特許第5966232号(P5966232)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5966232
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】引っ張り補助具
(51)【国際特許分類】
   A44B 19/24 20060101AFI20160728BHJP
【FI】
   A44B19/24
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-254062(P2015-254062)
(22)【出願日】2015年12月25日
【審査請求日】2016年1月28日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516001579
【氏名又は名称】小峰 さなえ
(74)【代理人】
【識別番号】110000866
【氏名又は名称】特許業務法人三澤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小峰 さなえ
【審査官】 ▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−329414(JP,A)
【文献】 特開2006−191963(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44B19/00−19/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被服を含む対象物のファスナーを閉にするときに生ずる引っ張りに抗するために用いる引っ張り補助具であって、
前記ファスナーが止製品のファスナーである場合に、前記対象物であって、前記ファスナーを閉じるときの開始点付近に一端部側を固定し、前記ファスナーが開製品のファスナーである場合に、前記対象物に設けられる蝶棒近傍に前記一端部側を固定するクリップと、
前記クリップの他端側に一端部が固定される紐部と、
前記紐部の長さ方向の所定の位置で固定される紐留めと、
を備えることを特徴とする引っ張り補助具。
【請求項2】
前記紐留めは、前記紐部において移動可能にされ、その後、前記所定の位置に固定されることを特徴とする請求項1に記載の引っ張り補助具。
【請求項3】
前記紐部は、前記クリップと前記紐留めとの間で貫通孔を形成可能に構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の引っ張り補助具。
【請求項4】
前記紐部の他端部には、紐先端カバーが装着されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の引っ張り補助具。
【請求項5】
被服を含む物品のファスナーを閉にするときに用いる引っ張り補助具であって、
所定の長さの紐部と、
前記紐部の一端に取り付けられ、前記ファスナーが止製品のファスナーである場合に、前記物品であって、前記ファスナーを閉じるときの開始点付近に固定され、前記ファスナーが開製品のファスナーである場合に、前記ファスナーを閉じるときの開始点付近の前記物品に設けられる蝶棒近傍に固定されるクリップと、
前記紐部に沿って移動可能にされ、かつ、所定の位置で紐部に固定される紐留めと、を備え、
前記紐部及び前記紐留めは与えられる外力により、前記ファスナーが閉にされるとき生ずる引っ張りに抗することを特徴とする引っ張り補助具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、ファスナーを利用する際に用いる引っ張り補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、スキー等を行う際には安全、防寒等のためにスキー用の手袋を着用するが、このスキー用の手袋は厚手であり、例えば、ポケットに設けられたファスナーを操作することは容易ではない。そのため、以下に示す特許文献1においては、ポケットに取り付けられたファスナーのスライダーに伸縮性を有する紐の一端を固定するとともに、他端をファスナーが開口したときにスライダーが位置する側の近傍に固定したポケットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−329414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1において開示されている発明では、次の点について配慮がなされていない。
【0005】
すなわち、上記特許文献1に開示されている発明は、あくまでもファスナー自体に仕掛けを施してファスナー開口の容易化を図るものである。また、特許文献1に示されているファスナーは単純にスライダーが往復するだけで開閉が可能とされている、いわゆる止製品のファスナーである。
【0006】
