特許第5966268号(P5966268)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ JSR株式会社の特許一覧

特許5966268アレイ基板、液晶表示素子およびアレイ基板の製造方法
<>
  • 特許5966268-アレイ基板、液晶表示素子およびアレイ基板の製造方法 図000027
  • 特許5966268-アレイ基板、液晶表示素子およびアレイ基板の製造方法 図000028
  • 特許5966268-アレイ基板、液晶表示素子およびアレイ基板の製造方法 図000029
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5966268
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】アレイ基板、液晶表示素子およびアレイ基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1333 20060101AFI20160728BHJP
   G03F 7/033 20060101ALI20160728BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20160728BHJP
   G02F 1/1368 20060101ALI20160728BHJP
   G02F 1/1337 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
   G02F1/1333 505
   G03F7/033
   G03F7/004 501
   G02F1/1368
   G02F1/1337 525
【請求項の数】7
【全頁数】48
(21)【出願番号】特願2011-161413(P2011-161413)
(22)【出願日】2011年7月22日
(65)【公開番号】特開2013-25203(P2013-25203A)
(43)【公開日】2013年2月4日
【審査請求日】2014年2月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120569
【弁理士】
【氏名又は名称】大阿久 敦子
(72)【発明者】
【氏名】一戸 大吾
(72)【発明者】
【氏名】米田 英司
【審査官】 廣田 かおり
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−279728(JP,A)
【文献】 特開2010−181866(JP,A)
【文献】 特開2011−138116(JP,A)
【文献】 特開2010−134311(JP,A)
【文献】 特開2001−022065(JP,A)
【文献】 特開2008−260909(JP,A)
【文献】 特開2011−095432(JP,A)
【文献】 特開2006−209113(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1333
G02F 1/1337
G02F 1/1368
G03F 7/004
G03F 7/033
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング能動素子と、
前記スイッチング能動素子上に配置された絶縁膜と、
前記絶縁膜に形成されたコンタクトホールと、
前記コンタクトホールを介して前記スイッチング能動素子と電気的に接続された画素電極とを有する液晶表示素子用のアレイ基板であって、
前記絶縁膜は、
[A]不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸無水物からなる群より選ばれる少なくとも1種から形成される構成単位およびエポキシ基含有不飽和化合物から形成される構成単位を含む共重合体、
[B]重合性化合物、
[C]重合開始剤、および
[D]下記式(1)で表される化合物および下記式(2)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物
を含有する感放射線性樹脂組成物から形成されることを特徴とするアレイ基板。
【化1】
【化2】
(式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立して水素原子、電子吸引性基またはアミノ基であり、かつ上記電子吸引性基は、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、アルキルスルホニル基、アルキルオキシスルフォニル基、ジシアノビニル基、トリシアノビニル基またはスルホニル基である。但し、R〜Rのうち少なくとも1つは上記電子吸引性基であり、かつR〜Rのうち少なくとも1つはアミノ基である。また、上記アミノ基は、水素原子の全部または一部が炭素数1〜6のアルキル基で置換されていてもよい。
式(2)中、R〜R16は、それぞれ独立して水素原子、電子吸引性基またはアミノ基である。但し、R〜R16のうち少なくとも1つはアミノ基である。また、上記アミノ基は、水素原子の全部または一部が炭素数2〜6のアルキレン基で置換されていてもよい。Aは、単結合、カルボニルオキシ基、カルボニルメチレン基、スルフィニル基、スルホニル基、メチレン基または炭素数2〜6のアルキレン基である。但し、上記メチレン基およびアルキレン基は、水素原子の全部または一部がシアノ基、ハロゲン原子またはフルオロアルキル基で置換されていてもよい。)
【請求項2】
前記絶縁膜の上に透明電極を有し、前記透明電極の上に、光配向性基を有する感放射線性重合体を含む液晶配向剤および光配向性基を有さないポリイミドを含む液晶配向剤のうちのいずれかを用いて得られた配向膜を有することを特徴とする請求項1に記載のアレイ基板。
【請求項3】
前記配向膜は、光配向性基を有する感放射線性重合体を含む液晶配向剤を用いて得られた配向膜であることを特徴とする請求項に記載のアレイ基板。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のアレイ基板を有することを特徴とする液晶表示素子。
【請求項5】
[1][A]不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸無水物からなる群より選ばれる少なくとも1種から形成される構成単位およびエポキシ基含有不飽和化合物から形成される構成単位を含む共重合体、
[B]重合性化合物、
[C]重合開始剤、および
[D]下記式(1)で表される化合物および下記式(2)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物
を含有する感放射線性樹脂組成物の塗膜を、スイッチング能動素子の形成された基板上に形成する工程、
[2]前記感放射線性樹脂組成物の塗膜の少なくとも一部に放射線を照射する工程、
[3]工程[2]で放射線が照射された前記塗膜を現像してコンタクトホールの形成された塗膜を得る工程、並びに
[4][3]工程で得られた塗膜を200℃以下で硬化して絶縁膜を形成する工程
を有することを特徴とするアレイ基板の製造方法。
【化3】
【化4】
(式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立して水素原子、電子吸引性基またはアミノ基であり、かつ上記電子吸引性基は、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、アルキルスルホニル基、アルキルオキシスルフォニル基、ジシアノビニル基、トリシアノビニル基またはスルホニル基である。但し、R〜Rのうち少なくとも1つは上記電子吸引性基であり、かつR〜Rのうち少なくとも1つはアミノ基である。また、上記アミノ基は、水素原子の全部または一部が炭素数1〜6のアルキル基で置換されていてもよい。
式(2)中、R〜R16は、それぞれ独立して水素原子、電子吸引性基またはアミノ基である。但し、R〜R16のうち少なくとも1つはアミノ基である。また、上記アミノ基は、水素原子の全部または一部が炭素数2〜6のアルキレン基で置換されていてもよい。Aは、単結合、カルボニルオキシ基、カルボニルメチレン基、スルフィニル基、スルホニル基、メチレン基または炭素数2〜6のアルキレン基である。但し、上記メチレン基およびアルキレン基は、水素原子の全部または一部がシアノ基、ハロゲン原子またはフルオロアルキル基で置換されていてもよい。)
【請求項6】
配向膜を200℃以下で形成する工程をさらに有することを特徴とする請求項5に記載のアレイ基板の製造方法。
【請求項7】
前記配向膜を200℃以下で形成する工程は、光配向性基を有する感放射線性重合体を含む液晶配向剤および光配向性基を有さないポリイミドを含む液晶配向剤のうちのいずれかを用いて前記配向膜を形成することを特徴とする請求項6に記載のアレイ基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アレイ基板、液晶表示素子およびアレイ基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子は、例えば、ガラス基板など、一対の基板に液晶を挟持して構成される。一対の基板の表面には液晶の配向を制御する配向膜を設けることが可能である。液晶表示素子は、バックライトや外光など、光源から放射された光に対して微細なシャッターとして機能し、光を部分的に透過し、または遮光をして表示を行う。液晶表示素子は、薄型、軽量などの優れた特徴を有する。
【0003】
液晶表示素子は、開発当初、キャラクタ表示等を中心とする電卓や時計の表示素子として利用された。その後、単純マトリクス方式の開発によりドットマトリクス表示が容易となってノートパソコンの表示素子などへと用途を拡大させた。さらに、アクティブマトリクス型の開発によってコントラスト比や応答性能の優れた良好な画質を実現できるようになり、高精細化、カラー化および視野角拡大などの課題も克服してデスクトップコンピュータのモニター用などに用途を拡大した。最近では、より広い視野角や液晶の高速応答化や表示品位の向上などが実現され、大型の薄型テレビ用表示素子として利用されるに至っている。そして、液晶表示素子は、さらなる高画質化や明るさの向上が求められている。
【0004】
アクティブマトリクス型の液晶表示素子では、液晶を挟持する一対の基板のうちの一方の上にゲート配線と信号配線とが格子状に配設され、ゲート配線と信号配線との交差部に薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transister)などのスイッチング能動素子が設けられており、アレイ基板を構成している。アレイ基板上、ゲート配線と信号配線とに囲まれた領域に画素電極が配置され、この画素電極により表示単位である画素が構成されている。
【0005】
液晶表示素子において、明るさの向上を実現しようとする場合、画素電極を大きくすることが有効となる。画素電極の面積をできる限り大きくし、開口率を向上させることで明るさを増大することができる。その場合、例えば、特許文献1に記載されるように、画素電極をゲート配線や信号配線と重畳させ、開口率を向上させる技術が知られている。特許文献1には、アレイ基板において、画素電極と配線との間に厚膜の有機材料からなる絶縁膜を設けることにより、画素電極と配線との間のカップリング容量増大を抑制しつつ、開口率を向上させた液晶表示素子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−264798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載される液晶表示素子のように、アレイ基板において配線と画素電極との間に厚膜の有機材料からなる絶縁膜を設ける場合、TFT等のスイッチング素子と画素電極との電気的な接続は、絶縁膜に設けられたコンタクトホールを用いて実現される。
有機材料からなる絶縁膜にコンタクトホールを形成する場合、フォトリソグラフィ技術の利用が有効である。その場合、絶縁膜の形成材料として、感放射線性の樹脂組成物(以下、感放射線性樹脂組成物と言う。)の使用が好ましい。そして特に、感放射線性樹脂組成物は、所謂ポジ型の選択が好ましいとされている。
【0008】
ポジ型の感放射線性樹脂組成物を用いた絶縁膜では、放射線に感応すると現像液への溶解性が増大して感応部分が除去される。したがって、ポジ型の感放射線性樹脂組成物を使用する場合、絶縁膜のコンタクトホールの形成部分に感放射線を照射することにより、比較的容易に所望とするコンタクトホールを形成することができる。尚、本発明において、「放射線」とは、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、荷電粒子線等を含む概念である。
【0009】
しかし、ポジ型の感放射線性樹脂組成物の場合、例えば、放射線の照射を受けて酸を生成する化合物を成分として含有するなど、特殊な材料が必要となる。そうした特殊な材料は準備が容易ではなく、また、材料選択の幅は狭いものとなる。そこで、フォトリソグラフィ技術に適用でき、入手の容易な多様な材料を用いて組成物を実現することができるネガ型の感放射線性樹脂組成物に対しても、絶縁膜への適用が求められている。ネガ型の感放射線性樹脂組成物は、放射線の照射を受けて放射線に感応すると現像液への溶解性が低下し、現像後に感応部分が残存する感放射線性樹脂組成物である。
【0010】
ネガ型の感放射線性樹脂組成物を、コンタクトホールを備えた絶縁膜に適用しようとする場合、絶縁膜の製造工程における絶縁膜の伸縮が問題となることがある。
すなわち、従来の感放射線性樹脂組成物を用いてコンタクトホールを備えた絶縁膜の形成を行う場合、露光と現像の後に、230℃〜260℃程度という、200℃を超える非常に高い温度で加熱して硬化を行う必要がある。したがって、フォトリソグラフィ技術を利用した従来の絶縁膜の形成においては、熱的な膨張または収縮などのサイズの変動が生じて、それが許容できる範囲を超えた場合に、配置位置とサイズの管理が厳しく求められるコンタクトホールの形成に不都合を生じることがある。
【0011】
特に、ネガ型の感放射線性樹脂組成物を用いて絶縁膜にコンタクトホールを形成しようとする場合、上述したように、コンタクトホール以外の絶縁膜の残存部分に放射線を照射(以下、「露光」と称す。)し、反応を起こさせ、その後、必要な場合に加熱硬化をしてコンタクトホールを備えた絶縁膜の形成を行うことになる。そのため、露光、現像、加熱硬化と続く絶縁膜の製造工程において、絶縁膜に大きな伸縮が生じ、絶縁膜のサイズの変動が大きくなることがある。こうした製造工程での絶縁膜の伸縮は、露光と現像の後に加熱硬化が必要となるポジ型の感放射線性樹脂組成物を用いた場合も同様に生じて問題となるが、ポジ型に比べてネガ型の感放射線性樹脂組成物の場合に、より顕著に現れることがあった。
【0012】
以上から、感放射線性樹脂組成物を用いてアレイ基板上の絶縁膜を構成するとともに、熱的な膨張や収縮を抑えて所望とするコンタクトホールの形成を実現することが望まれている。特に、ネガ型の感放射線性樹脂組成物を用いてアレイ基板上の絶縁膜を構成するとともに、熱的な膨張や収縮を抑えてコンタクトホールの形成を可能にすることが望まれている。そのため、露光と現像の後の硬化工程を従来の高温加熱による硬化工程に代えて、例えば、200℃以下の低温によって硬化することが可能な、感放射線性樹脂組成物が必要となる。特に、200℃以下の低温によって硬化することが可能な、ネガ型の感放射線性樹脂組成物が必要となる。このような硬化特性を備えた感放射線性樹脂組成物、特にネガ型の感放射線性樹脂組成物は、所望とする絶縁膜の提供を可能とする。
【0013】
また、最近、省エネルギーの観点からも、アレイ基板を有する液晶表示素子の製造における加熱工程の低温化が求められるようになっている。すなわち、アレイ基板やそれを用いた液晶表示素子の製造において、各構成要素の硬化工程等、加熱が必要な工程の低温化による省エネルギーの実現が求められるようになっている。
【0014】
以上より、低温硬化によって、コンタクトホールを備えた絶縁膜の形成をすることができる感放射線性樹脂組成物の実現が強く望まれている。特に、低温硬化によって、コンタクトホールを備えた絶縁膜の形成をすることができるネガ型の感放射線性樹脂組成物の実現が強く望まれている。そして、そうした感放射線性の樹脂組成物を用いて低温硬化された絶縁膜を有するアレイ基板の実現が強く望まれている。さらに、そうしたアレイ基板を用いて構成された液晶表示素子の実現が強く望まれている。
【0015】
本発明は、以上のような課題に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、低温硬化が可能な感放射線性樹脂組成物から形成された絶縁膜を有するアレイ基板およびその製造方法を提供することであり、特に、低温硬化が可能なネガ型の感放射線性樹脂組成物から形成された絶縁膜を有するアレイ基板およびその製造方法を提供することである。
【0016】
また、本発明の別の目的は、そうした低温硬化が可能な感放射線性樹脂組成物から形成された絶縁膜を有するアレイ基板を用いて構成された液晶表示素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の第1の態様は、スイッチング能動素子と、
そのスイッチング能動素子上に配置された絶縁膜と、
その絶縁膜に形成されたコンタクトホールと、
そのコンタクトホールを介してスイッチング能動素子と電気的に接続された画素電極とを有する液晶表示素子用のアレイ基板であって、
絶縁膜は、不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸無水物からなる群より選ばれる少なくとも1種から形成される構成単位およびエポキシ基含有不飽和化合物から形成される構成単位を含む共重合体を含有する感放射線性樹脂組成物から形成されることを特徴とするアレイ基板に関する。
【0018】
本発明の第1の態様において、感放射線性樹脂組成物は、下記式(1)で表される化合物、下記式(2)で表される化合物、3級アミン化合物、アミン塩、ホスホニウム塩、アミジン塩、アミド化合物、チオール化合物、ブロックイソシアネート化合物およびイミダゾール環含有化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含有することが好ましい。
【0019】
【化1】
【0020】
【化2】
(式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立して水素原子、電子吸引性基またはアミノ基である。但し、R〜Rのうち少なくとも1つは電子吸引性基であり、かつR〜Rのうち少なくとも1つはアミノ基である。また、上記アミノ基は、水素原子の全部または一部が炭素数1〜6のアルキル基で置換されていてもよい。
