(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、埋立地の護岸壁、防波堤等を構築するために、複数本の鋼管を並べて連続して打設することにより構成する鋼管矢板が使用されている。鋼管矢板の隣り合う鋼管を相互に接続する継手として種々の形式のものがあるが、例えばP−T型(パイプ−T型)継手が用いられている。
【0003】
このP−T型継手は、隣り合う一対の鋼管の継手部の頂部の対向部において、一方の鋼管に、この鋼管に沿ってCT形鋼が溶接固定され、他方の鋼管に、CT形鋼挿入溝が長手方向に形成されたパイプがこの鋼管に沿って溶接固定され、CT形鋼がパイプ内に収容されて構成されている。
この継手では、CT形鋼をパイプに対し固定するとともに鋼管間を遮水するためにパイプ内にモルタルなどの1次遮水用充填材を流し込むことが行われるが、この1次遮水用充填材の流出を防止するため遮水構造が設けられる。
【0004】
この遮水構造としては、例えば特許文献1には、CT形鋼のフランジ部の両側にそれぞれ可撓性の漏洩防止板を押え金具を介して固定具で固定するようにしたものが開示されている。
【0005】
さらに、鋼管矢板での遮水性の向上を図るため、例えば特許文献2では、P−T型継手に加え、2つのパイプにU形鋼状のU字状継手部を取り付けてできる略3角形状のポケットに2次遮水用充填材を充填する鋼管矢板の遮水継手構造が開発されている(
図1等を参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような鋼管矢板の遮水継手構造で、1次遮水層に加えて2次遮水層を設け、略3角形状のポケット内にアスファルトマスチックなどの2次遮水用充填材を充填して遮水する場合に、充填前のポケット内に異物があることにより充填材の品質が著しく低下するという問題があり、ポケット内をドライな環境にすることが求められている。
【0008】
この発明は、上記従来の技術の問題点と要望に鑑みてなされたもので、ポケット内にドライ状態を作り出し、2次遮水用充填材の品質を確保できる鋼管
矢板の遮水継手構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためこの発明の請求項1記載の鋼管矢板の遮水継手構造は、隣り合う鋼管矢板の継手部の対向部の頂部近傍の一方にCT形鋼状のT字状継手部材を鋼管矢板に沿って取り付け、
前記対向部の他方に、前記T字状継手部材のウエブ部が挿入される長手方向の溝を備え、前記T字状継手部材を単独若しくは前記鋼管矢板の外表面とで包囲して横断面形状が略環状となる頂部遮水部用継手部材を取り付け、前記継手部の外側部に対向させて長手方向に溝を備え横断面形状が略環状となる外側遮水部用継手部材を、当該溝同士を略対向させて取り付けるとともに、これら2つの外側遮水部用継手部材の
前記溝内に鋼矢板状または溝形鋼状の略U字状継手部材の両端フランジ部を収納するとともに、ウエブ部
を前記溝に係止可能に取り付け、これら頂部および外側との3つの遮水部用継手部材で構成されるポケット内に充填材を充填して遮水する鋼管矢板の遮水継手構造であって、前記T字状継手部材のフランジ部に、長手方向に沿って前記頂部遮水
部用継手部材の内面に接触してシール可能な頂部弾性遮水部材を設ける一方、前記頂部弾性遮水部材の下端を緩衝当接させて遮水する底部緩衝遮水部材を設けてな
り、前記底部緩衝遮水部材は、前記頂部遮水部用継手部材の前記溝から挿入され底部を塞ぐ底板部材と、この底板部材に取り付けられ前記頂部遮水部用継手部材の前記溝に溶接固定される操作部材と、前記底板部材に取り付けられ前記頂部遮水部用継手部材の内面に係止される係止部材と、前記底板部材上に取り付けられる緩衝部材とで構成してなることを特徴とするものである。
【0012】
この発明の請求項
2記載の鋼管矢板の遮水継手構造は、請求項
1記載の構成に加え、前記緩衝部材
は、前記頂部遮水
部用継手部材の内径に応じて円形に形成するとともに、前記底部緩衝遮水部材が緩衝当接する上面を平面状、凹面状、傾斜面状のいずれかとして構成してなることを特徴とするものである。
