特許第5966344号(P5966344)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5966344
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】車体後部構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20160728BHJP
【FI】
   B62D25/20 L
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-278884(P2011-278884)
(22)【出願日】2011年12月20日
(65)【公開番号】特開2013-129261(P2013-129261A)
(43)【公開日】2013年7月4日
【審査請求日】2014年12月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000349
【氏名又は名称】特許業務法人 アクア特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武田 宗信
(72)【発明者】
【氏名】岡村 拓哉
【審査官】 須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−238032(JP,A)
【文献】 特開2003−095143(JP,A)
【文献】 特開2008−074358(JP,A)
【文献】 特開昭59−002971(JP,A)
【文献】 特開2006−219069(JP,A)
【文献】 特開2009−029336(JP,A)
【文献】 特開2004−314872(JP,A)
【文献】 特開2000−153782(JP,A)
【文献】 実開昭62−163476(JP,U)
【文献】 実開昭57−105874(JP,U)
【文献】 米国特許第05803533(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジャッキを受けるジャッキマウント部を備えた車体後部構造において、
車体の床面を形成するリアフロアパネルの後端に車幅全体にわたって接続されるスカートパネルであって車両上下方向に延びている縦壁部と該縦壁部の上部から車体後方に向かって湾曲した湾曲部とを有するスカートパネルと、
前記スカートパネルの後側で車幅全体にわたって延びていて下端部が前記縦壁部に固定され上端部が前記湾曲部に固定されることにより側面視において前記スカートパネルとともに閉断面を形成するスカートメンバと、
車幅全体にわたって延びていて前記リアフロアパネルの下面と前記縦壁部とを接続するクロスメンバとを備え、
前記ジャッキマウント部は、車両前側で前記クロスメンバに固定され、前記スカートパネルの縦壁部の下側を跨いで車両後側で前記スカートメンバに固定されていて、
前記ジャッキマウント部は、
底部で前記ジャッキを受け、車両前側となる前部で前記クロスメンバに固定されるブラケットと、
前記底部に固定され車両後側で前記スカートメンバに固定される第1リンフォースとを含み、
当該車体後部構造は、前記ブラケット、前記第1リンフォースおよび前記クロスメンバにより側面視において前記リアフロアパネルの下部で閉断面を形成し、前記スカートパネル、前記第1リンフォースおよび前記スカートメンバにより側面視において前記リアフロアパネルの上部で閉断面を形成することを特徴とする車体後部構造。
【請求項2】
下部が前記クロスメンバの上面に固定され上部が前記スカートパネルの縦壁部に固定された第2リンフォースをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の車体後部構造。
【請求項3】
前記スカートメンバは、前記スカートパネルの縦壁部に固定された前記下端部から車両後方に延びる第1壁面と、該第1壁面から車両上側に向かって湾曲し前記スカートパネルの湾曲部に前記上端部にて固定される第2壁面とを有し、
当該車体後部構造は、前記閉断面内に配置されていて一端部が前記第1壁面に固定され他端部が前記第2壁面に固定された第3リンフォースをさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の車体後部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジャッキを受けるジャッキマウント部を備えた車体後部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車体は、例えば、整備作業時等にジャッキを受け、ジャッキアップのポイントとなるガレージジャッキアップ受け部(以下、ジャッキマウント部)を備えている(例えば、特許文献1、2)。
【0003】
特許文献1には、車体の床面を形成するリアフロアパネルの下面にて車幅全体にわたって延びているクロスメンバと、クロスメンバの下面に固定されたジャッキマウント部とを備えた車体後部構造が記載されている。
【0004】