式(2)中、R〜R16は、それぞれ独立して水素原子、電子吸引性基またはアミノ基である。但し、R〜R16のうち少なくとも1つはアミノ基である。また、上記アミノ基は、水素原子の全部または一部が炭素数2〜6のアルキレン基で置換されていてもよい。Aは、単結合、カルボニル基、カルボニルオキシ基、カルボニルメチレン基、スルフィニル基、スルホニル基、メチレン基または炭素数2〜6のアルキレン基である。但し、上記メチレン基およびアルキレン基は、水素原子の全部または一部がシアノ基、ハロゲン原子またはフルオロアルキル基で置換されていてもよい。)
【0021】
本発明の第1の態様において、絶縁膜は、200℃以下の硬化温度で形成されたものであることが好ましい。
【0022】
本発明の第1の態様において、絶縁膜の上に透明電極を有し、その透明電極の上に、光配向性基を有する感放射線性重合体を含む液晶配向剤および光配向性基を有さないポリイミドを含む液晶配向剤のうちのいずれかを用いて得られた配向膜を有することが好ましい。
【0023】
本発明の第1の態様において、配向膜は、光配向性基を有する感放射線性重合体を含む液晶配向剤を用いて得られた配向膜であることが好ましい。
【0024】
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様のアレイ基板を有することを特徴とする液晶表示素子に関する。
【0025】
本発明の第3の態様は、
[1]不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸無水物からなる群より選ばれる少なくとも1種から形成される構成単位およびエポキシ基含有不飽和化合物から形成される構成単位を含む共重合体を含有する感放射線性樹脂組成物の塗膜を、スイッチング能動素子の形成された基板上に形成する工程、
[2]前記感放射線性樹脂組成物の塗膜の少なくとも一部に放射線を照射する工程、
[3]工程[2]で放射線が照射された前記塗膜を現像してコンタクトホールの形成された塗膜を得る工程、並びに
[4][3]工程で得られた塗膜を200℃以下で硬化して絶縁膜を形成する工程
を有することを特徴とするアレイ基板の製造方法に関する。
【0026】
本発明の第3の態様において、感放射線性樹脂組成物は、下記式(1)で表される化合物、下記式(2)で表される化合物、3級アミン化合物、アミン塩、ホスホニウム塩、アミジン塩、アミド化合物、チオール化合物、ブロックイソシアネート化合物およびイミダゾール環含有化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含有することが好ましい。
【0027】
【化3】
【0028】
【化4】
(式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立して水素原子、電子吸引性基またはアミノ基である。但し、R〜Rのうち少なくとも1つは電子吸引性基であり、かつR〜Rのうち少なくとも1つはアミノ基である。また、上記アミノ基は、水素原子の全部または一部が炭素数1〜6のアルキル基で置換されていてもよい。
式(2)中、R〜R16は、それぞれ独立して水素原子、電子吸引性基またはアミノ基である。但し、R〜R16のうち少なくとも1つはアミノ基である。また、上記アミノ基は、水素原子の全部または一部が炭素数2〜6のアルキレン基で置換されていてもよい。Aは、単結合、カルボニル基、カルボニルオキシ基、カルボニルメチレン基、スルフィニル基、スルホニル基、メチレン基または炭素数2〜6のアルキレン基である。但し、上記メチレン基およびアルキレン基は、水素原子の全部または一部がシアノ基、ハロゲン原子またはフルオロアルキル基で置換されていてもよい。)
【0029】
本発明の第3の態様において、配向膜を200℃以下で形成する工程をさらに有することが好ましい。
【0030】
本発明の第3の態様において、配向膜を200℃以下で形成する工程は、光配向性基を有する感放射線性重合体を含む液晶配向剤および光配向性基を有さないポリイミドを含む液晶配向剤のうちのいずれかを用いて前記配向膜を形成することが好ましい。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、低温硬化が可能な感放射線性樹脂組成物から形成された絶縁膜を有するアレイ基板とその製造方法が提供され、特に、低温硬化が可能なネガ型の感放射線性樹脂組成物から形成された絶縁膜を有するアレイ基板とその製造方法が提供される。
【0032】
また、本発明によれば、低温硬化が可能な感放射線性樹脂組成物から形成された絶縁膜を有するアレイ基板からなる液晶表示素子が提供され、特に、低温硬化が可能なネガ型の感放射線性樹脂組成物から形成された絶縁膜を有するアレイ基板からなる液晶表示素子が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本実施の形態のアレイ基板の要部構造を示す模式的な断面図である。
図2】本実施の形態のアレイ基板の模式的な電極配線図である。
図3】本実施の形態の液晶表示素子の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の実施の形態のアレイ基板および液晶表示素子について説明する。
【0035】
<液晶表示素子>
本実施の形態の液晶表示素子は、本実施の形態のアレイ基板を用いて構成されたカラー液晶表示素子である。以下、本実施の形態のアレイ基板の構造および本実施の形態の液晶表示素子の構造について、図面を用いて説明する。
【0036】
本実施の形態の液晶表示素子は、例えば、アクティブマトリクス型のカラー液晶表示素子とすることができる。本実施の形態の液晶表示素子は、スイッチング能動素子、電極、および絶縁膜の形成された本実施の形態のアレイ基板と、透明電極の形成されたカラーフィルタ基板とが、液晶層を介して対向する構造とすることができる。
【0037】
図1は、本実施の形態のアレイ基板の要部構造を示す模式的な断面図である。
【0038】
図2は、本実施の形態のアレイ基板の模式的な電極配線図である。
【0039】
図1に示すアレイ基板1は、本実施の形態のアレイ基板の一例である。透明な基板4の一方の面に、スイッチング能動素子8が配置される。そして、スイッチング能動素子8に接続するソース電極5と、ドレイン電極6と、ゲート電極7とが配置される。スイッチング能動素子8の上には絶縁膜12が設けられ、絶縁膜12の上には、画素電極である透明電極9が配置される。透明電極9はITO(Indium Tin Oxide:錫をドープした酸化インジュウム)などからなる透明導電膜から形成される。透明電極9の上には、図に示すように液晶の配向を制御する配向膜10を設けることが可能である。絶縁膜12を貫通するように設けられた凹部構造は、コンタクトホール17であり、この部分を介して透明電極9とドレイン電極6とが電気的に接続する。その結果、画素電極である透明電極9とスイッチング能動素子8との電気的接続が可能となる。
【0040】
そして、図2に示すように、アレイ基板1上では、ソース配線18とゲート配線19とがマトリクス状に配設される。ソース配線18とゲート配線19の交差部近傍に、スイッチング能動素子8が設けられ、ソース電極5はソース配線18に接続し、ゲート電極7はゲート配線19に接続する。こうして、アレイ基板1上に区画された各画素が構成される。
【0041】
後述するように、本実施の形態のアレイ基板1において、絶縁膜12は、ソース電極5等の電極とスイッチング能動素子8とが形成された基板4上に、本実施の形態の感放射線性樹脂組成物を塗布し、コンタクトホール17の形成などの必要なパターニングをした後、硬化して形成される。絶縁膜12の形成に用いられる本実施の形態の感放射線性樹脂組成物は、例えば、ネガ型とすることが可能である。
【0042】
本実施の形態の感放射線性樹脂組成物は、200℃以下の低温硬化により、絶縁膜12を形成できるという特徴を備える。したがって、絶縁膜12は、加熱硬化工程におけるサイズの変動が抑えられ、所望の配置位置とサイズのコンタクトホール17の形成を可能とする。そして、本実施の形態のアレイ基板1では、200℃以下の低温硬化により絶縁膜12を形成することができて、低温加熱による製造が可能となる。
【0043】
さらに、本実施の形態のアレイ基板1では、透明電極9を形成した後、液晶配向用の配向膜10を設けることが可能である。配向膜10は、後述するように、光配向性基を有する感放射線性重合体を含む液晶配向剤または光配向性基を有さないポリイミドを含む液晶配向剤を用いて得ることができる。その場合、200℃以下の加熱温度で配向膜を形成することが可能となる。したがって、本実施の形態のアレイ基板1では、200℃以下の低温硬化により絶縁膜12を形成でき、さらに配向膜10を200℃以下の低温硬化により形成することができて、低温加熱による製造が可能となる。
次に、本実施の形態のアレイ基板を用いた本実施の形態の液晶表示素子について説明する。
【0044】
図3は、本実施の形態の液晶表示素子の模式的な断面図である。
【0045】
図3に示す液晶表示素子21は、アレイ基板1とカラーフィルタ基板22とからなるカラー液晶表示素子であり、本実施の形態の液晶表示素子の一例である。液晶表示素子21は、例えば、薄膜トランジスタ型のTN(Twisted Nematic)モード液晶表示素子であり、図1に示した本実施形態のアレイ基板1とカラーフィルタ基板22とが、TN液晶からなる液晶層23を介して対向する構造を有する。
アレイ基板1は、図3に示すように、透明な基板4の液晶層23側の面に、ソース電極5と、ドレイン電極6と、ゲート電極7と、スイッチング能動素子8と、絶縁膜12とを配置した構造を有する。そして、絶縁膜12の上には、画素電極である透明電極9が設けられている。絶縁膜12には、絶縁膜12を貫通するコンタクトホール17が設けられており、この部分を介して透明電極9とドレイン電極6とが電気的に接続する。その結果、画素電極である透明電極9とスイッチング能動素子8との電気的接続が可能となる。透明電極9の上には、液晶配向制御用の配向膜10が設けられている。
【0046】
カラーフィルタ基板22は、透明な基板11の液晶層23側の面に、赤色、緑色および青色の微小な着色パターン15と、ブラックマトリクス13とが配置されている。赤色、緑色および青色の着色パターン15は、格子状などの規則的な形状をとって配列される。尚、着色パターン15の色については、上記の赤色、緑色および青色の3色に限られるわけではなく、他の色を選択することや、他に黄色を加えて4色の着色パターンとすることも可能である。そして、各色の着色パターンを配列して、カラーフィルタ基板を構成することができる。
【0047】
着色パターン15とブラックマトリクス13の上には透明な共通電極14が設けられている。カラーフィルタ基板22の、液晶層23と接する面には、アレイ基板1と同様の配向膜10が設けられている。アレイ基板1とカラーフィルタ基板22の配向膜10は、必要であれば、配向処理が施され、アレイ基板1とカラーフィルタ基板22との間に挟持された液晶層23の均一な配向を実現する。
そして、液晶層23を介して対向するアレイ基板1とカラーフィルタ基板22との間の距離は、図示されないスペーサによって維持されており、通常、2μm〜10μmである。アレイ基板1とカラーフィルタ基板22は周辺部に設けられたシール材(図示されない)によって互いに固定されている。
アレイ基板1とカラーフィルタ基板22において、液晶層23に接する側と反対の側には、それぞれ偏光板28が配置されている。
【0048】
図3において、符号27は、液晶表示素子21の光源となるバックライトユニット(図示されない)から液晶層23に向けて照射されたバックライト光である。バックライトユニットとしては、例えば、冷陰極蛍光管(CCFL:Cold Cathode Fluorescent Lamp)などの蛍光管と、散乱板とが組み合わされた構造のものを用いることができる。また、白色LEDを光源とするバックライトユニットを用いることもできる。白色LEDとしては、例えば、独立したスペクトルを有する赤色LEDと、緑色LEDと、青色LEDとを用いて白色光を得る白色LED、赤色LEDと、緑色LEDと、青色LEDとを組み合わせて混色により白色光を得る白色LED、青色LEDと、赤色LEDと、緑色蛍光体とを組み合わせて混色により白色光を得る白色LED、青色LEDと、赤色発光蛍光体と、緑色発光蛍光体とを組み合わせて混色により白色光を得る白色LED、青色LEDと、YAG系蛍光体との混色により白色光を得る白色LED、青色LEDと、橙色発光蛍光体と、緑色発光蛍光体とを組み合わせて混色により白色光を得る白色LED、紫外線LEDと、赤色発光蛍光体と、緑色発光蛍光体と、青色発光蛍光体とを組み合わせて混色により白色光を得る白色LEDなどを挙げることができる。
【0049】
本実施形態の液晶表示素子21の液晶モードについては、上述のTNモードの他、STN(Super Twisted Nematic)、IPS(In−Planes Switching)、VA(Vertical Alignment)またはOCB(Optically Compensated Birefringence)などの液晶モードとすることもできる。その場合、特に、配向膜10については、各液晶モードに最適な液晶層の配向を実現する配向膜が選択される。例えば、本実施形態の液晶表示素子がVAモードの液晶表示素子の場合、配向膜には、垂直配向型の配向膜が使用される。
【0050】
以上のように、本実施の形態の液晶表示素子21は、本実施の形態のアレイ基板1を有する。アレイ基板1では、絶縁膜12に設けられたコンタクトホール17を介して透明電極9とドレイン電極6との電気的接続を実現する。アレイ基板1の絶縁膜12は、本実施の形態の感放射線性樹脂組成物を用い、200℃以下の低温硬化によって形成される。したがって、本実施の形態の液晶表示素子21では、アレイ基板1において、所望の配置位置とサイズのコンタクトホール17により、透明電極9とドレイン電極6との電気的接続を実現することが可能となる。
【0051】
次に、本実施の形態の液晶表示素子のアレイ基板の主要な構成要素であり、低温硬化が可能な絶縁膜の形成について詳しく説明する。本実施の形態のアレイ基板の絶縁膜は、本実施の形態の感放射線性樹脂組成物を用いて形成される。以下、本実施の形態の感放射線性樹脂組成物について、特にその組成成分について説明する。
【0052】
<感放射線性樹脂組成物>
本実施形態のアレイ基板の絶縁膜の製造に用いられる感放射線性樹脂組成物は、[A]アルカリ可溶性樹脂、[B]重合性化合物、および[C]重合開始剤を含有する。そしてさらに、[D]化合物を含有することができる。また、本発明の効果を損なわない限りその他の任意成分を含有してもよい。以上の組成を有する本実施の形態の感放射線性樹脂組成物は、ネガ型の感放射線性樹脂組成物としての使用が可能である。以下、本実施の形態の感放射線性樹脂組成物に含有される各成分について説明する。
【0053】
<[A]アルカリ可溶性樹脂>
[A]アルカリ可溶性樹脂としては、カルボキシル基を有することで、アルカリ現像性を有する樹脂であれば、特に限定されない。そして、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する構造単位およびエポキシ基を有する構造単位からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造単位を含む共重合体であることが好ましい。[A]アルカリ可溶性樹脂が、上記特定構造単位を含むことで、優れた表面硬化性および深部硬化性を有する硬化膜を形成することができる。
【0054】
[A]アルカリ可溶性樹脂は、(A1)不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸無水物からなる群より選択される少なくとも1種(以下、「(A1)化合物」とも称する。)と、(A2)エポキシ基含有不飽和化合物(以下、「(A2)化合物」とも称する。)とを共重合して合成することができる。そして、[A]アルカリ可溶性樹脂は、不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸無水物からなる群より選ばれる少なくとも1種から形成される構成単位並びにエポキシ基含有不飽和化合物から形成される構成単位を含む共重合体となる。
【0055】
[A]アルカリ可溶性樹脂は、例えば、溶媒中で重合開始剤の存在下、カルボキシル基含有構造単位を与える(A1)化合物と、エポキシ基含有構造単位を与える(A2)化合物とを共重合することによって製造できる。また、(A3)水酸基含有構造単位を与える水酸基含有不飽和化合物(以下、「(A3)化合物」とも称する。)をさらに加えて、共重合体とすることもできる。さらに、[A]アルカリ可溶性樹脂の製造においては、上記(A1)化合物、(A2)化合物および(A3)化合物と共に、(A4)化合物(上記(A1)、(A2)および(A3)化合物に由来する構造単位以外の構造単位を与える不飽和化合物)をさらに加えて、共重合体とすることもできる。以下、各化合物を詳述する。
【0056】
[(A1)化合物]
(A1)化合物としては、不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸、不飽和ジカルボン酸の無水物、多価カルボン酸のモノ〔(メタ)アクリロイルオキシアルキル〕エステル、両末端にカルボキシル基と水酸基とを有するポリマーのモノ(メタ)アクリレート、カルボキシル基を有する不飽和多環式化合物及びその無水物等が挙げられる。
【0057】
不飽和モノカルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等;
不飽和ジカルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸等;
不飽和ジカルボン酸の無水物としては、例えば、上記ジカルボン酸として例示した化合物の無水物等;
多価カルボン酸のモノ〔(メタ)アクリロイルオキシアルキル〕エステルとしては、例えば、コハク酸モノ〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕、フタル酸モノ〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕等;
両末端にカルボキシル基と水酸基とを有するポリマーのモノ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート等;
カルボキシル基を有する不飽和多環式化合物及びその無水物としては、例えば、5−カルボキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジカルボキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−カルボキシ−5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−カルボキシ−5−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−カルボキシ−6−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−カルボキシ−6−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジカルボキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン無水物等が挙げられる。
