特許第5966166号(P5966166)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5966166
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】カバー付き水栓
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/042 20060101AFI20160728BHJP
   F16K 27/12 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
   E03C1/042 B
   F16K27/12
【請求項の数】3
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2012-82830(P2012-82830)
(22)【出願日】2012年3月30日
(65)【公開番号】特開2013-213314(P2013-213314A)
(43)【公開日】2013年10月17日
【審査請求日】2015年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】302045705
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100089440
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 和夫
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼梨 登士郎
(72)【発明者】
【氏名】中田 浩司
【審査官】 七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−336298(JP,A)
【文献】 特開2010−248713(JP,A)
【文献】 特開平09−310385(JP,A)
【文献】 特開平10−204945(JP,A)
【文献】 特開2007−205424(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/00−1/10
F16K 27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)水栓本体と、(b)外部に露出する操作部及び該操作部の径方向内側で該水栓本体側に延び、該水栓本体の被操作部に連結されて操作力を伝達する伝達部とを備えた回転式の左,右ハンドルと、(c)上カバーと該上カバーとは別体をなす下カバーとを備え、該水栓本体を外側から挟むように覆うカバーと、を有し、
使用者からの正面視で前記カバーの左端から前記左ハンドルの操作部が、該カバーの右端から前記右ハンドルの操作部が左右逆向きで突出した形態のカバー付き水栓であって、
前記左ハンドル及び右ハンドルのそれぞれの前記操作部の前記水栓本体側の端部に円筒状の被り部を備え、若しくは該操作部とは別体をなし、該操作部の前記水栓本体側の軸方向端と同じ径方向位置で該軸方向端に続いて前記水栓本体側に延びる形態で円筒状の被り部を設け、該被り部に対して前記カバーを軸直角方向外側から被せてあることを特徴とするカバー付き水栓。
【請求項2】
請求項1において、前記被り部が表示リングであることを特徴とするカバー付き水栓。
【請求項3】
請求項1,2の何れかにおいて、前記水栓が、前記水栓本体を壁に固定するクランク脚を備えたクランク脚付きの水栓であって、前記カバーが該クランク脚ごと該水栓本体を覆うものであることを特徴とするカバー付き水栓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はカバー付き水栓に関し、詳しくは水栓本体の左端と右端とから回転式の左ハンドルと右ハンドルの各操作部が左右逆向きに突き出した形態のカバー付き水栓に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水栓本体の左端と右端とから回転式の左ハンドルと右ハンドルの各操作部を左右方向に逆向きに突出させた水栓が知られている。
その代表的な例として、水側及び湯側の配管を兼ねた一対の脚管にて水栓本体が壁に固定される形式の混合水栓が従来から広く使用されている。
この場合の脚管として、壁から水平方向に突き出す第1管体と、その先端部から壁に沿って起立する第2管体とを有するクランク形状のもの(クランク脚)が一般に用いられている。
【0003】
上記脚管付きの混合水栓(以下単に水栓とすることがある)では、壁裏の元配管に接続状態に壁に取り付けた水側及び湯側の一対の脚管によって、金属の鋳物製の本体ボデーの内部に弁部その他の水栓機構部を内蔵させた水栓本体を支持することができる。
また脚管としてクランク脚を用いたものにあっては、水側及び湯側の左右一対のクランク脚を壁面と平行方向に回転させてその回転角度を調整し、また元配管へのねじ込み量を調節することで、水栓本体を水平姿勢に姿勢調節したり、水栓本体と壁との間隔を左右(使用者から見た正面視において左右)均等にしたり、或いは水栓本体の、左右一対のクランク脚との接続部間の間隔と、壁側の水及び湯の元配管の接続部間との間隔のずれを吸収したりすることができる。
【0004】
ところで、水栓本体から左ハンドルと右ハンドルの各操作部が左右逆向きに突出した水栓では、図18に示しているように水栓本体300と左ハンドル302の操作部302Aとの間、及び水栓本体300と右ハンドル304の操作部304Aとの間に、径方向内方に深く入り込む隙間Sが左右方向(ハンドルの回転軸線方向である軸方向)に生じる。
この隙間Sは水栓の外観,美観を低下させる要因となる。
尚ハンドルの操作部との間にこのような隙間が生じる点は、下記特許文献1にも図中に示されている。
【0005】
従来、水栓本体をカバーで覆って成るカバー付き水栓が知られており、このカバー付き水栓においても、カバーと左ハンドルの操作部,カバーと右ハンドルの操作部との間に隙間が生じる問題があり、この隙間がカバー付き水栓の外観,美観を低下させる。
