【実施例】
【0042】
以下、実施例を用いて、本発明を詳細に説明する。以下の実施例及び比較例における履物用緩衝組成物の評価方法は下記の通りである。
【0043】
(1)ヘイズ値(透明性)
JIS K7136:2000に準拠して、ヘーズメーター(スガ試験機株式会社製ヘーズメーター、HZ−1)を用いて各試験片のヘイズ測定を行った。試験片としては、実施例及び比較例における各履物用緩衝組成物を縦50mm×横50mm×厚み3mmにそれぞれ成形したものを用いた。ヘイズ値が15%以下の場合を優良「○」、15%を超える場合を不可「×」とした。
【0044】
(2)硬度
JIS K6253に準拠するアスカー Cデュロメータ(SRIS 0101規格)を用いて、各試験片の硬度測定を行った。試験片としては、実施例及び比較例における各履物用緩衝組成物を縦60mm×横60mm×厚み12mmにそれぞれ成形したものを用いた。アスカーC50以下を良好「○」、50を超えた場合を不適「×」と判定した。
【0045】
(3)引裂強さ(強度)
JIS K6252−1 B法に準拠し、実施例及び比較例における各履物用緩衝組成物を切り込み無しアングル形状(ダンベルB型)に形成した試験片5枚について、引っ張り試験機(株式会社島津製作所製オートグラフ(登録商標)、AT−100N)で引っ張り速度500mm/minにて破断に至る最大荷重値F[N]を測定し、試験片の厚さt[m]で除して引裂強さを算出した。試験片5枚の引裂強さの中央値を挟む2つの値の平均値を引裂強さ(kN/m)とした。引裂強さの値が6kN/m以上の場合を優良「○」、6kN/m未満の場合を不可「×」と判定した。
【0046】
(4)耐熱性
図3を用いて耐熱性の試験方法について説明する。実施例及び比較例における各履物用緩衝組成物を35mm×10mm×厚さ3mmの短冊状に成形し、耐熱性試験用の試験片を得た。
図3(A)に示すように、試験片60を鉛直方向から30°傾斜させて、試験片60の片端30mm部分を露出させた状態で片梁状に試験片把持具61に取り付けた。この状態で試験片を治具と共にオーブン(ヤマト科学製 DKN602)内に入れ、温度85℃で10分間加熱した。加熱後、オーブンから治具ごと試験片60を取り出して室温まで冷却した。冷却後、
図3(B)に示すように、側面視における試験片60の表面側の稜線について、試験片把持具61に固定されていた部分Pの直線状の稜線を延長した線と、試験片60が熱変形して湾曲した外側の自由端Qの接線との交差角度θt
1を測定顕微鏡(ニコン社製MM−800/LFA)を用いて測定した。同様に、側面視における試験片60のもう一方の面(裏面)側の稜線について、試験片把持具61に固定されていた部分Pの直線状の稜線を延長した線と、試験片60が熱変形して湾曲した内側の自由端Qの接線との交差角度θt
2を測定した。測定された交差角度θtのうち、測定値が大きい方を熱変形角度θtとした。熱変形角度θtが90°以下の場合を優良「○」、90°超〜125°の場合を良「△」、125°を超えた場合を不適「×」と判定した。
【0047】
また、以下の実施例及び比較例におけるウレタン系コート剤による保護層で被覆された履物用緩衝部材の評価方法は下記の通りである。
【0048】
(1)ヘイズ値(透明性)
JIS K7136:2000に準拠して、ヘーズメーター(スガ試験機株式会社製ヘーズメーター、HZ−1)を用いて各試験片のヘイズ測定を行った。試験片としては、実施例及び比較例における各履物用緩衝組成物を縦50mm×横50mm×厚み3mmにそれぞれ成形し、その表面をウレタン系コート剤で処理したものを用いた。ヘイズ値が15%以下の場合を優良「○」、15%を超える場合を不可「×」とした。
【0049】
(2)硬度
JIS K6253に準拠するアスカー Cデュロメータ(SRIS 0101規格)を用いて、各試験片の硬度測定を行った。試験片としては、実施例及び比較例における各履物用緩衝組成物を縦60mm×横60mm×厚み12mmにそれぞれ成形し、その表面をウレタン系コート剤で処理したものを用いた。アスカーC50以下を良好「○」、50を超えた場合を不適「×」と判定した。
【0050】
(3)表面外観
