特許第5966210号(P5966210)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5966210フライホイールおよびその製造方法並びに発電装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5966210
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】フライホイールおよびその製造方法並びに発電装置
(51)【国際特許分類】
   F03G 3/00 20060101AFI20160728BHJP
   F03G 3/08 20060101ALI20160728BHJP
   H02K 7/02 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
   F03G3/00 E
   F03G3/08 B
   F03G3/08 D
   H02K7/02
【請求項の数】13
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-242373(P2015-242373)
(22)【出願日】2015年12月11日
【審査請求日】2015年12月11日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514223670
【氏名又は名称】株式会社Flyconver
(73)【特許権者】
【識別番号】513097942
【氏名又は名称】社本 博之
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100108785
【弁理士】
【氏名又は名称】箱崎 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】社 本 博 之
【審査官】 瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】 特開平1−206865(JP,A)
【文献】 特開2015−79671(JP,A)
【文献】 特開2012−41909(JP,A)
【文献】 特開2006−25468(JP,A)
【文献】 特開2010−216271(JP,A)
【文献】 特開2014−212622(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03G 3/00, 7/10
H01F 7/02
H02K 7/02,53/00
H02N 11/00
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能に設けられた回転軸と、
前記回転軸に固定され、前記回転軸とともに回転可能なロータと、
前記ロータに対向して配置され、回転しないステータと、
を備え、
前記ロータは、前記ステータに対向する第1面に設けられた複数の第1永久磁石を有し、
前記ステータは、前記ロータに対向する第2面に、前記第1永久磁石にそれぞれ対応して設けられ、前記第1永久磁石と同一極性の複数の第2永久磁石を有し、
前記第1永久磁石は、前記ステータに対向する第3面を除く表面の少なくとも一部がカーボンナノチューブで覆われ、
前記第2永久磁石は、前記ロータに対向する第4面を除く表面の少なくとも一部がカーボンナノチューブで覆われている、
ことを特徴とするフライホイール。
【請求項2】
前記第1永久磁石は、前記第3面が前記第2面との間で鋭角をなすように傾斜して前記ロータに設けられることを特徴とする請求項1に記載のフライホイール。
【請求項3】
前記第2永久磁石は、前記第1永久磁石に近接する側において、前記第4面の一部から側面を経由して底面の一部に至るまで延在するように設けられた金属ブロックをさらに備えることを特徴とする請求項2に記載のフライホイール。
【請求項4】
前記ステータは、前記第2面を除く表面のすくなくとも一部がカーボンナノチューブで覆われていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のフライホイール。
【請求項5】
前記前記ロータと前記ステータとの少なくともいずれかは、周縁側の厚さが前記回転軸側の厚さよりも厚いことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のフライホイール。
【請求項6】
前記前記ロータと前記ステータとの少なくともいずれかは、前記第1または第2永久磁石と前記回転軸との間に開口が設けられたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のフライホイール。
【請求項7】
電力を供給する充電可能なバッテリと、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載のフライホイールと、
前記バッテリから電力を供給されて前記回転軸を回転させるモータと、
前記ロータの運動エネルギを電気エネルギに変換して前記バッテリを充電する発電器と、
を備える発電装置。
【請求項8】
前記回転軸の軸方向に前記ステータを移動させて前記ロータと前記ステータとの間隔を調整する制御機構をさらに備えることを特徴とする請求項7に記載の発電装置。
【請求項9】
前記制御機構は、前記回転軸の回転数を検知するエンコーダと、前記エンコーダの検知結果に基づいて前記制御機構を作動させるコントローラを備えることを特徴とする請求項8に記載の発電装置。
【請求項10】
前記制御機構は、前記発電装置に接続される負荷を流れる電流量を検知する電流センサをさらに備え、
前記コントローラは、前記電流センサの検知結果から前記負荷の電力を算出し、前記回転軸の回転数および前記負荷の電力の少なくともいずれかに基づいて前記制御機構を作動させることを特徴とする請求項9に記載の発電装置。
