特許第5966342号(P5966342)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5966342
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】ドロップフィード機構
(51)【国際特許分類】
   D05B 27/24 20060101AFI20160728BHJP
【FI】
   D05B27/24 101
【請求項の数】3
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2011-278161(P2011-278161)
(22)【出願日】2011年12月20日
(65)【公開番号】特開2013-128544(P2013-128544A)
(43)【公開日】2013年7月4日
【審査請求日】2014年11月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081776
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 宏
(72)【発明者】
【氏名】河合 泰典
【審査官】 笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭61−010186(JP,U)
【文献】 特開2006−034561(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D05B 1/00 〜 97/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
布送り用の送り歯を、針板の上面から突出可能な通常縫い状態から針板の上面から突出不能なドロップフィード状態に切り替えることが可能なミシンのドロップフィード機構であって、
ミシン本体のハウジングの内部の背面側に配設され、左右方向に移動することにより通常位置と解除位置とに切り替わる可動部材と、
前記可動部材が前記通常位置にあるときに前記送り歯を下方から支持して該送り歯を前記通常縫い状態に保持すると共に、該可動部材が該通常位置から前記解除位置に切り替わることにより該可動部材に当接しつつ誘導されて該送り歯の支持を解除して該送り歯を前記ドロップフィード状態に切り替える支持部材と、
前記ミシン本体の前記ハウジングの正面側に露出して配置され、左右方向に移動することにより前記可動部材を前記通常位置又は前記解除位置に切り替える操作部材と、
力点に作用する前記操作部材の操作力をてこにより増幅して作用点から前記可動部材に伝達する伝達部材と、
前記ミシン本体の非可動部に固定され、前記伝達部材の前記てこの支点となる回動軸が形成された固定部材と、
を備え
前記伝達部材と前記固定部材との間に介装された付勢部材を備え、
前記固定部材には、第1取付部が形成されており、
前記伝達部材には、該伝達部材の回動範囲の中間位置において前記固定部材の前記第1取付部から該固定部材の前記回動軸へ向かう直線の延長線上に重なる位置に第2取付部が形成されており、
前記付勢部材は、前記固定部材の前記第1取付部と前記伝達部材の前記第2取付部とを互いに近づける方向に付勢するように介装されていることを特徴とするドロップフィード機構。
【請求項2】
前記可動部材が前記通常位置又は前記解除位置に切り替わることにより接点が導通するスイッチを備えている請求項1に記載のドロップフィード機構。
【請求項3】
前記伝達部材によって、前記操作部材の前記操作力が2倍以上に増幅されて前記可動部材に伝達される請求項1又は2に記載のドロップフィード機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミシンの布送り用の送り歯を、針板の上面から突出可能な通常縫い状態から針板の上面から突出不能なドロップフィード状態に切り替えるドロップフィード機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、刺繍縫いを行うことが可能なミシンにおいては、布送り用の送り歯を、針板の上面から突出可能な通常縫い状態(布送りが可能な状態)から針板の上面から突出不能なドロップフィード状態(布送りが不可能な状態)に切り替えるドロップフィード機構を備えている。図7に従来技術によるドロップフィード機構を備えるミシンの一例を示す。図7は、ミシン本体MMのハウジングを取り外すと共にミシン背面側の上方から見た状態を説明する斜視図を示している。図7(a)は送り歯6が通常縫い状態に保持されているときの状態、図7(b)は送り歯6がドロップフィード状態に保持されているときの状態を示している。ミシン本体MMは、機枠2のベッド部2bの左方に、針板5、針板5の上面に対して出没可能な布送り用の送り歯6、送り歯6を上下前後に駆動して布送りを行う送り装置9、及び上述のドロップフィード機構を備えている。
【0003】
ミシン本体MMに備わるドロップフィード機構は、機枠2のベッド部2bの左方の背面側に配設され、左方から右方に移動することにより通常位置から解除位置に切り替わる操作スライダ111と、送り装置9内に配置され、操作スライダ111が通常位置から解除位置に切り替わるのに連動して送り歯6を通常縫い状態からドロップフィード状態に切り替える上下送り接触指10とにより構成されている。操作スライダ111は、左右方向に長い板状部材であり、右端にカム部111a、左右方向の中間部に操作部111bが形成されている。操作部111bは、ユーザが手で触る部分であり、ミシン本体MMのハウジングのベッド部の背面側に露出して配置されている。上下送り接触指10の背面側の端部には、操作スライダ111のカム部111aと接触する上下送り接触指レバー10aが形成されている。
