特許第5966202号(P5966202)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5966202
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】安定な消化酵素組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/46 20060101AFI20160728BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20160728BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20160728BHJP
   A61K 38/48 20060101ALI20160728BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20160728BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20160728BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20160728BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20160728BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20160728BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20160728BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20160728BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20160728BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20160728BHJP
   A61K 47/44 20060101ALI20160728BHJP
   A61P 1/14 20060101ALI20160728BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
   A61K37/54
   A61K9/20
   A61K9/48
   A61K37/547
   A61K47/04
   A61K47/10
   A61K47/12
   A61K47/18
   A61K47/22
   A61K47/26
   A61K47/32
   A61K47/36
   A61K47/38
   A61K47/44
   A61P1/14
   A61P1/18
【請求項の数】46
【全頁数】42
(21)【出願番号】特願2009-549868(P2009-549868)
(86)(22)【出願日】2008年2月20日
(65)【公表番号】特表2010-519217(P2010-519217A)
(43)【公表日】2010年6月3日
(86)【国際出願番号】IB2008000770
(87)【国際公開番号】WO2008102264
(87)【国際公開日】20080828
【審査請求日】2011年2月14日
【審判番号】不服2014-26423(P2014-26423/J1)
【審判請求日】2014年12月25日
(31)【優先権主張番号】60/902,091
(32)【優先日】2007年2月20日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】60/902,092
(32)【優先日】2007年2月20日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】60/902,093
(32)【優先日】2007年2月20日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502288078
【氏名又は名称】アラガン ファーマシューティカルズ インターナショナル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】オルテンツィ,ジョヴァンニ
(72)【発明者】
【氏名】マルコーニ,マルコ
(72)【発明者】
【氏名】マペッリ,ルイージ
【合議体】
【審判長】 内藤 伸一
【審判官】 齋藤 恵
【審判官】 大久保 元浩
(56)【参考文献】
【文献】 特表2004−513645(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第576938(EP,A1)
【文献】 特開昭52−3819(JP,A)
【文献】 特表2004−528288(JP,A)
【文献】 特開平11−315032(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第283442(EP,A1)
【文献】 特公平5−76928(JP,B2)
【文献】 特公平5−38731(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K47
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコーティングされた粒子を含む組成物であって、前記粒子の各々は腸溶性コーティングでコーティングされたコアを含み、前記コアはパンクレリパーゼを含み、
前記腸溶性コーティングが、前記粒子の総重量に基づいて、10〜20重量%の少なくとも1種の腸溶性ポリマーおよび4〜10重量%のタルクを含み、前記組成物の含水率が3%以下である、組成物。
【請求項2】
前記組成物の水分活性が0.6以下である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記腸溶性コーティングが、前記粒子の総重量に基づいて1〜2%の少なくとも1種の可塑剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記含水率が2%以下である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記コーティングが、少なくとも1種の可塑剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記コーティングが、前記コーティング粒子の総重量に基づいて1〜2重量%の少なくとも1種の可塑剤をさらに含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記可塑剤が、トリアセチン、クエン酸トリブチル、クエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリn−ブチル、フタル酸ジエチル、セバシン酸ジブチル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ヒマシ油、アセチル化モノグリセリド、アセチル化ジグリセリド、およびそれらの混合物から成る群より選択される、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記可塑剤が、クエン酸トリエチルである、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記コアが、結合剤、崩壊剤、潤滑剤、流動促進剤、希釈剤、およびそれらの混合物から成る群より選択される少なくとも1種の医薬的に許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記結合剤が、デンプン、糖、ラクトース、糖アルコール、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、セルロース、微結晶性セルロース、変性セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸、およびポリビニルピロリドンから成る群より選択され、
前記崩壊剤が、2塩基性リン酸カルシウム、2塩基性リン酸カルシウム2水和物、3塩基性リン酸カルシウム、トウモロコシデンプン、アルギン酸、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、膨潤性イオン交換樹脂、アルギナート、ホルムアルデヒドカゼイン、セルロース、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、微結晶性セルロース、ナトリウムカルボキシメチルデンプン、ナトリウムデンプングリコラート、デンプン、および米デンプンから成る群より選択され、
前記潤滑剤が、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ナトリウムステアリルフマラート、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、タルク、および蝋から成る群より選択され、
前記流動促進剤が、コロイド状二酸化ケイ素およびタルクから成る群より選択され、
前記希釈剤が、マンニトール、スクロース、無水2塩基性リン酸カルシウム、無水2塩基性リン酸カルシウム2水和物、3塩基性リン酸カルシウム、セルロース、ラクトース、炭酸マグネシウム、および微結晶性セルロースから成る群より選択される、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記コアが、前記コーティング粒子の総重量に基づいて、
1〜4重量%の少なくとも1種の崩壊剤;
0.2〜0.6重量%の少なくとも1種の流動促進剤;
2〜6重量%の少なくとも1種の結合剤;及び
0.2〜0.6重量%の少なくとも1種の潤滑剤
をさらに含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
前記少なくとも1種の崩壊剤がクロスカルメロースナトリウムであり、前記少なくとも1種の流動促進剤がコロイド状二酸化ケイ素であり、前記少なくとも1種の結合剤が微結晶性セルロースであり、前記少なくとも1種の潤滑剤がステアリン酸マグネシウムである、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記コアが、前記コーティング粒子の総重量に基づいて0.5〜1.0重量%の少なくとも1種の可塑剤をさらに含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
前記少なくとも1種の可塑剤が、硬化ヒマシ油である、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記コアが、68〜90重量%のパンクレリパーゼを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記パンクレリパーゼが、ブタ由来である、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
前記腸溶性ポリマーが、セルロースアセタートフタラート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタラート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセタートスクシナート、ポリビニルアセタートフタラート、メタクリル酸−メチルメタクリラートコポリマーおよびシェラックから成る群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
前記腸溶性ポリマーが、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタラートである、請求項17に記載の組成物
【請求項19】
