特許第5966373号(P5966373)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5966373
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】充電装置および電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/02 20160101AFI20160728BHJP
【FI】
   H02J7/02 H
【請求項の数】3
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-8684(P2012-8684)
(22)【出願日】2012年1月19日
(65)【公開番号】特開2013-150440(P2013-150440A)
(43)【公開日】2013年8月1日
【審査請求日】2015年1月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000682
【氏名又は名称】特許業務法人ワンディーIPパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】秋田 哲男
【審査官】 馬場 慎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−254008(JP,A)
【文献】 特開2007−318950(JP,A)
【文献】 特開2011−78276(JP,A)
【文献】 特開2008−125158(JP,A)
【文献】 特開平8−19188(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0216368(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00 − 7/12
H02J 7/34 − 7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列接続された複数の電池を充電するための充電装置であって、
前記電池に対応して設けられ、対応の前記電池を充電するための充電電流の一部または全部を他の回路へ流す分流動作を行うための複数の分流回路と、
前記電池の電圧に基づいて、対応の前記分流回路の前記分流動作を制御するための制御部とを備え、
前記制御部は、前記電池の電圧が、所定の充電目標値より小さい所定の開始閾値以上になると、対応の前記分流回路の前記分流動作を開始し、
前記制御部は、前記複数の電池のうち、電圧が最大となる電池以外の他の電池について、前記最大の電圧と前記他の電池の電圧との差が所定の電圧差閾値以上である場合には、前記他の電池の電圧が前記開始閾値以上になっても対応の前記分流回路の前記分流動作を開始せず、前記差が前記電圧差閾値未満になると、前記他の電池に対応する前記分流回路の前記分流動作を開始する、充電装置。
【請求項2】
前記分流動作においては、前記充電電流が、前記電池と、対応の前記分流回路によって形成された分流経路とに分岐して流れ、
前記制御部は、前記複数の電池の電圧が、前記充電目標値に達して前記充電電流の供給が停止された後、前記電池の電圧が、前記充電目標値より小さい所定の解除閾値未満になると、対応の前記分流回路の前記分流経路を遮断する、請求項に記載の充電装置。
【請求項3】
直列接続された複数の電池と、
前記複数の電池を充電するための充電装置とを備える電源装置であって、
前記充電装置は、
前記電池に対応して設けられ、対応の前記電池を充電するための充電電流の一部または全部を他の回路へ流す分流動作を行うための複数の分流回路と、
前記電池の電圧に基づいて、対応の前記分流回路の前記分流動作を制御するための制御部とを含み、
前記制御部は、前記電池の電圧が、所定の充電目標値より小さい所定の開始閾値以上になると、対応の前記分流回路の前記分流動作を開始し、
前記制御部は、前記複数の電池のうち、電圧が最大となる電池以外の他の電池について、前記最大の電圧と前記他の電池の電圧との差が所定の電圧差閾値以上である場合には、前記他の電池の電圧が前記開始閾値以上になっても対応の前記分流回路の前記分流動作を開始せず、前記差が前記電圧差閾値未満になると、前記他の電池に対応する前記分流回路の前記分流動作を開始する、電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充電装置および電源装置に関し、特に、直列接続された複数の電池を充電する充電装置、および当該充電装置を備えた電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
繰り返しの充電が可能な二次電池を用いて電力を蓄え、必要なときに当該二次電池から系統に電力を供給する電力貯蔵システムが開発されている(たとえば、三菱重工技報Vol.41、No.5、「リチウムイオン電池電力貯蔵システムの開発」、2004年9月(非特許文献1)参照)。
【0003】
このような電力貯蔵システムは、電力需要の変動を緩和して発電設備の利用率を高める用途の他、太陽光発電および風力発電のように発電量の変動が大きい発電方式を採用する発電設備を補完する用途にも適用可能である(たとえば、電気設備学会誌、平成17年10月、「レドックスフロー電池の風力発電出力平滑化用途への適用」(非特許文献2)参照)。
【0004】