一方、ファスナーが被服の前身頃に用いられる場合、いわゆる開製品のファスナーが用いられる。この開製品のファスナーの場合、左右の前身頃の互いに対向する位置にそれぞれエレメントが設けられたテープが固定されており、一方のテープにはスライダーが、他方のテープには蝶棒が設けられている。エレメントを噛み合わせる場合、まず、前身頃の下側に位置するテープの端部に形成されている蝶棒をスライダーの下部に設けられている箱に嵌め込む。その上で、スライダーをテープに沿って引っ張ることでエレメントが順次噛み合ってファスナーが閉まる。
【0007】
このように蝶棒を箱に嵌め合わせた後にスライダーを引っ張る場合、蝶棒がスライダーから外れてしまわないように、或いは、スライダーをスムーズに引っ張るために蝶棒が設けられている側に対してスライダーの移動方向とは逆方向に力を掛けておく必要がある。
【0008】
但し、手や腕に障害を有する者や知的障害者(以下、適宜「障害者」と表わす)や、健常者であっても、例えば、高齢により手の力が弱くなった者や上述したような厚手の手袋等を着用することで手の自由を確保できない場合、ファスナーを引っ張る際に蝶棒が設けられている側に力を掛けておくことが非常に困難となる。
【0009】
一方で、特に今日のように、ファスナーは被服、鞄類をはじめとして、生活全般において数多く利用されている状況において、全てのファスナーに対して特許文献1において開示されているような構成を付加することは現実的ではない。また、特許文献1に記載の発明ではスライダーの移動を開始するに当たって蝶棒をスライダーに嵌め合わせる必要がなく、確実に嵌め合わせていない状態でスライダーを移動させた場合にスライダーとともに蝶棒が移動してしまうこともない。そのため、上述したような蝶棒が設けられているテープにスライダーの移動方向と逆方向の力を掛けておく必要性は低い。
【0010】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、障害者、健常者を問わず、容易、かつ、スムーズにファスナーの開閉を行うことを可能とする引っ張り補助具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、実施形態における引っ張り補助具は、被服を含む対象物のファスナーを閉にするときに生ずる引っ張りに抗するために用いる引っ張り補助具であって、ファスナーが止製品のファスナーである場合に、対象物であって、ファスナーを閉じるときの開始点付近に一端部側を固定し、ファスナーが開製品のファスナーである場合に、対象物に設けられる蝶棒近傍に一端部側を固定するクリップと、クリップの他端側に一端部が固定される紐部と、紐部の長さ方向の所定の位置で固定される紐留めとを備える。
【0012】
また、実施形態における引っ張り補助具は、被服を含む物品のファスナーを閉にするときに用いる引っ張り補助具であって、所定の長さの紐部と、紐部の一端に取り付けられ、ファスナーが止製品のファスナーである場合に、物品であって、ファスナーを閉じるときの開始点付近に固定され、ファスナーが開製品のファスナーである場合に、ファスナーを閉じるときの開始点付近の物品に設けられる蝶棒近傍に固定されるクリップと、紐部に沿って移動可能にされ、かつ、所定の位置で紐部に固定される紐留めと、を備え、紐部及び紐留めは与えられる外力により、ファスナーが閉にされるとき生ずる引っ張りに抗する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、障害者、健常者を問わず、容易、かつ、スムーズにファスナーの開閉を行うことを可能とする引っ張り補助具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施の形態における引っ張り補助具の全体を示す平面図である。
図2】実施の形態における引っ張り補助具の全体を示す正面図である。
図3】実施の形態における引っ張り補助具を被服に装着した例を示す説明図である。
図4】実施の形態における引っ張り補助具の第1の使用状態を示す説明図である。
図5】実施の形態における引っ張り補助具の第2の使用状態を示す説明図である。
図6】実施の形態における引っ張り補助具の第3の使用状態を示す説明図である。
図7】実施の形態における引っ張り補助具の第1の変形例を示す説明図である。
図8】実施の形態における引っ張り補助具の第2の変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
図1は、実施の形態における引っ張り補助具10の全体を示す平面図である。また、図2は、実施の形態における引っ張り補助具10の全体を示す正面図である。
【0017】
引っ張り補助具10は、ファスナーが設けられている被服等に固定して、ファスナーを引っ張る際に、ファスナーを容易、かつ、スムーズに引っ張ることができるように補助するために用いられる。