【0004】
操作スライダ111が最も左方の通常位置に位置しているとき(図7(a)示)、送り歯6は上下送り接触指10に下方から支持されて、針板5の上面から突出可能な通常縫い状態となっている。ユーザの操作により操作スライダ111を距離Aだけ右方にスライドさせて、操作スライダ111を最も右方の解除位置に切り替えると(図7(b)示)、操作スライダ111のカム部111aが上下送り接触指レバー10aに接触して上下送り接触指10が背面側にスライドする。そして、上下送り接触指10が送り装置9内の上下送りカムから外れ、上下送り接触指10による送り歯6の支持が解除されて、送り歯6は針板5の上面から突出不能なドロップフィード状態に切り替わる。このように、送り歯6をドロップフィード状態に切り替えることによって、刺繍縫いが行える他、ボタン付けや、しつけ縫い、キルトなどのフリーモーションによる縫製を行うこともできる。
【0005】
なお、上記のミシンにおいては、刺繍をスムーズに行うために、ミシン本体MMのベッド部に刺繍用の拡張テーブル(図示せず)が装着される。送り歯6をドロップフィード状態に切り替えることなく、送り歯6を通常縫い状態に維持しているときには、この拡張テーブルを、ベッド面を拡張する補助ベッドとして活用することができる。
【0006】
特許文献1に開示されているミシンは、ベッド部に着脱可能に装着される刺繍装置を有している。この刺繍装置は、刺繍用の拡張テーブルを兼用しており、刺繍装置とミシン本体とを電気接続する電気コネクタと、電気コネクタを左右方向に移動させて接続位置と接続解除位置とに切り替える操作部材とを備えている。ユーザが手で触る部分である操作部材は、刺繍装置の背面側に露出して配置されている。ミシン本体のベッド部に刺繍装置を装着した初期状態においては、電気コネクタが接続解除位置にあり、送り歯は針板の上面から突出可能な通常縫い状態となっている。よって、刺繍装置を通常縫いの補助ベッドとして活用できる。ユーザが操作部材を移動することにより電気コネクタが接続位置に移動する。この電気コネクタの移動に連動してミシン本体内のドロップフィード機構が機械的に作動して、送り歯は針板の上面から突出不能なドロップフィード状態となり、刺繍縫いを行うことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−114254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図7に示した従来技術によるドロップフィード機構を備えるミシンにおいては、ドロップフィード機構を操作する操作スライダ111が、ミシン本体MMのベッド部の左方の背面側に配設されている。このため、ミシンの正面に着座しているユーザにとっては、操作スライダ111の操作部111bを視認できないため操作性が悪かった。また、ミシンの正面からは操作スライダ111が通常位置又は解除位置のいずれに位置しているのか視認できないため、ユーザは、ミシンの背面側を覗き込んで操作スライダ111の操作部111bの位置を確認したり、送り歯6を少しだけ動かして針板5の上面から突出するかどうかを確認したりする煩わしさがあった。また、ユーザが刺繍終了後に送り歯6を通常縫い状態に戻す操作を忘れることも多々あった。
【0009】
また、ミシン本体MMのベッド部に拡張テーブルを取り付けたときには、操作スライダ111が拡張テーブルの下に隠れて、操作スライダ111の操作性がさらに悪くなったり、操作スライダ111が拡張テーブルに覆われて、拡張テーブルを取り外さないと操作スライダ111の操作ができなくなったりする場合もあった。
【0010】
一方、特許文献1に開示されているミシンにおいては、刺繍用の拡張テーブルを兼用した刺繍装置の背面側にドロップフィード機構の操作部材を備えている。このため、図7に示したミシンにおいて、操作スライダ111が拡張テーブルに隠されることによって発生する後者の問題は、特許文献1に開示されているミシンにおいては問題となることはない。しかし、図7に示したミシンにおいて、操作スライダ111がミシン本体MMの背面側に配設されていることによって発生する前者の問題は、特許文献1に開示されているミシンにおいても、同様の問題となっている。
【0011】
上記の問題以外に、図7に示したミシン及び特許文献1に開示されているミシンに共通する問題として、ユーザがドロップフィード機構を操作する操作部材を視認することなく、手の感覚を頼りに操作したときには、送り歯が通常縫い状態又はドロップフィード状態に確実に切り替わる前に、操作部材の可動範囲の途中で操作部材の操作を止めてしまうことが多々あった。この場合、送り歯の位置切替が完全に行われないため、刺繍縫いを行うときに送り歯が針板の上面より上昇した状態となって刺繍縫いの妨げとなったり、その逆で、通常縫いを行うときに送り歯が針板の上面から上昇しきらずに布送りが正常に行われなかったりする問題が発生する。
【0012】
ユーザが操作部材の操作を途中で止めてしまう主原因は、ドロップフィード機構を操作する操作部材がミシンの背面側にあることによる視認性と操作性の悪さであるが、これ以外に次の原因も考えられる。ドロップフィード機構を構成する各部品を作動するときには各部品間に摩擦抵抗等の機構的な抵抗力が発生する。したがって、ドロップフィード機構を作動するには、ユーザがこの抵抗力を超える作動力を操作部材からドロップフィード機構の内部に伝達する必要がある。ここで、図7に示したミシン及び特許文献1に開示されているミシンはいずれも、操作部材に加えた操作力が増幅されることなくドロップフィード機構に作動力として伝達される構造よりなる。よって、操作部材の操作にある程度大きな操作力が必要であり、この操作力の大きさがユーザが操作部材の操作を途中で止めてしまう原因の一つになっていると考えることができる。
