(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、不定愁訴の原因となる筋肉のコリや痛みを治療する方法としては、ハップ剤や温灸、磁気治療具、低周波治療器などを用いる方法の他に、以下の特許文献1乃至4に示すような皮内電流を利用した皮接治療具を用いる方法が知られている。この皮接治療具は、N型半導体を負極とすると共に、これより電子親和力の高い鉱物(主として貴金属)を正極としてこれら正負極を皮外で電気的に接続した構造を有しており、離間したこれら正負極を同時に皮膚に接触させたときに皮内に発生する微弱なイオン電流(皮内電流)によって筋肉のコリや痛みを緩和するものである。
【0003】
この原理を用いた皮接治療具としては様々なものがあり、
図2は最も典型的な皮接治療具を示したものである。図において、符号111は金属からなる正極、112はN型半導体からなる負極、113はこれら正負極111、112を電気的に接続する導線、114はこの導線113の絶縁性被覆膜、115はこれらを皮膚接触面に形成した絶縁性基板、116はこの絶縁性基板115を載置した台座、117は皮膚、118は貼着手段である。絶縁性基板115には通常セラミクスが、また台座116には樹脂が用いられている。
【0004】
そして、図示するようにこの正負極111、112が皮膚117に接触すると、この皮膚117を含む電気的閉回路が形成され、正負極物質の電子親和力差によって負極112から正極111に導線113を伝って電子e
−が流れ負極112内には過剰正孔h
+が発生する。これら正負極111、112の過剰キャリアは皮内に注入されて、それぞれ電極下の皮内イオンを還元酸化し、この結果生じたイオンの相互拡散によりイオン電流Iが皮内を流れ、このイオン電流Iによって筋肉のコリや痛みが軽減されるものである。
【0005】
なお、イオン電流Iの大きさは、正負極物質の組み合わせで決まる起電圧値や正負極間距離などに依存するが、実際には製造コストや品質、また安全性の観点から正負極物質や極間距離は限定される。現在では、正極111の物質は貴金属、負極112の物質は酸化亜鉛が主に用いられ、極間距離は素子サイズにも限定されるため1〜2mmとなっている。また、導線113は、皮膚に対する安全性の観点から限流抵抗を含む場合が多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように微弱なイオン電流Iの通電によるコリや痛みに不定愁訴の緩解は、筋肉細胞や神経系細胞への電気刺激による生理活性化が起因するとみられるが、前記した材料やサイズの制限下でさらに短時間のうちに治癒効果を高める工夫が求められている。
【0008】
そこで、本発明はこれらの課題を解決するために案出されたものであり、その目的は従来よりも短時間で優れた治療効果を発揮できる新規な皮接治療具およびこれに用いる通電チップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記したような構成をした従来の皮接治療具による治癒効果を短時間のうちにさらに高めるために本発明では、新たな作用を与えるための構成を付加する。ひとつは遠赤外線輻射効果を高めるための構成であり、他のひとつは皮内イオン電流の高密度化効果を与える構成である。皮内組織の通電刺激に加えて、患部に遠赤外線を効果的に輻射することによって患部組織が昇温緩解することが期待される。また、通電回路電流を増やすことなく皮内のイオン電流密度を上げることができれば、高抵抗の表皮の通電損傷を防ぎつつ患部組織に与える電流刺激効果をより大きくすることができると期待される。
【0010】
そこで、前記課題を解決するために第1の発明は、絶縁性基板上に皮膚通電回路を有する通電チップと、当該通電チップを搭載する台座とを有する皮接治療具であって、前記絶縁性基板の誘電率ε
1が前記台座の誘電率ε
2よりも大きくなっていると共に、前記絶縁性基板と台座との間に緩衝材層を有し、当該緩衝材層の誘電率ε
3が、ε
1>ε
3>ε
