(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車体側のストライカに係合してドアを閉鎖位置に保持するためのロック構成部品を収容するケースと、前記ロック構成部品を収容した前記ケースの開口部を閉塞するカバーとを有し、車両のドア内に固定されるロックケースを備え、
前記ドアのインナパネルに対向配置される前記ロックケースの一側面には、軟質の防水シールが貼着され、さらに、該一側面には、前記貼着される防水シールの貼着方向で一端側を保持する保持部材が設けられており、
前記保持部材は、前記ケースと前記カバーとの間の隙間を被覆するように前記ロックケースに取り付けられる防水カバーの一部を延出して形成したシール狭持部によって構成されることを特徴とする車両用ロック装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような防水シールは、例えば軟質のスポンジ等で形成されるが、その貼着は両面接着テープ等によって行われるため、接着面での油やごみ等により接着不良を生じる可能性があり、十分な防水性が確保できないことがあった。そこで、上記特許文献1記載の構成では、防水シールの端部をボディの車内側側面から後面へと折り曲げて延在させ、ボディの後面を閉塞するカバープレートの内側に防水シートの端部を挟み込むことで、該防水シールの保持強度を向上させている。
【0006】
ところが、このような構成の場合、防水シールは、車両用ロック装置をドアに取り付けた状態で車内側となるボディの車内側側面が貼着面となり、ボディの後面がカバープレートによる挟持面(保持面)となっている。このため、当該車両用ロック装置の製造完了時、つまり、車両用ロック装置を車両に組み込む前に、これら貼着面と挟持面との間の略直角に形成されたボディの角部近傍で防水シールが潰れた状態となってしまうため、この潰れた部分では防水性が低下するという問題がある。しかも、貼着面と挟持面とが互いに直交した位置にあるため、防水シールの貼着作業及び挟持作業をボディの向きを転換させながら行う必要があり、作業性が悪い。
【0007】
本発明は、上記従来技術の課題を考慮してなされたものであり、高い防水性を得ることができ、さらに、防水シールの取付作業の作業性も向上させることができる車両用ロック装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る車両用ロック装置は、車体側のストライカに係合してドアを閉鎖位置に保持するためのロック構成部品を収容するケースと、前記ロック構成部品を収容した前記ケースの開口部を閉塞するカバーとを有し、車両のドア内に固定されるロックケースを備え、前記ドアのインナパネルに対向配置される前記ロックケースの一側面には、軟質の防水シールが貼着され、さらに、該一側面には、前記貼着される防水シールの貼着方向で一端側を保持する保持部材が設けられ
ており、前記保持部材は、前記ケースと前記カバーとの間の隙間を被覆するように前記ロックケースに取り付けられる防水カバーの一部を延出して形成したシール狭持部によって構成されることを特徴とする。
【0009】
このような構成によれば、ロックケースの一側面に貼着される防水シールを、同一の一側面上で当該防水シールの貼着方向に沿った状態で保持部材によって保持することにより、車両用ロック装置の車両への組み込み前に、防水シールが剥がれてしまうこと、及び、ロックケースの車内側側面から後面へと続く角部近傍で防水シールが潰れてしまうことを防止できるため、高い防水性を確保することができる。しかも、防水シールの保持部材による保持面と、その貼着面とが、同一の一側面にあるため、防水シールの保持作業と貼着作業とを装置の向きを転換させることなく行うことができ、作業性が高い。
【0010】
前記防水シールの前記一端側を、該防水シールの防水機能の確保のために必要な長さよりも延出させて保持端部とし、前記保持部材は、前記保持端部を保持するようにするとよい。この場合、保持部材で保持される防水シールの一端側は、防水性に対する影響がない又はほとんどない部分となっているため、保持部材で防水シールの一端側を潰しても防水性に影響が出ることを回避できる。
【0011】
前記防水シールは、前記ロックケースの前記ドア内への取付状態で前記ストライカが進入するストライカ進入溝よりも上方を渡る位置に貼着されると、ストライカ進入溝への雨水等の浸入をより確実に防止することができる。