【0013】
また、このように操作部材に加えた操作力が増幅されることなくドロップフィード機構に伝達される構造においては、ドロップフィード機構の内部から操作部材に向けて荷重が減衰することなく伝達する。したがって、操作部材が操作途中で止まっている場合、ドロップフィード状態に切り替わっている送り歯が、ユーザがミシンを使用しているときの振動によって、ユーザの意図に反して自動的に通常縫い状態に切り替わってしまう虞もあった。
【0014】
本発明は、上記した実情に鑑みてなされたものであり、布送り用の送り歯を、針板の上面から突出可能な通常縫い状態から針板の上面から突出不能なドロップフィード状態に切り替えることが可能なミシンのドロップフィード機構において、送り歯が通常縫い状態かドロップフィード状態かをユーザが認識しやすく、ドロップフィード機構を操作する操作部材の操作性に優れ、送り歯の位置切替を確実に行うことが可能なドロップフィード機構を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決するため、請求項1に係るドロップフィード機構の構成上の特徴は、布送り用の送り歯を、針板の上面から突出可能な通常縫い状態から針板の上面から突出不能なドロップフィード状態に切り替えることが可能なミシンのドロップフィード機構であって、ミシン本体のハウジングの内部の背面側に配設され、左右方向に移動することにより通常位置と解除位置とに切り替わる可動部材と、前記可動部材が前記通常位置にあるときに前記送り歯を下方から支持して該送り歯を前記通常縫い状態に保持すると共に、該可動部材が該通常位置から前記解除位置に切り替わることにより該可動部材に当接しつつ誘導されて該送り歯の支持を解除して該送り歯を前記ドロップフィード状態に切り替える支持部材と、前記ミシン本体の前記ハウジングの正面側に露出して配置され、左右方向に移動することにより前記可動部材を前記通常位置又は前記解除位置に切り替える操作部材と、力点に作用する前記操作部材の操作力をてこにより増幅して作用点から前記可動部材に伝達する伝達部材と、前記ミシン本体の非可動部に固定され、前記伝達部材の前記てこの支点となる回動軸が形成された固定部材と、を備え
前記伝達部材と前記固定部材との間に介装された付勢部材を備え、前記固定部材には、第1取付部が形成されており、前記伝達部材には、該伝達部材の回動範囲の中間位置において前記固定部材の前記第1取付部から該固定部材の前記回動軸へ向かう直線の延長線上に重なる位置に第2取付部が形成されており、前記付勢部材は、前記固定部材の前記第1取付部と前記伝達部材の前記第2取付部とを互いに近づける方向に付勢するように介装されていることである。
【0017】
請求項2に係る発明の構成上の特徴は、請求項1に記載のドロップフィード機構において、前記可動部材が前記通常位置又は前記解除位置に切り替わることにより接点が導通するスイッチを備えていることである。
【0018】
請求項3に係る発明の構成上の特徴は、請求項1又は2に記載のドロップフィード機構において、前記伝達部材によって、前記操作部材の前記操作力が2倍以上に増幅されて前記可動部材に伝達されることである。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に係るドロップフィード機構によれば、ミシン本体のハウジングの正面側に露出して配置された操作部材を移動するのに連動して、ドロップフィード機構を作動するための可動部材が移動する。また、操作部材の操作力は、伝達部材によっててこにより増幅されて可動部材に伝達される。
【0020】
よって、ミシンの正面に着座しているユーザは、操作部材の操作がしやすく、また、操作部材の移動位置を視認することによって、送り歯が通常縫い状態かドロップフィード状態かを容易に認識することができる。このような操作性及び視認性の良さと、ユーザが軽い操作力で操作部材を操作することによって可動部材を移動することができることによる操作性の良さとの相乗効果によって、ユーザが操作部材の可動範囲の途中で操作部材の操作を止めてしまうことを回避することが可能であり、操作ミスを低減して、送り歯の位置切替を確実に行うことができる。
【0021】
さらに、操作部材の操作力が増幅されて可動部材に伝達されていることによって、ミシンを使用しているときの振動により可動部材の位置が自動的に切り替わることを防止して、ユーザの意図に反して自動的に送り歯がドロップフィード状態から通常縫い状態に切り替わること、及び自動的に送り歯が通常縫い状態からドロップフィード状態に切り替わることを防止することができる。
【0022】
なお、伝達部材は、てこの原理を利用して力を増幅できる構造であれば、構造は限定されない。すなわち、伝達部材は、操作部材側に伝達部材の力点があり、可動部材側に伝達部材の作用点があり、伝達部材の支点から力点までの距離が、支点から作用点までの距離よりも長い構造であればよい。ここで、力点、支点及び作用点をこの順番に配置してもよいし、力点、作用点及び支点をこの順番に配置してもよい。また、力点、支点及び作用点は、直線状に配置することに限定されず、これらをく字状に配置してもよい。伝達部材の形状についても、力点、支点及び作用点を所定の位置に配置できる形状であれば特に限定されない。
【0023】
請求項2に係るドロップフィード機構によれば、伝達部材の回動範囲の中間位置において、固定部材に形成された第1取付部と、固定部材に形成された伝達部材の回動軸(支点)と、伝達部材に形成された第2取付部とが、この順番で同一直線上に並ぶ。また、付勢部材によって、第1取付部と第2取付部とが互いに近づく方向に付勢されている。
【0024】