【0013】
この発明の請求項
3記載の鋼管矢板の遮水継手構造は、請求項1
または2に記載の構成に加え、前記略U字状継手部材の両端フランジ部の先端部両側に、長手方向に沿って前記外側遮水
部用継手部材のそれぞれの内面に接触して遮水する外側弾性遮水部材を
、固定用部材を介して取り付けてなることを特徴とするものである。
【0014】
この発明の請求項
4記載の鋼管矢板の遮水継手構造は、請求項
3記載の構成に加え、前記固定用部材
は、前記略U字状継手部材のフランジ部に取り付け
られる金属製板材で構成
され、この金属製板材にスタッドボルト・ナットで前記外側弾性遮水部材
が締め付
け固定
されて構成されることを特徴とするものである。
【0015】
この発明の請求項
5記載の鋼管矢板の遮水継手構造は、請求項
4記載の構成に加え、前記固定用部材の前記金属製板材
は、前記略U字状継手部材のフランジ部に溶
接固定
されて構成されることを特徴とするものである。
【0016】
この発明の請求項
6記載の鋼管矢板の遮水継手構造は、請求項
3〜5のいずれかに記載の構成に加え、前記外側弾性遮水部材
は、横断面形状が環状の袋状に構成
されることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
この発明の請求項1記載の鋼管矢板の遮水継手構造によれば、隣り合う鋼管矢板の継手部の対向部の頂部近傍の一方にCT形鋼状のT字状継手部材を鋼管矢板に沿って取り付け、
前記対向部の他方に、前記T字状継手部材のウエブ部が挿入される長手方向の溝を備え、前記T字状継手部材を単独若しくは前記鋼管矢板の外表面とで包囲して横断面形状が略環状となる頂部遮水部用継手部材を取り付け、前記継手部の外側部に対向させて長手方向に溝を備え横断面形状が略環状となる外側遮水部用継手部材を、当該溝同士を略対向させて取り付けるとともに、これら2つの外側遮水部用継手部材の
前記溝内に鋼矢板状または溝形鋼状の略U字状継手部材の両端フランジ部を収納するとともに、ウエブ部
を前記溝に係止可能に取り付け、これら頂部および外側との3つの遮水部用継手部材で構成されるポケット内に充填材を充填して遮水する鋼管矢板の遮水継手構造であって、前記T字状継手部材のフランジ部に、長手方向に沿って前記頂部遮水
部用継手部材の内面に接触してシール可能な頂部弾性遮水部材を設ける一方、前記頂部弾性遮水部材の下端を緩衝当接させて遮水する底部緩衝遮水部材を設け
てなり、前記底部緩衝遮水部材は、前記頂部遮水部用継手部材の前記溝から挿入され底部を塞ぐ底板部材と、この底板部材に取り付けられ前記頂部遮水部用継手部材の前記溝に溶接固定される操作部材と、前記底板部材に取り付けられ前記頂部遮水部用継手部材の内面に係止される係止部材と、前記底板部材上に取り付けられる緩衝部材とで構成してなるので、頂部弾性遮止部材の下端を、頂部遮水
部用継手部材に装着固定した底部緩衝遮水部材に当接させることで、鋼管矢板の頂部の1次遮水層を完全な遮水状態にすることができ、鋼管矢板の頂部と外側との3つの遮水部用継手部材で構成されるポケット内をドライ状態にすることができる。
これにより、2次遮水層用充填材の充填時に異物が混入せず、充填材の品質を確保することができる。
また、前記底部緩衝遮水部材は、前記頂部遮水部用継手部材の前記溝から挿入され底部を塞ぐ底板部材と、この底板部材に取り付けられ前記頂部遮水部用継手部材の前記溝に溶接固定される操作部材と、前記底板部材に取り付けられ前記頂部遮水部用継手部材の内面に係止される係止部材と、前記底板部材上に取り付けられる緩衝部材とで構成してなるので、長尺の頂部遮水用継手部材であっても溝を利用して簡単に底部に装着して固定することができ、さらに、底板部材に緩衝部材を取り付けて操作部材を介して溝から挿入し回動して底部を塞いで係止部材で係止するとともに、操作部材を溶接固定することで、既存の鋼管矢板にも簡単に取り付けて底部を遮水状態にすることができ、緩衝部材によって頂部弾性遮水部材をソフトに接触させること(緩衝状態)ができ、無理な変形や損傷を防止して底部の遮水状態を確保することができる。
【0020】
この発明の請求項
