特許第5966140号(P5966140)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5966140
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】第3の反射器を組み込んだ面発光レーザ
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/14 20060101AFI20160728BHJP
   H01S 5/187 20060101ALI20160728BHJP
   H01S 5/183 20060101ALI20160728BHJP
   H01S 5/343 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
   H01S5/14
   H01S5/187
   H01S5/183
   H01S5/343 610
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-47452(P2013-47452)
(22)【出願日】2013年3月11日
(65)【公開番号】特開2013-229580(P2013-229580A)
(43)【公開日】2013年11月7日
【審査請求日】2016年3月8日
(31)【優先権主張番号】13/427,105
(32)【優先日】2012年3月22日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502096543
【氏名又は名称】パロ・アルト・リサーチ・センター・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】Palo Alto Research Center Incorporated
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・イー・ノースラップ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・ウンデラー
(72)【発明者】
【氏名】ノーブル・エム・ジョンソン
【審査官】 百瀬 正之
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2011/0069729(US,A1)
【文献】 米国特許第7856043(US,B2)
【文献】 国際公開第01/67563(WO,A2)
【文献】 国際公開第2009/081328(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0013154(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0116078(US,A1)
【文献】 特開2001−168451(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0165690(US,A1)
【文献】 国際公開第2008/114160(WO,A1)
【文献】 特開平8−321660(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00−5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直外部共振器型面発光レーザ造体であって
付け外部接合反射器と、
分配ブラッグ反射器
GaN基板の上でエピタキシャル成長したIII―Nヘテロ構造と、
を備え、
前記III‐Nヘテロ構造は、
前記分配ブラッグ反射器と前記外付け外部接合反射器との間に配置され、ポンプ光源から発光され且つポンプ波長λpumpを有する照射光の放出に応じて、レーザ波長λlaseで照射光を発光するよう設定された活性領域と、
前記活性領域と前記外付け外部接合反射器との間に配置され、前記レーザ波長λlaseの照射光に関して0%〜0%の反射率を有し、前記ポンプ波長λpumpでの照射光に関して0%〜0%の反射率を有する部分的反射素子と、
を含み、
前記部分的反射素子は、交互のエピタキシャルの層の組を備え、
前記層の組は、
AlGaN、InAlN、又はInAlGaNの第1の層と、
GaN又はInAlGaNの第2の層と、
を含む、
垂直外部共振器型面発光レーザ構造体。
【請求項2】
前記部分的反射素子は、前記レーザ波長λlaseの照射光に関して40%〜60%の反射率を有し、前記ポンプ波長λpumpでの照射光に関して40%〜60%の反射率を有する、請求項1に記載の垂直外部共振器型面発光レーザ構造体。
【請求項3】
前記垂直外部共振器型面発光レーザ構造体の動作中、前記部分的反射素子が、前記GaN基板内の均E電界の2倍より高い前記活性領域内のピークE電界を提供するよう設定される、請求項1に記載の垂直外部共振器型面発光レーザ構造体。
【請求項4】
前記垂直外部共振器型面発光レーザ構造体の動作中、前記部分的反射素子が、前記GaN基板内の平均E電界の3倍より高い前記活性領域内のピークE電界を提供するよう設定される、請求項1に記載の垂直外部共振器型面発光レーザ構造体。
【請求項5】