特許文献1のジャッキマウント部では、ジャッキを受ける底部と、底部に接続され車両前後方向に対向して配置された2つの側板部と、車幅方向に配置され側板部同士を結合するプレートとを備えた、ボックス構造が採用されている。特許文献1では、ボックス構造のジャッキマウント部を採用することで、ジャッキマウント部の強度を損なうことがないとしている。
【0005】
特許文献2には、車体の後面を形成し、車両上下方向に延びている縦壁部と、縦壁部に固定され、単一の板材から形成されたジャッキマウント部とを備えた車体後部構造が記載されている。
【0006】
特許文献2のジャッキマウント部は、ジャッキを受ける底板部と、一対の縦板部と、一対の側板部と、突っ張り部とを備えている。一対の縦板部は、底板部から上方へ折り曲げ形成され相対向している。一対の側板部は、底板部よりも上方に設けられ、縦板部同士を接続しこれら縦板部とともに上下方向を軸方向とする筒部を形成している。突っ張り部は、底板部から側板部に向けて折り曲げ形成されていて、底板部がジャッキによって上方へ押圧された状態で底板部および側板部の間に介在している。特許文献2では、突っ張り部を含むジャッキマウント部が単一の板材から形成されているので、ジャッキマウント部の部品点数を増加させることなく、ジャッキマウント部の使用時の変形を抑制できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−219069号公報
【特許文献2】特開2009−29336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1、2に記載の技術では、上記荷重は、ジャッキマウント部に固定された上記クロスメンバあるいは車体の後面に集中してしまう。しかしながら、特許文献1、2に記載の車体後部構造は、単に、ジャッキマウント部自体の強度を高める構造にすぎず、上記のような荷重の集中を根本的に解決するものではなかった。
【0009】
すなわち、特許文献1、2に記載の技術では、ジャッキマウント部に固定される特定の周辺部品に上記荷重が集中するので、周辺部品の板厚を大きくしなければならず、重量やコストが増加するという問題があった。また、ジャッキマウント部と特定の周辺部品とで車体重量を支持するために、ジャッキマウント部自体に要求される強度も高くなり、板厚が大きくなるという問題もあった。
【0010】
本発明は、このような課題に鑑み、ジャッキから受ける荷重を効率的に分散でき、ジャッキマウント部およびその周辺部品の重量やコストを増大させる必要のない車体後部構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明にかかる車体後部構造の代表的な構成は、ジャッキを受けるジャッキマウント部を備えた車体後部構造において、車体の床面を形成するリアフロアパネルの後端に車幅全体にわたって接続されるスカートパネルであって車両上下方向に延びている縦壁部と縦壁部の上部から車体後方に向かって湾曲した湾曲部とを有するスカートパネルと、スカートパネルの後側で車幅全体にわたって延びていて下端部が縦壁部に固定され上端部が湾曲部に固定されることにより側面視においてスカートパネルとともに閉断面を形成するスカートメンバと、車幅全体にわたって延びていてリアフロアパネルの下面と縦壁部とを接続するクロスメンバとを備え、ジャッキマウント部は、車両前側でクロスメンバに固定され、スカートパネルの縦壁部の下側を跨いで車両後側でスカートメンバに固定されていることを特徴とする。
【0012】
上記構成によれば、ジャッキアップのとき、ジャッキマウント部が受ける荷重は、車両前側ではクロスメンバに伝達され、車両後側ではスカートメンバに伝達される。また、クロスメンバに伝達された荷重は、スカートパネルの縦壁部に伝達される。さらに、スカートメンバに伝達された荷重は、上端部および下端部を介してスカートパネルの湾曲部および縦壁部に伝達される。このように、ジャッキマウント部が受ける荷重は、クロスメンバ、スカートメンバおよびスカートパネルに効率的に分散される。したがって、ジャッキマウント部にて車体重量を効率的に支持できるから、ジャッキマウント部やジャッキマウント部に固定される周辺部品の板厚を大きくする必要がなく、重量やコストを低減できる。
【0013】
ジャッキマウント部は、底部でジャッキを受け、車両前側となる前部でクロスメンバに固定されるブラケットと、底部に固定され車両後側でスカートメンバに固定される第1リンフォースとを含むとよい。これにより、ジャッキマウント部が受ける荷重は、ブラケットの底部からクロスメンバに伝達され、また、ブラケットの底部に接続された第1リンフォースからスカートメンバに伝達される。なお、クロスメンバおよびスカートメンバに伝達された荷重は、上記同様に、スカートパネルに伝達される。このように、ジャッキマウント部を2つの部品、すなわち、ジャッキを受ける底部を含むブラケットと、ブラケットを補強する第1リンフォースとから形成したので、ジャッキマウント部が受ける荷重を2つの部品を介して効率的に分散できる。
