【実施例】
【0043】
図1は、本件発明の一実施例に係るドライブレコーダを備えた車室の正面図である。
図2は、ドライブレコーダを一部切欠き、車外側からみたときの外観斜視図であり、
図3は、ドライブレコーダを車内側からみたときの外観斜視図を示す。
【0044】
図1において、ドライブレコーダ1は、自動車等の車両の車室2のフロントガラス3の上部に固定されたルームミラー4に隣接するように取り付けられる。これにより、ドライブレコーダ1は、運転者が座席に着座した状態でその目線の高さに設置される。また、ドライブレコーダ1は、車室2のシガー電源5とケーブル6を介して接続され、このシガー電源5からの電力供給により動作する。
【0045】
図2および
図3において、ドライブレコーダ1は、合成樹脂からなる略円柱形の第1ないし第3ケース体11,12,13を直列に突き合わせることで構成されている。第1ケース体11の一端部には、円形のキャップ14が冠着され、このキャップ14の外周には、径方向に凹凸形状を設けて形成した滑り止め14aが形成され、キャップ14には、ドライブレコーダ1の取り付け用のブラケット15が隣接している。
【0046】
ブラケット15は、リング部15aと、このリング部15aの外周の一部から径方向外方に突出する支持脚部15bと、支持脚部15bの上端(リング部15側と反対側の端)に形成された取り付けプレート15cを備え、リング部15aは第1ケース体11の外周に接触した状態で摺り動くように巻き巡らされている。
【0047】
取り付けプレート15c上面の取り付け面15dは、リング部15aの外周に接する接線方向を基準面としてその基準面を周方向の一方に向って傾斜させたような傾斜面として形成されている。
【0048】
取り付け面15dには、両面テープ(図示略す)その他の接着部材が取り付けられ、その接着部材を用いて、ドライブレコーダ1は、車両の各種フロントガラスの角度に合わせて調整可能に接着して固定される。
即ち、取り付け面15dは、フロントガラスの角度と平行になるが、取り付け面15dに対する第1ないし第3ケース体11,12,13の相対角度が調節されるので、取り付け面15dの角度に関係なく、第1ないし第3ケース体11,12,13を所望の角度に保持することができる。
【0049】
第3ケース体13には、受光素子としてCCDやCMOSを用いた車内監視カメラ18が設けられ、第1ケース体11には、受光素子としてCCDやCMOSを用いた前方監視カメラ19が設けられている。なお、車内監視カメラ18および前方監視カメラ19は、例えば撮像管や撮像素子等の光電変換手段と、この光電変換手段に対して光を入射させる光学系とを備える。
【0050】
車内監視カメラ18および前方監視カメラ19は、入射光を電気信号に変換する受光素子と、受光素子に光を入射させる光学系と、受光素子から出力された電気信号に所定の処理を行なう処理部等で構成され、時系列に複数の画像データを取得する。例えば、1秒間に30フレームの割合で画像データを取得する。
【0051】
第1ないし第3ケース体11,12,13は、左右方向に回転するように突き合わされ、第1ケース体11と第2ケース体12の間および第2ケース体12と第3ケース体13の間には、回転範囲を360°以内の所定範囲に規制する規制手段(図示略す)が設けられている。これにより、第2および第3ケース体12,13は、360°以内の所定範囲に保持される。
【0052】
第2ケース体12内には、車両の加速度を検出する加速度センサ16が内蔵され、第2ケース体12の外周には、加速度センサ16の基準となる水平位置を示すことができる指標としての水平ライン17が窪んだ状態に設けられ、この水平ライン17が水平位置にある場合に正しい加速度を検出することができる基準位置としている。なお、加速度センサ16は、ドライブレコーダ1に設けられる他、車両側に搭載される場合がある。その際は、ドライブレコーダ1に、コネクタ等を介して加速度データを取得する手段が設けられる。
【0053】
前方監視カメラ19は、前部に撮像レンズ19aを有し、この撮像レンズ19aの前面下部には、
図4に示すような薄型軽量の矩形状を呈するフレネルレンズ36(「拡大手段」に相当する。)が取り付け具21により着脱可能に取り付けられている。
【0054】
この取り付け具21は、
図2、
図5に示すように、フレネルレンズ36の上下方向のほぼ中心部であってフレネルレンズ36の左右それぞれの端部から帯状の係止片を前方監視カメラ19側(フレネルレンズ36の背面の法線方向)にそれぞれ突出させて設けており、この左右の係止片が板バネ状に作用することで、第1ケース体11から突出した前方監視カメラ19の側面を挟んで係止させる構成となっている。
【0055】
また、左右の係止片には、前方監視カメラ19の側面にそれぞれ対向する四角柱状の凸部が設けられるとともに、前方監視カメラ19の側面には当該凸部に対応する凹部が設けられ、凸部を凹部に嵌め合わせることで、フレネルレンズ36が前方監視カメラ19に固定される。そして、左右の係止片を左右方向に広げて凸部を凹部から離脱させてフレネルレンズ36を前方監視カメラ19から取り外すことができる。
【0056】
