特許第5966228号(P5966228)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5966228
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】アリピプラゾール組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/496 20060101AFI20160728BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20160728BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20160728BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20160728BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20160728BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20160728BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20160728BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20160728BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20160728BHJP
   A61K 47/16 20060101ALI20160728BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20160728BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20160728BHJP
   A61K 47/30 20060101ALI20160728BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20160728BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
   A61K31/496
   A61K9/06
   A61K9/08
   A61K9/10
   A61K9/127
   A61K9/70 401
   A61K47/10
   A61K47/12
   A61K47/14
   A61K47/16
   A61K47/20
   A61K47/22
   A61K47/30
   A61K47/32
   A61P25/18
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-536677(P2013-536677)
(86)(22)【出願日】2011年10月20日
(65)【公表番号】特表2014-503479(P2014-503479A)
(43)【公表日】2014年2月13日
(86)【国際出願番号】US2011057080
(87)【国際公開番号】WO2012058091
(87)【国際公開日】20120503
【審査請求日】2014年10月17日
(31)【優先権主張番号】61/407,591
(32)【優先日】2010年10月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516170668
【氏名又は名称】アエクース ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】AEQUUS PHARMACEUTICALS INC
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】プラコギアニス、フォティオス エム.
(72)【発明者】
【氏名】ホサイン、ムハンマド アンワル
【審査官】 深谷 良範
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/146872(WO,A1)
【文献】 特開2009−173679(JP,A)
【文献】 特開平08−034729(JP,A)
【文献】 特開平07−053381(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/115724(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/109214(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
経皮送達のための剤形である製薬組成物であって、アリピプラゾールを含む、製薬組成物において、前記製薬組成物は、
1乃至20%w/vの量のアリピプラゾールと、
エンハンサと、
0.1〜5%w/vの範囲のゲル化剤であって、天然ポリマー、半合成ポリマー、合成ポリマー、カルボキシビニルポリマー、カルボマー、ポリアクリル酸ポリマー、ポロキサマー(登録商標)、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレン及びそれらのコポリマー、並びにそれらの組合せからなる群より選択されるゲル化剤と、
を含み、