【0014】
下部がクロスメンバの上面に固定され上部がスカートパネルの縦壁部に固定された第2リンフォースをさらに備えるとよい。これにより、ジャッキアップのとき、ジャッキマウント部が車両前側で受ける荷重は、クロスメンバから第2リンフォースを介して、スカートパネルの縦壁部のせん断方向に分散される。よって、クロスメンバの強度が十分でない場合であっても、ジャッキアップに伴う荷重を効率的に分散できる。
【0015】
スカートメンバは、スカートパネルの縦壁部に固定された下端部から車両後方に延びる第1壁面と、第1壁面から車両上側に向かって湾曲しスカートパネルの湾曲部に上端部にて固定される第2壁面とを有し、車体後部構造は、閉断面内に配置されていて一端部が第1壁面に固定され他端部が第2壁面に固定された第3リンフォースをさらに備えるとよい。これにより、スカートパネルとともに閉断面を形成するスカートメンバは、第3リンフォースによって閉断面側から補強される。よって、ジャッキアップのとき、ジャッキマウント部が車両後側で受ける荷重は、第3リンフォースで補強されたスカートメンバに伝達される。よって、スカートメンバの強度が十分でない場合であっても、スカートメンバの局所的な折れを防止して、ジャッキアップに伴う荷重を効率的に分散できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ジャッキから受ける荷重を効率的に分散でき、ジャッキマウント部およびその周辺部品の重量やコストを増大させる必要のない車体後部構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態における車体後部構造が適用される車両の一部を示す図である。
図2図1の車体後部構造の一部を拡大して示す図である。
図3図2の車体後部構造のA−A断面図である。
図4図2の車体後部構造のB−B断面図である。
図5図1の車体後部構造の一部を車両前側の斜め上方から見た状態を示す図である。
図6図1の車体後部構造の一部を車両後側の斜め下方から見た状態を示す図である。
図7図6の車体後部構造から一部の部材を取り除いた状態を示す図である。
図8】比較例の車体後部構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0019】
図1は、本実施形態における車体後部構造100が適用される車両110の一部を示す図である。図1(a)では、エンジンルームなどを除く車両110を斜め下方から見た状態を示し、また、各部材を適宜省略した状態で車体後部構造100を示している。なお、図中の矢印Frは車両前側、矢印Rhは車両右側を示すものとする。図1(b)は、図1(a)の車体後部構造100を拡大して示している。
【0020】
車体後部構造100は、図1(a)および図1(b)に示すように、例えば整備作業時等にジャッキ120(図3参照)を受けるジャッキマウント部130を備える。また、車体後部構造100は、図1(b)に示すように、車体の床面を形成するリアフロアパネル132と、車幅全体にわたって延びていてリアフロアパネル132の下面に接続されたテールクロスメンバ(以下、クロスメンバ134)とを備える。なお、クロスメンバ134には、図示を省略するマフラーを取付けるためのロッド136が配置されている。
【0021】
図2は、図1の車体後部構造100の一部を拡大して示す図である。図2(a)は、ジャッキマウント部130を車両前側から見た状態を示している。図2(b)は、ジャッキマウント部130を車両上側から見た上面図である。図3は、図2の車体後部構造100のA−A断面図である。なお、図中には、ジャッキマウント部130の下方に位置するジャッキ120を示している。図4は、図2の車体後部構造100のB−B断面図である。
【0022】
ジャッキマウント部130は、図2(a)および図3に示すように、車両前側に位置するブラケット138と、車両後側に位置するリンフォース(以下、第1リンフォース140)とを含む(詳細は後述)。
【0023】
車体後部構造100は、上記ジャッキマウント部130に加えて、図3および図4に示すように、テールスカートパネル(以下、スカートパネル142)と、テールスカートメンバ(以下、スカートメンバ144)と、上記クロスメンバ134と、テールクロスメンバリンフォース(以下、第2リンフォース146)と、テールスカートメンバリンフォース(以下、第3リンフォース148)とを備える。
【0024】
スカートパネル142は、リアフロアパネル132の後端132aに車幅全体にわたって接続された部材であり、図3および図4に示すように、縦壁部150と湾曲部152とを有する。縦壁部150は、車両上下方向に延びていて、例えば、下部はリアフロアパネル132およびクロスメンバ134よりも下方に位置し、上部はリアフロアパネル132および第1リンフォース140よりも上方に位置している。湾曲部152は、縦壁部150の上部から車体後方に向かって湾曲している。
【0025】