硬度試験に用いた試験片について、商品価値の観点から、目視にて、傷、気泡、曇り及びムラの有無を確認し、表面外観を評価した。傷、気泡、曇り及びムラが無い場合を優良「〇」、傷、気泡、曇り及びムラのうち、少なくとも一つが確認されるが商品価値が許容される場合を良「△」、商品価値が無い場合を不可「×」と判断した。
【0051】
(4)剥離接着強さ(表3〜7においては、「接着強さ」と記載)
JIS K6854−3に準拠して、各試験片の剥離接着強さの測定を行った。
図4及び
図5を用いて剥離接着強さの試験方法について具体的に説明する。
図4は試料片50の構成を概略的に示しており、
図5は試料片の剥離接着強さ試験方法を図示している。
図4に示す試料片50は次のようにして作製した。実施例及び比較例における各履物用緩衝組成物をストリップ状(幅20mm×長さ60mm×厚さ3mm)にそれぞれ成形し、ストリップ表面をウレタン系コート剤で処理して試験片51とした。この試験片51を同じくストリップ状に作製したウレタン片52(株式会社クラレ製 クラミロンU2195、幅20mm×長さ60mm×厚さ3mm)と接着剤53によって接着し、試料片50を得た。より詳しくは、試験片51及びウレタン片52の表面をメチルエチルケトン(MEK)に浸したキムワイプ(登録商標)で拭いた後、60℃で3分間乾燥させた。試験片51のウレタン系コート剤で処理された面及びウレタン片52の片面にプライマー(ノーテープ工業株式会社製、G−6626)を塗布し、60℃で5分間乾燥させた。その上に接着剤(ノーテープ工業株式会社製、No.4950)を塗布し、60℃で5分間乾燥した後、速やかに試験片51及びウレタン片52を貼り合わせた。試験片51側を上にした状態で載置し、ハンドローラにて2〜3kgf/cm
2の力を加えて圧着させることによって、試料片50を得た。この試料片50を12時間養生した後、
図5(A)及び(B)に示すように、引っ張り試験機(株式会社島津製作所製オートグラフ(登録商標)、AT−100N)により、試料片50の試験片51とウレタン片52とを剥離させ、剥離接着強さを測定した。なお、
図5において、54は固定側引張り治具、55は可動側引張り治具である。ロードセルは1kN(100kgf)であり、試験スピードは50mm/分、固定側引張り治具54及び可動側引張り治具55間の初期間隙は20mmであった。
【0052】
(5)接着状態
剥離接着強さ試験を行った後の各試料片の剥離状態について、目視または顕微鏡観察により、各試験片の接着状態を評価した。材料破壊(被着体破壊)が生じていた場合を「AF」とし、履物用緩衝組成物の成形体とウレタン系コート剤による保護層との界面で界面剥離が生じた場合を「IP1」とし、ウレタン系コート剤による保護層とウレタン片52(被着材)との界面で界面剥離が生じた場合を「IP2」とした。
【0053】
接着性の評価としては、剥離接着強さが4kgf/20mm以上かつ材料破壊した試験片は接着性が優良「○」と評価し、剥離接着強さが4kgf/20mm未満または界面剥離した試験片は、接着性が不良「×」と評価した。
【0054】
また、以下の実施例及び比較例におけるウレタン系コート剤からなる保護層の評価方法は下記の通りである。
【0055】
(1)ヘイズ値(透明性)
実施例及び比較例におけるウレタン系コート剤をガラス板(平岡特殊硝子製作株式会社製 ソーダガラス:200mm×100mm×厚さ2.8mm)に塗布して室温で12時間以上静置後、70℃で2時間以上乾燥させ、次いで紫外線を照射(高圧水銀灯、積算光量2000mJ/cm
2)して硬化させてからガラス板から剥離して、厚さ50μmのシートをそれぞれ形成した。このシートを一辺50mmの正方形状に切り取り、試験片とした。JIS K7136:2000に準拠して、ヘーズメーター(スガ試験機株式会社製ヘーズメーター、HZ−1)を用いて、各試験片のヘイズ測定を行った。ヘイズ値が15%以下の場合を優良「○」、15%を超える場合を不可「×」、として透明性を評価した。
【0056】
(2)硬度
実施例及び比較例におけるウレタン系コート剤をガラス板(平岡特殊硝子製作株式会社製 ソーダガラス:200mm×100mm×厚さ2.8mm)に塗布して室温で12時間以上静置後、70℃で2時間以上乾燥させ、次いで紫外線を照射(高圧水銀灯、積算光量2000mJ/cm