前記剤形は、パッチ、軟膏、クリーム、乳剤及びリポソームからなる群より選択され、前記組成物のpHは6〜7であり、かつ、
前記アリピプラゾール、前記エンハンサ及び前記ゲル化剤は、40%のN−メチル−2−ピロリドン、40%のジメチルスルホキシド、15%のアルコール及び5%の水からなる製剤中に混合されている、製薬組成物。
【請求項2】
前記アリピプラゾールはゲルの形態又は液体の形態にある、請求項1に記載の製薬組成物。
【請求項3】
液体の形態である請求項1に記載の製薬組成物であって、アルコール、グリコール、鉱油及び植物油のうちの少なくとも一つを含む、製薬組成物。
【請求項4】
前記エンハンサは、ラウリン酸、ミリスチン酸、水、スルホキシド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセタミド、ジメチルホルムアミド、アゾン、ピロリドン、脂肪酸エステル、脂肪酸、アルコール、脂肪アルコール及び脂肪グリコール、尿素、精油、テルペン及びテルペノイド、リポソーム、ニオソーム、トランスフェローム及びエタノソームからなる群より選択される、請求項に記載の製薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インビトロの性能及び良好なバイオアベイラビリティにおける条件を満たす製薬組成物の経皮送達の分野に関する。より詳細には、本発明の経皮製薬組成物は、パッチ剤の剤形であり、アリピプラゾールの液剤又はゲルを含む。
【背景技術】
【0002】
アリピプラゾール(ARPZ)は、新規なクラスの非定型抗精神病薬(第三世代)の最初のものである。生化学的には、ARPZは、ドパミン受容体のD2ファミリーの部分アゴニストである(非特許文献1及び2)。ARPZは、統合失調症の陽性症状および陰性症状に対して活性である(非特許文献3及び4)。ARPZはキノリノン誘導体であり、白色結晶粉末であり、水に殆ど溶けず、低い融点(135〜140℃)を有し、MW448.38g/モルであり、かつ4.54の分配係数を有する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Inoue,T.、Domae,M.、Yamada,K.、および Furukawa,T.、“Effects of the novel antipsychotic agent 7−([4−2,3−dichlorophenylo−1−piperazinyl]b Neuroutyloxyo−3,4−dihydro2(1H)−quinolinone(OPC−14597) on prolactin release from the rat anterior pituitary.”、J.Pharmacol.Exp.Ther.、1996;277(1):137−143
【非特許文献2】Burris,K.D.、Moiski,T.F.、Ryan,E.、Xu,C.、Tottori,K.、Kikuchi,T.、Yocca,F.D、および Molinoff,P.B.、“Aripiprazole is a high affinity partial agonist at human D2 dopamine receptors.”、Int.J.Neuropsychopharmacol.、2000;3(Suppl.1)、S129
【非特許文献3】Petrie,J.L.、Saha,A.R.、および McEvoy,J.P.、“Aripiprazole, a new atypical antipsychotic:Phase II clinical trial results.”、Eur.Neuropsychopharm、1997;7(Suppl 2):S227
【非特許文献4】Saha,A.R.、McQuade,R.、Carson,W.H.、Ali M.W.、Durbar,G.C.、および Ingenito,G.、“Efficacy and safety of Aripiprazole and Risperidone vs.Placebo in patients with schizophrenia and schizoaffective disorder.”、World J.Biol Psych、2001;2(Suppl 1):305S
【発明を実施するための形態】
【0004】
実施例
ARPZは、水に殆ど溶けず、液剤及びゲル剤の剤形として製剤化されてきた(表1)。報告されているすべての値は、重量/容量パーセント(W/V)である。
【0005】
【表1】
【0006】
製剤の変数のレベルを選択するために、実験の最適な混合物の設計を使用した。1%W/V〜20%W/VのARPZ液剤の最適な組成物は、NMP40%、DMSO40%、アルコール15%及び水5%を有するものであると予測された(表1)。ゲル製剤は、約0.1〜5%W/Vの範囲のゲル化剤を含むべきであり、最適なARPZ組成物は、約5%W/Vのゲル化剤とともに、約1%W/V〜20%W/Vの範囲であるべきである。したがって、ゲル製剤は、NMP40%、DMSO40%、アルコール15%、カーボポール(登録商標)971 0.5%及び水4.5%を有するものであると予測された(表1)。しかしながら、表2は、本発明に従って達成できた液体及びゲルのARPZ製剤を生成することができるその他の組み合わせを列記する。
【0007】
【表2】
【0008】