よって、伝達部材が回動範囲の一方側から他方側に向かって回動するときに、第1取付部、回動軸及び第2取付部が同一直線上に並ぶまでの回動区間では、付勢部材が伝達部材の回動を阻害して伝達部材を一方側に向かって逆回転させるように付勢する。また、第1取付部、回動軸及び第2取付部が同一直線上に並んだ後の回動区間では、付勢部材が伝達部材の回動を促進して伝達部材を他方側に向かって正回転させるように付勢する。すなわち、伝達部材は、伝達部材の回動範囲の中間位置にとどまることなく、付勢部材によって、回動範囲の一方側又は他方側のいずれかに向かって回動させられる。これにより、ユーザが操作部材の可動範囲の途中で操作部材の操作を止めてしまった場合であっても、操作部材が可動範囲の中間位置を越えていれば、伝達部材、操作部材及び可動部材が付勢部材により自動的に動かされて、送り歯の位置切替が確実に行われる。
【0025】
請求項3に係るドロップフィード機構によれば、可動部材が通常位置又は解除位置に切り替わることによりスイッチの接点が導通する。例えば、ミシン本体のハウジングの正面側にLEDランプを配設して、このスイッチの導通(又は非導通)に連動してLEDランプを点灯したり、このスイッチの導通(又は非導通)に連動してミシン本体の操作端末である液晶画面に送り歯の位置切替状態を表示したりすることによって、送り歯が通常縫い状態かドロップフィード状態かをユーザが認識しやすくなる。また、このスイッチの導通(又は非導通)をミシン本体のマイコンに入力信号として送ることによって、マイコンに送り歯の位置切替状態を認識させることが可能であり、マイコンの各種制御に活用することができる。
【0026】
請求項4に係るドロップフィード機構によれば、伝達部材によって、操作部材の操作力が2倍以上に増幅されて可動部材に伝達される。よって、従来のドロップフィード機構に比べて、ユーザが操作部材を操作する操作力を確実に軽くすることが可能であり、請求項1において述べた効果をより向上させることができる。
【0027】
以上のように、本発明によれば、布送り用の送り歯を、針板の上面から突出可能な通常縫い状態から針板の上面から突出不能なドロップフィード状態に切り替えることが可能なミシンのドロップフィード機構において、送り歯が通常縫い状態かドロップフィード状態かをユーザが認識しやすく、ドロップフィード機構を操作する操作部材の操作性に優れ、送り歯の位置切替を確実に行うことが可能なドロップフィード機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の一実施形態のドロップフィード機構を備えるミシンの外観斜視図である。
図2】本発明の一実施形態のドロップフィード機構を備えるミシンのハウジングを取り外した状態を説明する斜視図であって、ミシン正面側の下方から見た状態を示している。
図3】本発明の一実施形態のドロップフィード機構をミシン背面側の上方から見た状態を説明する斜視図である。
図4】本発明の一実施形態のドロップフィード機構に備わる切替ロッドの平面図である。
図5】本発明の一実施形態のドロップフィード機構の動作を説明する平面図であって、送り歯が通常縫い状態に保持されているときの状態を示している。
図6】本発明の一実施形態のドロップフィード機構の動作を説明する平面図であって、送り歯がドロップフィード状態に保持されているときの状態を示している。
図7】従来技術によるドロップフィード機構を備えるミシンのハウジングを取り外すと共にミシン背面側の上方から見た状態を説明する斜視図であって、(a)は送り歯が通常縫い状態に保持されているときの状態、(b)は送り歯がドロップフィード状態に保持されているときの状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1乃至図6に基づき、本発明の一実施形態によるドロップフィード機構について説明する。なお、説明中における上、下、左、右、前、後とは、図1に示す上、下、左、右、前、後のことであり、ユーザがミシンを使用するときのユーザにとっての上、下、左、右、前、後を指している。また、ユーザがミシンを使用するときにミシンのユーザと対面する側の面を正面(後面)、ミシンのユーザから遠ざかった側の面を背面(前面)と呼ぶ。
【0030】
図1に示すように、ミシン本体Mは、主要素であるミシン機体(図2示)を外郭となるハウジング1で覆った構造よりなる。ミシン本体Mのハウジング1は、上方のアーム部1aと、下方のベッド部1bと、アーム部1a及びベッド部1bの各右端を上下方向に連結する脚柱部1cとを有している。図2に示すように、ミシン機体は、機枠2(非可動部)と、機枠2に取り付けられる各種のミシン構成部品とにより構成されている。機枠2は、上方のアーム部2aと、下方のベッド部2bと、アーム部2a及びベッド部2bの各右端を上下方向に連結する脚柱部2cとを有している。
【0031】
機枠2のアーム部2aの左端には、縫製対象となる布地の厚さに応じて上下動可能な押え棒3、及び上下動に伴って布地に縫目を形成すると共に左右方向にも移動可能に構成された縫針4が配設されている。また、機枠2のベッド部2bの左方には、針板5、針板5の上面に対して出没可能な布送り用の送り歯6、及び送り歯6を上下前後に駆動して布送りを行う送り装置9が配設されている。
【0032】
このミシンで刺繍縫いを行うときには、図1に示すように、押え棒3の下端に刺繍押え7(ダーニング押え)が装着される。また、刺繍縫いをスムーズに行うために、ミシン本体Mのハウジング1のベッド部1bに拡張テーブル8が装着される。そして、刺繍縫いを行うときには、ユーザが後述するドロップフィード機構DFを操作することによって、送り歯6を、針板5の上面から突出可能な通常縫い状態から針板5の上面から突出不能なドロップフィード状態に切り替える。ユーザが送り歯6をドロップフィード状態に切り替えることなく、送り歯6を通常縫い状態に維持しているときには、この拡張テーブル8を、ハウジング1のベッド部1bのベッド面を拡張する補助ベッドとして活用することができる。