2)して硬化させて、厚さ50μmのウレタン系コート剤を硬化させた保護層を試験片としてそれぞれ形成した。JIS K5600−5−4の引っかき硬度(鉛筆法)に準拠して、鉛筆硬度試験器(株式会社 安田精機製作所製 モデル553−M1、鉛筆:三菱鉛筆社製 Uni(登録商標)シリーズ)を用いて、試験片の硬度を測定した。鉛筆硬度が9B〜Fの場合を優良「○」、それ以外の場合を不可「×」と判定した。
【0057】
(3)柔軟性
実施例及び比較例におけるウレタン系コート剤をガラス板に塗布して室温で12時間以上静置後、70℃で2時間以上乾燥させ、次いで紫外線を照射(高圧水銀灯、積算光量2000mJ/cm
2)して硬化させてからガラス板から剥離して、厚さ50μmのシートをそれぞれ形成した。このシートを3号ダンベル形状に切り取り、各試験片とした。JIS K6251に準拠し、各試験片3枚について、引っ張り試験機(株式会社島津製作所製オートグラフ(登録商標)、AT−100N)にて引張り速度500mm/minの条件での引張伸び(破断伸度)[%]を測定した。引張伸びの値が100%以上の場合を優良「○」、100%未満の場合を不可「×」と判定した。
【0058】
(4)耐溶剤性
有機溶剤としてエタノールとメチルエチルケトンのそれぞれに対する各試験片の耐溶剤性を評価した。実施例及び比較例におけるウレタン系コート剤をガラス板に塗布して室温で12時間以上静置後、70℃で2時間以上乾燥させ、次いで紫外線を照射(高圧水銀灯、積算光量2000mJ/cm
2)して硬化させてからガラス板から剥離して、厚さ50μmのシートをそれぞれ形成して試験片とした。この試験片の重量M0を測定した後、有機溶剤に1分間浸漬してから取り出し、室温で12時間以上静置した。次いで70℃で2時間以上乾燥させた後の重量M1を測定した。そして、重量M0に対する重量M1の比率が90%以上の場合を耐溶剤性有りとした。メチルエチルケトンに対する耐溶剤性がある場合を優良「○」とし、メチルエチルケトンに対する耐溶剤性はないがエタノールに対する耐溶剤がある場合を良「△」と判定した。
【0059】
また、以下の実施例及び比較例で使用した各構成成分の仕様を表1及び表2に示す。ここで、表1中の分子量Mwは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により測定された重量平均分子量である。具体的には、分子量Mwは、測定装置としてSHODEX(登録商標)GPC−104(昭和電工株式会社製品)[分離カラムLF−404(3本連結)、ガードカラムLF−G、RI検出器RI−74S(いずれも昭和電工株式会社製品)]を用いて、溶離液をテトラヒドロフランとして、サンプル濃度10mg/4ml、溶離液流量0.3ml/min及びカラム温度40℃の条件で測定した。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
[実施例1]
以下の手順で本実施例の履物用緩衝組成物を製造し、その効果の評価を行った。表1に示すスチレン系熱可塑性エラストマー(A成分)のうち、SEBS(a1)として、スチレン含有量42%、重量平均分子量150000のSEBS(A104)を615g(20.5重量%)、アミン変性SEBS(a2)として、スチレン含有量30%、重量平均分子量67000のアミン変性SEBS(A201)を210g(7重量%)、SEEPS(a3)として、スチレン含有量30%、重量平均分子量85000のSEEPS(A301)を330g(11重量%)それぞれ個別に秤量した。次に、表1に示す軟化剤(B成分)のうち、重量平均分子量1200のパラフィンオイル(B103)を1845g(61.5重量%)秤量した。このパラフィンオイルのうち、1020g(34重量%)をa1成分に、210g(7重量%)をa2成分に、615g(20.5重量%)をa3成分に、それぞれ添加した。各ブロック共重合体とパラフィンオイルとを室温でそれぞれ混合した後、100℃で12時間加熱し、a1〜a3の各成分にパラフィンオイルをそれぞれ分散させた(予備分散工程)。パラフィンオイルを吸収させたa1〜a3のブロック共重合体を手攪拌でドライブレンドした後、バッチ式の二軸混練機(株式会社トーシン製 TD3‐10MDX型)で160〜180℃、回転数40rpmで15分間混練し(混練工程)、3kgの履物用緩衝組成物を得た。この組成物を上述した履物用緩衝組成物の各評価方法で用いる所定の試験片形状に150〜170℃の条件下で射出成形し、得られた試験片を用いて物性等の評価を行った。