前記パンクレリパーゼが、1.8〜6.2のプロテアーゼ/リパーゼ活性比を有する、請求項1〜18のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項20】
前記パンクレリパーゼが、2.0〜6.1のプロテアーゼ/リパーゼ活性比を有する、請求項1〜18のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項21】
前記パンクレリパーゼが、1.8〜8.2のアミラーゼ/リパーゼ活性比を有する、請求項1〜18のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項22】
前記パンクレリパーゼが、2.0〜8.2アミラーゼ/リパーゼ活性比を有する、請求項1〜18のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項23】
前記パンクレリパーゼが、1:10:10〜10:1:1の範囲のリパーゼ:プロテアーゼ:アミラーゼ活性比を有する、請求項1〜18のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項24】
前記パンクレリパーゼが、
4,500〜5,500IUのリパーゼ活性、8,000〜34,000IUのプロテアーゼ活性、及び8,000〜45,000IUのアミラーゼ活性;
9,000〜11,000IUのリパーゼ活性、17,000〜67,000IUのプロテアーゼ活性、及び17,000〜90,000IUのアミラーゼ活性;
13,500〜16,500IUのリパーゼ活性、26,000〜100,000IUのプロテアーゼ活性、及び26,000〜135,000IUのアミラーゼ活性;または
18,000〜22,000IUのリパーゼ活性、35,000〜134,000IUのプロテアーゼ活性、及び35,000〜180,000IUのアミラーゼ活性のリパーゼ、プロテアーゼ、およびアミラーゼ活性の組み合わせを含む、請求項1〜18のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項25】
前記コーティング粒子のコアは2〜5mmの範囲の公称粒径を有し、前記コーティング粒子のコーティング重量は前記コーティング粒子の総重量の15%である、請求項1〜18のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項26】
前記コーティング粒子のコアが1〜2mmの範囲の公称粒径を有し、前記コーティング粒子のコーティング重量が前記コーティング粒子の総重量の22%である、請求項1〜18のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項27】
請求項1〜18のいずれか1項に記載の組成物を含む製剤。
【請求項28】
前記組成物で充填されたカプセルである、請求項27に記載の製剤。
【請求項29】
前記カプセルが、セルロース系ポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、デンプン、多糖、プルラン、およびゼラチンから成る群より選択される材料で構成されている、請求項28に記載の製剤。
【請求項30】
前記カプセルが、6%以下の含水率のヒドロキシプロピルメチルセルロースからなる、請求項29に記載の製剤。
【請求項31】
前記カプセルが、2%以下の含水率のヒドロキシプロピルメチルセルロースからなる、請求項30に記載の製剤。
【請求項32】
実質的にゼロ過剰充填である、請求項27に記載の製剤。
【請求項33】
防湿材料で構成されたシール容器と、乾燥剤と、請求項27に記載の少なくとも1種の製剤とを含むパッケージであって、前記組成物の含水率が3%以下であり、前記乾燥剤と少なくとも1種の剤形が前記シール容器内にある、パッケージ。
【請求項34】
前記防湿材料が、金属、ガラス、プラスチック、および金属コーティングプラスチックから成る群より選択される、請求項33に記載のパッケージ。
【請求項35】
前記乾燥剤が、分子ふるい、クレイ、シリカゲル、活性炭、およびそれらの組合せから成る群より選択される、請求項33に記載のパッケージ。
【請求項36】
前記乾燥剤が分子ふるいである、請求項35に記載のパッケージ。
【請求項37】
前記製剤が、ヒドロキシプロピルメチルセルロースからなるカプセルである、請求項33に記載のパッケージ。
【請求項38】
治療または予防を必要とする哺乳動物において消化酵素欠乏症に付随する障害を治療または予防するための薬物を調製するための請求項1に記載の組成物の使用。
【請求項39】
GI管pHを高める薬物の使用をさらに含み、前記パンクレリパーゼ組成物及び前記GI管pHを高める薬物が同じ組成物または異なる組成物中にある、請求項38に記載の使用。
【請求項40】
前記薬物が、プロトンポンプインヒビターおよび制酸剤から成る群より選択される、請求項39に記載の使用。
【請求項41】
前記障害が、嚢胞性線維症である、請求項38に記載の使用。
【請求項42】
前記障害が、前記哺乳動物の脂肪吸収不良である、請求項38に記載の使用。
【請求項43】
前記薬物が、前記哺乳動物の脂肪吸収係数を高める、請求項38に記載の使用。
【請求項44】
含水率が1m当たり3.6g以下の水の雰囲気内で、パンクレリパーゼの粒子を、腸溶性ポリマーとタルクとを含むコーティングでコーティングすることによって、粒子の総重量に基づいて4〜10重量%の前記タルクを含む複数の遅延放出粒子を形成することを含み、前記複数の遅延放出粒子が、3%以下の含水率を有する、パンクレリパーゼ組成物の調製方法。
【請求項45】
前記粒子を、アセトンに溶解した腸溶性ポリマーとタルクとの混合物でコーティングする、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記複数の遅延放出粒子が、0.6以下の水分活性を有する、請求項44に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本出願は、2007年2月20日出願の米国仮特許出願第60/902,091号、2007年2月20日出願の米国仮特許出願第60/902,093号および2007年2月20日出願の米国仮特許出願第60/902,092号に対する優先権を主張する。これらの開示内容全体をすべての目的のため参照によってそれぞれ本明細書に組み込んだものとする。
【背景技術】
【0002】
膵臓機能不全の場合、パンクレリパーゼおよび他の膵臓酵素産物(PEP)を投与して、膵臓炎、膵切除、嚢胞性線維症などの膵臓に影響を及ぼす種々の疾患によって起こる酵素欠乏症を少なくとも部分的に改善することができる。膵臓機能不全の治療における膵臓酵素の使用は、嚢胞性線維症で苦しむ患者の療法の不可欠な部分である。これらを補充しないと、患者は重い栄養障害になってしまう。この栄養障害を特に乳児の場合に治療せずに放置すると命を脅かすことがある。
【0003】
薬物パンクレリパーゼは主に3種の酵素分類、リパーゼ、プロテアーゼおよびアミラーゼと、それらの種々の補足因子および補酵素との組合せである。これらの酵素は、膵臓内で自然に産生され、脂肪、タンパク質および炭水化物の消化で重要である。パンクレリパーゼは、典型的にブタの膵腺から調製されるが、他の起源、例えばそれぞれ参照によって本明細書に組み込んだものとするU.S.6,051,220、U.S.2004/0057944、2001/0046493、およびWO2006044529に記載されているものも使用することができる。該酵素は脂肪のグリセロールと脂肪酸への加水分解、デンプンのデキストリンと糖への加水分解、およびタンパク質のアミノ酸と誘導物質への加水分解を触媒する。
【0004】
膵臓酵素は、中性に近い条件およびわずかにアルカリ性の条件下で最適な活性を示す。胃の条件下では、膵臓酵素は不活化され、結果として生物学的活性を失うことがある。したがって、外部から投与する酵素は、一般的に胃による不活化に対して保護され、それらが胃を通って十二指腸内に通過する間、無傷のままである。膵臓酵素をコーティングすることが望ましいが、未コーティング製剤も市販されている。膵臓リパーゼは胃による不活化に最も敏感であり、吸収不良の治療で最も重要な単一酵素である。典型的にはリパーゼ活性をモニターして、リパーゼを含む酵素組成物の安定性を決定する。
【0005】
膵臓酵素による消化および代謝物の吸収はGI通過の間じゅうに起こりうるが、該消化および吸収は主に腸の上部で起こるので、胃の通過後、酵素は5〜30分以内で十二指腸内にて放出されるべきである。膵臓酵素は典型的に、胃の酸性環境に対して酵素組成物を保護し、ひいては腸内で酵素を放出させる腸溶性コーティングポリマーでコーティングされている。
【0006】
従来の膵臓酵素製剤は本質的に不安定であり、経口用に認可された医薬製品に典型的に付随する貯蔵寿命を持たない。膵臓酵素製剤の活性は典型的に、貯蔵中に酵素活性を失うことに最も敏感な酵素の1つであるリパーゼの活性に基づいて決定される。市販されている消化酵素組成物は、経時的に約35%以上までのリパーゼ活性の損失を示す。貯蔵中の酵素活性の損失を補償するため、および表示で主張している効力を貯蔵寿命の最後に製品が確実に提供するようにするため、製造業者は典型的に5%〜60%剤形に過剰充填し、パンクレリパーゼ遅延放出カプセル剤用の現在のUSP規定は、表示されるリパーゼ活性の90%以上および165%以下に相当するパンクレリパーゼを許容している。
【0007】
実際には、これは患者および処方者が薬用量強度を正確に判断できないことを意味し、実際的にはそれぞれ新たな処方箋について経験によって適切な薬用量を決定する必要があるということになる。外分泌性膵臓機能不全障害の患者はこれらの薬物に頼って、食物を適切に消化するのに必要な酵素を供給する。表示が特定製品の効力について不正確なステートメントを含む場合、患者は、多過ぎるかまたは少な過ぎる薬物を受ける危険がある。
【0008】
したがって、剤形を過剰充填することに依存せずに、酵素製剤の予想される貯蔵寿命に必要な活性を維持することができる安定な消化酵素組成物を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、安定な消化酵素組成物および剤形ならびに安定な酵素組成物および剤形の製造方法に関する。より特定すれば、本発明は、典型的な貯蔵条件下で最小の活性の損失を示す腸溶性コーティング酵素組成物および剤形に関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一実施形態では、本発明は、少なくとも1種の消化酵素を含む組成物であって、その含水率が約3%以下である組成物を提供する。
【0011】
別の実施形態では、本発明の組成物は少なくとも1種の消化酵素を含み、その水分活性が約0.6以下である。
【0012】
別の実施形態では、本発明の組成物は少なくとも1種の安定化消化酵素を含み、この少なくとも1種の安定化消化酵素は、6カ月の加速安定性試験後に約15%以下の活性の損失を示す。
【0013】
さらに別の実施形態では、本発明は、本発明の組成物で充填した錠剤またはカプセル剤などの剤形を提供する。
【0014】
さらに別の実施形態では、本発明の組成物は、コーティングでコーティングされた少なくとも1種の消化酵素をさらに含み、コーティングは腸溶性ポリマーを含み、必要に応じて少なくとも1種の無機材料を含む。
【0015】
さらに別の実施形態では、本発明は、耐湿性材料製の密封容器と、乾燥剤と、本発明の少なくとも1種の剤形とを含むパッケージであって、乾燥剤と少なくとも1種の剤形が密封容器の中にあるパッケージを提供する。
【0016】
さらに別の実施形態では、本発明は、消化酵素欠乏症に付随する障害を治療または予防する方法であって、該治療または予防が必要な哺乳動物に本発明の組成物を投与することを含む方法を提供する。
【0017】