【0033】
図3に示すように、ドロップフィード機構DFは、上下送り接触指10(支持部材)と、操作スライダ11(可動部材)と、スライダロッド12と、切替ロッド13(伝達部材)と、ベースプレート14(固定部材)と、操作レバー15(操作部材)と、引張バネ16(付勢部材)と、1接点スイッチ17(スイッチ)とにより構成されている。
【0034】
操作スライダ11は、上下左右方向に広がる面を持ち左右方向に長い板状の部材である。操作スライダ11は、送り装置9の背面側(前方)に配設され、機枠2のベッド部2bに左右方向にスライド可能に保持されている。操作スライダ11は、左方(図3のX1方向)から右方(図3のX2方向)に移動することにより通常位置から解除位置に切り替わる。操作スライダ11は、ハウジング1に覆われており、ハウジング1の背面側には露出していない。操作スライダ11の右端には、右後方から左前方に向かって傾斜した傾斜面を有するカム部11aが形成されている。カム部11aには右端(先端)から左方に向かって切り込まれた切込部が形成されている。
【0035】
上下送り接触指10は、送り装置9内に配置され、操作スライダ11が通常位置から解除位置に切り替わるのに連動して送り歯6を通常縫い状態からドロップフィード状態に切り替える部材である。上下送り接触指10の背面側の端部(前端)には、操作スライダ11のカム部11aと接触する上下送り接触指レバー10aが形成されている。上下送り接触指レバー10aには、カム部11aの切込部に挿入可能なくびれ部と、くびれ部よりも大径の拡径部とが形成されている。
【0036】
スライダロッド12は、上下左右方向に広がる面を持ち左右方向に長い板状かつ棒状の部材である。スライダロッド12の左端の面には、背面側に向かって突出する連結軸12aが設けられている。この連結軸12aが操作スライダ11に形成された連結孔に後方から挿入されることによって、操作スライダ11とスライダロッド12とが鉛直方向に相対回転可能に連結されている。これにより、操作スライダ11及びスライダロッド12の左右方向の動きが連動している。スライダロッド12の右端には、折曲げ加工によって水平面(前後左右方向に広がる面)が形成されている。このスライダロッド12の水平面には、上下方向に貫通した連結孔12bが形成されている。また、図5及び6に示すように、このスライダロッド12の水平面は、左方に向かって延設されており、この延設された部分が後述するスイッチ17に接触する腕12cとなっている。
【0037】
切替ロッド13は、前後左右方向に広がる面(水平面)を持ち前後方向に長い板状かつ棒状の部材である。図4に示すように、切替ロッド13の背面側の端部(前端)の面には、上方に向かって突出する連結軸13a(作用点)が設けられている。この連結軸13aがスライダロッド12に形成された連結孔12bに下方から挿入されることによって、スライダロッド12と切替ロッド13とが水平方向に相対回転可能に連結されている。切替ロッド13の正面側(後方)の端部(後端)は、円板状の操作端13b(力点)となっている。切替ロッド13の前後方向の中間部の前方寄りの面には、上下方向に貫通した連結孔13c(支点)が形成されている。切替ロッド13の連結軸13a及び連結孔13cの中間部の面の一部は、右方に向かって延設されており、この延設された面の右端(先端)には、上方に向かって突出したバネ掛け13d(第2取付部)が折曲げ加工によって形成されている。
【0038】
切替ロッド13の支点である連結孔13cから力点である操作端13bまでの長さEは、連結孔13cから作用点である連結軸13aまでの長さFの2倍に設定されている(E/F=2)。これにより、操作端13bに力が加わって、切替ロッド13が連結孔13cを中心に回動するとき、てこの原理によって操作端13bに加えられた力が2倍に増幅されて、連結軸13aに伝達される。
【0039】
ベースプレート14は、前後左右方向に広がる面(水平面)を持つ略台形板状の部材である。図2に示すように、ベースプレート14は、ミシンの非可動部である機枠2のベッド部2bの下方にネジ止め固定されている。図5及び6に示すように、ベースプレート14の右後方の面には、上方に向かって突出する回動軸14a(支点)が設けられている。この回動軸14aが切替ロッド13に形成された連結孔13cに下方から挿入されることによって、切替ロッド13は、ベースプレート14の回動軸14aの周りに回動可能に支承されている。ベースプレート14の後端には、上方に向かって突出したバネ掛け14b(第1取付部)が折曲げ加工によって形成されている。
【0040】
図5は、切替ロッド13が回動範囲の最も反時計回り方向(B2方向)に回動している状況を示している。また、図6は、切替ロッド13が回動範囲の最も時計回り方向(B1方向)に回動している状況を示している。切替ロッド13が、図5に示す状態と図6に示す状態との中間位置に位置しているときに、切替ロッド13に形成されたバネ掛け13dと、ベースプレート14に形成された回動軸14aと、ベースプレート14に形成されたバネ掛け14bとが、この順番で同一直線上に並ぶ。
【0041】
図2に示すように、機枠2の正面側には、後述する操作レバー15を左右方向にスライド可能に保持する合成樹脂製の操作レバーベース18がネジ止め固定されている。操作レバーベース18は、左右方向に長い直方体の6面のうちの正面(後面)及び左面を取り除いた4面からなる略箱形を呈している。図5及び6に示すように、操作レバーベース18の背面(前面)には、操作レバー15の背面に弾接する弾接爪18aが形成されている。弾接爪18aの先端には、正面側に向かって突出した凸部が形成されている。
【0042】