【0063】
他方、得られた履物用緩衝組成物を、上述したウレタン系コート剤による保護層で被覆された履物用緩衝部材の各評価方法で用いる所定の試験片形状に150〜170℃の条件下で射出成型し、各成形体を得た。得られた成形体表面にプライマー剤(ノーテープ工業株式会社製、G−6626)を塗布し、70℃で乾燥させて略15μmのプライマー処理層を形成した。また、表2に示すウレタン系コート剤の構成成分のうち、ウレタンエマルジョン液(c1及びc4)としてポリカーボネート系ウレタン(C101)、光重合開始剤(c2)としてアルキルフェノン系とベンゾフェノン系の混合物(C201)、増粘剤(c3)としてエタノール(C301)を用い、重量比でc2/c1=0.04、c4/c1=2.3、c3/c1=0.83の配合比にて混合して、ウレタン系コート剤を得た。このウレタン系コート剤を成形体のプライマー処理層上に塗布し、室温で20分及び70℃で7分乾燥させ、次いで紫外線を照射(高圧水銀灯、積算光量2000mJ/cm
2)して硬化させ、ウレタン系コート剤による保護層で被覆された履物用緩衝部材の試験片を得た。この試験片を用いて物性等の評価を行った。
【0064】
[実施例2〜8]
履物用緩衝組成物の構成成分である、スチレン系熱可塑性エラストマー(A成分)と軟化剤(B成分)及びその配合比を以下表3に示すように夫々変更した以外は、実施例1と同様にして、各実施例の履物用緩衝組成物を得た。実施例1と同様に、得られた履物用緩衝組成物を用いて物性評価用の試験片を成形し、物性等の評価を行った。さらに、実施例1と同様にして、ウレタン系コート剤による保護層で被覆された履物用緩衝部材の試験片を作製し、物性等の評価を行った。
【0065】
実施例1〜8の結果を表3に示す。ここで、表3における「予備分散後のMFR差」とは、軟化剤(B)が分散された状態における成分a1〜a3の溶融粘度(MFR:メルトマスフローレート)について、溶融粘度が最も高い成分と最も低い成分の溶融粘度の値の差のことである。具体的には、予備分散処理後のa1〜a3成分について、JIS K7210−1B法に準拠して190℃におけるメルトマスフローレートを測定し、溶融粘度が最も高い値の成分と最も低い値の成分の溶融粘度の差を算出した値である(以降の表4〜7も同じ)。
【0066】
【表3】
【0067】
[実施例9〜16]
履物用緩衝組成物の構成成分である、スチレン系熱可塑性エラストマー(A成分)と軟化剤(B成分)及びその配合比を以下表4に示すように夫々変更した以外は、実施例1と同様にして、各実施例の履物用緩衝組成物を得た。実施例1と同様に、得られた履物用緩衝組成物を用いて物性評価用の試験片を成形し、物性等の評価を行った。さらに、実施例1と同様にして、ウレタン系コート剤による保護層で被覆された履物用緩衝部材の試験片を作製し、物性等の評価を行った。実施例9〜16の結果を表4に示す。
【0068】
【表4】
【0069】
[実施例17〜24]
履物用緩衝組成物の構成成分である、スチレン系熱可塑性エラストマー(A成分)と軟化剤(B成分)及びその配合比を以下表5に示すように夫々変更した以外は、実施例1と同様にして、各実施例の履物用緩衝組成物を得た。実施例1と同様に、得られた履物用緩衝組成物を用いて物性評価用の試験片を成形し、物性等の評価を行った。さらに、実施例1と同様にして、ウレタン系コート剤による保護層で被覆された履物用緩衝部材の試験片を作製し、物性等の評価を行った。実施例17〜24の結果を表5に示す。
【0070】
【表5】
【0071】
[比較例1〜4]
