(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
一態様によれば、主軸駆動システムを有する工作機械は、主軸、第1モータ、および第1伝達機構を有する。主軸は、ワークを把持し、その軸芯周りに回転させるための部材である。第1モータは、主軸を駆動することができる。第1伝達機構は、第1モータが主軸を駆動できるように、主軸および第1モータ間で動作可能に接続される。当該工作機械は、第2モータおよび第2伝達機構をさらに有する。第2モータは、主軸を駆動することが可能である。第2伝達機構は、第2モータが主軸を駆動できるように、主軸および第2モータ間で動作可能に接続される。第2伝達機構は、選択的に固定することができる伝達要素を含む。当該伝達要素は、自由構成を有する主軸の周りに、取り付けられる。当該伝達要素は、第2モータが主軸と接続されないことにより、主軸周りに自由に回転することができる。また、第2伝達機構は固定構成を含み、伝達要素は、第2モータが主軸と動作可能に係合されるように、主軸に対して固定される。当該工作機械は、第2モータを使用して主軸を駆動するときに、ワークの高精度なミル加工を可能にする。サイズが大きい主軸とともに使用されるとき、そのような工作機械は、既知の大型主軸駆動システムを有する工作機械よりも高い精度のC軸ミル加工を可能にする。
【0012】
一形態において、第2伝達機構は、上記伝達要素に取り付けられている、ローラのような、複数のカムフォロアを有する。第2伝達機構の伝達要素は、主軸の周りに回転可能に取り付けられている外輪部材を含んでいてもよい。ロック機構は、第2伝達機構の伝達要素を、固定構成と自由構成との間で切替え動作可能にする。ロック構成(固定構成)において、ロック機構は、伝達要素を主軸に固定し、非ロック構成(自由構成)において、ロック機構は、伝達要素を主軸との固定係合から解放することにより、第2モータを主軸から切り離す。
【0013】
いくつかの形態において、内輪部またはフランジ部が、主軸の周りに固定的に配置または形成され、上記伝達要素は、内輪部の周りに回転可能に配置されている部分を含む。この形態において、ロック機構は、上記ロック構成にあるロック機構を用いて、外輪部を内輪部に固定し、上記非ロック構成にあるロック機構を用いて、外輪部を内輪部から解放するように構成されている。ロック機構は、外輪部上に配置されているレール(第二のレール)と、内輪部上に配置されているレール(第一のレール)と、アクチュエータに動作可能に接続されているロック部材とを含んでもよい。アクチュエータは、外輪部を内輪部に対して固定または解放するために、第一のレールおよび第二のレールが一直線上に整列されているときに、ロック機構は、上記ロック構成において、第一のレールおよび第二のレールと嵌合し、上記非ロック構成において、当該両レールにおける当該嵌合を解除する。
【0014】
一形態において、第2モータは、主軸に隣接し、主軸の軸芯に対して交差する方向に延伸する駆動軸を駆動する、サーボモータである。第2伝達機構は、駆動軸に取り付けられており、駆動軸の軸芯周りに回転する、ローラギアカムのようなカムを有する。第2伝達機構の上記伝達要素は、外輪部材を含んでもよい。当該外輪部材は、外輪部材周りに取り付けられている複数のローラによって、主軸の周りに回転可能に配設される。
【0015】
本発明による別の形態において、工作機械は、主軸、モータ、伝達機構およびロック機構を有する。伝達機構は、モータを用いて主軸を駆動するため、伝達要素を有する。当該伝達要素は、モータと動作可能に係合し、主軸の周りに回転可能に取り付けられる。ロック機構は、ロック方向および非ロック方向との間で切替え可能である。ロック方向において、ロック機構は、伝達要素を介して、モータを用いて主軸を駆動するために、回転可能に取り付けられている伝達要素を主軸に固定する。非ロック方向において、ロック機構は、モータを主軸から切り離すために、伝達要素が主軸に対して独立して回転することを可能にするために、伝達要素を主軸から切り離す。
【0016】
