特許第5966241号(P5966241)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5966241
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】屋根支持装置およびカーポート
(51)【国際特許分類】
   E04H 6/02 20060101AFI20160728BHJP
   E04H 9/02 20060101ALI20160728BHJP
   E04B 1/343 20060101ALI20160728BHJP
   E04B 7/00 20060101ALI20160728BHJP
   F16F 15/08 20060101ALI20160728BHJP
   F16F 7/00 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
   E04H6/02 D
   E04H9/02 351
   E04B1/343 V
   E04B7/00 Z
   F16F15/08 E
   F16F7/00 F
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-230257(P2015-230257)
(22)【出願日】2015年11月26日
【審査請求日】2015年12月4日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515328288
【氏名又は名称】I&Cラボ合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167900
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 仁
(72)【発明者】
【氏名】藪内 美恵子
【審査官】 湊 和也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−203258(JP,A)
【文献】 特開2008−127859(JP,A)
【文献】 実開昭54−157426(JP,U)
【文献】 特開2004−169549(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 6/02
E04B 1/343
E04B 7/00
E04H 9/02
F16F 7/00
F16F 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
片持ち形式の屋根構造体の片持ち先端部と、この屋根構造体から離れた支持体と、を連結して前記屋根構造体の先端部を支持する屋根支持装置であって、
前記屋根構造体の先端部と前記支持体とに亘って設けられる長尺状の支持部材と、
前記支持部材の一端部と前記屋根構造体の先端部とを接続する第1接続部と、
前記支持部材の他端部と前記支持体とを接続する第2接続部と、
前記第1接続部および前記第2接続部のいずれか一方に設けられるダンパー装置と、を備え、
前記ダンパー装置は、前記支持部材の一端部と前記屋根構造体の先端部との相対移動、または前記支持部材の他端部と前記支持体との相対移動に伴って減衰力を発揮する減衰部材と、
前記支持部材の一端部または他端部に対して当該支持部材の軸方向に沿ってスライド自在に設けられた前記支持部材よりも大径な管状のスライド部材と、を備え、
前記支持部材は、前記スライド部材を貫通して前記屋根構造体と前記支持体と亘って設けられ、
前記減衰部材は、前記スライド部材の内周と前記支持部材の外周との間に介挿されるとともに、当該支持部材と当該スライド部材との相対変位に伴ってせん断変形することで減衰力を発揮する粘弾性材料から構成されていることを特徴とする屋根支持装置。
【請求項2】
請求項に記載された屋根支持装置において、
前記ダンパー装置は、前記支持部材の軸方向一方側に向かう前記スライド部材のスライドを所定値以下に規制する第1規制部材と、前記支持部材の軸方向他方側に向かう前記スライド部材のスライドを所定値以下に規制する第2規制部材と、を備え
前記第1規制部材および前記第2規制部材は、前記支持部材よりも大径かつ管状の留管で構成され、当該支持部材に固定されていることを特徴とする屋根支持装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載された屋根支持装置において、
前記スライド部材は、管状の周方向の一部が切り欠かれて軸方向に沿って延びる隙間部を有して形成されていることを特徴とする屋根支持装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載された屋根支持装置において、