2の関係となっていることを特徴とする皮接治療具である。このような構成によれば、皮膚への装着時に通電効果とともに患部皮内に遠赤外線が効果的に輻射されて当該部位を昇温せしめるため、患部組織が弛緩してより一層治癒効果を高めることができる。
【0011】
また、第2の発明は、第1の発明において、前記絶縁性基板が酸化アルミニウムまたは酸化タンタル、酸化ジルコニア、酸化チタンのいずれかからなると共に、前記台座がABS樹脂からなり、かつ前記緩衝材層がエポキシ樹脂またはフェノール樹脂、ポリイミド、ナイロン、ポリエチレン、メラミン、石英ガラス、鉛ガラスのいずれかからなることを特徴とする皮接治療具である。このような構成によれば、各部の誘電率を第1の発明に規定するように、ε
1>ε
3>ε
2の関係に維持することができる。
【0012】
第3の発明は、第1または第2の発明において、前記通電チップを搭載する台座を、前記皮膚通電回路が皮膚の表面に密着するように皮膚に貼着する貼着部材を有することを特徴とする皮接治療具である。このような構成によれば、体表面上の目的の患部に対して通電チップを簡単かつ確実に当接することができる。
【0013】
第4の発明は、金属からなる正極と半導体からなる負極とを導線で接続した皮膚通電回路を絶縁性基板上に有する通電チップであって、前記正極の周囲に当該正極用の金属材料またはこれと同等の電子親和力を有する材料からなる正極側島状領域を前記導線と非接触の状態で形成すると共に、前記負極の周囲に当該負極用の半導体材料またはこれと同等の電子親和力を有する材料からなる負極側島状領域を前記導線と非接触の状態で形成したことを特徴とする通電チップである。このような構成によれば、通電電流値自体を変えないで患部外に拡散する注入キャリアを患部領域に閉じ込めることにより、患部を流れるイオン電流値を高め、より効果的に治癒効果を上げることが可能になる。
【0014】
第5の発明は、第4の通電チップを台座に搭載したことを特徴とする皮接治療具である。このような皮接治療具を用いれば第1の発明と同様な作用効果を発揮する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、皮接治療具の装着時に通電効果とともに患部皮内に遠赤外線が効果的に輻射されて当該部位を昇温せしめるため、患部組織が弛緩して一層治癒効果を高めることができる。また、通電電流値自体を変えないで患部外に拡散する注入キャリアを患部領域に閉じ込めることにより、患部を流れるイオン電流値を高め、より効果的に治癒効果を上げることが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照しながら説明する。
図1は本発明に係る皮接治療具100の実施の一形態を示したものである。符号10は、皮膚17に密着して用いられる通電チップであり、この通電チップ10は、アルミナ(酸化アルミニウム:Al
2O
3)などのセラミクスからなる絶縁性基板15上に、金(Au)などの金属からなる正極11と、酸化亜鉛(ZnO)などの半導体からなる負極12と、これらを接続する極間導線13と、この極間導線13を絶縁する導線ガラス被覆膜14とからなる通電回路10aを印刷焼き付けによってその表面(皮膚接触面)に形成して構成されている。
【0018】
アルミナ(誘電率ε
1:9.5〜9.7)からなる絶縁性基板15は、通電回路10aが形成された面を除いてチップ搭載台座であるABS樹脂(誘電率ε
2:2.4〜4)からなる台座16に埋め込まれている。そして、この絶縁性基板15と台座16の間には、その誘電率ε3が絶縁性基板15よりも小さくかつ台座よりも大きい樹脂(ε
1>ε
3>ε
2)からなる緩衝材層20が介在されている。なお、この緩衝材層20の厚みは、通常10μm程度であるが、数μm以上であれば問題ない。また、この緩衝材層20は、絶縁性基板15が薄いときはその側面を除いて底面だけに形成されていてもよい。
【0019】
(実施例1)
さて、この緩衝材層20をエポキシ樹脂(誘電率4.5〜5)で構成した場合を実施例A、フェノール樹脂(誘電率6.0〜7.0)で構成した場合を実施例B、この緩衝材層20を介在させずアルミナ製の絶縁性基板15を直接ABS樹脂製の台座16に密着させた場合を実施例Cとし、同一サイズのものを同じ方法で10人の男性被験者の左腕内側に6時間貼付したのち取り外し、直後の貼付箇所皮膚温度を赤外線画像で測定した。なお、あらかじめ貼付前の同一箇所の皮膚温度は赤外線画像で測定してある。