一形態において、回転可能に取り付けられている伝達要素は、主軸に回転可能に取り付けられている輪部材を含む、タレットユニットである。輪部材は、外面部分と、その外面部分上に配置されている複数のローラ部材とを含んでもよい。一形態において、ローラ部材は各々、回転軸を含み、複数のローラ部材の各々の各回転軸は、輪部材の外面部分から半径方向外向きに延伸する。いくつかの形態における伝達機構はローラギアカムを含み、ローラギアカムは、ローラギアカムがモータによって回転されるときに、ローラ部材を駆動し、輪部材を回転させるために複数のローラ部材のうちの少なくとも1つと動作可能に噛合されている。
【0017】
本発明による別の形態において、機械装置である工作機械は、主軸、第1モータ、第2モータ、駆動軸、カムおよびカムフォロアを有する。主軸は、ワークを回転させるための部材である。第1モータは、主軸を、より高速で回転させる。第2モータは、主軸を、より低速で回転させる。駆動軸は、第2モータの駆動軸であり、軸芯を有する。カムは、ローラギアカムのようなカムであり、駆動軸に接続される。カムフォロアは、主軸の周りに、半径方向に取り付けられている。カムは、主軸を回転させるために、カムフォロアと噛合している。工作機械は、主軸の周りに、回転可能に取り付けられている輪部材を有しても良い。ここで、複数のカムフォロアは、ローラ部材の形態で、輪部材の周りに半径方向に取り付けられている。一形態において、輪部材を主軸に対して、選択的に結合および結合解除するために、ロック機構が設けられる。ロック機構は、結合構成と非結合構成との間で移動することができる、摺動可能嵌合部を有していても良い。結合構成では、摺動可能嵌合部は、輪部材を主軸に接続する。非結合構成では、摺動可能嵌合部は、輪部材を主軸から切り離すために、主軸から離れる方向に移動する。ロック機構は、輪部材に接続されるレール(第二のレール)と、主軸に接続されるレール(第一のレール)とを、さらに有しても良い。摺動可能嵌合部は、第一のレールおよび第二のレールが一直線上に配列しているときに、結合構成を作り出すために、各レールに沿って摺動する。一形態における第2モータの駆動軸は、カムが駆動軸の軸芯周りに駆動軸とともに回転するように、カムに直接接続される。本発明は、図示されている実施形態に限定されないが、図示されている実施形態に基づいて、本発明を説明する。
【0018】
<実施の形態>
図1および
図2に示すように、旋盤(工作機械と把握できる)1は、ワーク8(
図3参照)を切削するための1つまたは複数の刃物台6(
図3参照)を支持するためのフレーム2を有する。本実施の形態に係る工作機械1の要部が図示されている
図3を参照して、たとえばパイプなどの金属ワーク8が、主軸10(第一の回転体と把握できる)によって把持および回転される。これにより、たとえばワーク8の外径部分を除去するために、切削工具が、回転しているワーク8を切削することができる(回転を利用して加工が行われる)。工作機械1は、主軸駆動システム4を有する。主軸駆動システム4は、7インチ以上の貫通穴径を有するような大型の水平に向けられた主軸10を選択的に駆動するため、大型の第1モータ12(第一の回転駆動部と把握できる)および小型の第2モータ14(第二の回転駆動部と把握できる)を有する。主軸10は、当該主軸10から一端が突出するように、大型ワーク8を把持する。しかしながら、1つまたは複数のワーク支持台が、ワーク8をその長さに沿って支持するために使用されてもよい。図示されている主軸駆動システム4において、大型の第1モータ12は、高速回転、高トルクでの機械加工の際に、主軸10を駆動するために使用され、小型の第2モータ14は、より低速回転で、より高精度の機械加工またはコンタリングの際に使用される。
【0019】
図1,2に示すように、工作機械1の一端には、主軸ハウジング16があり、当該主軸ハウジング16は、
図3に示されている、主軸10および主軸駆動システム4を少なくとも部分的に収容する。第1モータ12は、フレーム2に取り付けられており、たとえば
図3,4,13に示されているように、第1モータ12は、対応する第1伝達機構18を介して、主軸10に動作可能に接続されている。第1伝達機構18は、ギアボックス20と、歯車22,24,26などのような複数の伝達要素とを有する。ギアボックス20は複数の歯車を有しており、高速回転および中速回転動作および、第1モータ12を主軸10から切り離す動作を行う。一例において、第1モータ12は、高速回転動作モードにおいて、0〜1500RPMで主軸10を回転させ、中速回転動作モードにおいて、0〜500RPMで主軸10を回転させる。しかしながら、異なるギア比を利用することによって、異なる最大速度が得られることは当然である。