【請求項11】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載のフライホイールの製造方法であって、
カーボンナノチューブの塗布、滴下、または吹きつけにより、前記第1および第2永久磁石の表面のうち前記第1および第2面を除く表面の少なくとも一部を、水系エポキシ樹脂に含まれた状態のカーボンナノチューブで覆う工程と、
前記第1および第2永久磁石上の前記カーボンナノチューブを熱圧着する工程と、
を備えるフライホイールの製造方法。
【請求項12】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載のフライホイールの製造方法であって、
複数の第1および第2磁気性金属チップに着磁を実行して前記第1および第2永久磁石を形成する工程と、
カーボンナノチューブの塗布、滴下、または吹きつけにより、前記第1および第2磁気性金属チップの表面のうち、第2および第1磁気性チップの対向面となる第1および第2面を除く表面の少なくとも一部を、水系エポキシ樹脂に含まれた状態のカーボンナノチューブで覆う工程と、
前記第1および第2磁気性金属チップ上の前記カーボンナノチューブを熱圧着する工程と、
前記第1磁気性金属チップの前記第1面が露出するように前記第1磁気性金属チップをロータの表面に回転対称に配設する工程と、
前記第2磁気性金属チップの前記第2面が露出するように、前記第2磁気性金属チップをステータの表面上で前記第1磁気性金属チップに対応する位置に配設する工程と、
を備え、
前記着磁は、前記第1磁気性金属チップの前記ロータへの配設および前記第2磁気性金属チップの前記ステータへの配設後に実行される、
ことを特徴とするフライホイールの製造方法。
【請求項13】
前記第1永久磁石または前記第1磁気性チップは、前記ステータとの対向面が、前記ステータの前記ロータとの対向面と水平な面との間で鋭角をなすように傾斜して前記ロータに配設されることを特徴とする請求項11または12に記載のフライホイールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フライホイールおよびその製造方法並びに発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フライホイールは、所定の慣性質量を有する独楽のような回転体を高速で回転させることにより、大きな運動エネルギを貯蔵することができるように構成されている。このようなフライホイールを用いた発電装置では、フライホイールが余剰な(または再生成された)電気エネルギを回転体の運動エネルギとして貯蔵し、発電器がこのフライホイールの運動エネルギを電力エネルギに変換して、蓄電池を充電する。蓄電池に蓄積された電力エネルギは、負荷の消費電力として再利用され得る。
【0003】
従来のフライホイールでは、ロータ側には永久磁石が使用されているが、ステータ側には電磁石が使用されているので、この電磁石へ交流電流を供給する手段をフライホイールの回転軸などに取り付ける必要があった。これにより、装置の構成が複雑になり、このことがフライホイールの小型化、汎用化の障害となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4926263号公報
【特許文献2】特許第5740760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、簡易な構成で大きな運動エネルギを貯蔵できるフライホイールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る実施形態に従ったフライホイールは、回転可能に設けられた回転軸と、前記回転軸に固定されて前記回転軸とともに回転可能なロータと、前記ロータに対向して配置されて回転しないステータと、を含む。前記ロータは、前記ステータに対向する第1面に設けられた複数の第1永久磁石を有し、前記ステータは、前記ロータに対向する第2面に、前記第1永久磁石にそれぞれ対応して設けられた、前記第1永久磁石と同一極性の複数の第2永久磁石を有し、前記第1永久磁石は、前記ステータに対向する第3面を除く表面の少なくとも一部がカーボンナノチューブで覆われ、前記第2永久磁石は、前記ロータに対向する第4面を除く表面の少なくとも一部がカーボンナノチューブで覆われていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る実施形態に従った発電装置は、電力を供給する充電可能なバッテリと、上述の実施形態に従ったフライホイールと、前記バッテリから電力を供給されて前記回転軸を回転させるモータと、前記ロータの運動エネルギを電気エネルギに変換して前記バッテリを充電する発電器と、を含む。
【0008】
本発明に係る実施形態に従ったフライホイールの第1実施形態による製造方法は、カーボンナノチューブの塗布、滴下、または吹きつけにより、前記第1および第2永久磁石の表面のうち前記第1および第2面を除く表面の少なくとも一部を、水系エポキシ樹脂に含まれた状態のカーボンナノチューブで覆う工程と、前記第1および第2永久磁石上の前記カーボンナノチューブを熱圧着する工程と、を含む。
【0009】