【0006】
このカバー付き水栓は以下のような利点を有していることから、従来種々のものが提案されている。
詳しくは、従来の水栓の場合、金属製の鋳物製の本体ボデーがそのまま水栓の外観を成しており、そこで水栓の意匠性を高めるべく、従来にあっては一般に本体ボデー外面にメッキを施して外面を美麗に仕上げることを行っている。
【0007】
しかしながらこの場合、良好な外観を実現するために本体ボデーに余剰の肉を付けて外面をフラットとし、研磨処理を施した上でメッキ処理することとなるため、本体ボデーが必然的に重くなって施工作業がしづらくなり、また鋳物材料の使用量も多くなるとともに、研磨及びメッキ処理の工程が必要となってコストも高くなってしまう。
【0008】
また使用者が本体ボデーに触れたときの火傷防止などのために、本体ボデーにウォータージャケット構造を設けて、そこに水を巡らすようにしており、そのウォータージャケット構造のために本体ボデーの構造が複雑化し、また重量も重くなってしまう。
【0009】
水栓本体をカバーで覆って成るカバー付き水栓では、カバーが水栓の外観を成すために水栓の本体ボデーに余剰の肉を付けてその外面を凹凸の無いフラットな形に形成したりしなくても良く、重量を軽量化することができる。
またカバーによって、使用者が直接本体ボデーに触れるのを防ぐことが可能となり、従来本体ボデーに設けていたウォータージャケット構造を省くことも可能となる。
更にカバー付き水栓にあっては、カバーの種類を変えることで様々な外観を水栓に与えることが可能となる。
【0010】
このようなカバー付き水栓の一例が、例えば下記特許文献2に開示されている。
このようなカバー付き水栓においても、カバーと左,右ハンドルの各操作部との間に隙間が生じてしまう。
但し従来のカバー付き水栓は、主として水栓本体をカバーで覆うだけであり、この点は脚管、例えばクランク脚によって水栓本体を壁に取り付ける形式のクランク脚付きの水栓にあっても同様である。
【0011】
このように主として水栓本体だけをカバーで覆う形式のカバー付き水栓では、工場生産段階で予め水栓本体にカバーを取り付けておき、そのカバー付きの水栓本体を施工現場でクランク脚にて壁に取付施工することができ、施工が容易である他に、カバーを工場生産段階で予め取り付けておくことができるため、カバーとハンドルの操作部との隙間を小さく、またカバーと左ハンドルの操作部との間の隙間,カバーと右ハンドルの操作部との隙間を均等に制御し易い。
【0012】
但しクランク脚付きの水栓において、主として水栓本体をカバーで覆うだけのカバー付き水栓の場合、水栓設置状態でクランク脚が外部に露出して水栓の外観の一部をなすため、従来のカバー無しの水栓と同様に、クランク脚にメッキ処理を施して外観を美麗に仕上げておかなければならず、そのための処理にコストが多くかかってしまう。
【0013】
またその他に、水栓設置状態でクランク脚が外部に露出していると、クランク脚は複雑な屈曲形状をしているために、水栓の外観が煩雑化してしまう他、クランク脚が汚れの付き易い個所となり、しかもクランク脚は上記のように複雑な屈曲形状をしているために掃除がしにくく、汚れが付いたままとなり勝ちで、そのことが水栓の外観を悪化させる。
【0014】
そこで水栓本体をクランク脚ごとカバーにて覆う形態でカバー付き水栓を構成することが考えられる。
このようにすれば、カバーが水栓本体とともにクランク脚を外側から覆ってクランク脚を内側に隠し、かかるクランク脚が外観上現れないようにすることができるため、従来のようにクランク脚にメッキ処理を施しておかなくても良くなり、またクランク脚に汚れが付き易かったり、またその汚れの掃除がしにくかったりして、クランク脚に汚れが付いたままとなり易い問題を解決でき、クランク脚付き水栓の美観を従来に増して高めることができる。
また湯側のクランク脚をカバーの内側に覆っておくことができるため、使用者が意図せず湯側のクランク脚に触れてしまって熱い思いをしたり、場合によって火傷をしてしまう恐れも無くすことができる。
【0015】
しかしながら一方で、このように水栓本体をクランク脚ごとカバーで覆う形態とすると、施工に先立ってカバーを水栓本体側に取り付けておくことが難しく、施工現場においてクランク脚及び水栓本体を取り付けた後に、そこで初めてカバーを水栓本体側に取付施工せざるを得なくなる。
この場合、カバーの取付けを施工現場で行うこととなるため、カバーを簡単に取付作業できるようにしておかなければならず、必然的にカバー取付位置の位置精度が低くなる。
その場合、カバーの左端と左ハンドルの操作部との間の隙間,カバーの右端と右ハンドルの操作部との間の隙間が不均等となり易い。
その隙間の不均等は目立ち易く、水栓の美観、更に水栓設置状態の品位を大きく低下させる要因となってしまう。
従って水栓本体をクランク脚ごとカバーで覆うカバー付き水栓を実現する上で、こうした問題の解決は必須である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特許第2686897号公報
【特許文献2】特開2011−219959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は以上のような事情を背景とし、カバーと左ハンドルの操作部との間及びカバーと右ハンドルの操作部との間に隙間が生じる問題を解決し、設置状態で良好な外観を呈するカバー付き水栓を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
而して請求項1のものは、(a)水栓本体と、(b)外部に露出する操作部及び該操作部の径方向内側で該水栓本体側に延び、該水栓本体の被操作部に連結されて操作力を伝達する伝達部とを備えた回転式の左,右ハンドルと、(c)上カバーと該上カバーとは別体をなす下カバーとを備え、該水栓本体を外側から挟むように覆うカバーと、を有し、使用者からの正面視で前記カバーの左端から前記左ハンドルの操作部が、該カバーの右端から前記右ハンドルの操作部が左右逆向きで突出した形態のカバー付き水栓であって、前記左ハンドル及び右ハンドルのそれぞれの前記操作部の前記水栓本体側の端部に円筒状の被り部を備え、若しくは該操作部とは別体をなし、該操作部の前記水栓本体側の軸方向端と同じ径方向位置で該軸方向端に続いて前記水栓本体側に延びる形態で円筒状の被り部を設け、該被り部に対して前記カバーを軸直角方向外側から被せてあることを特徴とする。