【0018】
引っ張り補助具10は、少なくとも、クリップ1と、紐部2と、紐留め3とから構成されている。クリップ1は、ファスナーが設けられている被服等の対象物に引っ張り補助具10を固定するために用いられる。本発明の実施の形態におけるクリップ1は、その一端部側に、被服等に引っ張り補助具10を固定する固定部11が設けられている。固定部11は、さらに、引っ張り補助具10を被服等に固定する場合に移動して被服等を挟み込む空間を作る可動部11aと、可動部11aが挟み込む被服等を受けて可動部11aとの間で被服等に引っ張り補助具10を固定する基部11bとから構成される。また、クリップ1の他端側には、紐部2を固定するための連結部12が設けられている。
【0019】
また、本発明の実施の形態におけるクリップ1では、可動部11aと基部11bには、それぞれ互いに噛み合わせることができる歯11cが設けられている。
【0020】
クリップ1(引っ張り補助具10)を被服等に固定する際、本発明の実施の形態におけるクリップ1の場合、連結部12を図2に示す実線の矢印の方向に回転するように動かす。連結部12を実線の矢印の方向に動かすと、可動部11aが基部11bから離れて破線の矢印で示す方向に移動する。このとき、基部11bは移動しない。可動部11aが移動することによって、基部11bとの間に空間が生じる。このように作られた空間に引っ張り補助具10を固定する対象となる被服等を挿入し、今度は連結部12を図2に示す実線の矢印とは逆の向きに動かす。これにより、可動部11aが元の位置に戻るため基部11bとの間で被服等を固定することができる。そして、歯11cが被服等に食い込むことによって引っ張り補助具10が被服等に固定される。
【0021】
当該歯11cは、被服等に引っ張り補助具10を固定する際、固定の対象である被服等を痛めることなく、一方で確実に引っ張り補助具10を固定することができるような構成とされている。
【0022】
なお、クリップ1は、引っ張り補助具10を対象に固定するための物である。従って、上述したように噛み合わせる歯11cが対象に食い込むことによって引っ張り補助具10を固定する方法の他、クリップではなく、ピン等を用いて対象に固定する方法を採用しても良い。
【0023】
紐部2は、後述する紐留め3を保持する役割を有している。紐部2は、その一端部がクリップ1の連結部12に固定されている。そして本発明の実施の形態においては、紐留め3は、紐部2に接続されることで紐部2に保持されている。
【0024】
紐部2は、1本の紐状の部材であっても、或いは、図1、或いは、図2に示すように、2本の紐状の部材から構成されていても良い。本発明の実施の形態においては、このように紐部2は2本の紐状の部材から構成されていることから、一方の紐2aと他方の紐2bとの間を広げることで、両者の間に貫通孔が形成可能とされている。貫通孔を利用した引っ張り補助具10の使用状態については後述する。また、紐部2の素材として、例えば、伸縮が可能な素材を選択する等、どのような素材を選択するかは任意である。
【0025】
紐部2には、紐留め3が接続されている。紐留め3は、胴部3aに貫通孔が形成されており、当該貫通孔を紐部2が貫通している。そして、胴部3aを貫通する紐部2を押さえるために、その内部に紐部2の長さ方向における紐留め3の位置を固定するための付勢部材が設けられている(図示せず)。紐部2に対する付勢状態を解除するためのボタン3bが設けられており、当該ボタン3bを胴部3aに押し込んでいる間、紐部2に対する付勢を解除することができる。かつ、これによって、紐留め3が紐部2の長さ方向に移動可能となる。
【0026】
ここで説明する本発明の実施の形態においては、紐部2の他端には、紐先端カバー4が装着されている。紐先端カバー4が紐部2の他端に装着されていることで、紐部2から紐留め3が脱落してしまうことを回避することができる。また、本発明の実施の形態においては、紐部2の他端が紐先端カバー4によって固定されており、上述したように、紐部2の一端はクリップ1に連結、固定されて、紐部2の両端が固定されている。従って、紐部2のように2本の紐状の部材から構成されている場合、一方の紐2aと他方の紐2bとの間に貫通孔を形成することができる。
【0027】
次に、引っ張り補助具10の使用状態について、図3ないし図6を利用して以下説明する。
【0028】
図3図4は、実施の形態における引っ張り補助具10を被服Cに装着した例を示す説明図である。図3に示す被服Cは、左右の前身頃のそれぞれ対向する位置にエレメント(ファスナーを噛み合わせるための歯)を備えるテープが設けられている。前身頃の一方、例えば、向かって右側の下側には、引っ張ることによってエレメントを噛み合わせるスライダーSが設けられている。他方、例えば、向かって左側の下側には、ファスナーFを閉める際にスライダーSと箱Bとに噛ませる蝶棒Dが設けられている。
【0029】