2記載の鋼管矢板の遮水継手構造によれば、前記緩衝部材
は、前記頂部遮水
部用継手部材の内径に応じて円形に形成するとともに、前記底部緩衝遮水部材が緩衝当接する上面を平面状、凹面状、傾斜面状のいずれかとして構成したので、これらの上面の形状によって頂部弾性遮水部材をソフトに接触させること(緩衝状態)ができ、無理な変形や損傷を防止して遮水状態確保することができる。
【0021】
この発明の請求項
3記載の鋼管矢板の遮水継手構造によれば、前記略U字状継手部材の両端フランジ部の先端部両側に、長手方向に沿って前記外側遮水
部用継手部材のそれぞれの内面に接触して遮水する外側弾性遮水部材を、固定用部材を介して取り付けたので、固定用部材を介して2次遮水層を構成する外側弾性遮水部材を取り付けることで、直接フランジ部に取り付ける場合に比べ、簡単に取り付けて遮水することができる。
【0022】
この発明の請求項
4記載の鋼管矢板の遮水継手構造によれば、前記固定用部材
は、前記略U字状継手部材のフランジ部に取り付け
られる金属製板材で構成
され、この金属製板材に
スタッドボルト・ナットで前記外側弾性遮水部材
が締め付
け固定
されて構成されることで、金属製板材に外側弾性遮水部材を取り付けておき、この金属製板材を
スタッドボルト・ナットなどでフランジ部に取り付けることで、直接フランジ部に外側弾性遮水部材を取り付ける場合に比べ、外側弾性遮水部材を簡単にフランジ部に取り付けて遮水することができる。
【0023】
この発明の請求項
5記載の鋼管矢板の遮水継手構造によれば、前記固定用部材の前記金属製板材
は、前記略U字状継手部材のフランジ部に溶
接固定
されて構成
されているので、溶接で固定する金属製板材を用いることで、直接フランジ部に外側弾性遮水部材を取り付ける場合に比べ、金属製板材に取り付けておいた外側弾性遮水部材を簡単に溶接でフランジ部に取り付けて遮水することができる。
【0024】
この発明の請求項
6記載の鋼管矢板の遮水継手構造によれば、前記外側弾性遮水部材
は、横断面形状が環状の袋状に構成
されるので、袋状の外側弾性遮水部材を用いることで、接触面積を増大して一層遮水性を向上することができる。
なお、ここで、充填材の品質確保とは、充填材を使用環境に適した条件に保つことができる意であり、例えば充填材としてモルタルを用いる場合には漏洩がなく、ポケット内をドライ状態にすること。その結果として、充填材を隅々まで充填できることで、透水性(透水係数)が低下し、遮水性を高める。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、この発明の実施の形態について、図面に基づき詳細に説明する。
まず、この鋼管矢板の遮水継手構造10の基本的な継手構造について説明すると、
図1に示すように、隣り合う鋼管矢板A,Bの継手部の対向部の最も間隔が狭い部分である頂部近傍に一方の鋼管矢板AにCT形鋼状のT字状継手部材を構成するCT形鋼11のウエブ部11aの端部が溶接されてT字状に突き出すようにしてこの鋼管矢板Aに沿って取り付けてある。そして、対向部の他方の鋼管矢板Bには、CT形鋼11のウエブ部11aが挿入される長手方向の溝12aを備えた横断面形状が略環状となる頂部遮水部用継手部材を構成するパイプ12が溶接されて溝12aが鋼管矢板A側に位置するようにして鋼管矢板Bに沿って取り付けてあり、このパイプ12によってCT形鋼11を単独で包囲できるようにしてある。
【0027】
また、この鋼管矢板の継手構造では、隣り合う鋼管矢板A,Bの継手部の対向部の外側部である頂部より鋼管矢板A,Bの間隔の広い部分に対向させて長手方向に溝13aを備え横断面形状が略環状となる外側遮水部用継手部材を構成するパイプ13がそれぞれ配置されて溶接して鋼管矢板A、Bに沿って取り付けてあり、それぞれの溝13aが鋼管矢板A,Bの半径方向外側に向けられ当該溝13a.13a同士を略対向させて取り付けてある。そして、これら2つの外側遮水部用継手部材を構成するパイプ13、13の溝13a,13a内に鋼矢板状または溝形鋼状の略U字状継手部材として、例えばU形鋼矢板14の両端フランジ部14a,14aが収納されるとともに、ウエブ部14bが溝13a,13aに挿入され、これらの溝13a、13aによって係止され外れないように取り付けてある。