さらに別の実施形態では、本発明は、本発明の組成物を調製する方法を提供する。一実施形態では、本方法は、含水率が1m当たり約3.6g以下の水である雰囲気内で、少なくとも1種の消化酵素の粒子を、腸溶性ポリマーと少なくとも1種の無機材料とを含むコーティングでコーティングすることによって、複数の遅延放出粒子を形成することを含む。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一態様は、安定化消化酵素組成物に関する。用語「安定化消化酵素」は、長期貯蔵後に実質的な酵素活性を維持している消化酵素を意味する。用語「消化酵素」は、食物の成分を分解して、生物がそれらを摂取または吸収できるようにする、栄養管内の酵素を表す。
【0019】
本発明で使うのに適した消化酵素の非限定分類として、リパーゼ、アミラーゼおよびプロテアーゼが挙げられる。消化酵素の非限定例として、パンクレリパーゼ(パンクレアチンとも呼ばれる)、リパーゼ、コリパーゼ、トリプシン、キモトリプシン、キモトリプシンB、パンクレアトペプチダーゼ、カルボキシペプチダーゼA、カルボキシペプチダーゼB、グリセロールエステルヒドロラーゼ、ホスホリパーゼ、ステロールエステルヒドロラーゼ、エラスターゼ、キニノゲナーゼ、リボヌクレアーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、α−アミラーゼ、パパイン、キモパパイン、グルテナーゼ、ブロメライン、フィシン、β−アミラーゼ、セルラーゼ、β−ガラクトシダーゼ、ラクターゼ、スクラーゼ、イソマルターゼ、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0020】
本発明の一実施形態では、安定化消化酵素は膵臓酵素である。本明細書で使用する場合、用語「膵臓酵素」は膵臓の分泌で存在する酵素タイプのいずれか1つ、例えばアミラーゼ、リパーゼ、プロテアーゼ、もしくはそれらの混合物、または酵素活性を有する膵臓起源のいずれの抽出物、例えばパンクレアチンをも表す。膵臓酵素は、膵臓からの抽出によって得られ、人工的に製造され、または膵臓以外の起源、例えば微生物、植物または他の動物組織から得られうる。
【0021】
本発明の別の実施形態では、安定化消化酵素はパンクレリパーゼである。用語「パンクレリパーゼ」または「パンクレアチン」は、アミラーゼ、リパーゼ、およびプロテアーゼ酵素を含めた数タイプの酵素の混合物を表す。パンクレリパーゼは、例えばNordmark Arzneimittel GmbH、またはScientific Protein Laboratories LLCから市販されている。
【0022】
本発明の組成物の一実施形態では、安定化消化酵素はリパーゼを含む。用語「リパーゼ」は、脂質のグリセロールと簡単な脂肪酸への加水分解を触媒する酵素を表す。
【0023】
本発明に適したリパーゼの例として、限定するものではないが、動物リパーゼ(例えば、ブタリパーゼ)、細菌リパーゼ(例えば、シュードモナス(Pseudomonas)リパーゼおよび/またはバークホルデリア(Burkholderia)リパーゼ)、真菌リパーゼ、植物リパーゼ、組換えリパーゼ(例えば、細菌、酵母菌、真菌、植物、昆虫または哺乳動物宿主細胞のいずれか1つから選択された適切な宿主細胞による組換えDNA技術によって培養内で生成されたか、または天然に存在する配列と相同性または実質的に同一であるアミノ酸配列を含む組換えリパーゼ、天然に存在するリパーゼコード化核酸と相同性または実質的に同一である核酸によってコードされたリパーゼなど)、化学修飾リパーゼ、またはそれらの混合物が挙げられる。
【0024】
本発明の組成物の別の実施形態では、安定化消化酵素はアミラーゼを含む。用語「アミラーゼ」は、デンプンを分解するグリコシドヒドロラーゼ酵素、例えばα−アミラーゼ、β−アミラーゼ、γ−アミラーゼ、酸α−グルコシダーゼ、唾液アミラーゼ、例えばプチアリンなどを表す。
【0025】
本発明の組成物で使うのに適したアミラーゼとして、限定するものではないが、動物アミラーゼ、細菌アミラーゼ、真菌アミラーゼ(例えば、アスペルギルス(Aspergillus)アミラーゼ、好ましくはコウジカビ(Aspergillus oryzae)アミラーゼである)、植物アミラーゼ、組換えアミラーゼ(例えば、細菌、酵母菌、真菌、植物、昆虫または哺乳動物宿主細胞のいずれか1つから選択された適切な宿主細胞による組換えDNA技術によって培養内で生成されたか、または天然に存在する配列と相同性または実質的に同一であるアミノ酸配列を含む組換えアミラーゼ、天然に存在するアミラーゼコード化核酸と相同性または実質的に同一である核酸によってコードされたアミラーゼなど)、化学修飾アミラーゼ、またはそれらの混合物が挙げられる。
【0026】
本発明の組成物の別の実施形態では、安定化消化酵素はプロテアーゼを含む。用語「プロテアーゼ」は一般的にタンパク質のアミノ酸間のペプチド結合を切断する酵素(例えば、プロテイナーゼ、ペプチダーゼ、またはタンパク質分解酵素)を表す。プロテアーゼは、一般的にその触媒タイプによって同定され、例えばアスパラギン酸ペプチダーゼ、システイン(チオール)ペプチダーゼ、メタロペプチダーゼ、セリンペプチダーゼ、スレオニンペプチダーゼ、アルカリ性または半アルカリ性プロテアーゼ、中性および未知の触媒機序のペプチダーゼがある。
【0027】
本発明の組成物または経口剤形で使うのに適したプロテアーゼの非限定例として、セリンプロテアーゼ、スレオニンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼ(例えば、プラスメプシン)メタロプロテアーゼ、グルタミン酸プロテアーゼなどが挙げられる。さらに、本発明の組成物または経口剤形で使うのに適したプロテアーゼとして、限定するものではないが、動物プロテアーゼ、細菌プロテアーゼ、真菌プロテアーゼ(例えば、アスペルギルス・メレウス(Aspergillus melleus)プロテアーゼ)、植物プロテアーゼ、組換えプロテアーゼ(例えば、細菌、酵母菌、真菌、植物、昆虫または哺乳動物宿主細胞のいずれか1つから選択された適切な宿主細胞による組換えDNA技術によって培養内で生成されたか、または天然に存在する配列と相同性または実質的に同一であるアミノ酸配列を含む組換えプロテアーゼ、天然に存在するプロテアーゼコード化核酸と相同性または実質的に同一である核酸によってコードされたプロテアーゼなど)、化学修飾プロテアーゼ、またはそれらの混合物が挙げられる。
【0028】
本発明の組成物または経口剤形は、1種または複数のリパーゼ(すなわち、1種のリパーゼ、または2種以上のリパーゼ)、1種または複数のアミラーゼ(すなわち、1種のアミラーゼ、または2種以上のアミラーゼ)、1種または複数のプロテアーゼ(すなわち、1種のプロテアーゼ、または2種以上のプロテアーゼ)、1種または複数のリパーゼと1種または複数のアミラーゼとの混合物、1種または複数のリパーゼと1種または複数のプロテアーゼとの混合物、1種または複数のアミラーゼと1種または複数のプロテアーゼとの混合物、あるいは1種または複数のリパーゼと1種または複数のアミラーゼおよび1種または複数のプロテアーゼとの混合物を含むことができる。
【0029】
一実施形態では、消化酵素は、種々のリパーゼ(例えば、リパーゼ、コリパーゼ、ホスホリパーゼA2、コレステロールエステラーゼ)、プロテアーゼ(例えば、トリプシン、キモトリプシン、カルボキシペプチダーゼAおよびB、エラスターゼ、キニノゲナーゼ、トリプシンインヒビター)、アミラーゼ、および必要に応じてヌクレアーゼ(リボヌクレアーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ)を含むブタ膵臓抽出物である。別の実施形態では、消化酵素はヒト膵液と実質的に同様である。さらに別の実施形態では、消化酵素はパンクレリパーゼUSPである。なお別の実施形態では、消化酵素は、リパーゼ活性が69〜120U USP/mg、アミラーゼ活性が216U USP/mg以上、プロテアーゼ活性が264U USP/mg以上、および全プロテアーゼ活性が264U USP/mg以上であるパンクレリパーゼESPである。
【0030】
本発明の組成物または経口剤形中のリパーゼ活性は、約4500〜25,000IU、例えば約4500〜5500IU、約9000〜11,000IU、約13,500〜16,500IU、および約18,000〜22,000IUであってよい。本発明の組成物または経口剤形中のアミラーゼ活性は、約8100〜180,000IU、例えば約8000〜45,000IU、約17,000〜90,000IU、約26,000〜135,000IU、約35,000〜180,000IUであってよい。本発明の組成物または経口剤形中のプロテアーゼ活性は、約8000〜134,000IU、例えば約8000〜34,000IU、17,000〜67,000IU、26,000〜100,000IU、35,000〜134,000IUであってよい。一実施形態では、リパーゼ活性が約4500〜5500IUの範囲であり、アミラーゼ活性が約8000〜45,000IUの範囲であり、プロテアーゼ活性が約8000〜34,000IUの範囲である。別の実施形態では、リパーゼ活性が約9000〜11,000IUの範囲であり、アミラーゼ活性が約17,000〜90,000IUの範囲であり、プロテアーゼ活性が約17,000〜67,000IUの範囲である。さらに別の実施形態では、リパーゼ活性が約13,500〜16,500IUの範囲であり、アミラーゼ活性が約26,000〜135,000IUの範囲であり、プロテアーゼ活性が約26,000〜100,000IUの範囲である。なお別の実施形態では、リパーゼ活性が約18,000〜22,000IUの範囲であり、アミラーゼ活性が約35,000〜180,000IUの範囲であり、プロテアーゼ活性が約35,000〜134,000IUの範囲である。
【0031】
本発明の組成物または経口剤形中のリパーゼ:プロテアーゼ:アミラーゼの比は約1:10:10〜約10:1:1の範囲、または約1.0:1.0:0.15(酵素活性に基づいて)であってよい。本発明の組成物または経口剤形中のアミラーゼ/リパーゼの比は約1.8〜8.2、例えば約1.9〜8.2、約2.0〜8.2の範囲であってよい。本発明の組成物または経口剤形中のプロテアーゼ/リパーゼの比は約1.8〜6.2、例えば約1.9〜6.1、約2.0〜6.1の範囲であってよい。
【0032】
別の実施形態では、リパーゼ、プロテアーゼ、およびアミラーゼの活性は下表Aに示す活性であってよい。
【0033】
【表1】
【0034】
本発明の組成物または経口剤形中の消化酵素の総量(重量で)は、約20〜100%、20〜90%、20〜80%、20〜70%、20〜60%、20〜50%、20〜40%、20〜30%、または約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%であってよい。一実施形態では、消化酵素の総量が60〜90%である。別の実施形態では、消化酵素(例えば、パンクレリパーゼ)の総量が約68〜72%である。
【0035】
一実施形態では、少なくとも1種の消化酵素を含む本発明の組成物または経口剤形の含水率は約3%以下、約2.5%以下、約2%以下、約1.5%以下、または約1%以下であり、全範囲およびその間の部分範囲(すなわち、約2.5%〜3%、2%〜3%、1.5%〜3%、1%〜3%、2%〜2.5%、1.5%〜2.5%、1%〜2.5%、1.5%〜2%、1%〜2%、1%〜1.5%などのいずれも)を含む。低い含水率で維持した本発明の組成物または経口剤形は、より高い含水率、例えば約3%以上で維持した従来の組成物に比べて安定性がかなり高いことが分かった。
【0036】