【0019】
請求項2のものは、請求項1において、前記被り部が表示リングであることを特徴とする。
【0020】
請求項3のものは、請求項1,2の何れかにおいて、前記水栓が、前記水栓本体を壁に固定するクランク脚を備えたクランク脚付きの水栓であって、前記カバーが該クランク脚ごと該水栓本体を覆うものであることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0021】
以上のように本発明は、カバーから左ハンドルと右ハンドルの各操作部が左右逆向きで突出した形態のカバー付き水栓において、左ハンドル及び右ハンドルのそれぞれの操作部の水栓本体側の端部に円筒状の被り部を備え、若しくはその操作部とは別体をなし、操作部の水栓本体側の軸方向端と同じ径方向位置で、その軸方向端に続いて水栓本体側に延びる形態の円筒状の被り部を設け、その被り部に対してカバーを軸直角方向外側から被せたものである。
【0022】
本発明のカバー付き水栓によれば、カバーの左端と左ハンドルの操作部、或いはカバーの右端と右ハンドルの操作部との間に、径方向内方に深く入り込む左右方向の隙間が発生するのを防ぐことができる。
これによりカバー付き水栓の外観,美観を良好となすことができ、また水栓設置状態の品位を高めることができる。
【0023】
尚、カバーの左右方向の取付位置に若干の誤差が生じた場合であっても、そのことによってカバーからの被り部の出代(カバーからの左右方向の突出し長さ)の寸法が左右で相異するだけであり、またその相異は使用者からの正面視においてそれほど目立つものではなく、カバーの左右方向の取付位置の誤差によって水栓の外観,美観が実質的に損なわれるといったことはなく、美観,外観を良好に保持することができる。
ここで被り部が操作部と同じ径方向位置であるとは、被り部の外面位置と操作部の外面位置との径方向の差が全く無い場合の他、その差が1.0mm以下の微小である場合も含まれる。
【0024】
本発明は、ハンドルの操作状態を表示する表示リングをもって上記の被り部となしておくことができる(請求項2)。
このようにすれば、表示リングとは別に被り部を設けなくても良く、ハンドル周りの構造を簡素化することができる。
尚表示リングを上記の被り部とする場合において、表示部分がカバーの外側に露出するように設けておく。
ここで表示リングは水栓本体側に取り付けた固定の表示リングであっても良いし、ハンドルに取り付けられてハンドルと一体に回転する可動の表示リングであっても良い。
【0025】
本発明は、水栓本体を壁に固定するクランク脚を備えたクランク脚付きの水栓であって、カバーがクランク脚ごと水栓本体を覆う形式のカバー付き水栓(請求項3)に適用して特に大なる効果を奏する。
このようにクランク脚ごと水栓本体をカバーで覆う形式のカバー付き水栓では、カバーの取付けを水栓の設置現場で行わざるを得ず、その場合、カバーの左右の取付位置に比較的大きな位置誤差を生じ易い。
その場合であっても、本発明によれば水栓設置状態の美観,外観を良好となすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施形態のカバー付き水栓の外観斜視図である。
図2図1のカバー付き水栓の正面図である。
図3図1図2とは異なる方向で示したカバー付き水栓の外観斜視図である。
図4図1のカバー付き水栓の左側面図である。
図5図1のカバー付き水栓を、上カバー及び下カバーを除いた状態で示した図である。
図6】同実施形態の図1のカバー付き水栓のカバーを分解して水栓本体とともに示した図である。
図7図1のカバー付き水栓における本体ボデーにクランク脚を接続した状態を示した図である。
図8図1のカバー付き水栓のブラケット及び隙間カバーを示した図である。
図9】(A):図1のカバー付き水栓における上カバーの要部を拡大して示した図である。(B):図1のカバー付き水栓におけるカバーの固定構造を示した図である。
図10図1のカバー付き水栓における温調ハンドル周りの構造を周辺部とともに示した図である。
図11】(A):図10の摺動リングを周辺部とともに拡大して示した図である。(B):図10のハンドル支持部材と本体ボデーとの固定部分を拡大して示した図である。
図12図10の温調ハンドル周辺部品の分解斜視図である。
図13図10の温調ハンドルを示した図である。
図14図10の摺動リングを示した図である。
図15図1のカバー付き水栓における切替ハンドル周りの構造を周辺部とともに示した図である。
図16図15の切替ハンドル周辺部品の分解斜視図である。
図17】本発明の他の実施形態の要部の図である。
図18】従来の水栓の不具合の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1図4において、10はクランク脚を備えた壁付きのカバー付き水栓(混合水栓)で、図6に示しているようにハウジングをなす本体ボデー12の内部に温調弁ユニット138(図10),切替弁ユニット148(図15)その他の水栓機構部を内蔵した水栓本体14と、壁W(図5参照)裏に配管された給水用の元配管,給湯用の元配管からの水,湯をそれぞれ水栓本体14に供給する給水用の配管,給湯用の配管を兼ねた水側のクランク脚16,湯側のクランク脚18と、それらを全体的に囲い込むカバー(ここでは樹脂製)20を含んで構成されている。
ここで本体ボデー12は金属の鋳物から成っている。但し外面の研磨及びメッキ処理は施されておらず、外面は鋳肌そのままとなっている。
【0028】
水栓本体14は、金属製の一対のクランク脚16,18にて壁Wに固定され、そして水栓本体14にカバー20が固定されている。
【0029】