これらの成分以外でも、本発明において使用するのに適した当業者に周知のその他の溶媒及びその組み合わせを、液体製剤を調製するために使用することが可能であり、同溶媒としては、限定されるものではないが、アルコール類(メチル、エチル、ブチル、プロピル、イソプロピル、イソプロピルミリスチン酸等であるが限定されるものではない)、グリコール類(プロピレン、ポリエチレン、グリセリン等であるが限定されるものではない)、鉱油、植物油などが含まれる。
【0009】
実施例
ゲル化剤及びその濃度の、ARPZの人工膜及びヒトの死体皮膚への浸透に対する効果を評価し、二つの特徴的なグラフを図1及び2に示す。ARPZゲル製剤の最適かつ所望の組成物は、0.5%W/Vのカーボポール(登録商標)971を含んでいる。ARPZはゲル化剤によってゲル化され、同ゲル化剤としては、限定されるものではないが、天然ポリマー(寒天、アルギン酸及びその誘導体、エビスグサ(cassia tora)、コラーゲン、ゼラチン、ゲランガム、グアーガム、ペクチン、カラギーナンカリウム又はカラギーナンナトリウム、トラガカント、キサンタンなど)、半合成ポリマー(メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース(carbosymethylcellulose)、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなど)、合成ポリマー(カルボキシビニルポリマー若しくはカルボマー、カーボポール(登録商標)940、カーボポール(登録商標)934、カーボポール(登録商標)971、ポロキサマー(登録商標)、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレン及びそれらのコポリマーなど)及び粘土(ケイ酸塩など)が含まれる。加えて、セルロース膜以外にも、ARPZはその他の人工膜を使用して評価することができ、同人工膜としては、限定されるものではないが、シリコーン膜(ポリジメチルシロキサン)、リポソーム被覆膜、固体で支持された液体膜、レシチンオルガノゲル膜などが含まれる。ARPZのゲル製剤以外にも、その他の剤形を使用することができ、同剤形としては、軟膏、クリーム剤、乳剤、リポソームなどが含まれる。
【0010】
【表3】
【0011】
【表4】
【0012】
実施例
ARPZのヒトの死体皮膚へのフラックス量(flux)に対するエンハンサ(enhancer)の効果を評価し、図3に示した。ARPZゲル製剤の最適かつ所望の組成物は、ラウリン酸及びミリスチン酸を含んでいた。ラウリン酸及びミリスチン酸エンハンサとは別に、ARPZ経皮送達は、エンハンサによって影響を受け、同エンハンサとしては、限定されるものではないが、水、スルホキシド及び類似の化学物質、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルアセタミド(DMAC)、ジメチルホルムアミド(DMF)、デスメチルスルホキシド(DCMS)など、アゾン、ピロリドン類(N−メチルー2−ピロリドン(NMP)、2−ピロリドン(2p)など)、脂肪酸エステル(ブチルエタノエート、エチルエタノエート、エチルオレエート、イソプロピルミリステート、イソプロピルパルミエート、メチルエタノエートなど)、脂肪酸(カプリン酸、カプリル酸、ラウリン酸、オレイン酸、ミリスチン酸、リノール酸、ステアリン酸、パルミチン酸など)、アルコール類、脂肪アルコール類及び脂肪グリコール類(ナタノール(nathanol)、ドデカノール、プロピレングリコール、グリセロールなど)、尿素、精油、テルペン及びテルペノイド類(リモネン、チモール、シネオールなど)、リポソーム、ニオソーム、トランスフェローム(transferomes)、エタノソーム(ethanosomes)などが含まれる。
【0013】
【表5】
【0014】
実施例
ARPZのヒトの死体皮膚への浸透に対するpHの影響を評価し、図2に示した。ARPZゲル経皮製剤の好ましい最適組成物は、約6〜7の範囲のpHを有していた。これらの最適なpH値以外にも、ARPZ経皮製剤は、好ましい範囲外のpH値によって影響を受けるかもしれないが、その程度はより少ない。したがって、本発明は、使用する環境に応じて、約6〜7の好ましいpHの範囲以外においても達成することができる。
【0015】
本発見のシステムは、50mcg/ch−2.h〜800mcg/ch−2.hのフラックス量にてARPZを送達可能であり、その量は、治療上必要とされるARPZの血中レベルを生ずる。フラックス速度は、本発明の示唆に従って、ARPZの初期濃度、パッチの表面積、製剤のpH、ビヒクルの組成、エンハンサの種類及び組成等を修正することにより変更可能である。
【0016】
最適な治療上の結果は、適切な薬物の選択のみならず、効果的な薬物送達も必要とされる。向精神薬の厳格かつ定期的な服薬スケジュール遵守が非常に重要である。多くの場合、向精神薬の経口投与は、患者の服薬違反により最適な送達系よりも少なくなると考えられる。向精神薬の経皮送達は、特に、持続型の作用を伴うものの場合、特に高齢の人々においては、服薬遵守が増大するという点において有効である。更に、ARPZ経皮送達の利点の可能性としては以下の点:肝臓での初回通過効果がない点、過剰投与又は投与不足の可能性が回避できる点、パッチを単に除去するのみで薬物投与を終了することができるといった柔軟性、簡単な治療計画を提供でき、それにより高齢者における服薬遵守が支援できる点、が挙げられる。
【0017】
【表6】