「含水量」とも呼ばれる用語「含水率」は、組成物が含む水の量を意味する。含水率を変えても体積を変えない組成物では、その材料の乾燥体積に対する水分の質量の比として体積測定によって(すなわち、体積で)含水率を表すことができる。含水率を変えると体積を変える組成物では、その試料の単位乾燥質量当たりの、乾燥すると除去される水の質量として重量測定によって(すなわち、重量で)含水率を表すことができる。当技術分野で既知のいずれの従来の方法によっても含水率の決定を達成できる。例えば、試料を電気化学滴定セルに溶解するカール・フィッシャー滴定などの化学的滴定で含水率を決定できる。試料由来の水は電気化学的反応で消費され、この反応の終点は電位差によって測定され、それによって試料中の水の量を直接測定することができる。あるいは、制御された乾燥の前後に試料の質量を測定する「乾燥減量」(LoD)など比較的簡単な熱重量測定法を使用しうる。乾燥後の質量の損失が水分の損失に帰する。市販の水分分析器(例えば、Mettler Toledo、Sartorius AGなどから入手可能)を用いて含水率を決定することもできる。当技術分野で既知のいずれの適切な方法、例えばLoDによっても本発明の組成物または経口剤形の含水率を測定することができる。
【0037】
別の実施形態では、少なくとも1種の消化酵素を含む本発明の組成物または経口剤形の水分活性が約0.6以下、約0.5以下、約0.4以下、約0.3以下、約0.2以下、または約0.1以下であり、全範囲およびその間の部分範囲(すなわち、約0.5〜0.6、0.4〜0.6、0.3〜0.6、0.2〜0.6、0.1〜0.6、0.4〜0.5、0.3〜0.5、0.2〜0.5、0.1〜0.5、0.3〜0.4、0.2〜0.4、0.1〜0.4、0.2〜0.3、0.1〜0.3、0.1〜0.2などのいずれも)を含む。低い水分活性で維持した本発明の組成物または経口剤形は、より高い水分活性レベルで維持した従来の消化酵素組成物に比べて安定性がかなり高いことが分かった。
【0038】
「aw」とも称する水分活性は、ある物質中の水の相対的有効性である。本明細書で使用する場合、同一温度における純水の蒸気圧で除した試料中の水の蒸気圧として、用語「水分活性」を定義する。純粋な蒸留水の水分活性はちょうど1である。水分活性は温度依存性である。すなわち、温度が変化するにつれて水分活性が変化する。本発明では、約0℃〜約50℃、好ましくは約10℃〜約40℃の範囲の温度で水分活性を測定する。
【0039】
平衡時に試料周囲の空気の相対湿度を測定することによって、生成物の水分活性を決定することができる。したがって、試料中の水分活性の測定は典型的に、この平衡が起こりうる閉じた(通常は絶縁した)空間内で実施される。平衡時には、試料の水分活性と空気の相対湿度が等しく、そのためチャンバー内の空気の平衡相対湿度(ERH)の測度が試料の水分活性の測度を与える。少なくとも2つの異なるタイプの水分活性計器が市販されている。1つのタイプの水分活性計器は冷却反射鏡露点技術(例えば、Decagon Devices, Inc.から入手可能なAquaLab(商標)水分活性計)を使用し、他のタイプは電気抵抗または静電容量を変えるセンサーで相対湿度を測定する(例えば、Rotronicから入手可能な水分活性計)。当技術分野で既知のいずれの適切な方法によっても本発明の組成物または経口剤形の水分活性を測定することができる。
【0040】
別の実施形態では、少なくとも1種の安定化消化酵素を含む本発明の組成物または経口剤形は、6カ月の加速安定性試験後に、約25%以下、約20%以下、約15%以下、約12%以下、約10%以下、約8%以下、または約5%以下の酵素活性の損失を示す。
【0041】
用語「加速安定性試験」または「加速貯蔵試験」は、酵素活性に及ぼす相対的に長期の貯蔵条件の効果をシミュレートするために使用する試験方法を指し、相対的に短時間で実施できる。加速安定性試験法は、リアルタイムの安定性試験に代わる信頼できるものと当技術分野で知られており、生物学的製品の貯蔵寿命を正確に予測することができる。このような「加速安定性試験」の条件は当技術分野で知られており、その内容全体を参照によって本明細書に組み込んだものとする「ヒト用医薬品の登録のための技術的要件の規制調和国際会議:安定性試験ガイドラインQ1A(International Conference for Harmonization of Technical Requirements for Registration of Pharmaceuticals for Human Use: Stability Testing of New Drug Substances and Products Q1A)」に準拠する。
【0042】
加速安定性試験の1つの方法は、消化酵素組成物の試料を、シールしたナイアレン(Nialene)(ナイロン、アルミニウム、ポリエチレンラミネート;GOGLIO SpA、Milan)バッグ内で40℃/相対湿度75%にて6カ月間貯蔵することを含む。
【0043】
貯蔵後(または貯蔵中に定期的に)、消化酵素活性をアッセイするための従来法を用いて試料の酵素活性を試験することができる(例えば、その内容全体を参照によって本明細書に組み込んだものとする「米国薬局方、パンクレリパーゼ:リパーゼ活性のアッセイ(United States Pharmacopoeia, Pancrelipase: Assay for lipase activity)」)。
【0044】
本発明の組成物または経口剤形は、本発明の組成物または経口剤形の安定性を向上させるかまたは改善する1種または複数の安定剤をさらに含むこともできる。好適な安定剤の非限定例として、プロリン、トレハロース、デキストラン、マルトース、スクロース、マンニトール、ポリオール、シリカゲル、アミノグアニジン、ピリドキサミン、無水金属塩、例えば炭酸水素ナトリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウムおよびそれらの混合物が挙げられる。1種または複数の安定剤の含水率が約3%以下および/または水分活性が0.6以下であってよい。
【0045】
本発明の組成物または経口剤形で使用できるトレハロースの適切な形態の非限定例としてトレハロース2水和物(TD)、非晶質トレハロース(AT)、無水トレハロース(例えば無水非晶質トレハロース(AAT)、無水結晶性トレハロース(ACT))が挙げられる。粉末無水トレハロースはいずれのAATおよび/またはACTを含んでいてもよい。本明細書で使用する場合、用語「トレハロース」は、無水、部分的水和、完全水和ならびにそれらの混合物および溶液を含めたいずれの物理的形態のトレハロースをも表す。用語「無水トレハロース」は、2%未満の水を含むいずれの物理的形態のトレハロースをも表す。無水形態のトレハロースは0〜2%の水を含んでよい。非晶質トレハロースは約2〜9%の水を含み、トレハロース2水和物は約9〜10%の水を含む。その内容全体を参照によって本明細書に組み込んだものとするPCT/GB97/00367に記載されるとおりに無水トレハロースを調製することができる。一実施形態では、本発明の組成物または経口剤形は1種または複数の安定化消化酵素および無水トレハロースを含む。
【0046】
本発明の組成物中の無水トレハロース(AATまたはACT)の量は、約5〜50%、5〜40%、5〜30%、5〜20%、5〜15%、5〜10%、7〜15%の範囲、または約5%、約7%、約10%、約15%、または約20%であってよい。
【0047】
本発明の組成物または経口剤形中に粉末として無水トレハロースを組み込むことができる。無水トレハロース粉末の粒径は約2〜2000μmの範囲であってよい。
【0048】
1種または複数の安定化消化酵素と無水トレハロースとを含む本発明の組成物または経口剤形は、酵素安定性が改善される。無水トレハロースは、周囲の湿気からの水分、または製造由来もしくは製剤自体内の残存水分を吸収または封鎖することによって、本発明の組成物または経口剤形を安定化すると考えられる。
【0049】
組成物の意図した用途および要件によって、安定化消化酵素と安定剤の重量比は約99:1〜80:20の範囲である。少なくとも1種の安定化消化酵素を少なくとも1種の安定剤と湿式または乾式ブレンドすることによって本発明の組成物または経口剤形中に安定剤を組み込むことができる。一実施形態では、1種または複数の安定化消化酵素を1種または複数の安定剤と乾式ブレンドする。別の実施形態では、1種または複数の安定化消化酵素を1種または複数の安定剤と湿式ブレンドする。
【0050】
安定化消化酵素および/または安定剤に加えて、本発明の組成物または経口剤形は、1種または複数の医薬的に許容可能な賦形剤をさらに含むことができる。用語「賦形剤」は、加工性、安定性、嗜好性などを改善するために組成物の活性成分(例えば、安定化消化酵素)に添加する他の医薬的に許容可能な成分を包含する。適切な賦形剤の非限定例として、医薬的に許容可能な結合剤、安定剤、崩壊剤、潤沢剤、流動促進剤(glidant)、希釈剤、およびそれらの混合物などが挙げられる。医薬製剤の技術分野の当業者には、特定の賦形剤が組成物内で複数の機能を果たしうることが分かるであろう。したがって、例えば結合剤は希釈剤としても機能しうるなどである。賦形剤の含水率は約3%以下であってよく、および/またはその水分活性は約0.6以下であってよい。
【0051】
適切な結合剤の非限定例として、デンプン、糖(例えばラクトース)、糖アルコール(例えばキシリトール、ソルビトール、マルチトール)、セルロース(例えば微結晶性セルロース)、変性セルロース(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム)、アルギン酸、ポリビニルピロリドン(ポビドン)、およびそれらの混合物が挙げられる。適切な崩壊剤の非限定例として、2塩基性リン酸カルシウム、2塩基性リン酸カルシウム2水和物、3塩基性リン酸カルシウム、アルギン酸、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、膨潤性イオン交換樹脂、アルギナート、ホルムアルデヒドカゼイン、セルロース、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン(例えば、架橋ポリビニルピロリドン)、微結晶性セルロース、ナトリウムカルボキシメチルデンプン、ナトリウムデンプングリコラート、デンプン(トウモロコシデンプン、米デンプン)、およびそれらの混合物が挙げられる。適切な潤沢剤の非限定例として、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ナトリウムステアリルフマラート、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、タルク、蝋、Sterotex(登録商標)、Stearowet(登録商標)、およびそれらの混合物が挙げられる。適切な流動促進剤の非限定例として、コロイド状二酸化ケイ素、タルク、およびそれらの混合物が挙げられる。適切な希釈剤の非限定例として、マンニトール、スクロース、無水2塩基性リン酸カルシウム、無水2塩基性リン酸カルシウム2水和物、3塩基性リン酸カルシウム、セルロース、ラクトース、炭酸マグネシウム、微結晶性セルロース、およびそれらの混合物が挙げられる。適切な安定剤の非限定例として、トレハロース、プロリン、デキストラン、マルトース、スクロース、マンニトール、ポリオール、シリカゲル、アミノグアニジン、ピリドキサミン、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0052】
一実施形態では、崩壊剤がクロスポビドン(例えば、POLYPLASDONE XL、POLYPLASDONE XL-10)である。別の実施形態では、崩壊剤がクロスカルメロースナトリウム(例えば、AC-DI-SOL)である。別の実施形態では、崩壊剤がナトリウムデンプングリコラート(例えば、EXPLOTAB、EXPLOTAB CV)である。別の実施形態では、本発明の組成物または経口剤形が崩壊剤の組合せ、例えば微結晶性セルロースとナトリウムデンプングリコラートまたはクロスカルメロースナトリウムとクロスポビドンを含むことができる。
【0053】