前記ダンパー装置は、前記第1接続部に設けられていることを特徴とする屋根支持装置。
【請求項5】
地盤に設けられる基礎と、この基礎に固定されるフレームと、このフレームに支持される屋根と、を備えるカーポートであって、
前記フレームは、前記基礎から鉛直方向に延びる柱部と、この柱部の上端から側方に片持ち状に延びる梁部と、を有し、
前記梁部の先端部または前記屋根の一部に請求項1から請求項4のいずれかに記載された屋根支持装置の第1接続部が接続されていることを特徴とするカーポート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、片持ち形式の屋根構造体を支持する屋根支持装置、この屋根支持装置を備えたカーポートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、片持ち形式の屋根構造体として、側面逆L字状のフレームおよび屋根を備えたカーポートや、建物等の構造物から突出した庇等が知られている。カーポートを一例として説明すると、そのフレームは、地盤に設けられたコンクリート基礎に固定され、この基礎から鉛直上方に延びる柱部と、柱部の上端から側方に片持ち状に延びる梁部と、を有して逆L字状に形成され、梁部に屋根が載置支持されている。
このようなカーポートに作用する荷重としては、自重や積雪による鉛直荷重、地震や風等の水平荷重、交通振動等が挙げられるが、特に問題となるのが屋根面に作用する風圧力や積雪である。風圧力や積雪が屋根面に作用すると、フレームを介して基礎に大きな転倒モーメントが生じることから、この転倒モーメントに抵抗できるだけの形状、寸法、重量を有した基礎を構築しなければならなくなる。
【0003】
そのような基礎を構築すると材料コストや施工コストが増加してしまうため、屋根またはフレームの片持ち先端部を支持する補助支柱を付加することで、基礎に生じる転倒モーメントを低減させる構造が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された補助支柱は、その一端部が支持金具を介してフレームの梁部先端に連結され、他端部が支持金具を介して地盤に連結されており、屋根面に作用する鉛直荷重を地盤に直接伝達して支持するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−221928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の補助支柱は、その両端部がフレームおよび地盤に連結されるため、屋根面に作用する鉛直荷重が直接的に伝達され、補助支柱に大きな軸力が発生することから、その断面が過大になってしまうという問題がある。また、補助支柱によって屋根の先端部と地盤とを直接的に連結することによって門型のフレームが構成されることとなるが、このような門型フレームは逆L字状のフレームと比べて剛性が大きくなることから固有周期が短くなり、振動の影響を受けやすくなるという不都合を生じる。このため、地震や風、交通振動等、頻繁に作用する比較的小さな外乱によってフレームや基礎が繰り返し荷重を受け、長期的に損傷が蓄積されることによって強度低下を招いてしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、長期的な強度低下を抑制しつつ過大な荷重に対する支持力を向上させることができる屋根支持装置およびカーポートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の屋根支持装置は、片持ち形式の屋根構造体の片持ち先端部と、この屋根構造体から離れた支持体と、を連結して前記屋根構造体の先端部を支持する屋根支持装置であって、前記屋根構造体の先端部と前記支持体とに亘って設けられる長尺状の支持部材と、前記支持部材の一端部と前記屋根構造体の先端部とを接続する第1接続部と、前記支持部材の他端部と前記支持体とを接続する第2接続部と、前記第1接続部および前記第2接続部のいずれか一方に設けられるダンパー装置と、を備え、前記ダンパー装置は、前記支持部材の一端部と前記屋根構造体の先端部との相対移動、または前記支持部材の他端部と前記支持体との相対移動に伴って減衰力を発揮する減衰部材と、前記支持部材の一端部または他端部に対して当該支持部材の軸方向に沿ってスライド自在に設けられた前記支持部材よりも大径な管状のスライド部材と、を備え、前記支持部材は、前記スライド部材を貫通して前記屋根構造体と前記支持体と亘って設けられ、前記減衰部材は、前記スライド部材の内周と前記支持部材の外周との間に介挿されるとともに、当該支持部材と当該スライド部材との相対変位に伴ってせん断変形することで減衰力を発揮する粘弾性材料から構成されていることを特徴とする。
【0008】
