(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1コア部材及び前記第2コア部材の夫々に設けられた前記収納部の底面には、前記穴にまで通じ、前記コイルの各端部を前記底面に這わせるための溝が設けられている請求項1ないし3のいずれか1項に記載のコイル部品。
【背景技術】
【0002】
図8(a)は、従来におけるコイル部品10の外観形状を示す斜視図であり、
図8(b)は、
図8(a)に示すコイル部品10の内部構造を示す透視図である。
【0003】
図8(a)に示すようにコイル部品10の外観をなすコア12は、収納体12aと蓋体12bとを備えて構成される。収納体12aは、内部に、コイル11を収納するための収納部を備える。コイル11が収納体12a内に収納された状態で、収納体12aと蓋体12bとが接着材(図示せず)を介して接合される。
【0004】
図8(b)に示すようにコイル11は、その巻き中心線S1が高さ方向(Z)に向けられて巻回されている。コイル11の端部11a,11bは収納体12aの側面方向に引き出されて各端子部13,14と電気的に接続される。
【0005】
各端子部13,14は、収納体12aの側面12cから下面(裏面)12dにかけて延出形成されている。このため、端子部13,14の一部が、コア12の側面12cに露出する形態となっている。
【0006】
例えば特許文献1に示すコイル部品も、
図8に示すコイル部品10と同様に、端子部をコアの側面から下面にかけて引き出している。
【0007】
一方、特許文献2及び特許文献3では、実装面である下面側にそのままコイルの端部を引き出して端子部を構成している。よって、特許文献2及び特許文献3では、端子部がコアの側面に形成されず実装面である下面のみに配置される構成となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、端子部をコアの下面にのみ配置し側面に露出させない構造とすることで、部品の基板に対する実装性の向上や、部品間での電気的接触の防止等を促進できると考えられる。また実装面である下面の広い面積を有効活用して端子部を広い面積で形成できる。
【0010】
しかしながら、
図8に示すような収納体12aと蓋体12bとを備えるコア12内のコイル11の端部11a,11bを下方へ引き出して、端子部をコア12の下面だけに形成するのは容易ではない。例えば、特許文献2に示すように収納体の底面に実装面である下面まで貫通する穴を形成し、コイルの端部を穴に通す構成が考えられる。しかしながら、非常に小さい穴に端部を的確に通さなければならず組立工程が複雑化し、また生産コストが増大する問題があった。
【0011】
また、
図8(b)に示すように巻き中心線S1を高さ方向(Z)に向けて巻回したコイル11では、コイル11の両端部11a,11bを下方に折り曲げて、実装面である下面まで引き延ばすことが必要になり、従来に比べて直流抵抗(DCR)が増大しやすくなった。
【0012】
さらに、巻き中心線S1を高さ方向(Z)に向けて巻回したコイル11では、所定のインダクタンスを得るためにコイル11の巻き数を所定数、得ようとすると高さ寸法が高くなり、コイル部品10の薄型化(低背化)を促進できない問題があった。
【0013】
またコイル部品10から外方に漏れる漏れ磁束を小さくすることが必要であった。例えば、特許文献3に示すコイル部品では、コアの下面側が空いており、漏れ磁束が非常に大きくなる問題があった。
【0014】
そこで本発明は、上記の従来課題を解決するためのものであり、特に、コイルの端部を簡単にコアの実装面である下面に引き出すことができ、また薄型化を促進できるとともに漏れ磁束を低減できるコイル部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明におけるコイル部品は、
コイルと、前記コイルを取り囲むコアと、を有し、
前記コアは、高さ方向にて対向する上面及び下面と、前記上面及び前記下面間を繋ぐ側面とを備え、
前記下面内にて直交する2方向をX方向及びY方向とし、前記高さ方向を前記X方向及び前記Y方向の夫々に直交するZ方向としたときに、
前記コイルは、その巻き中心線が前記X方向に平行な方向を向くように巻回されており、
前記コアは、前記Y方向と前記Z方向からなるY−Z面と平行な面方向に沿って二分された第1コア部材と第2コア部材とで構成され、
