(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の所定距離を、前記皮膚及び脂肪層の厚みと、前記第1の所定距離と、前記発光手段から前記第1の所定距離だけ離間した位置で受光したときの前記皮膚の測定感度及び前記子宮筋の層の測定感度との予め求められた関係に基づいて求められる、前記皮膚及び脂肪層の厚みに対応する距離とし、
前記第2の所定距離を、前記皮膚及び脂肪層の厚みと、前記第2の所定距離と、前記発光手段から前記第2の所定距離だけ離間した位置で受光したときの前記皮膚及び脂肪層の測定感度及び前記子宮筋の層の測定感度との予め求められた関係に基づいて求められる、前記皮膚及び脂肪層の厚みに対応する距離とした請求項1記載の光学的測定装置。
前記第1算出手段は、前記皮膚及び脂肪層の厚み毎に予め求められた、前記皮膚の測定感度と前記子宮筋の層の測定感度とが一致する前記第1の所定距離に基づいて、前記取得した皮膚及び脂肪層の厚みに対応する前記第1の所定距離を算出する請求項1記載の光学的測定装置。
前記第1算出手段は、前記皮膚及び脂肪層の厚みと、前記皮膚の測定感度と前記子宮筋の層の測定感度とが一致する前記第1の所定距離との関係を表わす関係式に基づいて、前記取得した皮膚及び脂肪層の厚みに対応する前記第1の所定距離を算出する請求項1記載の光学的測定装置。
前記第2算出手段は、前記皮膚及び脂肪層の厚み毎に予め求められた、前記皮膚及び脂肪層の測定感度と前記子宮筋の層の測定感度との比の変動係数と、前記第2の所定距離との関係に基づいて、前記取得した皮膚及び脂肪層の厚みにおいて、変動係数が最小となる距離に対応し、かつ、前記最小となる距離より遠い距離を、前記第2の所定距離として算出する請求項1記載の光学的測定装置。
前記第2算出手段は、前記皮膚及び脂肪層の厚みと、前記皮膚及び脂肪層の測定感度と前記子宮筋の層の測定感度との比の変動係数が最小となる距離に対応し、かつ、前記最小となる距離より遠い距離との関係を表わす関係式に基づいて、前記取得した皮膚及び脂肪層の厚みに対応する前記第2の所定距離を算出する請求項5項記載の光学的測定装置。
前記受光手段は、前記発光手段から発光された光を、前記発光手段から離間した距離が各々異なる複数の位置で受光する複数の受光部を備え、前記複数の受光部から、前記第1算出手段によって算出された前記第1の所定距離に対応して選択された前記受光部で受光すると共に、前記第1の所定距離だけ離間した位置とは異なる位置に対応して選択された前記受光部で受光し、
前記複数の受光部から、前記第2算出手段によって算出された前記第2の所定距離に対応して選択された前記受光部で受光すると共に、前記第2の所定距離だけ離間した位置とは異なる位置に対応して選択された前記受光部で受光する請求項1記載の光学的測定装置。
前記発光手段は、前記人体に光を照射する複数の照射部を備え、前記複数の照射部から、前記第1算出手段によって算出された前記第1の所定距離に対応して選択された前記照射部から光を照射すると共に、前記第1の所定距離だけ離間した位置とは異なる位置に対応して選択された前記照射部から光を照射し、
前記複数の照射部から、前記第2算出手段によって算出された前記第2の所定距離に対応して選択された前記照射部から光を照射すると共に、前記第2の所定距離だけ離間した位置とは異なる位置に対応して選択された前記照射部から光を照射する請求項1記載の光学的測定装置。
前記取得手段は、前記第1の所定距離、前記第1の所定距離だけ離間した位置とは異なる位置までの距離、第2の所定距離、及び第2の所定距離だけ離間した位置とは異なる位置までの距離の各々を、予め定められた4つの異なる距離とした場合に算出される前記第1の空間的傾き及び前記第2の空間的傾きに基づいて、前記皮膚及び脂肪層の厚みを算出する請求項1記載の光学的測定装置。
前記子宮筋の層における光の吸収度合いを演算するための演算パラメータを、前記皮膚及び脂肪層における光の吸収度合い及び前記皮膚及び脂肪層の厚みの組み合わせ毎に記憶した記憶手段を更に含み、
前記吸収度算出手段は、前記第1の空間的傾きに基づいて、前記皮膚及び脂肪層における光の吸収度合いを算出すると共に、前記取得された前記皮膚及び脂肪層の厚み及び前記皮膚及び脂肪層における光の吸収度合いに応じた前記演算パラメータを前記記憶手段から読み出し、当該読み出した演算パラメータ及び前記第2の空間的傾きに基づいて前記子宮筋の層における光の吸収度合いを算出する請求項1記載の光学的測定装置。
前記吸収度算出手段は、前記酸素化ヘモグロビン及び前記脱酸素化ヘモグロビンの濃度を算出し、算出した前記酸素化ヘモグロビン及び前記脱酸素化ヘモグロビンの濃度に基づいて、酸素飽和度を算出する請求項1記載の光学的測定装置。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0026】
第1の実施の形態では、一例として、人間の子宮筋の筋組織における血液量、すなわちヘモグロビン濃度や酸素飽和度を測定する場合について説明する。
【0027】
図1には、光学的測定装置10の概略構成を示した。同図に示すように、光学的測定装置10は、プローブ12、駆動装置14、制御部16、操作部18、メモリ20、及び出力部22を含んで構成されている。
【0028】