さらに、本発明に係る実施形態に従ったフライホイールの第2実施形態による製造方法は、 複数の第1および第2磁気性金属チップに着磁を実行して前記第1および第2永久磁石を形成する工程と、カーボンナノチューブの塗布、滴下、または吹きつけにより、前記第1および第2磁気性金属チップの表面のうち、第2および第1磁気性チップの対向面となる第1および第2面を除く表面の少なくとも一部を、水系エポキシ樹脂に含まれた状態のカーボンナノチューブで覆う工程と、前記第1および第2磁気性金属チップ上の前記カーボンナノチューブを熱圧着する工程と、前記第1磁気性金属チップの前記第1面が露出するように前記第1磁気性金属チップをロータの表面に回転対称に配設する工程と、前記第2磁気性金属チップの前記第2面が露出するように、前記第2磁気性金属チップをステータの表面上で前記第1磁気性金属チップに対応する位置に配設する工程と、を含み、前記着磁は、前記第1磁気性金属チップの前記ロータへの配設および前記第2磁気性金属チップの前記ステータへの配設後に実行されることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る第1実施形態に従った発電装置の構成の一例を示すブロック図の一例。
図2】第1実施形態に従ったフライホイールの構成例の一例を示す平面図の一例。
図3】第1実施形態に従ったフライホイールの構成例の一例を示す正面図の一例。
図4図2および図3に示すロータの裏面図の一例。
図5図2の切断線に沿ったロータおよびステータの部分断面図の一例を示す図。
図6】ロータおよびステータの永久磁石相互間の磁力線による引力および斥力の作用を説明するための図。
図7図2および図3に示すロータの一変形例を示す平面図の一例。
図8図2および図3に示すロータの他の変形例を示す正面図の一例。
図9図2および図3に示すロータのさらに他の変形例を示す正面図の一例。
図10】本発明に係る第2実施形態に従った発電装置の構成の一例を示すブロック図の一例。
図11】本発明に係る第3実施形態に従った発電装置の構成の一例を示すブロック図の一例。
図12】本発明に係る第1実施形態に従ったフライホイールの製造方法の説明図の例。
図13】本発明に係る第1実施形態に従ったフライホイールの製造方法の説明図の例。
図14】本発明に係る第1実施形態に従ったフライホイールの製造方法の説明図の例。
図15】本発明に係る第2実施形態に従ったフライホイールの製造方法の説明図の例。
図16】本発明に係る第2実施形態に従ったフライホイールの製造方法の説明図の例。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態のいくつかについて図面を参照しながら説明する。図面において、同一の部分には同一の参照番号を付し、その重複説明は適宜省略する。添付の図面は、それぞれ発明の説明とその理解を促すためのものであり、各図における形状や寸法、比などは実際の装置と異なる個所がある点に留意されたい。また、説明中の上下等の方向を示す用語は、後述するロータがステータよりも上方に位置するように配置した場合の相対的な方向を指し示す。そのため、重力加速度方向を基準とした現実の方向と異なる場合がある。
【0012】
(A)フライホイールおよびこれを備える発電装置
(1)第1実施形態
図1は、本発明に係る第1実施形態に従った発電装置の構成の一例を示すブロック図である。本実施形態による発電装置は、バッテリ10と、DC−AC変換器20と、モータ30と、プーリー40〜43と、ベルト50、51と、回転軸60と、フライホイール70と、発電器90と、バッテリチャージャ95と、負荷電流計84と、コントローラ100とを含む。
【0013】
バッテリ10は、DC−AC変換器20を介して、負荷、モータ30、および、フライホイール70へ電力を供給する。バッテリ10は、例えば、直流12ボルトの充電可能なバッテリ、または、このようなバッテリを複数個直列または並列に接続して構成されたバッテリ群であってもよい。バッテリ10が複数のバッテリから成るバッテリ群である場合、バッテリ10は、24ボルトや48ボルトの直流電圧を生成することができる。例えば、本実施形態によるバッテリ10は、12ボルトのバッテリを4個直列に接続した48ボルトのバッテリ群である。
【0014】
DC−AC変換器20は、バッテリ10の直流電力を交流電力へ変換する。例えば、DC−AC変換器20は、直流(DC)24ボルトの電力を交流(AC)100ボルトの電力および交流(AC)200ボルトの電力に変換する。DC−AC変換器20によって変換された交流電力は、負荷、モータ30、および、フライホイール70へ供給される。本実施形態では、負荷およびフライホイール70は、AC100ボルトの交流電力によって駆動され、モータ30は、AC200ボルトの交流電力によって駆動される。
【0015】
負荷は、電力を消費する電気機器であればよく、特に限定しない。例えば、負荷は、屋内または屋外で使用される照明器具や空調装置等でよい。また、負荷は、車両用の照明器具や空調装置等であってもよい。本実施形態では、負荷は、商用電力と同じAC100ボルトの電力を使用するが、AC200ボルトの電力を使用してもよい。
【0016】
モータ30は、DC−AC変換器20を介してバッテリ10からの電力の供給を受けてモータロータ31を回転させる。モータ30の最大消費電力は、規格上では約1000ワットである。モータロータ31は、ベルト50を介してプーリー40と結合されており、プーリー40を回転させる。ベルト50は、プーリー40の回転運動をプーリー41に伝達するように、プーリー40と41とを連結している。プーリー41は、回転軸60に固定されており、回転軸60は、プーリー41とともに回転する。従って、モータ30は、バッテリ10の電力供給を受けて回転軸60を回転させる。
【0017】
回転軸60は、プーリー41、プーリー42およびフライホイール70の回転の中心として共有されている。回転軸60の軸受けは、転がり軸受け、すべり軸受け、磁気軸受け等、特に限定しないが、回転抵抗の低い軸受けが好ましい。回転軸60の軸受けは、例えば、超伝導技術を用いた浮遊軸受けであってもよい。これにより、回転軸60の回転抵抗を可及的に低下させることができる。
【0018】