崩壊剤の量は、約0.1〜30%、1%〜30%、1%〜25%、1%〜20%、1%〜15%、1%〜10%、1%〜5%、5%〜10%、5%〜15%、5%〜20%、5%〜25%、または5%〜30%のいずれの範囲であってもよい。一実施形態では、崩壊剤の量が約2%〜4%、または約2%〜3%、または約2.5%である。
【0054】
適切な希釈剤の非限定例として、微結晶性セルロース、デンプン、リン酸カルシウム、ラクトース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、およびそれらの組合せが挙げられる。一実施形態では、希釈剤が微結晶性セルロース(例えばAvicel)である。別の実施形態では、希釈剤がデンプンである。別の実施形態では、希釈剤がラクトース(例えば、Pharmatol)である。別の実施形態では、本発明の組成物または経口剤形が希釈剤の組合せ、例えば微結晶性セルロース、デンプンおよびラクトースを含むことができる。
【0055】
希釈剤の量は、約0.1〜99%、1%〜30%、1%〜25%、1%〜20%、1%〜15%、1%〜10%、1%〜5%、5%〜10%、5%〜15%、5%〜20%、5%〜25%、または5%〜30%のいずれの範囲であってもよい。一実施形態では、希釈剤の量が約2%〜5%、3%〜5%、または約4%である。
【0056】
本発明の組成物または経口剤形の賦形剤の1種または複数が乾燥剤として機能してさらに組成物を安定化することができる。乾燥剤として役立つ適切な賦形剤には、水と堅く結合するか、または組成物の水分活性を減少させるいずれの医薬的に許容可能な賦形剤も含まれる。例えば、本発明の組成物は約1〜4%のシリカゲル、または約2.5%のシリカゲルを含むことができる。
【0057】
いずれの適切な経口剤形でも本発明の組成物を調製することができる。適切な剤形の非限定例として、錠剤、カプセル剤またはサシェ剤が挙げられる。膵臓リパーゼなどの一定の消化酵素は十二指腸内で放出される前に胃による不活化に対して保護する必要がある可能性があるので、本発明の安定化消化酵素組成物または経口剤形を制御または遅延放出製剤として提供することが望ましいことがある。このような制御または遅延放出製剤は、胃による不活化からpH感受性消化酵素を保護するために働き、しかし十二指腸内で消化酵素を放出する腸溶性コーティングでコーティングされた錠剤または粒子を含むことができる。あるいは、制御放出製剤は、本発明の安定化消化酵素組成物または経口剤形で充填されたカプセルを含むことができ、それによってカプセルがその中身を胃による不活化から保護し、しかし十二指腸内で消化酵素を放出する。しかし、本発明の安定化消化酵素組成物または経口剤形は、胃による不活化に敏感な消化酵素、例えば、胃リパーゼなどの胃環境内で生来安定である一定の消化酵素、膵臓起源のものを含めたある範囲のプロテアーゼ、およびアミラーゼ、に限定されない。本質的に安定性であるか、または架橋によって化学修飾、微生物から誘導または抽出された一定の消化酵素であってよい。
【0058】
本発明の組成物を錠剤として製剤化する場合、当技術分野で既知の方法を用いて、安定化消化酵素を「錠剤化」(すなわち、成形して錠剤にする)し、引き続き、この場合もやはり当技術分野で既知の方法を用いて、腸溶性コーティングでコーティングすることができる。
【0059】
本発明の組成物をカプセル剤として製剤化する場合、当技術分野で既知の方法を用いて、カプセルの中身を製剤化することができる。例えば、カプセルに組み込むのに適合した粒子または錠剤の形態で安定化消化酵素組成物を提供することができる。
【0060】
本明細書で使用する場合、用語「粒子」は、微細粉末(粒径が約1μmの範囲)から直径が約5mmのペレットまでを包含する。
【0061】
安定化消化酵素組成物をコーティングでコーティングされた粒子に形成することもでき、このコーティングは腸溶性ポリマーを含む。用語「腸溶性ポリマー」は、胃の中身から消化酵素を保護するポリマー、例えば酸性pHでは安定であるが、より高いpHでは迅速に分解しうるポリマー、または胃腸管の残部とは対照的に、胃内にありながら、その水和または浸食の速度が、胃の中身と消化酵素の接触が確実に比較的少なくなるように十分遅いポリマーを意味する。腸溶性ポリマーの非限定例として、当技術分野で既知のもの、例えば変性または未変性天然ポリマー、例えばセルロースアセタートフタラート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタラート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセタートスクシナート、およびシェラック;または合成ポリマー、例えばアクリルポリマーまたはコポリマー、メタクリル酸ポリマーおよびコポリマー、メチルメタクリラートコポリマー、ならびにメタクリル酸/メチルメタクリラートコポリマーが挙げられる。
【0062】
腸溶性ポリマーコーティングは合成ポリマーであってよく、必要に応じてアルカリ化剤などの無機材料を含んでよい。結果のコーティングされた粒子は、安定化消化酵素を含むコアと、このコアを封入する腸溶性コーティングとを含む遅延放出ビーズを与える。コーティングされた安定化消化酵素粒子を次に錠剤またはカプセル剤に製剤化することができる。
【0063】
腸溶性ポリマーおよび少なくとも1種の無機材料が本発明のコーティングに腸溶特性を与える。すなわち、薬物として使用すると、コーティングは薬物を胃の酸性環境から保護するバリアとして作用し、薬物が小腸に到達する前の薬物の放出を実質的に阻止する(すなわち、胃内における酵素の放出は、組成物中の酵素の総量の約10〜20%未満である)。
【0064】
無機材料は、例えば、アルカリ化剤を含むことができる。アルカリ化剤の非限定例として、二酸化ケイ素、ナトリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、タルク、およびそれらの組合せが挙げられる。一実施形態では、アルカリ化剤がタルクである。
【0065】
組成物の意図した用途によって、腸溶性ポリマーと少なくとも1種の無機材料の比は、重量で約10:1〜約1:60の範囲であってよい。別の実施形態では、腸溶性ポリマーと少なくとも1種の無機材料の比が重量で約8:1〜約1:50の範囲である。別の実施形態では、腸溶性ポリマーと少なくとも1種の無機材料の比が重量で約6:1〜約1:40の範囲である。別の実施形態では、腸溶性ポリマーと少なくとも1種の無機材料の比が重量で約5:1〜約1:30の範囲である。別の実施形態では、腸溶性ポリマーと少なくとも1種の無機材料の比が重量で約4:1〜約1:25の範囲である。別の実施形態では、腸溶性ポリマーと少なくとも1種の無機材料の比が重量で約4:1〜約1:9の範囲である。別の実施形態では、腸溶性ポリマーと少なくとも1種の無機材料の比が重量で約10:4〜約10:7の範囲である。
【0066】
一実施形態では、本発明の組成物または経口剤形は、腸溶性ポリマーとタルクなどの無機材料とを含む腸溶性コーティングでコーティングされた安定化消化酵素粒子を含む。特定の実施形態では、腸溶性コーティングの無機材料が粒子の総重量の約1〜10重量%を構成する。別の実施形態では、無機材料が粒子の約3、約5、約7、または約10重量%を構成する。さらに他の実施形態では、無機材料がアルカリ化剤であり、乾燥コーティング重量の約20〜60%を構成する。さらに他の実施形態では、アルカリ化剤が乾燥コーティング重量の約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、または約55%である(全範囲、部分範囲、およびそれらの間の値を含む)。特定の実施形態では、アルカリ化剤がタルクである。さらに別の特定の実施形態では、粒子の乾燥コーティングが約35%のタルクを含む。
【0067】
本発明の別の実施形態では、コーティングが可塑剤をさらに含む。適切な可塑剤の例として、限定するものではないが、トリアセチン、クエン酸トリブチル、クエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリn−ブチル、フタル酸ジエチル、セバシン酸ジブチル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ヒマシ油、アセチル化モノグリセリド、アセチル化ジグリセリド、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0068】
本発明の剤形は、本発明の組成物(例えば、腸溶性ポリマーとアルカリ化剤でコーティングされた安定化消化酵素組成物の制御放出粒子)を含むカプセル剤であってよい。カプセル自体は、当技術分野で既知のいずれの従来の生分解性材料、例えば、ゼラチン、多糖、例えばプルラン、または変性セルロース系材料、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロースなどで構成されていてもよい。安定化消化酵素の安定性を改善するため、カプセルを充填前に乾燥させるか、または低含水率の材料で構成されるカプセルを選択することができる。本発明の剤形の一実施形態では、カプセルがヒドロキシプロピルメチルセルロースで構成されている。本発明の剤形の別の実施形態では、カプセルが約6%以下、例えば約4%以下、2%以下、または2〜6%、または4〜6%のいずれかの含水量であるヒドロキシプロピルメチルセルロースで構成されている。別の実施形態では、カプセルが約2%未満の含水量であるヒドロキシプロピルメチルセルロースで構成されている。
【0069】
本発明の剤形は単一の消化酵素、または消化酵素の混合物を含むことができる。安定化消化酵素組成物を腸溶性コーティングでコーティングされた粒子に形成する場合、コーティングされた粒子は、単一の消化酵素または消化酵素の混合物を含むコアをそれぞれ含有しうる。剤形が名目上それぞれ同一組成であるコーティングされた粒子を含むこともでき、または剤形が異なる種類のコーティングされた粒子の混合物を含むことができる。例えば、剤形は、コーティングされた各粒子がパンクレリパーゼを含むコアを有するコーティングされた粒子で充填されたカプセル剤であってよい。あるいは、剤形は、コーティングされた一部の粒子がパンクレリパーゼを含むコアを有する一方、コーティングされた他の粒子が異なるリパーゼ、またはプロテアーゼもしくはアミラーゼを含むコアを有するコーティングされた粒子で充填されたカプセル剤であってよい。異なる組成のコーティングされた粒子のいずれの適切な組合せを用いても所望の治療効果を提供することができる。
【0070】
さらに、本発明の剤形が安定化消化酵素のコーティングされた粒子で構成される場合、個々の粒子がそれぞれ同一のコーティング組成であってよく、または一部の粒子が異なるコーティング組成である粒子の混合物を含むことができる。コーティング組成のいずれの適切な組合せを用いても所望のタイプの制御放出または治療効果を提供することができる。
【0071】
コーティングされた粒子のコアは、いずれの適切な粒径または形状を有してもよい。例えば、コーティングされた粒子は、粒径が約50〜5000μmの範囲であるコーティングされた粉末の形態であってよく、または公称粒径が約2〜5mmの範囲である「ミニタブ(minitab)」の形態であってよい。他の適用では、コーティングされた粒子のコアは、公称粒径が約2mm未満、例えば約1〜2mmである「マイクロタブ(microtab)」であってよい。
【0072】