プローブ12は、LED(発光ダイオード)24及び複数のPD(フォトダイオード)26が、例えば可撓性を有する平板状の部材(例えばゴム性の部材等)28に設けられた構成である。プローブ12は、例えば被測定者の子宮筋の組織に光を当てるために被測定者の腹部30に接触させる。
【0029】
LED24は、本実施形態では一例としてピーク波長が第1の波長λ1、第2の波長λ2の2波長の発光ダイオードである。第1の波長λ1、第2の波長λ2は、ヘモグロビンと水の吸収が少ない波長、具体的には700nmから900nmの範囲における2つの異なる波長に設定される。本実施形態では一例として第1の波長λ1が770nm、第2の波長λ2が830nmである。
【0030】
LED24と各PD26とは、各々異なる離間距離を持って配置されており、複数のPD26が、例えば、所定間隔で一列に配置されている。例えば、LED24との離間距離が、3mm〜60mmとなる範囲に、3mm毎にPD26が配置されている。
【0031】
駆動装置14は、LEDドライバ32、選択回路33、I−Vコンバータ34、及びアンプ36を含んで構成されている。
【0032】
LEDドライバ32は、制御部16からの指示により、LED24を所定の波長及び所定の光強度で発光させる。
【0033】
選択回路33は、制御部16からの指示により、4つのPD26を選択し、選択した4つのPD26からの出力をI−Vコンバータ34に出力する。
【0034】
I−Vコンバータ34は、選択回路33により選択されたPD26で受光した光を光電変換することにより得られた電流を電圧に変換してアンプ36へ出力する。
【0035】
アンプ36は、I−Vコンバータ34によって変換された電圧を所定レベルの電圧に増幅し、光強度を示す信号として制御部16へ出力する。
【0036】
制御部16は、選択回路33に4つのPD26を選択させるように指示すると共に、LEDドライバ32へLED24を発光させるよう指示し、その結果得られた、選択された4つのPD26で受光した光の光強度に基づいて、後述する演算によりヘモグロビン濃度等を算出する。演算結果は、出力部22に出力される。出力部22は、例えばディスプレイやプリンタ等で構成され、演算結果を表示したり印刷したりすることにより出力する。
【0037】
メモリ20には、後述する測定処理ルーチンのプログラムや、その処理で用いるデータであって、予め実行したシミュレーション結果に関するデータ等が予め記憶されている。
【0038】
次に、子宮筋の状態を測定する測定方法について説明する。
【0039】
まず、
図2に示すように、ヘソの下へ、PD26が縦に配列されるようにプローブ12を配置する。これによって、腹直筋中の血液の影響を低減できる。また、
図3に示すような腹直筋離開時には、さらに腹直筋の影響を受けにくくなる。
【0040】
また、主に脂肪の光学特性の情報を得るための短い送受光器間距離である所定距離ρ1−1、所定距離ρ1−2に対応する2つのPD26を選択する。また、子宮筋の情報を十分に得るための長い送受光器間距離である所定距離ρ2−1、所定距離ρ2−2に対応する2つのPD26を選択する。
【0041】
ここで、
図4に示すように、LEDとPD26との離間距離である所定距離ρ1−1は、LED24から発光された光が、人間の腹部の深層までの介在層、すなわち皮膚組織(表層)及び脂肪組織(中間層)を通ってPD26に到達するような距離に設定される。所定距離ρ1−1は、後述する方法により算出される。その結果、本実施形態では、所定距離ρ1−1は一例として9mmに設定した。
【0042】
また、LEDとPD26との離間距離である所定距離ρ1−2は、LED24から発光された光が、人間の腹部の介在層の部分を通ってPD26に到達するような距離で所定距離ρ1−1とは異なる距離に設定される。本実施形態では、所定距離ρ1−2は一例としてρ1−1 +3mmに設定した。
【0043】
また、LEDとPD26との離間距離である所定距離ρ2−1は、LED24から発光された光が、人間の腹部の介在層及び子宮筋(深層)を通ってPD26に到達するような距離に設定される。所定距離ρ2−1は、後述する方法により算出される。その結果、本実施形態では、第3の所定距離ρ2−1は一例として25mmに設定した。
【0044】
また、LEDとPD26との離間距離である第4の所定距離ρ2−2は、LED24から発光された光が、人間の腹部の介在層及び深層の部分を通ってPD26に到達するような距離で第3の所定距離とは異なる距離に設定される。本実施形態では、第4の所定距離ρ2−2は一例としてρ2−1 +10mmに設定した。
【0045】
そして、子宮筋よりも表面にある組織の厚みは、個人差が大きいため、後述する方法により、脂肪の厚みを算出する。
【0046】
次に、送受光器間距離ρ1−1、ρ1−2に対応する2つのPD26の受光量に基づいて、以下の(1)式に従って、空間的傾きS
nearを算出し、送受光器間距離ρ2−1、ρ2−2に対応する2つのPD26の受光量に基づいて、以下の(2)式に従って、空間的傾きS
farを算出する。
【0047】
【数1】
【0048】
そして、算出された空間的傾きS
nearに基づいて、後述する理論解析により求められた空間的傾きS
nearと脂肪の吸収係数μ
afとの関係式に従って、脂肪の吸収係数μ
afを算出する。
【0049】
次に、算出された厚みと算出された脂肪の吸収係数μ
afとの組み合わせに対して、後述する理論解析により求められた空間的傾きS