【0058】
これらの(A1)化合物のうち、モノカルボン酸、ジカルボン酸無水物、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸が好ましく、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸が共重合反応性、アルカリ水溶液に対する溶解性および入手の容易性からより好ましい。これらの(A1)化合物は、単独で使用してもよいし2種以上を混合して使用してもよい。
(A1)化合物の使用割合としては、(A1)化合物並びに(A2)化合物(必要に応じて任意の(A3)化合物および(A4)化合物)の合計に基づいて、5質量%〜30質量%が好ましく、10質量%〜25質量%がより好ましい。(A1)化合物の使用割合を5質量%〜30質量%とすることによって、[A]アルカリ可溶性樹脂のアルカリ水溶液に対する溶解性を最適化すると共に、放射線性感度に優れる絶縁膜が得られる。
【0059】
[(A2)化合物]
(A2)化合物はラジカル重合性を有するエポキシ基含有不飽和化合物である。エポキシ基としては、オキシラニル基(1,2−エポキシ構造)、オキセタニル基(1,3−エポキシ構造)が挙げられる。
【0060】
オキシラニル基を有する不飽和化合物としては、例えば、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸2−メチルグリシジル、α−エチルアクリル酸グリシジル、α−n−プロピルアクリル酸グリシジル、α−n−ブチルアクリル酸グリシジル、アクリル酸3,4−エポキシブチル、メタクリル酸3,4−エポキシブチル、アクリル酸6,7−エポキシヘプチル、メタクリル酸6,7−エポキシヘプチル、α−エチルアクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテル、メタクリル酸3,4−エポキシシクロへキシルメチル等が挙げられる。これらのうち、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸2−メチルグリシジル、メタクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテル、メタクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシルが、共重合反応性および絶縁膜等の耐溶媒性等の向上の観点から好ましい。
【0061】
オキセタニル基を有する不飽和化合物としては、例えば、
3−(アクリロイルオキシメチル)オキセタン、3−(アクリロイルオキシメチル)−2−メチルオキセタン、3−(アクリロイルオキシメチル)−3−エチルオキセタン、3−(アクリロイルオキシメチル)−2−フェニルオキセタン、3−(2−アクリロイルオキシエチル)オキセタン、3−(2−アクリロイルオキシエチル)−2−エチルオキセタン、3−(2−アクリロイルオキシエチル)−3−エチルオキセタン、3−(2−アクリロイルオキシエチル)−2−フェニルオキセタン等のアクリル酸エステル;
3−(メタクリロイルオキシメチル)オキセタン、3−(メタクリロイルオキシメチル)−2−メチルオキセタン、3−(メタクリロイルオキシメチル)−3−エチルオキセタン、3−(メタクリロイルオキシメチル)−2−フェニルオキセタン、3−(2−メタクリロイルオキシエチル)オキセタン、3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−2−エチルオキセタン、3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−3−エチルオキセタン、3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−2−フェニルオキセタン、3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−2,2−ジフルオロオキセタン等のメタクリル酸エステル等が挙げられる。
【0062】
これらの(A2)化合物のうち、(メタ)アクリル酸グリシジルが好ましい。これらの(A2)化合物は、単独で使用してもよいし2種以上を混合して使用してもよい。
(A2)化合物の使用割合としては、(A1)化合物並びに(A2)化合物(必要に応じて任意の(A3)化合物および(A4)化合物)の合計に基づいて、5質量%〜60質量%が好ましく、10質量%〜50質量%がより好ましい。(A2)化合物の使用割合を5質量%〜60質量%とすることによって、優れた硬化性等を有する硬化膜として絶縁膜を形成することができる。
【0063】
[(A3)化合物]
(A3)化合物としては、まず、水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル、フェノール性水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル、ヒドロキシスチレンが挙げられる。
水酸基を有するアクリル酸エステルとしては、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、アクリル酸5−ヒドロキシペンチル、アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル等が挙げられる。
また、水酸基を有するメタクリル酸エステルとしては、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸3−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸5−ヒドロキシペンチル、メタクリル酸6−ヒドロキシヘキシル等が挙げられる。
【0064】
フェノール性水酸基を有するアクリル酸エステルとしては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、4−ヒドロキシフェニルアクリレート等が挙げられる。フェノール性水酸基を有するメタクリル酸エステルとしては、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、4−ヒドロキシフェニルメタクリレート等が挙げられる。
ヒドロキシスチレンとしては、o−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、α−メチル−p−ヒドロキシスチレンが好ましい。これらの(A3)化合物は、単独で使用してもよいし2種以上を混合して使用してもよい。
(A3)化合物の使用割合としては、(A1)化合物、(A2)化合物並びに(A3)化合物(必要に応じて任意の(A4)化合物)の合計に基づいて、1質量%〜30質量%が好ましく、5質量%〜25質量%がより好ましい。
【0065】
[(A4)化合物]
(A4)化合物は、上記の(A1)化合物、(A2)化合物および(A3)化合物以外での不飽和化合物であれば特に制限されるものではない。(A4)化合物としては、例えば、メタクリル酸鎖状アルキルエステル、メタクリル酸環状アルキルエステル、アクリル酸鎖状アルキルエステル、アクリル酸環状アルキルエステル、メタクリル酸アリールエステル、アクリル酸アリールエステル、不飽和ジカルボン酸ジエステル、ビシクロ不飽和化合物、マレイミド化合物、不飽和芳香族化合物、共役ジエン、テトラヒドロフラン骨格、フラン骨格、テトラヒドロピラン骨格、ピラン骨格等をもつ不飽和化合物およびその他の不飽和化合物等が挙げられる。
【0066】
メタクリル酸鎖状アルキルエステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸イソデシル、メタクリル酸n−ラウリル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸n−ステアリル等が挙げられる。
メタクリル酸環状アルキルエステルとしては、例えば、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−メチルシクロヘキシル、メタクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル、メタクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イルオキシエチル、メタクリル酸イソボロニル等が挙げられる。
【0067】
アクリル酸鎖状アルキルエステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸イソデシル、アクリル酸n−ラウリル、アクリル酸トリデシル、アクリル酸n−ステアリル等が挙げられる。
アクリル酸環状アルキルエステルとしては、例えば、シクロヘキシルアクリレート、2−メチルシクロヘキシルアクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イルアクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イルオキシエチルアクリレート、イソボロニルアクリレート等が挙げられる。
【0068】
メタクリル酸アリールエステルとしては、例えば、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル等が挙げられる。
アクリル酸アリールエステルとしては、例えば、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート等が挙げられる。
不飽和ジカルボン酸ジエステルとしては、例えば、マレイン酸ジエチル、フマル酸ジエチル、イタコン酸ジエチル等が挙げられる。
【0069】
ビシクロ不飽和化合物としては、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メトキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−エトキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン等が挙げられる。
マレイミド化合物としては、例えば、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)マレイミド、N−(4−ヒドロキシベンジル)マレイミド、N−スクシンイミジル−3−マレイミドベンゾエート、N−スクシンイミジル−4−マレイミドブチレート、N−スクシンイミジル−6−マレイミドカプロエート、N−スクシンイミジル−3−マレイミドプロピオネート、N−(9−アクリジニル)マレイミド等が挙げられる。
【0070】
不飽和芳香族化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メトキシスチレン等が挙げられる。
共役ジエンとしては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン等が挙げられる。
テトラヒドロフラン骨格を含有する不飽和化合物としては、例えば、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−メタクリロイルオキシ−プロピオン酸テトラヒドロフルフリルエステル、3−(メタ)アクリロイルオキシテトラヒドロフラン−2−オン等が挙げられる。
【0071】
フラン骨格を含有する不飽和化合物としては、例えば、2−メチル−5−(3−フリル)−1−ペンテン−3−オン、フルフリル(メタ)アクリレート、1−フラン−2−ブチル−3−エン−2−オン、1−フラン−2−ブチル−3−メトキシ−3−エン−2−オン、6−(2−フリル)−2−メチル−1−ヘキセン−3−オン、6−フラン−2−イル−ヘキシ−1−エン−3−オン、アクリル酸−2−フラン−2−イル−1−メチル−エチルエステル、6−(2−フリル)−6−メチル−1−ヘプテン−3−オン等が挙げられる。
テトラヒドロピラン骨格を含有する不飽和化合物としては、例えば、(テトラヒドロピラン−2−イル)メチルメタクリレート、2,6−ジメチル−8−(テトラヒドロピラン−2−イルオキシ)−オクト−1−エン−3−オン、2−メタクリル酸テトラヒドロピラン−2−イルエステル、1−(テトラヒドロピラン−2−オキシ)−ブチル−3−エン−2−オン等が挙げられる。
【0072】
ピラン骨格を含有する不飽和化合物としては、例えば、4−(1,4−ジオキサ−5−オキソ−6−ヘプテニル)−6−メチル−2−ピラン、4−(1,5−ジオキサ−6−オキソ−7−オクテニル)−6−メチル−2−ピラン等が挙げられる。
その他の不飽和化合物としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸ビニル等が挙げられる。
【0073】
これらの(A4)化合物のうち、メタクリル酸鎖状アルキルエステル、メタクリル酸環状アルキルエステル、メタクリル酸アリールエステル、マレイミド化合物、テトラヒドロフラン骨格、フラン骨格、テトラヒドロピラン骨格、ピラン骨格、不飽和芳香族化合物、アクリル酸環状アルキルエステルが好ましい。これらのうち、スチレン、メタクリル酸メチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−ラウリル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル、p−メトキシスチレン、2−メチルシクロヘキシルアクリレート、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(n=2〜10)モノ(メタ)アクリレート、3−(メタ)アクリロイルオキシテトラヒドロフラン−2−オンが、共重合反応性及びアルカリ水溶液に対する溶解性の点からより好ましい。これらの(A4)化合物は、単独で使用してもよいし2種以上を混合して使用してもよい。
【0074】
(A4)化合物の使用割合としては、(A1)化合物、(A2)化合物並びに(A4)化合物(および任意の(A3)化合物)の合計に基づいて、10質量%〜80質量%が好ましい。
【0075】
<[A]アルカリ可溶性樹脂の合成方法1>
[A]アルカリ可溶性樹脂は、例えば、溶媒中で重合開始剤の存在下、上記(A1)化合物並びに(A2)化合物(任意の(A3)化合物および(A4)化合物)を共重合することによって製造できる。かかる合成方法によれば、少なくともエポキシ基含有構造単位を含む共重合体を合成することができる。
【0076】
[A]アルカリ可溶性樹脂を製造するための重合反応に用いられる溶媒としては、例えば、アルコール、グリコールエーテル、エチレングリコールアルキルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、ジプロピレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールアルキルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノアルキルエーテルプロピオネート、ケトン、エステル等が挙げられる。
【0077】
[A]アルカリ可溶性樹脂を製造するための重合反応に用いられる重合開始剤としては、一般的にラジカル重合開始剤として知られているものが使用できる。ラジカル重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物が挙げられる。
[A]アルカリ可溶性樹脂を製造するための重合反応においては、分子量を調整するために、分子量調整剤を使用できる。分子量調整剤としては、例えば、クロロホルム、四臭化炭素等のハロゲン化炭化水素類;n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸等のメルカプタン類;ジメチルキサントゲンスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド等のキサントゲン類;ターピノーレン、α−メチルスチレンダイマー等が挙げられる。
【0078】
[A]アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量(Mw)としては、1,000〜30,000が好ましく、5,000〜20,000がより好ましい。[A]アルカリ可溶性樹脂のMwを上記範囲とすることで、感放射線性樹脂組成物の感度および現像性を高めることができる。尚、本明細書における重合体のMw及び数平均分子量(Mn)は下記の条件によるゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定した。
装置:GPC−101(昭和電工製)
カラム:GPC−KF−801、GPC−KF−802、GPC−KF−803およびGPC−KF−804を結合
移動相:テトラヒドロフラン
カラム温度:40℃
流速:1.0mL/分
試料濃度:1.0質量%
試料注入量:100μL
検出器:示差屈折計
標準物質:単分散ポリスチレン
【0079】
<[A]アルカリ可溶性樹脂の合成方法2>
また、[A]アルカリ可溶性樹脂は、例えば、上述の(A1)化合物を1種以上使用して合成できる共重合体(以下、「特定共重合体」とも称する。)と、上記(A2)化合物とを反応させて合成できる。かかる合成方法によれば、少なくとも(メタ)アクリロイルオキシ基を有する構造単位を含む共重合体を合成することができる。
[A]アルカリ可溶性樹脂が含む(メタ)アクリロイルオキシ基を有する構造単位は、下記式(3)で表される。この構造単位は、(A1)化合物に由来する特定共重合体中のカルボキシル基と(A2)化合物のエポキシ基とが反応し、エステル結合を形成して得られる。
【0080】
【化5】
【0081】
上記式(3)中、R20およびR21は、それぞれ独立して水素原子またはメチル基である。cは、1〜6の整数である。R22は、下記式(4−1)または(4−2)で表される2価の基である。
【0082】
【化6】
【0083】
上記式(4−1)中、R23は、水素原子またはメチル基である。上記式(4−1)および式(4−2)中、*は、酸素原子と結合する部位を示す。
【0084】
上記式(3)で表される構造単位について、例えば、カルボキシル基を有する共重合体に、(A2)化合物としてメタクリル酸グリシジル、メタクリル酸2−メチルグリシジル等の化合物を反応させた場合、式(3)中のR22は、式(4−1)となる。一方、(A2)化合物としてメタクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシルメチル等の化合物を反応させた場合、式(3)中のR22は、式(4−2)となる。
【0085】
特定共重合体の合成に際しては、(A1)化合物以外の化合物、例えば、上述の(A3)化合物、(A4)化合物等を共重合成分として用いてもよい。これらの化合物としては、共重合反応性の点から、メタクリル酸メチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルエステル、メタクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル、スチレン、p−メトキシスチレン、メタクリル酸テトラヒドロフラン−2−イル、1,3−ブタジエンが好ましい。