一実施形態では、本発明の組成物または経口剤形はコーティングされた複数の消化酵素粒子(例えば、パンクレリパーゼ)を含むことができる。消化酵素粒子は、消化酵素、少なくとも1種の崩壊剤、少なくとも1種のポリマー結合剤または希釈剤、ならびに必要に応じて少なくとも1種の可塑剤、必要に応じて少なくとも1種の流動促進剤、および必要に応じて少なくとも1種の潤沢剤を含むことができる。一実施形態では、消化酵素粒子が約60〜90%の消化酵素、約1〜4%の少なくとも1種の崩壊剤、約2〜6%の少なくとも1種のポリマー結合剤または希釈剤、ならびに必要に応じて約0.5〜1.0%の少なくとも1種の可塑剤、必要に応じて約0.2〜0.6%の少なくとも1種の流動促進剤、および必要に応じて約0.2〜0.6%の少なくとも1種の潤沢剤を含むことができる。例えば、消化酵素粒子が約60〜90%のパンクレリパーゼ、約1〜4%のクロスカルメロースナトリウム、約0.5〜1.0%の硬化ヒマシ油、約0.2〜0.6%のコロイド状二酸化ケイ素、約2〜6%の微結晶性セルロース、および約0.2〜0.6%のステアリン酸マグネシウムを含むことができる。コーティングが少なくとも1種の腸溶性ポリマー、約4〜10%の少なくとも1種のアルカリ化剤(粒子の総重量に基づいて)、および必要に応じて少なくとも1種の可塑剤を含むことができる。一実施形態では、コーティングが約10〜20%の少なくとも1種の腸溶性ポリマー、約4〜10%の少なくとも1種のアルカリ化剤、および約1〜2%の少なくとも1種の可塑剤(粒子の総重量に基づいて)を含むことができる。例えば、コーティングが約10〜20%のヒドロキシプロピルメチルセルロースフタラート、約4〜10%のタルク、および約1〜2%のクエン酸トリエチル(粒子の総重量に基づいて)を含むことができる。次に、コーティングされた複数の消化酵素粒子を成形して錠剤にし、またはカプセルに充填することができる。一実施形態では、カプセルがヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む。
【0073】
本発明の組成物、および本発明の組成物を含む剤形は、従来の消化酵素(例えば、パンクレリパーゼ)組成物および剤形に比べて安定性が向上している。その結果、本発明の剤形は、臨床的に有用な量の消化酵素をそれが必要な患者に送達するために従来の消化酵素剤形が行っているように、「過剰充填」する必要がない(すなわち、ゼロ過剰充填(zero-overfill))。従来の消化酵素組成物および剤形は、65%ものレベルで(すなわち、消化酵素の必要な用量の165%)過剰充填して、不十分な酵素安定性を補う必要がある。結果として、従来の消化酵素組成物で送達される用量については不確定である。したがって、従来の「過剰充填された」剤形は、製造直後には意図した用量より多い消化酵素を送達できるが、経時的に、酵素活性が意図した用量未満に低下しうる。
【0074】
一実施形態では、本発明の組成物を含む剤形は実質的にゼロ過剰充填である。用語「実質的にゼロ過剰充填」とは、追加の消化酵素活性の量(すなわち、意図した用量を超える追加の酵素活性の量)が約10%以下、すなわち、約10%、約10%未満、約9%以下、約8%以下、約7%以下、約6%以下、約5%以下、約4%以下、約3%以下、約2%以下、約1%以下、または約0%である、本発明の組成物を意味する。したがって、例えば、意図した用量が約4500IUリパーゼの場合、本発明の実質的にゼロ過剰充填剤形は約4950IUリパーゼ以下(すなわち、4500IUリパーゼの110%以下)を含みうる。別の実施形態では、ゼロ過剰充填剤形が4500IUリパーゼを含む。
【0075】
いずれの適切なパッケージ内でも本発明の組成物または剤形(例えば、錠剤またはカプセル剤)を貯蔵することができる。例えば、パッケージはネジ蓋または圧入蓋を備えたガラスまたはプラスチックジャーであってよい。あるいは、単位剤形として「ブリスターパック」内に本発明の組成物または剤形を詰めることができる。出願人らは、防湿シールおよび/または防湿パッケージを与えることによって、消化酵素組成物または剤形の安定性を改善できることを見出した。適切な防湿パッケージの非限定例として、ガラスジャー、水分バリア樹脂またはコーティングを組み込んだプラスチックジャー、アルミニウムめっきプラスチック(例えば、Mylar)パッケージングなどが挙げられる。用語「防湿」は、水に対する透過性が1年当たり容器の容積1cm当たり約0.5mg未満の水であるパッケージを指す。
【0076】
容器(例えば、瓶)をいずれの適切な蓋で閉じてもよく、特に貯蔵中の水分の進入を最小限にする蓋であってよい。例えば、本発明の組成物または剤形をシールライナーと印刷されたHS035 Heat Seal/20F(SANCAP Liner Technology, Inc.)を含むSaf−Cap III−A(Van Blarcom Closures, Inc.)などの蓋で閉じることができる。
【0077】
パッケージの完全性を保証し、貯蔵中の水分の進入を最小限にするため、本発明の組成物または剤形を調剤してパッケージをシールした後に、本発明の組成物または剤形を含むシールパッケージの漏れ試験を行うことができる。例えば、蓋に制御真空を施して、経時的に真空の減少を検出することによって、シールパッケージを試験することができる。適切な漏れ試験設備として、Bonfiglioli製のもの(例えば、モデルLF-01-PKVまたはモデルPKV 516)が挙げられる。
【0078】
本発明の組成物または剤形を含むパッケージは、パッケージ内部の湿気を減少させうる乾燥剤(すなわち、水を吸収し、水と反応し、または水を吸着する物質)、例えば、パッケージ内にシールされた雰囲気から水分を「捕捉する」ことができる乾燥剤カプセルを含むこともできる。このようなパッケージ内部に置くことができる適切な乾燥剤の非限定例として、ゼオライト(例えば、分子ふるい、例えば4Å分子ふるい)、クレイ(例えば、モンモリロナイトクレイ)、シリカゲル、活性炭、またはそれらの組合せが挙げられる。一実施形態では、乾燥剤が分子ふるいを含む。
【0079】
さらに、経口医薬品単位用量を包装するときには、綿などのセルロース系材料の「詰め物」を容器の上部内に加えて、容器の上部の空きスペースを満たすことによって、中身の移動を最小限にすることが慣例となっている。セルロース系材料はいくらか吸湿性であり、パッケージ内部の水分の「レザバー」として作用しうる。したがって、本発明のパッケージの一実施形態では、パッケージ内にセルロースまたは綿の「詰め物」が存在しない。本発明のパッケージの別の実施形態では、パッケージがセルロースまたは綿の詰め物を欠き、乾燥剤を含む。
【0080】
約3%以下の含水率、約0.6以下の水分活性を提供するため、または3カ月の加速安定性試験後に約15%以下の活性の損失を示す安定化消化酵素組成物を提供するために本明細書で指摘したように改変したことを除き、従来技術を用いて本発明の組成物を調製することができる。例えば、脱湿器を備えた流動床コーティング装置で消化酵素(例えば、パンクレリパーゼ)の粒子をコーティングすることができる。一実施形態では、含水量が約4g/m以下、約3.5g/m以下、約3g/m以下、約2.5g/m以下、約2.0g/m以下、約1.5g/m以下、約1.0g/m以下、または約0.5g/m以下(全範囲およびそれらの間の部分範囲を含む)の雰囲気内でコーティング装置を操作する。コーティングを行う雰囲気は、除湿空気、除湿窒素、または別の除湿不活性ガスを含んでよい。
【0081】
アルコール(例えばエタノール)、ケトン(例えばアセトン)、塩化メチレン、またはそれらの混合物(例えばアセトンエタノールの混合物)などの有機溶媒中の腸溶性ポリマー(および必要に応じて懸濁した無機材料)の溶液としてコーティングを適用することができる。
【0082】
本発明の組成物は、消化酵素欠乏症に付随する状態または障害に苦しむ患者における脂肪、タンパク質、および炭水化物の吸収を向上させる。一実施形態では、本発明の組成物、特にパンクレリパーゼまたはパンクレアチン組成物を用いて、種々の疾患に付随する外分泌性膵臓機能不全(EPI)を治療できる。このような疾患として、限定するものではないが、嚢胞性線維症(CF)が挙げられる。いくつかの実施形態では、該組成物は、嚢胞性線維症患者および小児患者を含めた他の患者におけるEPIに付随する吸収不良(例えば脂肪の)を実質的に軽減することができる。いくつかの実施形態では、該組成物は、嚢胞性線維症患者の脂肪吸収係数(CFA)を少なくとも約85%以上に高めることができる。他の薬剤または組成物と併用投与した場合にこのような結果を達成することができ、または他の薬剤と併用投与しなくても達成しうる。一実施形態では、このようなCFAの結果がプロトンポンプインヒビター、例えばPrilosec(登録商標)、Nexium(登録商標)などを併用投与せずに達成される。
【0083】
GIpHレベルが低い(例えば、GIpHレベル<約4)と認定されている患者では、プロトンポンプインヒビター、制酸剤、およびGI管のpHを高める他の薬物と共に本発明の組成物または剤形を投与することによって、改善された結果を得ることができる。例えば、本発明の組成物または剤形をプロトンポンプインヒビター、制酸剤、または他の薬物と別々(プロトンポンプインヒビター、制酸剤などの投与の前、同時、または後)に投与することができる。あるいは、単一剤形として、プロトンポンプインヒビター、制酸剤、または他の薬物を本発明のパンクレアチン組成物と併用することができる。
【0084】
さらに別の実施形態では、本発明は、消化酵素欠乏症に付随する障害を治療または予防する方法であって、該治療または予防が必要な哺乳動物に本発明の組成物を投与することを含む方法を提供する。一実施形態では、哺乳動物がヒトである。
【0085】
さらに別の実施形態では、本発明は、消化酵素欠乏症に付随する障害を治療または予防する方法であって、該治療または予防が必要な哺乳動物に本発明の組成物または剤形を投与することを含み、本発明の組成物または剤形が、少なくとも1種の消化酵素に加えて、プロトンポンプインヒビター、制酸剤、またはGIpHを高める他の薬物を含む方法を提供する。さらに別の実施形態では、本発明は、消化酵素欠乏症に付随する障害を治療または予防する方法であって、プロトンポンプインヒビター、制酸剤、またはGIpHを高める他の薬物を含む剤形と共に、本発明の組成物または剤形を投与することを含む方法を提供する。
【0086】
本発明の組成物または剤形で治療できる障害には、患者の消化酵素がないかまたはレベルが低い状態、または患者が消化酵素の補充を必要とする状態が含まれる。例えば、このような状態として、嚢胞性線維症、慢性膵臓炎、他の膵臓疾患(例えば、遺伝性、外傷後および同種移植片膵臓炎、ヘモクロマトーシス、シュバックマン症候群、リポマトーシス、または副甲状腺機能亢進症)、癌または癌治療の副作用、外科術の副作用(例えば、胃腸バイパス手術、ウィップル手順、膵全摘出術など)または膵臓酵素が腸に到達できない他の状態、不十分なミキシング(例えば、ビルロートII胃摘出術、他のタイプの胃のバイパス手術、ガストリノーマなど)、薬物治療、例えば膵臓が損なわれうるメトホルミンまたはHIVおよび自己免疫性疾患、例えば糖尿病などの症状を治療するために使用する当該薬物による治療の副作用、閉塞(例えば、膵管および胆管の結石症、膵臓および十二指腸の新生物、管狭窄症)、小児脂肪便症、食物アレルギーおよび加齢に付随する吸収不良が挙げられる。
【0087】
毎日哺乳動物(例えば、ヒト)に投与される本発明の組成物または剤形の量は、意図した結果によって決まる。熟練医師は、治療すべき状態の自分の診断に基づいて必要な用量を処方できるであろう。
【0088】
例えば、ヒトの消化酵素欠乏症(例えば、嚢胞性線維症に関連する)の治療では、開始用量が500〜1000リパーゼ単位/kg/食事であり、総用量はUS FDAの勧告に従って2500リパーゼ単位/kg/食事または4000リパーゼ単位/g脂肪/食事を超えるべきでない。典型的に、患者は1日に少なくとも4つの、好ましくは食物と一緒に投与される剤形を受けるべきである。
【実施例】
【0089】
(実施例1)
パンクレリパーゼMT(ミニタブレット)は、面取りを施した円形の2mm径のパンチを用いて錠剤化したパンクレリパーゼ原材料(例えば、Nordmarkから得た)と賦形剤とのブレンドである。パンクレリパーゼMTのコーティング前の物理的特性を下表1に示す。
【0090】
【表2】
【0091】