フライホイール70は、図2乃至図9を参照して後述するように、回転軸60とともに回転するロータ72を備え、該ロータ72の回転運動によって運動エネルギを蓄える。
【0019】
ベルト51は、プーリー42の回転運動をプーリー43に伝達するように、プーリー42と43とを連結している。プーリー43は、発電器90の軸91に固定されており、プーリー43の回転運動は、軸91に伝達される。
【0020】
発電器90は、軸91の回転により発電し、発電された電力を、バッテリチャージャ95を介してバッテリ10に蓄積する。つまり、発電器90は、永久磁石ロータの運動エネルギを電気エネルギに変換して、この電気エネルギをバッテリ10に蓄積する。本実施形態では、発電器90は、例えば、AC100ボルトの交流電力を発電し、規格上では最大31Aの電流を生成可能な発電器である。
【0021】
バッテリチャージャ95は、発電器90で発電された電力をバッテリ10へ充電する。このとき、バッテリチャージャ95は、AC100Vで発電された電力を直流電力に変換してバッテリ10へ蓄積する。本実施形態において、バッテリチャージャ95は、例えば、AC100ボルトで約12アンペアの電力を消費する。
【0022】
負荷は、バッテリ10から電力供給を受けて、図1の破線矢印で示すように余剰電力または再生電力をモータ30またはバッテリチャージャ95へ供給してもよい。余剰電力または再生電力が直流電力である場合、負荷は、余剰電力または再生電力をバッテリ10へ直接戻してもよい。負荷が余剰電力または再生電力を発生しない場合には、負荷は、バッテリ10から電力を消費するだけである。
【0023】
負荷電流計84は、負荷の近傍に設置され、負荷に流れる電流量を検出し、検出結果をコントローラ100に送る。
【0024】
コントローラ100は、後に詳述するように、負荷電流計84から送られる負荷の電流量と、フライホイール70に含まれるロータ72の回転数とのすくなくともいずれかを監視し、ステータ74とロータ72との間隔を調整することによりロータ72の回転を制御する制御機構を制御する。
【0025】
図2および図3は、それぞれ、第1実施形態に従ったフライホイール70の構成例の一例を示す平面図および正面図の例である。本実施形態において、フライホイール70は、主要な構成要素として、筐体210と、ロータ72と、ステータ74と、エンコーダ82と、ステッピングモータ86と、ボールねじ96と、ガイド98とを含む。
【0026】
ロータ72は、回転軸60とともに回転可能なように回転軸60に固定されている。
【0027】
図4は、ロータ72の裏面図の一例である。図4に示すように、ロータ72の裏面、すなわちステータ74との対向面TS72(以下、適宜「頂面TS72」または「露出面TS72」という)には、その周縁に沿って複数の永久磁石73が回転軸60の軸線を対称軸として回転対称に配置されている。図4に示す例では、8個の永久磁石73が8回回転対称で配置されている。本実施形態において、対向面TS72は例えば第1面に対応する。
【0028】
図3に戻り、ステータ74は、回転軸60の軸方向に沿ってロータ72に対向するように配置され、ガイド98などを介して筐体210の内壁に取り付けられ、これにより水平方向、すなわち、ロータ72との対向面に水平な方向において筐体210内に固定される。
【0029】
ステータ74の頂面、すなわちロータ72との対向面TS74(以下、適宜「頂面TS74」または「露出面TS74」という)には、その周縁に沿って複数の永久磁石75が、ロータ72側の永久磁石73と一対一で対応するように回転軸60の軸線を対称軸として回転対称に配置される。本実施形態では、8個の永久磁石75が配置されている。本実施形態において、対向面TS74は例えば第2面に対応する。
【0030】
ステータ74の表面のうち、ロータ72との対向面TS74を除く表面の少なくとも一部は、シート状のカーボンナノチューブ(以下、単に「CNTシート」という)で覆われている。図3に示す例では、ステータ74の側面および底面の全面がCNTシートで覆われている。これにより、永久磁石75の磁力がロータ72との間隙以外の領域へ漏洩することが防止される。
【0031】
図3では特に図示しないが、ロータ72側にもステータ74との対向面Ts72を除く表面の全面をCNTシートで覆い、これにより磁力漏洩を防止することが望ましい。
【0032】
永久磁石73,75は共に同一の極性を有し、本実施形態では、共にN極の磁性を持つ。本実施形態において、永久磁石73,75は例えば第1永久磁石および第2永久磁石にそれぞれ対応する。
【0033】
図5は、図2の切断線DLに沿ったロータ72およびステータ74の部分断面図の一例を示す。
【0034】
ロータ72に設けられた永久磁石73は、ステータ74との対向面TS73(以下、適宜「頂面TS73」または「露出面TS73」という)を除く表面の少なくとも一部がCNTシートで覆われている。図5に示す例では、対向面TS73を除く表面の全て(側面SS73および底面BS73)がCNTシートで覆われている。
【0035】
同様に、ステータ74に設けられた永久磁石75についても、ロータ72との対向面TS75(以下、適宜「頂面TS75」または「露出面TS75」という)を除く表面の少なくとも一部がCNTシートで覆われている。図6に示す例では、対向面TS73を除く表面の全て(側面SS75および底面BS75)がCNTシートで覆われている。
【0036】
このように、対向する一対の永久磁石73,75が、互いの対向面を除く表面のすくなくとも一部においてCNTシートで覆われることにより、磁力線を相互の間隙間に集中して発生させることができる。
【0037】
また、永久磁石73は、その頂面TS73と永久磁石75の頂面TS75との間で鋭角をなすようにロータ72の頂面TS72に対して傾斜して配設される。傾斜角θについては特に制限は無いが、本実施形態においては、約5°の傾斜角θが望ましい。
