(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5966366
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】横葺き屋根材の重合構造
(51)【国際特許分類】
E04D 3/362 20060101AFI20160728BHJP
E04D 3/35 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
E04D3/362 F
E04D3/35 K
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2011-290222(P2011-290222)
(22)【出願日】2011年12月29日
(65)【公開番号】特開2013-139680(P2013-139680A)
(43)【公開日】2013年7月18日
【審査請求日】2014年11月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000129079
【氏名又は名称】株式会社カナメ
(72)【発明者】
【氏名】渡部 渉
【審査官】
五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−174921(JP,A)
【文献】
特開昭60−080649(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 3/00−3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
横葺き屋根材の重合構造であって、
前記横葺き屋根材の水下側には係合部、
水上側には係止部が形成されており、
前記横葺き屋根材の一方の桁行方向端部には、
被重ね部が形成され、
前記横葺き屋根材の他方の桁行方向端部には、
重ね部が形成されており、
該被重ね部は、
軒棟方向において表面側へ凸形になるように湾曲され、
前記被重ね部の裏面にはバックアップ材が設けられており、
前記重ね部は、
軒棟方向において表面側へ凸形になるように前記被重ね部よりも緩やかなアールに湾曲されており、
前記横葺き屋根材が係合部及び係止部によって取り付けられる際、
桁行方向で隣り合う横葺き屋根材の被重ね部の上に、
重ね部が重ねられることを特徴とする横葺き屋根材の重合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、桁行方向に隣り合う横葺き屋根材同士の重合構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来技術について、
図5から
図9までにより説明する。いずれも横葺き屋根材に関する技術である。
【0003】
図5及び
図6は、特許第4633610号公報として公開されている技術である。特許第4633610号公報によれば、屋根材裏面の樹脂発泡体12がない部分の形状をその下側に相隣接する横葺屋根材の表面形状に相対する形状として互いに重合接続可能に構成し、かかる樹脂発泡体12がない部分の屋根材を、葺設時に相隣接する横葺屋根材の上側に重ね合わせて重合接続し、桁行方向に連続して横葺設されることを特徴とする横葺屋根材である。また、雄端縁17と雌端縁16との間の屋根材11は、該樹脂発泡体12がない部分を含み連続して平坦に形成され、かつ上記雄端縁17の裏面側に向けて屈曲した部分も樹脂発泡体12がない部分を含み連続形成されていることも記載されている。
【0004】
図7及び
図8は、特開2008−101408号公報として公開されている技術である。特開2008−101408号公報によれば、断熱屋根材Aの左右端部は、固定された断熱屋根材A1の下連結部14上に、施工する断熱屋根材A2の上連結部19を重合する断熱屋根材Aの連結構造である。また、断熱屋根材Aの化粧面4は略水平面状であることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4633610号公報
【特許文献2】特開2008−101408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図5及び
図6、
図7及び
図8に示したとおり、横葺き屋根材は平坦(略水平面状)であり、桁行方向に隣り合う横葺き屋根材同士が重ね合わされて、水上側及び水下側が固定される。そうすると、横葺き屋根材の働き幅が広い場合に、被重ね部3と重ね部4との重合部分において、
図9に示すような「口あき」が発生しやすい。その結果、意匠性が悪くなる上に、その口あきから雨水等が浸入する可能性が高かった。
【0007】
本願は、桁行方向に隣り合う横葺き屋根材同士の重合部分において、口あきを発生させない重合構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願は、水下側には係合部、水上側には係止部が形成されており、桁行方向端部には被重ね部、又は重ね部が形成されている横葺き屋根材の重合構造である。被重ね部は、軒棟方向において表面側へ凸形になるように湾曲され、被重ね部の裏面にはバックアップ材が設けられている。重ね部は、軒棟方向において表面側へ凸形になるように被重ね部よりも緩やかなアールに湾曲されている。横葺き屋根材が係合部及び係止部によって取り付けられる際、桁行方向で隣り合う横葺き屋根材の被重ね部の上に、重ね部が重ねられる。
【発明の効果】
【0009】
本願の横葺き屋根材の重合構造では、軒棟方向において表面側へ凸形になるように湾曲された被重ね部の上に、軒棟方向において表面側へ凸形になるように被重ね部よりも緩いアールに湾曲されている重ね部を重ねて固定する構造である。このような構造にすることによって、横葺き屋根材がもつスプリングバックにより密着する方向に力が働き、重合部分に口あきが発生しない。
【0010】