なお、略U字状継手部材としては、U形鋼矢板に限らず、溝形鋼のほか、平板の両端部に山形鋼状やフラットバー、丸鋼などを平板表面上や端面に溶接などで一体としたものなどであっても良く、横断面形状が略U字状であれば良い。
また、略U字状継手部材としては、平板の両端部近傍を折り曲げるなどで略U字状に形成したものや平板の反対面側にもフラットバーを溶接などで設けて2方向以上に広がった形状として一層溝から抜け難くしたものなどであっても良い。
【0028】
したがって、これら頂部および外側の遮水部用継手部材を構成する合計3つのパイプ12,13,13およびCT形鋼11,U形鋼矢板14で略3角形状のポケット15が形成されて継手構造が構成される。そして、この継手構造のポケット15内に充填材16を充填して遮水するようにしてあり、パイプ12およびCT形鋼矢板14で1次遮水を行い、パイプ13,13およびU形鋼矢板14で2次遮水を行うようにする。
なお、図中の記号28は、溝12a,13a,13aからの土砂の浸入を防止する土砂浸入防止材である。
【0029】
このような継手構造の1次遮水層および2次遮水層で遮水するこの発明の鋼管矢板の遮水継手構造10では、1次遮水層としてT字状継手部材を構成するCT形鋼11のフランジ部11bの両端部に、それぞれ長手方向に沿って所定の間隔で、スタッドボルト・ナットなどの固定具17が予め取り付けられ押え金具17aを介して、頂部遮水
部用継手部材を構成するパイプ12の内面に接触してシール可能なゴム板で構成した頂部弾性遮水部材18が取り付けてある。そして、この頂部弾性遮水部材18を取り付けてパイプ12の内面に両端部18a,18aを接触させてシールすることで、パイプ12の内面とCT形鋼11のフランジ部11bとで密閉された空間19が形成でき、この空間19内に充填されるモルタルなどの充填材20の流出を確実に防止することができる。
【0030】
さらに、この鋼管矢板の遮水継手構造10では、2次遮水層として、パイプ13、13と略U字状継手部材を構成するU形鋼矢板14との間にも外側弾性遮水部材21が設けられ、例えば2つのシールゴム21a,21bで構成され、パイプ13,13の内面に接触させて遮水するようになっており、固定用部材22でフランジ部14a,14aに取り付けられている。
【0031】
これらシールゴム21a,21bは、略U字状継手部材であるU形鋼矢板14のフランジ部14aの先端の内外面にそれぞれ取り付けられ、フランジ部14aの内面には、固定用部材22を構成する金属製板材22aにスタッドボルト22bを取り付けて予めシールゴム21aを押え金具22cを介してナットで締め付けておき、金属製板材22aを所々溶接してフランジ部14aに取り付けることで、U形鋼矢板14の全長に渡って取り付けるようにする。
一方、フランジ部14aの外面には、固定用部材22を構成する山形鋼状の金属製板材22dにスタッドボルト22bを取り付けて予めシールゴム21bをナットで締め付けておき、シールゴム21bの基端部の突条部21cをフランジ部14aの先端部に挟むようにし、金属製板材22dを所々溶接してフランジ部14aに取り付けることで、U形鋼矢板14の全長に渡って取り付けるようにする。
【0032】
このような外側弾性遮水部材21をU形鋼矢板14の両端部のフランジ部14a,14aに取り付けてパイプ13,13の内面に接触させてシールすることで、パイプ13の内面とU形鋼矢板14のフランジ部14aとでポケット15の略三角形の底辺部分を密閉することができ、すでに説明したCT形鋼11とパイプ12および頂部弾性遮水部材18で略三角形の頂点部分を密閉することと協働してこのポケット15内に充填されるアスファルトマスチックなどの充填材16の流出を防止する。
【0033】
さらに、この鋼管矢板の遮水継手構造10では、1次遮水層となるCT形鋼11とパイプ12および頂部弾性遮水部材18による略三角形の頂点部分の遮水を一層確実に行うため、CT形鋼11とパイプ12および頂部弾性遮水部材18の下端部を遮水するようにしている。
