(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5966138
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】酵素温熱風呂
(51)【国際特許分類】
A01K 13/00 20060101AFI20160728BHJP
A61H 33/00 20060101ALI20160728BHJP
A01K 29/00 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
A01K13/00 Z
A61H33/00 Z
A01K29/00
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-4971(P2016-4971)
(22)【出願日】2016年1月14日
【審査請求日】2016年1月28日
(31)【優先権主張番号】特願2015-201769(P2015-201769)
(32)【優先日】2015年10月13日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515238231
【氏名又は名称】竹内 忠司
(74)【代理人】
【識別番号】100108763
【弁理士】
【氏名又は名称】望月 孝道
(72)【発明者】
【氏名】竹内忠司
【審査官】
金丸 治之
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−192277(JP,A)
【文献】
特開2006−089474(JP,A)
【文献】
特開平11−192034(JP,A)
【文献】
特開2006−334505(JP,A)
【文献】
特開平11−019168(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 13/00
A01K 29/00
A61H 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酵素温熱風呂において、温床を上下2層にほぼ2分し、下層温床の浴剤には米糠または米糠におが屑を加えたものを用いて下層温床を嫌気性温床とし、上層温床の浴剤には下層温床の浴剤に発酵・抽出された酵素を加えたものを用いて、上層温床を好気性温床とし、さらに、温床の深さを80cm 以上としたこと、を特徴とする酵素温熱風呂
【請求項2】
請求項1記載の発明において、温床の上面に敷物を敷いて愛玩動物用に供すること、を特徴とする愛玩動物用酵素温熱風呂
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の発明において、温床に補給する水分として、電子エネルギー水を用いたこと、を特徴とする酵素温熱風呂
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、酵素の自然発酵熱を利用した酵素温熱風呂(以下適宜「温熱風呂」と略称する。)に関する。
【背景技術】
【0002】
酵素を利用した温熱風呂に関しては、温床を構成する粉末状の浴剤の主成分として、おが屑またはおよび米糠等を利用したものが、健康維持・疲労回復・美容効果を目的として、巷間でかなり広く実用に供されている。
以下において、風呂槽の中に収納された浴剤の集合であって自然発酵によって熱を放出する集合を、適宜「温床」という。
【0003】
酵素を利用し、温床を上下2層に分けた温熱風呂に関する文献としては、特開平11-192277(特願平9-367719)がある。
これは、米糠とおが屑と酵素と水とを混合してなる浴剤を(同文献段落番号0010)を上下2層として配置し、上層を身体を浴するための微好気状態の層とし、下層を補助的な嫌気状態の層とした酵素温熱風呂に関するものである。
【0004】
しかし、この発明においては、上層の浴剤と下層の浴剤には同一成分の浴剤を使用し配合割合を変えることによって、微好気状態の層と補助的な嫌気状態の層としたものであって(同文献段落番号0006、0016等)、特段にまた積極的に浴剤成分を峻別して両状態を作り出すものではなく、このため、上層を微好気状態の層、下層を補助的な嫌気状態の層としている。
【0005】
また、浴槽の深さも、55〜60cm とすれば十分である(同文献段落番号0011)としているが、この深さは一般の温熱風呂と同様な深さであって、発明者の経験からすれば、好気性状態の上層と嫌気性状態の下層の効果を積極的に利用するには、深さが不十分である。
【0006】
さらに、酵素発酵の一部素材として鶏糞を使用している通常の温熱風呂では、臭い(汚臭)の酷さから、愛玩動物(以下「ペット」と適宜略称する。)は近寄ろうともしないため、酵素温熱風呂そのものを人間以外に利用することは想到されていなかったようである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特願平9-367719
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本願発明は、上記のような事情のもとで考えだされた酵素温熱風呂に関するもので、上下2層にほぼ2分された温床を採用して、積極的に、上層温床を好気性状態・下層温床を嫌気性状態となるようにすることにより、好気性・嫌気性の両状態相互間で作り出す効果を一層発揮させ、温度バランスに優れ、また、温度変動の少ない、さらに、メンテナンスの簡単・容易な酵素温熱風呂を提供することを課題とする。
【0009】
さらに、本願発明は、鶏糞を使用している通常の温熱風呂とは異なり、汚臭が無いに等しい特徴を生かし、ペット用酵素温熱風呂を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このため、本願発明では、以下の構成を採用した。
上下2層にほぼ2分した温床の上層温床は好気性状態となるように、また下層温床は嫌気性状態となるようにするため、上層温床の浴剤と下層温床の浴剤とを峻別した。
【0011】
また、上下2層にほぼ2分した温床が、好気性状態の上層温床と、嫌気性状態の下層温床となるように、十分な深さの温床となるようにした。
【0012】
さらに、温床に補給する水分として、電子エネルギー水を用いた。