farと子宮筋の吸収係数μ
auとの関係式の演算パラメータをデータベースから読み出し、算出された空間的傾きS
farに基づいて、読み出された演算パラメータを用いた、空間的傾きS
farと子宮筋の吸収係数μ
auとの関係式に従って、子宮筋の吸収係数μ
auを算出する。
【0050】
ここで、理論解析について説明する。
【0051】
まず、生体組織のモデルとして、
図5に示すような皮膚・皮下脂肪・白線・脂肪・子宮筋・胎盤・胎児の7層モデルでのモンテカルロシミュレーションを行うことにより光伝播解析し、各組織の光路長等を調べた。光伝播のアルゴリズムとしては、モデル中で光子群をランダムウォークさせ、通過した媒質の種類に応じて光子群の量を減衰させるという一般的なものを用いた。
図6に示すような、胎盤までの距離のデータをもとにして、皮下脂肪の厚みを変化させて解析を行った。なお、各層の光学定数は、
図7のように設定し、光子の個数は10
8個とした。
【0052】
上記の理論解析により、空間的傾きS
nearと脂肪の吸収係数μ
afとの組み合わせを求め、
図8に示すような空間的傾きS
nearと脂肪の吸収係数μ
afとの関係を表わすS
near−μ
af曲線から、空間的傾きS
nearと脂肪の吸収係数μ
afとの関係式を求めて、メモリ20に記憶しておく。S
near−μ
af曲線は空間的傾きS
nearに関する以下の(3)式に示すような2次式で近似することができる。
【0053】
【数2】
【0054】
ここで、a、b、cはパラメータであり、これらのパラメータを
図8に示したモンテカルロシミュレーションの結果から波長毎に求めておき、予めメモリ20に記憶しておく。これにより、空間的傾きS
nearが判れば吸収係数μ
afを求めることができる。
【0055】
なお、上記
図8の例では、空間的傾きS
nearを、短い方の送受光器間距離ρ1−1、ρ1−2を、9mm、12mmとしたときの受光量から算出し、皮下脂肪厚を7mm、子宮筋の吸収係数を、0.02mm
−1とした。また、皮膚の厚みに応じた空間的傾きS
nearの差異が小さいため、皮膚の厚みに関わらず、空間的傾きS
nearと脂肪の吸収係数μ
afとの関係式のパラメータを1種類だけ求めるようにした。
【0056】
また、上記の理論解析により、皮下脂肪の厚みと脂肪の吸収係数との組み合わせ毎に、空間的傾きS
farと子宮筋の吸収係数μ
auとの関係を表すS
far−μ
au曲線を求め、
図9に示すようなS
far−μ
au曲線を、皮下脂肪の厚みと脂肪の吸収係数との組み合わせ毎に、定式化し、メモリ20に記憶しておく。例えば、S
far−μ
au曲線を、空間的傾きS
farに関する2次式で近似し、近似した2次式のパラメータを波長毎及び皮下脂肪の厚みと脂肪の吸収係数との組み合わせ毎に求めておき、予めメモリ20に記憶しておく。
【0057】
なお、
図9の例では、空間的傾きS
farを、長い方の送受光器間距離ρ2−1、ρ2−2を、25mm、35mmとしたときの受光量から算出し、皮下脂肪厚を7mm、脂肪の吸収係数を、0.003mm
−1とした。
【0058】
上記の理論解析の結果得られた関係式のパラメータに基づいて、脂肪の吸収係数及び子宮筋の吸収係数を算出する。ここで、脂肪の吸収係数及び子宮筋の吸収係数は、LED24を第1の波長λ1で発光した場合のPD26の受光量に基づいて算出されると共に、LED24を第2の波長λ2で発光した場合のPD26の受光量に基づいて算出される。
【0059】
そして、以下の(4)式に従って、子宮筋の酸素化ヘモグロビン濃度(mM)を算出する。
【0060】
【数3】
【0061】
また、以下の(5)式に従って、子宮筋の脱酸素化ヘモグロビン濃度(mM)を算出する。
【0062】
【数4】
【0063】
また、以下の(6)式に従って、子宮筋の酸素飽和度(%)を算出する。
【0064】
【数5】
【0065】
ただし、λ1は、830 nmであり、λ2は、770 nmである。また、ε
λ1Hbは第1の波長λ1における脱酸素化ヘモグロビンの分子吸光係数、ε
λ2Hbは第2の波長λ2における脱酸素化ヘモグロビンの分子吸光係数、ε
λ1HbO2は第1の波長λ1における酸素化ヘモグロビンの分子吸光係数、ε
λ2HbO2は第2の波長λ2における酸素化ヘモグロビンの分子吸光係数であり、何れも既知の値を用いる。また、μ
λ1auは、波長λ1における子宮筋の吸収係数であり、μ
λ2auは、波長λ2における子宮筋の吸収係数である。
【0066】
次に、送受光器間距離ρ1−1〜ρ2−2の算出方法について説明する。
【0067】
まず、脂肪の光学特性を測定するための距離が短い方の送受光器間距離ρ1−1、ρ1−2の算出方法について説明する。
【0068】
脂肪の光学特性を測定するためには、皮膚の変化の影響は受けにくくすると共に、脂肪の測定感度を大きくし、また、子宮筋の変化の影響を受けにくくする必要がある。そこで、本実施の形態では、送受光器間距離ρ1−1、ρ1−2として、皮膚と子宮筋の測定感度の両方が小さくなる送受光器間距離を算出する。
【0069】
例えば、複数の皮下脂肪の厚みの各々において、送受光器間距離ρ1を変化させると共に、送受光器間距離ρ1−2(=ρ1−1 +3)を変化させながら、皮膚の測定感度、脂肪の測定感度、及び子宮筋の測定感度を算出し、
図10A〜