前記第1コア部材及び前記第2コア部材に夫々、形成された収納部内に前記コイルが収納された状態で前記第1コア部材と前記第2コア部材とが前記Y−Z面と平行な面方向に形成された合わせ面を介して接合されており、
前記コアの前記下面は実装面であり、前記実装面内には、前記第1コア部材と前記第2コア部材間の前記Y方向に沿う下端接合部が設けられており、前記下端接合部の前記Y方向への中心Oから前記Y方向の両側に離れた位置であって前記側面よりも内側の前記実装面内に前記収納部と連通する複数の穴が前記下端接合部と連続して設けられており、
各穴から前記コイルの各端部が引き出されて、前記実装面内に前記各端部と電気的に接続される端子部が設けられ
、
前記第1コア部材及び前記第2コア部材には、夫々、前記上面を備える上端部、前記下面を備える下端部及び前記側面を備える3つの側端部が設けられ、前記上端部、前記下端部及び前記3つの側端部に囲まれて前記収納部が形成されており、
前記3つの側端部のうち、少なくとも前記巻き中心線と直交する側端部の厚さ寸法は、前記上端部の厚さ寸法及び前記下端部の厚さ寸法よりも厚く形成されていることを特徴とするものである。
【0016】
本発明では、第1コア部材と第2コア部材とを備え、第1コア部材と第2コア部材とのY−Z面に平行な合わせ面同士を突き合してコアを形成している。しかも第1コア部材及び第2コア部材とを接合した際、下端接合部に連続して、コイルの端部を引き出すための穴が形成されたコア構造となっている。また本発明では、巻き中心線をX方向と平行な方向に向けて巻回されたコイルをコア内に収納している。すなわち
図6に示す従来のコイルを横に倒した状態でコア内に収納されている。
【0017】
本発明では、上記したコア及びコイルの構成により、コイルの端部を簡単に下面に引き出すことが可能になり、またコイル部品の薄型化(低背化)を実現できる。
【0018】
さらに本発明では、コイルの全体をコアにより取り囲んでおり、したがってコイル部品から外方に漏れる漏れ磁束を小さくできる。
また、コイル部品の薄型化とともに、漏れ磁束を小さくできる。
【0019】
本発明では、前記第1コア部材と前記第2コア部材は同形状で形成されていることが好ましい。このとき、前記第1コア部材及び前記第2コア部材には夫々、前記合わせ面の前記下面と接する下端部に前記各穴の半形状からなる切欠が形成されており、
前記第1コア部材と前記第2コア部材とが前記合わせ面を介して接合された状態では、前記下端接合部は、前記実装面の前記X方向の中央に位置しており、前記各穴は、前記下端接合部の前記中心Oから前記Y方向の両側に等間隔で離れた位置に設けられることが好ましい。これにより、生産コストの低減を図ることができ、また、組立工程を効果的に容易化できる。
【0020】
また本発明では、前記第1コア部材及び前記第2コア部材の夫々に設けられた前記収納部の底面には、前記穴にまで通じ、前記コイルの各端部を前記底面に這わせるための溝が設けられていることが好ましい。これにより、コイルの端部を収納部内から穴の位置まで簡単に引き出すことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明のコイル部品によれば、コイルの端部を簡単に実装面である下面に引き出すことができ、また薄型化を促進できるとともに漏れ磁束を低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1(a)は、コア内部に配置されたコイルを透視して示した本実施形態におけるコイル部品の斜視図であり、
図1(b)は、コイル部品の実装面である下面を示す裏面図である。また
図2は、本実施形態における第1コア部材の斜視図である。また、
図3は、
図2に示す第1コア部材と、前記第1コア部材と同形状の第2コア部材とを突き合せて接合したコアをX−Y平面と平行な面方向で、かつ、Z(Z1−Z2)方向の中心位置において切断し、切断されたコアの底面構造を示す断面図である。
【0025】
ここで、X(X1−X2)方向及びY方向Y(Y1−Y2)方向は水平面内にて直交する2方向を示し、Z(Z1−Z2)方向は水平面に対して直交する高さ方向を指す。水平面は、実装面であるコアの下面と同じ面方向を指す。ここでX方向と表現した場合には、X1方向及びX2方向のどちらかの方向を特定せず、Y方向と表現した場合には、Y1方向及びY2方向のどちらかの方向を特定せず、またZ方向と表現した場合には、Z1方向及びZ2方向のどちらかの方向を特定しない。
【0026】