【0012】
前記保持部材は、前記ケースと前記カバーとの間の隙間を被覆するように前記ロックケースに取り付けられる防水カバーによって構成されるとよい。すなわち、通常、防水カバーの取付作業は、ロックケースの各部の組み立て作業の最終工程又は各種ケーブル等の接続作業等を除く実質的な最終工程として行われるものであり、この防水カバーの取付作業を行った後、最終工程として防水シールの貼着作業及び保持作業を行うことができるため、防水シールの取付作業を単独で行うことができ、作業性を向上させることができる。
【0013】
この場合、前記保持部材は、前記防水カバーの一部を延出して形成したシール挟持部を有すると共に、該シール挟持部によって前記防水シールを前記ロックケースの一側面との間に挟持可能であると、作業性を一層向上させることができる。
【0014】
また、前記シール挟持部の先端には、前記ロックケースと係合可能な係合部が設けられると、防水シールをより確実に保持しておくことができ、しかも作業も容易となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ロックケースの一側面に貼着される防水シールを、同一の一側面上で当該防水シールの貼着方向に沿った状態で保持部材によって保持することにより、車両用ロック装置の車両への組み込み前に、防水シールが剥がれてしまうこと、及び、ロックケースの車内側側面から後面へと続く角部近傍で防水シールが潰れてしまうことを防止できるため、高い防水性を確保することができる。しかも、防水シールの保持部材による保持面と、その貼着面とが、同一の一側面にあるため、防水シールの保持作業と貼着作業とを装置の向きを転換させることなく行うことができ、作業性が高い。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る車両用ロック装置について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る車両用ロック装置10の後方斜視図である。
図2は、
図1に示す車両用ロック装置10の車内側側面図であり、
図3は、
図1に示す車両用ロック装置10の後面図である。
【0019】
以下、車両用ロック装置10を車両に取り付けた状態において、
図3中の左方を「車内側(I)」、右方を「車外側(O)」、上方を「上方(U)」、下方を「下方(D)」、図面奥側を「前方(F)」、図面手前側を「後方(R)」として説明し、他の実施形態についても同様とする。これらの方向の定義は説明の便宜上のものであり、車両用ロック装置10の向きは、その取付車種や取付位置等によって変化することは勿論である。
【0020】
この車両用ロック装置10は、車両のフロントドア内に取り付けられ、該フロントドアを閉鎖位置に保持しておくための装置である。
図1〜
図3に示すように、車両用ロック装置10は、フロントドアの車内側を形成するインナパネルDfにおける後端パネルD1の内面に複数のボルト(図示せず)によって固定される噛合ユニット12と、噛合ユニット12に取り付けられる操作ユニット14と、これら噛合ユニット12と操作ユニット14とを収容するロックケース16とを備える。車両用ロック装置10は、車両のフロントドアに設けられ、ドア形状により車両の前後方向、及び車両レイアウトにより左右方向に対して若干の角度を持って取り付けられる。
【0021】
噛合ユニット12は、ボルトにより後端パネルD1に固定される合成樹脂製のボディ本体部17と、ボディ本体部17の後側に固定される金属製のカバープレート部18とから構成されるボディ20を備え、このボディ20が、一部が露出した状態でロックケース16を構成するケース22内に収容される。
【0022】
ボディ本体部17とカバープレート部18とによって形成される収容空間部、すなわちボディ20の内部空間には、車体側に固着されたストライカ(図示せず)と係合することによってドアを閉鎖状態に保持可能な噛合機構24が収容される。ボディ20には、インナパネルDfの内面に対向する車内側側面(一側面)20aと、車内側側面20aに略直角に連続し後端パネルD1の内面に対向する後面20bとに渡るように、ドアの閉鎖時にストライカが進入するストライカ進入溝26が設けられている。
【0023】