図10Cに示すように、皮下脂肪の厚み毎に、各測定感度と、送受光器間距離ρ1−1との関係を求める。
【0070】
ここで、測定感度とは、組織の吸収係数が1%変化したときの、吸光度の変化量である。吸光度の変化量は、変化前の受光量I1と変化後の受光量I2の比の対数、つまりlog(I1/I2)で表される。例えば、送受光器間距離ρ1−1における皮膚の測定感度は、皮膚の吸収係数が1%増加したときの、送受光器間距離ρ1−1における吸光度の増加量である。
【0071】
上記
図10A〜
図10Cの例では、送受光器間距離ρ1−2をρ1−1 +3mmとし(3mmは受光器の物理的大きさを考慮して設定)、皮膚の厚みを1.5mmとし、皮下脂肪の種々の厚みを1〜20mmとした。また、白線の厚みを3mmとし、深部の脂肪の厚みを3mmとし、子宮筋の厚みを5mmとした。
【0072】
上記
図10A〜
図10Cに示すように、皮膚の測定感度と送受光器間距離ρ1−1との関係は、右肩下がりであり、子宮筋の測定感度と送受光器間距離ρ1−1との関係は右肩上がりとなる。従って、皮膚と子宮筋の測定感度の両方が小さくなる送受光器間距離として、両者の交点(両者の測定感度が一致する点)が最適な送受光器間距離と考えられ(上記
図10A〜
図10Cの矢印参照)、脂肪の厚み毎に、最適な送受光器間距離ρ1が求められる。
【0073】
ここで、体表から子宮筋までの介在層の厚みをt(mm)とした場合、最適な送受光器間距離y(mm)はtが14mmまでの範囲では線形的に変化し、15mm以上においては、yが15mmで一定となった。tが14mm以下の範囲において、yを求める式は、以下の(7)式で表される。
【0074】
y = 0.63 t + 6.13 ・・・(7)
【0075】
上記(7)式は、介在層の厚みと、皮膚と子宮筋の測定感度が一致する送受光器間距離との関係を表わしている。
【0076】
以上のように、脂肪の厚みに基づいて、上記(7)式に従って、距離が短い方の送受光器間距離ρ1を算出すると共に、ρ1−1に、受光器の物理的大きさに基づく一定の距離(例えば、3mm)を加算して、ρ1−2を算出する。
【0077】
次に、子宮筋の光学特性を測定するための、距離が長い方の送受光器間距離ρ2−1、ρ2−2の算出方法について説明する。
【0078】
子宮筋の光学特性を測定するためには、皮膚の変化の影響は受けにくくする(遠い部位での空間的傾きは皮膚の影響をほとんど受けないことが本解析でもわかっているので、本実施の形態では、特別に考慮しない)と共に、子宮筋の測定感度を大きくし、また、電子回路のノイズがあるので、より大きい受光量を得てSN比を良くする必要がある。
【0079】
ここで、LED24から遠い部位では脂肪の測定感度はさほど低下しないので、子宮筋と脂肪の測定感度の比を指標とする。これをR
u-fとした。
【0080】
測定感度の比R
u-fと送受光器間距離ρ2−1との関係を求めると、
図11Aに示すように、右肩上がりとなるが、送受光器間距離ρ2−1が大きくなるほど、徐々にばらつきが大きくなり、測定感度の比R
u-fの増加傾向が少なくなった。
【0081】
理論計算においてばらつきの大きくなる領域は、その事象が起こる確率が小さいことを表わしており、実測でSN比の悪化を推定するうえで重要な参考データとなる。
【0082】
そこで、R
u-fの大きさ対するばらつきの大きさを評価することにより、子宮筋の測定感度を大きし、かつ、ばらつきを少なくする送受光器間距離ρ2−1を探すことができる。100kHz程度のAD変換を行ってデータを取得する場合、1サンプリング時間内に照射される光のエネルギは1×10
-8J(1mWのLEDの場合)で、波長を770nmとすると光子の個数は4×10
10個となる。解析プログラムでは、照射光軸に対して垂直な平面では対称であることを利用して、受光効率を数十倍にしているため、解析プログラムにおける光子個数を10
8オーダーで実行すれば、実際の測定におけるばらつきに近いものが得られる。
図11Aに示すグラフの3つのデータごとに変動係数(=標準偏差/平均値)を求めた結果が、
図11Bに示すグラフであり、変動係数が小さくなる点があることが明らかとなった。
【0083】
測定感度の比R
u-fを大きくするためには、送受光器間距離は長くする必要があることが上記
図11Aで示されている。また、R
u-fの変動係数はできるだけ小さい点を見つけることによって、SN比の良い送受光器間距離が得られる。
図11Aの関係は右肩上がりとなり、
図11Bの関係はU字のカーブとなるため、R
u-fの変動係数が最小となる送受光器間距離に対応する距離(U字の底辺部分)の中で、より長い送受光器間距離が、子宮筋の測定感度を大きし、かつ、ばらつきを少なくする最適な送受光器間距離ρ2−1であると考えられる(
図11Bの矢印参照)。このように、脂肪の厚み毎に、最適な送受光器間距離Ρが求められる。
【0084】
ここで、体表から子宮筋までの介在層の厚みをt(mm)とした場合、最適な送受光器間距離y(mm)は、tが40mmまでの範囲では線形的に変化するため、tが40mm以下の範囲において、yを求める式は、以下の(8)式で表される。
【0085】
y = 0.30 t + 31.8 ・・・(8)
【0086】
上記(8)式は、介在層の厚みと、R
u-fの変動係数が最小となる送受光器間距離に対応する距離であって、より長い送受光器間距離との関係を表わしている。