クランク脚16,18は、図7に示しているように壁W裏の元配管にシール状態にねじ接続されて、壁Wから水平方向に突き出す雄ねじ管から成る管体22と、これから壁面と平行方向に直角に折れ曲った管体24とを有しており、その管体24の先端部に袋ナット26が設けられている。
ここで水側のクランク脚16及び湯側のクランク脚18における一対の管体24は、正面視においてハ字状をなしている。
そしてこの袋ナット26により管体24の先端部が水栓本体14、詳しくは本体ボデー12に備えられた、外周面に雄ねじを有する水側,湯側の接続口28にねじ接続されている。
図7において、30は壁W裏の元配管とクランク脚16,18の管体22との接続部を覆って隠蔽する椀座である。
【0030】
一方、本体ボデー12の前部からはカラン側の吐水口32が下向きに突出しており、また図5にも示しているようにその背面からは、シャワー水をシャワーホースを介してシャワーヘッドに吐水するシャワーエルボ34が下向きに突出している。
尚、図7に示すようにカラン側の吐水口32の先端部には雄ねじ部が設けられていて、そこにキャップ35(図6参照)が螺着されている。
【0031】
この本体ボデー12を含む水栓本体14の左端側(使用者からの正面視において左端側)には温調(温度調節)ハンドル38が、また右端側には切替ハンドル40がそれぞれ回転操作可能に取り付けられており、これら温調ハンドル38,切替ハンドル40が、図1図4に示すようにカバー20から左右方向に突出せしめられている。
ここで温調ハンドル38は、回転操作によって吐水の温度調節を行う。また切替ハンドル40は、回転操作によってカラン側の吐水口32からの吐水と、シャワーエルボ34からの吐水との切替えを行うとともに、カラン側の吐水口32及びシャワーエルボ34からの吐水の流量調節と吐止水とを行う。
尚、温調ハンドル38及び切替ハンドル40周りの構造については後に詳しく説明する。
【0032】
カバー20は、図6に示しているように水栓本体14に下向きに被せられて、これを上側から覆う上カバー42と、水栓本体14を下側から覆う下カバー44と、更に補助的なカバーとして上カバー42及び下カバー44と壁Wとの間の隙間を閉じ、隠蔽する隙間カバー46とを有している。
【0033】
上カバー42は、略水平方向に平坦な板状の上面カバー部48と、上面カバー部48の前端から立ち下がった板状の前面カバー部50と、上面カバー部48の左右各一端から立ち下がった一対の板状の側面カバー部52とを有する、下面が開放された箱型形状とされており、その上面カバー部48によって、水側及び湯側の一対のクランク脚16,18ごと水栓本体14を上側から覆い、また前面カバー部50によって水栓本体14の上部を前側から覆い、更に一対の側面カバー部52によって、一対のクランク脚16,18ごと水栓本体14の上部を側方から覆っている。
ここで一対の側面カバー部52には、温調ハンドル38と切替ハンドル40とを突出させるための略半円形状の切欠部54が設けられている。
【0034】
また上カバー42の内面には、縦横にリブ58が設けられている。
尚、上カバー42はその全体を一体成形しておくこともできるし、或いは上面カバー部48と前面カバー部50及び一対の側面カバー部52を含む外周の枠部とを別体に構成して、それらを組み付けることで上カバー42を構成するようにしても良い。
【0035】
一方下カバー44は、図6に示すように略水平方向に延びる平坦な板状の下面カバー部60と、図2図3及び図4に示しているように下面カバー部60の前端から斜め上方に立ち上がる傾斜形状の前面カバー部62と、下面カバー部60の左右両端から同じく斜め上方に立ち上がる一対の傾斜形状の側面カバー部64とを有しており、その下面カバー部60によって水側及び湯側の一対のクランク脚16,18ごと水栓本体14を下側から覆い、また前面カバー部62によって水栓本体14の下部を前側から覆い、更に一対の側面カバー部64によって、一対のクランク脚16,18ごと水栓本体14の下部を側方から覆っている。
【0036】
ここで一対の側面カバー部64には、図6に示しているように温調ハンドル38,切替ハンドル40を突出させるための、側面視形状が略半円形状の凹陥部66が設けられている。
また下面カバー部60には、水栓本体14の上記のカラン側の吐水口32を下向きに突出させるための円形且つ貫通の開口部68と、シャワーエルボ34を下向きに突出させるための長穴形状の貫通の開口部70とが設けられている。
【0037】
この下カバー44の下面カバー部60は、一対のクランク脚16,18における管体22の上部の高さ位置で、水栓本体14を下側から覆う主部60Aと、一対のクランク脚16,18を下側から覆う脚カバー部60B(図3参照)とを有している。
脚カバー部60Bは、図3に示しているように下向きに湾曲して突出した逆ブリッジ状をなしており、管体22に組み込まれた止水栓の回転式の操作部72、及びストレーナを脱着操作するための回転式の操作部74を操作するための開口部76をその前端位置に形成している。
ここで開口部76は、使用者側の前方に向けて開口した正面方向の開口部とされている。
【0038】
尚、一対の側面カバー部64と前面カバー部62とには、上カバー42の側面カバー部52と前面カバー部50とに内嵌して、下カバー44と上カバー42とを左右方向及び前後方向に位置決めするリブ63が設けられている。
上記隙間カバー46は、図8に示しているように板状をなす平坦な上面閉鎖部78と、一対の側面閉鎖部80と、更に上面閉鎖部78の前端から立ち下がり、それら上面閉鎖部78及び一対の側面閉鎖部80を連結する前面部81とを有している。
【0039】
ここで側面閉鎖部80は、上面閉鎖部78の左右両端から垂直に立ち下がる上部80Aと、上部80Aの下端から下カバー44の側面カバー部64に対応した傾斜形状で斜め下向きに延びる下部80Bとを有している。
上部80Aは、隙間カバー46を壁Wに向けてスライド移動させる際に上カバー42の内側をスライド移動し、また下部80Bは、下カバー44の傾斜形状の側面カバー部64の内側を前後方向にスライド移動する。
【0040】