スチレン系熱可塑性エラストマー(A成分)と軟化剤(B成分)及びその配合比を以下表6に示すように夫々変更した以外は、実施例1と同様にして、各比較例の組成物を得た。実施例1と同様に、得られた組成物を用いて物性評価用の試験片を成形し、物性等の評価を行った。さらに、実施例1と同様にして、ウレタン系コート剤による保護層で被覆された緩衝部材の試験片を作製し、物性等の評価を行った。比較例1〜4の結果を表6に示す。
【0072】
【表6】
【0073】
[比較例5〜10]
スチレン系熱可塑性エラストマー(A成分)と軟化剤(B成分)及びその配合比を以下表7に示すように夫々変更した以外は、実施例1と同様にして、各比較例の組成物を得た。実施例1と同様に、得られた組成物を用いて物性評価用の試験片を成形し、物性等の評価を行った。さらに、実施例1と同様にして、ウレタン系コート剤による保護層で被覆された緩衝部材の試験片を作製し、物性等の評価を行った。比較例5〜10の結果を表7に示す。
【0074】
【表7】
【0075】
表3〜表5に示した実施例1〜24の結果から、本発明の組成物の構成とすることによって、透明性、柔軟性、機械的強度及び耐熱性に優れた成形体を形成する履物用緩衝組成物が得られることがわかった。さらに、これらの履物用緩衝組成物を用いて形成された、ウレタン系コート剤による保護層でコーティングした履物用緩衝部材は、他部材との接着性に優れていることがわかった。
【0076】
実施例4〜5と比較例1〜2との結果を比較すると、スチレン系熱可塑性エラストマー(A)を構成する成分a1〜a3の分子量の範囲が50000〜200000の範囲を外れると、保護層でコートされた緩衝部材の接着性が低下することがわかった。また、実施例7〜8と比較例3〜4との結果を比較すると、a1とa2のブロック共重合体のスチレン含有量が20〜55%の範囲を外れて低くなると引裂強さが低下し、スチレン含有量が20〜55%の範囲を外れて高くなると透明性が低下することがわかった。また、表4に示す実施例9〜16と表7に示す比較例5〜8との比較から、a1〜a3のブロック共重合体の配合割合が重量比で、a2/(a1+a2+a3)=0.08〜0.8またはa3/a1=0.35〜3.5のいずれかの範囲外となると保護層で被覆された履物用緩衝部材の接着性が低下すること、a2/(a1+a2+a3)の値が0.8を超える場合(比較例6)やa3/a1の値が3.5を超える場合(比較例8)には引裂強さも低下すること、a2/(a1+a2+a3)の値が0.8を超える場合(比較例6)やa3/a1の値が0.35未満の場合(比較例7)には、成分a3の配合量が少なくなるため、履物用緩衝組成物の成形体の耐熱性が劣ることがわかった。さらに、表5の実施例17〜22と表7の比較例9〜10との比較から、スチレン系熱可塑性エラストマー(A)と軟化剤(B)の配合割合について、重量比でA/(A+B)の値が0.5未満では硬度が高くなり柔軟性に乏しく、0.7を超えると軟化剤(B)が過剰添加のため、保護層で被覆された履物用緩衝部材の接着性が低下すると共に耐熱性も低下することから、A/(A+B)=0.5〜0.7の範囲が有効であることがわかった。なお、表1の実施例1と表5の実施例23及び24の結果から、軟化剤(B)としてパラフィンオイルを適用した場合には、パラフィンオイルの分子量が少なくとも400〜1200の範囲において本発明の効果を有することが確認された。
【0077】
[実施例25]
以下の手順で本実施例のウレタン系コート剤からなる保護層及びこの保護層でコートされた履物用緩衝部材を製造し、その効果の評価を行った。表2に示すウレタン系コート剤の構成成分のうち、ウレタンエマルジョン液(c1及びc4)としてポリカーボネート系ウレタン(C101)、光重合開始剤(c2)としてアルキルフェノン系とベンゾフェノン系の混合物(C201)、増粘剤(c3)としてエタノール(C301)を用い、以下表8に示す配合比にてよく混合し、本実施例のウレタン系コート剤を得た。得られたウレタン系コート剤をガラス板に塗布して、上述した保護層の各評価方法で用いる所定の試験片を作製し、得られた試験片を用いて物性等の評価を行った。他方、上記実施例1〜24で得られた履物用緩衝組成物について、上述したウレタン系コート剤による保護層で被覆された履物用緩衝部材の各評価方法で用いる所定の試験片形状に、150〜170℃の条件下でそれぞれ射出成型して各成形体を得た。得られた各成形体表面にプライマー剤(ノーテープ工業株式会社製、G−6626)を塗布し、70℃で乾燥させて略15μmのプライマー処理層を形成した。本実施例で得たウレタン系コート剤を各成形体のプライマー処理層上に塗布し、室温で20分及び70℃で7分乾燥させ、次いで紫外線を照射(高圧水銀灯、積算光量2000mJ/cm