スカートメンバ144は、スカートパネル142の後側で車幅全体にわたって延びている部材であり、図3および図4に示すように、側面視においてスカートパネル142とともに閉断面154を形成している。スカートメンバ144は、下端部144aが第3リンフォース148とともに縦壁部150に固定され、また、上端部144bが湾曲部152に固定されている。
【0026】
また、スカートメンバ144は、閉断面154を形成する第1壁面156と第2壁面158とを有する。第1壁面156は、上記下端部144aを含み、下端部144aから車両後方に延びている。第2壁面158は、第1壁面156から車両上側に向かって湾曲し、上記上端部144bを含んでいる。
【0027】
第3リンフォース148は、図3および図4に示すように、閉断面154内に配置された部材である。第3リンフォース148は、平面部148a、一端部148bおよび他端部148cを含む。平面部148aは、第1壁面156に固定される。一端部148bは、車両前側で縦壁部150および第1壁面156の下端部144aに固定される。他端部148cは、車両後側で第2壁面158に固定される。
【0028】
クロスメンバ134は、図3および図4に示すように、車両前側の前端部134aでリアフロアパネル132の下面に接続され、車両後側の後端部134bで縦壁部150に接続されている。
【0029】
第2リンフォース146は、図3および図4に示すように、下部146aがクロスメンバ134の上面に固定されていて、上部146bがスカートパネル142の縦壁部150に固定されている。また、第2リンフォース146の上部146bには、リアフロアパネル132の後端132aも固定されている。
【0030】
つぎに、ジャッキマウント部130について説明する。ジャッキマウント部130は、上記したようにブラケット138と第1リンフォース140とから形成されている。ブラケット138は、図3に示すように、ジャッキ120を受ける底部160と、クロスメンバ134に固定され車両前側となる前部162とを備える。
【0031】
ブラケット138の前部162は、図3に示すように、底部160から上部164に向けて車両前側に傾斜している。ブラケット138の上部164は、図2(a)に示すように、上方に突出していてクロスメンバ134に固定されている。また、ブラケット138は、図2(a)に示すように、前部162から車両後側に向かって湾曲し互いに対向した側面部166a、166bを含んでいる。なお、ブラケット138は、図2(b)に示すように、上方から見て前部162および側面部166a、166bで囲まれたほぼU字形状を成している。
【0032】
ブラケット138は、図2(a)および図2(b)に示すように、上部164の近傍にて側面部166a、166bから車幅方向にそれぞれ張り出していて、クロスメンバ134に固定されるフランジ168a、168bを有する。また、ブラケット138は、フランジ168a、168bよりも下方にて側面部166a、166bから車幅方向にそれぞれ張り出しているフランジ170a、170b、172a、172bを有する。フランジ170a、170bは、図2(a)および図4に示すように、第1リンフォース140の下端部140aに固定されている。また、フランジ172a、172bは、フランジ170a、170bよりも上方にて、第1リンフォース140に固定されている。
【0033】
第1リンフォース140は、図3に示すように、下端部140aがブラケット138の底部160に固定されていて、上端部140bが車両後側でスカートメンバ144の第1壁面156に固定されている。つまり、第1リンフォース140は、ブラケット138を車両後側で補強する部材である。
【0034】
ジャッキマウント部130は、図3のA−A断面では、車両前側でブラケット138がクロスメンバ134に固定され、また、スカートパネル142の縦壁部150の下側を跨いで、車両後側で第1リンフォース140がスカートメンバ144に固定されている。なお、図4のB−B断面では、第1リンフォース140は、リアフロアパネル132よりも上方の位置でスカートパネル142の縦壁部150に固定され、さらにスカートメンバ144の下端部144aに固定されている。
【0035】
ここで、図5図7の斜視図を参照して、車体後部構造100でのジャッキマウント部130とその周辺の各部材との配置関係を概略的に説明する。図5は、図1の車体後部構造100の一部を車両前側の斜め上方から見た状態を示す図である。図中では、車体後部構造100からリアフロアパネル132を取り除いて示している。図6は、図1の車体後部構造100の一部を車両後側の斜め下方から見た状態を示す図である。図7は、図6の車体後部構造100から一部の部材を取り除いた状態を示す図である。図7(a)は、車体後部構造100からスカートメンバ144を取り除いて示している。図7(b)は、図7(a)に示された第3リンフォース148を車両前側の斜め上方から見た状態を示している。
【0036】