このような被服Cに対して蝶棒Dが設けられている側にクリップ1を用いて引っ張り補助具10を固定する。このような位置に引っ張り補助具10を固定するのは、ファスナーFを開閉するためにスライダーSを引っ張る際に、スライダーSに嵌め込んだ蝶棒Dが設けられている側をスライダーSの移動方向と逆方向に押さえる必要があるからである。
【0030】
すなわち、スライダーSを引っ張る際に蝶棒Dが設けられている側がスライダーSの移動に従って移動してしまうとファスナーFを閉めることができなくなってしまうからである。
【0031】
なお、好適には、引っ張り補助具10をできるだけ蝶棒Dに近い位置に固定する。つまり、被服等のファスナーFを閉じる際に、引っ張り補助具10をファスナーFの移動の開始点付近に取り付ける。そして、引っ張り補助具10のクリップ1、紐部2、紐先端カバー4を結ぶことでできる線が、ファスナーFの移動方向と略平行となる向きに固定する。このような位置、向きに引っ張り補助具10を固定することにより容易、かつ、スムーズにファスナーFを引っ張ることができる。
【0032】
図4は、実施の形態における引っ張り補助具10の第1の使用状態を示す説明図であり、使用者からの目線で引っ張り補助具10を見た場合を示している。図4に示す第1の使用状態では、引っ張り補助具10の紐部2の部分に右手の人差し指と中指とを差し込むようにして引っ張り補助具10を固定することによって、被服Cを固定しようとするものである。紐留め3に指が接することによって、スライダーSの移動方向に被服Cが引っ張られてもその移動方向に被服Cが移動することを防止することができる。そのため、紐部2及び紐留め3は、使用者の手等で押さえやすい構造としている。
【0033】
従って、紐留め3は、紐部2を指で挟んだ際に、当該指に接する位置に位置することが好ましい。そこで、紐留め3のボタン3bを操作して紐部2に対する紐留め3の付勢を解除して、紐部2における紐留め3の位置を自由に選択することで、最適な位置に紐留め3を移動させる。そして、再び付勢させることで、紐部2に対する紐留め3の位置を固定させる。
【0034】
なお、図4に示す使用状態では、右手の人差し指と中指の間に紐部2を挟むようにしているが、引っ張り補助具10の使用者にとって使用しやすい指を利用すれば良く、特に引っ張り補助具10を指に挟んだり、紐留め3に指を引っ掛ける等、その使い方は限定されない。
【0035】
以上のことから、紐留め3は、その機能として、ストッパーとしての機能がある。図4に示されているように、紐留め3を指に引っかけてストッパーとすることでスライダーSの移動方向と逆方向に力を掛けることが可能となる。
【0036】
そして、この状態で、蝶棒DをスライダーS及び箱Bに差し込み、スライダーSを引っ張る。スライダーSが引っ張られても、引っ張り補助具10が使用されていることによって、被服Cに対してスライダーSの移動方向とは逆方向に力が掛かっていることから、エレメントやテープが撓むことや被服Cが引っ張られることもなく、容易、かつ、スムーズにファスナーFの開閉を行うことができる。
【0037】
図5は、実施の形態における引っ張り補助具10の第2の使用状態を示す説明図である。図4に示す第1の使用状態では、指を紐留め3に引っ掛けることによって被服Cを固定していた。一方図5に示す第2の使用状態においては、紐部2を利用して貫通孔2cを形成し、当該貫通孔2cに腕Aを通すことで、引っ張り補助具10を介して被服Cを固定している。第2の使用状態に示すように紐部2に腕Aを通すようにすれば、例えば、指を動かすことが困難な場合であっても、スライダーSを引っ張る際に適切に被服Cを固定することができる。このように紐留め3の2つ目の機能として、紐部2によって形成される貫通孔2cの大きさを調整する機能がある。
【0038】
図6は、実施の形態における引っ張り補助具10の第3の使用状態を示す説明図である。これまでの説明では、引っ張り補助具10を被服Cに装着した場合を例に挙げて説明をしてきた。但し、引っ張り補助具10の利用は、被服Cに限られるものではなく、例えば、鞄に取り付けられているファスナーの開閉の際にも使用することができる。図6では、本発明の実施の形態における引っ張り補助具10を鞄Gに装着した例を示しており、鞄Gを真上から見た状態を示している。
【0039】
障害者に限らず、健常者であっても、例えば高齢者の場合、スライダーSを引っ張る際にあまり力を入れることができず、スムーズにスライダーSを引っ張ることができない場合もある。特に、ファスナーFが、例えば、柔らかい素材で作られている鞄Gに取り付けられているような場合、スライダーSが引っ張られる方向とは逆向きの方向に適切に力が掛からなければスムーズなファスナーFの開閉を行うことができない。
【0040】
このような場合に、スライダーSの移動開始の起点近傍に引っ張り補助具10を装着した上でスライダーSを移動させることによって、ファスナーFを簡易、かつ、スムーズに開閉させることができる。