噛合機構24は、ボディ20内に前後方向の軸27により枢支され、ストライカと係合可能なラッチ28と、ボディ20内に前後方向を向く軸29により枢支され、ラッチ28に係脱可能なラチェット(図示せず)とを含み、公知のラッチ・ラチェット機構を用いればよい。このような噛合機構24では、ドアが閉じられると、車体側のストライカがストライカ進入溝26に進入してラッチ28に係合すると共に、ラチェットがラッチ28に対してその開き方向への回動を阻止する方向に係合することでドアを閉鎖状態に拘束する。また、図示しないキーシリンダやハンドル等の操作により、ラッチ28とラチェットの係合状態を解除し、ドアの閉鎖状態を解除することができる。
【0024】
操作ユニット14は、一部を露出した状態で噛合ユニット12を収容するロックケース16を備え、ロックケース16の内部空間には、図示しない各種レバー等の機構部品や、接続端子群及びモータ等の電気部品等が収容配置される。
【0025】
ロックケース16は、ボディ20と固定される平面視略L字状の合成樹脂製のケース22と、ケース22に形成される収容空間部を閉塞する合成樹脂製のカバー30と、ケース22内への雨水等の浸入を防止するための合成樹脂製のウォータプルーフカバー(防水カバー、保持部材)32とを備える。
【0026】
ケース22は、ボディ20の車内側側面20a及び後面20bを露出させて該ボディ20の上面、前面及び車外側側面を覆うと共に、ボディ20の車内側側面20aに平行な面を有して車内側を向く開口部を設けた収容空間が形成され、該収容空間に前記機構部品や電気部品等が配置された状態で、前記開口部がカバー30によって閉塞される。
【0027】
カバー30は、ケース22の開口部を閉塞するようにボルト34や各種係合部材によって該ケース22に対して取り付けられる。カバー30の下部には、ヒンジ36によって車内側へと回動して開閉可能な補助カバー38が設置されている。補助カバー38は、カバー30の車内側側面(一側面)30aの下端に形成されたケーブル保持部40を覆うためのものである。ケーブル保持部40には、図示しないロックノブからロックケース16内に配置されるロックレバーへと接続されるケーブル41と、図示しないインサイドハンドルからロックケース16内に配置されるインサイドレバーへと接続されるケーブル42とが配設されている。
【0028】
カバー30の車内側側面30aの中段前方寄りには、後述する防水シールS1を保持するために、ウォータプルーフカバー32から突出するシール挟持部(保持部材)44の係合部46が係合可能な係合孔部48が開口している。
【0029】
図5に示すように、カバー30の車内側側面30aには、係合孔部48に係合した状態にある係合部46を取り囲むように凹状をした凹部51が一体的に形成されている。凹部51は、係合孔部48から入り込んだ雨水等がケース22内へと浸入することを防止するためのものである。
【0030】
ウォータプルーフカバー32は、ロックケース16の周縁部に沿ったケース22とカバー30との接続部からの雨水等の浸入を防止するために、当該ロックケース16の最上部の尾根を覆うように取り付けられる防水カバーである。
図1〜
図4に示すように、ウォータプルーフカバー32は、略U字状に形成されることで、ケース22とカバー30との接続部の上面及びその前後肩部を挟み込み、該接続部の隙間からのケース22内への雨水等の浸入を防止することができる。
【0031】
ウォータプルーフカバー32の前方側下部には、カバー30の車内側側面30aに沿って後方へと斜め下方に延びるシール挟持部44が一体的に形成されて突出している。
図2に示すように、本実施形態の場合、シール挟持部44は、車内側側面30aと平行した状態で、ウォータプルーフカバー32の前方側下端からカバー30の車内側側面30aに形成された滑り止め部49の下端に沿って僅かに下方へと下がりながら後方へと延びた後、さらに下方へと屈曲して後方へと延在している。シール挟持部44の先端には、車外側へと屈曲して、つまりカバー30の車内側側面30aに向って突き出す係合部46が設けられている。係合部46は、係合孔部48に係合可能な爪部である。
【0032】
図2、
図4及び
図5に示すように、シール挟持部44は、カバー30の車内側側面30aに貼着された長尺帯状の防水シールS1の一端側を、当該車内側側面30a上で保持する保持部材として機能するものである。
【0033】
図4中に2点鎖線で示すように、シール挟持部44は、その根元部分をヒンジとして弾性変形可能である。シール挟持部44を車内側へと引き寄せた状態で(