【0020】
被駆動歯車26は、主軸10の周りに取り付けられており、中間歯車24および駆動歯車22との動作可能な噛合を介して、主軸10を駆動する。中間歯車24は、シャフト28に配設されており、当該シャフト28を中心として回転する。主軸位置フィードバックセンサ30およびロータリースケール32は、主軸10の位置情報を用いた駆動制御を可能にしており、主軸10の動作を正確に制御することが可能となる。主軸10が主軸ハウジング16内で回転可能に支持されるために、主軸10は、ベアリング34、36内に取り付けられている。
【0021】
第1伝達機構18は、伝達機構の歯車におけるバックラッシュまたは遊びに起因して、システム内にわずかな位置的不正確性をもたらす可能性がある。そこで、本実施の形態に係る工作機械1は、第1モータ12および第1伝達機構18に加えて、第2モータ14および第2伝達機構38を有する。第2モータ14および第2伝達機構38は、C軸コンタリング(すなわち、ワーク8を精密に回転させながら、当該ワーク8の外面をミル加工すること)または他のミル加工動作のような、より高い精度が要求される切削動作のために使用される。つまり、主軸駆動システム4は、ワーク8を、より高速回転で機械加工するために、大型で高出力の第1モータ(主軸モータ)12を使用する。また、主軸10の回転を低速に制御し、さらに主軸10の位置を精細に制御するために、別個のより小型で低出力の第2モータ(サーボモータ)14を使用する。一例であるが、第1モータ12は、第2モータ14の少なくとも1.5倍の出力定格を有してもよく、他の例では、第1モータ12の出力定格は、第2モータ14の10倍以上であっても良い。より詳細には、一例において、第1モータ12は、約60kWの出力定格を有し、第2モータ14は、約4.5kWの出力定格を有する。しかしながら、異なる出力定格を有するモータ12,14が使用されてもよい。たとえば、第1モータ12は、10〜100HPの範囲内の出力定格を有してもよく、第2モータ14は4.5〜9.5kWに及んでもよい。加えて、第1伝達機構18に使用されるギア比、および、第2伝達機構38の伝達要素は、サイズの異なる主軸10の主軸駆動システム4または異なる用途に適応するように、変更されることができる。たとえば、異なるギア比を選択することによって、60kWモータが、185mm〜375mmに及ぶ貫通穴径を有する主軸10のための第1モータ12として使用されてもよく、5800N・m〜7000N・mのトルク出力を有してもよい。
【0022】
本実施の形態に係る主軸駆動システム4は、伝達機構のない主軸駆動装置、すなわち、主軸と一体となったモータを使用する主軸駆動装置と、同レベルの精度をもたらすように構成されている。しかしながら、当該モータと比較した本実施の形態に係る主軸駆動システム4の利点の一つは、当該主軸駆動システム4が、7インチ超の貫通穴径を有する主軸10のような、大型の主軸10を実装することができることである。一例において、本実施の形態に係る主軸10は、375mm、または約15インチの貫通穴径を有する。したがって、図示されている主軸駆動システム4は、はるかに小さい貫通穴径を有する主軸の駆動に適した一体型主軸モータが有する高精度と同等の高精度を維持しながら、非常に大きいワーク8の加工に対応することが可能である。
【0023】
第2モータ14は、第1伝達機構18とは別個の第2伝達機構38を使用して、主軸10を駆動するように構成されている。換言すれば、後述から分かるように、第2モータ14は、ローラギアカムユニット44を介して、タレットユニット(囲繞部であり、第二の回転体と把握できる)48を回転させる。そして、当該タレットユニット48の回転を介して、第2モータ14は主軸10を回転させる。第1伝達機構18および第2伝達機構38は、明確に区別できるように構成されていることがより好ましく、主軸10の周りに取り付けられている被駆動歯車(たとえば、被駆動歯車26)のような、一つの伝達要素を共有しない。一例として、第2モータ14はサーボモータであり、主軸ハウジング16に対して配設される。