本実施形態のカバー付き水栓10を現場設置する際、上カバー42及び下カバー44と壁Wとの間に施工上隙間が生じてしまう。
この隙間カバー46はその隙間を埋め、閉鎖する働きを有するもので、隙間カバー46を後述のブラケット82による支持の下で後方にスライド移動させ、壁Wに当てることで、上カバー42及び下カバー44と壁Wとの間の隙間を閉鎖することができる。
【0041】
本実施形態のカバー付き水栓10では、施工に際して、先ず一対のクランク脚16,18が壁W裏の元配管への接続状態で壁Wに固定され、次いで一対のクランク脚16,18に対して水栓本体14が固定された後に、その水栓本体14に対してカバー20が固定される。
この実施形態では、カバー20を水栓本体14に固定するための、補強部材を兼ねた金属製の剛性のブラケット82を有しており、カバー20はそのブラケット82に対して直接固定される。
【0042】
以下その固定構造を詳しくは説明する。
先ずブラケット82の水栓本体14への固定構造を説明する。
図5及び図7に示しているように、水栓本体14には鍔状の被固定部86が一体に設けられている。
この被固定部86には、図7に示しているように固定用の挿通孔87が設けられている。
一方ブラケット82は、図8に示しているように左右方向の離隔した位置に一対の固定機能部88を有している。
ブラケット82は、これら一対の固定機能部88を連結部100で左右方向に連結した形態の一体構造体をなしている。
【0043】
一対の固定機能部88のそれぞれは、水栓本体14の被固定部86に固定される水栓本体側の固定部90を有しており、更にこれから左右方向外方に離隔した位置において、上カバー42,下カバー44及び隙間カバー46を固定するためのカバー側の固定部92を有している。
そしてそれぞれに、固定具としてのボルト等を挿通する挿通孔94及び雌ねじ孔96,98が設けられている。
【0044】
ブラケット82は、図5に示しているように水栓本体14側の固定部90を水栓本体14の被固定部86上に載置した状態で、ビス102を水栓本体14における被固定部86の挿通孔87に挿通し、固定部90の雌ねじ孔96にねじ込むことで、水栓本体14に固定される。
【0045】
上記上カバー42には、図6及び図9(A)に示しているように側面視形状がコ字形状をなす固定部104が左右に一対設けられている。
これら固定部104には、図9(A)に示すようにその底部に挿通孔106が設けられ、またその内部には、図9(B)に示しているようにナット108が保持されている。
上カバー42は、図9(B)に示しているようにボルト110を固定部92の挿通孔94に上向きに挿通し、更に上カバー42の固定部104の挿通孔106を挿通して、固定部104内部に保持されたナット108にねじ込むことで、ブラケット82に固定される。
【0046】
尚上カバー20には、図6に示しているようにその前端部且つ左右両端部に下カバー44との固定用の一対の固定部112が設けられている。
これら固定部112には挿通孔114が設けられ、更にその内部にはナット108(図9(B)参照)が保持されている。
一方下カバー44の対応する前端部且つ左右両端部には、円筒状の固定部116が設けられている。図6及び図9(B)に示すようにこれら固定部116にもまた挿通孔118が設けられている。
【0047】
上カバー42と下カバー44とは、下カバー44の固定部116の挿通孔118を挿通してボルト110を下側から上向きに挿通し、更にそれらボルト110を上カバー20の固定部112における挿通孔114を挿通して、それらの内部に保持されたナット108にねじ込むことで互いに固定される。
【0048】
下カバー44にはまた、図6に示しているようにその後端部且つ左右両端部に、下カバー44をブラケット82に固定するための一対の固定部120が設けられている。
これら固定部120は下端が開口し、上端に底部を有する有底円筒状をなしており、その上端の底部に挿通孔122が設けられている。
他方隙間カバー46には、図8に示しているように前方に延出する一対の固定部124が設けられており、それぞれに前後方向に長穴形状をなす挿通孔126が設けられている。
【0049】
この固定部124にはまた、上向きの立上り部128に、前後方向に延びるスライド部130が設けられている。
このスライド部130の下側には溝132が形成されており、そこにブラケット82における固定機能部88のスライド保持部134が挿入されている。
隙間カバー46は、スライド部130においてブラケット82のスライド保持部134により前後方向にスライド可能に保持されている。
【0050】
この実施形態において、下カバー44と隙間カバー46とは次のようにしてブラケット82の固定部92に固定される。
即ち、図8(B)及び図9(B)に示しているように隙間カバー46の固定部124を、ブラケット82の固定部92と下カバー44の固定部120との間に挟み込んだ状態で、図8(B)及び図9(B)に示すビス136を、固定部120の挿通孔122及び隙間カバー46の固定部124の長穴状の挿通孔126に挿通して、ブラケット82の雌ねじ孔98にねじ込むことで、それら下カバー44と隙間カバー46とがブラケット82に固定される。
尚ビス136を緩めた状態では、隙間カバー46は前後方向にスライド可能である。
【0051】
上記回転式の温調ハンドル38は樹脂製のもので、図10に示しているように水栓本体14、詳しくは、本体ボデー12内部に組み込まれた温調弁ユニット138の駆動軸140に一体回転状態に連結されている。
温調ハンドル38は、この駆動軸140を回転させることで、温調弁ユニット138のハウジング142内で回転体144を回転させ、その回転体144の回転により混合弁体を軸方向(図10中左右方向)に位置移動させ、吐水の温度調節を行う。
図10において、146は本体ボデー12の端部にねじ込まれて温調弁ユニット138を本体ボデー12に固定する円筒状の固定部材である。
【0052】
上記の回転式の切替ハンドル40もまた樹脂製のもので、図15に示しているように、水栓本体14における本体ボデー12の内部に組み込まれた切替弁ユニット148の駆動軸150に一体回転状態に連結されている。