このような本発明によれば、支持部材と屋根構造体の先端部または支持体との相対移動に伴ってダンパー装置の減衰部材が減衰力を発揮することで、屋根構造体の片持ち先端部の振動を減衰させることができ、屋根構造体に作用する繰り返し荷重を抑制することができる。従って、屋根構造体の基礎や基端部に対する損傷の蓄積を防止し、長期に亘って強度を維持させることができる。また、屋根構造体に作用する荷重は、その先端部からダンパー装置および支持部材を介して支持体に伝達されることから、屋根面に大きな風圧力や積雪荷重等の鉛直荷重が作用しても、その鉛直荷重を屋根構造体と屋根支持装置とで分担して支持することができる。従って、屋根支持装置の支持部材に荷重が集中することがなく、支持部材に生じる軸力を抑制することができ、経済的な設計が可能になる。
また、支持部材とそれよりも大径の管状部材との間に減衰部材を介挿することで、管状部材によって減衰部材を覆うことができ、減衰部材の劣化を防止するとともに、減衰部材の剥離も防ぐことができる。ここで、粘弾性材料から構成される減衰部材は、紫外線によって劣化しやすいという性質があるが、屋外で使用する場合にも管状部材で覆って紫外線を遮断することで、減衰部材の長寿命化を図ることができる。
また、第1規制部材および第2規制部材によって支持部材の軸方向に沿ったスライド部材のスライドを所定値以下に規制することで、所定値を超えるような荷重が作用した場合には、その荷重を支持部材に直接伝達して支持体によって支持させることができる。従って、通常想定される大きさの荷重に対しては、減衰部材の変形による減衰力を発揮させつつ荷重を支持し、想定を超える過大な荷重(例えば、突風や台風、大雪等)に対しては、規制部材によって直接的に支持部材から支持体に荷重を伝達することで、より大きな支持力を得ることができる。また、規制部材によってスライド部材のスライドを所定値以下に規制することで、減衰部材の過剰な変形を抑えることができ、減衰部材の破損を防止して性能を維持することができる。
【0009】
この際、前記ダンパー装置は、前記支持部材の軸方向一方側に向かう前記スライド部材のスライドを所定値以下に規制する第1規制部材と、前記支持部材の軸方向他方側に向かう前記スライド部材のスライドを所定値以下に規制する第2規制部材と、を備え、前記第1規制部材および前記第2規制部材は、前記支持部材よりも大径かつ管状の留管で構成され、当該支持部材に固定されていることが好ましい。
【0010】
このような構成によれば、粘弾性材料から構成された減衰部材が支持部材とスライド部材との相対変位に伴ってせん断変形し、その変形に応じた減衰力を発揮することで、屋根構造体の片持ち先端部の振動を効果的に減衰させることができる。ここで、粘弾性材料は、その変形速度に応じて減衰力を発揮し、振動エネルギーを熱エネルギーに変換する性質を有するため、屋根構造体に作用する比較的小さな振動や荷重を効率的に吸収して損傷の累積を抑制することができる。
【0011】
さらに、前記スライド部材は、管状の周方向の一部が切り欠かれて軸方向に沿って延びる隙間部を有して形成されていることが好ましい。
【0013】
また、前記ダンパー装置は、前記第1接続部に設けられていることが好ましい。
【0015】
本発明のカーポートは、地盤に設けられる基礎と、この基礎に固定されるフレームと、このフレームに支持される屋根と、を備えるカーポートであって、前記フレームは、前記基礎から鉛直方向に延びる柱部と、この柱部の上端から側方に片持ち状に延びる梁部と、を有し、前記梁部の先端部または前記屋根の一部に前記屋根支持装置の第1接続部が接続されていることを特徴とする。
【0016】
このような本発明によれば、カーポートのフレームや基礎に作用する繰り返し荷重を屋根支持装置によって抑制することができるので、損傷の蓄積を防止して強度を維持させることができ、カーポートの長寿命化を図ることができる。さらに、屋根面に大きな風圧力や積雪荷重等の鉛直荷重が作用しても、その鉛直荷重を屋根支持装置と分担して支持することで、基礎に作用する転倒モーメントを抑制することができ、基礎の簡素化によるコストダウンを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係るカーポートを示す斜視図
図2】前記カーポートを示す側面図
図3】前記カーポートに設けられる屋根支持装置を示す側面図
図4】前記屋根支持装置におけるダンパー装置のY−Z方向の拡大断面図
図5】前記屋根支持装置におけるダンパー装置のX−Y方向の拡大断面図
図6】前記ダンパー装置に所定値以下の荷重が加わったときの動作を示す断面図
図7】前記ダンパー装置に所定値以上の荷重が加わったときの動作を示す断面図
図8】前記実施形態における変形例を示す図
図9】前記実施形態における他の変形例を示す図