このような用途で用いられる電源装置は、たとえば複数の電池の集合体を備える。二次電池がたとえばリチウムイオン電池である場合には、1つの電池の電圧はたとえば3V〜4V程度であるので、複数の電池を直列に接続する。この直列接続された電池を充電しておくことにより、必要なときに電力を供給することができる。すなわち、充電時には電池の直列体に電流が流れ込んで電力が蓄えられ、放電時には電池の直列体から電流が流れ出て、電力が負荷に供給される。
【0005】
ところで、直列体の各電池の充電時において、いずれか1つの電池が満充電の状態になると、充電を停止しなければならない。すなわち、他の電池が満充電の状態に達していなくても、当該他の電池をさらに充電することはできない。
【0006】
また、直列体の各電池を放電して負荷に電力を供給する場合には、残量が最も少ない電池が放電限界に達すると、他の電池の残量は十分であっても、放電を継続することはできない。
【0007】
このように、電池の直列体を用いる電源装置では、各電池の特性のばらつきにより、充放電性能がいずれかの電池の特性に拘束されるため、各電池を十分に充電することができず、また、放電時において、各電池に蓄えられた電力を有効活用することができない、という問題点がある。
【0008】
このような問題点を解決するために、たとえば、特開平5−49181号公報(特許文献1)には、以下のような構成が開示されている。すなわち、直列接続した2次電池と、上記各2次電池の正極と負極間に接続したヒステリシス特性を有する過充電検出回路および過放電検出回路と、上記各2次電池正負極間に接続され、上記過充電検出回路または過放電検出回路の出力レベルで制御される放電回路と、上記過充電検出回路の出力レベルに応じて充電電流を遮断する回路と、上記過放電検出回路の出力レベルに応じて放電電流を遮断する回路と、放電負荷または充電電源端子とを備え、上記2次電池の過充電および過放電を防止し且つ過充放電の電池容量バランスを取る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】三菱重工技報Vol.41、No.5、「リチウムイオン電池電力貯蔵システムの開発」、2004年9月
【非特許文献2】電気設備学会誌、平成17年10月、「レドックスフロー電池の風力発電出力平滑化用途への適用」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載の構成では、いずれかの電池の過充電を検出すると複数の電池全体の充電を停止し、過充電された電池の放電を行う構成であるため、充電効率が悪く、また、充電時間が長くなってしまう。
【0011】
この発明は、上述の課題を解決するためになされたもので、その目的は、複数の電池を充電する構成において、各電池の特性のばらつきによる充電時の効率低下を抑制し、かつ充電時間の短縮を図ることが可能な充電装置および電源装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる充電装置は、直列接続された複数の電池を充電するための充電装置であって、上記電池に対応して設けられ、対応の上記電池を充電するための充電電流の一部または全部を他の回路へ流す分流動作を行うための複数の分流回路と、上記電池の電圧に基づいて、対応の上記分流回路の上記分流動作を制御するための制御部とを備える。
【0013】
このような構成により、各電池の特性にばらつきがある場合でも、特定の電池の特性に拘束されて充電を停止しなければならなくなることを防ぐことができる。すなわち、各電池を十分に充電し、また、放電時において、各電池に蓄えられた電力を有効活用することができる。また、電池の電圧に基づいて、当該電池の充電電流の分流を制御する構成により、複数の電池全体の充電を停止することなく、充電速度を電池ごとに制御することができるため、充電効率を向上させ、かつ充電時間を短縮することができる。したがって、複数の電池を充電する構成において、各電池の特性のばらつきによる充電時の効率低下を抑制し、かつ充電時間の短縮を図ることができる。
【0014】
好ましくは、上記制御部は、上記電池の電圧が、所定の充電目標値より小さい所定の開始閾値以上になると、対応の上記分流回路の上記分流動作を開始する。
【0015】
このような構成により、電池が過充電状態になる前に、充電速度を電池ごとに抑制することができるため、各電池の充電動作を最適化し、充電効率を向上させることができる。
【0016】
より好ましくは、上記制御部は、上記複数の電池のうち、電圧が最大となる電池以外の他の電池について、上記最大の電圧と上記他の電池の電圧との差が所定の電圧差閾値以上である場合には、上記他の電池の電圧が上記開始閾値以上になっても対応の上記分流回路の上記分流動作を開始せず、上記差が上記電圧差閾値未満になると、上記他の電池に対応する上記分流回路の上記分流動作を開始する。
【0017】
このような構成により、電池の電圧が開始閾値を超えた後の最適なタイミングで分流動作を開始するため、充電電流が電池の充電に用いられずに消費される量および時間を低減することができる。
【0018】
より好ましくは、上記分流動作においては、上記充電電流が、上記電池と、対応の上記分流回路によって形成された分流経路とに分岐して流れ、上記制御部は、上記複数の電池の電圧が、上記充電目標値に達して上記充電電流の供給が停止された後、上記電池の電圧が、上記充電目標値より小さい所定の解除閾値未満になると、対応の上記分流回路の上記分流経路を遮断する。
【0019】
このように、共通の解除閾値を用いて分流経路を遮断する構成により、充電電流の供給停止時に各電池の電圧がばらついていても、各電池の電圧を一致させることができるため、たとえば充放電動作に伴う各電池の劣化度合いを均一にすることができる。
