(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、中間プレートを設ける溶接構造では、溶接手間が増大して、工期が長くなってしまう問題が発生する。また、特許文献2の溶接構造では、入熱量が少なくなる代わりに接合強度が低下してしまう問題が発生する。
【0007】
そこで、本発明は前記の問題を解決するために案出されたものであって、入熱量を減らし溶接部の変形を抑制できる部材の溶接構造並びに貨物運搬用車両および貨物運搬用コンテナを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための請求項1に係る発明は、押出形材からなる床材である第一部材と、前記第一部材の下面に溶接される上フランジ部を備えた支持フレームである第二部材との溶接構造であって、前記第一部材は、前記第二部材の前記上フランジ部が下側から当接する当接部と、前記当接部の端部に形成された対向部とを有し、前記第二部材は、前記対向部に突き合わされる突合部を有し、前記対向部と前記突合部とが突合せ溶接される位置における前記第一部材の板部の裏側には膨出部が形成され、前記突合せ溶接される位置における前記板部が他の部分の前記板部よりも厚くなっており、前記上フランジ部の上面全体が前記第一部材の下面に当接され
ており、前記対向部と前記突合部とが突合せ溶接されていることを特徴とする部材の溶接構造である。
【0009】
「対向部に突き合わされる突合部」とは、対向部と突合部とが突合せ溶接ができる程度に近接していればよく、若干離れている場合も含む。このような構成によれば、第一部材の対向部と第二部材の突合部とを突合せ溶接することで、肉盛りを減らすことができるので、入熱量を小さくでき、溶接部の変形を抑制できる。また、対向部に突合部を突き合わせるので、第二部材の位置決めを容易に行える。
さらに、膨出部を形成したことによって溶接部近傍の剛性が高くなるので、変形をより一層抑制することができる。
【0010】
請求項2に係る発明は、前記対向部が、前記押出形材の押出方向に延在することを特徴とする。
【0011】
このような構成によれば、対向部を第一部材の押出成形時に一体成形できるので、加工が容易である。
【0014】
請求項
3に係る発明は、前記第二部材の前記突合部が位置する端部には、前記突合部に向かうに連れて板厚が順次薄くなる傾斜部が形成されていることを特徴とする。
【0015】
このような構成によれば、第二部材の厚板が厚い部材である場合でも、突合部の板厚を薄くできるので、肉盛りを減らして入熱量を小さくすることができる。
【0016】
請求項4に係る発明は、押出形材からなり上板部と下板部とを備えた床材と、前記床材の下面に溶接される上フランジ部を備えた支持フレームとを備えた貨物運搬用車両であって、前記床材は、前記支持フレームの前記上フランジ部が下側から当接する当接部と、前記当接部の端部に形成された対向部とを有し、前記支持フレームは、前記対向部に突き合わされる突合部を有し、前記対向部と前記突合部とが突合せ溶接される位置における前記床材の前記下板部の裏側には膨出部が形成され、前記突合せ溶接される位置における前記下板部が他の部分の前記下板部よりも厚くなっており、前記上フランジ部の上面全体が前記床材の下面に当接され
ており、前記対向部と前記突合部とが突合せ溶接されていることを特徴とする貨物運搬用車両である。
【0017】
「貨物運搬用車両」には、たとえばトレーラやトラックが含まれる。このような構造によれば、高い平坦度を備えた床部を有する貨物運搬用車両を提供することができる。
【0018】
請求項5に係る発明は、押出形材からなり上板部と下板部とを備えた床材と、前記床材の下面に溶接される上フランジ部を備えた支持フレームとを備えた貨物運搬用コンテナであって、前記床材は、前記支持フレームの前記上フランジ部が下側から当接する当接部と、前記当接部の端部に形成された対向部とを有し、前記支持フレームは、前記対向部に突き合わされる突合部を有し、前記対向部と前記突合部とが突合せ溶接される位置における前記床材の前記下板部の裏側には膨出部が形成され、前記突合せ溶接される位置における前記下板部が他の部分の前記下板部よりも厚くなっており、前記上フランジ部の上面全体が前記床材の下面に当接され