【0086】
特定共重合体の共重合の方法としては、例えば、(A1)化合物、および必要に応じて(A3)化合物等を、溶媒中ラジカル重合開始剤を使用して重合する方法が挙げられる。ラジカル重合開始剤としては、上述の[A]アルカリ可溶性樹脂の項で例示したものと同様のものが挙げられる。ラジカル重合開始剤の使用量としては、重合性不飽和化合物100質量%に対して、通常0.1質量%〜50質量%、好ましくは0.1質量%〜20質量%である。特定共重合体は、重合反応溶液のまま[A]アルカリ可溶性樹脂の製造に供してもよく、共重合体を一旦溶液から分離した後に[A]アルカリ可溶性樹脂の製造に供してもよい。
【0087】
特定共重合体のMwとしては、2,000〜100,000が好ましく、5,000〜50,000がより好ましい。Mwを2,000以上とすることで、絶縁膜の十分な現像マージンを得ると共に、形成される塗膜の残膜率(パターン状薄膜が適正に残存する比率)の低下を防止し、さらには得られるパターンの形状や耐熱性等を良好に保つことができる。一方、Mwを100,000以下とすることで、高度な感度を保持し、良好なパターン形状を得ることができる。また、特定共重合体の分子量分布(Mw/Mn)としては、5.0以下が好ましく、3.0以下がより好ましい。Mw/Mnを5.0以下とすることで、得られるパターンの形状を良好に保つことができる。また、上記特定範囲のMw/Mnを有する特定共重合体を含む絶縁膜は、高度な現像性を有し、現像工程において、現像残りを生じることなく容易に所定パターン形状を形成することができる。
【0088】
[A]アルカリ可溶性樹脂の(A1)化合物に由来する構造単位の含有率としては、5質量%〜60質量%が好ましく、7質量%〜50質量%がより好ましく、8質量%〜40質量%が特に好ましい。
[A]アルカリ可溶性樹脂の(A1)化合物以外の(A3)化合物、(A4)化合物等の化合物に由来する構造単位の含有率としては、10質量%〜90質量%、20質量%〜80質量%である。
【0089】
特定共重合体と(A2)化合物との反応においては、必要に応じて適当な触媒の存在下において、好ましくは重合禁止剤を含む共重合体の溶液に、エポキシ基を有する不飽和化合物を投入し、加温下で所定時間攪拌する。上記触媒としては、例えば、テトラブチルアンモニウムブロミド等が挙げられる。上記重合禁止剤としては、例えば、p−メトキシフェノール等が挙げられる。反応温度としては、70℃〜100℃が好ましい。反応時間としては、8時間〜12時間が好ましい。
【0090】
(A2)化合物の使用割合としては、共重合体中の(A1)化合物に由来するカルボキシル基に対して、5質量%〜99質量%が好ましく、10質量%〜97質量%がより好ましい。(A2)化合物の使用割合を上記範囲とすることで、共重合体との反応性、硬化膜の硬化性等がより向上する。(A2)化合物は、単独でまたは2種以上を混合して使用できる。
【0091】
<[B]重合性化合物>
本実施の形態のアレイ基板の絶縁膜の製造に用いられる、本実施の形態の感放射線性樹脂組成物に含有される[B]重合性化合物について説明する。
[B]重合性化合物として使用できるものは、例えば、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、エチレングリコール(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノキシエタノールフルオレンジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイロキシプロピルメタクリレート、2−(2’−ビニロキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリ(2−(メタ)アクリロイロキシエチル)フォスフェート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、コハク酸変性ペンタエリスリトールトリアクリレート等の他、直鎖アルキレン基および脂環式構造を有しかつ2個以上のイソシアネート基を有する化合物と、分子内に1個以上の水酸基を有しかつ3個〜5個の(メタ)アクリロイロキシ基を有する化合物とを反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
【0092】
使用可能な[B]重合性化合物の市販品としては、例えば、
アロニックス(登録商標)M−400、同M−402、同M−405、同M−450、同M−1310、同M−1600、同M−1960、同M−7100、同M−8030、同M−8060、同M−8100、同M−8530、同M−8560、同M−9050、アロニックス(登録商標)TO−756、同TO−1450、同TO−1382(以上、東亞合成社)、KAYARAD(登録商標) DPHA、同DPCA−20、同DPCA−30、同DPCA−60、同DPCA−120、同MAX−3510(以上、日本化薬社)、ビスコート295、同300、同360、同GPT、同3PA、同400(以上、大阪有機化学工業社)、ウレタンアクリレート系化合物としてニューフロンティア(登録商標) R−1150(第一工業製薬社)、KAYARAD(登録商標) DPHA、KAYARAD(登録商標) DPHA−40H、UX−5000(日本化薬社)、UN−9000H(根上工業社)、アロニックス(登録商標)M−5300、同M−5600、同M−5700、M−210、同M−220、同M−240、同M−270、同M−6200、同M−305、同M−309、同M−310、同M−315(以上、東亞合成社)、KAYARAD(登録商標) HDDA、KAYARAD(登録商標) HX−220、同HX−620、同R−526、同R−167、同R−604、同R−684、同R−551、同R−712、UX−2201、UX−2301、UX−3204、UX−3301、UX−4101、UX−6101、UX−7101、UX−8101、UX−0937、MU−2100、MU−4001(以上、日本化薬社)、アートレジンUN−9000PEP、同UN−9200A、同UN−7600、同UN−333、同UN−1003、同UN−1255、同UN−6060PTM、同UN−6060P、同SH−500B(以上、根上工業社)、ビスコート260、同312、同335HP(以上、大阪有機化学工業社)等が挙げられる。
【0093】
[B]重合性化合物は、単独または2種以上を混合して使用できる。感放射線性樹脂組成物における[B]重合性化合物の含有割合としては、[A]アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して20質量部〜200質量部が好ましく、40質量部〜160質量部がより好ましい。[B]重合性化合物の使用割合を上記範囲とすることで、密着性に優れ低露光量においても十分な硬度を有した硬化膜を形成でき、優れた絶縁膜を提供できる。
【0094】
<[C]重合開始剤>
本実施の形態のアレイ基板の絶縁膜の製造に用いられる、本実施の形態の感放射線性樹脂組成物に含有される[C]重合開始剤について説明する。
[C]重合開始剤は、感放射線性重合開始剤であり、放射線に感応して[B]重合性化合物の重合を開始しうる活性種を生じる成分である。このような[C]重合開始剤としては、O−アシルオキシム化合物、アセトフェノン化合物、ビイミダゾール化合物等が挙げられる。これらの化合物は、単独で使用してもよいし2種以上を混合して使用してもよい。
【0095】
O−アシルオキシム化合物としては、例えば、1,2−オクタンジオン1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、1−〔9−エチル−6−ベンゾイル−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−オクタン−1−オンオキシム−O−アセテート、1−〔9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−エタン−1−オンオキシム−O−ベンゾエート、1−〔9−n−ブチル−6−(2−エチルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−エタン−1−オンオキシム−O−ベンゾエート、エタノン−1−[9−エチル−6−(2−メチル−4−テトラヒドロフラニルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチル−4−テトラヒドロピラニルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチル−5−テトラヒドロフラニルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−〔9−エチル−6−{2−メチル−4−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラニル)メトキシベンゾイル}−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)等が挙げられる。
【0096】
これらのうち、1,2−オクタンジオン1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチル−4−テトラヒドロフラニルメトキシベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)またはエタノン−1−〔9−エチル−6−{2−メチル−4−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラニル)メトキシベンゾイル}−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)が好ましい。
【0097】
アセトフェノン化合物としては、例えば、α−アミノケトン化合物、α−ヒドロキシケトン化合物が挙げられる。
α−アミノケトン化合物としては、例えば、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン等が挙げられる。
【0098】
α−ヒドロキシケトン化合物としては、例えば、1−フェニル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−i−プロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等が挙げられる。
これらのうちα−アミノケトン化合物が好ましく、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オンがより好ましい。
【0099】
ビイミダゾール化合物としては、例えば、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾールまたは2,2’−ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾールが好ましく、そのうち、2,2’−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾールがより好ましい。
【0100】
[C]重合開始剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用できる。[C]重合開始剤の含有割合としては、[A]アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、1質量部〜40質量部が好ましく、5質量部〜30質量部がより好ましい。[C]重合開始剤の使用割合を1質量部〜40質量部とすることで、感放射線性樹脂組成物は、低露光量の場合でも高い耐溶媒性、高い硬度および高い密着性を有する絶縁膜を形成できる。
【0101】
<[D]化合物>
本実施の形態のアレイ基板の絶縁膜の製造に用いられる、本実施の形態の感放射線性樹脂組成物は、[D]化合物を含有することができる。[D]化合物は、硬化剤としての機能を果たす化合物である。したがって、便宜上、[D]化合物(硬化剤)や[D]硬化剤などと称することもある。[D]化合物は、下記式(1)で表される化合物、下記式(2)で表される化合物、3級アミン化合物、アミン塩、ホスホニウム塩、アミジン塩、アミド化合物、チオール化合物、ブロックイソシアネート化合物およびイミダゾール環含有化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物である。感放射線性樹脂組成物が、その特定の化合物群から選択される[D]化合物を含有することで絶縁膜の低温硬化を実現することができる。併せて、感放射線性樹脂組成物の保存安定性を向上させることもできる。以下、各化合物を詳述する。
【0102】
[式(1)および式(2)で表される化合物]
[D]化合物としては、下記式(1)および下記式(2)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましい。[D]化合物として、アミノ基と電子欠乏基とを有する、上述の特定化合物を選択することで、絶縁膜の低温硬化を実現することができる。併せて、感放射線性樹脂組成物の保存安定性を向上させることもできる。さらに、得られた絶縁膜を有するアレイ基板を備えた液晶表示素子の電圧保持率をより向上できる。
【0103】
【化7】
【0104】
【化8】
【0105】
上記式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立して水素原子、電子吸引性基またはアミノ基である。但し、R〜Rのうち少なくとも1つは電子吸引性基であり、かつR〜Rのうち少なくとも1つはアミノ基であり、上記アミノ基は、水素原子の全部または一部が炭素数1〜6のアルキル基で置換されていてもよい。
上記式(2)中、R〜R16は、それぞれ独立して水素原子、電子吸引性基またはアミノ基である。但し、R〜R16のうち少なくとも1つはアミノ基である。また、そのアミノ基は、水素原子の全部または一部が炭素数2〜6のアルキレン基で置換されていてもよい。Aは、単結合、カルボニル基、カルボニルオキシ基、カルボニルメチレン基、スルフィニル基、スルホニル基、メチレン基または炭素数2〜6のアルキレン基である。但し、上記メチレン基およびアルキレン基は、水素原子の全部または一部がシアノ基、ハロゲン原子またはフルオロアルキル基で置換されていてもよい。
【0106】
上記式(1)および上記式(2)のR〜R16が示す電子吸引性基としては、例えば、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、カルボキシル基、アシル基、アルキルスルホニル基、アルキルオキシスルフォニル基、ジシアノビニル基、トリシアノビニル基、スルホニル基等が挙げられる。これらのうち、ニトロ基、アルキルオキシスルフォニル基、トリフルオロメチル基が好ましい。Aが示す基としては、スルホニル基、フルオロアルキル基で置換されていてもよいメチレン基が好ましい。
【0107】
上記式(1)および式(2)で表される化合物としては、
2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,3−ビス(4−アミノフェニル)スクシノニトリル、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノフェニルベンゾエート、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、1,4−ジアミノ−2−クロロベンゼン、1,4−ジアミノ−2−ブロモベンゼン、1,4−ジアミノ−2−ヨードベンゼン、1,4−ジアミノ−2−ニトロベンゼン、1,4−ジアミノ−2−トリフルオロメチルベンゼン、2,5−ジアミノベンゾニトリル、2,5−ジアミノアセトフェノン、2,5−ジアミノ安息香酸、2,2’−ジクロロベンジジン、2,2’−ジブロモベンジジン、2,2’−ジヨードベンジジン、2,2’−ジニトロベンジジン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、3−アミノベンゼンスルホン酸エチル、3,5−ビストリフルオロメチル−1,2−ジアミノベンゼン、4−アミノニトロベンゼン、N,N−ジメチル−4−ニトロアニリンが好ましく、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、3−アミノベンゼンスルホン酸エチル、3,5−ビストリフルオロメチル−1,2−ジアミノベンゼン、4−アミノニトロベンゼン、N,N−ジメチル−4−ニトロアニリンがより好ましい。
【0108】
上記式(1)および上記式(2)で表される化合物は、単独でまたは2種以上を混合して使用できる。上記式(1)および上記式(2)で表される化合物の含有割合としては、[A]アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、0.1質量部〜20質量部が好ましく、0.2質量部〜10質量部がより好ましい。上記式(1)および上記式(2)で表される化合物の含有割合を上記範囲とすることで、感放射線性樹脂組成物から形成される絶縁膜の硬化促進を実現することができる。併せて、感放射線性樹脂組成物の保存安定性を向上し、さらに、得られた絶縁膜を有するアレイ基板を備えた液晶表示素子の電圧保持率を高いレベルで保持できる。
【0109】
[3級アミン化合物]
反応性の高い一般的な1級アミン化合物や2級アミン化合物をエポキシ化合物と共存させると、組成物溶液の保存中にアミンのエポキシ基への求核攻撃により硬化反応が進行し、製品としての品質を損なうおそれがある。しかし、3級アミンを使用した場合は、比較的反応性が低いことに起因してか組成部中ではエポキシ化合物と共存させても保存安定性は良好となる。
3級アミン化合物としては、下記式(5)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種を使用することができる。
【0110】
【化9】
【0111】
上記式(5)中、R24〜R26は、それぞれ独立して炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜18のアリール基または炭素数7〜30のアラルキル基である。但し、R24およびR25は互いに結合して、それらが結合する窒素原子と共に環構造を形成していてもよい。上記アルキル基、アリール基およびアラルキル基は水素原子の一部または全部が置換されていてもよい。
【0112】
上記式(5)中のR24〜R26が示す上記炭素数1〜20のアルキル基としては、例えば、直鎖状または分岐状のメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ラウリル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基等が挙げられる。