図3〜5を参照して、第2モータ14は、駆動軸42と共に、主軸10の一側面側に配設されている。駆動軸42は、第2伝達機構38に接続されている。第2伝達機構38(より具体的には、第2伝達機構38の伝達要素)は、選択的に「固定構成」とすることができる。第2伝達機構38が固定構成にあるときに(つまり、第2伝達機構38が、主軸10と動作可能に接続されているときに)、第2モータ14は、主軸10を駆動することができる。一例において、選択的に固定可能な伝達要素の主軸10に対する固定は、後述するロック機構52によって達成される。固定構成とは、第2伝達機構38を介して、タレットユニット48と主軸10とが接続される状態である。他方、非固定構成とは、第2伝達機構38により、タレットユニット48と主軸10とが接続されない状態である。ロック機構52によって、第2伝達機構38の固定構成および非固定構成を、切替えることができる。第2伝達機構38が固定構成であるとき、第2モータ14は、タレットユニット48と共に主軸10も回転させる(つまり、タレットユニット48の回転を介して、主軸10をも回転させる)。他方、第2伝達機構38が非固定構成であるとき、第2モータ14は、主軸10とは別個独立に、タレットユニット48を回転させる(つまり、主軸10は回転させず、タレットユニット48を回転させる)。
【0024】
図6に示すように、第2伝達機構38の構成要素と把握できるタレットユニット48は、外輪部49を備え、外輪部49は、複数のカムローラ(またはカムフォロア)46を有する。各カムローラ46は、外輪部49の円周周りである外面部分49aに、半径方向(タレットユニット48の回転半径方向)に取り付けられている。各カムローラ46は、各カムローラ46の回転軸が、タレットユニット48の当該半径方向に延伸している。第2伝達機構38は、ローラギアカムユニット44(
図5参照)のようなカムを有する。ローラギアカムユニット44は、駆動軸42と同軸上に取り付けられ、駆動軸42と一直線上に配置されている。ローラギアカムユニット44は、下記にて詳細に説明するように、複数のカムローラ46を同時に噛合するように構成されている。タレットユニット48は、(
図3に示すように)ベアリングハウジング50を介して、主軸10の周りに回転可能にかつ主軸10と同軸上に、取り付けられている。つまり、
図3,4に示すように、タレットユニット48は、主軸10の一部を囲繞しており、主軸10は回転軸AXを中心に回転し、同じ回転軸AXを中心にタレットユニット48も回転する。したがって、ロック機構52を介して、タレットユニット48が主軸10に接続または固定されていないとき(非固定構成)、主軸10がタレットユニット48に対して(およびその逆に)回転することができる。
【0025】
図5,9,14等に示されているローラギアカムユニット44は、中央駆動部を有する。当該中央駆動部は、連続的な楔形状のリブによって形成されるねじ状またはらせん状のカム面を有する。らせん経路内で、当該リブは、柄から突出し、柄の周りにおいて延設されている。ねじ状またはらせん状のカム面は、カムローラ46と、円滑でバックラッシュのない駆動接触を提供する。好ましい一例において、ローラギアカムユニット44の柄は、第2伝達機構38の効率を増大させるために、鼓形ウォームギアと同様の凹状の輪郭(外観)を有する。
図5に示すように、ローラギアカムユニット44は、中央駆動部から軸方向に延伸している軸部分44a、44bを有している。そして、軸部分44a、44bの各端部付近において、各軸部分44a、44bは、ベアリング40a、41aによって支持されている。ベアリング40a、41aは、
図4に示されているように、ベアリングハウジング40、41内に含まれており、ローラギアカムユニット44の中央駆動部は、ハウジング45内に位置する。なお、ローラギアカムユニット44がカムローラ46と噛合することが可能なように、ハウジング45には開口部が設けられている。カムローラ46の回転動作によって、ローラギアカムユニット44からトルクが伝達される。カムローラ46は、らせん状リブのカム面の隣接する部分の間に形成されている、らせん状経路に沿って従動し、それによって、ローラギアカムユニット44が(第2モータ14の上から見たときに)時計回りに回転され、これにより、タレットユニット48は、