ており、前記対向部と前記突合部とが突合せ溶接されている
ことを特徴とする貨物運搬用コンテナである。
【0019】
このような構造によれば、高い平坦度を備えた床部を有する貨物運搬用コンテナを提供することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、入熱量を減らすことができ、溶接部の変形を抑制することができるといった優れた効果を発揮する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための実施形態を、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本実施形態では、トレーラの床部を例に挙げて、部材の溶接構造を説明する。
図2に示すように、本実施形態に係る部材の溶接構造3は、トラクタ(図示せず)に牽引されるトレーラ1の床部2を構成する床材30(第一部材)の底板に、支持フレーム50(第二部材)を接合する構造として適用されている。
【0023】
まず、床部2の構成を説明する。
図1および
図2に示すように、床部2は、トレーラ1の長さ方向(車長方向)に延在する一対のメインビーム10,10と、長さ方向に延在する複数の床材30,30…とを備えている。そして、メインビーム10,10と床材30,30…とを、トレーラ1の幅方向(車幅方向)に連接させることにより、面状の構造体である床部2が構成されている。なお、本実施形態では、メインビーム10が車幅方向に間隔をあけて一対設けられているが、メインビームの本数はこれに限定されるものではなく、たとえば、1本であってもよいし、3本以上であってもよい。
【0024】
メインビーム10は、アルミニウム合金製長尺材にて構成されている。メインビーム10は、トレーラ1の車長方向に沿って、その前端から後端まで直線状に延在している。一対のメインビーム10,10は、車幅方向に間隔をあけて、互いに平行になるように配置されている。
【0025】
図2に示すように、メインビーム10は、上フランジ部11と下フランジ部12とウエブ部13とを備えて構成されている。上フランジ部11と下フランジ部12は、メインビーム10の上下部分を構成する部材である。上フランジ部11と下フランジ部12は、同じ幅寸法に形成されている。ウエブ部13は、アルミニウム合金製の板材または押出形材にて構成されている。ウエブ部13の上端部は上フランジ部11に溶接固定(図示省略)され、ウエブ部13の下端部は下フランジ部12に溶接固定(図示省略)されている。
【0026】
上フランジ部11は、床材30と同じ厚さ寸法で形成されている。上フランジ部11の上面は、床材30の上面と面一になるように構成されて、床面の一部を構成している。上フランジ部11は、アルミニウム合金製の押出中空形材にて構成されている。
図2の部分拡大図に示すように、上フランジ部11は、上板部11aと下板部11bと側板部11c,11c(
図2の部分拡大図では一方のみを図示している)とで区画される中空部14を有している。中空部14は、補強リブ16(
図2の全体図参照)にて分割されている。補強リブ16は、上フランジ部11の上板部11aと下板部11bを接続するように配置されている。上板部11aは、下板部11bよりも厚く形成されている。上板部11aは、後記する床材30の上板部33と同等の厚さ寸法に形成されている。下板部11bは、床材30の下板部34と同等の厚さ寸法に形成されている。上板部11a,33が厚板部に相当し、下板部11b,34が薄板部に相当する。上フランジ部11の幅方向両端部の上板部11aと下板部11bは、それぞれ側板部11cよりも外方に延在して、その内側に凹溝(凹部に相当)15が形成されている。凹溝15には、後記する床材30の凸条(凸部に相当)37が嵌合されるようになっている。下フランジ部12は、アルミニウム合金製の板材または押出形材にて構成されている。
【0027】
図1および