【0020】
好ましくは、上記制御部は、上記複数の電池の電圧の最大値および最小値の差が所定の開始閾値以上になると、電圧が最大となる上記電池に対応する上記分流回路の上記分流動作を開始する。
【0021】
このような構成により、各電池の電圧のばらつきを抑えながら充電を行うことができるため、各電池の充電動作を最適化し、充電効率を向上させることができる。
【0022】
より好ましくは、上記制御部は、上記差が所定の解除閾値未満になると、電圧が最大となる上記電池に対応する上記分流回路の上記分流動作を停止する。
【0023】
このような構成により、各電池の電圧のばらつきをある程度の範囲で抑えながら、充電電流が電池の充電に用いられずに消費される量および時間を低減することができる。
【0024】
上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる充電装置は、直列接続された複数の電池と、上記複数の電池を充電するための充電装置とを備える電源装置であって、上記電源装置は、上記電池に対応して設けられ、対応の上記電池を充電するための充電電流の一部または全部を他の回路へ流す分流動作を行うための複数の分流回路と、上記電池の電圧に基づいて、対応の上記分流回路の上記分流動作を制御するための制御部とを含む。
【0025】
このような構成により、各電池の特性にばらつきがある場合でも、特定の電池の特性に拘束されて充電を停止しなければならなくなることを防ぐことができる。すなわち、各電池を十分に充電し、また、放電時において、各電池に蓄えられた電力を有効活用することができる。また、電池の電圧に基づいて、当該電池の充電電流の分流を制御する構成により、複数の電池全体の充電を停止することなく、充電速度を電池ごとに制御することができるため、充電効率を向上させ、かつ充電時間を短縮することができる。したがって、複数の電池を充電する構成において、各電池の特性のばらつきによる充電時の効率低下を抑制し、かつ充電時間の短縮を図ることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、複数の電池を充電する構成において、各電池の特性のばらつきによる充電時の効率低下を抑制し、かつ充電時間の短縮を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施の形態に係る電源装置の構成、および充電動作における接続例を示す図である。
図2】本発明の実施の形態に係る電源装置の構成、および放電動作における接続例を示す図である。
図3】本発明の実施の形態に係る電源装置による充電動作の一例を示す図である。
図4】本発明の実施の形態に係る電源装置による充電動作の一例を示す図である。
図5】本発明の実施の形態に係る電源装置による充電動作の一例を示す図である。
図6】本発明の実施の形態に係る充電装置を用いた測定系を示す図である。
図7】本発明の実施の形態に係る充電装置の動作の測定結果を示す図である。
図8】本発明の実施の形態に係る充電装置の動作の測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0029】
図1は、本発明の実施の形態に係る電源装置の構成、および充電動作における接続例を示す図である。図2は、本発明の実施の形態に係る電源装置の構成、および放電動作における接続例を示す図である。
【0030】
図1および図2を参照して、電源装置101は、電池BAT1〜BAT4と、充電装置51と、AC/DCコンバータ(電圧変換回路)52とを備える。充電装置51は、分流回路SH1〜SH4と、電圧測定部MV1〜MV4と、制御部19とを含む。分流回路SH1は、抵抗R1と、トランジスタTR1とを含む。分流回路SH2は、抵抗R2と、トランジスタTR2とを含む。分流回路SH3は、抵抗R3と、トランジスタTR3とを含む。分流回路SH4は、抵抗R4と、トランジスタTR4とを含む。トランジスタTR1〜TR4は、たとえばMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、MESFET(Metal Semiconductor Field Effect Transistor)またはバイポーラトランジスタである。また、トランジスタに限らず、何らかのスイッチ素子を用いることが可能である。以下、電池BAT1〜BAT4の各々を電池BATと称する場合がある。また、分流回路SH1〜SH4の各々を分流回路SHと称する場合がある。また、電圧測定部MV1〜MV4の各々を電圧測定部MVと称する場合がある。また、トランジスタTR1〜TR4の各々をトランジスタTRと称する場合がある。また、抵抗R1〜抵抗R4の各々を抵抗Rと称する場合がある。
【0031】
電池BAT1〜BAT4としては、たとえば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、鉛蓄電池、およびその他各種の充電可能な電池を用いることができる。
【0032】
図1において、交流電源201は、たとえば振幅が100V、周波数が50Hzまたは60Hzの交流電圧を電源装置101に供給する。
【0033】
そして、電源装置101は、交流電源201から供給される交流電圧に基づいて電池BAT1〜BAT4を充電する。
【0034】
図2において、電源装置101は、電池BAT1〜BAT4を放電することにより、たとえば振幅が100V、周波数が50Hzまたは60Hzの交流電圧を負荷202に供給する。
【0035】
より詳細には、電源装置101において、AC/DCコンバータ52は、直列接続された電池BAT1〜BAT4の両端間に接続されている。