図3、5及び6に示すように、操作レバー15は合成樹脂材料による一体成形品であり、正面側に上下左右方向に広がる平滑な面を持ち左右方向に長い立体形状の部材である。操作レバー15を正面側から見ると、L字形を時計回りに90°回転させた外観形状を呈している。また、操作レバー15を上方から見ると、L字形を反転させた逆L字形の外観形状を呈している。操作レバー15の左端から右方に向かって延設された部位は、背面側から操作レバーベース18に保持されており(図2示)、正面側からハウジング1の内面に保持されていることによって(図1示)、左右方向のみにスライド可能となっている。
【0043】
操作レバー15の左端から下方に向かって延設された部分には、前方から後方に向かって凹設された切替ロッド孔15aが形成されている。切替ロッド孔15aの左右方向の開口幅は、前方から後方に向かって徐々に狭くなった後、その奥は上述した切替ロッド13の操作端13bの外径と略同一の一定の開口幅とされている。この切替ロッド孔15aに切替ロッド13の操作端13bが前方から挿入されていることによって、操作レバー15の左右方向の動きに連動して切替ロッド13の操作端13bが左右方向に動く。
【0044】
切替ロッド13は、ベースプレート14の回動軸14aの周りに回動することから、切替ロッド13の操作端13bが左右方向に動くときに、操作端13bが前後方向にも若干動く。ここで、本実施形態においては、切替ロッド孔15aの内面のうちの左面及び右面の2面のみが操作端13bの外周に当接している。したがって、切替ロッド13の操作端13bは、切替ロッド孔15aによって、左右方向に拘束されているが、前後方向には拘束されていない。よって、切替ロッド孔15aが操作端13bの前後方向の動きを阻害することはない。
【0045】
操作レバー15の正面側の面には、正面側に向かって突出する操作部15bが形成されている。操作レバー15の操作部15bは、ユーザが手で触る部分であり、図1に示すように、ミシン本体Mのハウジング1のベッド部1bの正面側に露出して配置されている。ハウジング1には、操作レバー15の操作部15bの可動範囲に対応した大きさの開口部が形成されている。
【0046】
図1に示すように、この開口部の上方のハウジング1の表面には、右方に「上」及び左方に「下」と表示された送り歯位置表示1dが設けられている。操作レバー15が可動範囲の最も右方(X2方向)に位置しているときには、操作レバー15の操作部15bと送り歯位置表示1dの「上」の表示とが揃うことによって、ユーザは、目視により送り歯6が通常縫い状態となっていることを認識できる。また、操作レバー15が可動範囲の最も左方(X1方向)に位置しているときには、操作レバー15の操作部15bと送り歯位置表示1dの「下」の表示とが揃うことによって、ユーザは、目視により送り歯6がドロップフィード状態となっていることを認識できる。なお、送り歯位置表示1dは「上」「下」に限らず、送り歯6の状態を表す表示であれば何でもよい。
【0047】
操作レバー15の背面側には、操作部15bから左右方向に等しい距離だけ離れた2箇所に正面側に向けて凹設された凹部15cが形成されている。図5に示すように、操作レバー15が左右方向の可動範囲の最も右方に位置しているときには、左方の凹部15cと、弾接爪18aの先端の凸部とが係合している。また、図6に示すように、操作レバー15が左右方向の可動範囲の最も左方に位置しているときには、右方の凹部15cと、弾接爪18aの先端の凸部とが係合している。
【0048】
引張バネ16は、両端にフック部が形成されたコイルバネである。引張バネ16は、引っ張られて引張力(バネ力)を蓄積した状態で、一端側のフック部が切替ロッド13のバネ掛け13dに、他端側のフック部がベースプレート14のバネ掛け14bにそれぞれ引っ掛けられている(図3、5及び6示)。ベースプレート14の上面の中央部付近には、1接点スイッチ17が組み付けられている(図3、5及び6示)。1接点スイッチ17の接点17aは、スライダロッド12の腕12cに押されることによって導通する。
【0049】
図5及び6に基づき、本実施形態の動作を説明する。図5に示すように、ユーザの操作により操作レバー15が左右方向の可動範囲の最も右方(X2方向)にスライド操作されているとき、操作レバー15の切替ロッド孔15aの内面に当接している切替ロッド13の操作端13bは、ベースプレート14の回動軸14aを中心に回動範囲の最も反時計回り方向(B2方向)に回動している。このとき、スライダロッド12と一体化した操作スライダ11は、切替ロッド13の連結軸13aにより左方(X1方向)に押されて最も左方の通常位置に位置している。この状態では、操作スライダ11のカム部11aは上下送り接触指レバー10aに接触しないため、送り歯6は、針板5の上面から突出可能な通常縫い状態に保持されており、送り歯6による布送りが可能な状態となっている。
【0050】
図5に示す状態において、操作レバー15の左方の凹部15cと、操作レバーベース18の弾接爪18aの凸部とが係合していることによって、ユーザは、指先の感覚で操作レバー15が可動範囲の最も右方(X2方向)にスライド操作されていることを認識することができる。また、上述した送り歯位置表示1dの「上」の表示によって、ユーザは、目視により送り歯6が通常縫い状態となっていることを認識できる。図5に示す状態において、スライダロッド12の腕12cは、1接点スイッチ17の接点17aを押して接点17aを導通させている。その信号はミシン本体Mに内蔵されたマイコンで処理され、ミシン本体Mは、送り歯6が通常縫い状態に保持されていることを認識して、各種処理を行う。
【0051】