このように、フレネルレンズ36を着脱式にしたことで、既存の各種監視カメラへの装着が可能となり、汎用性が向上するとともに、フレネルレンズ36の交換が容易になるので、コスト低減とメンテナンスの向上が図られる。なお、フレネルレンズ36は、溝の深さを一定として、レンズピッチを変調させたものであり、全体の厚さは一定である。また、中央部においては屈折角が小さく、両端部では屈折角が大きくなっている。
【0057】
図5および
図6はそれぞれ前方監視カメラ19を正面及び側面からみた模式図である。
フレネルレンズ36の材料には、加工の容易さから透明樹脂が好適に使用される。フレネルレンズ36は、撮像レンズ19aに所定間隔をおいて対面し、平行光を集光して(
図6参照)、前方監視カメラ19の撮像範囲の下部領域を光学的に拡大するものである。
この場合、撮像範囲の下部領域とは、例えば前方車両の撮像範囲の3分の1の略矩形状の範囲をいい、一般的には自車両のボンネットやダッシュボードが常に映し出される領域をいう。
【0058】
また、フレネルレンズ36は、薄型軽量であることから、前方監視カメラ19の小型コンパクト化が図られ、前方監視カメラ19への取り付けが簡単になり、取り外しやスライド調整ができる構造に簡単に改造することもできる。
前方監視カメラ19には、
図5および
図6に示すように、撮像レンズ19aとフレネルレンズ36との距離を変更する位置変更手段35を設けてもよく、前方監視カメラ19の撮像範囲において、光学的に拡大される所定領域の位置が変更できるようにしてもよい。この位置変更手段35を有する例については後述する変形例で述べる。
【0059】
図7は、ドライブレコーダの機能ブロック図を示す。
図7において、ドライブレコーダ1には、制御プログラムに従い、各種モジュールの制御を行なうCPU31が設けられている。
即ち、CPU31は、車内監視カメラ18および前方監視カメラ19の駆動を制御し、画像処理や画像データの蓄積等の制御を行ない、前方監視カメラ19の撮像画像に基づき、車内監視カメラ18のオン/オフの切り換えを行なうように車内監視制御部34に指示する。これにより、前方監視カメラ19の撮像画像に基づき、車両の移動が開始したことを検出した後に、車内監視カメラ18による撮像を開始して、居眠り運転等の検出を行なう。
【0060】
また、CPU31の指示により、車内監視カメラ18および前方監視カメラ19の撮影画像が、A/Dコンバータ32で、A/D変換された後、所定の画像処理が施される。そして、処理後の画像データは、一次記憶部であるSDRAM33に蓄積される。
SDRAM33には、車内監視カメラ18および前方監視カメラ19で時系列に取得された画像データが順次圧縮され記憶される。SDRAM33では、画像データがデータエリアの先頭から末尾に向かって順次書き込まれ、末尾に達したら再び先頭から末尾に向かって順次書き込む巡回書き込み制御が行なわれる。
【0061】
そして、加速度センサ16により車両の加速度が所定値以上になったことが検出されると、事故イベントの発生タイミングと、これを含む前後の所定期間または事故イベント発生前の所定期間内に取得した画像データが、SDメモリカード39に記憶される。
このように、SDメモリカード39には、事故イベントのタイミングで所定の時間分だけの画像データが記憶されるので、必要な画像データが効率的に提供されるとともに、SDメモリカード39の容量の節約が図られる。
【0062】
次に、かかる構成のドライブレコーダ1の動作を説明する。
先ず、車両側から電源が供給されると、前方監視カメラ19が撮像動作を開始する。車両が動き始めると、前方監視カメラ19によって撮影されている画像が移動する。これにより、車両が動きはじめたことが検出され、車内監視制御部34により車内監視カメラ18が運転者の顔面および車内の撮影を開始する。
【0063】
車内監視カメラ18および前方監視カメラ19が撮像した画像データは、SDRAM33に順次蓄積される。この場合、前方監視カメラ19の撮像範囲の下部領域は、光学的に拡大されている。SDRAM33は、常に最新の一定量の画像データが蓄積されるようになっており、一定量の画像データが蓄積された後は、順次、新たな画像データが上書きされる。
【0064】
また、CPU31は、車両の運転中において、加速度センサ16からの検出信号に基づき、事故イベントの発生が検出されると、この発生タイミングでSDRAM33に格納されている事故イベントを含む前後の所定期間に取得した画像データをSDメモリカード39に記憶する。
【0065】
図8に、SDメモリカード39に記憶された前方車両の撮像画像を示す。
図8において、前方車両の撮像画像50の3分の1に当たる略矩形状の下部領域52は、フレネルレンズ36により光学的に拡大され、その確認が容易になる。即ち、前方の車両画像51の下部領域52、例えばナンバープレートの拡大画像が、通常自車両のボンネットやダッシュボードが映し出される領域上に表示される。
【0066】
これにより、ナンバープレートの確認が容易になることは勿論、撮像画像中に無駄な領域が無くなり、画像データが有効に利用される。従って、前方監視カメラ19として、低解像度カメラが使用できるので、画像ファイルサイズの増大が回避され、長時間の撮像が可能になり、コスト低減を行なうこともできる。