【0036】
充電動作において、AC/DCコンバータ52は、交流電源201から受けた交流電圧を直流電圧に変換し、直列接続された電池BAT1〜BAT4の両端へ出力する。また、放電動作において、AC/DCコンバータ52は、直列接続された電池BAT1〜BAT4の両端から受けた直流電圧を交流電圧に変換して負荷202へ出力する。
【0037】
分流回路SH1において、抵抗R1の第1端が電池BAT1の第1端に接続され、第2端がトランジスタTR1のドレインに接続されている。トランジスタTR1のソースが、電池BAT1の第2端に接続されている。トランジスタTR1のゲートは、制御部19からの制御信号を受ける。分流回路SH2において、抵抗R2の第1端が電池BAT1の第2端および電池BAT2の第1端に接続され、第2端がトランジスタTR2のドレインに接続されている。トランジスタTR2のソースが、電池BAT2の第2端に接続されている。トランジスタTR2のゲートは、制御部19からの制御信号を受ける。分流回路SH3において、抵抗R3の第1端が電池BAT2の第2端および電池BAT3の第1端に接続され、第2端がトランジスタTR3のドレインに接続されている。トランジスタTR3のソースが、電池BAT3の第2端に接続されている。トランジスタTR3のゲートは、制御部19からの制御信号を受ける。分流回路SH4において、抵抗R4の第1端が電池BAT3の第2端および電池BAT4の第1端に接続され、第2端がトランジスタTR4のドレインに接続されている。トランジスタTR4のソースが、電池BAT4の第2端に接続されている。トランジスタTR4のゲートは、制御部19からの制御信号を受ける。
【0038】
充電動作において、直列接続された電池BAT1〜BAT4の両端において受けた直流電圧の分圧電圧、すなわちAC/DCコンバータ52の出力電圧の分圧電圧が各電池BATに与えられる。また、放電動作において、電池BAT1〜BAT4の出力電圧の合成電圧がAC/DCコンバータ52へ出力される。
【0039】
電圧測定部MVは、電池BATに対応して設けられ、対応の電池BATの電圧を測定する。より詳細には、電圧測定部MV1〜MV4は、電池BAT1〜BAT4の両端電圧をそれぞれ測定し、測定結果を制御部19へ出力する。
【0040】
制御部19は、電圧測定部MV1〜MV4の測定結果に基づいて、分流回路SH1〜SH4におけるトランジスタTR1〜TR4のゲートへ制御信号をそれぞれ出力することにより、トランジスタTR1〜TR4のオンおよびオフを制御する。
【0041】
充電装置51は、電池BAT1〜BAT4の電圧を測定し、バイパス抵抗である抵抗R1〜R4およびバイパスFETであるトランジスタTR1〜TR4を用いて、セルバランス、すなわち各電池の電圧のバランスを調整する。
【0042】
より詳細には、分流回路SH1〜SH4は、それぞれ電池BAT1〜BAT4に対応して設けられ、対応の電池BATを充電するための充電電流の一部または全部を他の回路、具体的には抵抗RおよびトランジスタTRへ流す分流動作を行う。この分流動作においては、上記充電電流が、電池BATと、対応の分流回路SHによって形成された分流経路とに分岐して流れる。
【0043】
制御部19は、電池BATの電圧に基づいて、対応の分流回路SHの分流動作を制御する。すなわち、制御部19は、各電池BATの電圧と所定の閾値との大小関係、または各電池BATの電圧差に基づいて、分流回路SHの分流動作を制御する。
【0044】
次に、本発明の実施の形態に係る電源装置による充電動作について説明する。
【0045】
図3は、本発明の実施の形態に係る電源装置による充電動作の一例を示す図である。図3において、たとえば、電圧V1は4.2Vであり、電圧V2は4.15Vであり、電圧V3は4.1Vである。
【0046】
制御部19は、電池BATの電圧が、たとえば電池BAT1〜BAT4の共通の充電目標値より小さい所定の開始閾値以上になると、対応の分流回路SHの分流動作を開始する。
【0047】
そして、制御部19は、電池BAT1〜BAT4の電圧が、充電目標値に達して充電電流の供給が停止された後、電池BATの電圧が、充電目標値より小さい所定の解除閾値未満になると、対応の分流回路SHの分流経路を遮断する。
【0048】
具体的には、図3を参照して、タイミングt1において、AC/DCコンバータ52から供給される電力に基づき、電池BAT1〜BAT4の充電が開始される。ここでは、電池BAT1〜BAT4の初期電圧が異なるものと仮定する。制御部19は、電圧測定部MV1〜MV4の測定結果を監視する。このとき、制御部19は、分流回路SH1〜SH4におけるトランジスタTR1〜TR4をオフしている。
【0049】
次に、タイミングt2において、制御部19は、電池BAT4の電圧が開始閾値Thdすなわち電圧V2に達すると、分流回路SH4におけるトランジスタTR4をオンする。これにより、電池BAT4の充電電流が抵抗R4および電池BAT4に分流され、電池BAT4の充電速度、すなわち電池BAT4の電圧上昇が緩やかになる。
【0050】
次に、タイミングt3において、制御部19は、電池BAT3の電圧が開始閾値Thdに達すると、分流回路SH3におけるトランジスタTR3をオンする。これにより、電池BAT3の充電電流が抵抗R3および電池BAT3に分流され、電池BAT3の充電速度、すなわち電池BAT3の電圧上昇が緩やかになる。
【0051】