図10】前記実施形態におけるさらに他の変形例を示す図
図11】前記実施形態におけるさらに他の変形例を示す図
図12】前記ダンパー装置の変形例を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図面において幅方向をX、奥行き方向をY、高さ方向をZとする。
図1は、本発明の一実施形態に係るカーポートを示す斜視図である。
片持ち形式の屋根構造体であるカーポート1は、図1に示すように、地盤2に設けられる本体基礎3と、本体基礎3に固定されるフレーム4と、このフレーム4に支持される屋根5と、を備えている。
【0019】
フレーム4は、コンクリートからなる本体基礎3から鉛直方向に延びる柱部4aと、この柱部4aの上端から側方に片持ち状に延びる梁部4bと、を有して逆L字状に形成されている。このフレーム4は、例えば高さ200mm、幅100mmの中空のアルミ材で形成されている。
屋根5は、梁部4bに載置支持され、屋根面材5aと屋根面材5aを保持する垂木5bと屋根梁5cとを有しており、屋根面材5aはポリカーボネート板等で形成され、垂木5bおよび屋根梁5cは、中空のアルミ材で形成されている。
【0020】
カーポート1には、その片持ち先端部を支持する屋根支持装置10が設置されており、この屋根支持装置10は、フレーム4の梁部4b先端部と、地盤2に設けられたコンクリートからなる支持体6と、を連結して設けられている。
【0021】
図2は、前記カーポートを示す側面図である。
図2に示すように、フレーム4は、梁部4bで屋根5を載置支持し、梁部4bと一体に形成された柱部4aが本体基礎3に固定されることによって屋根5を支えている。屋根5は、X方向に等間隔で配置された複数(4本)の屋根梁5cによって屋根面材5aを支持している。
本体基礎3は、フレーム4の基礎として地盤2に埋設して設けられ、例えば幅400mm×長さ500mm×高さ500mmの略直方体状に形成されている。また、屋根支持装置10の基礎となる支持体6も地盤2に埋設して設けられ、例えば幅200mm×長さ200mm×高さ200mmの略立方体状に形成されている。
ここで、本体基礎3および支持体6の上側であり地盤2の上面には、土間コンクリートが形成され、この土間コンクリートによって駐車場の路面が構成されている。
【0022】
図3は、前記カーポートに設けられる屋根支持装置を示す側面図である。
図3に示すように、屋根支持装置10は、カーポート1(梁部4b)の先端部と支持体6とに亘って設けられる長尺状の支持部材11と、支持部材11の上端部(一端部)と梁部4bの先端部とを接続する第1接続部20と、支持部材11の下端部(他端部)と支持体6とを接続する第2接続部30と、第1接続部20に設けられるダンパー装置40と、を備えている。また、屋根支持装置10は、フレーム4に対応してダンパー装置40とともに一組ずつ設置されている。ここで、支持部材11は、例えば外径30mmかつ厚さ1.0mmのステンレス鋼管で形成されている。また、支持部材11の他端部には支持体6に埋設して定着部12が設けられ、支持部材11の一端部にはキャップ13(図4参照)が設けられている。
【0023】
第1接続部20は、梁部4bの先端部に支持部材11を接続する接続ブラケット21と、接続ブラケット21と梁部4bを螺合する接続留め具22と、接続ブラケット21に設けられたダンパー装置40と、を備えている。
第2接続部30は、支持部材11より径が大きい接続管31と、支持部材11と接続管31を貫通して螺合するボルト32とナット33と、を備えている。
【0024】
ダンパー装置40は、支持部材11の一端部に対して支持部材11の軸方向に沿ってスライド自在に設けられたスライド部材である管状部材41と、支持部材11の軸方向一方側(上方)に向かう管状部材41のスライドを所定値以下に規制する第1規制部材50と、支持部材11の軸方向他方側(下方)に向かう管状部材41のスライドを所定値以下に規制する第2規制部材60と、を備えている。
【0025】
図4は、前記屋根支持装置におけるダンパー装置のY−Z方向の拡大断面図である。
ダンパー装置40は、支持部材11の一端部と梁部4bの先端部との相対移動に伴って減衰力を発揮する減衰部材42を備えている。
減衰部材42は、支持部材11の一端部と管状部材41との相対変位に伴ってせん断変形することで減衰力を発揮する粘弾性材料であるVEM(Visco Elastic Material)で形成されている。VEMは、例えば支持部材11と梁部4bの先端部との相対移動の変化量を熱エネルギーに変換し、管状部材41を介して外部に熱エネルギーを放出するように構成されている。管状部材41は、支持部材11よりも大径で構成され、管状部材41に支持部材11が挿通されるとともに、管状部材41と支持部材11との間に減衰部材42が介挿されている。また、管状部材41は例えば外径42mmで厚さ1.0mmのステンレス鋼管によって形成されている。