図10に示すように時計回りに回転する。図示されている形態において、60個のカムローラ46は、タレットユニット48の外輪部49の円周周りに、均等に配設されている。各カムローラ46は、タレットユニット48の中心から各カムローラ46の中心を通じて延伸する上記半径方向に整列した軸を中心として、回転可能である(
図6参照)。必要とされるカムローラ46の数は、主軸10のサイズおよび当該技術分野において既知であるような他の性能要件に応じて、決まる。
【0026】
タレットユニット48が主軸10と動作可能に係合し、第2モータ14が主軸10を駆動することを可能にするために、ロック機構52が設けられている。ここで、ロック機構52についてさらに詳細に説明する。一例としてのロック機構52は、主軸10およびタレットユニット48と動作可能に接続される、複数の結合要素(第一のレール58および第二のレール56を含む構成要素と把握できる)を有する。タレットユニット48を主軸10に固定するために、結合要素(より具体的に、
図6,7,11を参照して、第一のレール58と第二のレール56)が互いに一直線上に整列されるときに、主軸10およびタレットユニット48は、選択的にともに接続されることができる。結合要素が一直線上に整列されているとき、整列された結合要素の軸芯は、主軸10の円周に対して半径方向(主軸10の回転半径と把握できる)に延伸する。その後、たとえば
図7を参照して、嵌合部材66は、第一のレール58および第二のレール56にわたって、第一のレール58および第二のレール56の上記半径方向に延伸する軸芯に沿って、主軸10の中心に向かって、移動(摺動)する。これにより、第一のレール58および第二のレール56が一直線上の配列状態で固定され(つまり、嵌合部材66は、第一のレール58および第二のレール56と嵌合する、第一の状態と把握できる)、これにより、主軸10およびタレットユニット48がともに固定される(上記固定構成)。これにより、第2モータ14は、タレットユニット48およびロック機構52を介して、主軸10を駆動することができる。
【0027】
図6に例示するロック機構52は、第一のレール58、第二のレール56および第三のレール54を有する。第一のレール58は、主軸10に配設される。主軸10は、当該主軸10の外周面に固定的に取り付けられている、環状フランジ(以下、内輪部材64と称する)を有する。第一のレール58は、当該内輪部材64に取り付けられている。第二のレール56は、主軸10を囲繞している、タレットユニット48に配設される。タレットユニット48は、当該タレットユニット48の端面部に固定的に配設されている、環状フランジ(以下、外輪部材62と称する)を有する。第二のレール56は、外輪部材62に取り付けられている。内輪部材64は、外輪部材62の内径よりも、わずかに小さい外径を有する。よって、外輪部材62は、内輪部材64の周りにおいて、同軸上に配置される。たとえば
図6等に示すように、主軸10が所定の回転位置にあるとき、第一のレール58と第二のレール56と第三のレール54とは、同一直線上に配置される。また、
図3に示したように、主軸10(より具体的には、内輪部材64)とタレットユニット48との間には、ベアリングハウジング50が介在している。したがって、後述するように、嵌合部材66の摺動によって、第一のレール58と第二のレール56とが接続されていないとき(より具体的には、嵌合部材66が、第一のレール58と嵌合せず、第二のレール56と嵌合しているときであり、第二の状態と把握できる)、主軸10とタレットユニット48(より具体的には、内輪部材64と外輪部材62)とは、接続されず、主軸10とタレットユニット48は、ベアリングハウジング50により、互いに対して自由に回転することができる。第三のレール54は、主軸ハウジング16に取り付けられている(
図3参照)。つまり、第一のレール58は、主軸10の回転と共に回転し、第二のレール56は、タレットユニット48の回転と共に回転するが、第三のレール54は、工作機械1に固定的に取り付けられており、静止状態を維持する。なお、第二の状態では、嵌合部材66は、第一のレール58と嵌合せず、第二のレール56および第三のレール54と嵌合する。