次に、タイミングt4において、制御部19は、電池BAT2の電圧が開始閾値Thdに達すると、分流回路SH2におけるトランジスタTR2をオンする。これにより、電池BAT2の充電電流が抵抗R2および電池BAT2に分流され、電池BAT2の充電速度、すなわち電池BAT2の電圧上昇が緩やかになる。
【0052】
次に、タイミングt5において、制御部19は、電池BAT1の電圧が開始閾値Thdに達すると、分流回路SH1におけるトランジスタTR1をオンする。これにより、電池BAT1の充電電流が抵抗R1および電池BAT1に分流され、電池BAT1の充電速度、すなわち電池BAT1の電圧上昇が緩やかになる。
【0053】
次に、タイミングt6において、電池BAT4の電圧が目標値V1に達すると、AC/DCコンバータ52からの電力供給が停止され、充電動作が終了する。このとき、電池BAT1〜BAT4の電圧差はごく僅かである。この目標値V1への到達の検出および充電停止制御は、電源装置101において行ってもよいし、他の装置が行ってもよい。
【0054】
次に、電池BAT1〜BAT4の放電電流がそれぞれ分流回路SH1〜SH4における抵抗R1〜R4を通して流れることによって電池BAT1〜BAT4の電圧が低下し、タイミングt7において、電池BAT1の電圧が解除閾値Thcすなわち電圧V3に達すると、制御部19は、分流回路SH1におけるトランジスタTR1をオフする。これにより、分流回路SH1における分流経路が遮断され、電池BAT1の電圧下降が停止し、電池BAT1の電圧はV3を維持する。
【0055】
次に、タイミングt8において、電池BAT2の電圧が解除閾値Thcすなわち電圧V3に達すると、制御部19は、分流回路SH2におけるトランジスタTR2をオフする。これにより、分流回路SH2における分流経路が遮断され、電池BAT2の電圧下降が停止し、電池BAT2の電圧はV3を維持する。
【0056】
次に、タイミングt9において、電池BAT3の電圧が解除閾値Thcすなわち電圧V3に達すると、制御部19は、分流回路SH3におけるトランジスタTR3をオフする。これにより、分流回路SH3における分流経路が遮断され、電池BAT3の電圧下降が停止し、電池BAT3の電圧はV3を維持する。
【0057】
次に、タイミングt10において、電池BAT4の電圧が解除閾値Thcすなわち電圧V4に達すると、制御部19は、分流回路SH4におけるトランジスタTR4をオフする。これにより、分流回路SH4における分流経路が遮断され、電池BAT4の電圧下降が停止し、電池BAT4の電圧はV3を維持する。
【0058】
このように、いずれの電池BATが開始閾値Thdに達しても、対応の分流回路SHにおけるトランジスタTRをオンして当該電池BATの充電速度を抑制することにより、電池BAT1〜BAT4の電圧バランスが整えられる。また、共通の解除閾値を用いて分流動作を解除する構成により、充電電流の供給停止時に電池BAT1〜BAT4の電圧がばらついていても、各電池の電圧を一致させることができる。
【0059】
図4は、本発明の実施の形態に係る電源装置による充電動作の一例を示す図である。
【0060】
制御部19は、電池BAT1〜BAT4の電圧の最大値および最小値の差が所定の開始閾値以上になると、電圧が最大となる電池BATに対応する分流回路SHの分流動作を開始する。
【0061】
そして、制御部19は、電池BAT1〜BAT4の電圧の最大値および最小値の差が所定の解除閾値未満になると、電圧が最大となる電池BATに対応する分流回路SHの分流経路を遮断し、分流動作を停止する。
【0062】
より詳細には、制御部19は、各電池BATの電圧差、すなわち(最大値−最小値)が所定の開始閾値すなわち電圧ΔVa以上になると、電圧が最大となる電池BATに対応する分流回路SHにおけるトランジスタTRをオンし、当該電池BATの充電電流の分流動作を開始する。さらに、制御部19は、電圧差が所定の解除閾値すなわち電圧ΔVb以下になると、上記トランジスタTRをオフして当該電池BATの充電電流の分流経路を遮断し、分流動作を停止する。
【0063】
具体的には、図4を参照して、タイミングt11において、AC/DCコンバータ52から供給される電力に基づき、電池BAT1〜BAT4の充電が開始される。ここでは、電池BAT1〜BAT4の初期電圧が異なり、かつ充電速度が異なるものと仮定する。制御部19は、電圧測定部MV1〜MV4の測定結果を監視する。このとき、制御部19は、分流回路SH1〜SH4におけるトランジスタTR1〜TR4をオフしている。
【0064】
次に、タイミングt12において、制御部19は、電圧が最大である電池BAT4の電圧と、電圧が最小である電池BAT1の電圧との差Vdfが開始閾値ΔVa以上になると、分流回路SH4におけるトランジスタTR4をオンする。これにより、電池BAT4の充電電流が抵抗R4および電池BAT4に分流され、電池BAT4の充電速度、すなわち電池BAT4の電圧上昇が緩やかになる。
【0065】
次に、タイミングt13において、制御部19は、電圧が最大である電池BAT4の電圧と、電圧が最小である電池BAT1の電圧との差Vdfが解除閾値ΔVb以下になると、分流回路SH4におけるトランジスタTR4をオフする。これにより、分流回路SH4における分流経路が遮断され、電池BAT4の充電速度、すなわち電池BAT4の電圧上昇の傾きが元に戻る。
【0066】
ここで、図3に示す充電動作では、開始閾値Thdを超えたすべての電池BATの充電電流を分流することから、充電に用いられずに消費する電力が比較的大きくなる。
【0067】
また、図4に示す充電動作では、各電池BATの電圧のばらつきが生じるたびに充電電流を分流することから、電力を充電に用いずに消費する時間が長くなる。
【0068】