【0087】
以上のように、脂肪の厚みに基づいて、上記(8)式に従って、距離が短い方の送受光器間距離ρ2−1を算出すると共に、ρ2−1に、受光器の物理的大きさに基づく一定の距離(例えば、3mm)を加算して、ρ2−2を算出する。
【0088】
次に、受光量の分布から、脂肪の厚みを算出する方法について説明する。
【0089】
浅い層の厚みを効果的に検出できる送受光器間距離の一例として、ρ1−1=4.5 mmとρ1−2=6.5 mmにおける光量に基づく空間的傾きS
4.5-6.5と、ρ2−1=30 mmとρ2−2=40 mmにおける光量に基づく空間的傾きS
30-40とを用いる場合を考える。
【0090】
S
4.5-6.5とS
30-40に対して、脂肪厚と子宮筋の吸収係数が及ぼす影響を理論解析により検証した結果が、
図12A、
図12Bに示す2つの図である。
【0091】
上記
図12A、
図12Bの曲線群を数式化したものが、以下の2つの式である。hは脂肪層の厚み(mm)で、μ
auは子宮筋の吸収係数(mm
-1)である。
【0092】
S
4.5-6.5=(A
1μ
au3+A
2μ
au2+A
3μ
au+A
4)h
3+(A
5μ
au+A
6)h
2+(A
7μ
au+A
8)h+(A
9+A
10)
S
30-40=(B
1h
2+B
2h+B
3)
2+(h+) μ
au+(B
6h+B
7)
【0093】
ここで、各定数の一例は次のようになる。
【0094】
A
1=−66.7, A
2=3.43, A
3=−0.056, A
4=0.0005, A
5=0.194, A
6=−0.0061, A
7=−2.04, A
8=0.035, A
9=7.67, A
10=0.902, B
1=2.28, B
2=−30.1, B
3=−448.4, B
4=−2.53, B
5=66.2, B
6=0.026, B
7=1.01
【0095】
上記の非線形連立方程式を数値計算で解くことにより、2つの空間的傾きS
4.5-6.5とS
30-40から2つの未知数h、μ
auを求めることができる。この測定では脂肪厚を求めることを優先的に考えたセンサ配置であるため、必ずしも子宮筋など深部組織の情報を得る最適条件とはなっていない。そのため、ここでは、脂肪の厚みhのみを解として扱い、μ
auの値は、最適な送受光器間距離を設定した上で測定する上述した算出方法により、高精度な解を得ることとする。
【0096】
次に、本実施形態の作用として、制御部16で実行される測定処理について、
図13に示す測定処理ルーチンを参照して説明する。なお、この処理は、光学的測定装置10の電源がオンされると実行される。
【0097】
測定する際には、プローブ12を被測定者の腹部に接触させ、操作部18を操作することにより、測定開始を指示する。
【0098】
ステップ100では、脂肪の厚みを効果的に検出できる送受光器間距離ρ1−1、ρ1−2、ρ2−1、ρ2−2に対応する受光位置となる予め定められた4つのPD26を選択する。そして、ステップ102において、LEDドライバ32に対してLED24の発光を指示し、上記ステップ100で選択した4つのPD26で受光した光の光強度をアンプ36から取り込む。
【0099】
そして、ステップ104において、上記ステップ102で取り込んだ、4つのPD26で受光した光の光強度に基づいて、被測定者の脂肪の厚みを算出する。
【0100】
次のステップ106では、上記ステップ104で算出された脂肪の厚みに基づいて、上記(7)式に従って、短い方の送受光器間距離ρ1−1を算出すると共に、ρ1−2を算出する。また、ステップ108において、上記ステップ104で算出された脂肪の厚みに基づいて、上記(8)式に従って、長い方の送受光器間距離ρ2−1を算出すると共に、ρ2−2を算出する。
【0101】
次のステップ110では、上記ステップ106で算出された送受光器間距離ρ1−1、ρ1−2に対応する受光位置となる2つのPD26を選択すると共に、上記ステップ108で算出された送受光器間距離ρ2−1、ρ2−2に対応する受光位置となる2つのPD26を選択する。
【0102】
そして、ステップ112において、LEDドライバ32に対してLED24の発光を指示し、上記ステップ110で選択した4つのPD26で受光した光の光強度をアンプ36から取り込む。なお、第1の波長λ1、第2の波長λ2で順次発光させ、それぞれの光強度を取り込む。
【0103】
ステップ114では、ステップ112で測定した第1の波長λ1、第2の波長λ2の光強度に基づいて、上記(1)式に従って、第1の波長λ1、第2の波長λ2の空間的傾きS
nearを算出すると共に、上記(2)式に従って、第1の波長λ1、第2の波長λ2の空間的傾きS
farを算出する。
【0104】
そして、ステップ116において、空間的傾きS
nearと脂肪の吸収係数μ
afとの関係式のパラメータをメモリ20から読み出し、上記ステップ114で求めた第1の波長λ1、第2の波長λ2の空間的傾きS
nearに基づいて、空間的傾きS
nearと脂肪の吸収係数μ
afとの関係式に従って、第1の波長λ1、第2の波長λ2の脂肪の吸収係数μ
λ1af、μ
λ2afを算出する。
【0105】
次のステップ118では、メモリ20から、上記ステップ104で算出された脂肪の厚みと、上記ステップ116で算出された第1の波長λ1、第2の波長λ2の脂肪の吸収係数μ
