【実施例】
【0012】
図1に、本発明の応力分布測定装置の構成図を示す。応力分布測定装置は、光源部1と、拡散板2と、偏光子3と、検光子5と、フィルタ6と、撮像素子7と、制御信号処理部8、と入力部9と、表示部10などで構成する。試料4は、偏光子3と、検光子5との間に配置する。
【0013】
光源部1は、多波長光を構成するためにRed、Green、BlueのLEDと、一枚でRed、Green、Blueの干渉フィルタの機能を有するRGB干渉フィルタを使用する。本実施形態では、複数枚のカラー位相シフト画像の光強度から各波長の相対縞次数を求めて、それらをもとに絶対縞次数を決定するため、光源部1の出射光は同じ点で輝度が時間変動しないように安定化されていて、強度レベルをそろえるために、各波長独立に調整できるものを使用する。
【0014】
拡散板2は、光源部1の出射光を拡散し、輝度むらを低減する機能を持つ。
【0015】
偏光子3と、検光子5にて平面偏光器が構成され、この間に試料4を置いて光を透過させれば、等色線縞と等傾線縞が重なった状態のカラー光弾性縞が得られる。
【0016】
フィルタ6は、一枚でRed、Green、Blueの干渉フィルタの機能を有するRGB干渉フィルタを使用する。カラーCCDカメラやカラーCMOSカメラの前に取付けることで、Red、Green、Blueの波長クロストークの影響を低減する機能を持つ。その相対スペクトル応答の模式図を
図2に示す。
【0017】
撮像素子7は、カラーCCDカメラやカラーCMOSカメラなどで構成され、上記で得られるカラー光弾性縞の輝度分布をデジタル信号に変換する機能を持つ。
【0018】
制御/信号処理部8は、パーソナルコンピュータなどで構成され、偏光子3と、検光子5を指定角度に回転させながら、撮像素子6にて撮像するタイミングなどを制御し、得られたカラー位相シフト画像のデジタル信号をメモリに記憶して、その信号から試料4の三つの波長の相対縞次数と主応力方向を演算で求め、さらに、絶対縞次数校正曲線を参照して、演算することにより絶対縞次数を各点独立して決定する。これにより、試料4の応力成分も測定可能となる。
【0019】
入力部9は、キーボードやポインティングデバイスなどで構成され、使用者が制御/信号処理部8へデータやコマンドを入力するために使用する。
【0020】
表示部10は、ディスプレイやプリンタなどで構成され、制御/信号処理部8からの演算結果などを使用者に表示する。
【0021】
本実施形態では、Red、Green、Blueの三つの波長を利用するカラー位相シフト光弾性法を採用している。この方法は、三つの波長それぞれの相対縞次数(0〜0.5次もしくは、0〜0.25次もしくは、0〜1.0次)と主応力方向が得られる。このような位相シフト光弾性法は、光弾性の分野で一般的によく使用されている方法のため、ここでは記述しない。
【0022】
次に、本発明の原理について詳しく説明する。まず校正曲線決定のため、
図1の構成にて既知の物体の例として四点曲げ負荷を受ける梁の実験をおこない、カラー位相シフト光弾性法により得られるRed, Green, Blueの三つの波長の相対縞次数を得る。その縞の例を
図3に示す。(a)はRedの相対縞次数を示す画像であり、(b)はGreenの相対縞次数を示す画像であり、(c)はBlueの相対縞次数を示す画像である。黒色は0次、白色は0.5次に相当し、これらの中間色はグレーで表示している。
【0023】
この四点曲げ負荷を受ける梁の場合は、中央垂直断面の絶対縞次数は梁中央の黒色部から上下方向に向かって直線的に増加して上下端で最大値をとる。
図3の中央垂直断面の中央の黒色部0次縞から、上方向のRed、Green、Blueの相対縞次数と、絶対縞次数との関係から作成できる絶対縞次数校正曲線を
図4に示す。これは、絶対縞次数が6次縞までの例である。
【0024】
この絶対縞次数校正曲線を作成し、制御信号処理部のメモリに保存しておけば、以下の関係式のEが最小となる相対縞次数の組み合わせを見つけることにより、各点独立して絶対縞次数を決定できる。
E = Wr(Rc−Re)^2 + Wg(Gc−Ge)^2 + Wb(Bc−Be)^2
ここで、Rc、Gc、Bcは、上記、梁の実験により得られる絶対縞次数校正曲線のRed、Green、Blueの相対縞次数であり、Re、Ge、Beは、解析したい試料の実験から得られるRed、Green、Blueの相対縞次数であり、Wr、Wg、Wbは、Red、Green、Blueの比率の重みづけをおこなう係数である。
【0025】
なお、本発明の絶対縞次数決定方法は、逆正接関数(ノコギリ波状分布)もしくは逆余弦関数(三角波状分布)で得られる縞次数どちらでも適用可能である。よって、使用する偏光器が円偏光器、半円偏光器、平面偏光器であっても対応できる。
【0026】
次に、上下対向集中圧縮荷重を受ける円板の場合の縞画像例を示す。
図5の(a)はRedの相対縞次数を示す画像であり、(b)はGreenの相対縞次数を示す画像であり、(c)はBlueの相対縞次数を示す画像である。黒色は0次、白色は0.5次に相当し、これらの中間色はグレーで表示している。
【0027】
図7(a)に、
図4の絶対縞次数校正曲線と上述の式により決定した絶対縞次数画像の例を示す。黒色は0次、白色は6次に相当し、これらの中間色はグレーで表示している。画像中の低次縞領域に高次の縞が割当てられており、決定誤差があることがわかる。
【0028】
これは、低次縞と高次縞で縞の勾配、密集度が異なることから、絶対縞次数校正曲線における相対縞次数の比率が近い点が出てくるためである。
【0029】
それを回避するために、低次縞と高次縞で絶対縞次数校正曲線の使用範囲を使い分けることとし、解析したい試料の縞の勾配、密集度が高い箇所を抽出して、マスク画像を作成する。
【0030】
そのマスク領域の抽出は、低次縞中に高次縞の孤立点が出ない絶対縞次数校正曲線の上限値を探すために、0〜1次、0〜2次縞と、校正曲線の範囲を変えながら、絶対縞次数を算出する。この例では、校正曲線の上限を4次未満とすれば、低次縞領域に高次縞の孤立点が少なくなるため、上限4次未満までの領域を黒色、それ以外の領域を白色で2値化した。その画像を
図6に示す。この前処理は、縞の勾配画像を求めて、適切なしきい値で2値化してもよい。なお、これらの前処理は、自動的に実施できる。
【0031】
マスク画像の黒色部を低次縞候補領域、白色部を高次縞候補領域とし、
図6のマスク画像の黒色部は0〜4次未満までの絶対縞次数校正曲線を使用し、
図6のマスク画像の白色部は0〜6次までの絶対縞次数校正曲線を使用して各点独立して決定した絶対縞次数の例を
図7(b)に示す。黒色は0次、白色は6次に相当し、これらの中間色はグレーで表示している。マスク処理をおこなうことにより6次の高次縞まで絶対縞次数を安定して決定できている例である。
【0032】
図8に主応力方向を示す。黒色は0°、白色は45°に相当し、これらの中間色はグレーで表示している。
【0033】
図9に発明した絶対縞次数決定法により得られた絶対縞次数と、それと同時に得られる主応力方向に、せん断応力差積分法を適用して得られた応力成分の分布例を示す。これは円板の半径をRとして、y=0.5Rの線に沿った分布である。理論値は円板の弾性論から得られる値である。この例から、本発明により応力成分を安定して決定できていることがわかる。