図4中の2点鎖線参照)、その内面(車外側面)に防水シールS1の一端側を配置した後、車外側へと押し込んで係合部46をカバー30の車内側側面30aに開口する係合孔部48へと係合させる(
図4中の実線及び
図5参照)。これにより、シール挟持部44の内面と車内側側面30aとの間で、防水シールS1の一端側を潰して挟持することができる。この際、シール挟持部44の内面の中央付近には、車外側に向って膨出するリブ45が延在形成されているため、防水シールS1をより強く圧迫して確実に押さえ込むことができる。
【0034】
このようなシール挟持部44によって保持される防水シールS1は、当該車両用ロック装置10の後面から車内側側面30aへと貼着される柔軟な帯状のシール部材であり、例えば、裏面に両面テープや接着剤等が設けられ、十分な厚みを持ったスポンジである。
【0035】
防水シールS1は、その一端側がカバー30の車内側側面30a上でシール挟持部44によって保持されると共に、該車内側側面30a上に両面テープ等で貼着されてストライカ進入溝26の上方を渡って斜め上方へと後方に延びた後、ボディ20とロックケース16(ボディ30及びケース22)との間の接続部を覆いながら後面へと折り曲げられた後、他端側はボディ20の車外側端部に沿って下方へと延びてストライカ進入溝26の側部までを覆うように貼着されている。
【0036】
図2及び
図3から諒解されるように、車両用ロック装置10がドアに取り付けられた状態で、防水シールS1は、その車内側側面30aに貼着された部位がインナパネルDfとの間で圧迫されて潰され、さらにその後面に貼着された部位が後端パネルD1との間で圧迫されて潰されることで、当該車両用ロック装置10の車内側側面や後面とインナパネルDfや後端パネルD1との間の隙間を埋めて、上方からのストライカ進入溝26等への雨水等の浸入を防止する。
【0037】
以上のように、本実施形態に係る車両用ロック装置10によれば、車体側のストライカに係合してドアを閉鎖位置に保持するためのロック構成部品である噛合機構24等を収容するケース22と、この噛合機構24等を収容したケース22の開口部を閉塞するカバー30とを有し、車両のドア内に固定されるロックケース16を備え、ドアのインナパネルDfに対向配置されるロックケース16の一側面である車内側側面30aには、軟質の防水シールS1が貼着され、さらに、該車内側側面30aには、貼着される防水シールS1の貼着方向で一端側を保持する保持部材として、シール挟持部44が設けられる。
【0038】
すなわち、ロックケース16の一側面である車内側側面30aに貼着される防水シールS1を、同一の一側面である車内側側面30a上で当該防水シールS1の貼着方向に沿った状態で保持部材であるシール挟持部44によって保持する。これにより、車両用ロック装置10の車両への組み込み前に、防水シールS1が剥がれてしまうこと、及び、ロックケース16の車内側側面30aから後面へと続く角部近傍で防水シールS1が潰れてしまうことが防止されるため、高い防水性を確保することができる。しかも、作業時に手で掴んだ車両用ロック装置10が滑ることを防止可能な滑り止め部(滑り防止面)49と、防水シールS1の保持部材(シール挟持部44)による保持面と、その貼着面とが、同一の一側面である車内側側面30aにあるため、防水シールS1の保持作業と貼着作業とを装置の向きを転換させることなく行うことができ、作業性が高い。
【0039】
一般に、車両用ロック装置は、その製造後、所定の搬送ボックス等に配置されて、車両のアセンブリメーカーへと輸送(出荷)されることが一般的であり、この際、当該車両用ロック装置10では、その後面(ボディ20の後面20b)を前記搬送ボックスの底面に当てた状態で起立収納される。つまり、車両用ロック装置10は、
図2の前方側が搬送ボックスへの収納状態では上方となり、後方側が下方となった状態で搬送ボックス内に並べられて輸送されることになる。このため、後面側に貼着された防水シールS1の他端側は、搬送ボックスの底面によって押さえつけられるために輸送時等に剥がれることが防止されると共に、搬送ボックスの底面に対して鉛直な壁面となる車内側側面30aに貼着された防水シールS1の一端側は、保持部材であるシール挟持部44によってその先端側が保持されているため、輸送時等に剥がれて捲れることを防止できる。
【0040】