【0020】
その結果、平均値で、実施例Aが31.81±0.25℃、実施例Bが31.51±0.33℃、実施例Cが30.88±0.38℃となり、いずれも貼付前の皮膚温度平均値である29.22±0.28℃を1度以上上回ったが、緩衝材層20を介在させた場合の優位性も明らかになった。本実施例の緩衝材層20の誘電率ε
3は、前述したようにアルミナ製の絶縁基板15の誘電率ε
1より小さく、かつABS樹脂製の台座16の誘電率ε
2より大きい。すなわちε
1>ε
3>ε
2の不等式が満足されている。
【0021】
(実施例2)
緩衝材層20の材料として前記以外にメラミン(誘電率7.8〜8.9)または鉛ガラス(誘電率6.0)を用いた。この場合も緩衝材層20を介在させない場合より貼付箇所の平均皮膚温度の上昇が認められた。これらの材料も前記不等式を満足している。
【0022】
(比較例1)
一方、緩衝材層20を構成する材料として、厚さ10〜20μmのフィルム状の酸化タンタル(Ta
2O
5:誘電率23)、または酸化チタン(TiO
2:誘電率59)をアルミナ製の絶縁性基板15とABS樹脂製の台座16との間に挟んだサンプルを作成した。このサンプルの場合、3人の被験者により前記と同様の実験を行って皮膚温度を測定した結果、平均でそれぞれ30.92±0.35℃、30.82±0.26℃であり、絶縁性基板15と台座16を直接接合した前記実施例Cの場合とほとんど変わらなかった。これら二つの材料の誘電率ε
3はアルミナ製の絶縁性基板15の誘電率ε
1より大きく、前記不等式を満足してしない。
【0023】
(比較例2)
また、緩衝材層20を構成する材料として、テフロン(登録商標)シート(誘電率2.1)またはクラウンガラス薄板(誘電率2.25)を挟んだサンプルも作成し、同様に男性被験者左腕内側の皮膚に貼付して皮膚温度の変化も調べた。この結果、ε
3>ε
1とした比較例1と同様、絶縁性基板15と台座16を直接接合した場合と実験前後で皮膚温度に有意差を見出すことはできなかった。この実験例の場合は、緩衝材層20の誘電率ε
3が絶縁性基板15や台座16の誘電率より小さく、ε
1>ε
2>ε
3の関係となっている。
【0024】
以上の実験結果から、絶縁性基板15と台座16の間に介在させる第三の物質としては、その誘電率ε
3がε
1>ε
3>ε
2を満足したときのみ皮膚昇温効果が増大することがわかった。異なる物質の界面に入射する光の反射光エネルギーは、フレネルの式で与えられる。r=(√ε
2−√ε
1)
2/(√ε
2+√ε
1)
2 ここでε
1、ε
2はそれぞれ界面を形成する物質の誘電率である。また、各√記号は、ε
1およびε
2にかかる。
【0025】
光屈折率nは√εで与えられ、屈折率の大きな物質から小さな物質の界面に入射した光はしきい角以上で全反射を起すことが知られている。本発明の皮接治療具100を皮膚に貼付した場合、皮内を流れるイオン電流によって組織が緩解し、血流が改善されて患部が局部的に昇温すると考えられるが、さらに本発明の皮接治療具100は熱伝導によって体温を吸収しそれ自体も昇温する。皮膚から放熱される熱は数μm〜10μm程度の波長を持つ赤外線であるが、絶縁性基板15を構成するアルミナは熱伝導率が優れているうえに波長変換機能も有する。
【0026】
近赤外の熱を波長16μm以上の成分を含む遠赤外線に変換して輻射するので皮膚17から直接絶縁性基板15に吸収された熱のほか、皮膚17からABS樹脂製の台座16に吸収された熱も熱伝導によりアルミナ製の絶縁性基板15に伝搬して遠赤外線に変換される。そして、この絶縁性基板15から皮膚17に輻射されるとき長波長化されているためにさらに深奥部まで熱が到達して加温効果を高める。
【0027】
前記フレネルの式は、皮膚17から直接アルミナ製の絶縁性基板15に入射した熱線の皮膚17以外の境界面から外に逃げる割合が絶縁性基板15との誘電率差が大きいほど小さくなることを示唆している。しかし、逆にこの差が大きいと皮膚17以外の境界面(台座16との境界面)から絶縁性基板15に入射する熱線の割合が小さくなる。緩衝材層20を介在させた前記実験結果はアルミナ製の絶縁性基板15とABS樹脂製の台座16の誘電率をそれぞれε