【0038】
一方、ステータ74側の永久磁石75には、ロータ72との対向面TS75のうち、永久磁石73との間隔が広い側の端部から側面SS75を経て底面BS75の一部に至るまで延在するように、消磁ブロック78が配設されている。このように、永久磁石73との間隔が広い側の端部近傍に消磁ブロック78が設けられることにより、ステータ74上の隣り合う永久磁石75間の領域に永久磁石75の磁性と逆の磁性、すなわちS極が発生することを防止することができる。これは、消磁ブロック78の内部がS極になることにより、消磁ブロック78の外側の領域がN極になるからである。これにより、永久磁石75の頂面TS75側から、対向配置される永久磁石73へ出る磁力線を強くすることができる。
【0039】
さらに、図5に示すように、消磁ブロック78の永久磁石75の底面BS75側部分のサイズは、頂面TS75上部分のサイズよりも大きいことが望ましい。これにより、後に詳述するように、永久磁石73の露出面(対向面)TS73へ向かう磁力線をさらに強くすることができる。
【0040】
消磁ブロック78の材料は、永久磁石75からの磁力線を遮断できるものであれば特に制限はないが、合金を含む金属材料、特にSS400のような鉄鋼材が望ましい。
【0041】
図1に戻り、バッテリ10から、例えば48Vの直流電流DCがDC−AC変換器20に供給され、DC−AC変換器20により、例えば200Vの交流電流ACに変換されてモータ30に供給されることによりモータ30が起動し、モータロータ31が回転する。モータロータ31の回転はベルト50を介してプーリー41に伝達され、これにより回転軸60が回転してロータ72も回転する。モータ30から伝達された回転力によってロータ72が一旦回転を始めると、その後は永久磁石73,75の相互間で発生する磁力線による引力および斥力でロータ72は回転する。
【0042】
永久磁石73,75相互間の磁力線による引力および斥力の作用について図6を参照してより詳細に説明する。
【0043】
図6においては、ステータ74側の永久磁石75からの磁力線の影響が変化する様子を説明するために連写写真のように単一の永久磁石73をロータ72の回転方向AR1に沿って複数個示した。
【0044】
まず、永久磁石73のステータ74との間隔が狭い側の先端が回転方向AR1の上流側から位置Aに到達した時、消磁ブロック78内のS極による引力がロータ72の回転力に加算され、これにより永久磁石73は、位置Cまでスムーズに移動する。
【0045】
永久磁石73が位置Cに到達すると、永久磁石75の露出面(対向面TS75)からの磁力線が永久磁石73の露出面(対向面TS73)に斥力を与える。永久磁石73の露出面TS73がロータ72の頂面TS72に対して傾斜角θをもって傾斜しているため、永久磁石75からの斥力が追加されて回転方向AR1への回転力が増大する。
【0046】
さらに、永久磁石73の先端が位置Dに達すると、対向面TS73内で永久磁石75からの斥力を受ける領域の面積が広くなるので、回転方向AR1への回転力はさらに増大する。
【0047】
なお、永久磁石73の先端が位置Eに到達した時、永久磁石75からの斥力を受ける領域の面積は最大となるが、図示しないさらに下流側の永久磁石75との間の空間における磁力による斥力が永久磁石73の回転方向下流側の側面SS73に印加されるので、その分だけ回転力の増大が抑制される。
【0048】
また、永久磁石75のロータ72回転方向AR1の上流側端部に設けられた消磁ブロック78において、永久磁石75の底面BS75側部分のサイズが永久磁石75の頂面TS75側部分のサイズよりも大きいため、図6に示すように永久磁石75からの磁力線は、ロータ72の回転方向下流側へシフトした位置を中心にして拡散する。これにより、永久磁石73の露出面TS73への磁力がさらに強くなるので、ロータ72の回転方向への推進力がさらに増大する。
【0049】
このように、本実施形態によるフライホイール70によれば、ステータ74の側面および底面がCNTシートで覆われ、かつ、各永久磁石73,75についても相互の対向面TS73,TS75を除く表面がCNTシートで覆われているため、磁力線の拡散が効果的に防止され、永久磁石73,75間の空間に集中させることができる。これにより、ロータ72の回転方向AR1への推進力を増大させることができる。また、電磁石をステータ74側に設ける必要がなくなるので、簡易な構成でありながらエネルギ損失が低いフライホイールを提供することが可能になる。これにより、フライホイールのさらなる小型化、汎用化が可能になる。
【0050】
本実施形態のフライホイール70では、エネルギ損失の低さから、例えば無負荷持などでロータ72が高速回転を継続する場合、使用環境に応じては事故発生を防止する必要が生じる場合がある。このため、本実施形態の発電装置には、ロータ72の回転速度を制御する制御機構が設けられている。
【0051】
制御機構は、図1に示すコントローラ100および負荷電流計84に加え、図2および図3に示すように、エンコーダ82と、ステッピングモータ86と、ボールねじ96と、ガイド98とを含む。
【0052】
エンコーダ82は、ロータ72の周辺近傍に設置され、ロータ72の単位時間あたりの回転数を検出し、検出結果をコントローラ100に送る。
【0053】
コントローラ100には、予め、または図示しない入力装置を介してフライホイール70の回転制御のための閾値が入力される。コントローラ100は、エンコーダ82から送られるロータ72の回転数と負荷電流計84から送られる負荷電流のすくなくともいずれかを監視し、これらの回転数または負荷電力が所定の閾値を超えた場合に、指令信号を生成してステッピングモータ86に与える。指令信号には、ステッピングモータ86の回転方向および回転量の情報が含まれる。