【0028】
ロック機構52は、嵌合部材66をさらに有する。
図6に示すように、嵌合部材66は、略C字形状の断面を有し、各レール54,56,58と嵌合し、各レール54,56,58上を摺動するように、構成されている。嵌合部材66は、第一のレール58、第二のレール56および第三のレール54に沿って摺動する、直動ガイドである。上記で説明したように、ロック機構52の非ロック方向において(第二の状態において)、嵌合部材66は、第三のレール54および第二のレール56上に存在する。これにより、
図6,11,12に示すように、嵌合部材66による第一のレール58と第二のレール56との接続は解除され、第2伝達機構38は、主軸10から独立して動作可能に切り離される。したがって、第二の状態において、第1モータ12は、主軸10を回転させる。第2モータ14が主軸10を駆動することができるように、第1モータ12は、主軸10を定位置まで、すなわち第一のレール58が、主軸10の上の12時方向(所定の回転位置と把握できる)で、第二のレール56と一直線上に整列するまで、回転させる(たとえば、
図14の状態から
図13の状態となるように、第1モータ12は主軸10を回転する)。その後、嵌合部材66は、油圧アクチュエータ(駆動部と把握できる)68のようなアクチュエータによって、下向きに摺動し、嵌合部材66は、第一のレール58および第二のレール56上に配置される(つまり、嵌合部材66と、第一のレール58および第二のレール56とを、嵌合させる(第一の状態)、
図7,8参照)。これにより、嵌合部材66は、
図7,8に示すように、もはや第三のレール部分54のいずれの部分上にも存在しない。第一のレール58が第二のレール部分56と整列した定位置へと移動された後で、第2モータ14による駆動の前に、ギアボックス20は、第1モータ12を主軸10から独立して動作可能に切り離す(第1伝達機構18は、ニュートラルにする)。ロック機構52に対して釣り合いを持たせるために、1つまたは複数の追加の第一のレール60を、第一のレール58から離隔させて、内輪部材64に配設させても良い。たとえば、
図4,15に示されているように、追加の第一のレール部分60が、環状の内輪部材64上において、第一のレール部分58の反対側に配置される。
【0029】
たとえば、
図8−10,12−14等に示すように、油圧アクチュエータ68は、主軸ハウジング16(工作機械1)に固定されている。また、たとえば
図6に示すように、油圧アクチュエータ68が当接部70を有しており、嵌合部材66は、凸部72を有している。当接部70は、凸部72と選択的に噛合する。当接部70は、
図6に示すように、凸部72と噛合する凹部形状を有する。ロック機構52をロック状態に変移させるために、油圧アクチュエータ68は、当接部70を下向きに駆動変移させ、当接部70が、凸部72を押し下げることによって、嵌合部材66を第一のレール58に向けて押し下げる。
図6に示すように、当接部70は、凸部72と当接する部分において、カムフォロア74を有していても良い。カムフォロア74は、凸部72の上面と当接するために、当接部70の凹部形状内に主軸10の軸芯と並行な軸芯周りで回転可能に取り付けられる。嵌合部材66が完全に、第一のレール部58および第二のレール部分56上に存在すると、外輪部材62が内輪部材64に固定され、それによって、第2伝達機構38のタレットユニット48が主軸10に固定される。これにより、タレットユニット48は、主軸10とともに回転することができる。したがって、
図10に示すように、第一の状態(固定構成)において、第2モータ14が主軸10と動作可能に係合され、当該第2モータがタレットユニット48を回転することにより、各レール56,58および嵌合部材66を介して、主軸10を駆動することができる。
【0030】
嵌合部材66が第二のレール56および第一のレール58上に存在しており、第2モータ14による主軸10の回転により、嵌合部材66が内輪部材64および外輪部材62と共に回転している間、油圧アクチュエータ68は、延伸位置にあるままである(