前記ポンプ光源により発光される前記照射光が、sin(θ)=nsubsin[cos−1(λpump/λlase)]で表される度θで前記GaN基板の表面に入射し、前GaN基板の折率はnsubである、請求項1に記載の垂直外部共振器型面発光レーザ構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第3の反射器を組み込んだ面発光レーザに関する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0002】
レーザ共振器内に配置される部分的反射素子を含む面発光レーザ構造体を開示する。いくつかの実施形態では、ポンプ波長、即ちλpumpで照射光を発光するよう設定されたポンプ光源と、外付け外部接合反射器と、分配ブラッグ反射器(DBR)と、DBRと外部接合反射器の間に配置される活性領域とを含む垂直外部共振器型面発光レーザ(VECSEL)構造体を用いる。活性領域は、レーザ波長λlaseで照射光を発光するよう設定される。構造体は、利得素子と外付け外部接合反射器の間に配置される部分的反射素子(PRE)も含む。部分的反射素子(PRE)は、レーザ波長の照射光に対しては約30%〜約70%の反射率と、ポンプ波長の照射光に対しては約30%〜約70%の反射率とを有する。
【0003】
いくつかの実施形態では、PREは、レーザ波長での照射光に対しては約40%〜約60%の反射率と、ポンプ波長の照射光に対しては約40%〜約60%の反射率とを有する。いくつかの構造体は、PREがIIIーV族の材料層の格子を含む。
【0004】
VECSEL構造体が動作中、部分的反射素子は、基板内の平均E電界より2倍、3倍、4倍より高い、又はさらそれよりに高い活性領域のピークE電界を発生供給するよう設定される。
【0005】
いくつかの構成では、ポンプ光源により発光される照射光は、sin(θ)=nsubsin[cos−1(λpump/λlase)]のような等式で表される角度θで、基板の表面に入射するようポンプ光源が配置される。但し、基板の屈折率はnsubである。約50%より多い、又はさらに約75%より多いポンプ光が活性領域内に吸収されるよう、これらの外付け外部結合ミラー、DBR、利得領域、PREを配置することができる。
【0006】
いくつかの態様によれば、PREは、複数の層の組を含む分配ブラッグ反射器を含み、この各層の組がAlGaNの第1の層とGaNの第2の層とを含む。これらの第1の層と第2の層は、GaN基板上でエピタキシャル成長することができる。例えば、PREは、2組から20組の層の組、又は約10組から約12組の層の組を含むことができる。第1の層の厚さは約λlase/4nAlGaN(λlase)でよく、第2の層の厚さは約λlase/4nGaN(λlase)でよい。例えば、ある実装形態では、第1の層の厚さは約50nmで、第2の層の厚さは約46nmである。いくつかのケースでは、基板と外部接合反射器との間に反射防止膜が配置される。この反射防止膜は、tAR=(λpump/4nAR) cos[sin−1((1/nAR)sinθ)]の等式で表るような屈折率nAR及び厚さtARを有することができる。
【0007】
いくつかの実施形態は面発光レーザ構造体に関し、この面発光レーザ構造体が、第1の反射器と、第2の反射器と、第1の反射器と第2の反射器との間に配置される活性領域とを含む。この活性領域は、レーザ波長λlaseで照射光を発光するよう設定される。少なくとも基板の一部が、利得素子と第1の反射器の間に配置される。この基板は、その第1の面が利得素子側に、第2の面が第1の反射器側になるよう配置される。部分的反射素子(PRE)は、基板の第1の面上でエピタキシャル成長する。部分的反射素子は、レーザ波長の照射に対しては約40%〜約60%の反射率を有し、ポンプ波長の照射光に対しては約40%〜約60%の反射率を有する。いくつかの実施形態では、基板の一部が約100μmの厚さを有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、3つの反射素子を組み込んだ光ポンプ垂直外部共振器型面発光レーザ(VECSEL)装置を示す説明図である。
図2図2は、図1の半導体構造体及び第2の反射器の一分部をより詳細に示す説明図である。
図3図3は、445nmの波長と38度の入射角度を有するポンプ光に対する、活性領域内の定在波を示す説明図である。
図4図4は、通常、活性領域面に発光され、460nmの波長を有するレーザ照射光に関する、活性領域内の定在波を示す説明図である。
図5図5は、最後のPRE層に隣接する最後のスペーサGaNと、InGaNスペーサに隔てられた3組のInGaN量子井戸と、3組の量子井戸の各周期間の厚いGaNスペーサと、を含む例示のVECSEL構造体の一部に関する屈折率を示す説明図である。
図6図6は、図1及び図2に示されたVECSEL装置に関して計算された屈折率とE電界の強度の断面を示す説明図である。
図7図7は、波長に応じた反射率(R)、透過率(T)、吸収率(A)を示すグラフであり、ポンプ光線の吸収率(A)はVECSELの活性領域内で発生する。
図8図8は、レーザ照射を実現するために、Γrelに応じて必要な推定ポンプパワーを示すグラフである。
図9図9は、部分的反射素子(PRE)を用いるVECSEL構造体をより詳細に示す説明図である。