図1に示すコイル部品20は、コイル22と、コイル22を取り囲むコア21とを備えて構成される。
【0027】
コイル22は、絶縁被膜された導線(Cuを主体とした線材)を螺旋状に巻回して形成されたものである。コイル22は、巻回部22aと、巻回部22aから引き出された端部22bを備える。コイル22の巻き数は必要なインダクタンスに応じて適宜設定される。
【0028】
コア21は、例えば、Fe基非晶質合金(Fe基金属ガラス合金)の粉末が結着材により固化成形された圧粉コアである。
【0029】
Fe基非晶質合金(Fe基金属ガラス合金)は、例えば、組成式が、Fe
100-a-b-c-x-y-z-tNi
aSn
bCr
cP
xC
yB
zSi
tで示され、0at%≦a≦10at%、0at%≦b≦3at%、0at%≦c≦6at%、6.8at%≦x≦10.8at%、2.2at%≦y≦9.8at%、0at%≦z≦4.2at%、0at%≦t≦3.9at%である。
【0030】
本実施形態では、上記の組成式から成るFe基非晶質合金を例えば、アトマイズ法により、あるいは液体急冷法により一旦、帯状(リボン状)に形成した後に粉砕して粉末状に製造できる。
【0031】
Fe基非晶質合金粉末は、略球状あるいは楕円体状等からなる。前記Fe基非晶質合金粉末は、コア中に多数個存在し、各Fe基非晶質合金粉末間が結着材(バインダー樹脂)にて絶縁された状態となっている。
【0032】
図1(a)に示すように、コイル22の巻回部22aは、その巻き中心線S2をX方向と平行な方向を向けて巻回されている。
【0033】
図1(a)(b)に示すように、コア21は、高さ方向(Z)にて対向する上面21a及び下面21bと、上面21a及び下面21b間を繋ぐ側面21c〜21fとを備えた六面体である。
【0034】
コア21の下面21bは、図示しない基板に対する実装面である。以下では、符号21bを下面及び実装面の双方に適用する。
【0035】
図1(a)に示すように、コア21は、Y方向とZ方向からなるY−Z面と平行な面方向に沿って二分された第1コア部材23と第2コア部材24とで構成される。
【0036】
図2に示すように第1コア部材23は、上端部40、下端部41、及び3面の側端部42〜44を備える。上端部40と下端部41の各厚さ寸法H1はほぼ同じである。上端部40と下端部41は高さ方向(Z)に対向している。上端部40のZ1側の面は上面40aであり、下端部41のZ2側の面は下面41aである。上面40a及び下面41aはいずれもX−Y面と平行な面である。
【0037】
また、各側端部42〜44は、上端部40と下端部41との間を高さ方向(Z)に繋いでおり、各側端部42〜44は、上端部40及び下端部41と一体的に成形されている。
【0038】
図2に示すように、各側端部42〜44は夫々、ほぼ同じ厚さ寸法H2であり、厚さ寸法H2は、厚さ寸法H1よりも大きい。
【0039】
各側端部42〜44の外面(表面)は、上面40aと下面41a間を繋ぐ側面42a〜44aを構成している(
図2、
図3参照)。
【0040】
図2に示すように、第1コア部材23には、上端部40、下端部41、及び3面の側端部42〜44に囲まれた収納部45が形成されている。
【0041】
また、側端部43の内面から収納部45内にてX方向に延出するボビン25が形成されている。ボビン25は側端部43と一体で形成される(
図3参照)。
【0042】
図2に示すように、収納部45の底面45a(下端部41の上面)には、略一定幅の凹状の溝28が形成されている。この溝28は、
図3に示すように、X方向に延出して形成される。
図2,
図3に示すように溝28は、下端部41と側端部44との角付近の底面45aに形成される。
【0043】
図2に示すように、第1コア部材23には、収納部45の開口側に、合わせ面26が形成されている。合わせ面26は、下端部41のX2側に現れるX2側面41b、上端部40のX2側に現れるX2側面40b、各側端部42,44のX2側に現れるX2側面42b,44bにて構成される。各X2側面40b、42b、44bは一体で形成される。X2側面41bは、後述する切欠30,31を介して各X2側面42b,44bの間に形成される。合わせ面26は、Y−Z面と平行な面方向に形成されている。
【0044】
ボビン25のX2側に向くX2側面25aと合わせ面26は、X−Y平面と平行な面方向の同一面上に形成される。
【0045】