また、防水シールS1の前記一端側を、該防水シールS1の防水機能の確保のために必要な長さ、例えば、当該車両用ロック装置10の車両取付状態でストライカ進入溝26の上方を渡る長さLの部分(
図2参照)よりも延出させて保持端部とし、この保持端部を保持部材であるシール挟持部44によって保持するようにしている。すなわち、シール挟持部44で挟持して潰す防水シールS1の一端側は、防水性に対する影響がない又はほとんどない部分となっているため、シール挟持部44で潰しても防水性に影響が出ることを回避できる。なお、本実施形態では、長さLの部分を車両取付状態でストライカ進入溝26の上方としたが、防水機能の確保が必要な箇所に応じて適宜防水シールS1の長さ及び経路を変更してもよい。
【0041】
防水シールS1は、ロックケース16のドア内への取付状態でストライカ進入溝26よりも上方であると共に、噛合機構24とロックケース16やボディ20との間の隙間を渡る位置に貼着されるため(
図1等参照)、噛合機構24とロックケース16やボディ20との間の隙間やストライカ進入溝26への雨水等の浸入を防止することができる。
【0042】
本実施形態では、防水シールS1の一端側を保持する保持部材を、ケース22とカバー30と間の隙間を被覆するようにロックケース16に取り付けられる防水カバーであるウォータプルーフカバー32によって構成している。すなわち、ウォータプルーフカバー32の取付作業は、ロックケース16の各部の組み立て作業の最終工程又はケーブル41等の接続作業等を除く実質的な最終工程として行われるものであり、このウォータプルーフカバー32の取付作業を行った後、最終工程として防水シールS1の貼着作業及び保持作業を行うことができるため、防水シールS1の取付作業を単独で行うことができ、作業性を向上させることができる。
【0043】
この際、前記保持部材は、ウォータプルーフカバー32の一部を延出して形成したシール挟持部44を有すると共に、該シール挟持部44によって防水シールS1をロックケース16の一側面である車内側側面30aとの間に挟持可能であるため、作業性を一層向上させることができる。また、シール挟持部44の先端に、ロックケース16(の係合孔部48)と係合可能な係合部46を設けたことにより、より確実に防水シールS1を保持しておくことができ、しかも作業も容易となる。
【0044】
図6及び
図7に示すように、シール挟持部44における防水シールS1の貼着方向で先端側に、車内側側面30aに向って傾斜した傾斜面47を設けてもよい。この傾斜面47を設けることにより、シール挟持部44では、防水シールS1の先端部を袋状に包み込むように挟持できるため、防水シールS1の保持作業時の位置決めが容易となり、作業性が一層向上する。また、傾斜面47を設けることにより、シール挟持部44と車内側側面30aとの隙間を袋状に包み込むように挟持することで、物当たり等によるシール挟持部44の外れを防止することができる。
【0045】
車両用ロック装置10は、
図8に示すように、ウォータプルーフカバー32に設けたシール挟持部44に代えて、カバー30の車内側側面30aにシール挟持部(保持部材)44aを設けた車両用ロック装置10aとして構成してもよい。つまり、車両用ロック装置10aでは、カバー30が保持部材として機能する。従って、車両用ロック装置10aでは、カバー30にシール挟持部44aを設けたことにより、該カバー30の車内側側面30aへの防水シールS1の貼着作業と、シール挟持部44aでの保持作業とを同時並行的に行うことができるため、作業効率が向上する。
【0046】
図9(A)に示すように、車両用ロック装置10aのシール挟持部44aは、係合部46を省略し、代わりに係合孔部48aを先端部に形成したシール挟持部441aとして形成してもよい。
図9(B)に示すように、シール挟持部441aでは、カバー30の車内側側面30aに立設された爪部である係合部46aに係合孔部48aを係合させることにより、防水シールS1を保持することができる。なお、
図9では、リブ45を省略した構成を例示しているが、当該シール挟持部441aについてリブ45を設けても勿論よい。このような係合孔部48aを形成したシール挟持部441aは、