図10図10は、20組のAlGaN/GaNを有するPREを組み込むVECSELに関するA(λ)を示すグラフである。
図11図11は、PRE層の組の数に応じた活性領域内のポンプ光吸収率を示すグラフである。
図12図12は、AlGaN/GaNのPREの反射率をシュミレーションするために用いた構造体の説明図である。
図13図13は、PRE層に応じた反射率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
品質の高いスペクトル特性と空間光レーザ特性のため、垂直共振器型面発光レーザ(VCSEL)や垂直外部共振器型面発光レーザ(VECSEL)等の、面発光レーザ(SEL)には関心が集まっている。ポンプパワーが様々な用途のための十分なパワーを生み出す必要があるため、III族窒化物材料のシステム内でのSELの使用を実現することは難しい課題である。本明細書で議論する実施形態は、3つの反射素子を含むSELに関する。レーザに関する光共振器を形成する反射素子に加えて、部分的な反射を行う第3の反射器が、レーザの光共振器内に配置される。この第3の反射器により、レーザの活性領域を通過するレーザ照射光の再利用率を上げ、SEL内のレーザ照射に対して必要とされる閾値パワーを下げる。これによりレーザ照射効率を上げる。下記に記載されるいくつかの実施形態では、光ポンプレーザのレーザ共振器内に配置される第3の反射器の動作が例示される。これらの実施形態により例示されるこれらのアプローチは、励起機構としてダイオードへの電流注入を用いるレーザにまで広げられる。
【0010】
本明細書で議論するいくつかの実施形態では、2つの異なる波長、即ち、レーザ照射光の波長とポンプ光の波長で共振するよう設定された活性領域を用いる。活性領域の量子井戸構造体は、ポンプ定在波場の腹膜とレーザ定在波場の腹膜との両方を覆うように配置される。
【0011】
図1は、3つの反射素子を組み込んだ光学的にポンピングされるVECSEL装置の説明図である。VECSELは、光ポンプ光源と、この装置に関する外付けの外部結合ミラーである第1の反射器と、分配ブラッグ反射器(DBR)等を含む第2の反射器と、部分的反射素子であり、利得構造体と第3の反射器とを含む半導体構造体と、を含む。レーザ共振器は、外付け外部結合ミラーと第2の反射器により固定される。第3の反射器は、光共振器内に配置される。
【0012】
ポンプ光源は、基板に向かって集束するポンプ光125を発光する。例えば、VECSEL装置は、基板上の(又は、存在すれば反射防止膜上の)スポットにポンプ光を集束する集束光学系を含むことができる。このポンプ光は、破線126で示される装置の光軸に対して角度θで、半導体構造体に入射することができる。いくつかのケースでは、例えば、この装置が扱いやすくなる約100μm程度の厚さまで基板を薄くすることができる。半導体構造体の活性領域内で生成される照射光130(本明細書ではレーザ照射光と呼ぶ)の一部は、基板を通過して進み半導体構造体から外に出て外付けの外部結合ミラーに向かい、この外付けの外部結合ミラーが第1の反射器として示される。活性領域で生成される照射光の一部は、レーザ照射光の出力を示す矢印135で示す通り、凹面の外部結合ミラーを通過しVECSEL装置の外に出力される。レーザ照射光の大部分は、矢印120で示す通り、反射して半導体構造体に戻る。随意的に基板を反射防止膜で被膜して、再利用するレーザ照射光120及び/又はポンプ光125の反射光を削減することができる。この反射防止膜は、tAR=(λpump/4nAR)cos[sin−1((1/nAR)sinθ)]、の等式で表すような屈折率nARと、厚さtARとを有することができ、λpumpは、ポンプ光の波長である。
【0013】
いくつかの実装形態は、非線形光学結晶等の光周波数変換器136を含み、この光周波数変換器136は、外部共振器内に配置され、レーザ照射の調波周波数、或いは和周波数又は差周波数での照射光を生成する。この周波数変換器を用いることで、600nmより低いレーザ波長から、遠紫外線のスペクトル、例えば、300nmより低い、又はさらに約250nmよりも低いレーザ出力135を得ることができる。
【0014】
一実施形態では、ポンプ光源は、370〜460nmの範囲のレーザ光を発光する窒化ガリウム(GaN)ベースのレーザダイオード(或いは、複数のレーザダイオード)であり、いくつかの実施形態では、このレーザダイオードは、405nmのレーザ光又は445nmのレーザ光を発光する。ポンプ光源の出力パワーは、1〜10ワットの範囲でよい。ポンプ光源は、集束システムを含むことができ、この集束システムは、50kW/cmより高いパワー密度を実現するために、ポンプ光をポンプ光線の直径50〜200μmのサイズのスポットに集束する1つ以上のレンズを含む。ポンプ光源の出力部は、活性領域を駆動する光ポンプを形成する。この活性領域が、所望の波長、例えば440nm〜550nmの範囲のレーザ照射光線を出力する。半導体の利得領域の出力波長の99.5%以上のミラー反射率を提供するために、外付けの外部結合ミラーを誘電体層で覆うことができる。
【0015】