2)して硬化させ、ウレタン系コート剤による保護層で被覆された履物用緩衝部材の試験片を得た。この試験片を用いて物性等の評価を行った。
【0078】
[実施例26〜33]
ウレタン系コート剤の配合を以下表8に示すように夫々変更した以外は、実施例25と同様にして、各実施例のウレタン系コート剤を得た。実施例25と同様に、得られたウレタン系コート剤を用いて物性評価用の試験片を成形し、物性等の評価を行った。さらに、実施例25と同様にして、実施例1〜24で得られた履物用緩衝組成物の成形体を用いて、ウレタン系コート剤による保護層で被覆された履物用緩衝部材の試験片を作製し、物性等の評価を行った。
【0079】
実施例25〜33の結果を表8に示す。
【0080】
【表8】
【0081】
[実施例34〜37]
ウレタン系コート剤の配合を以下表9に示すように夫々変更した以外は、実施例25と同様にして、各実施例のウレタン系コート剤を得た。実施例25と同様に、得られたウレタン系コート剤を用いて物性評価用の試験片を成形し、物性等の評価を行った。さらに、実施例25と同様にして、実施例1〜24で得られた履物用緩衝組成物の成形体を用いて、ウレタン系コート剤による保護層で被覆された履物用緩衝部材の試験片を作製し、物性等の評価を行った。実施例34〜37の結果を表9に示す。
【0082】
【表9】
【0083】
[比較例11〜15]
ウレタン系コート剤の配合を以下表10に示すように夫々変更した以外は、実施例25と同様にして、各比較例のウレタン系コート剤を得た。実施例25と同様に、得られたウレタン系コート剤を用いて物性評価用の試験片を成形し、物性等の評価を行った。さらに、実施例25と同様にして、実施例1〜24で得られた履物用緩衝組成物の成形体を用いて、ウレタン系コート剤による保護層で被覆された緩衝部材の試験片を作製し、物性等の評価を行った。比較例11〜15の結果を表10に示す。
【0084】
【表10】
【0085】
表8〜9の実施例25〜37と表10の比較例11〜15との比較から、ウレタン系コート剤の各構成成分の重量比での配合割合について、良好な保護層が得られる範囲が明らかとなった。また、表8の実施例30〜31と実施例32〜33との比較から、増粘剤(c3)と反応性ポリカーボネート系ウレタン(c1)の配合割合c3/c1の値を重量比で0.3〜3.5の範囲とすることで、保護層で被覆された履物用緩衝部材の表面には気泡等の発生が無くなり、より優れた外観性を有するようになることがわかった。また、表9の実施例34〜35の結果から、増粘剤(c3)をエタノール以外の成分とした場合にも、同様の効果が得られることがわかった。さらに、表8の実施例25と表9の実施例36〜37との比較から、保護層の耐溶剤性や柔軟性の観点から、反応性ウレタン(c1)成分としては、ポリカーボネート系ウレタンが特に好適であることがわかった。
【0086】
[実施例38〜40]
実施例1において、予備分散工程でスチレン系熱可塑性エラストマー(A)を構成する成分a1〜a3それぞれに対して個々に吸収させる軟化剤(B)の分配割合を表11の通りとした以外は、実施例1と同様にして各実施例の履物用緩衝組成物を得た。表11中におけるBi/ai(ここでi=1,2,3)の値は、a1〜a3の各成分に対する軟化剤(B)の配合割合を示している。また、表中のMFRは190℃における各a1〜a3成分の溶融粘度(メルトマスフローレート、JIS K7210−1B法)であり、軟化剤(B)を分散させる前(処理前)と分散させた後(処理後)のa1〜a3成分それぞれの溶融粘度を測定した。また、分散処理後の溶融粘度(MFR)について、a1〜a3成分のうち、最も高い値の成分と最も低い値の成分の溶融粘度の差を算出した。得られた履物用緩衝組成物を用いて、混練工程後の組成物の分散性(外観)について評価を行った。分散性の評価は目視による外観評価とし、分散が不十分な不均一相が無い場合を良好「○」、不均一相を含んでいたり白濁して透明性が著しく悪い場合を不適「×」とした。また、この履物用緩衝組成物を上述した履物用緩衝組成物の各評価方法で用いる所定の試験片形状に150〜170℃の条件下で射出成形し、得られた試験片を用いて物性等の評価を行った。さらに、実施例1と同様にして、ウレタン系コート剤による保護層で被覆された履物用緩衝部材の試験片を作製し、接着性の評価を行った。