これらの課題を解決するために、充電装置51は、以下に示すような充電動作を行ってもよい。すなわち、電池BATの電圧が開始閾値Thd以上になっても、他の電池BATとの電圧差が大きい場合には対応の分流回路SHにおけるトランジスタTRをオンせず、当該電圧差が小さくなると対応の分流回路SHにおけるトランジスタTRをオフし、充電電流の分流を行う。
【0069】
図5は、本発明の実施の形態に係る電源装置による充電動作の一例を示す図である。図5において、たとえば、電圧V1は4.2Vであり、電圧V2は4.15Vであり、電圧V3は4.1Vである。
【0070】
制御部19は、電池BAT1〜BAT4のうち、電圧が最大となる電池以外の他の電池について、上記最大の電圧と上記他の電池の電圧との差が所定の電圧差閾値以上である場合には、上記他の電池の電圧が開始閾値以上になっても対応の分流回路SHの分流動作を開始せず、上記差が電圧差閾値未満になると、上記他の電池に対応する分流回路SHの分流動作を開始する。
【0071】
そして、制御部19は、電池BAT1〜BAT4の電圧が、充電目標値に達して充電電流の供給が停止された後、電池BATの電圧が、充電目標値より小さい所定の解除閾値未満になると、対応の分流回路SHの分流経路を遮断する。
【0072】
具体的には、図5を参照して、タイミングt21において、AC/DCコンバータ52から供給される電力に基づき、電池BAT1〜BAT4の充電が開始される。ここでは、電池BAT1〜BAT4の初期電圧が異なるものと仮定する。制御部19は、電圧測定部MV1〜MV4の測定結果を監視する。このとき、制御部19は、分流回路SH1〜SH4におけるトランジスタTR1〜TR4をオフしている。
【0073】
次に、タイミングt22において、制御部19は、電池BAT4の電圧が開始閾値Thdすなわち電圧V2に達すると、分流回路SH4におけるトランジスタTR4をオンする。これにより、電池BAT4の充電電流が抵抗R4および電池BAT4に分流され、電池BAT4の充電速度、すなわち電池BAT4の電圧上昇が緩やかになる。
【0074】
次に、タイミングt23において、制御部19は、電池BAT3の電圧が開始閾値Thdに達したが、電圧が最大である電池BAT4の電圧と、電池BAT3の電圧との差が電圧差閾値Ths以上であるため、分流回路SH3におけるトランジスタTR3のオフ状態を維持する。
【0075】
次に、タイミングt24において、制御部19は、電圧が最大である電池BAT4の電圧と、電池BAT3の電圧との差が電圧差閾値Ths未満になると、分流回路SH3におけるトランジスタTR3をオンする。これにより、電池BAT3の充電電流が抵抗R3および電池BAT3に分流され、電池BAT3の充電速度、すなわち電池BAT3の電圧上昇が緩やかになり、たとえば電池BAT4と同じになる。ここでは、電圧差閾値Thsがゼロまたはゼロに近い値に設定されており、電圧BAT3の電圧は、電圧BAT4の電圧と略一致して上昇することになる。
【0076】
次に、タイミングt25において、制御部19は、電池BAT2の電圧が開始閾値Thdに達したが、電圧が最大である電池BAT4の電圧と、電池BAT2の電圧との差が電圧差閾値Ths以上であるため、分流回路SH2におけるトランジスタTR2のオフ状態を維持する。
【0077】
次に、タイミングt26において、制御部19は、電池BAT1の電圧が開始閾値Thdに達したが、電圧が最大である電池BAT4の電圧と、電池BAT1の電圧との差が電圧差閾値Ths以上であるため、分流回路SH1におけるトランジスタTR1のオフ状態を維持する。
【0078】
次に、タイミングt27において、制御部19は、電圧が最大である電池BAT4の電圧と、電池BAT2の電圧との差が電圧差閾値Ths未満になると、分流回路SH2におけるトランジスタTR2をオンする。これにより、電池BAT2の充電電流が抵抗R2および電池BAT2に分流され、電池BAT2の充電速度、すなわち電池BAT2の電圧上昇が緩やかになり、たとえば電池BAT4と同じになる。電圧BAT2の電圧は、電圧BAT3と同様に、電圧BAT4の電圧と略一致して上昇することになる。
【0079】
次に、タイミングt28において、制御部19は、電圧が最大である電池BAT4の電圧と、電池BAT1の電圧との差が電圧差閾値Ths未満になると、分流回路SH1におけるトランジスタTR1をオンする。これにより、電池BAT1の充電電流が抵抗R1および電池BAT1に分流され、電池BAT1の充電速度、すなわち電池BAT1の電圧上昇が緩やかになり、たとえば電池BAT4と同じになる。電圧BAT1の電圧は、電圧BAT2および電圧BAT3と同様に、電圧BAT4の電圧と略一致して上昇することになる。
【0080】
次に、タイミングt29において、たとえば電池BAT4の電圧が目標値V1に達すると、AC/DCコンバータ52からの電力供給が停止され、充電動作が終了する。このとき、電池BAT1〜BAT4の電圧差は、電圧差閾値Thsに応じた値、たとえばゼロまたはゼロに近い値である。この目標値V1への到達の検出および充電停止制御は、電源装置101において行ってもよいし、他の装置が行ってもよい。
【0081】
次に、電池BAT1〜BAT4の放電電流がそれぞれ分流回路SH1〜SH4における抵抗R1〜R4を通して流れることによって電池BAT1〜BAT4の電圧が低下し、タイミングt30において、電池BAT1〜BAT4の電圧が解除閾値Thcすなわち電圧V3に達すると、制御部19は、分流回路SH1〜SH4におけるトランジスタTR1〜TR4をオフする。これにより、分流回路SH1〜SH4における分流経路が遮断され、電池BAT1〜BAT4の電圧下降が停止し、電池BAT1〜BAT4の電圧はV3を維持する。