動作中に半導体構造体が熱を持つ可能性がある。異常な高温が発生することによる装置の損傷の可能性を緩和するために、この装置に放熱板を取り付けることができ、この放熱板を第2の反射器を隣接させる。放熱板を、例えば、銅、ダイヤモンド、又はその他の熱伝導材料から構成することができる。いくつかのケースでは、レーザリフトオフ法を用いて、随意的な第2の放熱板を加えることができる。このシナリオでは、基板を取り除くためにレーザリフトオフ法を実行する、即ち、基板を薄くして基板の薄い残余膜にする。次いで、この第2の放熱板を第3の反射器又は基板の薄い残余膜の露出した裏面に取り付ける。完成した構造体は、放熱板を2枚含み、1枚は第2の反射器に隣接し、もう1枚は基板が取り除かれた状態で、第3の反射器に隣接する。後者の例では、第2の放熱板が、開口部を含み、この開口部を通して装置をポンピングしレーザ照射光を発光する。
【0016】
図2は、半導体構造体201及び第2の反射器230の一部をより詳細に示す説明図である。この例では、半導体構造体201は、VECSEL装置を取り扱うために適切な、例えば、約100μm程度の厚さの基板を有する。この基板に関する適切な材料には、GaN、AlN、AlGaN、InGaN、InAlN、AlInGaN、又はその他のポンプ波長とレーザ波長の両方で低い吸収率を有する材料が含まれる。
【0017】
第3の反射器210は、本明細書では部分的反射素子(PRE)と指定され、ポンプ光とレーザ照射光の両方を部分的に反射可能である。第3の反射器210は、基板上で成長し、5組〜20組のAlGaN/GaN又はInAlN/GaNの組211からなるIII族窒化物の超格子等のIII‐V族材料の超格子を含むことができる。例えば、図2の例では、各組211の第1の層212はGaNを含むことができ、各組211の第2の層213はAlGaN又はInAlNを含むことができる。第3の反射器は、InAlyGa1−x−yN/InAlGa1−u−vNの層の組を含むことができる。レーザ共振器内に配置されるPREを有する装置は、活性領域内のポンプ光の高い吸収率及び、基板の電界強度に対して増加した活性領域内のレーザ照射光線の電界強度により、レーザ照射を実現するために必要とされるポンプパワーを下げるが、これにより損失が発生し得る。
【0018】
いくつかの実施形態では、第2の反射器230が誘電性DBRを含むことができ、この誘電性DBRは複数の誘電性の材料の組を含んで、特定な量の反射率を実現する。例えば、誘電性DBRは、8組の52nmのTiO/79nmのSiO1/4の波長面を含むことができ、この波長面により、約460nmのレーザ波長とポンプ波長において、99.9%の反射率が生み出される。第2の反射器230は、利得構造体上で、電子ビーム蒸着(EBE)することにより、及び/又はスパッタリングすることにより形成することができる。
【0019】
半導体構造体201は、部分的反射素子210上で成長したエピタキシャル利得領域220を含む。いくつかの実施形態では、利得領域220が、スペーサ層225、227により隔てられた複数の(例えば、5枚〜20枚の)量子井戸224を含む。量子井戸構造体221は、1つの量子井戸、又は狭い間隔で配置された複数の量子井戸を含むことができる。図2には、各量子井戸構造体221が、薄いスペーサ層225により隔てられた2つの量子井戸層224を含む実施形態が示される。量子井戸構造体221内の量子井戸224の間に配置された薄いスペーサ225は、量子井戸構造体221間のスペーサ層227より薄い。このように、量子井戸の間に配置されたスペーサ225を本明細書では薄いスペーサと呼び、量子井戸構造体221の間のスペーサ227を本明細書では厚いスペーサと呼んで、2種類のスペーサ間の相対的な厚さの違いを明確にする。量子井戸構造体とミラーの間にエンドスペーサ層も存在し得る。これらのエンドスペーサ層の厚さは、一般に、厚いスペーサ層や薄いスペーサ層とは異なる。
【0020】
いくつかの実施形態では、各量子井戸構造体221が、GaNの薄いスペーサにより隔てられたInGa1−xNの量子井戸層224の組を含み、このxは0.10≦x≦0.5である。一般には、量子井戸構造体は、1つ以上の量子井戸を含むことができる。各量子井戸層224は、約3nmの厚さを有し、量子井戸層224の間に配置されたInGaNのスペーサ層225は、約5nmの厚さを有する。量子井戸構造体221は、約80nmの厚さを有する厚いGaNスペーサ227により互いに隔てられる。活性領域220の第1の量子井戸構造体を、約87nmの厚さを有するGaN層222により、第3の反射器210から隔てることができ、活性領域220の最後の量子井戸構造体を、約87nmの厚さを有するGaN層221により、第2の反射器230から隔てることができる。
【0021】
ポンプ照射光は、複数の第1の静止腹膜を有する利得領域220内に定在波を形成する。レーザ照射光は、薄い複数の第2の静止腹膜を有する活性領域220内でも定在波を形成する。レーザ照射光260及びポンプ光250の定在波パターンの腹膜位置に各量子井戸構造体221が配置されるように、複数の量子井戸構造体221は互いに間隔をあける。
【0022】
利得構造体220は、光学的厚さOTを有する合計でN枚の層で構成され、このOTは以下の等式で決定する。
【数1】