図2に示すように、床材30は、一対のメインビーム10,10の間と、車幅方向外側とに配置されている。なお、床材30を区別する場合には、メインビーム10,10間に並設される三枚の床材を「内側床材30a」と称し、メインビーム10の車幅方向外側にそれぞれ張り出して配置される床材を「外側床材30b」と称し、外側床材30bの外側に配置される床材を「サイドプレート付外側床材30c」と称する。内側床材30aは、その幅方向に隣接する他の内側床材30aまたはメインビーム10の上フランジ部11に溶接固定されている。外側床材30bは、一対のメインビーム10の外側にそれぞれ一枚ずつ設けられており、上フランジ部11に溶接固定されている。サイドプレート付外側床材30cは、外側床材30bの外側に溶接固定されている。サイドプレート付外側床材30cの外側端には、断面コ字状のサイドプレート41が形成されている。
【0028】
図2に示すように、床材30は、アルミニウム合金製長尺材(中空部32を有する中空押出形材)からなる。中空部32には、トラス状に配置された斜材31が設けられている。言い換えれば、床材30は、上板部33と下板部34と側板部35とを備えてなり、その内側の中空部32に、上板部33と下板部34とを結ぶ斜材31が設けられている。下板部34は、上板部33よりも薄く形成されている。
【0029】
床材30の幅方向両端部は、隣接する床材30またはメインビーム10の上フランジ部11に対して噛み合うように、凹凸形状を呈している。床材30の幅方向両端部は、凹形状または凸形状となっている(サイドプレート付外側床材30cは除く)。本実施形態では、一方の端部に凸条(凸部に相当)37が形成された床材30は、他方の端部にも凸条37が形成されており、一方の端部に凹溝(凹部に相当)38が形成された床材30は、他方の端部にも凹溝38が形成されている。メインビーム10の上フランジ部11の幅方向両端部は凹形状となっている。凸形状の床材30と、凹形状の床材30または上フランジ部11とは交互に配置されている。
【0030】
凸形状の床材30(上フランジ部11の側部に位置する床材30)は、その幅方向両端部に上板部33と下板部34が互いに近づく段差部36が形成されている。段差部36は、上板部33と下板部34の端部で、側板部35よりも外側に位置する部分に形成されている。段差部36の先端側は、外方に延在している。段差部36は、上板部33と下板部34の両端部にそれぞれ形成されている。上下の段差部36,36の先端側で、それぞれ外方に延在した部分で凸条37が構成されている。
【0031】
凹形状の床材30および上フランジ部11の幅方向両端部は、側板部35よりも外側に上板部33と下板部34が延在して、凹溝38が形成されている。上板部33は直線状に延在しており、側板部35の外側と内側の上面が面一になっている。下板部34も直線状に延在しており、側板部35の外側と内側の底面が面一になっている。
【0032】
図2の部分拡大図に示すように、凹溝38の内法寸法は、凸条37の外法寸法と同等になっている。段差部36より先端側部分の凸条37が、隣接する床材30(三枚の内側床材30aのうち、中央の内側床材30a)の凹溝38、またはメインビーム10の上フランジ部11の凹溝15内に噛み合う(嵌合する)。
【0033】
凸条37の基端部と凹溝38の先端部の突合せ部分は、上板部33(または下板部34)の表面に近づくほど(凸条37から離れるほど)、互いに離間するように傾斜している。つまり、凸条37が凹溝38に嵌合された状態で、床表面および裏面に開先としてのV溝39が形成されることとなる。突合せ部分は、溶接されている。
【0034】
図2に示すように、外側床材30bの車幅方向外側には、車幅方向に車幅調整代を有する調整用凸条37’が形成されている。調整用凸条37’は、他の部分の凸条37よりも突出長さが車幅調整代分、長く形成されている。調整用凸条37’の先端には補強プレート43が上板部33と下板部34間に架け渡されて設けられている。
【0035】
サイドプレート付外側床材30cの車幅方向内側には、車幅方向に車幅調整代を有する調整用凹溝38’が形成されている。調整用凹溝38’ は、他の部分の凹溝38よりも溝の深さが車幅調整代分、長く形成されている。
【0036】
外側床材30bの調整用凸条37’をサイドプレート付外側床材30cの調整用凹溝38’に嵌合させて、下板部34,34同士を溶接した後に、上板部33,33同士を溶接することで、サイドプレート付外側床材30cが外側床材30bに固定される。このとき、調整用凸条37’が調整用凹溝38’に入り込む寸法を調整することで、最終的な車幅寸法を調整できる。