車体後部構造100では、図5に示すように、車幅方向にわたって延びているクロスメンバ134に、ジャッキマウント部130を形成する車両前側に位置するブラケット138が固定されている。なお、ブラケット138は、前部162の上部164にてクロスメンバ134に固定されている。また、クロスメンバ134の上面には、第2リンフォース146が固定されている。さらに、第2リンフォース146の車両後側には、スカートパネル142の縦壁部150が固定されている。また、ブラケット138の車両後側には、ブラケット138の底部160に固定された第1リンフォース140が配置されている。
【0037】
車体後部構造100では、図6に示すように、下端部140aが上記底部160に固定された第1リンフォース140が車両上側に向かって延びていて、上端部140bがスカートメンバ144の第1壁面156に固定されている。また、第1リンフォース140の車両前側には、スカートパネル142の縦壁部150が配置されている。なお、図中では、上記ブラケット138、クロスメンバ134、スカートメンバ144の第2壁面158に加えて、図5にて省略されたリアフロアパネル132が示されている。
【0038】
車体後部構造100では、上記スカートメンバ144を省略した図7(a)に示すように、上記第3リンフォース148の一端部148bがスカートパネル142の縦壁部150に固定されている。また、第3リンフォース148の他端部148bの上方には、スカートパネル142の湾曲部152が位置している。
【0039】
さらに、一端部148bと他端部148cとの間に位置する平面部148a(図7(b)参照)の下方には、図7(a)に示すように、上記第1リンフォース140の上端部140bが位置している。
【0040】
以下、図3を参照して、上記車体後部構造100でジャッキ120を受ける場合について説明する。例えば整備作業時等にジャッキアップを行う場合には、まず、ジャッキ120の押上げ部120aがブラケット138の底部160を図中仮想線で示すように上方に押し上げる。
【0041】
ジャッキマウント部130は、上記したように、クロスメンバ134に固定されたブラケット138と、スカートメンバ144に固定された第1リンフォース140とで形成されている。このため、ジャッキマウント部130が受ける荷重は、ブラケット138の底部160からクロスメンバ134に伝達され(矢印C参照)、また、ブラケット138の底部160に接続された第1リンフォース140からスカートメンバ144に伝達される(矢印D参照)。
【0042】
また、クロスメンバ134は、上記したように、車両後側の後端部134bにてスカートパネル142の縦壁部150に固定されている。このため、クロスメンバ134に伝達された荷重は、後端部134bを介してスカートパネル142の縦壁部150に伝達される。
【0043】
さらに、第2リンフォース146は、上記したように下部146aがクロスメンバ134に固定されていて、上部146bがスカートパネル142の縦壁部150に固定されている。このため、仮に、クロスメンバ134の強度が十分でない場合であっても、クロスメンバ134に伝達された荷重は、クロスメンバ134から第2リンフォース146を介して、スカートパネル142の縦壁部150のせん断方向に分散される。
【0044】
一方、スカートメンバ144は、上記したようにスカートパネル142とともに閉断面154を形成している。このため、スカートメンバ144に伝達された荷重は、スカートメンバ144の上端部144bおよび下端部144aを介してスカートパネル142の湾曲部152および縦壁部150に伝達される。
【0045】
さらに、第3リンフォース148は、上記したように平面部148aがスカートメンバ144の第1壁面156に固定され、一端部148bが第1壁面156の下端部144aおよび縦壁部150に固定され、他端部148cが第2壁面158に固定されている。
【0046】
つまり、スカートメンバ144は、第3リンフォース148によって閉断面154側から補強されている。このため、仮に、スカートメンバ144の強度が十分でない場合であっても、スカートメンバ144には、局所的な折れが発生し難い。よって、スカートメンバ144に伝達された荷重は、スカートパネル142に確実に伝達される。
【0047】
図8は、比較例の車体後部構造200を示す断面図である。なお、図8は上記A−A断面を示した図3に対応している。
【0048】
車体後部構造200は、上記第1リンフォース140、第2リンフォース146および第3リンフォース148を有していない点、ブラケット202のみで形成されたジャッキマウント部204がクロスメンバ206の下面に固定されている点で、上記車体後部構造100と異なる。
【0049】
ブラケット202は、ジャッキ120(図3参照)を受ける底部208を含み、車両前側および車両後側でクロスメンバ206に固定されている。クロスメンバ206は、車両前側にてリアフロアパネル210の下面に固定され、車両後側にて上記ブラケット202、リアフロアパネル210の後端210aおよびスカートパネル212の縦壁部214に固定されている。また、スカートパネル212は、縦壁部214の上部から湾曲した湾曲部216を有する。さらに、スカートメンバ218は、下端部218aがスカートパネル212の縦壁部214に固定され、上端部218bが湾曲部216に固定されることにより、側面視においてスカートパネル212とともに閉断面220を形成している。