但し、層nは、量子井戸層224と、薄いスペーサ層225と、厚いスペーサ層227と、2枚のエンドスペーサ層221、222とを含み、これらのエンドスペーサ層221、222により、反射器230、210から最初の量子井戸層及び量子井戸層が隔てられる。つまり、利得領域220は、各層の厚さにその層の屈折率で乗じた積の合計である光学的厚さを有する。活性領域は、その光学的厚さが1/2λlaseの整数倍に近くなるよう設計される。但し、λlaseはレーザ照射光の波長である。この光学的厚さは、波長と共に変動する屈折率に依存するため、この光学的厚さも波長と共に変動する。したがって、活性領域の有効な設計として、次のようなものがある。OT(λlase)=(Npairs+1)1/2λlase、但し、N組は整数の量子井戸の組である。この設計では、レーザ照射の照射光の定在波パターンの腹膜は、量子井戸と大きな領域の重なる部分を有する。入射の角度とポンプレーザの波長とを適切に選択することにより、量子井戸と重なる腹膜を有する定在波パターンを実現することが可能となる。
【0023】
PRE230は、III−V族の材料の超格子を含むことができる。ある例では、PRE230は、目標屈折率2.30を有する10枚のAlGaN層を含む。各AlGaN層の厚さは、約50nmである。AlGaN層は、厚さ46.4nmを有するGaN層により隔てられる。AlGaNに関する指数はAlGaN/GaNのDBRに関する反射率の計測値と一致する。部分的反射素子に関して、その他のIII−V族窒化物、又はIII族窒化物の組合せを用いることも可能である。例えば、上記に議論した通り、AlGaNの代わりにInAlNを用いて、PREを形成することができる。InAlNを用いることにより、InAlNとGaNとの間を合わせる良好な格子を形成しやくすることができ、歪みを減らし、結晶の品質及び性能を向上させることができる。一般には、ポンプ光の光線とレーザ照射光の光線の両方の透過率の量により、PREが量子井戸内に最適な吸収率を提供できるよう、このPREは設計される。下記により詳細に議論するが、例えば、いくつかの実施形態では、ポンプ波長に対しては約50%の透過率と、波長を有するレーザ照射光に対しては約50%の透過率とを有するよう、PREを設計することができる。
【0024】
上述した通り、活性領域(量子井戸及びスペーサ層)がポンプ波長で基本共振を示すと、吸収効率が著しく向上する。活性領域の厚さにより、レーザモードの定在波、及び/又はポンプモードの定在波の数周期を覆うことができる。
【0025】
図3及び図4には、PREからの距離に応じたE電界及び屈折率が示される。図3には、活性領域内で波長445nmを有し入射角38度のポンプレーザ照射光に関する定在波パターン350及び静止腹膜351が示される。図4には、図3と同じ利得領域内で波長460nmを有するレーザ照射光に関する定在波パターン460及び静止腹膜461が示される。この例に関する活性領域は、Npair=4と、厚さ5nmの薄いGaNスペーサ層(図3及び図4では、薄いスペーサの厚さは、「T」で示す)と、幅3nmを有するInGaN量子井戸(量子井戸の厚さは、「W」で示す)と、厚さ80.6nmの厚いGaNスペーサ層(厚いスペーサの厚さは、「L」で示す)と、厚さ86.3nmのエンドGaNスペーサ層(エンドスペーサ厚さは、「IS」で示す)とを含む。図3及び図4に示す通り、ポンプレーザ照射光の定在波350及び発光レーザ照射光の定在波460の両方の腹膜351、461は、この利得領域内で量子井戸(W)と重なる。
【0026】
図5には、最後のPRE層に隣接するGaNエンドスペーサと、薄いGaNスペーサで隔てられた3組のInGaN量子井戸と、3組の量子井戸の各周期の間の厚いGaNスペーサと、を含む例示のVECSEL構造体の一部に対する屈折率が示される。図5には、量子井戸構造体どうしの中心から中心までの距離である活性領域の1周期が示される。この例では、
【数2】
となる。
但し、OT(エンドスペーサ)、OT(厚いスペーサ)、OT(薄いスペーサ)、OT(Well)は、エンドスペーサ、厚いスペーサ、薄いスペーサ、光学井戸(optical well)の光学的厚さをそれぞれ示し、Nwellsは、本明細書では各周期内の量子井戸の数であり、m’とmは1以上の整数である。一般には、m’=m=1である。いくつかの例では、m又はm’が、2以上に増えると有益であり得る。
OT(エンドスペーサ)=ISnGaN、但しnGaNはGaNの屈折率である。
OT(井戸)=WnInGaN、但し、nInGaNは、InGaNの屈折率である。
OT(薄いスペーサ)=TnGaN、及びOT(厚いスペーサ)=LnGaN
OTに対する代数を、上記のm=m’=1に関する等式に当てはめると、
ISnGaN+1/2NwellsWnInGaN+1/2(Nwells−1)TnGaN=1/2λlase、及び
LnGaN+NwellsWnInGaN+(Nwells−1)TnGaN=1/2λlaseとなる。
最小のエンドスペーサ厚さは、IS=1/2λlase−1/2NwellsWnInGaN−1/2(Nwells−1)TnGaNとなる。いくつかのケースでは、より厚いエンドスペーサを用いることができる。1/2λlase/nGaNの整数の倍数、Kをエンドスペーサの厚さに加えることにより、エンドスペーサの厚さを増やすことができる。
【0027】