【0026】
ダンパー装置40は、管状部材41の側面を切断して形成した隙間に挿入するブラケット43と、管状部材41にブラケット43を止める第1留め具44と、ブラケット43と接続ブラケット21とを止める第2留め具45と、を備え、ブラケット43と第1留め具44と第2留め具45とによって第1接続部20にダンパー装置40が取り付けられている。
第1規制部材50は、管状部材41と当接してストッパの役割を果たす留管51と、支持部材11と留管51との間に設置されるスペーサ52と、を備え、留管51とスペーサ52と支持部材11を貫通して螺合するボルト53とナット54によって支持部材11に固定されている。第2規制部材60は、管状部材41と当接してストッパの役割を果たす留管61と、支持部材11と留管61との間に設置されるスペーサ62と、を備え、留管61とスペーサ62と支持部材11を貫通して螺合するボルト63とナット64によって支持部材11に固定されている。
【0027】
図5は、前記屋根支持装置におけるダンパー装置のX−Y方向の拡大断面図である。
ダンパー装置40は、図5に示すように、断面C字状の管状部材41に支持部材11が挿通されるとともに、管状部材41と支持部材11との間に減衰部材42が介挿されている。減衰部材42を設置する際、管状部材41の側面の隙間部分を広げて、減衰部材42の上から覆い被せるように管状部材41を設置する。そして、管状部材41の隙間部分に略L字状の2枚のブラケット43を嵌め込み、第1留め具44で固定している。2枚のブラケット43を設置することで生じた隙間にL字状の接続ブラケット21を装着し、ブラケット43で接続ブラケット21を挟んだ状態にした後、第2留め具45で接続ブラケット21を固定する。接続ブラケット21を固定し設置することで、梁部4bとの接続部分が生じるため、接続ブラケット21と梁部4bとを接続し、接続留め具22で取り付ける。
このような構成によって、屋根5に加わる荷重は、フレーム4(梁部4b)に伝わり、梁部4bに取り付けられたダンパー装置40によって、荷重は熱エネルギーに変換され、屋根5に加わった荷重は吸収される。
以下、具体的なダンパー装置40の機能について、図6および図7を用いて説明する。
【0028】
図6は、前記ダンパー装置に所定値以下の荷重が加わったときの動作を示す断面図である。また、図6(A)は屋根に上向きの所定値以下の荷重が作用したときの図であり、図6(B)は屋根に下向きの所定値以下の荷重が作用したときの図である。
所定値以下の荷重とは、車両通行時の路面振動や通常の雨や風のときに屋根5に加わる荷重である。
先ず、図6(A)は、屋根5に上向きの所定値以下の荷重が梁部4bを介して第1接続部20からダンパー装置40に伝わったときの状態である。このとき、支持部材11に上向きの力が加わり減衰部材42からの反力のみ伝達される。そして、減衰部材42のせん断変形率が小さいため、管状部材41と第1規制部材50とは当接しない。屋根5に加わった上向きの荷重は、減衰部材42により吸収される。
【0029】
次に、図6(B)は、屋根5に下向きの所定値以下の荷重が梁部4bを介して第1接続部20からダンパー装置40に伝わったときの状態である。このとき、支持部材11に下向きの力が加わり減衰部材42からの反力のみ伝達される。そして、減衰部材42のせん断変形率が小さいため、管状部材41と第2規制部材60とは当接しない。屋根5に加わった下向きの荷重は、減衰部材42により吸収される。
【0030】
図7は、前記ダンパー装置に所定値以上の荷重が加わったときの動作を示す断面図である。また、図7(A)は屋根に上向きの所定値以上の荷重が作用したときの図であり、図7(B)は屋根に下向きの所定値以上の荷重が作用したときの図である。
所定値以上の荷重とは、突風や台風、大雪等の突発的な気象変化のときに屋根5に加わる想定を超える過大な荷重である。
先ず、図7(A)は、屋根5に上向きの所定値以上の荷重が梁部4bによって第1接続部20で接続されたダンパー装置40に伝わったときの状態である。このとき、減衰部材42から支持部材11に上向きの力が加わるとともに、減衰部材42のせん断変形率が100%を超え、例えば200%程度に達している。ここで、第1規制部材50が設置されていることで、管状部材41と第1規制部材50とが当接し減衰部材42の上方への所定値以上の変形が規制され、ダンパー装置40に加わる荷重は第1規制部材50から支持部材11に伝達され、支持部材11から支持体6に伝えられるため、上向きの荷重を支持体6および地盤2によって支持することができる。
【0031】