このCT形鋼11とパイプ12および頂部弾性遮水部材18の下端部を遮水は、底部緩衝遮水部材23が用いて遮水され、頂部弾性遮水部材18の下端を底部緩衝遮水部材23の上面にソフトに接触させる緩衝状態で当接させて遮水するようにする。
この底部緩衝遮水部材23は、例えば頂部遮水
部用継手部材であるパイプ12の溝12aから挿入し回動して装着固定することで、簡単に施工できるようにしている。なお、底部緩衝遮水部材23の装着固定方法は、溝を利用して回動する場合に限らず、他の方法であっても良い。
【0034】
この底部緩衝遮水部材23は、頂部遮水
部用継手部材であるパイプ12の内径に応じ、パイプ12の底部を塞ぐことができる円板状の金属製の底板部材23aを備えており、この底板部材23aの側面部に金属製の丸棒で形成された操作部材23bが溶接などで半径方向外側に突き出して取り付けてある。また、底板部材23aの操作部材23bと半径方向の反対側には、下方に突き出す係止部材23cが溶接などで取り付けられ、パイプ12の内面に当てることで底板部材23aが回動することを防止して係止することができるようにしてある。
さらに、この底部緩衝遮水部材23では、底板部材23aの上面に緩衝部材23dが取
り付けてあり、例えばゴム、発泡ゴム、発泡ウレタン、水膨張ゴムなどで構成され、緩衝
部材23dの上面の形状を平坦面としたり、凹面状の緩衝部材23eや傾斜面状の緩衝部材23fとすることで、頂部弾性遮水部材18の下端部をソフトに当接させ上面に沿って変形させるなどで遮水状態にできるようにしてある。
【0035】
このような底部緩衝遮水部材23は、底板部材23aおよび緩衝部材23dを垂直に立てた状態として頂部遮水
部用継手部材であるパイプ12の溝12aから挿入し係止部材23cを挿入したのち全体をパイプ12内に位置させる。
この後、底部緩衝遮水部材23を緩衝部材23dの上面が水平となるように回動してパイプ12を塞ぐように装着したのち、操作部材23bを溝12aの外側でパイプ12に溶接して固定する。そして、パイプ12の外周面より突き出している操作部材23bを切断しておく。
【0036】
このような鋼管矢板の遮水継手構造10は、施工に際して、パイプ12およびパイプ13が溶接された鋼管矢板Bに底部緩衝遮水部材23を頂部遮水
部用継手部材であるパイプ12の底部に装着固定した状態で打設した後、もう一方の鋼管矢板AにCT形鋼11とパイプ13とを溶接した状態とし、頂部弾性遮水部材18をフランジ部11bに取り付けながらCT形鋼11のウエブ部11aがパイプ12の溝12aに挿入されるとともに、パイプ13が鋼管矢板Bのパイプ13と対向するように打設する。
そして、U形鋼矢板14のフランジ部14aに外側弾性遮水部材21を金属製板材22aを介して取り付けた状態で所々を溶接しながら2つのパイプ13、13の溝13a、13aにウエブ部14bが挿入されるように吊り降ろして打設する。
こののち、パイプ12に形成された空間19にモルタルなどの充填材20を充填するとともに、略三角形状のポケット15内にアスファルトマスチックなど充填材16を充填することで、施工が完了する。
【0037】
こうして底部緩衝遮水部材23を頂部遮水
部用継手部材であるパイプ12の底部に装着固定した状態で、CT形鋼11に頂部弾性遮水部材18が取り付けられた鋼管矢板Aを打設することで、頂部弾性遮水部材18の下端部を緩衝部材23dにソフトに当接させ上面に沿って変形させるなどで遮水状態にすることができる。
これにより、パイプ12の底部分を一層確実に遮水することができ、ポケット15内をドライ状態にすることができ、充填材16の品質を確保した上で完全に充填して遮水することができる。
【0038】
次ぎに、この発明の他の一実施の形態について、
図5により説明するが、すでに説明した上記実施の形態と同一部分については、同一記号を記し、重複する説明は省略する。
この鋼管矢板の遮水継手構造10Aでは、外側弾性遮水部材24の形状が異なる。