図6には、図1及び図2に示すVECSEL装置に関して算出された屈折率とE電界強度の断面が示される。このVECSELは、利得構造体の光軸と実質的に平行な方向に、460nmのレーザ照射光を発光する。活性領域には、(その上に反射防止膜が露出される)半導体構造体の面上で、θ=38度の角度入射角で445nmのポンプ光がポンプ注入される。ポンプ波長λpump、レーザ波長λlase、基板の屈折率nsubと、ポンプ照射の入射角の最適角度θと、の間には、一定の関係が存在する。活性領域内の量子井戸を用いるポンプ光線及びレーザ照射光線の両方の腹膜の最適な重なりを有する条件を改善することからこの条件が生じる。この関係は次の通りである。sin(θ)=nsubsin[cos−1(λpump/λlase)]したがって、{λpump、λlase、nsub}が、{445nm、460nm、2.45}の場合、θ=38度となる。{λpump、λlase、nsub}が、{400nm、460nm、2.45}の場合、この条件を満たす角度θは存在しない。{λpump、λlase、nsub}が、{400nm、420nm、2.45}の場合、θ=48度である。いくつかの構成は、VECSEL装置に関与し、ポンプ光源から発光される照射光が、sin(θ)=nsubsin[cos−1(λpump/λlase)]で表るような角度θで基板の表面上に入射するようポンプ光源が配置される。但し、ポンプ波長はλpumpであり、レーザ波長はλlaseであり、基板の屈折率はnsubである。この条件が最適ではあるが、たとえ最適な角度θが実現しなくても、レーザ照射は発生することができる。GaN基板に関して、n=2.45の場合、いくつかの入射角度で最適な重なりを実現するために、λpump/λlaseの率は、約0.91より大きくなくてはならない。
【0028】
一設計の例では、図2に関連して上記の記載した10×2枚の連続したInGaN量子井戸を含む活性領域内で利得が生じる。第3の反射器PREは、目標屈折率2.30を有するAlGaN/GaNの10層の組の超格子を含む。各AlGaN層の厚さは約50nmであり、各GaN層の厚さは約46.4nmである。活性領域では、エンドスペーサGaN層は約87nmの厚さを有し、厚いスペーサ層は約80nmの厚さを有し、薄いスペーサ層は約5nmの厚さを有し、InGaN量子井戸は3nmの厚さを有する。
【0029】
図6には、基板表面からの距離に応じた装置の屈折率n(z)510が示される。この例では、基板は反射防止膜で覆われる。図6にはまた、基板表面からの距離に応じた電界E(z)520のグラフが示される。このE電界は、真空での波長460nmのレーザ照射光に対応する。この特定な設計に関する別の計算により445nmのポンプ光の38度の入射の吸収率は、約94.5%であることが示される。
【0030】
図6では、損失が予測され得るGaNの基板内の平均電界と比較して、InGaNの利得領域内のピークE電界がΓrel≒7倍向上することが示される。GaN基板内では吸収係数は、例えば、約1cm−1程度と極めて小さいが、基板が機械的安定性を実現するための十分な厚さ、例えば、約400μmを有する場合は、著しい損失があり得る。構造体の任意の特定な領域内の利得又は損失は、その領域内のE電界と比例するため、損失領域と比較して、活性領域内に電界強度の増強をもたらす設計が有益である。係数Γrelは、レーザ照射を実現するために必要なポンプパワーの計算に入力される。損失に打ち勝ちレーザ照射を発生させる利得を得るために、E電界の強さは、GaN基板内のE電界の強さと比較して、活性領域内で強くなければならない。損失を抑えるために、GaN基板の厚さを可能な限り抑え、なおも機械的安定性に関して十分な構造的支持を維持することが有益である。
【0031】
図6から分かるように、PRE領域内で発生するE電界を十分に増強することと、光共振器内でPREを用いることで、基板内のE電界に対してパラメータΓrelを2倍、3倍、4倍、又はそれよりより多く、例えば約7倍に増加させることができる。
【0032】
GaN基板内の損失はサブバンドギャップによる照射光の弱い吸収、又は散乱により発生し得る。いくつかのGaN基板内の消散係数kは、k=5×10−6と推定することができる。この消散係数に基づいた、GaN基板内の吸光係数αは、1.4cm−1と推定できる(但し、α=2ωk/c=4πk/λ、但しωは照射光の周波数、λは照射光の波長、cは真空中の照射光の速度である)。表1に示す通り、α=1.4cm−1及びTloss=exp(−2αLGaN)を用いて、この吸収率から発生する損失をGaN基板の様々な厚さLGaNに関して算出することができる。
【表1】
装置内でレーザ照射を実現するために必要な推定ポンプパワーを下記の等式により算出する。
【数3】
但し、Nthは閾値でのキャリア密度、Ephは光子エネルギ、NはInGaN量子井戸の数、Lは井戸の厚さ、Aは集束されるポンプ光線の領域、fabsは吸収されたパワーの一部、τ(Nth)はキャリア密度の閾値でのキャリアライフタイムである。
キャリア密度に対する利得の依存性は下記の等式で決めることができる。
【数4】