次に、図7(B)は、屋根5に下向きの所定値以上の荷重が梁部4bによって第1接続部20で接続されたダンパー装置40に伝わったときの状態である。このとき、減衰部材42から支持部材11に下向きの力が加わるとともに、減衰部材42のせん断変形率が100%を超え、例えば200%程度に達している。ここで、第2規制部材60が設置されていることで、管状部材41と第2規制部材60とが当接し減衰部材42の下方への所定値以上の変形が規制され、ダンパー装置40に加わる荷重は第2規制部材60から支持部材11に伝達され、支持部材11から支持体6に伝えられるため、下向きの荷重を支持体6および地盤2によって支持することができる。
このように、屋根支持装置10がダンパー装置40を備えることで、屋根5に所定値以内の荷重が加わった際は、減衰部材42で吸収し、屋根5に所定値以上の荷重が加わった際は、減衰部材42とともに第1規制部材50および第2規制部材60によって、荷重を分散することができる。
【0032】
このような本実施形態によれば、以下の作用・効果を奏することができる。
(1)支持部材11とカーポート1の先端部である梁部4bまたは支持体6との相対移動に伴ってダンパー装置40の減衰部材42が減衰力を発揮することで、カーポート1の梁部4bの振動を減衰させることができ、カーポート1に作用する繰り返し荷重を抑制することができる。
(2)ダンパー装置40によって、カーポート1の本体基礎3やフレーム4に対する損傷の蓄積を防止し、長期に亘って強度を維持させることができる。
(3)カーポート1に作用する荷重は、梁部4bからダンパー装置40および支持部材11を介して支持体6に伝達されることから、屋根5に大きな風圧力や積雪荷重等の鉛直荷重が作用しても、その鉛直荷重をカーポート1と屋根支持装置10とで分担して支持することができる。従って、カーポート1の支持部材11に荷重が集中することがなく、支持部材11に生じる軸力を抑制することができ、経済的な設計が可能になる。
【0033】
(4)粘弾性材料から構成された減衰部材42が支持部材11と管状部材41との相対変位に伴ってせん断変形し、その変形に応じた減衰力を発揮することで、屋根5を載置する梁部4bの振動を効果的に減衰させることができる。
(5)支持部材11とそれよりも大径の管状部材41との間に減衰部材42を介挿することで、管状部材41によって減衰部材42を覆うことができ、管状部材41の劣化を防止するとともに、減衰部材の剥離も防ぐことができる。また、管状部材41で覆って紫外線を遮断することで、減衰部材42の長寿命化を図ることができる。
【0034】
(6)第1規制部材50および第2規制部材60によって支持部材11の軸方向に沿った管状部材41のスライドを所定値以下に規制することで、所定値を超えるような荷重が作用した場合には、その荷重を支持部材11に直接伝達して支持体6によって支持させることができる。
(7)通常想定される大きさの荷重に対しては、減衰部材42の変形による減衰力を発揮させつつ荷重を支持し、想定を超える過大な荷重に対しては、第1規制部材50および第2規制部材60によって直接的に支持部材11から支持体6に荷重を伝達することで、より大きな支持力を得ることができる。
(8)第1規制部材50および第2規制部材60によってスライド部材である管状部材41のスライドを所定値以下に規制することで、減衰部材42の過剰な変形を抑えることができ、減衰部材42の破損を防止して性能を維持することができる。
【0035】
(9)カーポート1の本体基礎3やフレーム4に作用する繰り返し荷重を屋根支持装置10によって抑制することができるので、損傷の蓄積を防止して強度を維持させることができ、カーポート1の長寿命化を図ることができる。
(10)屋根5に大きな風圧力や積雪荷重等の鉛直荷重が作用しても、その鉛直荷重を屋根支持装置10と分担して支持することで、基礎に作用する転倒モーメントを抑制することができ、本体基礎3の簡素化によるコストダウンを図ることができる。
【0036】
〔実施形態の変形〕
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0037】
例えば、前記実施形態では、屋根支持装置10はカーポート1に設置されているものとしたが、カーポート1に限らず、図8に示すように、屋根を建物70の外壁71に添わせて設置した庇1aに設置してもよく、任意の片持ち屋根構造の構造物に設置が可能である。
また、前記実施形態では、地盤2に支持体6を設けたが、支持体は地盤2に限らず、例えば建物の外壁や建物基礎であっててもよい。そして、建物の外壁や建物基礎に第1接続部20および第2接続部30を接続する際、図9に示すように、支持体に接続させてもよい。
【0038】