【0082】
このように、図5に示す例では、電池BATの電圧が開始閾値Thdを超えた後に所定条件を満たすと分流動作を開始するため、充電電流が電池BATの充電に用いられずに消費される量および時間を低減することができる。
【0083】
また、電池BATが開始閾値Thdに達し、かつ最大電圧との差が電圧差閾値Ths未満になると、対応の分流回路SHにおけるトランジスタTRをオンして当該電池BATの充電速度を抑制することにより、電池BAT1〜BAT4の電圧バランスが整えられる。また、共通の解除閾値を用いて分流動作を解除する構成により、充電電流の供給停止時に電池BAT1〜BAT4の電圧がばらついていても、各電池の電圧を一致させることができる。
【0084】
なお、図3および図5において、解除閾値Thcは、目標値V1よりも小さければ、開始閾値Thdより大きい値を設定してもよい。
【0085】
また、図3および図5において、解除閾値Thcを設けない構成であってもよい。この場合、制御部19は、電池BAT4の電圧が目標値V1に達したタイミングt6またはt29において、分流回路SH1〜SH4におけるトランジスタTR1〜TR4をオフして分流経路を遮断し、分流動作を停止する。この場合、電池BAT1〜BAT4を電圧V3まで下降させないことから、充電効率は良くなる。
【0086】
<測定評価結果>
本願発明者は、本発明の実施の形態に係る充電装置の動作について実測による評価を行った。以下、本測定の内容および結果について詳細に説明する。
【0087】
図6は、本発明の実施の形態に係る充電装置を用いた測定系を示す図である。
【0088】
図6を参照して、この測定系では、電源装置101に充放電電源装置を接続し、かつデータロガーを接続した。
【0089】
充放電電源装置は、電池BAT1〜BAT4に充電電流の供給を行う動作、および電池BAT1〜BAT4の負荷となり、電池BAT1〜BAT4を放電させる動作を行う。
【0090】
具体的には、充放電電源装置は、製造元が松定プレシジョン株式会社であり、型番はECD18−2である。充放電電源装置は、定電流かつ定電圧で電池BAT1〜BAT4を充電し、設定電流は1.5Aであり、設定電圧は16.8Vである。また、充放電電源装置は、定電流で電池BAT1〜BAT4を放電し、設定電流は1.5Aである。
【0091】
電池BAT1〜BAT4は、製造元が三洋電機株式会社であり、型番はUR18650Aである。電池BAT1〜BAT4の公称容量は最小2150mAhであり、公称電圧は3.6Vであり、充電電圧は4.2Vであり、充電電流は標準で1505mAであり、充電時間は3時間である。
【0092】
また、制御部19として、IC(Integrated Circuit)およびマイコンを用い、当該ICの製造元はリニアテクノロジー社であり、型番はLTC6803−4である。
【0093】
また、データロガーは、電池BAT1〜BAT4の電圧1〜4、および放電電流を、1秒ごとに記録する。
【0094】
また、この測定系の周囲温度は常温であり、電池BAT1〜BAT4の電圧の制限値は、上限値が4.2Vであり、下限値が3.0Vである。
【0095】
図7および図8は、本発明の実施の形態に係る充電装置の動作の測定結果を示す図である。
【0096】
図7および図8を参照して、Plan1は、電池BAT1〜BAT4の特性にばらつきがなく、図3図5に示す充電動作を行わない場合、すなわち分流回路SH1〜SH4におけるトランジスタTR1〜TR4を常にオフする場合である。Plan2は、電池BAT1〜BAT4の特性にばらつきがあり、図3図5に示す充電動作を行わない場合である。Plan3は、電池BAT1〜BAT4の特性にばらつきがあり、図3に示す充電動作を行う場合である。Plan4は、電池BAT1〜BAT4の特性にばらつきがあり、図4に示す充電動作を行う場合である。Plan5は、電池BAT1〜BAT4の特性にばらつきがあり、図5に示す充電動作を行う場合である。
【0097】
電池BAT1〜BAT4の特性にばらつきのないPlan1では、放電平均が30.09[Wh]となり、放電平均すなわち1時間あたりの放電電力量が最も大きい。
【0098】
また、電池BAT1〜BAT4の特性にばらつきのあるPlan2〜Plan5では、放電平均がそれぞれ23.81[Wh]、26.80[Wh]、27.63[Wh]および28.08[Wh]となった。Plan3〜Plan5では、分流回路SHによる充電電流の分流を行わないPlan2に対して、放電平均がそれぞれ11.2%、13.8%および15.2%上昇している。
【0099】
以上のように、本測定から、本発明の実施の形態に係る充電装置による充電動作により、電源装置101全体として電力容量が増加し、性能が向上していることが確認された。
【0100】
ところで、電池の直列体を用いる電源装置では、各電池の特性のばらつきにより、充放電性能がいずれかの電池の特性に拘束されるため、各電池を十分に充電することができず、また、放電時において、各電池に蓄えられた電力を有効活用することができない、という問題点がある。
【0101】
また、特許文献1に記載の構成では、いずれかの電池の過充電を検出すると複数の電池全体の充電を停止し、過充電された電池の放電を行う構成であるため、充電効率が悪く、また、充電時間が長くなってしまう。特に、直列接続される電池の数が増えるほど、各電池の電圧のばらつきを抑制することが困難となる。
【0102】