一般にイオン水と言われる水には、波動水とか電子エネルギー水とか言われる水も含まれるが、本願発明が使用する水分としては、地下水のような飲料水に、高電圧発生装置により発生させた7000〜12000Vの高電圧を数時間印加し帯電させて製造する水(以下、「電子エネルギー水」という。)を使用している。
NMR分光法による水の幅(水分子の大きさ)の計測において、本願に使用する電子エネルギー水は、その計測値は、計測例によれば、55.9 Hz であって、水道水の 88.2 Hz に比べて小さいため(水分子が小さいため)、流動性が良いものである。
【0013】
本願発明のペット用酵素温熱風呂においては、犬・猫等のペットを扱う上での特質、例えば動物毛のため温床に埋めることができない・汚物対策および害虫(ダニ・ノミ・虱)対策が必要等、に配慮した。
【発明の効果】
【0014】
本願発明においては、下層温床は、嫌気性菌の自然発酵により、33℃〜38℃程度の基礎温度の温床となり、上層温床は、好気性菌の自然発酵により、58℃〜63℃程度の温度に保持される。
【0015】
下層温床は33℃〜38℃程度の温度となり、上層温床は58℃〜63℃程度の温度になって、それらの温度が保持されることから、嫌気性・好気性の両状態相互間で作り出す効果が一層発揮され、酵素温熱風呂全体として温度バランスの取れた、かつ、温度変動の少ない快適な酵素温熱風呂となる。
【0016】
また、上下2層にほぼ2分された温床は、嫌気性状態の下層温床と好気性状態の上層温床となるが、温床の深さを 80cm 以上の深さとしたことから、一層良好な温度バランスの取れた、かつ、温度変動の少ない快適な酵素温熱風呂となる。
【0017】
温床の深さを 80cm 以上の深さとしたこと、および、温床を上下2層にほぼ2分したことから、利用者は、身体を浴するには上層温床を利用するだけで、十分な深さの温度バランスの良い温熱風呂を利用出来る。
【0018】
温床の深さを 80cm 以上の深さとしたこと、および、温床を上下2層にほぼ2分したことから、撹拌等のメンテナンスは、上層温床部分を対象とするだけで足り、メンテナンスが格段に簡略される。
【0019】
ペット用酵素温熱風呂では、温床の上面に敷物を敷いて利用に供することから、撹拌等のメンテナンスが殆ど不要となるとともに、ペットを温床に埋めないことから、利用による温床温度の低下が少なくなり、次の利用までの待ち時間が少なくなった。
【0020】
本願発明においては使用している電子エネルギー水は、水分子が小さいため流動性が良く、酵素の自然発酵を促進し、良好な効果を生み出している。
【0021】
また、電子エネルギー水は、酵素が冬眠状態になる秋から冬にかけても、酵素を活性化させる効果を有することから、酵素の機能を休ませることはなく、一年中安定した自然発酵性能を酵素に発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本願発明の上下2層に分けた酵素温熱風呂の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
ペット用の風呂槽10の大きさは、長さ方向だけが人間用と異なり、犬・猫を対象とする場合では 120cm 程度である。
【0024】
温熱風呂の下層温床20の浴剤を用意しておく。この浴剤は、米糠を主成分とし、適宜必要に応じおが屑を加えて調整されたものである。
【0025】
温熱風呂の上層温床30の浴剤を用意しておく。この浴剤は、下層温床20の浴剤に、酵素を混合して調整されたものである。
酵素は、海草・カニ殻・糖蜜・蜂蜜等から、発酵抽出されたものである。
【0026】
風呂槽10の下層温床20となる範囲に、既に調整された下層温床用浴剤を、数回に分けて、敷き詰め、必要に応じて、水・電子エネルギー水を散布し、適当な硬さとなるように押圧する。
これを繰り返して、下層温床の深さを、最終的には、所定の温床深さのほぼ半分となるように調整する。
所定の温床深さとしては、80cm 以上とする。また、下層温床の深さとしては、所定の温床深さの半分とすることを目標とし、所定の温床深さの 45%〜55%程度に納まるようにする。
【0027】
次に、風呂槽10の上層温床30となる範囲に、既に調整された上層温床用浴剤を、数回に分けて、敷き詰め、必要に応じて、水・電子エネルギー水を散布し、適当な硬さとなるように押圧する。
これを繰り返して、上層温床の深さを、最終的には、所定の温床深さとなるように調整する。
【0028】
放置して、自然発酵されるのを待ち、上層温床30の撹拌・押圧を繰り返えし、上層温床が適切な温度に調整された後、浴槽として供される。
【0029】
ペット用酵素温熱風呂においては、温床の上面に敷物(図示省略)を敷くが、敷物としては毛布・不織布等が利用できる。敷物は温床上面を全面的を覆う物でも、あるいは部分的に覆う物でもよく、また、ペットを育てている人が持参する物でも構わない。
ありふれた物を敷物とすることによっても通常の汚物に対処できるが、さらに、特質(例えば吸水性・防虫性・殺虫性)のある敷物を利用することにより、一層効果的に汚物・害虫に対処できる。
【0030】
ペットの酵素温熱風呂の利用状態は、ペットによる相違がかなりあるが、ちょこんと座っている場合、手足を延ばして腹這いになる場合等々さまざまであり、利用状態が人間の場合とは異なることから、利用時間は長く、通常1時間程度である。
【産業上の利用可能性】
【0031】
酵素温熱風呂は、健康維持・疲労回復・美容効果を目的として、巷間でかなり広く実用に供されていることから、その有用性を高めることは、健康産業において極めて利用性が高いものである。
また、ペット用酵素温熱風呂でも、病気の治癒効果も見られることから、利用可能性の範囲が広いものである。
【符号の説明】
【0032】
10 風呂槽
20 下層温床
30 上層温床
【要約】 (修正有)
【課題】温度バランスに優れ、また、温度変動の少ない、メンテナンスの簡単・容易な、汚臭が無いに等しい特徴を生かし、ペット用酵素温熱風呂を提供する。
【解決手段】温床を上下2層にほぼ2分し、上層温床30は好気性状態となるように、また下層温床20は嫌気性状態となるようにするため、上層温床30の浴剤と下層温床の浴剤20とを峻別し、電子エネルギー水を採用して、良質な自然発酵状態が得られるようにし、犬・猫等のペットを扱う場合では、温床の上面に敷物を強いて利用する酵素温熱風呂とした。
【選択図】
図1