上記式(5)中のR24〜R26が示す炭素数6〜18のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
上記式(5)中のR24〜R26が示す炭素数7〜30のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。
【0113】
3級アミン化合物としては、例えば、N,N−ジメチルベンジルアミン、トリフェニルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、トリドデシルアミン、ジブチルベンジルアミン、トリナフチルアミン、N−エチル−N−メチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N−フェニル−N−メチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−4−ブロモアニリン、N,N−ジメチル−4−メトキシアニリン、N−フェニルピペリジン、N−(4−メトキシフェニル)ピペリジン、N−フェニル−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン、6−ベンジルオキシ−N−フェニル−7−メトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン、N,N’−ジメチルピペラジン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、2−ジメチルアミノメチルフェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等が挙げられる。
【0114】
これらの3級アミン化合物のうち、トリオクチルアミン、2−ジメチルアミノメチルフェノール、N,N−ジエチルアニリン等が好ましい。3級アミン化合物は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。感放射線性樹脂組成物における3級アミン化合物の含有割合としては、[A]アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、0.1質量部〜10質量部が好ましく、0.5質量部〜5質量部がより好ましい。3級アミン化合物の含有割合を上記特定範囲とすることで、感放射線性樹脂組成物の保存安定性と低温硬化とをより高いレベルで両立できる。
【0115】
[アミン塩およびホスホニウム塩]
アミン塩およびホスホニウム塩としては、下記式(6)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を使用することができる。
【0116】
【化10】
【0117】
上記式(6)中、Aは、窒素原子またはリン原子である。R27〜R30は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜18のアリール基または炭素数7〜30のアラルキル基である。但し、これらの基は水素原子の一部または全部が置換されていてもよい。Qは、1価の陰イオンである。
【0118】
上記式(6)中のR27〜R30が示す炭素数1〜20のアルキル基としては、例えば、直鎖状または分岐状の、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ラウリル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基等が挙げられる。
上記式(6)中のR27〜R30が示す炭素数6〜18のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
上記式(6)中のR27〜R30が示す炭素数7〜30のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。
【0119】
上記式(6)中のQが示す1価の陰イオンとしては、例えば、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、シアン化物イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、次亜塩素酸イオン、亜塩素酸イオン、塩素酸イオン、過塩素酸イオン、過マンガン酸イオン、炭酸水素イオン、リン酸二水素イオン、硫化水素イオン、チオシアン酸イオン、カルボン酸イオン、スルホン酸イオン、フェノキシドイオン、テトラフルオロボレートイオン、テトラアリールボレートイオン、ヘキサフルオロアンチモネートイオン等が挙げられる。
【0120】
上記式(6)中のAが窒素原子である場合、すなわちアンモニウム塩としては、例えば、塩化テトラメチルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、塩化ドデシルジメチルベンジルアンモニウム、塩化オクチルトリメチルアンモニウム、塩化デシルトリメチルアンモニウム、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム、塩化テトラデシルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、塩化ベンジルトリメチルアンモニウム、塩化ベンジルトリエチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、臭化ベンザルコニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウムが挙げられる。
【0121】
がリン原子である場合、すなわちホスホニウム塩としては、例えば、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウム・テトラ(p−トリル)ボレート、テトラフェニルホスホニウム・テトラ(p−エチルフェニル)ボレート、テトラフェニルホスホニウム・テトラ(p−メトキシフェニル)ボレート、テトラフェニルホスホニウム・テトラ(p−エトキシフェニル)ボレート、テトラフェニルホスホニウム・テトラ(p−tert−ブトキシフェニル)ボレート、テトラフェニルホスホニウム・テトラ(m−トリル)ボレート、テトラフェニルホスホニウム・テトラ(m−メトキシフェニル)ボレート、トリ(p−トリル)フェニルホスホニウム・テトラ(p−トリル)ボレート、テトラ(p−トリル)ホスホニウム・テトラ(p−トリル)ボレート、トリ(p−メトキシフェニル)フェニルホスホニウム・テトラ(p−トリル)ボレート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート、メチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート、p−トリルトリフェニルホスホニウムチオシアネート等が挙げられる。
【0122】
これらのアミン塩およびホスホニウム塩のうち、塩化テトラメチルアンモニウム、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネートが好ましい。アミン塩およびホスホニウム塩は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。感放射線性樹脂組成物におけるアミン塩およびホスホニウム塩の含有割合としては、[A]アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、0.05質量部〜10質量部が好ましく、0.1質量部〜5質量部がより好ましい。アミン塩およびホスホニウム塩の含有割合を上記特定範囲とすることで、感放射線性樹脂組成物の保存安定性と低温硬化とをより高いレベルで両立できる。
【0123】
[アミジン塩]
アミジン塩としては、下記式(7)で表される化合物の塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を使用することができる。
【0124】
【化11】
【0125】
上記式(7)中、mは2〜6の整数である。但し、アルキレン基が有する水素原子の一部または全部が有機基で置換されていてもよい。なお、上記アルキレン基とは、テトラヒドロピリミジン環中のアルキレン基および式(7)において(CHで表されるアルキレン基の両方をいう。
【0126】
上記アルキレン基が置換基として有していてもよい有機基としては、例えば、
メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基等の炭素数1〜6のアルキル基;
ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基、1−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシイソプロピル基、3−ヒドロキシ−t−ブチル基、6−ヒドロキシヘキシル基等の炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基;
ジメチルアミノ基、メチルエチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、t−ブチルメチルアミノ基、ジn−ヘキシルアミノ基等の炭素数2〜12のジアルキルアミノ基等が挙げられる。
【0127】
上記式(7)で表される化合物としては、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]−ノネン−5(DBN)、1,5−ジアザビシクロ[4,4,0]−デセン−5、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−ウンデセン−7(DBU)、5−ヒドロキシプロピル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−ウンデセン−7、5−ジブチルアミノ−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−ウンデセン−7等が挙げられる。これらのうち、DBNおよびDBUが好ましい。
【0128】
上記式(7)で表される化合物が塩を形成するための酸としては、有機酸および無機酸が挙げられる。
有機酸としては、例えば、カルボン酸、モノアルキル炭酸、芳香族ヒドロキシ化合物、スルホン酸等が挙げられる。
これらの酸のうち、カルボン酸、芳香族ヒドロキシ化合物、スルホン酸が好ましく、飽和脂肪酸、芳香族ヒドロキシ化合物、スルホン酸がより好ましく、強酸であるスルホン酸が特に好ましく、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、オクチルベンゼンスルホン酸が最も好ましい。アミジン塩としては、DBUとトルエンスルホン酸との塩、DBUとオクチルベンゼンスルホン酸との塩、DBNとトルエンスルホン酸との塩、DBNとオクチルベンゼンスルホン酸との塩が好ましい。
【0129】
アミジン塩は、単独でまたは2種以上を混合して使用できる。感放射線性樹脂組成物におけるアミジン塩の含有割合としては、[A]アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、0.1質量部〜10質量部が好ましく、0.5質量部〜5質量部がより好ましい。アミジン塩の含有割合を上記特定範囲とすることで、感放射線性樹脂組成物の保存安定性と低温硬化とをより高いレベルで両立できる。
【0130】
[アミド化合物]
アミド化合物としては、下記式(8)〜下記式(10)で表されるアミド基を有する化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を使用することができる。
【0131】
【化12】
【0132】
【化13】
【0133】
【化14】
【0134】
上記式(8)中、R31およびR32は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ナフチル基、ビニル基、または2−ピリジル基である。但し、上記炭素数1〜12のアルキル基、フェニル基およびナフチル基は、炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基またはアセチル基で置換されていてもよい。
上記式(9)中、R33およびR34は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜12のアルキル基またはシクロヘキシル基である。Aは、メチレン基、炭素数2〜12のアルキレン基、フェニレン基、ナフチレン基、またはビニレン基である。但し、上記メチレン基、炭素数2〜12のアルキレン基、フェニレン基およびナフチレン基は、炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0135】
上記式(10)中、R35およびR36は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜12のアルキル基またはシクロヘキシル基である。Aは、メチレン基、炭素数2〜12のアルキレン基、フェニレン基、ナフチレン基、またはビニレン基である。但し、上記メチレン基、炭素数2〜12のアルキレン基、フェニレン基およびナフチレン基は、炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0136】
上記式(8)で表されるアミド化合物は分子内に1つのアミド結合を有する化合物である。その具体例としては、例えば、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N−エチルアセトアミド、フタルアミド酸、アクリルアミド、ベンズアミド、ナフトアミド、ニコチンアミド、イソニコチンアミド等が挙げられる。
これらのうち、室温での保存安定性、得られる絶縁膜の耐熱性、電圧保持率等を向上できる観点からアセトアミド、N−メチルアセトアミド、フタルアミド酸が好ましい。
【0137】
上記式(9)および(10)で表される化合物は分子内に2つのアミド結合を有する化合物である。その具体例としては、例えば、フタルアミド、イソフタルアミド、テレフタルアミド、マロンアミド、スクシンアミド、アジピンアミド、N,N’−ジアセチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジアセチル−ヘキサメチレンジアミン、N,N’−ジアセチル−ドデシルメチレンジアミン等が挙げられる。
これらのうち、保存安定性と低温硬化とを高いレベルで両立できるという観点から、イソフタルアミド、アジピンアミド、N,N’−ジアセチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジアセチル−ヘキサメチレンジアミンが好ましい。
【0138】
アミド化合物は、単独でまたは2種以上を混合して使用できる。感放射線性樹脂組成物におけるアミド化合物の含有割合としては、[A]アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、0.1質量部〜10質量部が好ましく、0.5質量部〜5質量部がより好ましい。アミド化合物の含有割合を上記特定範囲とすることで、感放射線性樹脂組成物の保存安定性と低温硬化とをより高いレベルで両立できる。
【0139】
[チオール化合物]
チオール化合物としては、1分子中に2個以上のメルカプト基を有する化合物である。チオール化合物は、1分子中に2個以上のメルカプト基を有する限り特に限定されるものではないが、下記式(11)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を使用することができる。
【0140】
【化15】
【0141】
上記式(11)中、R37は、メチレン基、炭素数2〜10のアルキレン基である。但し、これらの基は水素原子の一部または全部がアルキル基で置換されていてもよい。Yは、単結合、−CO−または−O−CO−である。但し、*を付した結合手がR37と結合する。nは2〜10の整数である。Aは、1個または複数個のエーテル結合を有していてもよい炭素数2〜70のn価の炭化水素基、または、nが3の場合下記式(12)で示される基である。
【0142】
【化16】
【0143】
上記式(12)中、R38〜R40は、それぞれ独立してメチレン基または炭素数2〜6のアルキレン基である。「*」は、それぞれ結合手であることを表す。
【0144】
上記式(11)で表される化合物として、典型的にはメルカプトカルボン酸と多価アルコールとのエステル化物などを使用することができる。エステル化物を構成するメルカプトカルボン酸としては、例えば、チオグリコール酸、3−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトブタン酸、3−メルカプトペンタン酸等が挙げられる。また、エステル化物を構成する多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、テトラエチレングリコール、ジペンタエリスリトール、1,4−ブタンジオール、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0145】
上記式(11)で表される化合物としては、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、テトラエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(チオグリコレート)、1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトペンチレート)、1,3,5−トリス(3−メルカプトブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオンが好ましい。
【0146】
チオール化合物の1分子中に2個以上のメルカプト基を有する化合物としては、下記式(13)〜下記式(15)で表される化合物を用いることもできる。
【0147】
【化17】
【0148】
【化18】
【0149】
上記式(13)中、R41は、メチレン基または炭素数2〜20のアルキレン基である。R42は、メチレン基または炭素数2〜6の直鎖若しくは分岐アルキレン基である。kは1〜20の整数である。
上記式(14)中、R43〜R46は、それぞれ独立して、水素原子、水酸基または下記式(15)で表される基である。但し、R43〜R46の少なくとも1つは下記式(15)で表される基である。
【0150】
【化19】
【0151】
上記式(15)中、R47は、メチレン基または炭素数2〜6の直鎖若しくは分岐アルキレン基である。
【0152】
チオール化合物は、単独でまたは2種以上を混合して使用できる。感放射線性樹脂組成物におけるチオール化合物の含有割合としては、[A]アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、1質量部〜20質量部が好ましく、5質量部〜15質量部がより好ましい。チオール化合物の含有割合を上記特定範囲とすることで、感放射線性樹脂組成物の保存安定性と低温硬化とをより高いレベルで両立できる。