図10参照)。この状態において、嵌合部材66が上記定位置に戻ったときに、当接部70が、嵌合部材66を第三のレール部分54および第二のレール部分56上の初期位置まで上向きに後退させ戻すことができるように、油圧アクチュエータ68により、当接部70は位置決めされる。当接部70は、主軸10などの回転半径方向において、凸部72と当接可能であり、主軸10等の回転方向において、凸部72と当接しない。つまり、当接部70は凹部形状を有するため、たとえばミル加工中などのように、第2モータ14によって主軸10が回転しても、凸部72は、当接部70の凹部の脚部間を通過することができる。凸部72が当接部70を通過するときに、当接部70が有するカムフォロア74は凸部72と接触するが、カムフォロア74は、当該接触時の両部材72,74間の接触抵抗を最小限に抑える。
【0031】
第2モータ14および第2伝達機構38を、主軸10から切り離すために、主軸10は、第二のレール56、第一のレール58および嵌合部材66が定位置に戻るまで、第2モータ14によって回転される必要がある。定位置において、各レール54,56,58は一直線上に整列し、油圧アクチュエータ68は、引き上げ動作が可能となる。つまり、
図11,12に示すように、嵌合部材66が、第三のレール54および第二のレール56上の初期位置に戻るまで(ロック機構52の非ロック方向に対応)、嵌合部材66は当接部70によって引き上げられる(第二の状態、非固定構成)。嵌合部材66がこの位置に戻ったことを確認するために、位置センサを用いることもできる。その後、第1モータ12は、ギアボックス20における中立状態から高速動作モードまたは中速動作モードへと移行し、その後、
図13および
図14に示すように、第1モータ12は、第1伝達機構18を通じて主軸10を駆動する。
【0032】
本実施の形態に係る工作機械1は、回転軸AXを中心に回転する主軸10と、主軸10を囲繞するタレットユニット48とを備える。さらに、当該工作機械1は、第一のレール58、第二のレール56および嵌合部材66を備える。嵌合部材66は、第一のレール58および第二のレール56に沿って移動する。そして、嵌合部材66は、第一の状態で、第一のレール58および第二のレール56と嵌合する。そして、嵌合部材66は、第二の状態で、第一のレール58と嵌合せず、第二のレール56と嵌合する。
【0033】
したがって、嵌合部材66が、第一のレール58および第二のレール56に沿って移動し、第二の状態から第一の状態へと移行させることができる。つまり、嵌合部材66は、第一のレール58および第二のレール56と嵌合し、主軸10をタレットユニット48に対して固定させる構成を実現する。このように、嵌合部材66は、第一のレール58および第二のレール56と嵌合するので、嵌合部材66と各レール58,56との間に隙間が発生させることを防止できる(換言すれば、遊び等の発生を防止できる)。したがって、主軸10の回転を高精度に制御することができるため、正確にかつ高精度に、当該ワーク8を機械加工することができる。
【0034】
また、本実施の形態に係る工作機械1では、嵌合部材66は、第一のレール58および第二のレール56上を摺動する。
【0035】
したがって、嵌合部材66と各レール56,58との間に遊び等が生じない状態で、スムーズに各レール56,58上を、嵌合部材66を移動させることができる。よって、嵌合部材66および各レール56,58の機械的摩耗を抑制することができる。
【0036】
また、本実施の形態に係る工作機械1では、タレットユニット48は、回転軸AXを中心に回転し、主軸10と別途独立に回転可能である。
【0037】
したがって、第一の状態において、主軸10とタレットユニット48と一緒に回転させることができ、第二の状態において、主軸10とタレットユニット48とを別個独立に回転させることができる。
【0038】
また、本実施の形態に係る工作機械1では、第一のレール58は、主軸10において、主軸10の回転半径に沿って、配設されている。そして、第二のレール56は、タレットユニット48において、回転半径に沿って、配設されている。
【0039】
したがって、嵌合部材66を当該回転半径方向に移動させる構成を採用することができ、当該回転半径方向の移動により、第一の状態と第二の状態との間の変移を実現することができる。
【0040】