切替ハンドル40は、駆動軸150を回転させることで、切替弁ユニット148のハウジング152内で回転体154を回転させ、その回転体154の回転により切替弁体を回転させ、流路の切替えを行う。即ち上記のカラン側の吐水口32からの吐水と、シャワーエルボ34からの吐水との切替えを行う。
また併せて、それら吐水口32及びシャワーエルボ34からの吐水の流量調節と吐止水とを行う。
図15において、156は本体ボデー12の端部にねじ込まれて切替弁ユニット148のハウジング152、つまり切替弁ユニット148を本体ボデー12に固定する円筒状の固定部材である。
【0053】
温調ハンドル38は、図10及び図13に示しているように、カバー20の外部に露出した有底の円筒形状の操作部158と、操作部158の径方向内側で操作部158から水栓本体14側に向って図中右方向に延出し、上記の駆動軸140に操作力を伝達する伝達軸部(伝達部)160を一体に有している。
ここで伝達軸部160は、操作部158よりも小径の円筒状をなしている。
操作部158は、図中左端の底部に開口部162を有しており、その開口部162がキャップ164にて閉鎖されている。
【0054】
この実施形態において、図6及び図10に示しているように水栓本体14の左右寸法に対してカバー20の左右寸法が大きく、水栓本体14に組み込まれた温調弁ユニット138の駆動軸140が、カバー20の図中左端位置よりもカバー20の内部且つ図中右側に大きく引き込んだ位置にある。
そこでこの実施形態では、伝達軸部160が水栓本体14に向ってカバー20内部に深く入り込んでおり、その先端部において温調弁ユニット138の駆動軸140にセレーション部材166を介し一体回転状態に連結されている。
【0055】
詳しくは、図13に示しているように伝達軸部160の先端部には雌セレーション部168が設けられており、その雌セレーション部168が、図10に示しているようにセレーション部材166の外周面に形成された外周面の雄セレーション部170に噛合状態に嵌合されている。即ちセレーション嵌合されている。
【0056】
セレーション部材166は、内周面に雌セレーション部168を有しており、その雌セレーション部168が、駆動軸140の外周面に形成された雄セレーション部170に噛合状態に嵌合されている。
温調ハンドル38の回転は、これらセレーション部の噛合いに基づいて、リング状のセレーション部材166を介し温調弁ユニット138の駆動軸140に伝えられる。
尚、伝達軸部160には弾性爪172が設けられていて、この弾性爪172が、駆動軸140の部分球状の掛止部174に掛止されている。
【0057】
更に弾性爪172は、軸状の押え部材176にて外周側から押えられて、開き方向に弾性変形阻止されており、これによって温調ハンドル38が、駆動軸140から図10中左方向に抜け防止されている。
操作部158に設けられた上記の開口部162は、この押え部材176を脱着するための開口部であり、その開口部162がキャップ164にて閉鎖されている。
【0058】
この実施形態では、図10に示すように温調ハンドル38の上記の伝達軸部160が図中右方向に長く延びて、カバー20の内部に深く入り込んでおり、伝達軸部160の先端部と駆動軸140との連結部が、温調ハンドル38の操作部158に対して左右の軸方向に大きく離隔している。
そのため、カバー20の外部に露出した操作部158に対してハンドル操作の際などに力が加わったとき、カバー20内部に深く入り込んだ長い伝達軸部160が駆動軸部140との連結部、即ちセレーション嵌合部を支点として傾斜したり、或いは撓み変形したりする恐れがある。
そこでここでは、図10に示すようにこれを防ぐためのハンドル支持部材178が設けてある。
【0059】
このハンドル支持部材178は、金属製の剛性の部材で円筒形状をなしており、図12にも示しているようにその先端部(図中右端部)の外周面に雄ねじ部180が設けてある。
ハンドル支持部材178は、この雄ねじ部180において水栓本体14の雌ねじ部182にねじ締結されている。
即ちハンドル支持部材178は、ねじ締結手段にて軸方向の一端側が水栓本体14に剛固定されており、そして図中左側の軸方向の他端側が、水栓本体14から温調ハンドル38の操作部158に向って延び出している。
【0060】
尚、図11(B)にも詳しく示しているように円筒形状をなすハンドル支持部材178は、雄ねじ部180側の先端面が全周に亘り軸直角方向の平坦な当接面184とされている。
一方水栓本体14側、具体的には本体ボデー12には、雌ねじ部182の奥側に隣接した位置に段付形状部が設けられており、そこに同じく全周に亘って軸直角方向の平坦面をなす、当接面186が設けられている。
【0061】
ハンドル支持部材178は、その先端面の当接面184を水栓本体14側の当接面186に強く押し付ける状態に、雄ねじ部180が雌ねじ部182にねじ込まれている。
これによってハンドル支持部材178が、ねじ部のバックラッシによって傾斜するのが防止され、ハンドル支持部材178が駆動軸140と正しく同軸をなすように水栓本体14に組付固定されている。
ハンドル支持部材178は、長く延びた伝達軸部160を図中左端の開口から内部に嵌入させる状態に操作部158側に延びており、内部の伝達軸部160を外周側から支持している。
【0062】
ハンドル支持部材178の図中左側の端部の内面、即ち伝達軸部160の付根側の端部の内面には、樹脂製(ここではPOM樹脂)の摺動リング188が内嵌状態に組み込んである。
この摺動リング188は、伝達軸部160の外面に接して伝達軸部160を摺動させる働きを有するもので、図12及び図14に示しているように周方向の所定個所に切目190が設けてあり、その切目190によって全体的に縮径方向に弾性変形可能とされている。
【0063】
摺動リング188は、縮径方向に弾性変形させられた状態で、フランジ部192をハンドル支持部材178の軸端面に当接させる状態に、ハンドル支持部材178の軸端側の環状の凹所193内に嵌め込まれ、ハンドル支持部材178にて保持されている。