【0153】
[ブロックイソシアネート化合物]
ブロックポリイソシアネート化合物は、イソシアネート基を活性水素基含有化合物(ブロック剤)と反応させて常温で不活性としたものであり、これを加熱するとブロック剤が解離してイソシアネート基が再生されるという性質を持つものである。感放射線性樹脂組成物がブロックポリイソシアネートを含有することで、効果的な架橋剤としてイソシアネート−水酸基架橋反応が進行し、感放射線性樹脂組成物の保存安定性と低温硬化とを高いレベルで両立できる。
ブロックポリイソシアネート化合物は、脂肪族または脂環族ジイソシアネートから誘導されるポリイソシアネートと活性水素とを有する化合物(ブロック剤)との公知の反応によって得られる。
【0154】
ジイソシアネートとしては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4−トリメチル−1,6−ジイソシアナトヘキサン、2,4,4−トリメチル−1,6−ジイソシアナトヘキサン、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、4,4−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリジンイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,5−ペンタメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルジイソシアネート等が挙げられる。
【0155】
市販品としては、例えば、
イソシアネート基をメチルエチルケトンのオキシムでブロックしたものとして、デュラネート(登録商標)TPA−B80E、同TPA−B80X、同E402−B80T、同MF−B60XN、同MF−B60X、同MF−B80M(以上、旭化成工業社);
イソシアネート基を活性メチレンでブロックしたものとして、デュラネート(登録商標)MF−K60X(旭化成工業社);
(メタ)アクリロイル基を有するイソシアネート化合物のブロック体として、カレンズ(登録商標)MOI−BP、カレンズ(登録商標)MOI−BM(以上、昭和電工社)が挙げられる。これらのうち、デュラネート(登録商標)E402−B80T、同MF−K60Xを用いた場合に高いフレキシブル性が発現し、他との混合系にして使用する事で、自在にその硬さを制御する事ができるため好ましい。
【0156】
ジイソシアネートより誘導されるポリイソシアネートとしては、例えば、イソシアヌレート型ポリイソシアネート、ビュウレット型ポリイソシアネート、ウレタン型ポリイソシアネート、アロファネート型ポリイソシアネート等が挙げられる。硬化性の観点からイソシアヌレート型ポリイソシアネートが好ましい。
ブロック剤としては、例えば、アルコール系化合物、フェノール系化合物、活性メチレン系化合物、メルカプタン系化合物、酸アミド系化合物、酸イミド系化合物、イミダゾール系化合物、ピラゾール系化合物、尿素系化合物、オキシム系化合物、アミン系化合物、イミン系化合物、ピリジン系化合物等が挙げられる。
【0157】
アルコール系化合物としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、2−エチルヘキサノール、メチルセルソルブ、ブチルセルソルブ、メチルカルビトール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール等;
フェノール系化合物としては、例えば、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、ブチルフェノール、ノニルフェノール、ジノニルフェノール、スチレン化フェノール、ヒドロキシ安息香酸エステル等;
活性メチレン系化合物としては、例えば、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン等;
メルカプタン系化合物としては、例えば、ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン等;
酸アミド系化合物としては、例えば、アセトアニリド、酢酸アミド、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム等;
酸イミド系化合物としては、例えば、コハク酸イミド、マレイン酸イミド等;
イミダゾール系化合物としては、例えば、イミダゾール、2−メチルイミダゾール等;
ピラゾール系化合物としては、例えば、3−メチルピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、3,5−エチルピラゾール等;
尿素系化合物としては、例えば、尿素、チオ尿素、エチレン尿素等;
オキシム系化合物としては、例えば、ホルムアルドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム等;
アミン系化合物としては、例えば、ジフェニルアミン、アニリン、カルバゾール等;
イミン系化合物としては、例えば、エチレンイミン、ポリエチレンイミン等;
ピリジン系化合物としては、例えば、2−ヒドロキシピリジン、2−ヒドロキシキノリン等が挙げられる。
【0158】
ブロックポリイソシアネート化合物は、単独でまたは2種以上を混合して使用できる。感放射線性樹脂組成物におけるブロックポリイソシアネート化合物の含有割合としては、[A]アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、0.1質量部〜10質量部が好ましく、0.5質量部〜5質量部がより好ましい。ブロックポリイソシアネート化合物の含有割合を上記範囲とすることで、感放射線性樹脂組成物の保存安定性と低温硬化とをより高いレベルで両立できる。
【0159】
[イミダゾール環含有化合物]
イミダゾール環含有化合物としては、下記式(16)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を使用することができる。
【0160】
【化20】
【0161】
上記式(16)中、A、A、AおよびR48は、それぞれ独立して水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐状または環状の炭化水素基である。また、AとAは互いに連結して環を形成してもよい。
【0162】
、A、AおよびR48が示す炭素数1〜20の直鎖状、分岐状または環状の炭化水素基としては、例えば、
メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基等の炭素数1〜20のアルキル基;
シクロペンチル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数3〜20のシクロアルキル基;
フェニル基、トルイル基、ベンジル基、メチルベンジル基、キシリル基、メシチル基、ナフチル基、アントリル基等の炭素数6〜20のアリール基;
ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデシル基、アダマンチル基、メチルアダマンチル基、エチルアダマンチル基、ブチルアダマンチル基等の炭素数6〜20の有橋脂環式炭化水素基等が挙げられる。
【0163】
上記炭化水素基は置換されていてもよく、この置換基の具体例としては、
水酸基;
カルボキシル基;
ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、1−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、1−ヒドロキシブチル基、2−ヒドロキシブチル基、3−ヒドロキシブチル基、4−ヒドロキシブチル基等の炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基;
メトキシル基、エトキシル基、n−プロポキシル基、i−プロポキシル基、n−ブトキシル基、2−メチルプロポキシル基、1−メチルプロポキシル基、t−ブトキシル基等の炭素数1〜4のアルコキシル基;
シアノ基;
シアノメチル基、2−シアノエチル基、3−シアノプロピル基、4−シアノブチル基等の炭素数2〜5のシアノアルキル基;
メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基等の炭素数2〜5のアルコキシカルボニル基;
メトキシカルボニルメトキシル基、エトキシカルボニルメトキシル基、t−ブトキシカルボニルメトキシル基等の炭素数3〜6のアルコキシカルボニルアルコキシル基;
フッ素、塩素等のハロゲン原子;
フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基等のフルオロアルキル基等が挙げられる。
【0164】
上記AとAが互いに連結して形成する環としては、好ましくは芳香環、炭素数2〜20の飽和若しくは不飽和の含窒素複素環が挙げられる。AとAが互いに連結して形成する環が、ベンゼン環の場合のイミダゾール環含有化合物としては、下記式(17)で表される化合物が挙げられる。
【0165】
【化21】
【0166】
上記式(17)中、R48およびAは、上記式(16)と同義である。R49〜R52は、それぞれ独立して置換基を有していてもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐状または環状の炭化水素基である。なお、R49〜R52が示す炭化水素基としては、上記式(16)中の炭化水素基と同様のものを挙げることができる。
【0167】
イミダゾール環含有化合物としては、2−フェニルベンズイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2―メチルベンズイミダゾールが好ましい。イミダゾール環含有化合物は、単独でまたは2種以上を混合して使用できる。イミダゾール環含有化合物の含有割合としては、[A]アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、0.1質量部〜10質量部が好ましく、0.5質量部〜5質量部がより好ましい。イミダゾール環含有化合物の含有割合を上記特定範囲とすることで、感放射線性樹脂組成物の保存安定性と低温硬化とをより高いレベルで両立できる。
【0168】
<その他の任意成分>
本実施の形態のアレイ基板の絶縁膜の形成に用いられる、本実施の形態の感放射線性樹脂組成物は、上記の[A]アルカリ可溶性樹脂、[B]重合性化合物および[C]重合開始剤に加え、[D]化合物(硬化剤)のほか、本発明の効果を損なわない範囲で必要に応じて界面活性剤、保存安定剤、接着助剤、耐熱性向上剤等のその他の任意成分を含有できる。これらの各任意成分は、単独で使用してもよいし2種以上を混合して使用してもよい。以下、各成分を詳述する。
【0169】
[界面活性剤]
界面活性剤は、感放射線性樹脂組成物の塗膜形成性をより向上させるために使用できる。界面活性剤としては、例えば、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤およびその他の界面活性剤が挙げられる。
【0170】
フッ素系界面活性剤としては、末端、主鎖および側鎖の少なくともいずれかの部位にフルオロアルキル基および/またはフルオロアルキレン基を有する化合物が好ましい。
フッ素系界面活性剤の市販品としては、例えば、フタージェント(登録商標)FT−100、同−110、同−140A、同−150、同−250、同−251、同−300、同−310、同−400S、フタージェント(登録商標)FTX−218、同−251(以上、ネオス社)等が挙げられる。
シリコーン系界面活性剤の市販品としては、例えば、トーレシリコーンDC3PA、同DC7PA、同SH11PA、同SH21PA、同SH28PA、同SH29PA、同SH30PA、同SH−190、同SH−193、同SZ−6032、同SF−8428、同DC−57、同DC−190(以上、東レ・ダウコーニング・シリコーン社)等が挙げられる。
【0171】
界面活性剤の使用量としては、[A]アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、1.0質量部以下が好ましく、0.8質量部以下がより好ましい。界面活性剤の使用量が1.0質量部を超えると、塗膜の膜ムラを生じやすくなる。
【0172】
[保存安定剤]
保存安定剤としては、例えば、硫黄、キノン類、ヒドロキノン類、ポリオキシ化合物、アミン、ニトロニトロソ化合物等が挙げられ、より具体的には、4−メトキシフェノール、N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム等が挙げられる。
保存安定剤の使用量としては、[A]アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、3.0質量部以下が好ましく、1.0質量部以下がより好ましい。保存安定剤の配合量が3.0質量部を超えると、感度が低下してパターン形状が劣化する場合がある。
【0173】
[接着助剤]
接着助剤は、得られる絶縁膜とその下にある層や基板などとの接着性をさらに向上させるために使用できる。接着助剤としてはカルボキシル基、メタクリロイル基、ビニル基、イソシアネート基、オキシラニル基等の反応性官能基を有する官能性シランカップリング剤が好ましく、例えばトリメトキシシリル安息香酸、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0174】
接着助剤の使用量としては、[A]アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましい。接着助剤の使用量が20質量部を超えると、現像残りを生じやすくなる傾向がある。
【0175】
[耐熱性向上剤]
耐熱性向上剤としては、例えば、N−(アルコキシメチル)グリコールウリル化合物、N−(アルコキシメチル)メラミン化合物等が挙げられる。
【0176】
N−(アルコキシメチル)グリコールウリル化合物としては、例えば、N,N,N’,N’−テトラ(メトキシメチル)グリコールウリル、N,N,N’,N’−テトラ(エトキシメチル)グリコールウリル、N,N,N’,N’−テトラ(n−プロポキシメチル)グリコールウリル、N,N,N’,N’−テトラ(i−プロポキシメチル)グリコールウリル、N,N,N’,N’−テトラ(n−ブトキシメチル)グリコールウリル、N,N,N’,N’−テトラ(t−ブトキシメチル)グリコールウリル等が挙げられる。これらのN−(アルコキシメチル)グリコールウリル化合物のうち、N,N,N’,N’−テトラ(メトキシメチル)グリコールウリルが好ましい。
【0177】
N−(アルコキシメチル)メラミン化合物としては、例えば、N,N,N’,N’,N’’,N’’−ヘキサ(メトキシメチル)メラミン、N,N,N’,N’,N’’,N’’−ヘキサ(エトキシメチル)メラミン、N,N,N’,N’,N’’,N’’−ヘキサ(n−プロポキシメチル)メラミン、N,N,N’,N’,N’’,N’’−ヘキサ(i−プロポキシメチル)メラミン、N,N,N’,N’,N’’,N’’−ヘキサ(n−ブトキシメチル)メラミン、N,N,N’,N’,N’’,N’’−ヘキサ(t−ブトキシメチル)メラミン等が挙げられる。これらのN−(アルコキシメチル)メラミン化合物のうち、N,N,N’,N’,N’’,N’’−ヘキサ(メトキシメチル)メラミンが好ましい。市販品としては、例えば、ニカラックN−2702、同MW−30M(以上、三和ケミカル社)等が挙げられる。
【0178】
耐熱性向上剤の使用量としては、[A]アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、50質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましい。耐熱性向上剤の配合量が50質量部を超えると、感放射線性樹脂組成物の感度が低下してパターン形状が劣化する場合がある。
【0179】
[キノンジアジド化合物]
本実施の形態の感放射線性樹脂組成物は、[C]重合開始剤に換え、キノンジアジド化合物を用いることによって、ポジ型の感放射線性樹脂組成物として使用することが可能である。
キノンジアジド化合物は放射線の照射によりカルボン酸を発生する1,2−キノンジアジド化合物である。1,2−キノンジアジド化合物としては、フェノール性化合物またはアルコール性化合物(以下、「母核」と称する。)と1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸ハライドとの縮合物を用いることができる。
【0180】
上述の母核としては、例えば、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、ペンタヒドロキシベンゾフェノン、ヘキサヒドロキシベンゾフェノン、(ポリヒドロキシフェニル)アルカン、その他の母核等が挙げられる。
【0181】
トリヒドロキシベンゾフェノンとしては、例えば、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,6−トリヒドロキシベンゾフェノン等;
テトラヒドロキシベンゾフェノンとしては、例えば、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,3’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,2’−テトラヒドロキシ−4’−メチルベンゾフェノン、2,3,4,4’−テトラヒドロキシ−3’−メトキシベンゾフェノン等;
ペンタヒドロキシベンゾフェノンとしては、例えば、2,3,4,2’,6’−ペンタヒドロキシベンゾフェノン等;
ヘキサヒドロキシベンゾフェノンとしては、例えば、2,4,6,3’,4’,5’−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン、3,4,5,3’,4’,5’−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン等;
(ポリヒドロキシフェニル)アルカンとしては、例えば、ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)メタン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン、トリス(p−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1−トリス(p−ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3−トリス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルプロパン、4,4’−〔1−〔4−〔1−〔4−ヒドロキシフェニル〕−1−メチルエチル〕フェニル〕エチリデン〕ビスフェノール、ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインデン−5,6,7,5’,6’,7’−ヘキサノール、2,2,4−トリメチル−7,2’,4’−トリヒドロキシフラバン等;