1、ε
2とするとき、ε
1>ε
3>ε
2を満足する誘電率ε
3を持つ第三の物質を両者の界面に存在させたときに絶縁性基板15に皮膚17および台座16より入射する熱の蓄積が第三の物質を介在させない場合より高まることを示唆している。しかし、逆に第三の物質の誘電率ε
3が基板の誘電率ε
1より大きな場合には、絶縁性基板15からの熱の放散が大きくなり蓄積効果が小さくなることを示唆している。
【0028】
緩衝材層20の材料である第三の物質としては、絶縁性基板15および台座16の構成材料として本実施例の如く、それぞれアルミナ、ABS樹脂を用いた場合には、実施例で示したエポキシ樹脂やフェノール樹脂のほか、ポリイミド、ナイロン、ポリエチレン、メラミンなどの樹脂、石英ガラス、鉛ガラスなども用いることができる。また、絶縁性基板15を酸化タンタル(Ta
2O
5)、酸化ジルコニア(ZrO
2)、酸化チタン(TiO
2)などの誘電率がアルミナより大きな材料で構成すれば、緩衝材層20の材料をメラミンなどさらに広い範囲から求めることが可能になる。これら緩衝材層20は、シート形状にすることもできるが、基板15と台座16との接着剤を兼ねることもできる。
【0029】
一方、本実施例で用いたアルミナ製の絶縁性基板15、ABS樹脂製の台座16の組み合わせにおいて、第三の物質を用いずにアルミナ基板15下のABS樹脂を局部的に一部溶融し、再冷却してアルミナ製の絶縁性基板15とABS樹脂製の台座16を溶着した構成について前記のように貼付実験と温度測定を行ったところ、31.08±0.55℃の好結果が得られた。
【0030】
そこで、ABS樹脂を深さ方向に斜め研磨し、その断面の密度を測定したところ、非溶融箇所に接している再固化箇所の密度が高まっていることがわかった。この領域のみが高密度化することにより、当該領域の屈折率が向上したのが原因と考えられる。従って、この例のようにアルミナ製の絶縁性基板15とABS樹脂製の台座16を溶着させることによってもその溶着部分が本発明に係る緩衝材層20として機能するため、前記実施例1および2と同様な効果が得られる。
【0031】
次に、
図3および
図4は本発明に係る皮接治療具100の他の実施の形態を示したものであり、それぞれ前述した通電チップ10を構成する絶縁性基板15上に形成された通電回路10aの印刷パターン(
図3)と、皮接時の皮内の電流パターン(
図4)を模式的に示したものである。先ず、
図3における符号11は金属からなる正極、12は半導体からなる負極、13はこれら正極11および負極12を接続する極間接続導線、14はこの極間接続導線13を被覆したガラス絶縁膜、21は正極11と同じ物質(金属)からなり、その周囲に設けられた正極側島状領域、22は負極12と同じ材料(半導体)かり、その外側に配置された負極側島状領域である。
【0032】
図3に示す通電チップ10は、前記実施の形態と同様にその絶縁性基板15を通電回路10a面以外を樹脂台座16上面中央部に埋め込まれて用いられる。また、
図4(A)は
図3中M−M’断面と皮内の電気的分布を示し、(B)は
図3に示す電極パターンのうち島状領域21,22を設けない従来構造のM−M’断面および皮内の電気的分布を模式的に示したものである。
【0033】
図3に示した本発明の皮接治療具100を皮膚17に貼着すると、
図4(A)に示すように金属製の電極11から電子e
−が、また、半導体製の負極12から正孔h
+が同時に皮内に注入される。注入された電子e
−は皮内のイオンを還元し、また、正孔h
+は皮内イオンを酸化する結果、イオン電流Iが発生して皮内を流れる。このイオン電流Iが前述したように皮内組織を刺激して治癒効果を発揮すると考えられる。そして、これら各電極11,12の周囲に配置された島状領域21、22との相互作用により高密度のイオン電流Iが流れるようになる。
【0034】
しかし、
図4(B)に示すように島状領域21、22がない従来構造では、注入されたキャリア(電子e