図6に示すように、ユーザの操作により操作レバー15が左右方向の可動範囲の最も左方(X1方向)にスライド操作されているとき、操作レバー15の切替ロッド孔15aの内面に当接している切替ロッド13の操作端13bは、ベースプレート14の回動軸14aを中心に回動範囲の最も時計回り方向(B1方向)に回動している。このとき、スライダロッド12と一体化した操作スライダ11は、切替ロッド13の連結軸13aにより右方(X2方向)に押されて最も右方の解除位置に位置している。この状態では、操作スライダ11のカム部11aの傾斜面に上下送り接触指レバー10aの拡径部が乗り上げて、上下送り接触指10が背面側(前方)にスライドしている。そして、上下送り接触指10が送り装置9内の上下送りカムから外れ、上下送り接触指10による送り歯6の支持が解除されて、送り歯6は針板5の上面から突出不能なドロップフィード状態に切り替わっている。
【0052】
図6に示す状態において、操作レバー15の右方の凹部15cと、操作レバーベース18の弾接爪18aの凸部とが係合していることによって、ユーザは、指先の感覚で操作レバー15が可動範囲の最も左方にスライド操作されていることを認識することができる。また、上述した送り歯位置表示1dの「下」の表示によって、ユーザは、目視により送り歯6がドロップフィード状態となっていることを認識できる。図6に示す状態において、スライダロッド12の腕12cは、1接点スイッチ17の接点17aから離間しており、接点17aは開放状態となっている(導通していない)。その信号はミシン本体Mに内蔵されたマイコンで処理され、ミシン本体Mは、送り歯6がドロップフィード状態に保持されていることを認識して、各種処理を行う。
【0053】
送り歯6が通常縫い状態に保持されているときの図5に示す状態から、送り歯6がドロップフィード状態に保持されているときの図6に示す状態に切り替わるとき、操作スライダ11は、距離Aだけ右方(X2方向)にスライドする。操作レバー15は、距離Cだけ左方(X1方向)にスライドする。切替ロッド13は、ベースプレート14の回動軸14aの周りに角度Dだけ時計回り方向(B1方向)に回動する。上述したように、切替ロッド13の連結孔13cから操作端13bまでの長さEは、連結孔13cから連結軸13aまでの長さFの2倍に設定されているため、操作レバー15の移動距離Cは、操作スライダ11の移動距離Aの2倍となる。距離Aとして10〜15mm、距離Cとして20〜30mmが例示される。
【0054】
引張バネ16に蓄積された引張力は、切替ロッド13を図5又は図6の位置に保持するように作用している。すなわち、図5に示す状態において、切替ロッド13のバネ掛け13dとベースプレート14のバネ掛け14bとを結ぶ仮想線が、ベースプレート14の回動軸14aの左方に位置している。このため、引張バネ16に蓄積された引張力により、切替ロッド13が反時計回り方向(B2方向)に回動させられるように付勢されている。一方、図6に示す状態において、切替ロッド13のバネ掛け13dとベースプレート14のバネ掛け14bとを結ぶ仮想線が、ベースプレート14の回動軸14aの右方に位置している。このため、引張バネ16に蓄積された引張力により、切替ロッド13が時計回り方向(B1方向)に回動させられるように付勢されている。
【0055】
切替ロッド13が、図5に示す状態と図6に示す状態との中間位置に位置しているときには、バネ掛け13dと、回動軸14aと、バネ掛け14bとが、この順番で同一直線上に並んで、引張バネ16に蓄積される引張力が最大となる。この切替ロッド13の中間位置とは、図6において、切替ロッド13の回動角度がD/2で、操作レバー15のスライド量がC/2のときの状態である。
【0056】
したがって、ユーザが操作レバー15をスライド量がC/2よりも小さい不十分な操作量で止めたり、スライド量がC/2よりも大きくCに満たない操作途中で止めたりしても、引張バネ16に蓄積された引張力によって、操作レバー15は、スライド量がゼロの図5に示す状態か、スライド量がCの図6に示す状態かのいずれかの状態に動かされる。よって、引張バネ16に蓄積された引張力によって、操作レバー15、切替ロッド13、スライダロッド12及び操作スライダ11は、必ず図5又は図6の位置まで自動的に動き、送り歯6の位置切替は確実に行われる。
【0057】
本実施形態のドロップフィード機構DFによれば、ミシン本体Mのハウジング1の正面側に露出して配置された操作レバー15を移動するのに連動して、ドロップフィード機構DFを作動するための操作スライダ11が移動する。また、操作レバー15の操作力は、切替ロッド13によっててこにより増幅されて操作スライダ11に伝達される。
【0058】
よって、ミシンの正面に着座しているユーザは、操作レバー15の操作がしやすく、また、操作レバー15の移動位置を視認することによって、送り歯6が通常縫い状態かドロップフィード状態かを容易に認識することができる。このような操作性及び視認性の良さと、ユーザが軽い操作力で操作レバー15を操作することによって操作スライダ11を移動することができることによる操作性の良さとの相乗効果によって、ユーザが操作レバー15の可動範囲の途中で操作レバー15の操作を止めてしまうことを回避することが可能であり、操作ミスを低減して、送り歯6の位置切替を確実に行うことができる。
【0059】
さらに、操作レバー15の操作力が増幅されて操作スライダ11に伝達されていることによって、ミシンを使用しているときの振動により操作スライダ11の位置が自動的に切り替わることを防止して、ユーザの意図に反して自動的に送り歯6がドロップフィード状態から通常縫い状態に切り替わること、及び自動的に送り歯6が通常縫い状態からドロップフィード状態に切り替わることを防止することができる。
【0060】
ここで、本実施形態においては、切替ロッド13によって、操作レバー15の操作力が2倍以上に増幅されて操作スライダ11に伝達される。よって、従来のドロップフィード機構に比べて、ユーザが操作レバー15を操作する操作力を確実に軽くすることが可能であり、上述の効果をより向上させることができる。