図2に示すウォータプルーフカバー32に設けたシール挟持部44に代替させてもよく、この場合にも、ウォータプルーフカバー32に設けたシール挟持部441aの係合孔部48aに、カバー30の車内側側面30aに立設した係合部46aを係合させる構成とすればよい。このような構成とすることで、カバー30の係合孔部48からケース22内への雨水等の浸入を防止するための凹部51を設けなくてよいため、カバー30の構造を簡素化することができる。
【0047】
図10及び
図11に示すように、車両用ロック装置10aのシール挟持部44aは、カバー30ではなく、ウォータプルーフカバー32に形成した係合孔部48bに係合部46を係合させる構成としたシール挟持部442aとして形成してもよい。このような係合孔部48bは、ウォータプルーフカバー32以外、例えば補助カバー38に設けてもよい。このような構成としても、カバー30の係合孔部48からケース22内への雨水等の浸入を防止するための凹部51を設けなくてよいため、カバー30の構造を簡素化することができる。
【0048】
車両用ロック装置10は、
図12及び
図13に示すように、ウォータプルーフカバー32に設けたシール保持部44に代えて、補助カバー38の外面(車内側側面)にシール挟持部(保持部材)44bを設けた車両用ロック装置10bとして構成してもよい。つまり、車両用ロック装置10bでは、補助カバー38が保持部材として機能する。従って、車両用ロック装置10bでは、ケーブル保持部40を覆う補助カバー38にシール挟持部44bを設けたことにより、例えば、ケーブル41、42等の接続作業を当該車両用ロック装置10bの最終工程としている場合に、この接続作業と略同時に防水シールS1の保持作業及び貼着作業を行うことができるため、作業効率が向上する。
【0049】
勿論、この車両用ロック装置10bについても、
図9に示される構成例と同様に、シール挟持部44bに代えて、シール挟持部441aを補助カバー38に形成し、カバー30の車内側側面30aに立設された係合部46aにシール挟持部441aの係合孔部48aを係合させる構成としてもよい。
【0050】
図14は、本発明の第2の実施形態に係る車両用ロック装置50の車内側側面図である。
【0051】
本実施形態に係る車両用ロック装置50は、車両のリアドア内に取り付けられて該リアドアを閉鎖位置に保持しておくための装置である以外の点は、上記第1の実施形態に係る車両用ロック装置10(10a、10b)と同一又は略同一であるため、以下では、その相違点のみを説明し、車両用ロック装置10(10a、10b)の各要素と同一又は同様な機能及び効果を奏する要素には同一の参照符号を付して詳細な説明を省略する。
【0052】
図14に示すように、この車両用ロック装置50は、車両のリアドア内に取り付けられ、該リアドアを閉鎖位置に保持しておくための装置であり、リアドアの車内側を形成するインナパネル(図示せず)及びその後端パネルD2に取り付けられるものであり、上記の車両用ロック装置10のロックケース16と多少形状の異なるロックケース52を備えて構成されている。車両用ロック装置50は、図示しない車両の後輪周りのホイールハウス部分を切り欠いた形状からなるリアドアに設けられるため、上記の車両用ロック装置10に比べて、車両の前後方向に対して大きな角度を持って取り付けられると共に、車両レイアウトにより車両の左右方向に対しても若干の角度をもって取り付けられる。
【0053】
ロックケース52は、ボディ20と固定される平面視略L字状の合成樹脂製のケース54と、ケース54に形成される収容空間部を閉塞する合成樹脂製のカバー56と、ケース54内への雨水等の浸入を防止するための合成樹脂製のウォータプルーフカバー(防水カバー、保持部材)58とを備える。これらケース54、カバー56及びウォータプルーフカバー58は、上記の車両用ロック装置10のケース22、カバー30及びウォータプルーフカバー32と多少形状が異なるが、基本的には同一又は同様な機能を有する。
【0054】
この車両用ロック装置50においても、上記の車両用ロック装置10と略同様に、ウォータプルーフカバー58の略中央下部に、カバー56の車内側側面56aに沿って後方へと斜め下方に延びるシール挟持部(保持部材)60が一体的に形成されて突出している。
図14に示すように、本実施形態の場合、シール挟持部60は、車内側側面56aと平行にした状態で、ウォータプルーフカバー58の下端から下方へと延びた後、屈曲して下方へと下がりながら後方へと延在している。
【0055】