【0054】
ステッピングモータ86は、コントローラ100から指令信号を受けると、指令信号に従い、指令された回転方向で指令された回転量だけ回転する。ステッピングモータ86の回転力は、カップリング88、タイミングベルト92およびタイミングプーリー94を介してボールねじ96に伝達され、ボールねじ96のベースがガイド98に沿って移動することにより、回転軸60の軸方向に沿って図3の矢印AR2に示す方向にステータ74が移動する。これにより、ステータ74とロータ72との間隔が調整される。
【0055】
例えば、発電器90を使用しない場合で発電器90との連結が解除されて無負荷の状態でも、ロータ72の回転に最低限必要な電力をモータ30に供給する必要がある。その場合は、コギング等の磁力による影響を少なくしてロータ72の回転を維持できる程度にするために、ロータ72とステータ74との間隔が比較的広くなるように調整する。
【0056】
発電器90との連結を行って発電器90を使用している場合で、過負荷となった場合には、モータ30の負担を減らすため、負荷電流計84からの電流量に応じてロータ72とステータ74との間隔を変更して磁力による斥力の増減を負荷の運動に同期させる。
【0057】
また、安定した電力を供給するためにはフライホイール70の回転数が安定する必要がある。このため、エンコーダ82によりロータ72の回転数をコントローラ100が監視し、過回転や回転不足など、回転数変動の発生時に連動してロータ72とステータ74との間隔を変更し、適切な回転数となるよう調整する。
【0058】
さらに、発電装置そのものを停止する場合には、永久磁石73,75間で磁力の相互影響が出ない距離までロータ72およびステータ74を制御機構により引き離す。
【0059】
ここで、ロータ72の形状を変更することによってもフライホイール70の回転速度を調整することは可能である。厚さが均一のディスク形状でロータ72を形成する以外に、中心近傍の質量を下げて全体の質量を下げる他、周縁部分を中心部分よりも厚くするなどによって慣性質量を上げることにより、より回転し易くすることができる。
【0060】
ロータ72の変形例のいくつかを図7乃至図9に示す。図7の平面図に示すロータ72Aは、永久磁石73と中心軸との間に開口OPを設け、これにより、中心部分の質量低減を図るものである。また、図8の正面図に示すロータ72Bは、凹レンズのように周縁から中心に向けて厚さが漸減するよう形成されている。さらに、図9の正面図に示すロータ72Cのように、周縁部分だけが厚くなるよう形成してもよい。
【0061】
なお、本実施形態では、説明を簡潔にするため、8個の永久磁石73が8回回転対称に配置された例を取り挙げて説明したが、磁石の個数は勿論8個に限ることなく、4個でもよいし、8個を超える数量、例えば12個でも24個でも36個でもよい。現状では、ロータ72およびステータ74共に、それぞれ24個の永久磁石を配置すると、電気エネルギから運動エネルギへの変換において最も効率が良いことが分かっている。この点は、以下の第2実施形態および第3実施形態についても同様である。
【0062】
(2)第2実施形態
図10は、本発明に係る第2実施形態に従った発電装置の構成の一例を示すブロック図である。第2実施形態は、発電器90とバッテリチャージャ95との間に接続されたトランス110を備えている点で第1実施形態と異なる。第2実施形態のその他の構成要素は、第1実施形態の対応する構成要素と同じである。
【0063】
トランス110は、AC100ボルトの交流電力をAC200ボルトへ変圧し、その交流電力をモータ30へ供給することができる。この場合、トランス110は、モータ30の消費電力の一部を補うことができる。これにより、DC−AC変換器20の電力負担が軽減される。
【0064】
また、バッテリチャージャ95および/または負荷が発電器90からの電圧と異なる場合には、トランス110は、発電器90からの電力をバッテリチャージャ95および/または負荷に適合した電圧に変圧して、変圧後の電力をバッテリチャージャ95および/または負荷に供給してもよい。この場合、トランス110は、バッテリチャージャ95および/または負荷の消費電力の総てを供給してもよい。これにより、DC−AC変換器20は、モータ30のみを駆動すれば足りるので、DC−AC変換器20の電力負担はさらに軽減される。
【0065】
トランス110が電力を供給する場合、発電器90から生成された交流電力をそのまま直接利用できる。この場合、バッテリ10からの直流電力を交流電力に変換する必要が無いので、バッテリ10から電力を供給する場合よりも効率が良い。
【0066】
このように、第2実施形態は、トランス110を備えることによって発電器90で発電された電力をさらに効率良く利用することができる。さらに、第2実施形態は、第1実施形態と同様に改良されたフライホイール70を備えている。よって、第2実施形態は、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0067】
(3)第3実施形態
図11は、本発明に係る第3実施形態に従った発電装置の構成の一例を示すブロック図である。第3実施形態は、直流電力を生成するダイナモを発電器93として備えている点で第1実施形態と異なる。第3実施形態は、ダイナモを発電器93として用いているため、第1実施形態における交流発電器90およびバッテリチャージャ95は不要となる。
【0068】
発電器93は、軸91の回転により直流電力を発電し、発電された電力を、バッテリ10に蓄積する。つまり、発電器93は、ロータ72の運動エネルギを電気エネルギに変換して、この電気エネルギをバッテリ10に蓄積する。第3実施形態では、発電器93は、例えば、DC24ボルトの直流電力を発電し、規格上、最大50Aの電流を生成可能な発電器である。なお、第3実施形態では、バッテリ10は、12ボルトのバッテリを2個直列に接続した24ボルトのバッテリ群である。