λ1af、μ
λ2afとの組み合わせに対応する、空間的傾きS
farと子宮筋の吸収係数μ
auとの関係式のパラメータを読み出す。
【0106】
そして、ステップ120において、上記ステップ114で求めた第1の波長λ1、第2の波長λ2の空間的傾きS
farに基づいて、上記ステップ118で読み出したパラメータを用いた、空間的傾きS
farと子宮筋の吸収係数μ
auとの関係式に従って、第1の波長λ1、第2の波長λ2の子宮筋の吸収係数μ
λ1au、μ
λ2auを算出する。
【0107】
そして、ステップ122では、上記ステップ120で求めた子宮筋の吸収係数μ
λ1au、μ
λ2auに基づいて、上記(4)式に従って、酸素化ヘモグロビン濃度[HbO
2]を求める。
【0108】
ステップ124では、上記ステップ120で求めた子宮筋の吸収係数μ
λ1au、μ
λ2auに基づいて、上記(5)式に従って、脱酸素化ヘモグロビン濃度[Hb]を求める。そして、ステップ126では、上記ステップ122で算出した酸素化ヘモグロビン濃度[HbO
2]と、上記ステップ124で算出した脱酸素化ヘモグロビン濃度[Hb]とに基づいて、上記(6)式に従って、酸素飽和度S
tO
2を算出する。
【0109】
ステップ128では、求めた酸素化ヘモグロビン濃度[HbO
2]、脱酸素化ヘモグロビン濃度[Hb]、酸素飽和度S
tO
2を出力部22に出力させて、測定処理ルーチンを終了する。
【0110】
以上説明したように、第1の実施の形態に係る光学的測定装置によれば、介在層の厚みと、短い方の送受光器間距離である第1の所定距離と、表層の測定感度及び深層の測定感度との関係に基づいて、介在層の厚みに対応する第1の所定距離を算出し、介在層の厚みと、長い方の送受光器間距離である第2の所定距離と、介在層の測定感度及び深層の測定感度との関係に基づいて、介在層の厚みに対応する第2の所定距離を算出することにより、子宮筋などの深層の光の吸収度合いを正確に測定するための送受光器間距離を算出することができる。また、人体の深層組織の光の吸収度合いを正確に測定するための送受光器間距離を算出することができるため、深層における光の吸収度合いを精度良く算出することができる。
【0111】
子宮筋のような深部にある組織では、次の解決すべき課題を有する。表層、中間層、深層に分けて考えたとき、より深部の組織を測定しようとした場合、深部の光路長は表層・中間層組織に比べ非常に少なくなることから、中間にある脂肪中のわずかな血液の情報も誤差要因として影響してくるようになる。従来の手法では、標準的な筋肉に対する計測であるため、上部の脂肪厚の情報だけで補正が可能であったが、子宮筋のように、より深部組織について計測しようとする場合は、脂肪の厚みだけでなく、脂肪の吸収係数の影響も補正する必要がある。そこで、本実施の形態では、脂肪厚及び脂肪の吸収係数に応じたS
far−μ
au曲線を用いて子宮筋の吸収係数μ
auを求め、これに基づいて子宮筋の酸素化ヘモグロビン濃度や脱酸素化ヘモグロビン濃度、酸素飽和度を求める。このため、脂肪厚及び脂肪の吸収係数の影響が補正された正確な酸素化ヘモグロビン濃度や脱酸素化ヘモグロビン濃度、酸素飽和度を得ることができ、これらの定量性を大幅に向上させることができる。
【0112】
従来、子宮筋の状態を示すバイオケミカルな情報を非侵襲的に得ることはできなかったが、本実施の形態によれば、子宮筋の状態を非侵襲的に測定することができるため、陣痛がうまく起こっているかどうかの指標に利用できる。また、過強陣痛や微弱陣痛、疲労して自然収縮が起こりにくくなってきたことなどを定量的に評価・診断することができる。
【0113】
従来より、多層構造の媒質で深部の光学特性を測定する技術はいくつかある。しかしながら、多層でより深部の光学特性を測定しようとするとき、センサ配置によって関心のある媒質の信号の量が大きく変化するため、より効率よく信号を得るように、従来では、経験に基づいて特に根拠のない送受光器間距離の設定が行われていたか、又は送受光器間距離の半分ぐらいの深さを測っているというあいまいな知見をもとにして、センサ配置が決められていた。しかし、本実施の形態によれば、一定の手順で、最適なセンサ配置を決定することができるため、本実施の形態における送受光器間距離の算出方法は、より深部の測定を高精度に行う上で極めて有用である。
【0114】
次に、第2の実施の形態について説明する。なお、第2の実施の形態に係る光学的測定装置の構成は、第1の実施の形態と同様であるため、説明を省略する。
【0115】
第2の実施の形態では、脂肪厚測定装置によって測定された脂肪の厚みを、光学的測定装置に入力している点で、第1の実施の形態と異なっている。
【0116】
第2の実施の形態に係る光学的測定装置には、図示しない脂肪厚測定装置が接続されており、脂肪厚測定装置によって測定された被測定者の脂肪の厚みが直接入力される。
【0117】
測定する際には、脂肪厚測定装置によって、被測定者の脂肪の厚みを測定し、測定結果が光学的測定装置に入力される。そして、プローブ12を被測定者の腹部に接触させ、操作部18を操作することにより、測定開始を指示し、上記第1の実施の形態で説明した測定処理ルーチンのステップ106以降が実行される。
【0118】
なお、第2の実施の形態に係る光学的測定装置の他の構成及び作用については、第1の実施の形態と同様であるため、説明を省略する。