【0067】
本発明に係るドライブレコーダは、上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得る。
例えば、前方監視カメラ19は、撮像レンズ19aで構成されるものの他、複数のレンズからなるレンズ群で構成してもよい。前方監視カメラ19として、ピンホールカメラのようにレンズを有しないものを用いてもよい。また、撮像レンズ19aの内部に拡大レンズを形成してもよい。
【0068】
前方監視カメラ19には、
図5および
図6に示すように、撮像レンズ19aとフレネルレンズ36との距離を変更する位置変更手段35を設けてもよい。前方監視カメラ19の撮像範囲において、光学的に拡大される所定領域の位置が変更する構成である。
【0069】
例えば、位置変更手段35は、前方監視カメラ19の撮像面と平行な面の範囲内で、光学的に拡大される下部領域52の位置を変更する機構を設けてもよい。例えば、前方監視カメラ19の側面に設ける凹部を複数個として複数の異なる位置でフレネルレンズ36の係止片に設けた凸部が嵌め合い可能なように構成する。
【0070】
また、位置変更手段35は、下部領域52と前方監視カメラ19の撮像面とのなす角度を変更する機構を設けてもよい。例えば、複数の凹部について、四角柱状に刳り抜かれたそれぞれの凹部の角度を異なるものとすることで下部領域52と前方監視カメラ19の撮像面とのなす角度を変更可能な構成とするとよい。
【0071】
フレネルレンズ36は、撮像レンズ19aの表面の接線方向に傾けて配置するとよい。例えば、前方監視カメラ19の側面側から見た四角柱状に刳り抜かれたそれぞれの凹部の四角形の左右の辺の方向を、撮像レンズ19aの表面の接線方向となる角度に設定するとよい。これによれば、撮像画像50の歪みが減少し、車両のナンバープレートの画像の歪みが防止される。また、フレネルレンズ36は、撮像レンズ19aの他に、車内監視カメラ18を構成する撮像レンズの前面下部に設置してもよい。
【0072】
また、加速度センサ16が所定値以上の加速度を検出した前後の時間帯と、加速度センサ16が所定値以上の加速度を検出していない時間帯とに撮像された画像データにおいて、フレネルレンズ36によって拡大される画像領域に、前方車両のナンバープレートの画像を含ませ、前方車両との車間距離が所定距離以下になったとき、前方車両ナンバープレートをフレネルレンズ36によって拡大してもよい。
【0073】
これによれば、前方車両と所定の車間距離以下となった場合にその前方車両のナンバープレートが拡大された画像データが記憶される。例えば、常時、周辺状況を撮像し、撮像された画像データを記録する場合、事故発生時前後以外の平常の走行時の画像データの中にボンネット画像等の無駄を生じることなく、特に平常の走行時の画像データの有効利用が図られる。例えば、所定の車間距離を数十m(例えば10メートル)として一般的な車両のナンバープレートを拡大した画像データが得られる。
【0074】
また、フレネルレンズ36に代えて、
図9および
図10に示すフレネルレンズ37、38を用いてもよい。
即ち、
図9に示すフレネルレンズ37は、薄く平らな透明部材に同心円状の鋸波型の環状溝部37aを密に施したものであり、各環状溝部37aの入射面は曲率を持たないフラットな面に形成されている。
また、各環状溝部37aの入射面の角度(フレネルレンズ37の光軸の垂直方向に対する角度)は全て異なり、各環状溝部37aを通過した平行光がフレネルレンズ37の焦点Fに向かうように設定されている。
【0075】
図10に示すフレネルレンズ38は、所定間隔で配列された板状の複数のレンズ部38aによって構成され、中央を境として対称形状になるように形成され、隣接するレンズ部38a間には、隙間38bが形成されている。そして、複数のレンズ部38aは、平行光を共通の焦点Fに収束する。
【0076】
また、上述した各実施例では、フレネルレンズ38を拡大手段として用いたがこれに限らず一般的な凸レンズを用いてもよい。またレンズの形状も矩形状ではなく、円形、半円円形としてもよい。例えば小型の虫眼鏡を撮像レンズ19aの前面に固定する構成としてもよい。
【0077】
また、
図11に示すドライブレコーダ100は、車内監視カメラ108を前方監視カメラ19より画角の狭いレンズで構成し、前方やや下向きに向けている態様を示す。このように、前方監視カメラ19の撮像範囲において車両のナンバープレートを含む下部領域52を撮像してもよい。
【0078】
これにより、下部領域52が車内監視カメラ108により拡大して表示されるので、画像ファイルを増大させることなく、低コストで画像データが有効利用される。本態様では、車内監視カメラ108は上記のように車内ではなく車外を監視する。なお、ドライブレコーダ100において、車内監視カメラ108以外の構成は、フレネルレンズ36と取り付け具21を外したことを除いてドライブレコーダ1と同一であるので、同一構成部分には同一符号を付して、その説明を割愛する。
【0079】
なお、上述した実施例に限らず[課題を解決するための手段]の項の中に記載した構成要素や実施例を上述した各実施例と適宜組み合わせてドライブレコーダを構成すると特によい。