その他の母核としては、例えば、2−メチル−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシフェニル)−7−ヒドロキシクロマン、1−[1−(3−{1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル}−4,6−ジヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]−3−(1−(3−{1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル}−4,6−ジヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)ベンゼン、4,6−ビス{1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル}−1,3−ジヒドロキシベンゼン等が挙げられる。
【0182】
これらの母核のうち、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、1,1,1−トリス(p−ヒドロキシフェニル)エタン、4,4’−〔1−〔4−〔1−〔4−ヒドロキシフェニル〕−1−メチルエチル〕フェニル〕エチリデン〕ビスフェノールが好ましい。
【0183】
1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸ハライドとしては、1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸クロリドが好ましい。1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸クロリドとしては、例えば1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸クロリド、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸クロリド等が挙げられる。これらのうち、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸クロリドがより好ましい。
【0184】
フェノール性化合物またはアルコール性化合物(母核)と、1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸ハライドとの縮合反応においては、フェノール性化合物またはアルコール性化合物中のOH基数に対して、好ましくは30モル%〜85モル%、より好ましくは50モル%〜70モル%に相当する1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸ハライドを用いることができる。縮合反応は、公知の方法によって実施することができる。
【0185】
また、1,2−キノンジアジド化合物としては、上記に例示した母核のエステル結合をアミド結合に変更した1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸アミド類、例えば、2,3,4−トリアミノベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸アミド等も好適に使用される。
【0186】
これらのキノンジアジド化合物は、単独でまたは2種類以上を組み合わせて用いることができる。本実施形態のポジ型の感放射線性樹脂組成物におけるキノンジアジド化合物の使用割合としては、[A]アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、5質量部〜100質量部が好ましく、10質量部〜50質量部がより好ましい。キノンジアジド化合物の使用割合を上述の範囲とすることで、現像液となるアルカリ水溶液に対する放射線の照射部分と未照射部分との溶解度の差が大きく、パターニング性能が良好となり、また得られる絶縁膜の耐溶媒性が良好となる。
【0187】
<感放射線性樹脂組成物の調製方法>
本実施の形態のアレイ基板の絶縁膜の形成に用いられる、本実施の形態の感放射線性樹脂組成物は、[A]アルカリ可溶性樹脂、[B]重合性化合物、および[C]重合開始剤のほか、さらに[D]化合物(硬化剤)および必要に応じ添加されるその他の任意成分を均一に混合することによって調製され、ネガ型の感放射線性樹脂組成物としての使用が可能である。この感放射線性樹脂組成物は、好ましくは適当な溶媒に溶解されて溶液状で用いられる。溶媒は、単独でまたは2種以上を混合して使用できる。また、上述したように、[C]重合開始剤に換え、上述したキノンジアジド化合物を用いることによって、本実施形態の感放射線性樹脂組成物を調製し、ポジ型の感放射線性樹脂組成物として使用することが可能である。
【0188】
本実施形態の感放射線性樹脂組成物の調製に用いられる溶媒としては、必須成分および任意成分を均一に溶解し、各成分と反応しないものが用いられる。このような溶媒としては、上述した[A]アルカリ可溶性樹脂を製造するために使用できる溶媒として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0189】
例えば、このような溶媒のうち、各成分の溶解性、各成分との反応性、塗膜形成の容易性等の観点から、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;
【0190】
酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、酢酸エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸3−メチル−3−メトキシブチル等の酢酸(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;
【0191】
ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等の他のエーテル類;
メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、ジアセトンアルコール(4−ヒドロキシ−4−メチルペンタン−2−オン)、4−ヒドロキシ−4−メチルヘキサン−2−オン等のケトン類;
プロピレングリコールジアセテート、1,3−ブチレングリコールジアセテート、1,6−ヘキサンジオールジアセテート等のジアセテート類;
乳酸メチル、乳酸エチル等の乳酸アルキルエステル類;
酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、ぎ酸n−ペンチル、酢酸i−ペンチル、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、プロピオン酸n−ブチル、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルプロピオネート、酪酸エチル、酪酸n−プロピル、酪酸i−プロピル、酪酸n−ブチル、ヒドロキシ酢酸エチル、エトキシ酢酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸n−プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸メチル、2−オキソ酪酸エチル等の他のエステル類;
トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;
N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類等が挙げられる。
【0192】
これらの溶媒のうち、溶解性、顔料分散性、塗布性等の観点から、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸3−メトキシブチル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、1,3−ブチレングリコールジアセテート、1,6−ヘキサンジオールジアセテート、乳酸エチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メチル−3−メトキシブチルプロピオネート、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、ぎ酸n−アミル、酢酸i−アミル、プロピオン酸n−ブチル、酪酸エチル、酪酸i−プロピル、酪酸n−ブチル、ピルビン酸エチルが好ましい。溶媒は単独または2種以上を使用できる。
【0193】
さらに、上記溶媒と共に、ベンジルエチルエーテル、ジ−n−ヘキシルエーテル、アセトニルアセトン、イソホロン、カプロン酸、カプリル酸、1−オクタノール、1−ノナノール、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、しゅう酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、γ−ブチロラクトン、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート等の高沸点溶媒を併用することもできる。上記高沸点溶媒は、単独または2種以上を使用できる。
【0194】
溶媒の含有量としては限定されないが、得られる感放射線性樹脂組成物の塗布性、安定性等の観点から感放射線性樹脂組成物の溶媒を除いた各成分の合計濃度が、5質量%〜50質量%となる量が好ましく、10質量%〜40質量%となる量がより好ましい。感放射線性樹脂組成物を溶液状態として調製する場合、固形分濃度(組成物溶液中に占める溶媒以外の成分)は、使用目的や所望の膜厚の値等に応じて任意の濃度(例えば、5質量%〜50質量%)に設定できる。さらに好ましい固形分濃度は、基板上への塗膜の形成方法により異なるが、これについては後述する。このようにして調製された組成物溶液は、孔径0.5μm程度のミリポアフィルタ等を用いて濾過した後、使用に供することができる。
【0195】
以上の成分と調製方法による感放射線性樹脂組成物は、低温硬化によりコンタクトホールを備えた絶縁膜を形成することができる。具体的には、200℃以下の硬化温度で耐溶媒性等の良好な信頼性を有する絶縁膜を得ることができ、さらには180℃以下の硬化温度であっても、耐溶媒性等の良好な信頼性を有する絶縁膜を得ることができる。そして、低温硬化によって本実施の形態のアレイ基板を提供することができる。
【0196】
次に、本実施の形態のアレイ基板は、液晶の配向を制御する配向膜を有することが可能である。本実施の形態のアレイ基板上に形成される配向膜は、本実施の形態の液晶配向剤を用いて形成される。したがって、本実施の形態の配向処理剤について、特のその主要な成分について以下で説明する。
【0197】
<液晶配向剤>
本実施の形態のアレイ基板上に配向膜を形成する、本実施の形態の液晶配向剤は、光配向性基を有する[L]感放射線性重合体、または光配向性基を有さない[M]ポリイミドを主要な成分として含有する液晶配向剤である。これらはいずれも、例えば、200℃以下など、低温の加熱温度で配向膜を形成することが可能である。特に、光配向性基を有する[L]感放射線性重合体を含有する液晶配向剤が、より低温での配向膜形成が可能であって好ましい。このように本実施の形態の液晶配向剤は、低温の加熱工程による配向膜の形成が可能であるため、下層にある低温硬化による絶縁膜を高温加熱の状態に晒すことなく配向膜の形成を行うことができる。
尚、本実施の形態のアレイ基板上に配向膜を形成する、本実施の形態の液晶配向剤は、本発明の効果を損なわない限り[N]その他の成分を含有することができる。以下、それらの成分について説明する。
【0198】
[[L]感放射線性重合体]
本実施の形態の液晶配向剤に含有される[L]感放射線性重合体は、光配向性基を有する重合体である。この[L]感放射線性重合体が有する光配向性基は、光照射により膜に異方性を付与する官能基であり、本実施の形態では、特に、光異性化反応および光二量化反応の少なくともいずれかを生じることにより膜に異方性を与える基である。
【0199】
光配向性基として具体的には、アゾベンゼン、スチルベン、α−イミノ−β−ケトエステル、スピロピラン、スピロオキサジン、桂皮酸、カルコン、スチルバゾール、ベンジリデンフタルイミジン、クマリン、ジフェニルアセリレンおよびアントラセンからなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物由来の構造を有する基である。上述の光配向性基としては、これらの中でも、桂皮酸由来の構造を有する基が特に好ましい。
【0200】
光配向性基を有する[L]感放射線性重合体としては、上述の光配向性基が直接または連結基を介して結合された重合体であるのが好ましい。そのような重合体としては、例えば、ポリアミック酸およびポリイミドの少なくともいずれかの重合体に上述の光配向性基が結合したもの、ポリアミック酸およびポリイミドとは別の重合体に上述の光配向性基が結合したものが挙げられる。後者の場合、光配向性基を有する重合体の基本骨格としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリビニルエーテル、ポリオレフィン、ポリオルガノシロキサン等を挙げることができる。
感放射線性重合体としては、ポリアミック酸、ポリイミドまたはポリオルガノシロキサンを基本骨格とするものが好ましい。また、これらの中でも、ポリオルガノシロキサンが特に好ましく、例えば、国際公開(WO)第2009/025386号パンフレットに記載された方法により得ることができる。
【0201】
[[M]ポリイミド]
本実施の形態の液晶配向剤に含有される[M]ポリイミドは、光配向性基を有さないポリイミドである。
このような光配向性基を有さない[M]ポリイミドは、光配向性基を有さないポリアミック酸を脱水閉環してイミド化することにより得ることができる。このようなポリアミック酸は、例えば、テトラカルボン酸二無水物と、ジアミンとを反応させることにより得ることができ、特開2010−97188号公報に記載されるようにして得ることができる。
【0202】
[M]ポリイミドは、その前駆体であるポリアミック酸が有していたアミック酸構造のすべてを脱水閉環した完全イミド化物であってもよく、アミック酸構造の一部のみを脱水閉環し、アミック酸構造とイミド環構造が併存する部分イミド化物であってもよい。[M]ポリイミドは、そのイミド化率が30%以上であることが好ましく、50%〜99%であることがより好ましく、65%〜99%であることがより好ましい。このイミド化率は、ポリイミドのアミック酸構造の数とイミド環構造の数との合計に対するイミド環構造の数の占める割合を百分率で表したものである。ここで、イミド環の一部がイソイミド環であってもよく、例えば、特開2010−97188号公報に記載されるようにして得ることができる。
【0203】
[[N]その他の成分]
本実施の形態の液晶配向剤は、光配向性基を有する感放射線性重合体および光配向性基を有さないポリイミド以外の[N]その他の成分を含有することができる。[N]その他の成分としては、例えば、光配向性基を有する[L]感放射線性重合体および光配向性基を有さない[M]ポリイミド以外の重合体、硬化剤、硬化触媒、硬化促進剤、エポキシ化合物、官能性シラン化合物、界面活性剤、光増感剤などを挙げることができる。
以上、本実施の形態のアレイ基板の主要な構成要素について説明したが、次に、本実施の形態のアレイ基板の製造方法について説明する。
【0204】
<絶縁膜、配向膜およびアレイ基板の製造方法>
本実施の形態のアレイ基板の製造においては、上述した本実施の形態の感放射線性樹脂組成物から絶縁膜を製造する工程が主要な工程として含まれる。この絶縁膜の製造工程によって、コンタクトホールが形成された絶縁膜が形成される。そして、本実施の形態のアレイ基板上に配向膜を形成するために、上述の本実施の形態の液晶配向剤から配向膜を形成する工程が製造工程として含まれる。以下、絶縁膜と配向膜を有する本実施の形態のアレイ基板の製造方法について説明する。
【0205】
本実施の形態のアレイ基板の製造方法では、基板上に絶縁膜が形成され、少なくとも下記の工程[1]〜工程[4]を下記の順で含むことが好ましい。そして、アレイ基板上に配向膜を形成するため、工程[4]の後に工程[5]を含むことが好ましい。
【0206】
[1]感放射線性樹脂組成物の塗膜を、スイッチング能動素子および電極等(ソース電極、ドレイン電極、ゲート電極、ソース配線、およびゲート配線などを意味する。以下、電極等と総称することがある。)の形成された基板上に形成する工程(以下、「[1]工程」と称することがある。)。
[2][1]工程で形成された感放射線性樹脂組成物の塗膜の少なくとも一部に放射線を照射する工程(以下、「[2]工程」と称することがある。)。
[3][2]工程で放射線が照射された塗膜を現像する工程(以下、「[6]工程」と称することがある。)。
[4][3]工程で現像された塗膜を200℃以下で硬化して絶縁膜を形成する工程(以下、「[4]工程」と称することがある。)。
[5]液晶配向剤の塗膜を[4]工程で硬化された絶縁膜を有する基板に形成し、その塗膜を200℃以下で加熱して配向膜を形成する工程(以下、「[5]工程」と称することがある。)。
【0207】
そして、上記[4]工程と[5]工程の間に、[4]工程で形成された絶縁膜の上に透明電極を設ける工程を有することが好ましい。
【0208】
以上の各工程を含む、本実施形態のアレイ基板の製造方法により、本実施の形態の感放射線性樹脂組成物を用いて、スイッチング能動素子や電極等の形成された基板上に、コンタクトホールを備えた絶縁膜を形成することができる。そして、本実施の形態の液晶配向剤を用いて基板上に配向膜を形成することができる。その結果、本実施形態のアレイ基板の製造方法により、所望のサイズのコンタクトホールが所望の位置に形成された絶縁膜を有し、低温で形成された絶縁膜を有する本実施の形態のアレイ基板を形成することができる。
以上のようにして製造されるアレイ基板は、省エネルギーの観点から加熱工程の低温化が望まれる場合においても好適なアレイ基板となる。
以下、各工程について詳述する。
【0209】
[[1]工程]
本工程では本実施の形態の感放射線性樹脂組成物の塗膜を基板上に形成する。この基板には、スイッチング能動素子、ソース電極、ドレイン電極、ゲート電極、ソース配線、およびゲート配線などが形成されている。これらスイッチング能動素子等は、基板上、通常の半導体膜成膜と、公知の絶縁層形成と、フォトリソグラフィ法によるエッチングを繰り返すなどして公知の方法により形成されたものである。
この基板のスイッチング能動素子等の形成面に、感放射線性樹脂組成物を塗布した後、プレベークを行って溶媒を蒸発させ、塗膜を形成する。