但し、gは材料の利得、Nはキャリア密度、Nは透過キャリア密度である。InGaNに関して、gは、2400cm−1と推定することができる。レーザ照射を実現するために必要なパワーは、照射光が周期的に共振する利得領域に、どのくらい吸収されるかに依存する。ポンプ光の波長に応じて、活性領域内に吸収される照射光の一部を、シュミレーションすることにより推定し、その結果を図7に示す。図2及び図3に関連して議論した通り(38度で入射する445nmのポンプ光)第3の反射器を含む設計により、活性領域内で90%より高い共振吸収が可能になる。
【0033】
図7には、図1及び図2で示す装置等の装置の活性領域内の波長に応じた反射率(R)、透過率(T)、吸収率(A)のグラフが示される。この例では、装置は38度で入射するポンプ光を伴う第3の反射器であるPREを含む。上記に議論した通り、このPREは、10組のAlGaN/GaN層の組を含み、活性領域は、GaNのスペーサで隔てられた10×2枚のInGaNの量子井戸を含む。図7に示す通り、この装置に関して、445nmに近いポンプ波長では、90%を超える照射光がInGaN量子井戸に吸収される。
【0034】
キャリア密度Nに応じたキャリアライフタイムτは、次のように表る。
【数5】
但し、A、B、Cに関する係数は、計測可能である。例えば、A、B、Cは、Y.C.Shen et.al.によりInGa1−x、N(x≒15%)に関して計測され、「Applied Physics Letters.91、141101(2007)」で報告されている。
【0035】
閾値キャリア密度は次のように表る。
【数6】
但し、Nは透過キャリア密度、Rは外付けの外部結合ミラー(第1の反射器)の反射率、Rは誘電性のDBR(第2の反射器)の反射率、TlossはGaN基板内の損失から発生する因子である。
【0036】
指数内の利得係数Gは、量子井戸の材料利得g、井戸の数N、各井戸の厚さLに依存する。図6に示す通り、Γrelは量子井戸内のピーク電界Eと、損失領域内の電界Eの平均値との割合と同じであり、以下の式で表すことができる。
【数7】
【0037】
レーザ共振器内に配置される第3の反射器により、Γrelの高い値を実現することが可能になる。図8には、上記の等式(1)を用いて算出される閾値ポンプパワーPthが示される。Γrelの値が増加すると、レーザ照射に対して必要なポンプパワーの値は急降下する。図8に示す通り、Γrel≒4のときのポンプパワーはポンプパワー1ワットより小さい。計算に関して用いるパラメータを表2に記載する。
【表2】
【0038】
上記の例として用いられる光ポンピングされるVECSEL装置は、特定な材料、量子井戸領域の種類、数、厚さ等の活性領域の構成に関して記載されてきたが、その他の材料システム及び装置構成も、本明細書で議論する第3の反射器に関連して使用することができることに留意されたい。したがって、本明細書は、本明細書に記載する材料システム及び装置構成には限定されないものとする。別のIII−V族窒化物材料システム又はIII族窒化物材料システム等の種々の材料システムを用いた装置も第3の反射器から恩恵を受けることが予測できる。さらに、活性領域を特別な構成に変更することができる、例えば、説明した量子井戸の組に代わって、3つの量子井戸のグループを用いることができる。さらに、1つだけの光ポンプ光源を説明しているが、複数のポンプを使用することができることを理解されたい。
【0039】
図9は、PREを用いたVECSEL構造体をより詳細に示した説明図である。装置の層は、GaN基板から始まり左から右に向かった形成される。PREである第3の反射器は、レーザ波長及びポンプ波長で、部分的反射を行うDBRを含み、このDBRは、GaN基板上で成長したものである。PREは、Al0.2Ga0.8N/GaNの10周期を含むことができ、Al0.2Ga0.8N層は約.48.8nmの厚さを有し、GaN層は約46.8nmの厚さを有する。例えば、AlGaN層の厚さは、約λlase/4nAlGaN(λlase)でよく、GaN層の厚さは、約λlase/4nGaN(λlase)でよい。
【0040】
活性領域は、PRE上で成長した活性領域素子の約10周期等の複数の活性領域素子を含む。各活性領域素子は、InGaNに基づくダブル量子井戸構造体を含む。各活性領域素子は、順番に次の層を含むことができる。:InGaNの予備歪み層(pre−strain)(In0.03Ga0.97N、厚さ35.3nm)、第1の薄いスペーサ(GaN、厚さ5nm)、第1の量子井戸(In0.18Ga0.82、厚さ3nm)、a第2の薄いスペーサ(GaN、厚さ5nm)、第2の量子井戸、(In0.18Ga0.82N、厚さ3nm)、厚いスペーサ(GaN、厚さ21.7nm)、キャリア閉じ込め及び歪み制御層(Al0.2Ga0.8N、厚さ20nm)。
【0041】