【0037】
図1および
図2に示すように、床部2の前端部には、トラクタとの連結部であるエプロン部4が位置している。エプロン部4には、トレーラ1をトラクタに連結するためのキングピン52を備えたエプロンプレート51が固定されている。キングピン52は、トラクタの車体後部に設けられたカプラー(図示せず)に係合する。エプロン部4は、連結時にトラクタの車体後部の上方に位置する部分である。
【0038】
エプロン部4の床材30には、支持フレーム50が固定されている。支持フレーム50は、エプロンプレート51を支持するものであり、一対のメインビーム10,10間の内側床材30aの下面に固定されている。支持フレーム50は、トレーラ1の長さ方向に延在するアルミニウム合金製長尺材にて構成されている。
【0039】
支持フレーム50は、
図3に示すように、上フランジ部55と下フランジ部56とウエブ部57とを備えて構成されている。ウエブ部57は、幅方向に間隔をあけて一対形成されており、上フランジ部55と下フランジ部56を繋ぐように形成されている。支持フレーム50は、アルミニウム合金製中空押出形材にて構成されており、その前後を斜めに切断して形成される。下フランジ部56には、エプロンプレート51を固定するためのボルト挿通孔58(
図1参照)が複数形成されている。なお、支持フレーム50の断面形状は前記形状に限定されるものではなく、例えば、ウエブ部が単数のものや、角パイプ状のものであってもよい。
【0040】
図2に示すように、支持フレーム50は三列設けられており、各内側床材30aに支持フレーム50が一列ずつ固定されている。各支持フレーム50は、その長手方向がメインビーム10,10と平行になるように、且つメインビーム10,10と隙間をあけて配置されている。支持フレーム50とメインビーム10との隙間および支持フレーム50同士の隙間は、トレーラ1の前後に延びる油圧や電気配管等を配設可能な寸法となっている。
【0041】
上フランジ部55は、内側床材30aの下板部34の下面に溶接固定される。
【0042】
図3に示すように、溶接構造3は、床材30の下板部34(底板)の下面に、支持フレーム50の上フランジ部55を接合する構造として適用されている。つまり、溶接構造3は、押出形材からなる床材30(第一部材)と、床材30に溶接される支持フレーム50(第二部材)との溶接構造である。
【0043】
図3に示すように、床材30(内側床材30a)は、当接部80と対向部81と膨出部82とを有し、支持フレーム50は、そして、突合部90を有し、対向部81と突合部90とが突合せ溶接されている。
【0044】
当接部80は、床材30の下板部34の一部である。当接部80には、上フランジ部55が下側から当接する。当接部80の下面には、上フランジ部55の上面が面接触している。
【0045】
対向部81は、当接部80の端部に形成されている。対向部81は、当接部80の表面(下面)から下方に突出して段状に形成された部分である。対向部81には、上フランジ部55の端面95が対向する。当接部80側に位置する対向部81の側面85は、当接部80の表面から離れるに連れて、上フランジ部55から離れるように傾斜している。対向部81は、内側床材30aの押出成型時に同時に形成され、押出方向に延在している。床材30において、支持フレーム50が存在しない部分の対向部81は、切削加工にて除去されている。
【0046】
突合部90は、上フランジ部55の端部に位置しており、対向部81に対して突き合わされる部分である。なお、突合部90は、対向部81に対して突合せ溶接が可能な程度に近接していればよい。突合部90の板厚は、対向部81の突出寸法突(板厚)と同じ長さになっている。突合部90の端面(上フランジ部55の端面)95は、当接部80の表面から離れるに連れて、対向部81から離れるように傾斜している。これによって、突合部90の端面95と、対向部81の側面85とが突き合わされた状態で、開先としてのV溝75が形成されることとなる(