プロセスエアフロー内でMuntersML1350除湿器を備えた流動床Glatt−GPCG1装置を用いてパンクレリパーゼMTをコーティング製剤(表2)でコーティングした。3種の異なる含水率のプロセスエアでコーティングプロセスを行った(表3)。各バッチについて、コーティング重量はコーティングされた粒子の総重量の約15%だった。各セットのプロセス条件についてコーティングされた粒子の組成はほぼ同一であり(表4)、顕微鏡検査後、むらがなく、滑らかかつ均質に見えた。
【0092】
【表3】
【0093】
【表4】
【0094】
【表5】
【0095】
3セットの試料(すなわち、P9A165、P9A167、およびP9A170)は、プロセスエアフローの含水率に対応する残存含水率を示した(表5)。
【0096】
【表6】
【0097】
経時的な活性の損失に及ぼす残存水分の影響を、以下のように加速安定性条件下で評価した。
【0098】
硬ゼラチンカプセル(薬用量20,000IUリパーゼ)を、上述した3つのロットのコーティングされたパンクレリパーゼMTミニタブレットで充填し、シールしたナイアレンバッグ内で40℃にて相対湿度75%で貯蔵した。
【0099】
15日および4カ月の貯蔵後にリパーゼ活性を評価した。結果を表6に示す。
【0100】
【表7】
【0101】
表6の結果は、約2%未満の含水率の組成物で安定性が改善されることを示している。あるいは、3.6g/m〜0.4g/m未満の含水率の雰囲気下でコーティングすることによって安定性が改善される。
【0102】
(実施例2)
異なる量のタルクを含む2種のコーティング組成物でパンクレリパーゼMT粒子をコーティングした(表7)。
【0103】
【表8】
【0104】
低含水率(すなわち、1g/m未満)のプロセスエアフローを保証するためMuntersML1350除湿器を備えた流動床Glatt−GPCG1装置を用いてコーティング試験を行った。コーティング重量は約15%だった。2つのバッチの理論組成を表8に示す。顕微鏡検査は、すべての試料上のコーティングが滑らかかつ均質であることを明らかにした。乾燥減量によって残存含水率を測定した(表9)。
【0105】
【表9】
【0106】
【表10】
【0107】
異なるコーティング組成が経時的な活性の損失に及ぼす効果を以下のように加速安定性条件下で評価した。
【0108】
硬ゼラチンカプセル(薬用量20,000IUリパーゼ)を上述した2つのロットのコーティングされたパンクレリパーゼMTで充填し、シールしたナイアレンバッグ内で40℃および相対湿度75%で貯蔵した。
【0109】
表9に示すように、1、2および3カ月の貯蔵後にリパーゼ活性を調べた。
【0110】
【表11】
【0111】
この結果は、加速安定性条件下で3カ月の貯蔵後の活性の損失は高タルク含量コーティング(ロットP9A240)でコーティングした試料で有意に低いことを明らかにした。したがって、タルク濃度を約1%から約7%に増やすと、酵素安定性が有意に向上することとなる。
【0112】
(実施例3)
エタノール(96%のエタノール、4%の水)/アセトン溶媒を100%のアセトンで置き換えること以外、表6に記載のものと同様の「高タルク」および「低タルク」コーティング組成物を調製することによって、コーティング組成物の溶媒の効果を評価した(表11)。
【0113】
【表12】
【0114】
低含水率(1g/m未満)のプロセスエアフローを保証するためMuntersML1350除湿器を備えた流動床Glatt−GPCG1装置を用いてコーティング試験を行った。コーティング重量は約15%だった。2つのバッチの理論組成を表12に示す。
【0115】
【表13】
【0116】
ロットP9A318は市販の製品仕様に準拠したが、ロットP9A352は胃耐性試験に合格しなかった。顕微鏡検査は、ロットP9A352のフィルムコーティングは他のコーティングされた試料ほど滑らかかつ均質でないことを明らかにした。これは、おそらく前の試料で使用したエタノール/アセトン混合物と比較してアセトンの蒸発率が高く、コーティング中のタルク濃度が高いためであろう。
【0117】
次に、ロットP9A318を以下のように加速安定性条件下で評価した。
【0118】
硬ゼラチンカプセル(薬用量20,000IUリパーゼ)を調製し、シールしたナイアレンバッグ内で40℃および相対湿度75%にて貯蔵した。表13に示すように、1、2および3カ月の貯蔵後にリパーゼ活性を測定した。
【0119】
【表14】
【0120】
ロットP9A318の安定性は、同様のコーティング条件下にて同様のコーティングで調製したロットP9A230の安定性に比べて有意に向上している(表14)。したがって、コーティング製剤中の96%エタノールをアセトンと交換すると、経時的な酵素活性の損失を有意に減少させるようである。
【0121】
【表15】
【0122】
(実施例4)
CPSゼラチンおよびHPMC(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)カプセルを同一のコーティングされたリパーゼ組成物で充填した。ゼラチンカプセルの含水量は約14%であり、HPMCカプセルの含水量は約4%である。さらに1セットのHPMCカプセルを2%未満の水分レベルまで乾燥させた。すべての試料を加速安定性条件に供し(40℃および相対湿度75%;試料をナイアレンバッグでヒートシールした)、15、30および90日後にリパーゼ活性を試験した。結果を下表15〜17に示す。
【0123】
1)HPMC CPS対ゼラチンCPS
【0124】
【表16】
【0125】
【表17】
【0126】
【表18】
【0127】
表15〜17に示すように、HPMCカプセル内のリパーゼ組成物は、加速安定性条件下で15、30、および90日間の貯蔵後に有意に高いリパーゼ活性を示し、乾燥したHPMCカプセルは平衡水分レベルを含むものより良い安定性を提供する。
【0128】
(実施例5)
ゼラチンおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースカプセルをコーティングされたリパーゼ組成物ミニタブレット形で充填した。ゼラチンカプセル(P200050)の組成物用コーティングは約10%のタルクを含み、一方ヒドロキシプロピルメチルセルロースカプセル(P200550)の組成物用コーティングは約33%のタルクを含んでいた。コーティング組成物はその他の点では同一だった。下表18は、加速安定性条件下で貯蔵後に観察された分解レベルを組成物の含水率と比較する。表18に示すように、リパーゼ活性レベルが高いほど、組成物中の水分レベルが低いという関係がある。さらに、HPMCカプセルに充填した組成物はゼラチンカプセルに充填した組成物より安定である。
【0129】
【表19】
【0130】
(実施例6)
リパーゼ組成物を含有するカプセルを乾燥剤を含むパッケージ内で貯蔵することの効果を加速安定性条件下(40℃および相対湿度75%;試料をナイアレンバッグにヒートシールした)での30日および90日の貯蔵後に試料のリパーゼ活性を測定することによって評価した。表19および20に示すように、乾燥剤を含むパッケージ内および平衡含水率未満に乾燥しているカプセル内ではリパーゼ活性が有意に高い。
【0131】
2)乾燥剤
乾燥剤1:Tyvek(登録商標)バッグ内のシリカゲル
乾燥剤2:Tyvek(登録商標)バッグ内の分子ふるい
【0132】
【表20】
【0133】
【表21】
【0134】
(実施例7)
上記実施例で用いた「低」レベルと「高」レベルの間の中間レベルのタルクを有する2種のコーティング組成物(HP55:TEC:タルク=10:1:5)で、コーティング溶媒としてアセトンまたはエタノール/アセトンの混合物のどちらかを用いてパンクレリパーゼMT粒子をコーティングした。2種のコーティング懸濁液の理論組成を下表21に示す。
【0135】
【表22】
【0136】
低含水率(1g/m未満)のプロセスエアフローを保証するためMuntersML1350除湿器を備えた流動床Glatt−GPCG1装置を用いてコーティング試験を行った。
【0137】
パンクレリパーゼMTを約15%のコーティング重量でコーティングすることによって各バッチを調製した。3つのバッチをエタノール/アセトンコーティング溶媒で調製し、3つのバッチをアセトンコーティング溶媒で調製した。全6バッチで同一である理論組成を下表22に示す。
【0138】
【表23】
【0139】
全6試料についてコーティングの顕微鏡検査は滑らかでかつ均質に見えた。次に、コーティングされたパンクレリパーゼMT粒子をHPMCカプセル中に充填し、乾燥剤(分子ふるい)を含むガラス瓶に詰めた。次に瓶をシールし、加速安定性条件下で貯蔵し、下表23に示すように種々の時間でリパーゼ活性を評価した。
【0140】
各試料のパッケージング条件は以下のとおりだった。12個のHPMCカプセル剤(薬用量20,000IUリパーゼ)および乾燥剤として1gの分子ふるい(Minipax吸着剤-Multisorb)を30mL容量のガラス瓶に入れた。シールライナーと印刷されたHS035Heat Seal/20Fを含むSaf−CapIII−Aで瓶を閉じ、40℃/75%RHで貯蔵した。
【0141】
【表24】
【0142】
表23に示すように、エタノール/アセトンコーティング溶媒で調製した3つの試料は、リパーゼ活性の同様の損失を示した。2カ月の貯蔵後、アセトンコーティング溶媒で調製した試料の2つは活性の損失を何も示さず、3つ目は4%の活性の減少を示した。このことは、アセトンコーティング溶媒で調製した試料がエタノール/アセトンコーティング溶媒で調製した試料より安定であることを示唆している。
【0143】
(実施例8)
マイクロタブレット
薬用量についてさらに選択肢を与えるため、錠剤の寸法を有意に減少させた製剤を作製した。円形の1.5mm径で、曲率半径が1.2mmのパンチでパンクレリパーゼブレンドを錠剤化した。
【0144】
2.5%未満のもろさ(USP法)のマイクロタブレット(「μT」)を得るように圧縮パラメーターを設定した。ロット9A402の特性を表24に示す。
【0145】
【表25】
【0146】
低含水率(1g/m未満)のプロセスエアフローを保証するためMuntersML1350除湿器を備えた流動床Glatt−GPCG1装置で、表2に示す組成を有する懸濁液でロットP9A402をコーティングした。22%のコーティング重量を得た。フィルムコーティングの顕微鏡検査はすべての試料が滑らかかつ均質に見えることを示した。
【0147】
バッチロットP9A422の理論組成を表25に示す。
【0148】
【表26】
【0149】
上述したようにマイクロタブレットの2つの他のバッチを調製した。それらの特性を下表26に示す。
【0150】
【表27】
【0151】
上述した「高」レベルと「低」レベルとの間の中間レベルのタルクを有する2種の懸濁液の1つ(HP55:TEC:タルク=10:1:5)で、コーティング溶媒としてアセトンまたはアセトン中のエタノールの混合物のどちらかを用いてパンクレリパーゼマイクロタブレットをコーティングした(表27)。
【0152】
低含水率(1g/m未満)のプロセスエアフローを保証するためMuntersML1350除湿器を備えた流動床Glatt−GPCG1装置を用いて6つの試験を行った。コーティング重量は約22%であり、顕微鏡検査はコーティングが滑らかかつ均質であることを示した。
【0153】
【表28】
【0154】
これらのバッチの理論組成を表28にまとめる。
【0155】
【表29】
【0156】
上記コーティングされたマイクロタブレットでHPMCcpsカプセルを充填し、乾燥剤(分子ふるい)を含むガラス瓶に詰めた。次に、シールライナーと印刷されたHS035Heat Seal/20Fを含むSaf−CapIII−Aで瓶を閉じ、加速安定性条件(40℃および相対湿度75%)下で貯蔵した。12個のMPMCカプセル剤(薬用量5,000IUリパーゼ)および乾燥剤として1gの分子ふるい(Minipax吸着剤-Multisorb)を30mL容量のガラス瓶に入れた。表29および30に示すように20、30、40、および60日の貯蔵時点でリパーゼ活性を測定した。