【0087】
[比較例16]
実施例1において、スチレン系熱可塑性エラストマー(A)を構成する成分a1〜a3をよく混合してから、その混合物に対して軟化剤(B)を添加して分散させた以外は、実施例1と同様にして、実施例1と同様にして本比較例の組成物を得た。すなわち、本比較例では、軟化剤(B)を予めスチレン系熱可塑性エラストマー(A)を構成する成分a1〜a3に分散させる工程(予備分散工程)を経ていない。実施例38〜40と同様に、得られた組成物を用いて混練工程後の組成物の分散性(外観)について評価を行った。また、この組成物を上述した履物用緩衝組成物の各評価方法で用いる所定の試験片形状に150〜170℃の条件下で射出成形し、得られた試験片を用いて物性等の評価を行った。さらに、実施例1と同様にして、ウレタン系コート剤による保護層で被覆された緩衝部材の試験片を作製し、接着性の評価を行った。
【0088】
実施例38〜40及び比較例16の結果を実施例1の結果とともに表11に示す。
【0089】
【表11】
【0090】
表11の実施例38〜40の履物用緩衝組成物は、分散性が良好であり、透明性、引裂強さ及び硬度も良好な結果であった。一方、比較例16の組成物は、混練後の組成物にマクロな不均一相が生じており、その不均一相によって透明性等の全ての物性値においてばらつきが大きく、品質の安定性の観点から不適であることがわかった。このことから、予備分散工程において、スチレン系熱可塑性エラストマー(A)を構成する各成分に軟化剤(B)を予め分散させておくことにより、混練工程で均一に分散されやすくなって、各特性に優れ、品質が安定した履物用緩衝組成物が得られることがわかった。また、実施例1、38及び39と実施例40との比較から、予備分散工程でスチレン系熱可塑性エラストマー(A)を構成するa1〜a3成分それぞれに軟化剤(B)を吸収させるにあたり、同一温度における各成分a1〜a3の溶融粘度が高いものほど、単位重量当たりの軟化剤(B)の分配割合を大きくした配合とすることにより、各特性に優れた履物用緩衝組成物が得られることがわかった。これは、上述のような配合とすることにより、成分a1〜a3固有の溶融粘度の差が小さくなり、加熱混練工程で均一に各成分が分散されやすくなるためと考えられる。なお、表3〜7にはa1〜a3成分の予備分散処理前の溶融粘度の値は記載していないが、実施例2〜24において、a1〜a3成分の溶融粘度の大小関係は、実施例4だけa2≦a1<a3であるが、他の実施例はa2成分の溶融粘度が比較的小さく、a1成分とa3成分の溶融粘度は共に大きい(すなわち、a2<a3≦a1またはa2<a1≦a3)であり、実施例4以外は、各成分の溶融粘度の大小関係と単位重量当たりの軟化剤(B)の分配量とを対応させた配合としている。さらに、実施例1及び38と、実施例39との比較から、A成分の構成が同じであれば、軟化剤(B)を吸収させた後の成分a1〜a3の各MFR(g/10min)について、最も高い成分と最も低い値の成分のMFRの差が108以下になるように調整すると、ヘイズ値がより小さくなり、透明度が向上することがわかった。このことより、分散後の各a1〜a3成分のMFRの値が上述の範囲に収まるように軟化剤(B)の分配分散量を調整することにより、特に混練工程での均一分散性が一層向上し、透明性をはじめとした各物性に優れる組成物が得られることがわかった。
【0091】
本発明は、上記の実施形態又は実施例に限定されるものでなく、特許請求の範囲に記載された発明の要旨を逸脱しない範囲内での種々、設計変更した形態も技術的範囲に含まれるものである。