シール挟持部60には、上記の車両用ロック装置10のシール挟持部44と同様に、カバー56の車内側側面56aに形成された係合孔部48に係合可能な係合部46と、リブ45とが設けられる。これにより、シール挟持部60は、カバー56の車内側側面56aに貼着された長尺帯状の防水シールS2の一端側を、当該車内側側面56a上で保持する保持部材として機能する。
【0056】
防水シールS2は、上記の防水シールS1と比べて、その長さや貼着方向等が異なる以外は同じものであり、
図14に示すようなロックケース52のドア内への取付状態でストライカ進入溝26よりも上方を渡る位置に貼着される。
【0057】
なお、
図14に示すように、本実施形態に係る車両用ロック装置50において、補助カバー38は、一方のケーブル41のみを保持する構成となっており、他方のケーブル42は、ウォータプルーフカバー58の内部で保持している。
【0058】
以上のように、この実施形態に係る車両用ロック装置50においても、車体側のストライカに係合してドアを閉鎖位置に保持するためのロック構成部品である噛合機構24等を収容するケース54と、この噛合機構24等を収容したケース54の開口部を閉塞するカバー56を有し、車両のドア内に固定されるロックケース52を備え、ドアのインナパネルDrに対向配置されるロックケース52の一側面である車内側側面56aには、軟質の防水シールS2が貼着され、さらに、該車内側側面56aには、貼着される防水シールS2の貼着方向で一端側を保持する保持部材として、シール挟持部60が設けられる。従って、上記の車両用ロック装置10と同様に、高い防水性と、高い作業性とを得ることができる。
【0059】
また、防水シールS2の一端側を、該防水シールS2の防水機能の確保のために必要な長さ、例えば、当該車両用ロック装置50の車両取付状態でストライカ進入溝26の上方を渡る長さLの部分(
図14参照)よりも延出させて保持端部とし、この保持端部を保持部材であるシール挟持部60によって保持することにより、防水性を一層向上させることができる。
【0060】
勿論、当該車両用ロック装置50についても、
図6及び
図7に示される構成例と同様に、シール挟持部60における防水シールS2の貼着方向で先端側に、車内側側面56aに向って傾斜した傾斜面47を設けてもよい。
【0061】
また、車両用ロック装置50についても、
図15に示すように、ウォータプルーフカバー58に設けたシール挟持部60に代えて、カバー56の車内側側面56aにシール挟持部(保持部材)60aを設けた車両用ロック装置50aや、
図16に示すように、ウォータプルーフカバー58に設けたシール保持部60に代えて、補助カバー38の外面(車内側側面)にシール挟持部(保持部材)60bを設けた車両用ロック装置50bとして構成してもよい。つまり、車両用ロック装置50a、50bでは、カバー58、補助カバー38が保持部材として機能する。
【0062】
さらに、車両用ロック装置50、50a、50bについても、
図9〜
図11に示される構成例と同様に、係合孔部48aを形成したシール挟持部441aをウォータプルーフカバー58やカバー56の車内側側面56aに設け、係合部46aをカバー56の車内側側面56aに設けてもよく、また、ウォータプルーフカバー58や補助カバー38に係合孔部48bを設け、カバー56にシール挟持部442aを設けた構成としてもよい。
【0063】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【0064】
例えば、上記各実施形態では、噛合機構24を収容したボディ20をロックケース16(52)に収容した構成を例示したが、ボディ20は、ロックケース16(52)と一体成形、例えばケース22(54)と一体成形した構成としてもよい。つまり、当該車両用ロック装置10、10a、10b、50、50a、50bにおいて、車体側のストライカと係合してドアを閉鎖位置に保持するためのロック構成部品、例えば噛合機構24や、前記の機構部品及び電気部品等が、ボディ20を介さずに、インナパネルとの間で防水シールを挟持するロックケースに対して直接的に支持されていてもよい。
【0065】
上記各実施形態では、右側のドアに取り付けられる車両用ロック装置10、10a、10b、50、50a、50bを例示して説明したが、このような車両用ロック装置10、10a、10b、50、50a、50bを左側のドアに取り付ける場合には、車両前後方向に沿った平面に対して左右対称に構成すればよい。