また、本実施の形態に係る工作機械1では、工作機械1に固定的に取付けられる第三のレール54を備える。
【0041】
このように、第三のレール54の設置位置は固定なので、第一のレール58および第二のレール56が同一直線状に配置される所定の回転位置のマークとして、第三のレール54を利用することができる。つまり、工作機械1において、当該回転位置を設定等する必要が生じたときに、当該第三のレール54を用いることで、当該設定等が容易に実施できる。
【0042】
また、本実施の形態に係る工作機械1では、嵌合部材66を動かす油圧アクチュエータ68を、さらに備えている。また、嵌合部材66は、凸部72を有している。油圧アクチュエータ68は、当接部70を有する。当接部70は、回転半径方向において、凸部72と当接可能である。当接部70は、主軸10の回転方向において、凸部72と当接しない。たとえば、当接部70は、凸部72と噛合する凹部形状70Aを有する。
【0043】
したがって、油圧アクチュエータ68が凸部72と回転半径方向に当接することにより、油圧アクチュエータ68は、凸部72との当接を介して、嵌合部材66を各レール56,58上に移動させることができる。さらに、第一の状態において、油圧アクチュエータ68は、主軸10の回転に伴う各レール56,58および嵌合部材66の回転を妨げることもない。したがって、油圧アクチュエータ68を、主軸10を含む回転系に配設する必要はなく、固定系に配設することができる。つまり、油圧アクチュエータ68を、主軸10と共に回転させることを防止できる。よって、油圧アクチュエータ68を含む構成の単純化を図ることができ、油圧アクチュエータ68の回転による不具合発生も防止できる。
【0044】
また、本実施の形態1に係る工作機械1では、油圧アクチュエータ68は、凸部72と当接する部分において配設される、カムフォロア74を有する。
【0045】
したがって、主軸10の回転に伴う、油圧アクチュエータ68と凸部72との接触部における、衝撃および摩耗を防止することができる。
【0046】
また、本実施の形態に係る工作機械1では、ローラギアカムユニット44を、さらに備えており、タレットユニット48は、ローラギアカムユニット44と噛合する複数のカムフォロア46を有する。
【0047】
したがって、タレットユニット48を、遊び等がない状態で、回転させることができる。よって、タレットユニット48を正確にかつ高精度に回転させることができる。
【0048】
また、本実施の形態に係る工作機械1では、第1モータ12および第2モータ14を、さらに備えている。第1モータ12は、主軸10を回転する。第2モータ14は、タレットユニット48を介して、主軸10を回転する。たとえば、第1モータ12が主軸10を回転させる速度は、第2モータ14が主軸10を回転させる速度よりも、速い。
【0049】
したがって、第一の状態において、第2モータ14を用いて主軸10を回転させることにより、速度の遅い回転を利用した高精度の機械加工を実施することができる。また、第二の状態において、第1モータ12を用いて主軸10を回転させることにより、速度の速い回転を利用した機械加工を実施することができる。
【0050】
好ましい実施形態に関連して本発明を説明してきたが、本発明の原理および範囲内で、本発明の性質を説明するために記載および図示されている部品および構成要素の詳細、材料、および配列の様々な変更を、当業者が行うことは当然にできる。
本発明は、たとえ大きなワークであっても、正確にかつ高精度に機械加工することができる工作機械を提供する。本発明に係る工作機械(1)は、第一の回転体(10)、囲繞部(48)、第一のレール(58)、第二のレール(56)および嵌合部材(66)を備える。囲繞部(48)は、第一の回転体(10)を囲繞する。第一のレール(58)は、第一の回転体(10)に配設される。第二のレール(56)は、所定の回転位置において、第一のレール(58)と同一直線上に配置されるように、囲繞部(48)に配設される。嵌合部材(66)は、第一のレール(58)および第二のレール(56)に沿って移動し、第一の状態で、第一のレール(58)および第二のレール(56)と嵌合し、第二の状態で、第一のレール(58)と嵌合せず、第二のレール(56)と嵌合する。