この外側弾性遮水部材24は、横断面形状が環状の袋状に構成してあり、シールゴム24aの幅方向両端部を重ねて固定用部材22を構成する山形鋼状の金属製板材22dにボルト・ナット22eおよび押え金具22cを組み合わせて取り付け、金属製板材22dの他端部を所々U形鋼矢板14のフランジ部14aに溶接することで取り付けてある。
そして、環状の袋状とされてシールゴム24aの内側に形成された空間25に袋詰めモルタルなどの充填材26を充填してパイプ13の内面に密着させてシール状態とする。
なお,他の構成は、すでに説明した鋼管矢板の遮水継手構造10と同一である。
このような外側弾性遮水部材24を備えた鋼管矢板の遮水継手構造10Aによれば、横断面形状が環状で袋状の外側弾性遮水部材24を用いることで、パイプ13とのシールに必要な接触面積を増大して一層遮水性を向上することができるとともに、すでに説明した鋼管矢板の遮水継手構造10と同一の作用効果を奏する。
【0039】
次ぎに、この発明のさらに他の一実施の形態について、
図6により説明するが、すでに説明した上記実施の形態と同一部分については、同一記号を記し、重複する説明は省略する。
この鋼管矢板の遮水継手構造10Bでは、外側弾性遮水部材21の固定用部材22による取付構造が鋼管矢板の遮水継手構造10と異なる。
この鋼管矢板の遮水継手構造10Bでは、外側弾性遮水部材21を構成するシールゴム21a,21bの基端部をU形鋼矢板14のフランジ部14aの内外面を挟むようにし、固定用部材22を構成する押え金具22cを介してボルト・ナット22eで取り付けてある。
なお,他の構成は、すでに説明した鋼管矢板の遮水継手構造10と同一である。
このような外側弾性遮水部材21をボルト・ナット22eで直接U形鋼矢板14のフランジ部14aに取り付けた鋼管矢板の遮水継手構造10Bによれば、現場での溶接を行うことなく、ボルト・ナット22eを締め付けることで外側弾性遮水材21を取り付けることができるとともに、すでに説明した鋼管矢板の遮水継手構造10と同一の作用効果を奏する。
【0040】
次ぎに、この発明の他の一実施の形態について、
図7により説明するが、すでに説明した上記実施の形態と同一部分については、同一記号を記し、重複する説明は省略する。
この鋼管矢板の遮水継手構造10Cでは、略U字状継手部材としてU形鋼矢板14に代えて溝形鋼27を用いるとともに、外側弾性遮水部材21が外側のシールゴム21bだけで構成される点で異なる。
略U字状継手部材を構成する溝形鋼27では、両端フランジ部27a,27aがパイプ13,13内に収納されるとともに、ウエブ部27bが溝13a,13aに挿入され、これらの溝13a,13aによって係止され外れないように取り付けてある。
そして、各フランジ部27a,27aの外側面に、外側弾性遮水部材21のシールゴム21bが固定用部材22を構成する山形鋼状の金属製板材22dにボルト・ナット22eおよび押え金具22cを組み合わせて取り付け、金属製板材22dの他端部を所々溶接することで取り付けてある。
なお,他の構成は、すでに説明した鋼管矢板の遮水継手構造10と同一である。
このような略U字状継手部材として溝形鋼27を用いるとともに、外側弾性遮水部材21を外側のシールゴム21bだけで構成した鋼管矢板の遮水継手構造10Cによれば、部材点数を削減し、形状を単純にすることで製作が容易となるとともに、すでに説明した鋼管矢板の遮水継手構造10と同一の作用効果を奏する。
【0041】
なお、各実施の形態で図中の記号28は、溝12a,13a,13aへの土砂の浸入を防止する土砂浸入防止材である。
また、上記各実施の形態では、略U字状継手部材としてU形鋼矢板または溝形鋼を例に説明したが、これらに限らず平板の両端部に山形鋼などを溶接して横断面形状を略U字状にした鋼材などであっても良い。
さらに、略U字状継手部材としては、平板の両端部にフラットバー、丸鋼などを平板表面上や端面に溶接などで一体としたものなどであっても良く、また、平板の両端部近傍を折り曲げるなどで略U字状に形成したものや平板の反対面側にもフラットバーを溶接などで設けて2方向以上に広がった形状として一層溝から抜け難くしたものなど、横断面形状が略U字状ないし、U字にさらに部材を加えた形状であっても良い。