これに対して、本発明の実施の形態に係る充電装置では、分流回路SHは、電池BATに対応して設けられ、対応の電池BATを充電するための充電電流の一部または全部を他の回路、具体的には抵抗RおよびトランジスタTRへ流す分流動作を行う。そして、制御部19は、電池BATの電圧に基づいて、対応の分流回路SHの分流動作を制御する。
【0103】
このような構成により、各電池の特性にばらつきがある場合でも、特定の電池の特性に拘束されて充電を停止しなければならなくなることを防ぐことができる。すなわち、各電池を十分に充電し、また、放電時において、各電池に蓄えられた電力を有効活用することができる。
【0104】
また、電池の電圧に基づいて、当該電池の充電電流の分流を制御する構成により、複数の電池全体の充電を停止することなく、充電速度を電池ごとに制御することができるため、充電効率を向上させ、かつ充電時間を短縮することができる。
【0105】
したがって、本発明の実施の形態に係る充電装置では、複数の電池を充電する構成において、各電池の特性のばらつきによる充電時の効率低下を抑制し、かつ充電時間の短縮を図ることができる。
【0106】
また、本発明の実施の形態に係る充電装置では、制御部19は、電池BATの電圧が、所定の充電目標値より小さい所定の開始閾値以上になると、対応の分流回路SHの分流動作を開始する。
【0107】
このような構成により、電池が過充電状態になる前に、充電速度を電池ごとに抑制することができるため、各電池の充電動作を最適化し、充電効率を向上させることができる。
【0108】
また、本発明の実施の形態に係る充電装置では、制御部19は、電池BAT1〜BAT4のうち、電圧が最大となる電池以外の他の電池について、最大の電圧と上記他の電池の電圧との差が所定の電圧差閾値以上である場合には、上記他の電池の電圧が開始閾値以上になっても対応の分流回路SHの分流動作を開始せず、最大の電圧と上記他の電池の電圧との差が電圧差閾値未満になると、上記他の電池に対応する分流回路SHの分流動作を開始する。
【0109】
このような構成により、電池の電圧が開始閾値を超えた後の最適なタイミングで分流動作を開始するため、充電電流が電池の充電に用いられずに消費される量および時間を低減することができる。
【0110】
また、本発明の実施の形態に係る充電装置では、制御部19は、電池BAT1〜BAT4の電圧が、上記充電目標値に達して充電電流の供給が停止された後、電池BATの電圧が、上記充電目標値より小さい所定の解除閾値未満になると、対応の分流回路SHの分流経路を遮断する。
【0111】
このように、共通の解除閾値を用いて分流経路を遮断する構成により、充電電流の供給停止時に各電池の電圧がばらついていても、各電池の電圧を一致させることができるため、たとえば充放電動作に伴う各電池の劣化度合いを均一にすることができる。
【0112】
また、本発明の実施の形態に係る充電装置では、制御部19は、電池BAT1〜BAT4の電圧の最大値および最小値の差が所定の開始閾値以上になると、電圧が最大となる電池BATに対応する分流回路SHの分流動作を開始する。
【0113】
このような構成により、各電池の電圧のばらつきを抑えながら充電を行うことができるため、各電池の充電動作を最適化し、充電効率を向上させることができる。
【0114】
また、本発明の実施の形態に係る充電装置では、制御部19は、電池BAT1〜BAT4の電圧の最大値および最小値の差が所定の解除閾値未満になると、電圧が最大となる電池BATに対応する分流回路SHの分流経路を遮断し、分流動作を停止する。
【0115】
このような構成により、各電池の電圧のばらつきをある程度の範囲で抑えながら、充電電流が電池の充電に用いられずに消費される量および時間を低減することができる。
【0116】
なお、本発明の実施の形態に係る充電装置において、分流回路SHは、分流動作において、充電電流の一部を抵抗R1〜R4を通して流す構成であってもよいし、充電電流の全部を抵抗R1〜R4を通して流す構成であってもよい。また、分流回路SHは、直列接続された抵抗RおよびトランジスタTRの組を複数含み、これらの組が並列接続された構成であってもよい。この場合、各組のトランジスタTRのオンおよびオフの組み合わせにより、分流比を選択することが可能となる。
【0117】
また、本発明の実施の形態に係る充電装置では、電池BATの電圧は正電圧であるとしたが、これに限定するものではなく、電池BATの電圧は負電圧であってもよい。すなわち、本発明の実施の形態において、電池BAT等の電圧の大小は、絶対値の大小を意味する。
【0118】
また、本発明の実施の形態に係る充電装置は、電圧測定部MVを備える構成であるとしたが、これに限定するものではない。充電装置51の外部に電圧測定部MVが設けられる構成であってもよい。
【0119】
また、本発明の実施の形態に係る電源装置は、AC/DCコンバータ52を備える構成であるとしたが、これに限定するものではない。AC/DCコンバータ52を備えない構成であっても、外部から供給される直流電圧に基づいて各電池BATを充電し、かつ各電池BATを放電して直流電圧を外部に供給することが可能である。
【0120】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0121】
BAT1〜BAT4 電池
19 制御部
51 充電装置
52 AC/DCコンバータ(電圧変換回路)
SH1〜SH4 分流回路
MV1〜MV4 電圧測定部
R1〜R4 抵抗
TR1〜TR4 トランジスタ
101 電源装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8