この摺動リング188は、外面の複数個所に凸部194が設けられており、摺動リング188は、これら凸部194においてハンドル支持部材178の凹部193の内面に当接せしめられている。
摺動リング188にはまた、その内面にも凸部196が周方向の複数個所に設けられており、これら凸部196において伝達軸部160の外面に接し、これを摺動させるようになっている。
【0064】
この実施形態において、摺動リング188は、図11(A)に示しているように内面の凸部196がハンドル支持部材178の内面よりも伝達軸部160側に突出し、また凸部196を除いた他の部分の内面がハンドル支持部材178の内面と同一位置、即ち面一面をなすように構成されている。
但し摺動リング188の内面全体を、ハンドル支持部材178の内面よりも伝達軸部160側に突出させておくことも可能である。
【0065】
このようにハンドル支持部材178の内面に樹脂製の摺動リング188を組み込み、伝達軸部160の外面をこの摺動リング188に摺動させることで、樹脂製の伝達軸部160の外面が金属製のハンドル支持部材178の内面に直接擦れるのを抑制ないし防ぐことができる。
特に摺動リング188をハンドル支持部材178の端部に組み込んでおくことで、伝達軸部160がハンドル支持部材178の内部で駆動軸140との連結部を支点として傾斜し或いは撓み変形しようとしたときに、摺動リング188をハンドル支持部材178の内面よりも優先して伝達軸部160の外面に接触させ易く、より有効に伝達軸部160の外面とハンドル支持部材178とが擦れ合うのを抑制ないし防止することができる。
【0066】
更にこの実施形態では、摺動リング188の内面に部分的に突出した凸部196が設けてあり、これら凸部196が、ハンドル支持部材178の内面よりも伝達軸部160側に突出しているため、その凸部196と伝達軸部160との間のクリアランスを、ハンドル支持部材178の内面と伝達軸部160との間のクリアランスよりも小となし得て、より一層有効に摺動リング188を伝達軸部160に対して接触させることができるとともに、伝達軸部160がハンドル支持部材178内部で、それらの間のクリアランスに基づいて軸直角方向にがたつきを生じるのを効果高く抑制することができる。
【0067】
図10において、198は温調ハンドル38の操作状態を表示するための表示リングで、温調ハンドル38の操作部158に組み付けられて、操作部158と一体に回転する可動側の円形の第1表示リング198-1と、円筒状をなす固定側の第2表示リング198-2とから成っている。
ここで可動側の第1表示リング198-1は操作部158の一部を成している。
可動側の第1表示リング198-1は高温側が赤色に、低温側が青色に色分けされている。
【0068】
この第1表示リング198-1に対応して設けられた固定側の第2表示リング198-2には、第1表示リング198-1の所定部位を指示する突起状の指示部200(図12参照)が備えられている。
表示リング198は、第2表示リング198-2の指示部200により操作部158と一体回転する可動側の第1表示リング198-1の所定部位を指し示すことによって、温調ハンドル38の現在の操作状態を表示する。
【0069】
本実施形態において、固定側の第2表示リング198-2は、温調ハンドル38における操作部158の水栓本体14側の軸方向端と同じ径方向位置で、その軸方向端に続いて水栓本体14側に延びており、この実施形態では、かかる固定側の第2表示リング198-2が被り部を成している。
そしてこの被り部をなす第2表示リング198-2に対して、上記のカバー20が、第2表示リング198-2を一部図中左方向に露出させる状態に軸直角方向外側から被せられている。
【0070】
尚、操作部158には突起状の指掛部240が設けられており、この指掛部240を除いた操作部158の外面と、第2表示リング198-2の外面とは面一面を形成している。
即ち操作部158の外面と第2表示リング198-2の外面とが、径方向において同一位置に位置している。
【0071】
図10において、204はこの第2表示リング198-2を保持し、これを水栓本体14側に取り付けるための保持部材であって、樹脂製且つ円筒形状をなしている。
この保持部材204は、図12にも示しているように図中右端側に部分的に大径をなす嵌合固定部206を有しており、この嵌合固定部206が、同じく部分的に大径化されたハンドル支持部材178の図中右端側の被固定部208に外嵌状態に嵌合されている。
【0072】
詳しくは、嵌合固定部206の内面には、周方向に沿って複数個所にリブ状の押圧部210が所定間隔で設けられており、保持部材204は、これら押圧部210をハンドル支持部材178の被固定部208の外面に当接及び押圧することで、嵌合固定部206においてハンドル支持部材178の被固定部208に固定されている。
【0073】
尚、保持部材204の嵌合固定部206からは位置決片212が軸方向に突出している。
一方水栓本体14の本体ボデー12には、対応する位置に切欠部214が設けられており、保持部材204は、位置決片212をこの切欠部214に軸方向に嵌め入れることによって、本体ボデー12に対し回転方向に位置決めされている。
【0074】
この保持部材204の、嵌合固定部206とは反対側の端部且つ内面側に、図10に示すように径方向内向きに突出する内フランジ部216が設けられており、この内フランジ部216が、温調ハンドル38における伝達軸部160の外面に対し、径方向に対峙せしめられている。
【0075】
この保持部材204にはまた、内フランジ部216と同じ軸方向位置において、径方向外方に突出する外フランジ部218が設けられている。
図12に示しているようにこの外フランジ部218の軸方向外方側には保持部220が設けられていて、そこに上記の第2表示リング198-2が外嵌状態に嵌め合され、保持されている。
ここで第2表示リング198-2は、周方向所定個所に切目222を有して、その切目222によって全体的に拡径方向に弾性変形可能とされている。