【0119】
なお、上記の実施の形態では、脂肪厚測定装置によって脂肪の厚みを測定する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、超音波画像診断装置の画像を見て、医師が脂肪層の厚さを算出して、操作部18の操作により数値を入力するようにしてもよい。また、ノギス等の簡単な測定部材を用いて、被測定者の脂肪厚を測定し、操作部18の操作により入力するようにしてもよい。
【0120】
次に、第3の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同様の構成となる部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【0121】
第3の実施の形態では、算出された送受光器間距離に応じて、PDを移動させている点で、第1の実施の形態と異なっている。
【0122】
第3の実施の形態に係る光学的測定装置は、PD26を4つ備えており、PD26の位置を移動させる移動機構を更に備えている。
【0123】
第3の実施の形態に係る光学的測定装置では、上記第1の実施の形態で説明した測定処理ルーチンのステップ100において、脂肪の厚みを効果的に検出できる送受光器間距離ρ1−1、ρ1−2、ρ2−1、ρ2−2に対応する受光位置となるように、移動機構により4つのPD26を移動させる。
【0124】
また、ステップ110では、上記ステップ106で算出された送受光器間距離ρ1−1、ρ1−2に対応する受光位置となるように2つのPD26を移動させると共に、上記ステップ108で算出された送受光器間距離ρ2−1、ρ2−2に対応する受光位置となるように、残りの2つのPD26を移動させる。
【0125】
なお、第3の実施の形態に係る光学的測定装置の他の構成及び作用については、第1の実施の形態と同様であるため、説明を省略する。
【0126】
なお、上記の実施の形態では、移動機構により、PDを移動させる場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、算出された送受光器間距離となるように、人手で、PDを配置するようにしてもよい。
【0127】
次に、第4の実施の形態について説明する。第4の実施の形態では、果物の糖分を測定する光学的測定装置に、本発明を適用した場合を例に説明する。なお、第4の実施の形態に係る光学的測定装置の構成は、第1の実施の形態と同様であるため、説明を省略する。
【0128】
第4の実施の形態に係る光学的測定装置では、LED24によって、グルコースの光の吸収係数を測定するのに適した波長λ1、λ2の光を照射する。
【0129】
また、LED24とPD26との間の送受光器間距離として、果物の外皮や内皮の厚さに適した距離が算出される。
【0130】
たとえば、
図14に示すように、トマトのような果実を測定対象物とした場合、果皮、果肉、ゼリー状の子質組織という層構造をなしている。光学的測定装置によって、浅層の果肉と深層の子室組織の情報を分離して測定する。
【0131】
第4の実施の形態に係る測定処理ルーチンでは、果肉の厚みを効果的に検出できる送受光器間距離ρ1−1、ρ1−2、ρ2−1、ρ2−2に対応する受光位置となる予め定められた4つのPD26を選択する。そして、LEDドライバ32に対してLED24の発光を指示し、上記で選択した4つのPD26で受光した光の光強度をアンプ36から取り込む。
【0132】
そして、取り込んだ、4つのPD26で受光した光の光強度に基づいて、果物の果肉の厚みを算出する。
【0133】
次に、算出された果肉の厚みに基づいて、上記(7)式と同様の式に従って、短い方の送受光器間距離ρ1−1を算出すると共に、ρ1−2を算出する。また、上記で算出された果肉の厚みに基づいて、上記(8)式と同様の式に従って、長い方の送受光器間距離ρ2−1を算出すると共に、ρ2−2を算出する。
【0134】
次に、上記で算出された送受光器間距離ρ1−1、ρ1−2に対応する受光位置となる2つのPD26を選択すると共に、上記で算出された送受光器間距離ρ2−1、ρ2−2に対応する受光位置となる2つのPD26を選択する。
【0135】
そして、LEDドライバ32に対してLED24の発光を指示し、上記で選択した4つのPD26で受光した光の光強度をアンプ36から取り込む。なお、第1の波長λ1、第2の波長λ2で順次発光させ、それぞれの光強度を取り込む。
【0136】
次に、測定した第1の波長λ1、第2の波長λ2の光強度に基づいて、上記(1)式に従って、第1の波長λ1、第2の波長λ2の空間的傾きS
nearを算出すると共に、上記(2)式に従って、第1の波長λ1、第2の波長λ2の空間的傾きS
farを算出する。
【0137】
そして、メモリ20からパラメータを読み出し、上記で求めた第1の波長λ1、第2の波長λ2の空間的傾きS
nearに基づいて、パラメータを用いた、空間的傾きS
nearと果肉の吸収係数との関係式に従って、第1の波長λ1、第2の波長λ2の果肉の吸収係数を算出する。
【0138】
次に、メモリ20から、上記で算出された果肉の厚みと、上記で算出された第1の波長λ1、第2の波長λ2の果肉の吸収係数との組み合わせに対応する、空間的傾きS
farと子質組織の吸収係数との関係式のパラメータの値を読み出す。