【0157】
【表30】
【0158】
【表31】
【0159】
エタノール/アセトンコーティング溶媒を用いて調製した全3試料は同様の挙動を示し、2カ月の貯蔵後に、リパーゼ活性の損失が2%〜4%だった。2カ月の貯蔵後、アセトンコーティング溶媒を用いて調製した試料の2つの活性の損失はリパーゼ活性の損失の証拠を何も示さなかったが、3番目の試料はリパーゼ活性の5%の減少を示した。したがって、コーティング溶媒としてアセトンを用いて調製した組成物は、エタノール/アセトンコーティング溶媒で調製した試料より安定だった。これはおそらく使用したエタノールの含水量に関係するであろう。
【0160】
上記で調製したマイクロタブレットはわずかに楕円形であり(表24および26参照);マイクロタブレットの厚さと直径との間の比は1.22:1〜1.15:1だった。
【0161】
マイクロタブレットの寸法をさらに減少させるため、厚さと直径の比がほぼ1:1の新しい試料を調製した(ロットQ9A006)。これを下表31に示す。
【0162】
【表32】
【0163】
表32に示す組成物で22%のコーティング重量にてロットQ9A006をコーティングした。低含水率(1g/m未満)のプロセスエアフローを保証するためMuntersML1350除湿器を備えた流動床Glatt−GPCG1装置を用いてコーティング試験を行った。
【0164】
コーティングされたマイクロタブレットロットQ9A019の理論組成は表28に示す理論組成と同一だった。顕微鏡検査は、コーティングが滑らかかつ均質であることを示した。
【0165】
【表33】
【0166】
上記実施例は、組成物の成分中の含水率および水分活性を低く維持することによって、例えば水性エタノール/アセトンコーティング溶媒をアセトンと交換し、除湿されたプロセスエアフロー(例えば、含水率が0.4g/m〜3.6g/m)内でミニタブレットおよびマイクロタブレットをコーティングすることによって、安定性が向上した消化酵素組成物を調製できることを示している。さらに、コーティング中の高レベルの無機材料(例えば、HP55:TEC:タルク比が10:1:1〜10:1:5の範囲)、吸湿性が低いカプセル材料(例えば、HPMCまたは乾燥したHPMC)の選択、および改良されたパッケージング技術(例えば、乾燥剤を含む良くシールされたガラス瓶内での貯蔵)は、安定性が向上した消化酵素組成物および剤形をもたらす。
【0167】
(実施例9)
下表33は、Eudragitコーティングされたパンクレリパーゼミニタブの加速安定性試験(瓶内;40℃および相対湿度75%)を示す。
【0168】
【表34】
【0169】
結果は、Eudragitなどの従来の腸溶性コーティングは安定化パンクレリパーゼ組成物をもたらさないことを示している。
【0170】
(実施例10)
前述の実施例で述べたようにコーティングされた、1カプセル当たりの薬用量を変えたERコーティングビーズを含む剤形の例を下表34に示す。
【0171】
【表35】
【0172】
(実施例11)
下表35は本発明の組成物を含むカプセルを含む種々の大きさの容器の含水量を示す。含水量はカプセルからのすべての水、および2年の貯蔵時間にわたって容器内に浸透する水を包含する。「等価分子ふるい重量」は、容器内に存在する水を吸収するのに必要な分子ふるいの最小量である。
【0173】
【表36】
【0174】
(実施例12)
7歳以上の年齢のEPIを伴う34人のCF患者について第3相無作為化二重盲検プラセボ対照交差研究を行って、表34のパンクレリパーゼ組成物による治療の効果をプラセボによる治療の効果と比較した。US全体の14のCFセンターで研究を行った。研究の主要エンドポイントは、1カプセル当たり5,000、10,000、15,000または20,000リパーゼ単位と組み合わせて体重1kg当たり10,000リパーゼ単位以下の1日の用量でパンクレリパーゼ組成物を経口投与した後の脂肪吸収係数をプラセボと比較した。この試験の二次エンドポイントは、タンパク質吸収、コレステロール、脂肪可溶性ビタミン、体重、体格指数およびEPI症状の決定要素として窒素吸収係数の変化を評価した。
【0175】
これらの組成物で治療した患者は、プラセボを受けた患者に比べて脂肪吸収係数および窒素吸収係数の統計的に有意な増加を示し、吸収不良に付随する症状、例えば腹部膨満、鼓腸、疼痛および大便中の脂肪の形跡が減少した。プラセボに対してこれらのパンクレリパーゼ組成物を摂取した患者では、コレステロールおよびビタミンの平均レベルの増加も観察された。1日当たりの大便の頻度が統計的に有意に減少した。患者はこれらの組成物に良く耐え、研究中に薬物に関連する重篤な有害事象は観察されなかった。
【0176】
これらの組成物を受けた患者の脂肪吸収の平均百分率は、プラセボを受けた患者の62.76%に対して88.28%だった。窒素吸収の平均百分率は、プラセボを摂取した患者の65.7%に対して87.2%であり、1日当たりの大便の平均回数はそれぞれの患者群で2.66回から1.77回に減少した。
【0177】
(実施例13)
US内の11のCF治療センターで7歳未満の19人のCF患者についての非盲検研究で小児科の第3相臨床試験を行って、表34の組成物による治療の効果を評価した。外分泌性膵臓機能不全の若年小児および幼児について、この規模の最初の膵臓補充療法試験を行った。研究デザインは7日の用量安定化期間後に7日の治療期間を含み、患者は、毎日1カプセル当たり5,000リパーゼ単位を受け、必要に応じて食物の上に振り掛ける製品を用いた。この研究の主要エンドポイントは、「レスポンダー」、つまり1および2週間の治療後に大便中に過剰の脂肪がない患者および吸収不良の徴候と症状のない患者の割合だった。二次エンドポイントは、体重の変化、栄養状態、大便の頻度と堅さ、腹部膨満、疼痛および鼓腸の発生ならびに臨床症状改善の医師および親または保護者の判断を包含した。製品の安全性も評価した。
【0178】
検診時(患者が以前の膵臓酵素補充療法中であり、かつ治療前の安定化期間の最初)には、研究プロトコルで定義されたとおりに、レスポンダーの平均百分率は52.6%だった。安定化期間の最後および治療期間の最後には、レスポンダーの平均百分率はそれぞれ66.4%および57.9%だった。この研究における子供に共通して、吸収不良症状が検診時よりも治療期間の最後で有意に減少した。これは、上記実施例12で述べた第3相試験で見られた吸収不良症状の制御に関する観察と一致している。本発明のパンクレリパーゼ組成物はこれらの患者によっても良く耐えられ、試験中に薬物に関連する重篤な有害事象が観察されなかった。
【0179】
この結果は、本発明の組成物が吸収不良の徴候および症状を効果的に制御することを示し、また実施例12で述べた極めて重要な第3相試験で得られた結果を支持している。有意な割合の医師および患者が、本発明の組成物による症状の制御は以前の療法に対して向上していると感じた。
【0180】
(実施例14)
第3相非盲検無作為化単一センター単一治療交差研究を行って表34のパンクレリパーゼ組成物による治療の効果を比較して、外分泌性膵臓機能障害を伴う10人の慢性膵臓炎患者の食物供給条件における該パンクレリパーゼ組成物の胃腸バイオアベイラビリティを決定した。研究に入る7日前に、排他性薬物(プロトンポンプインヒビター(PPI))、制酸剤、およびGI移動性を変えうる薬物を中断した。患者を無作為化して、1手順当たり、Ensure Plus(商標)(Abbottから入手可能なビタミン強化栄養補助食品)のみかまたは75,000USPリパーゼ単位(それぞれ20,000単位を含む3個のカプセルとそれぞれ5000単位を含む3個のカプセル)と組み合わせたEnsure Plus(商標)のどちらかを受けさせた。投与直前にカプセルを開いてその中身を480mLのEnsure Plus(商標)と混合した。1日の洗い出し期間後、以前にEnsure Plus(商標)のみを受けた患者は75,000USPリパーゼ単位と組み合わせたEnsure Plus(商標)を受け、以前にEnsure Plus(商標)とリパーゼの組合せを受けた患者はEnsure Plus(商標)のみを受けること以外、この手順を繰返した。次の日、患者は身体検査を受け、血液および尿の試料を収集した。Ensure Plus(商標)の存在下の組成物の投与後に十二指腸内で放出および回収されたそれぞれの酵素(すなわち、リパーゼ、アミラーゼ、およびキモトリプシン)の量から本発明の組成物のバイオアベイラビリティを推定した。コレシストキニンの血中レベルの測定を行い、胃および十二指腸のpHをも測定した。Carriere,F,;Barrowman,J.A.;Verger,R.;Laugier,R.「ヒトにおける試験食事中の胃および膵臓のリパーゼの分泌と脂肪分解に対する寄与(Secretion and contribution to lipolysis of gastric and pancreatic lipases during a test meal in humans)」、Gastroenterology 1993、105、876〜88頁の方法に従ってリパーゼ活性を測定した。Carriere,F.;Grandval,P.;Renou,C.;Palomba,A.;Prieri,F.;Giallo,J;Henniges,F.;Sander-Struckmeier,S.;Laugier, R.「慢性膵臓炎における消化酵素の分泌および胃腸の脂肪分解の定量研究(Quantitative study of digestive enzyme secretion and gastrointestinal lipolysis in chronic pancreatitis)」、Clin.Gastroenterol.Hepatol.2005、3、28〜38頁に記載の方法に従ってアミラーゼおよびキモトリプシンを測定した。
【0181】
本発明のパンクレリパーゼ組成物による治療により、Ensure Plus(商標)のみを受けた患者に比し、Ensure Plus(商標)とパンクレリパーゼの組合せを受けた患者の十二指腸内で統計的に有意に多量のアミラーゼ、リパーゼおよびキモトリプシンの放出がもたらされることが分かった(交絡因子としてpHを補正した後)。
【0182】
このプロトコルに従って研究を完了した8人の患者についてのリパーゼ、アミラーゼおよびキモトリプシンの平均バイオアベイラビリティはそれぞれ27.5%、21.6%および40.1%だった。患者は、2つの異なるGIpH亜集団(「正常pH」および「低pH」)に分類されることが分かった。「正常pH」値を有する患者(すなわち、十二指腸の平均pHが4より高い患者)では、リパーゼ、アミラーゼおよびキモトリプシンの平均バイオアベイラビリティが研究群全体より高く、それぞれ45.6%、26.9%および47.7%だった。2つの治療間でコレシストキニン値には差異が観察されなかった。
【0183】
「正常pH」および「低pH」患者では、リパーゼ、アミラーゼ、およびキモトリプシンについて(特にリパーゼについて)のバイオアベイラビリティが異なることから、例えば、「低pH」患者では、GIpHを高める薬物、例えばPPIおよび制酸剤の併用投与によって、本発明のパンクレリパーゼ組成物または剤形の効力を向上させることができる。しかしながら、本発明の組成物または剤形を例えば、PPIの併用投与なしで投与してもよい。
【0184】
本発明の前述の記載は、例示および説明の目的のために提示したものである。排他的または開示した明確な形態に本発明を限定するつもりはない。上記教示に照らして修正および変更が可能である。実施形態の記載は、本発明の原理および本発明の実際の適用を説明および記載するために選択されたものであり、特許請求の範囲に関する限定であることを意味しない。
【0185】
本明細書で引用したすべての刊行物および特許または特許出願は、それぞれ個々の刊行物、特許、または特許出願が参照によって具体的かつ個々に指示され、組み込まれたような程度に、その内容全体が参照によって本明細書に組み込まれる。