【0041】
次に、これまで説明してきた引っ張り補助具10の変形例を、図7、及び、図8を用いて説明する。
【0042】
図7は、実施の形態における引っ張り補助具10の第1の変形例を示す説明図である。引っ張り補助具10Aは、これまで説明してきた引っ張り補助具10と基本的にその構成を同じくする。但し、第1の変形例における紐留め31は、紐留めの形状が大きく形成されている。
【0043】
上述したように、紐留め3の機能としてストッパーとしての機能がある。そこで紐留め3の大きさを、例えば図7の紐留め31のように大きく形成することで、手の大きな使用者にも対応することができる。また、例えば、指に引っ掛けるといった利用の仕方だけではなく、紐留め31自体に手を添えて押さえるように使用することも可能となる。このような使用が可能となれば、手に障害を持つ障害者であっても、紐部2を指の間に挟まずとも紐留め31を押さえるように手を動かすだけで被服Cを固定することができ、ファスナーFの開閉を行うことができる。なお、紐留め31の大きさは任意に設定することができる。
【0044】
また、第1の変形例として示すように、紐留め31を大きく形成することは、紐留め31の3つ目の機能を顕在化させることになる。この3つ目の機能は、使用者が指を掛ける、腕を入れる場所を認識する際の目印の機能である。すなわち、引っ張り補助具10の使用者に対して指を引っ掛ける位置を視覚的にわかりやすくしている。
【0045】
特に障害者や高齢者が引っ張り補助具10を使用する場合、指を引っ掛ける紐留め3の位置がわかりにくいとそもそも引っ張り補助具10の使用が困難となってしまう可能性がある。そこで、紐留め31のように大きく形成することによって、引っ張り補助具10の使用者が紐留め31の位置を認識しやすくなる。
【0046】
さらには、紐留め3の大きさを変更するだけではなく、例えば、紐留め3の色として様々な色を採用することが可能である。また、紐留め3の形状を図4図6に示すような形状のみならず、例えば、三角や四角といった形状、或いは、キャラクターの形状等を採用することも可能である。これら特徴的な形状を採用することで、紐留め3が備える目印の機能を十分に発揮させることができる。
【0047】
このように紐留め31を大きく形成することで、障害者や高齢者の方はもちろんのこと、例えば、健常者であっても大きな手袋をしているような場合に、大きな紐留め31に指を引っ掛け易くなり、ファスナーFの開閉がより容易かつスムーズにできるようになる。
【0048】
図8は、実施の形態における引っ張り補助具10の第2の変形例を示す説明図である。第2の変形例として示す引っ張り補助具10Bでは、これまで説明してきた引っ張り補助具10と異なり、紐先端カバー4が設けられていない。
【0049】
また、この実施の形態においては、紐先端カバー4を紐部2の他端に装着することで、紐留め3が紐部2から脱落しないようにしている。但し、紐留め3を紐部2に通した後、紐部2の他端を結ぶ等して固定してしまえば、特に紐先端カバー4を設けずとも済む。また、図8に示す引っ張り補助具10Bのように、紐留め32を紐部2において移動させない場合には、紐留め32が移動しないようにするための付勢部材を設ける必要はない。従って、紐部2への付勢を解除するためのボタンも設ける必要がない。引っ張り補助具10Bにおいては、このようなボタンのない紐留め32を採用している。
【0050】
以上説明したような引っ張り補助具を使用することで、障害者、健常者を問わず、容易、かつ、スムーズにファスナーの開閉を行うことが可能となる。
【0051】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。例えば、これまで引っ張り補助具を装着する例として、被服と鞄を挙げた。但しファスナーが採用されている物であれば、例えば、ファスナー付きクリアファイルといった文房具や引っ張る方向と逆方向に力を掛けることで容易に引っ張るという行為を行うことができる物にも使用することができる。この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0052】
1 クリップ
2 紐部
3 紐留め
4 紐先端カバー
10 引っ張り補助具
【要約】
【課題】障害者、健常者を問わず、容易、かつ、スムーズにファスナーの開閉を行うことを可能とする引っ張り補助具を提供する。
【解決手段】一端部側で対象物に自らを固定するクリップ1と、クリップ1の他端側に一端部が固定される紐部2と、紐部2の長さ方向の所定の位置で固定される紐留め3とを備える。クリップ1を対象物に留めた上で、紐留め3を所定の位置に固定し、当該紐留め3に指等を引っ掛けることでファスナーの開閉時に対象物が動かないように固定する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8