプロセスの実施に要する時間を短縮することができる。
【0079】
本ステップに図2に示す所定時間の経過確認のステップS60および異常終了処理のステップS80を加えてもよい。この場合、S42からS30に戻るステップの途中にS60が入り、S60がNOの場合にはS30に、S60がYESの場合にはS80へと進む。
【0080】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。以下では第1の実施形態との相違点のみを説明するものとし、第1の実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付し、その説明を適宜に省略するものとする。
【0081】
図8に示す本実施形態の内視鏡リプロセッサ1は、薬液タンク5に薬液タンク温度測定部11を備える点が、第1の実施形態と異なる。薬液タンク温度測定部11は、薬液タンク5内に貯留されている薬液の温度を測定する。薬液タンク温度測定部11は、制御部2に電気的に接続されており、薬液タンク温度測定部11による測定結果は、制御部2に入力される。
【0082】
なお、図8には示していないが、本実施形態の内視鏡リプロセッサ1は、処理槽4内に貯留された薬液の温度を測定する処理槽温度測定部10処理槽温度測定部を備えていてもよい。
【0083】
図9は、第3の実施形態の内視鏡リプロセッサ1の薬液導入処理のフローチャートである。
【0084】
第3の実施形態の内視鏡リプロセッサ1の薬液導入処理では、まずステップS110において、所定の体積V1の薬液を、薬液タンク5から処理槽4内へ移送する。すなわち、開閉弁7bを閉状態とした後に、第1移送部6を制御して薬液ポンプ6bを稼働させ、所定の体積V1の薬液を、薬液タンク5から処理槽4内へ移送する。ステップS110の実行によって、処理槽4は所定の体積V1の薬液を貯留した状態となり、薬液タンク5は体積V2から体液V1を差し引いた体積V3の薬液が残留した状態となる。
【0085】
次にステップS130において、第1移送部6および第2移送部7を制御して、処理槽4に貯留された薬液のうち少なくとも一部を、薬液タンク5に残留している薬液と置き換える動作を開始する。
【0086】
ステップS130における第1移送部6および第2移送部7による薬液の移送の制御形態は、処理槽4から薬液が溢れ出さない条件下において、所定の期間中に、処理槽4に貯留された薬液のうち少なくとも一部が、薬液タンク5に残留している薬液と置き換えられるものであれば、特に限られるものではない。第1移送部6の薬液ポンプ6bを稼働する期間と、第2移送部7の開閉弁7bを開状態とする期間と、が重なっていてもよいし、重なっていなくてもよい。言い換えれば、処理槽4から薬液タンク5に薬液を移送する期間と、薬液タンク5から処理槽4に薬液を移送する期間と、は重なっていてもよいし、重なっていなくてもよい。
【0087】
すなわち、ステップS130では、所定の体積V4の薬液を薬液タンク5から処理槽4に移送する動作と、前記所定の体積V4の薬液を処理槽4から薬液タンク5に移送する動作と、を交互に繰り返す制御を行ってもよい。また、ステップS130では、薬液を所定の流量Qで薬液タンク5から処理槽4に移送する動作と、薬液を前記所定の流量Qで処理槽4から薬液タンク5に移送する動作と、を同時に行い、薬液を薬液タンク5と処理槽4との間で循環させる制御を行ってもよい。
【0088】
ステップS130の実行により、薬液タンク5と処理槽4との間で薬液が循環するため、処理槽4および第1移送部6の薬液と触れる箇所の温度が、薬液タンク5に貯留されていた薬液の温度T1に近づく。
【0089】
例えば、外気温が低い場合等において処理槽4の壁面の温度が温度T1以下である場合にステップS110を実行すれば、処理槽4に貯留される薬液の温度は温度T1よりも低くなる。しかし、ステップS130を実行することによって、薬液タンク5に残留していた温度T1の薬液が薬液タンク5と処理槽4との間で循環するため、処理槽4に貯留される薬液の温度が上昇し始める。なお、ステップS130では、処理槽4と薬液タンク5との間で薬液を置き換える動作と同時に、加温部8を制御して薬液タンク5内の薬液を加温する動作を実行してもよい。
【0090】
次にステップS140において、薬液タンク5内の薬液の温度変化勾配が所定の閾値より小さくなったか否かを判定する。ここで、薬液タンク5内の薬液の温度変化勾配とは、薬液タンク温度測定部11による測定結果の単位時間あたりの温度変化量のことである。
【0091】
ステップS140では、薬液タンク5内の薬液の温度変化勾配が所定の閾値より小さくなるまで、処理槽4と薬液タンク5との間で薬液を置き換える動作を継続する。そして、ステップS140において、薬液タンク5内の薬液の温度変化勾配が所定の閾値より小さくなったと判定した場合には、ステップS150に移行し、処理槽4と薬液タンク5との間で薬液を置き換える動作を停止する。すなわち、本実施形態では、ステップS130において開始した処理槽4と薬液タンク5との間で薬液を置き換える動作を、薬液タンク5内の薬液の温度変化が予め定めた値よりも緩やかになった、もしくは温度変化が無くなった場合に、停止する。
【0092】
本実施形態の内視鏡リプロセッサ1においても、処理槽4と薬液タンク5との間で、少なくとも一部の薬液を置き換えることによって処理槽4内に貯留されている薬液の温度を即時に上昇させるため、加温部8によって薬液を再加熱する必要が無く、リプロセスの実施に要する時間を短縮することができる。
【0093】
本ステップに図2に示す所定時間の経過確認のステップS60および異常終了処理のステップS80を加えてもよい。この場合、S140からS130に戻るステップの途中にS60が入り、S60がNOの場合にはS30に、S60がYESの場合にはS80へと進む。
【0094】
なお、本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う内視鏡リプロセッサもまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【0095】
本出願は、2015年2月9日に日本国に出願された特願2015−23439号を優先権主張の基礎として出願するものであり、上記の開示内容は、本願明細書、請求の範囲、図面に引用されたものとする。
【要約】
本発明の内視鏡リプロセッサは、内視鏡を収容する処理槽と、前記処理槽内の液体の温度を測定する処理槽温度測定部と、薬液を貯留する薬液タンクと、前記薬液タンク内部の前記薬液を加温する加温部と、前記薬液の一部を前記薬液タンクから前記処理槽に移送する第1移送部と、前記処理槽内の前記薬液を前記薬液タンクに移送する第2移送部と、前記処理槽温度測定部による測定結果が所定の閾値よりも低い場合、前記第1移送部および前記第2移送部を制御して前記処理槽に貯留された前記薬液のうち少なくとも一部を前記薬液タンクに残留している前記薬液と置き換える制御部と、を含む。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9