第2の反射器は、DBRとして配列される1枚以上のエピタキシャル半導体の層と非エピタキシャル誘電体の層とを含むことができる。例えば、ある構成では、第2の反射器は、エピタキシャルDBRを含むことができ、このエピタキシャルDBRが、10.5周期のGaN/Al0.2Ga0.8N等のGaN/AlGaNを含み、GaN層は、厚さ約46.8nmで、AlGaN層は、厚さ約48.8nmである。非エピタキシャル誘電体のDBRを含む第2の反射器の一部を、エピタキシャルDBR上に配置することができる。例えば、誘電体のDBRは、SiO/TiOの4周期を含むことができ、SiO層は、厚さ78.8nm、TiO層は、厚さ52.3nmである。2つのDBRミラーを組合せて単一の混成DBRを作成した場合、第1のDBRの高い屈折率の材料が、第2のDBRの低い屈折率材料と接触するときに、目標波長において最も高い反射率が得られる。GaNが、AlGaNより高い屈折率を有し、SiOが、TiOより低い屈折率を有するため、混成DBRはGaNとSiOとの間に接点を有する。エピタキシャル半導体部、及び非エピタキシャル誘電体を含む2重のDBRを用いて、特定な熱伝導率と、特定な反射率を実現することができる。エピタキシャル半導体部は、非エピタキシャル誘電体部より高い熱伝導率を有し得、非エピタキシャル誘電体部は、エピタキシャル−半導体部よりも高い反射率を提供することができる。いくつかのケースでは、エピタキシャルDBRと非エピタキシャルDBRとの両方とも1/4波長のDBRである。
【0042】
図12に示す通り)GaN内に組み込まれる分離したPREの反射率を分析すると、活性領域内で高い吸収率を実現するための最適なPREの反射率は、50%に近いことが示される。(この分析に関しては、下記に記載する。)全ての種類の材料を用いた、その他の光ポンプレーザに、この設計基準が適用可能であることが予想できる。PREがVECSELの性能が向上させることができるための、その他の材料には、III−V族のヒ素及びリン化物が含まれる。
【0043】
PREを設計して、所定の量の反射率を実現し、この反射率により、ポンプ光及び/又はレーザ照射光の特定な吸収率を活性領域内で生み出すことができる。上記の分析には、2ステップの工程を使用した。第1のステップでは、波長A(λ)及びPREの層の数に応じた活性領域内の吸収率の計算に基づいて、PRE層の組の数が決められた。第2のステップでは、GaN内に組み込まれた分離PRE(例えば、図12に示す)の反射率が算出された。
【0044】
ステップ1に関連して、図7には、PREを含む装置の10×2枚のInGaNの利得領域内のA(λ)の計算値が示される。このPREは、構造体を伴う10組のAlGaN/GaNと、図9に関連して議論する装置と類似の構成とを含む。図10には、PRE層が20組のAlGaN/GaNに増加したときの同じ構造体に関するA(λ)が示される。ポンプ波長がλpump=445nmのとき、ポンプ光のうちの約55%だけしか活性領域内に吸収されないため、このシナリオでは、装置の性能は低下し得る。これらの計算を拡張して、PREに関する異なる数の層を含んだ結果が図11のグラフに示される。図11には、PRE層の組の数に応じた活性領域内でのポンプ光の吸収率が示される。ポンプ光の吸収率は、約2枚から約20枚までの層に関して約50%よりも高く、約4枚から約18枚までの層に関して約60%よりも高く、約10枚から約12までの層の組に関して約90%よりも高いことが図11から理解されたい。
【0045】
ステップ2に関連して、PREをGaN内に組み込み、入射する照射光に関する反射率Rをモデリングすることにより、PREの反射率の測定値を得ることができる。波長に応じた反射率をPRE内のAlGaNの層の数に応じて下記に算出する。シュミレーションされた構造体が図12に示され、その構造体は、AlGaN/GaNのPREと、その両側の約30μmのGaNの層であることが分かる。約70nmのSiOを含む反射防止膜が、上段のGaN層の上に配置される。λ即ち、R(λ)に応じた反射率を、AlGaNのPREの層の数に応じて算出する。図13には、38度で入射する445nmの照射光と通常の入射角(0度)の460nm照射光との両方に関する、AlGaN層の数に応じたPREの反射率が示される。この計算は、 図12に示す構造体に関して行われた。図11には、AlGaN層の最適な数は、10枚から12枚の範囲であることが示される。図13により、一般にPREが、通常に入射する照射光に関して、約40%から約60%までの間の反射率を有するべきであることが示される。特定なシステムの分析を通して、この結果に到達したが、この結果は、その他のPRE及び利得領域を用いるシステムに対しても有効であることが予想される。図10から13に関連して議論した分析から、約2枚から約20組のAlGaN/GaNの組を有するPREにより、活性領域内の吸収率が増加するが理解できる。最適な吸収率のために、約2組から約20組まで、又は約10組から約12組までの組を用いることができる。
【0046】
記載された実装形態の種々の態様で、複数の値及び範囲が提供される。これらの値及び範囲は、例としてのみで扱われ、請求項の範囲を制限することを意図するものではない。例えば、本開示で記載された実施形態は、開示された数値の範囲に全般に渡って実行することができる。さらに、実装形態の種々の様態に対して、複数の材料が適切なものと特定される。これらの材料は、例として扱われ、請求項の範囲を制限することを意図するものではない。
【0047】
上述した種々の実施形態の記載は、PREの例示のため及び説明のために提示され、制限のためではない。開示された実施形態は、全てを網羅すること意図すること、又は有効な実装形態を開示された実施形態に限定することを意図するものではない。上記の教示を鑑みて、数多くの修正、及び変更が可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13