【0139】
そして、上記で求めた第1の波長λ1、第2の波長λ2の空間的傾きS
farに基づいて、上記で読み出したパラメータを用いた、空間的傾きS
farと子質組織の吸収係数との関係式に従って、第1の波長λ1、第2の波長λ2の子質組織の吸収係数を算出する。
【0140】
そして、上記で求めた果肉の吸収係数及び子質組織の吸収係数に基づいて、果肉及び子質組織の糖分を求め、求めた糖分を出力部22に出力させる。
【0141】
以上説明したように、第4の実施の形態に係る光学的測定装置によれば、子質組織までの介在層の厚みと、短い方の送受光器間距離である第1の所定距離と、表層の測定感度及び深層(子質組織)の測定感度との関係に基づいて、介在層の厚みに対応する第1の所定距離を算出し、介在層の厚みと、長い方の送受光器間距離である第2の所定距離と、介在層の測定感度及び深層の測定感度との関係に基づいて、介在層の厚みに対応する第2の所定距離を算出することにより、子質組織などの深層の光の吸収度合いを正確に測定するための送受光器間距離を算出することができる。また、果物の深層組織の光の吸収度合いを正確に測定するための送受光器間距離を算出することができるため、深層における光の吸収度合いを精度良く算出することができる。
【0142】
従来より、特許文献(特許第2517858号)において、果実糖度の非破壊測定法が知られており、この方法では、果皮の厚みの影響を補正しているものの、内部の構造は均質として扱っている。そのため、その不均質性は精度低下の要因となるとともに、果肉と子質組織の情報の分離は困難である。また、農作物を光学的に測定する手法で、測定対象の層構造を考慮して各層の情報を分離して取得できる手法は未だない。しかし、本実施の形態によれば、複雑な構造を有する農作物を測定対象として、非破壊的に各層の糖度などの情報を分離して測定することができる。
【0143】
なお、上記の実施の形態では、果肉部分及び子質組織の糖分を算出する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、果肉部分又は子質組織の色を求めるようにしてもよい。
【0144】
次に、第5の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同様の構成となる部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【0145】
第5の実施の形態では、複数のLEDを設け、算出された送受光器間距離に応じて、LEDを選択している点で、第1の実施の形態と異なっている。
【0146】
第5の実施の形態に係る光学的測定装置では、プローブ12に、複数のLED24及びPD(フォトダイオード)26が設けられている。
【0147】
各LED24とPD26とは、各々異なる離間距離を持って配置されており、複数のLED24が、例えば、所定間隔で一列に配置されている。
【0148】
選択回路33は、制御部16からの指示により、4つのLED24を選択し、選択した4つのLED24を、順次発光させる。このとき、PD26からの出力が、順次I−Vコンバータ34に出力される。
【0149】
制御部16は、選択回路33に4つのLED24を順次選択させるように指示すると共に、LEDドライバ32へ、順次選択されたLED24を発光させるよう指示し、その結果得られた、PD26で順次受光した光の光強度に基づいて、後述する演算によりヘモグロビン濃度等を算出する。
【0150】
なお、第5の実施の形態に係る光学的測定装置の他の構成及び作用については、第1の実施の形態と同様であるため、説明を省略する。
【0151】
なお、上記の第1の実施の形態〜第5の実施の形態において、プローブ12の位置をずらしながら、各位置でそれぞれ測定を実施し、最終的に測定結果を平均するようにしてもよい。
【0152】
また、上記の第1の実施の形態〜第4の実施の形態では、PDを一列に並べて配置した場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、LEDの位置を中心とした円周状にPDを並べても良い。この場合には、送受光器間距離としての半径が異なる複数の円周状に、PDを並べるように配置すればよい。また、PDの複数の組み合わせの各々について、測定を実施し、最終的に測定結果を平均するようにしてもよい。
【0153】
また、上記の第5の実施の形態では、LEDを一列に並べて配置した場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、PDの位置を中心とした円周状にLEDを並べても良い。この場合には、送受光器間距離としての半径が異なる複数の円周状に、LEDを並べるように配置すればよい。また、LEDの複数の組み合わせの各々について、測定を実施し、最終的に測定結果を平均するようにしてもよい。
【0154】
また、上記の第1の実施の形態〜第5の実施の形態において、光学的測定装置が、距離算出装置の機能も備えている場合を例に説明したが、光学的測定装置と距離算出装置とを別個の装置として構成してもよい。この場合には、距離算出装置によって算出された送受光器間距離を、光学的測定装置に入力するようにすればよい。
【0155】
また、内部組織まで光が到達するものであれば、生体に限らず他の物に対しても本発明を適用可能である。