図3の破線で囲んだ部分拡大図参照)。なお、対向部81の側面85傾斜角度と、突合部90の端面95の傾斜角度は、ともに等しく、たとえば22.5度であり、V溝75の開き角度は45度となっている。
【0047】
上フランジ部55の突合部90が位置する端部には、突合部90に向かうに連れて板厚が順次薄くなる傾斜部91が形成されている。つまり、突合部90の板厚は、上フランジ部55の板厚よりも薄くなっている。上フランジ部55は、支持フレーム50として必要な板厚と幅を備えており、必要な幅の外側両端に傾斜部91と突合部90が形成されている。これによって、V溝75の両側における、対向部81と突合部90の板厚寸法を同じにすることができる。
【0048】
膨出部82は、対向部81と突合部90とが突合せ溶接される位置における下板部34(板部)の裏側に形成されている。膨出部82は、内側床材30aの中空部32の内側に向かって膨らんでいる。膨出部82は、対向部81と突合部90間のV溝75が位置する部分の裏面(中空部32側の面)を覆うように形成されている。膨出部82は、対向部81と同様に内側床材30aの押出成型時に同時に形成され、押出方向に延在している。膨出部82は、斜材31と干渉しない位置に形成されている。膨出部82は、斜材31と下板部34との接続部と、これと隣り合う斜材31と下板部34との接続部の間に位置してており、これら接続部の中間部に形成されている。
【0049】
対向部81と突合部90とが突合せ溶接されており、V溝75に溶接ビード76が充填されている。溶接ビード76の表面は、対向部81の頂部と突合部90の表面(下端面)と面一になっている。
【0050】
当接部80、対向部81、膨出部82および突合部90は、上フランジ部55の幅方向両端部にそれぞれ形成されており、それぞれの対向部81と突合部90とが突合せ溶接されている。
【0051】
以上のような構成の部材の溶接構造3によれば、床材30の下板部34に対向部81を形成して、この対向部81に支持フレーム50の突合部90を突き合わせることで、支持フレーム50を突合せ溶接で床材30に固定することができる。これによって、隅肉溶接と比較して肉盛り(溶接ビード76)を減らすことができ、入熱量を小さくできるので、下板部34の熱変形を抑制することができる。したがって、床材30の平坦度を高めることができる。さらに、突合せ溶接を行うことで、下板部34と上フランジ部55との熱バランスが良好になり、接合強度を高めることができる。
【0052】
また、溶接を行う工程において、床材30の下板部34を上向きにして、上側から支持フレーム50を載置することとなるが、溶接前に、上フランジ部55の突合部90を、対向部81に突き合せるように載置することによって、支持フレーム50を設置する際の位置決めを容易に行うことができる。さらに、支持フレーム50は、幅方向両端の対向部81,81に挟まれるので、溶接時にずれることなく、溶接作業を行い易くなる。
【0053】
下板部34の中空部32側に膨出部82を形成したことによって、溶接部近傍の剛性が高くなるので、熱変形をより一層抑制することができる。
【0054】
上フランジ部55の端部に、傾斜部91を形成したことによって、上フランジ部55の板厚が厚い場合であっても、突合部90の板厚を薄くできる。したがって、対向部81と突合部90の板厚を薄い状態で揃えることができ、これらの表面を面一にすることができる。これによって、V溝75の深さを浅くすることができるので、突合せ溶接時の肉盛りを減らして入熱量を小さくすることができる。これによって、床部2の平坦度をより一層高くすることができる。
【0055】
次に、
図4を参照しながら、他の実施形態に係る部材の溶接構造3’の構成を説明する。本実施形態の溶接構造3’は、下板部34の構成が、前記実施形態と異なる。前記実施形態では、当接部80は、その両側の下板部34の下面と面一になっており、対向部81のみが当接部80から突出していたが、本実施形態では、
図4に示すように、当接部80’が下板部34の下面よりも上方に凹むことで、対向部81’が形成されている。つまり、凹部の底が当接部80’を構成し、凹部の側壁部分が対向部81’を構成しており、当接部80’以外に位置する下板部34が、当接部80’から下方に突出した状態となっている。
【0056】