【0061】
また、本実施形態のドロップフィード機構DFによれば、切替ロッド13の回動範囲の中間位置において、切替ロッド13に形成されたバネ掛け13dと、ベースプレート14に形成された回動軸14aと、ベースプレート14に形成されたバネ掛け14bとが、この順番で同一直線上に並ぶ。また、引張バネ16によって、バネ掛け13dとバネ掛け14bとが互いに近づく方向に付勢されている。
【0062】
よって、切替ロッド13が回動範囲の一方側から他方側に向かって回動するときに、バネ掛け13d、回動軸14a及びバネ掛け14bが同一直線上に並ぶまでの回動区間では、引張バネ16が切替ロッド13の回動を阻害して切替ロッド13を一方側に向かって逆回転させるように付勢する。また、バネ掛け13d、回動軸14a及びバネ掛け14bが同一直線上に並んだ後の回動区間では、引張バネ16が切替ロッド13の回動を促進して切替ロッド13を他方側に向かって正回転させるように付勢する。すなわち、切替ロッド13は、切替ロッド13の回動範囲の中間位置にとどまることなく、引張バネ16によって、回動範囲の一方側又は他方側のいずれかに向かって回動させられる。
【0063】
これにより、ユーザが操作レバー15の可動範囲の途中で操作レバー15の操作を止めてしまった場合であっても、操作レバー15が可動範囲の中間位置を越えていれば、切替ロッド13、操作スライダ11及び操作レバー15が引張バネ16により自動的に動かされて、送り歯6の位置切替が確実に行われる。
【0064】
なお、ユーザが操作レバー15を操作するときには、操作スライダ11をスライドさせるときの抵抗力に抗する操作力に加えて、引張バネ16に蓄積された引張力に抗する操作力が必要となる。ここで、本実施形態においては、操作レバー15の操作力が増幅されて操作スライダ11に伝達されることから、引張バネ16に蓄積された引張力により操作レバー15の操作性が低下することはない。
【0065】
また、本実施形態のドロップフィード機構DFによれば、操作スライダ11が、図5に示す通常位置に切り替わっているときに1接点スイッチ17の接点17aが導通する。この1接点スイッチ17の導通をミシン本体Mのマイコンに入力信号として送ることによって、マイコンに送り歯6の位置切替状態を認識させることが可能であり、マイコンの各種制御に活用することができる。
【0066】
本発明のドロップフィード機構は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができることは言うまでもない。
【0067】
例えば、切替ロッド13は、てこの原理を利用して力を増幅できる構造であれば、力の増幅倍率及び切替ロッド13の構造は限定されない。すなわち、切替ロッド13は、操作レバー15側に切替ロッド13の力点があり、操作スライダ11側に切替ロッド13の作用点があり、切替ロッド13の支点から力点までの距離が、支点から作用点までの距離よりも長い構造であればよい。ここで、本実施形態のように、力点、支点及び作用点をこの順番に配置してもよいし、力点、作用点及び支点をこの順番に配置してもよい。また、力点、支点及び作用点は、直線状に配置することに限定されず、これらをく字状に配置してもよい。切替ロッド13の形状についても、力点、支点及び作用点を所定の位置に配置できる形状であれば特に限定されない。
【0068】
また、本実施形態においては、1接点スイッチ17の接点17aが導通(又は非導通)したときの情報をミシン本体Mに内蔵されたマイコンに入力信号として送って、マイコンによる各種制御に活用している。1接点スイッチ17のこれ以外の活用方法として、ミシン本体Mのハウジング1の正面側にLEDランプを配設して、この1接点スイッチ17の導通(又は非導通)に連動してLEDランプを点灯したり、この1接点スイッチ17の導通(又は非導通)に連動してミシン本体Mの操作端末である液晶画面に送り歯6の位置切替状態を表示したりすることができる。これにより、送り歯6が通常縫い状態かドロップフィード状態かをユーザがより認識しやすくなる。
【0069】
また、本実施形態においては、引張バネ16によって、ベースプレート14に形成されたバネ掛け14bと、切替ロッド13に形成されたバネ掛け13dとを互いに近づける方向に付勢している。しかし、付勢部材は、引張バネ16に限定されず、ゴムやねじりコイルバネ等他の弾性体を使用して同様の効果を持たせることも当業者にとっては容易に想像できる。
【0070】
また、本実施形態においては、送り歯6の位置切替を確実に行うために引張バネ16をドロップフィード機構DFに配設しているが、引張バネ16の配設は必須ではない。引張バネ16を配設しない場合であっても、操作レバー15の操作力が増幅されて操作スライダ11に伝達される構成を有していることによって、従来のドロップフィード機構に比べて、送り歯6の位置切替を確実に行うことが可能である。
【符号の説明】
【0071】
1 … ハウジング 2 … 機枠(非可動部)
5 … 針板 6 … 送り歯
10 … 上下送り接触指(支持部材) 11 … 操作スライダ(可動部材)
13 … 切替ロッド(伝達部材) 13a… 連結軸(作用点)
13b… 操作端(力点) 13c… 連結孔(支点)
13d… バネ掛け(第2取付部) 14 … ベースプレート(固定部材)
14a… 回動軸(支点) 14b… バネ掛け(第1取付部)
15 … 操作レバー(操作部材) 16 … 引張バネ(付勢部材)
17 … 1接点スイッチ(スイッチ) 17a… 接点
DF … ドロップフィード機構 M … ミシン本体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7