図2に示すように、第1コア部材23の下端部41には、複数の切欠30,31が形成されている。各切欠30,31は、厚さ方向(Z)に貫いて形成されている。すなわち各切欠30,31は、下端部41の上面(収納部45の底面45a)から下面41aにかけて形成される。各切欠30,31は、平面視(Z2方向への矢視)にて例えば半円状で形成される。
【0046】
図2に示すように、各切欠30,31は、Y1−Y2方向に離れて形成されている。切欠30は、Y1側に位置する側端部42側に形成され、切欠31は、Y2側に位置する側端部44側に形成される。
図2に示すように、溝28が切欠31の位置にまで通じている。
【0047】
本実施形態における第2コア部材24は、
図2に示す第1コア部材23と同形状にて形成される。すなわち
図2に示す形状のコア部材を2つ成形し、一方を第1コア部材23とし、他方を第2コア部材24とする。
【0048】
そして、コイル22を、第1コア部材23及び第2コア部材24に形成された収納部45内に収納した状態で、第1コア部材23と第2コア部材24とを各合わせ面26を介して接着剤にて接合する。このとき、コイル22の巻回部22aは、各第1コア部材23及び第2コア部材24のボビン25の外周に支持される(
図1(a)参照)。これにより、コイル22は、その巻き中心線S2が、X方向に向けられた状態でボビン25に支持される。
【0049】
接着剤を介した合わせ面26,26間は、第1コア部材23と第2コア部材24との接合部27である。
図1に示すように接合部27は、コア21の上面21a、下面21b、及び側面21d,21fのX方向における中央にてY方向あるいはZ方向に沿って一周形成されている。
【0050】
図1(b)に示すように、第1コア部材23と第2コア部材24の各下面41a,41aを合わせて、コア21の下面21bが構成される。コア21の下面21bは、実装面である。以下、実装面21bと表現する場合がある。
【0051】
図1(b)に示すように、第1コア部材23と第2コア部材24の各下面41a、41a間にY方向に沿う下端接合部27aが設けられている。
図3に示すよに、下端接合部27aは、収納部45の底面45a側にも現れる。
【0052】
図1(b)に示すように、下端接合部27aのY方向の中心OからY方向の両側に離れた位置であって、コア21の側面21d,21fよりも内側の位置に穴50,51が形成されている。各穴50,51は下端接合部27aに連続して(繋がって)形成されている。また
図3に示すように、各穴50,51は、収納部45と連通している。各穴50,51は、第1コア部材23と第2コア部材24とを合わせ面26を介して接合したときに、第1コア部材23側の切欠30,31と第2コア部材24側の切欠31,30とが夫々、組み合わされて形成されたものである(
図3参照)。平面視(Z2方向からの矢視)にて各穴50,51は円形状で現れる。ただし、
図2に示す切欠30,31の形状により、穴50,51は四角形や他の形状とすることもでき、特に円形状に限定するものではない。しかしながら、コイル22が丸線により形成される場合には、穴50,51を円形状としたほうが、穴50,51にコイル22の端部22bを通しやすい。
【0053】
図2,
図3に示すように、各穴50,51は、下端接合部27aのY方向の中心OからY1方向およびY2方向に等距離、離れた位置に形成されている。
【0054】
コア21の収納部45内に収納されたコイル22は、巻回部22aの両側から引き出された各端部22bが、第1コア部材23及び第2コア部材24の夫々に形成された各溝28内を這って各穴部50,51の位置まで引き回されている(
図3に示す点線の部分を参照)。
図3に示すように、第1コア部材23側では、溝28がY2側に位置しており、第2コア部材24側では、溝28がY1側に位置している。よって、コイル22の一方の端部22bは、巻回部22aのY2側から第1コア部材23の溝28に沿って穴51の位置まで引き回されており、他方の端部22bは、巻回部22aのY1側から第2コア部材24の溝28に沿って穴50の位置まで引き回されている。
【0055】
そして、各端部22bの先端22b1は、各穴50,51から露出した状態とされている(
図1参照)。
【0056】
図1(b)に示すように、コア21の実装面21bには、Y方向の両側に金属材料からなる端子部60,61が設けられている。各端子部60,61は、コイル22の各端部22b,22bと電気的に接続されている。例えば各端子部60,61とコイル22の各端部22b,22b間を抵抗溶接(スポット溶接)により接合することができる。各端子部60,61は、Y方向に所定幅で形成される。また各端子部60,61はX方向の全域に(X方向の端から端まで)形成される。