【0069】
第3実施形態のように、本発明による発電装置は、図1および図2に示す交流電力の発電器90だけでなく、直流電力の発電器(ダイナモ)93を用いても実現することができる。第3実施形態は、簡易な構成で、かつ、エネルギ損失が低い、改良されたフライホイール70を備えているので、第1実施形態と同様、高効率で電気エネルギから運動エネルギへ変換することができる。
【0070】
以上の実施形態による発電装置は、バッテリ10のみで駆動することができる。従って、本実施形態による発電装置は、商用電源の無い屋外において特に利用価値が高い。また、石油やガソリンなどの化石燃料を用いないので、環境に良いという利点も有する。
【0071】
以上の実施形態によるフライホイール70は、バッテリ10のみで駆動し、外部電源を必要としないので、例えば乗用車に適用できる他、小型船舶やアウトドアレジャーなど、電力供給が困難な場所でも発電可能である。また、自然環境や天候に左右されることなく、24時間、365日、安定的に発電することができ、災害時に生活インフラや社会インフラが遮断された場合でも自家発電が可能である。発電に際して燃料を使用しないため、引火爆発事故発生等の危険性も無い。また、バッテリ10として、例えば水電池を使用する場合などでは発電コストを大幅に削減することが可能である。
【0072】
なお、上記実施形態に係る発電装置およびフライホイールは、超伝導フライホイールと組み合わせることができる。ただし、超伝導フライホイールは、実際には、冷却のために液体窒素あるいは液体ヘリウム等が必要であり、コスト高となる。常温超伝導については、現段階では、材料の開発段階である。従って、上記実施形態に係るフライホイール70は、現実的であり、低コストで大量生産に適していると言える。
【0073】
上述した第1乃至第3の実施形態では、説明を簡潔にするため、8個の永久磁石73が8回回転対称に配置された例を取り挙げて説明したが、磁石の個数は勿論8個に限ることなく、4個でもよいし、8個を超える数量、例えば12個でも24個でも36個でもよい。現状では、ロータ72およびステータ74共に、それぞれ24個の永久磁石を配置すると、電気エネルギから運動エネルギへの変換において最も効率が良いことが分かっている。
【0074】
また、上述した第1乃至第3の実施形態では、図2図3および図6中に符号AR1で示したように、永久磁石73,75間の間隔が広い側を回転方向上流側とし、永久磁石73,75間の間隔が狭い側を回転方向下流側としてロータ72が回転する態様を取り挙げて説明した。しかしながら、ロータ72の回転方向はこれに限ることなく、負荷の大きさに応じて回転トルクを上げたい場合などでは、図2図3および図6中の符号AR1とは逆方向にロータ72を回転させることにしてもよい。その場合は、モータ30の回転方向が逆方向になるようモータ30を制御すればよい。
【0075】
(B)フライホイールの製造方法
上述した実施形態の発電装置に含まれるフライホイール70の製造方法の実施形態のいくつかについて図12乃至図16を参照しながら簡単に説明する。
【0076】
(1)第1実施形態
まず、永久磁石73,75を準備し、相互の対向面を除く表面をCNTシールで覆う。CNTシールの被覆に際しては水系エポキシ樹脂を用いる。
【0077】
例えば図12に示すように、基台120上に永久磁石73を上下逆転させて頂面TS73が基台120に接するように配置して固定し、印刷技術を用いて、水系エポキシ樹脂に混合された(溶かされた)CNTを永久磁石73の底面BS73上に塗布、滴下または吹き付ける。印刷技術は、例えば、レーザ法またはインクジェット法等の既知の印刷技術でよい。このとき、CNTは、インク状になっているので、ノズル52から永久磁石73に向かって吐出される。
【0078】
次に、水系エポキシ樹脂に溶かされたCNTを加熱する。これにより、水系エポキシ樹脂から水分が蒸発するとともに、熱によってエポキシ樹脂がCNTを永久磁石73に圧着する。CNTは、エポキシ樹脂によって永久磁石73の底面BS73に付着(吸着)する。
【0079】
次いで、基台120を傾けて永久磁石73の側面、例えば側面SS73Aが上方を向くように位置を変更する(図示せず)。底面BS73の場合と同様に、印刷技術を用いて、水系エポキシ樹脂に混合された(溶かされた)CNTをノズル52から吐出することにより、永久磁石73の側面SS73A上に塗布、滴下または吹き付ける。
【0080】
次に、水系エポキシ樹脂に溶かされたCNTを加熱する。これにより、水系エポキシ樹脂から水分が蒸発するとともに、熱によってエポキシ樹脂がCNTを永久磁石73に圧着する。CNTは、エポキシ樹脂によって永久磁石73の底面BS73に付着(吸着)する。
【0081】
以下、他の側面SS73B〜SS73Dについても同様の工程(水系エポキシ樹脂に溶かされたCNTの塗布、滴下または吹き付け→加熱による圧着)を繰り返す。これにより、永久磁石73の頂面TS73以外の表面にCNTシートが被覆される。
【0082】
永久磁石75についても同様の工程により、頂面TS75を除く底面BT75および側面にCNTシートを被覆させる。
【0083】
すなわち、例えば図12に示すように、基台120上に永久磁石75を上下逆転させて頂面TS75が基台120に接するように配置して固定し、印刷技術を用いて、水系エポキシ樹脂に混合された(溶かされた)CNTを永久磁石75の底面BS75上に塗布、滴下または吹き付ける。印刷技術は、例えば、レーザ法またはインクジェット法等の既知の印刷技術でよい。このとき、CNTは、インク状になっているので、ノズル152から永久磁石75に向かって吐出される。