第2表示リング198-2は、その拡径方向の弾性変形を伴って、保持部材204の保持部220に外嵌状態に嵌め合されている。
【0076】
この第2表示リング198-2には、周方向に延びる弾性爪224が内面に設けられている。
一方保持部220には、周方向に延びる溝226が外面に設けられており、第2表示リング198-2は、弾性爪224を溝226に弾性的に嵌め込むことによって、保持部材204から軸方向に抜け防止されている。
尚この保持部220には、周方向所定個所に位置決用の突起227が設けられている。
一方第2表示リング198-2には、対応する位置に溝228が設けられている。
第2表示リング198-2は、溝228を突起227に嵌め合せることによって、保持部材204に対し回転方向に位置決めされている。
【0077】
保持部材204にはまた、第2表示リング198-2の内側において、ストッパ232(図12参照)を備えたリング状のストッパ部材230が組み付けられ、保持されている。
ここでストッパ232は、温調ハンドル38と一体に回転する、図10に示す可動側のストッパ234とともに、温調ハンドル38が自由に回転できる回転範囲を一定範囲内に回転規制するロック機構を構成している。
ここで回転側のストッパ234は、温調ハンドル38に一体回転状態に組み付けられた、ロック解除のための解除操作部材236の先端部に一体に構成されている。
【0078】
本実施形態において、切替ハンドル40もまた温調ハンドル38と同様の組付構造で組み付けられている。
その組付構造は基本的に温調ハンドル38と同様であるので、図15及び図16に対応する部分について符号のみを示し、詳しい説明は省略する。
図15及び図16に示す切替ハンドルの組付構造にあっては、ハンドル支持部材178側に雌ねじ部182が設けられる一方、水栓本体14側に雄ねじ部180が設けられ、それらのねじ締結によって、ハンドル支持部材178が一端側において水栓本体14に剛固定されている。
【0079】
またここでは前記の固定部材156の図中右端面を軸直角方向の平坦な当接面186として、そこにハンドル支持部材178の側の軸直角方向の平坦な当接面184を当接させる状態に、ハンドル支持部材178を水栓本体14に、詳しくは本体ボデー12にねじ込んで、ハンドル支持部材178を切替弁ユニット148の駆動軸150と同軸状に水栓本体14側に組み付けるようにしている。
【0080】
238は、切替ハンドル40の操作状態を表示するための表示リングで、図5に示しているようにその外面に表示が施してある。
この切替ハンドル40側では、その操作部158に表示リング238の所定部位を指し示す突起状の指示部242が設けられている。
尚、切替ハンドル40においても突出形状の指掛部244が設けられている。
【0081】
この実施形態において、表示リング238は円筒状をなしており、切替ハンドル40における円筒状の操作部158の水栓本体14側の軸端と同じ径方向位置で、その軸方向端から水栓本体14側に延びている。
切替ハンドル40側では、この表示リング238が被り部をなしており、この被り部238に対してカバー20が、表示リング238の一部を図中右方向に突出させる状態で軸直角方向外側から被せられている。
尚、この表示リング238が保持部材204に組み付けられて保持されている点は、温調ハンドル38側と同様である。
【0082】
以上のような本実施形態では、カバー20の左端と温調ハンドル38の操作部158、カバー20の右端と切替ハンドル40の操作部との間に、径方向内方に深く入り込む左右方向の隙間が発生するのを防ぐことができる。
これによりカバー付き水栓10の外観,美観を良好となすことができ、また水栓設置状態の品位を高めることができる。
【0083】
尚、カバー20の左右方向の取付位置に若干の誤差が生じた場合であっても、そのことによってカバー20からの第2表示リング198-2及び表示リング238の出代(カバー20からの左右方向の突出し長さ)の寸法が左右で若干相異するだけであり、またその相異は使用者からの正面視においてそれほど目立つものではなく、カバー20の左右方向の取付位置の誤差によって水栓の外観,美観が実質的に損なわれるといったことはなく、美観,外観を良好に保持することができる。
【0084】
本実施形態では、第2表示リング198-2及び表示リング238をもってカバー20が被せられる被り部となしており、このため表示リングとは別に被り部を設けなくても良く、ハンドル周りの構造を簡素化することができる。
【0085】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示である。
例えば図17に示しているように温調ハンドル38における操作部158の水栓本体14側の端部に円筒状の被り部246を備え、そこにカバー20を軸直角方向から被せるようになすといったことも可能である。
この点は切替ハンドル40側についても同様で、切替ハンドル40における操作部158の水栓本体側に同様の円筒状の被り部246を備え、そこにカバー20を軸直角方向外側から被せるようになすことも可能である。
【0086】
また上記実施形態では左ハンドルとして温調ハンドルが、右ハンドルとして切替ハンドルが設けられている場合の例であるが、本発明は左ハンドル,右ハンドルとして上記以外の操作のためのハンドルが設けられている場合においても適用可能なものである。
更に本発明はクランク脚付きのカバー付き水栓に適用して特に好適なものであるが、本発明はクランク脚を有しないカバー付き水栓にも適用することが可能である等、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【符号の説明】
【0087】
10 カバー付き水栓
14 水栓本体
16,18 クランク脚
20 カバー
38 温調ハンドル
40 切替ハンドル
158 操作部
160 伝達軸部(伝達部)
198 表示リング
198-1 第1表示リング
198-2 第2表示リング(被り部)
246 被り部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18