【0057】
本実施形態では、端子部60,61が、コア21の実装面21bに該当する下面のみに形成されている。
図4に示すようにコア21の下面(実装面)21bに凹部21b1,21b1が形成され、各端子部60,61が各凹部21b1,21b1内に配置される構成にできる。これにより各端子部60,61とコア21の下面21bとを同一面にできる。ただし、各端子部60,61がコア21の下面21bよりも多少、Z2方向に突き出ていてもよい。
【0058】
また、
図5(裏面図)に示すように、各穴50,51に連続する凹部65,66が、コア21の下面21bに形成され、コイル22の各端部22b,22bを下面21b側で折り曲げて各凹部65,66内に配置させることもできる。これにより、コイル22の各端部22b,22bと各端子部60,61間を効果的に接合できる。
【0059】
図1に示すように本実施形態では、第1コア部材23と第2コア部材24とを備え、第1コア部材23と第2コア部材24のY−Z面と平行な合わせ面26同士を突き合してコア21を形成している。また第1コア部材23及び第2コア部材24とを接合した際、下端接合部27aに連続して、コイル22の端部22bを引き出すための穴50,51が形成されたコア構造となっている。本実施形態では、実装面21bであるコア21の下面のみに端子部60,61を形成したコイル部品20を簡単なコア構造で実現でき、また高いコア強度を得ることができる。コア強度についていえば、本実施形態では、下端部41の突合せ面26側に切欠30,31を形成して、第1コア部材23と第2コア部材24とを突き合せたことで、前記切欠30,31に基づく穴50,51を形成できる。下端部41は厚さ寸法H1が、各側端部42〜44の厚さ寸法H2に比べて薄くされている。したがって下端部41の強度は、各側端部42〜44に比べて弱い。よって、下端部41内に複数の穴を形成するよりも、合わせ面26の位置に切欠30,31を形成し、第1コア部材23と第2コア部材24とを突き合せたときに穴50,51が形成されるように構成することで、下端部41側のコア強度を従来よりも高く保つことができる。
【0060】
また本実施形態では、巻き中心線S2をX方向に平行な方向に向けてコイル22を巻回しており(
図1参照)、すなわち
図8に示す従来のコイルを横に倒した状態でコア21内に収納されている。このため、所定のインダクタンスを得るためコイル22の巻き数が多くなっても、コイル22のX方向への長さ寸法が大きくなるだけで、高さ方向(Z)への寸法は変らず、コイル部品20の薄型化(低背化)を実現できる。
図8の従来に示す構成では、低背化するためには蓋体12bの厚さを薄くしなくてはならないが、コイル11の巻き中心線S1が高さ方向(Z方向)に向いているため、この方向における漏れ磁束が大きくなることが懸念される。しかも、
図8の従来の構成では、収納体12aと蓋体12bの接合部もコア12の上方にあるため、この影響はさらに大きくなる。しかし、本実施形態においては、漏れ磁束の出易い巻き中心S2の方向がX方向となっており、コイル22の漏れ磁束の少ない方向をZ方向とできるため、この方向での漏れ磁束を従来の構成よりも抑えることができる。従って、低背化しても回路基板に実装された場合の漏れ磁束による他の電子部品への影響を抑えることが可能となる。また本実施形態では、コイル22の各端部22b,22bを下面(実装面)21bに形成された各穴50,51にまで容易に引き出すことができる。例えば
図8の従来に示す構成では、巻き中心線S1をZ方向に向けて巻回されたコイル11の端部11a,11bを下方に引き出し、このとき、収納体12aの下端部に穴を形成し、この穴にコイル11の端部11a,11bを通さなければならない。しかし、非常に小さい穴に的確に端部11a、11bを通すことは煩雑な作業となり、また歩留まりも悪くなる。これに対して本実施形態では、第1コア部材23と第2コア部材24とを接合する前、コイル22の各端部22bを、各コア部材23,24の切欠30,31の部分に対向させておくことで、各コア部材23,24を接合した際に、ちょうど穴50,51の位置に簡単に各端部22bを入り込ませることができる。よって本実施形態のコイル部品20によれば、コイル22の各端部22bを容易に実装面である下面21bに引き出すことができる。また