【0050】
このような車体後部構造200では、ジャッキマウント部204がジャッキ120から受ける荷重は、ジャッキマウント部204に固定されたクロスメンバ206に集中してしまう。さらに、この車体後部構造200は、ブラケット202、クロスメンバ206およびスカートメンバ218をそれぞれ補強するリンフォースを有していない。
【0051】
このため、比較例の車体後部構造200では、ジャッキマウント部204自体に要求される強度が高くなるので、ブラケット202の板厚を大きくする必要がある。また、ジャッキマウント部204に固定されるクロスメンバ206は、上記荷重が集中するので、ブラケット202と同様に、板厚を大きくする必要がある。つまり、車体後部構造200では、ジャッキマウント部204がジャッキ120から受ける荷重を効率的に分散できず、車体重量や製造コストが増加してしまう。特に、クロスメンバ206は、車幅方向に延びている部材であり、板厚が大きくなることで、重量やコストが大幅に増加してしまう。
【0052】
これに対して、本実施形態における車体後部構造100では、車両前側に位置するブラケット138と、ブラケット138を車両後側で補強する第1リンフォース140とによってジャッキマウント部130が形成されている。このため、ジャッキアップの際、ジャッキマウント部130が受ける荷重は、ブラケット138および第1リンフォース140によって効率的に分散される。すなわち、ジャッキマウント部130が車両前側で受ける荷重は、ブラケット138の底部160からクロスメンバ134および第2リンフォース146を介してスカートパネル142に伝達される。また、ジャッキマウント部130が車両後側で受ける荷重は、第1リンフォース140から、第3リンフォース148で補強されたスカートメンバ144を介してスカートパネル142に伝達される。
【0053】
したがって、車体後部構造100では、ジャッキマウント部130が受ける荷重は、クロスメンバ134、スカートメンバ144およびスカートパネル142に効率的に分散される。言い換えると、車体後部構造100では、ジャッキマウント部130にて車体重量を効率的に支持できる。このため、車体後部構造100では、ジャッキマウント部130やジャッキマウント部130に固定される周辺部品の板厚を大きくすることなく、十分な剛性を確保でき、重量やコストを低減できる。
【0054】
また、一例としてリアフロアパネル132下にスペアタイヤを収容する場合には、ジャッキマウント部130は、車両下側に向けて長くなり、さらに、車両の車幅方向の中心からずれた位置に配置されることがあり得る。このような場合、ジャッキマウント部130は、大きな荷重や横方向の力を受けることになる。しかし、車体後部構造100では、上記したように、ジャッキ120から受ける荷重を効率的に分散できるので、車体重量を効率的に支持して、板厚を大きくせず、重量やコストの低減が可能となる。なお、リアフロアパネル132下にスペアタイヤを収容しない車両においても、上記同様に、ジャッキマウント部130の板厚を大きくする必要はない。
【0055】
また、第2リンフォース146を介して荷重がスカートパネル142に伝達されるので、クロスメンバ134の強度が十分でない場合であっても、ジャッキアップに伴う荷重を効率的に分散できる。
【0056】
さらに、第3リンフォース148によりスカートメンバ144が補強されるので、スカートメンバ144の強度が十分でない場合であっても、スカートメンバ144の局所的な折れを防止して、ジャッキアップに伴う荷重を効率的に分散できる。なお、スカートメンバ144は、図示を省略するバックドア開口部の下縁に車幅方向に沿って配設されるので、第3リンフォース148により局所的な折れを防止することで、バックドア開口部の変形も低減できる。そのため、バックドア開口部の変形に伴うバックドアの開閉性の悪化も回避できる。
【0057】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、ジャッキを受けるジャッキマウント部を備えた車体後部構造に利用することができる。
【符号の説明】
【0059】
100…車体後部構造、110…車両、120…ジャッキ、130…ジャッキマウント部、132…リアフロアパネル、134…クロスメンバ、138…ブラケット、140…第1リンフォース、142…スカートパネル、144…スカートメンバ、146…第2リンフォース、148…第3リンフォース、150…縦壁部、152…湾曲部、154…閉断面、156…第1壁面、158…第2壁面、160…底部、162…前部、164…上部、166a、166b…側面部、168a、168b、170a、170b、172a、172b…フランジ
図1
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図8