【0084】
次に、水系エポキシ樹脂に溶かされたCNTを加熱する。これにより、水系エポキシ樹脂から水分が蒸発するとともに、熱によってエポキシ樹脂がCNTを永久磁石75に圧着する。CNTは、エポキシ樹脂によって永久磁石75の底面BS75に付着(吸着)する。
【0085】
次いで、基台120を傾けて永久磁石75の側面、例えば側面SS75Aが上方を向くように位置を変更する(図示せず)。頂面TS75と同様に、印刷技術を用いて、水系エポキシ樹脂に混合された(溶かされた)CNTをノズル152から吐出することにより、永久磁石75の側面SS75A上に塗布、滴下または吹き付ける。さらに、水系エポキシ樹脂に溶かされたCNTを加熱することにより、水系エポキシ樹脂から水分を蒸発させるとともに、エポキシ樹脂によりCNTを永久磁石75に圧着(吸着)させる。
【0086】
以後、他の3つの側面SS75B〜75Dについても同様に処理することにより、エポキシ樹脂を用いてCNTを永久磁石75に圧着(吸着)させる。
【0087】
次に、図13に示すように、永久磁石73の形状に対応して凹部172が予め配設されたロータプレート72Bを準備する。凹部172の底面は、ロータ72の回転方向に沿って深さが変化するように予め傾斜が形成されている。
【0088】
次いで、凹部172に例えば接着剤(図示せず)を塗布した後、永久磁石73の頂面TS73が上方を向くように位置合わせをして凹部172に永久磁石73を嵌め込み、既知の方法を用いて接着剤を固化することにより固定させる。
【0089】
永久磁石75については、既知の方法により、例えば図5に示すように、ロータ72の回転方向AR1上流側の頂面TS75端部から側面SS75を経て底面BS75の一部に至るまで延在する消磁ブロック78を配設する。
【0090】
その後、図14に示すように、永久磁石75の形状に対応して凹部174が予め配設されたステータプレート74Bを準備し、該凹部174に例えば接着剤(図示せず)を塗布した後、永久磁石75の頂面TS75が上方を向くように位置合わせをして永久磁石75を凹部174に嵌め込み、既知の方法により固定させる。
【0091】
その後は、既知の組み立て方法を用いて筐体210(図2および図3参照)にガイド98を取り付け、ステッピングモータ86、カップリング88、タイミングベルト92、タイミングプーリー94およびボールねじ96を含む間隔調整のための機構を組み立てた後、ステータ74を取り付け、ロータ72を回転軸60と共に位置合せした上でステータ74上に回転可能に取り付けることにより、フライホイール70が提供される。
【0092】
(2)第2実施形態
上述の製造方法では、永久磁石73,75を各プレートの凹部172,174に位置合せした上で固定することとしたが、プレートのサイズ、磁石の数量に応じて隣り合う磁石の斥力が相互に強く作用し、位置合せの精度が劣化する場合もある。このような場合は、最初から永久磁石73,75を用いる代わりに、同一形状の磁気性金属チップを用い、これにCNTシートを被覆し、ロータ72用として図13に示したロータプレート72Bの凹部172に嵌め込んで固定し、ステータ74用として図14に示したステータプレート74Bの凹部174に嵌め込んで固定し、その後に、ロータプレート72Bおよびステータプレート74B毎にそれぞれ一括して着持しても良い。
【0093】
ロータ72用の着磁方法としては、例えば図15に示すように、図11に示したロータプレート72Bの凹部172に磁気性金属チップ173を嵌め込んで固定し、この状態でロータプレート72B全体を着磁装置300に取り付け、一括して着磁する。
【0094】
同様に、ステータ74用の着磁方法としては、例えば図16に示すように、図12に示したステータプレート74Bの凹部174に磁気性金属チップ175を嵌め込んで固定し、この状態でステータプレート74B全体を着磁装置300に取り付け、一括して着磁する。
【0095】
本実施形態によれば、永久磁石73,75をロータプレート72Bおよびステータプレート74Bの所望の位置に正確にそれぞれ配設することができるので、高い精度でフライホイールを製造することができる。
【符号の説明】
【0096】
10…バッテリ、30…モータ、60…回転軸、70…フライホイール、72…ロータ、73…(第1)永久磁石、74…ステータ、75…(第2)永久磁石、82…エンコーダ、84…負荷電流計、86…ステッピングモータ、88…カップリング、90,93…発電器、92…タイミングベルト、96…ボールねじ、98…ガイド、100…コントローラ、173…(第1)磁気性金属チップ、175…(第2)磁気性金属チップ、300…着磁装置、CNT…カーボンナノチューブ、OP…開口、TS72…対向面(第1面)、TS74…対向面(第2面)。
【要約】

【課題】簡易な構成で大きな運動エネルギを貯蔵できるフライホイールを提供する。
【解決手段】本発明に係る実施形態に従ったフライホイール70は、回転可能に設けられた回転軸60と、回転軸60に固定されて回転軸60とともに回転可能なロータ72と、ロータ72に対向配置されて回転しないステータ74と、を含む。ロータ72は、ステータ74に対向する面TS72に設けられた複数の永久磁石73を有し、ステータ74は、ロータ72に対向する面TS74に、永久磁石73にそれぞれ対応して設けられ、永久磁石73と同一極性の複数の永久磁石75を有する。永久磁石73は、ステータ74に対向する面TS73を除く表面の少なくとも一部がカーボンナノチューブCNTで覆われ、永久磁石75は、ロータ72に対向する面TS75を除く表面の少なくとも一部がカーボンナノチューブCNTで覆われている。
【選択図】図5
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16