【0210】
基板の材料としては、例えば、ソーダライムガラスや無アルカリガラス等のガラス、シリコン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド等が挙げられる。また、これらの基板には、所望によりシランカップリング剤等による薬品処理、プラズマ処理、イオンプレーティング、スパッタリング、気相反応法、真空蒸着等の適宜の前処理を施しておくこともできる。
【0211】
感放射線性樹脂組成物の塗布方法としては、例えば、スプレー法、ロールコート法、回転塗布法(スピンコート法またはスピンナ法と称されることもある。)、スリット塗布法(スリットダイ塗布法)、バー塗布法、インクジェット塗布法等の適宜の方法が採用できる。これらのうち、スピンコート法またはスリット塗布法が好ましい。
上述のプレベークの条件としては、各成分の種類、配合割合等によって異なるが、70℃〜120℃が好ましく、1分間〜15分間程度である。塗膜のプレベーク後の膜厚は、0.5μm〜10μmが好ましく、1.0μm〜7.0μm程度がより好ましい。
【0212】
[[2]工程]
次いで、[1]工程で形成された塗膜の少なくとも一部に放射線を照射する。このとき、塗膜の一部にのみ照射する際には、例えば、所望のコンタクトホールの形成に対応するパターンのフォトマスクを介して照射する方法によることができる。
照射に使用される放射線としては、可視光線、紫外線、遠紫外線等が挙げられる。このうち波長が200nm〜550nmの範囲にある放射線が好ましく、365nmの紫外線を含む放射線がより好ましい。
【0213】
放射線照射量(露光量)は、照射される放射線の波長365nmにおける強度を照度計(OAI model 356、Optical Associates Inc.製)により測定した値として、10J/m〜10,000J/mであり、100J/m〜5,000J/mが好ましく、200J/m〜3,000J/mがより好ましい。
本実施形態のアレイ基板の絶縁膜の形成に用いられる感放射線性樹脂組成物は、従来知られている絶縁膜形成のための組成物と比較して放射線感度が高く、上記放射線照射量が700J/m以下、さらには600J/m以下であっても所望の膜厚、良好な形状、優れた密着性および高い硬度の絶縁膜を得ることができる利点を有する。
【0214】
[[3]工程]
次に、放射線照射後の塗膜を現像することにより、不要な部分を除去し、所定の形状を有し、所望のコンタクトホールの形成された塗膜を得る。
現像に使用される現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム等の無機アルカリや、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の4級アンモニウム塩や、コリン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]−5−ノネン等のアルカリ性化合物の水溶液が使用できる。上述のアルカリ性化合物の水溶液には、メタノール、エタノール等の水溶性有機溶媒を適当量添加して使用することもできる。さらに、界面活性剤をそれのみで、または、上述の水溶性有機溶媒を添加とともに、適当量添加して使用することもできる。
【0215】
現像方法としては、液盛り法、ディッピング法、シャワー法、スプレー法等のいずれでもよく、現像時間は、常温で5秒間〜300秒間であり、好ましくは常温で10秒間〜180秒間程度である。現像処理に続いて、例えば、流水洗浄を30秒間〜90秒間行った後、圧縮空気や圧縮窒素で風乾することによって所望のパターンが得られる。
【0216】
[[4]工程]
次いで、[3]工程で得られた塗膜を、ホットプレート、オーブン等の適当な加熱装置により硬化(ポストベークとも言う。)することによって、硬化膜として絶縁膜が得られる。絶縁膜には所望配置のコンタクトホールが形成されている。硬化温度としては、200℃以下が好ましい。そして、180℃以下であっても十分な特性の絶縁膜が得られる。具体的には、100℃〜200℃が好ましく、低温硬化と信頼性能を高いレベルで両立させようとする場合、150℃〜180℃がより好ましい。硬化時間としては、例えば、ホットプレート上では5分間〜30分間、オーブン中では30分間〜180分間が好ましい。感放射線性樹脂組成物は、上述のように[D]化合物を含有するため、このような低温硬化を実現することができる。併せて、保存安定性を実現するとともに、充分な放射線感度および解像度を有する。
従って、本実施の形態の感放射線性樹脂組成物は、コンタクトホールを有する絶縁膜の形成材料として好適に用いられ、本実施の形態のアレイ基板の絶縁膜を形成できる。
【0217】
そして、[4]工程で絶縁膜を形成した後、その絶縁膜の上に透明電極を設ける工程を有することが好ましい。例えば、スパッタリング法などを利用して、絶縁膜の上に、ITOからなる透明導電層を形成することができる。次いで、フォトリソグラフィ法を利用してこの透明導電層をエッチングして、絶縁膜上に透明電極を形成することができる。透明電極は画素電極を構成し、絶縁膜のコンタクトホールを介することによって、基板上のスイッチング能動素子との電気的接続を可能にする。尚、透明電極は、ITOの他、可視光に対する高い透過率と導電性を有する透明な材料を用いて構成することができる。例えば、IZO(Indium Zinc Oxide)や、ZnO(酸化亜鉛)や、酸化スズなどを用いて構成することができる。
【0218】
[[5]工程]
[4]工程で得られた絶縁膜付きの基板を用い、上述のように絶縁膜上に透明電極を形成した後、透明電極上に、本実施の形態の液晶配向剤を塗布する。塗布法方としては、例えば、ロールコーター法、スピンナ法、印刷法、インクジェット法などの適宜の塗布方法を用いることができる。次いで、液晶配向剤の塗布された基板をプレベークし、その後、ポストベークすることにより塗膜を形成し、アレイ基板を製造する。プレベーク条件としては、例えば、40℃〜120℃で0.1分間〜5分間である。ポストベーク条件としては、好ましくは120℃〜230℃、より好ましくは150℃〜200℃、さらに好ましくは150℃〜180℃で、好ましくは5分間〜200分間、より好ましくは10分間〜100分間である。ポストベーク後の塗膜の膜厚は、好ましくは0.001μm〜1μmであり、より好ましくは0.005μm〜0.5μmである。
【0219】
液晶配向剤を塗布する際に使用される液晶配向剤の固形分濃度(液晶配向剤の溶媒以外の成分の合計重量が液晶配向剤の全重量に占める割合)は、粘性、揮発性などを考慮して適宜に選択されるが、好ましくは1重量%〜10重量%の範囲である。
【0220】
液晶配向剤として、光配向性基を有する[L]感放射線性重合体を含む液晶配向剤を用いる場合は、上述の塗膜に直線偏光もしくは部分偏光された放射線、または非偏光の放射線を照射することにより、液晶配向能を付与する。こうした偏光放射線の照射は、配向膜の配向処理に対応する。ここで、放射線としては、例えば、150nm〜800nmの波長の光を含む紫外線および可視光線を用いることができる。特に、放射線としては、300nm〜400nmの波長の光を含む紫外線が好ましい。使用する放射線が直線偏光または部分偏光している場合には、照射は基板面に垂直の方向から行っても、プレチルト角を付与するために斜め方向から行ってもよく、また、これらを組み合わせて行ってもよい。非偏光の放射線を照射する場合には、照射の方向は斜め方向である必要がある。
放射線の照射量としては、好ましくは1J/m以上10,000J/m未満であり、より好ましくは10J/m〜3,000J/mである。
【0221】
液晶配向剤として、光配向性基を有さない[M]ポリイミドを含む液晶配向剤を用いる場合は、ポストベーク後の塗膜をそのまま配向膜として使用することができる。そして、必要に応じてポストベーク後の塗膜に対し、例えば、ナイロン、レーヨン、コットンなどの繊維からなる布を巻き付けたロールで一定方向に擦る処理(ラビング処理)を施して、液晶配向能を付与することも可能である。
以上のように、アレイ基板上に配向膜を形成する場合、上述の液晶配向剤を使用し、200℃以下の加熱温度、さらに、180℃以下の加熱温度で配向膜を形成することが可能である。したがって、上述した[1]工程〜[4]工程で形成された絶縁膜が、配向膜の形成工程で高温の状態に晒されることを避けることができる。そして、本実施の形態のアレイ基板は、絶縁膜と配向膜を有することができ、200℃以下の低温硬化による製造が可能である。
【実施例】
【0222】
以下、実施例に基づき本発明の実施形態を詳述するが、この実施例によって本発明が限定的に解釈されるものではない。
【0223】
<感放射線性樹脂組成物の調製>
実施例1
[[A]アルカリ可溶性樹脂(A−I)の合成]
冷却管および撹拌機を備えたフラスコに、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)7質量部およびジエチレングリコールエチルメチルエーテル200質量部を仕込んだ。引き続きメタクリル酸16質量部、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イルメタクリレート16質量部、メチルメタクリレート38質量部、スチレン10質量部、メタクリル酸グリシジル20質量部を仕込み、窒素置換した後、緩やかに攪拌しつつ、溶液の温度を70℃に上昇し、この温度を4時間保持して重合することにより、共重合体(A−I)を含有する溶液を得た(固形分濃度=34.4質量%、Mw=8,000、Mw/Mn=2.3)。尚、固形分濃度とは共重合体溶液の全質量に占める共重合体質量の割合を意味する。
【0224】
実施例2
[感放射線性樹脂組成物の調製]
[A]アルカリ可溶性樹脂である実施例1で得られた共重合体(A−I)100質量部に対し、[B]重合性化合物としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを100質量部、[C]重合開始剤としてエタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)(イルガキュアOXE02、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社)を5質量部、および[D]化合物として4,4’−ジアミノジフェニルスルホンを混合し、さらに接着助剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン5質量部、界面活性剤(FTX−218、ネオス社)0.5質量部、保存安定剤として4−メトキシフェノール0.5質量部を混合し、固形分濃度が30質量%となるように、それぞれプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを加えた後、孔径0.5μmのミリポアフィルタでろ過することにより、感放射線性樹脂組成物を調製した。
【0225】
<絶縁膜の形成と評価>
実施例3
[絶縁膜の形成]
無アルカリガラス基板上に、実施例2で調製した感放射線性樹脂組成物の溶液をスピンナにより塗布した後、100℃のホットプレート上で2分間プレベークすることにより膜厚4.0μmの塗膜を形成した。次いで、得られた塗膜に高圧水銀ランプを用いて露光量700J/mとして放射線照射を行った。次いで、オーブン中で180℃の硬化温度および30分間の硬化時間でポストベークすることにより絶縁膜を形成した。
【0226】
実施例4
保存安定性の評価
調製直後の実施例2の感放射線性樹脂組成物から、実施例3の形成方法により絶縁膜を形成し、膜厚を測定した(下記式において、「調製直後の膜厚」と称する)。また、実施例2の方法により調製した後、5日間25℃で感放射線性樹脂組成物溶液を保存し、5日後に同様に形成した絶縁膜の膜厚を測定した(下記式において、「5日後の膜厚」と称する)。膜厚増加率(%)を下記式から算出した。
膜厚増加率(%)=(5日後の膜厚−調製直後の膜厚)/(調製直後の膜厚)×100
膜厚増加率が3%以下であり、保存安定性は良好と判断した。
【0227】
耐光性の評価
実施例3の形成方法による絶縁膜ついて、さらに、UV照射装置(UVX−02516S1JS01、ウシオ社)にて130mWの照度で800,000J/m照射して、膜減り量を調べた。膜減り量は2%以下であり、耐光性は良好と判断した。
【0228】
耐熱性の評価
実施例3の形成方法による絶縁膜について、さらにオーブン中、230℃で20分加熱し、この加熱前後での膜厚を触針式膜厚測定機(アルファステップIQ、KLAテンコール社)で測定した。そして、残膜率(処理後膜厚/処理前膜厚×100)を算出し、この残膜率を耐熱性とした。残膜率は99%であり、耐熱性は良好と判断した。
【0229】
耐薬品性の評価
実施例3の形成方法による絶縁膜について、60℃に加温した配向膜剥離液ケミクリーンTS−204(三洋化成工業社)中に15分浸漬し、水洗後、さらにオーブン中、120℃で15分乾燥させた。この処理前後の膜厚を触針式膜厚測定機(アルファステップ社IQ、KLAテンコール社)で測定し、残膜率(処理後膜厚/処理前膜厚×100)を算出し、この残膜率を耐薬品性とした。残膜率は99%であり、耐薬品性は良好と判断した。
【0230】
解像度の評価
無アルカリガラス基板上に、実施例2で調製した感放射線性樹脂組成物の溶液をスピンナにより塗布した後、100℃のホットプレート上で2分間プレベークすることにより膜厚4.0μmの塗膜を形成した。次いで、得られた塗膜に直径6μm〜15μmの範囲の異なる大きさの複数の丸状残しパターンを有するフォトマスクを介して高圧水銀ランプを用いて露光量を700J/mとして放射線照射を行った。その後、0.40質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いて25℃で液盛り法により現像した後、純水洗浄を1分間行った。さらにオーブン中で180℃の硬化温度および30分間の硬化時間でポストベークすることによりパターン状硬化膜として絶縁膜を形成した。形成された絶縁膜を評価したところ、8μm以下のフォトマスクにおいてパターンが形成されていることが確認され、解像度は良好と判断した。
【0231】
<アレイ基板の製造>
実施例4
実施例2により得られた感放射線性樹脂組成物の溶液を使用し、スイッチング能動素子や電極等の形成された基板上にスリットダイコーターで塗布した。この基板には、スイッチング能動素子、ソース電極、ドレイン電極、ゲート電極、ソース配線、およびゲート配線などが形成されている。これらスイッチング能動素子等は、基板上、通常の半導体膜の成膜と、公知の絶縁層形成と、フォトリソグラフィ法によるエッチングを繰り返すなどして公知の方法により形成されたものである。
次に、ホットプレート上で90℃、5分間プレベークして塗膜を形成した。次いで、得られた塗膜に対し、パターンを有するフォトマスクを介して高圧水銀ランプを用いて露光量700J/mとして放射線照射を行った。その後、0.40質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いて25℃で液盛り法により現像した後、純水洗浄を1分間行った。現像することにより、不要な部分を除去して、コンタクトホールの形成された所定の形状の塗膜を形成した。さらにオーブン中で180℃にて60分間加熱処理し、膜厚が4.0μmの絶縁膜を形成した。
【0232】
次いで、絶縁膜が形成された基板について、スパッタリング法を用いて、絶縁膜の上にITOからなる透明導電層を形成した。次いで、フォトリソグラフィ法を利用して透明導電層をエッチングして、絶縁膜上に透明電極を形成した。
以上のようにして、本実施例のアレイ基板を製造した。得られた本実施例のアレイ基板では、絶縁膜の所望の位置に所望のサイズのコンタクトホールが形成されており、透明電極とドレイン電極との電気的な接続が実現されていた。
【0233】
実施例5
[光配向膜を有するアレイ基板の製造]
本実施例においては、実施例4で得られたアレイ基板を用い、光配向性基を有する感放射線性重合体を含む液晶配向剤を用いて光配向膜を形成する。
はじめに、実施例4のアレイ基板の透明電極の上に、光配向性基を有する感放射線性重合体を含む液晶配向剤として、国際公開(WO)2009/025386号パンフレットの実施例6に記載の液晶配向剤A−1をスピンナにより塗布する。次いで、80℃のホットプレートで1分間プレベークを行った後、内部を窒素置換したオーブン中、180℃で1時間加熱して膜厚80nmの塗膜を形成した。次いで、この塗膜表面に、Hg−Xeランプ及びグランテーラープリズムを用いて313nmの輝線を含む偏光紫外線200J/mを、基板表面に垂直な方向に対して40°傾いた方向から照射し、光配向膜を有するアレイ基板を製造した。
【0234】
実施例6
[垂直配向膜を有するアレイ基板の製造]
本実施例においては、実施例4で得られたアレイ基板を用い、光配向性基を有さないポリイミドを含む液晶配向剤を用いて垂直配向膜を形成する。
はじめに、実施例4のアレイ基板の透明電極の上に、光配向性基を有さないポリイミドを含む液晶配向剤として、垂直配向膜形成用のAL60101(ジェイエスアール(株)製)をスピンナにより塗布した。次いで、80℃のホットプレートで1分間プレベークを行った後、内部を窒素置換したオーブン中、180℃で1時間加熱して膜厚80nmの塗膜を形成し、垂直配向膜を有するアレイ基板を製造した。
【0235】
<液晶表示素子の製造>
実施例7
実施例5で得られたアレイ基板を用いた。そして、公知の方法により製造されたカラーフィルタ基板を準備した。このカラーフィルタ基板は、透明基板上に赤色、緑色および青色の3色の微小な着色パターンとブラックマトリクスとが格子状に配置され、着色パターン上には透明な共通電極が配置されている。そして、カラーフィルタ基板の共通電極の上に実施例5でアレイ基板上に形成したのと同様の光配向膜を形成して、配向膜の形成された対向基板とした。これら一対の基板を用い、TN液晶層を挟持して、カラー液晶表示素子を製造した。本実施例の液晶表示素子は、上述した図3に示す液晶表示素子と同様の構造を有する。本実施例の液晶表示素子は、優れた動作特性と表示特性と信頼性を示した。
【0236】
尚、本発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、種々変形して実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0237】
本発明のアレイ基板は、低温硬化により容易に製造でき、高信頼性を有する。従って、本発明のアレイ基板は優れた表示品位と信頼性が求められる大型液晶テレビ用などに好適に使用できる。
【符号の説明】
【0238】
1 アレイ基板
4、11 基板
5 ソース電極
6 ドレイン電極
7 ゲート電極
8 スイッチング能動素子
9 透明電極
10 配向膜
12 絶縁膜
13 ブラックマトリクス
14 共通電極
15 着色パターン
17 コンタクトホール
18 ソース配線
19 ゲート配線
21 液晶表示素子
22 カラーフィルタ基板
23 液晶層
27 バックライト光
28 偏光板
図1
図2
図3