具体的には、図9(A)に示すように、第2接続部30は、支持部材11より径が大きい接続管31aと、支持部材11と接続管31aを貫通して螺合するボルト32aとナット33aと、接続管31aと支持部材11との間に設置されるスペーサ34と、接続管31aに取り付ける第1取付けブラケット35と、第1取付けブラケット35の角度と外壁71との角度を調節する第2取付けブラケット36と、を備え、接続ブラケット21と接続留め具22とによって、図9(B)に示すように、外壁71に接続されていてもよい。なお、図9において、第2接続部30は第1接続部20でもよく、第1取付けブラケット35および第2取付けブラケット36の形状は、接続ブラケット21に取り付けられれば、どのような形状であってもよい。
【0039】
前記実施形態では、ダンパー装置40が粘弾性体からなる減衰部材42を備えていたが、振動を吸収することが可能な部材であれば任意の素材を利用することが可能である。すなわち、減衰部材としては、粘弾性体(VEM)に限らず、鉛等の金属材料でもよいし、弾塑性材料でもよいし、摩擦によって減衰力を発揮する材料でもよいし、オイル等の粘性材料であってもよい。
また、ダンパー装置40は、支持部材11よりも径が大きい管状部材41を備え、管状部材41と支持部材11との間に減衰部材42を設置したが、管状部材41と支持部材11との間ではなく、任意の大きさに形成された2枚のプレートの間に減衰部材42を設置し、そのプレートに接続部を設けることでダンパー装置40を構成してもよい。また、粘弾性体(VEM)のように紫外線によって劣化する素材から減衰部材を構成する場合には、減衰部材を覆って紫外線を遮断するためのカバー部材等が設けられていてもよい。
【0040】
前記実施形態では、屋根支持装置10は梁部4bに平行に取り付けられていたが、図10に示すように、支持体6をカーポート1の奥行方向Xにズラして設置してもよい。このような構成にすることで、屋根5に加わる鉛直方向の荷重だけではなく、白抜き矢印が示す方向からの横力がカーポート1に加わったとしても、屋根支持装置10は加わった荷重を吸収できる。
また、屋根支持装置10は梁部4bに取り付けず、図11に示すように、任意の梁部4c等を設置し屋根支持装置10を取り付けてもよい。
【0041】
さらに、ダンパー装置40は、図12(A)に示すように、管状部材41とブラケット43とが一体となった管状部材41aを用いて第1接続部20または第2接続部30に取り付けてもよいし、図12(B)に示すように、管状部材41と板状のブラケット43aとを溶接して一体にした管状部材41bを用いて第1接続部20または第2接続部30に取り付けてもよい。管状部材41およびブラケット43の形状は、第1接続部20または第2接続部30にダンパー装置40を取り付けることができれば、どのような形状であってもよい。
【0042】
前記実施形態では、支持部材11は、第1規制部材50および第2規制部材60を備えていたが、第1規制部材50および第2規制部材60のいずれか一方だけを備えていてもよいし、規制部材を備えていなくてもよい。また、支持部材は、1本の連続した鋼管から構成されたものに限らず、複数の部材をつなぎ合わせて構成されたものでもよい。また、支持部材に対してダンパー装置が複数設けられていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
以上のように、本発明は、長期的な強度低下を抑制しつつ過大な荷重に対する支持力を向上させることができる屋根支持装置およびカーポートに好適に利用できる。
【符号の説明】
【0044】
1 カーポート
2 地盤
3 本体基礎
4 フレーム
4a 柱部
4b 梁部
5 屋根
6 支持体
10 屋根支持装置
11 支持部材
20 第1接続部
30 第2接続部
40 ダンパー装置
41 管状部材
42 減衰部材
50 第1規制部材
60 第2規制部材
【要約】
【課題】長期的な強度低下を抑制しつつ過大な荷重に対する支持力を向上させることができる屋根支持装置およびカーポートの提供。
【解決手段】カーポート1と支持体6とを連結してカーポート1の先端部を支持する屋根支持装置10は、カーポート1と支持体6とに亘って設けられる支持部材11と、支持部材11とカーポート1とを接続する第1接続部20と、支持部材11と支持体6とを接続する第2接続部30と、第1接続部20および前記第2接続部30のいずれか一方に設けられるダンパー装置40と、を備え、ダンパー装置40は、支持部材11とカーポート1または支持体6との相対移動に伴って減衰力を発揮することで、カーポート1に作用する繰り返し荷重を抑制し、カーポート1の本体基礎3やフレーム4に対する損傷の蓄積を防止し、長期に亘って強度を維持させることができる。
【選択図】図1
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図12