また、バックアップ材が被重ね部の裏面に設けられている。このことによって、強制的に凸形の形状が保たれるので、被重ね部と重ね部との密着が強固になるとともに、その状態を維持することが実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本願で使用する横葺き屋根材の実施例(平面図)である。
【
図2】本願で使用する横葺き屋根材における実施例であり、
図1のA−A線断面図及びB−B線断面図である。
【
図3】本願で使用する横葺き屋根材同士を重ねる実施例である。
【
図4】本願で使用する横葺き屋根材同士を重ねる実施例であり、
図3のC−C線断面図である。
【実施例】
【0012】
本願の横葺き屋根材の重合構造について、
図1から
図4により説明する。
【0013】
図1及び
図2は、本願で使用される横葺き屋根材の一例である。
図1では、横葺き屋根材の実施例を平面図で示す。
図2では、(a)で横葺き屋根材の重ね部の実施例としてA−A線断面図を、(b)で横葺き屋根材の被重ね部の実施例としてB−B線断面図を示す。
【0014】
まず、本願で使用される横葺き屋根材Aは、
図2に示すように水下側に係合部1、水上側に係止部2が形成されている。
【0015】
図2において、係合部1は、横葺き屋根材Aの水下側端部が下方に折り曲げられ、さらに水上側へ折り曲げられることによって形成されている。この係合部1は、桁行方向に横葺き屋根材A・A同士が組み合わされる際には重なり合う。また、この係合部1は、水下側に固定された横葺き屋根材Aの水上側端部付近に形成された被係合部5、もしくは下地材に固定された吊子に馳組み固定される。このように、横葺き屋根材Aの水下側を馳組み固定できれば、その形状、大きさ、折り曲げ角度、吊子を使用するか否か等は問わない。
【0016】
図1及び
図2において、係止部2は、横葺き屋根材Aの水上側に形成されており、止着具によって下地材に直接固定される形状である。ただし、これは一実施例に過ぎない。係止部2は、横葺き屋根材Aの水上側を吊子によって下地材に固定される形状にしてもよい。このように、横葺き屋根材Aの水上側を固定できれば、その形状、係止手段等は問わない。
【0017】
以上のように、横葺き屋根材Aは係合部1によって馳組み固定されるとともに、係止部2によって固定される。
【0018】
図1に示す実施例において、本願で使用される横葺き屋根材Aは、棟に向かって左側端部に重ね部4、右側端部に被重ね部3が形成されている。これは一実施例であって、棟に向かって左側端部に被重ね部3、右側端部に重ね部4が形成されていてもよい。また、横葺き屋根材Aの桁行方向両端が被重ね部3であってもよいし、桁行方向両端が重ね部4であってもよい。
【0019】
本願の横葺き屋根材の重合構造においては、桁行方向に隣り合う横葺き屋根材A・A同士が重ね合わされる際に、その重合部分の組合せが、一方が被重ね部3、他方が重ね部4の組合せになっていればよい。したがって、横葺き屋根材Aの左右端部のどちらかに、被重ね部3、又は重ね部4を形成していればよく、その反対側の端部には被重ね部3も重ね部4も形成していなくてもよい。
【0020】
図2の(b)に示す実施例において、被重ね部3は、軒棟方向において表面側へ凸形になるように湾曲され、バックアップ材Bが裏面に設けられている。本願では、横葺き屋根材Aとバックアップ材Bとが接着剤等で一体化されているか否かは問わないが、一体化されていた方が施工しやすいので望ましい。
【0021】
バックアップ材Bは、横葺き屋根材Aに形成されたアールの形状を保持させる役割を果たせばよい。そのため、その素材は問わず、一般的に使用されている断熱材等も含む。また、バックアップ材Bは、被重ね部3の裏面だけでなくそこから連続して、重ね部4の裏面を除く化粧面6の裏面にまで設けられるのが望ましい。こうすることによって、重合部分だけでなく、横葺き屋根材A全体の形状も保持させることができる。また、こうすることによって、バックアップ材7として断熱材を使用した場合には、断熱性能を高めることもできる。
【0022】
図2の(a)に示す実施例において、重ね部4は、軒棟方向において表面側へ凸形になるように被重ね部3よりも緩やかなアールに湾曲されている。
図2の(b)に示す実施例のように、重ね部4の裏面にバックアップ材Bを設けないことによって、桁行方向に隣り合う横葺き屋根材Aの被重ね部3上に直接重ねられるようになっている。
【0023】
被重ね部3及び重ね部4に形成される湾曲は、円の一部を形成する弧のような形状であってもよいし、最も高くなる部分が水下側又は水上側のどちらかに寄っている形状でもよい。湾曲は、表面側へ凸形の曲線を描くような形状であればよい。また、湾曲のアールも、被重ね部3に比べて重ね部4の方が緩やかであって、被重ね部3と重ね部4とが密着する組合せになればよく、そのアールの大きさ自体は問わない。
【0024】
図3及び
図4のように、桁行方向で隣り合う横葺き屋根材A・Aの係合部1・1同士が組み合わされて、一方の横葺き屋根材Aの被重ね部3の上に、他方の横葺き屋根材Aの重ね部4が重ねられる。そして、重ね部4を形成する側の横葺き屋根材Aの係止部2に止着具が打ち込まれて下地材に固定される。このとき、一方の横葺き屋根材Aの重ね部4が、他方の横葺き屋根材Aの被重ね部3のアールになるように、下地材側に少し押し付けられるようにして固定される。
【0025】
このように、横葺き屋根材A・A同士が密着された状態で横葺き屋根材Aが下地材に固定される。その結果、重ね部4において、元の緩やかなアールに戻ろうとするスプリングバックが発生する。その力は、横葺き屋根材A・A同士が密着する方向に働く。この力によって、横葺き屋根材A・A同士の重合部に、口あきを発生させないという仕組みである。
【0026】
被重ね部3及び重ね部4を表面側へ凸形になるように湾曲させるので、化粧面6も同じように湾曲させると成形がしやすい。そうすることによって、横葺き屋根材Aは、被重ね部3、化粧面6、重ね部4の境目に段差等のない全体的に曲線的であり、柔らかい印象になる。また、その葺き上がりも意匠性の高いものになる。
【符号の説明】
【0027】
A 横葺き屋根材
1 係合部
2 係止部
3 被重ね部
4 重ね部
5 被係合部
6 化粧面
B バックアップ材