−、正孔h
+)の一部は、対向電極側に向かわず周辺に拡散する。これは通電回路10aに接した皮内にもともと電位分布が存在し、ポテンシャルの低いほうへキャリアが引きずられるためと考えられる。実際、この皮接治療具100を一定時間貼付後取り外し、直後に撮影した赤外線写真によれば、貼付位置近傍の別の場所(いわゆる経穴)に電流が流れ昇温している様子が観察された。
【0035】
このように対向電極11、12とは異なる方向に拡散したキャリアは、皮内で酸化還元イオンを作り出しても対向電極11、12間のイオン電流Iには寄与しないため、患部組織の通電刺激に貢献せず、従って治癒効果にとってはマイナスといえる。患部の治癒効果はイオン電流Iの密度が高いほど顕著になるが、電極11,12からの注入キャリア密度(すなわち回路電流値)を高めると金属電極11、半導体負極12に接触している表皮部位の抵抗値が高いため、電流による「かぶれ」を起しやすくなるので好ましくない。
【0036】
そこで、
図3に示したように、それぞれの電極11,12の周囲(外側)にそれぞれ正極側島状領域21、負極側島状領域22を設けておけば、
図4(A)に示すように皮接したときに正極側島状領域21は負に、また、負極側島状領域22は正に帯電する。これは、皮膚導電路を通じて電子親和力がより高い正極側島状領域21に負極側島状領域から電子が流れ込み、その結果、負極側島状領域22が電子不足の状態に陥ったためである。なおこれら、島状領域21,22にはそれぞれ電気的に独立しており、外部導線が接続されていないので島状領域間に電流が流れることはない。
【0037】
また、同図に示すように正に帯電した負極側島状領域22は皮内に正の電界を及ぼすため、負極から注入された正孔が正極11側以外の方向に拡散するのを妨げる効果を発揮する。また、図示してないが、同様に負に帯電した正極側島状領域21は皮内に負の電界を及ぼすため、正極11から注入された電子が負極12以外の方向に拡散するのを妨げる。
【0038】
このようにして電極11,12から注入されるキャリア(電子e
−、正孔h
+)密度を高めることなく、従来のものに比べて患部の皮内に高いイオン電流値を与えることができ、治癒効果を高めることができるのである。なお、本実施の形態では、島状領域21,22を形成する材料は、それぞれ正負極材料と同じとしたが本発明はこれに限定されるものでなく、各電極11,12と電子親和力をほぼ同じくする材料であれば、島状領域形成物質として用いうることは自明であろう。また、
図5に示すように各電極11,12を並列に配置した場合は、両側は円形の島状領域となり、その間は直線状の島状領域とすることで同様な作用効果が得られる。
【0039】
(実施例3)
絶縁性基板15として、縦横3mm×6mm、厚さ1mmのアルミナチップを用い、その片面に
図3に示したパターンの印刷焼き付けを行って通電チップ10を形成した。これを直径9mm,高さ2mmの円形ABS樹脂製の台座16の中央位置に通電回路10a面を残して埋め込み、貼着手段として台座16裏面に貼付した粘着シートとともにサンプルKを形成した。また、
図3に示したパターンから島状領域21,22を除いた他は、サンプルKと同じサイズ、パターンのサンプルLを形成した。Lは従来型素子である。これらサンプルK、Lを脊柱管狭窄症による腰痛患者18名を対象に貼着実験を行い、島状領域の有無による治癒効果を調べた。
【0040】
9名ずつに分けた患者グループの片方にサンプルKを、他方にサンプルLを、各患者の患部に4個ずつ、経穴(大腸兪、腎兪)に4個ずつ計8個を装着して1週間後に病状を調べた。その結果、島状領域21,22を備えたサンプルKを装着した患者群では、痛みがほぼ消失した患者数が6名、軽快した患者数が2名であった。一方、島状領域21,22がない従来タイプのサンプルLを装着した患者群では、痛みがほぼ消失した患者が3名、軽快した患者数は3名で明らかな優位差がみられた。
の関係とする。これにより、皮膚17への装着時に通電効果とともに患部皮内に遠赤外線が効果的に輻射されて当該部位を昇温せしめるため、患部組織が弛緩してより一層治癒効果を高めることができる。