凹部の両端の側壁面85’が支持フレーム50の突合部90の端面95に対向している。側壁面85’と突合部90の端面95はともに傾斜しており、側壁面85’と端面95との間に、V溝75が形成されている(
図4の破線で囲んだ部分拡大図参照)。V溝75が位置する部分の裏面(中空部32側の面)には、膨出部82’が形成されている。膨出部82’は、当接部80’と対向部81’との段差に応じて段差形状に形成されている。なお、その他の構成は、前記実施形態と同様であるので、同じ符号を付して説明を省略する。
【0057】
このような構成によれば、突合部90を対向部81’に突き合わせることができ、支持フレーム50を突合せ溶接で床材30に固定することができる。これによって、溶接時の入熱量を小さくして平坦度を高くできるなど、前記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0058】
さらに、本実施形態によれば、下板部34の下面と、上フランジ部55の下面とを面一にすることができるので、美観を高めることができる。さらに、床部2の表面高さを低くできるので、荷台の積載スペースを広くすることができる。
【0059】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は前記実施の形態に限定する趣旨ではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。たとえば、前記実施形態では、当接部80は下向きになっており、支持フレーム50(第二部材)の上フランジ部55が下側から当接するようになっているが、当接部の向きを限定する趣旨ではなく、いずれの方向を向いていてもよい。当接部が上向きであれば、第二部材の位置合せを容易に行うことができる。
【0060】
また、前記実施形態では、部材の溶接構造3を貨物運搬用車両であるトレーラ1の床部2に採用した場合を例に挙げて説明したが、採用できるのはトレーラ1に限定されるものではなく、トラックなど他の貨物運搬用車両の床部や、貨物運搬用コンテナの床部においても採用できるのは勿論である。
【0061】
さらに、貨物運搬用車両や貨物運搬用コンテナの床部以外の部材同士の接合に適用できるのも勿論である。たとえば、
図5に示すような構造とすることができる。
図5では、パイプ状の第一部材110の端部に蓋となる第二部材120を溶接する溶接構造100を示している。
【0062】
図5の(a)に示すように、第一部材110の端部には、断面台形形状の凹溝111が形成されている。凹溝111は、切削加工にて形成されている。凹溝111は、底部に向かうに連れて幅寸法が小さくなる台形形状を呈している。凹溝111の底部が、第二部材120が当接される当接部112を構成する。当接部112の両端の側壁部が当接部112から突出する対向部114を構成する。対向部114の側壁面(凹溝111の側壁面)113が、第二部材120の突合部121に対向する。凹溝111の側壁面113および対向部114は、パイプの周壁部に形成されており、当接部112の中心寄りに開口が位置している。
【0063】
第二部材120は、断面台形形状を呈している。
図5の(b)に示すように、第二部材120の断面台形の長辺側が、当接部112に当接する。第二部材120が第一部材110の当接部112に当接すると、凹溝111の台形の斜辺部分である側壁面113と、第二部材120の突合部121の端面(台形の斜辺部分)との間に、V溝130が形成される。V溝130の開き角度はたとえば45度である。対向部114と突合部121とが突合せ溶接されており、V溝130に溶接ビード131が充填されている。溶接ビード131の表面は、対向部114の頂部(第一部材110の先端面)と突合部121の表面(第二部材120の表面)と面一になっている。
【0064】
以上のような構成の部材の溶接構造100によれば、前記実施形態と同様に、隅肉溶接と比較して肉盛り(溶接ビード131)を減らすことができ、入熱量を小さくできるので、第一部材110および第二部材120の熱変形を抑制することができる。さらに、突合せ溶接を行うことで、第一部材110および第二部材120の熱バランスが良好になり、接合強度を高めることができる。