図8に示す従来のコイル11の各端部11a,11bを下方に引き出すよりも本実施形態のほうが、コイル長さを短くでき、コイル22の直流抵抗(DCR)の増大を抑制できる。
【0061】
さらに本実施形態では、コイル22の表面全体をコア21により取り囲んでおり、したがってコイル部品20から外方に漏れる漏れ磁束を小さくできる。
【0062】
本実施形態におけるコイル部品20を、X−Y面と平行な面方向から切断した断面で見ると、その断面内では、
図6に示す磁路M1を形成する。
図6に示すように、コイル22の巻き中心線S2上に第1コア部材23と第2コア部材24との接合部27が形成されていない。ギャップとなる接合部27がコイル22の巻き中心線S2上にないことで、コア21の側面21c,21eからの漏れ磁束の増大を抑制できる。また本実施形態のコイル部品20の構成によれば、側面21c,21e以外の面からの漏れ磁束も効果的に小さくできる。また
図2に示すように、コア部材23の側端部42〜44の厚さ寸法H2を上端部40及び下端部41の厚さ寸法H1よりも厚く形成したことで、コア21の側面から外部に磁束が漏れにくい構成にできる。特に本実施形態では、コイル22からの漏れ磁束が大きくなる巻き中心S2の方向において、側端部43、43の厚さ寸法H2を大きくできるため、コイル22の巻き中心S2方向の漏れ磁束をより効果的に抑制できる。加えて、上端部40及び下端部41の厚さ寸法H1は、コイルの巻き中心方向S2がX方向であり、このS2方向と垂直な方向は元々コイル22からの漏れ磁束は少ないため薄く形成することが可能である。よって、上記の厚さ寸法H1をより薄く形成できるため、コイル部品20の薄型化を効果的に促進できる。厚さ寸法H1は、0.05〜0.15mm程度で、厚さ寸法H2は、0.10〜0.20mm程度である
。
【0063】
本実施形態では、第1コア部材23と第2コア部材24とを同形状で形成できる。すなわち本実施形態では、第1コア部材23及び第2コア部材24には夫々、下端部41に各穴50,51の半形状からなる切欠30,31が形成されている。そして第1コア部材23と第2コア部材24とが合わせ面26を介して接合された状態では、下端接合部27aは、実装面(下面)41aのX方向の中央に位置しており、各穴50,51は、下端接合部27aのY方向での中心OからY方向の両側に等間隔で離れた位置に設けられる。このように本実施形態では、各コア部材23,24を同形状で形成できるから、生産コストを低減でき、また、組立工程も簡単になる。
【0064】
また本実施形態では
図2,
図3に示すように収納部45の底面45a(下端部41の上面)に穴50,51(切欠30,31)にまで通じ、コイル22の各端部22bを底面45aに這わせるための溝28が設けられている。これにより、端部22bを引き出すための空間を大きくできるため、コイル22の各端部22bを収納部45内から各穴50,51の位置まで容易に引き出すことができる。
【0065】
本実施形態におけるコイル部品20は、インダクタや、その他の電子部品に適用できる。
【実施例】
【0066】
本実施例のコイル部品20と、
図8に示す従来例のコイル部品10とを用いて、側面からの漏れ磁束を測定した。
【0067】
実施例及び従来例に用いたコイルのターン数、内径を同じとした。また、実施例のコイル部品20を構成する第1コア部材23及び第2コア部材24、及び従来例のコイル部品10を構成する収納体及び蓋体を同じ材質の圧粉コアにて形成した。
【0068】
図7(a)は、実施例におけるコイル部品20を示し、
図7(b)は、比較例におけるコイル部品10を示している。
図7に示すように、実施例のコイル部品20及び従来例のコイル部品10の側方にガウスメータ36を設置した。なお、ガウスメータ36と各コイル部品10,20の側面間の距離L1を同じ距離とした。またガウスメータ36を、従来例における収納体と蓋体間の接合部(ギャップ)の高さに置いた。コイルに5Aの電流を流し、漏れ磁束を測定した。
【0069】
その結果、
図7(a)の実施例では、0.13mTの磁束密度を観測し、
図7(b)の従来例では、0.11mTの磁束密度を観測した。本実施例では、コイルの巻き中心線をX方向に向けるべく、巻き中心線がZ方向に向いた従来のコイルを横に倒した状態で配置したため、側方からの漏れ磁束が大きくなるものと予測されたが、実験結果によれば、実施例における側方からの漏れ磁束を従来例とほぼ同等に小さくできた。