(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0024】
(水上障害装置100)
図1は、水上障害装置100と本船艇102との接続関係を説明するための図であり、
図1(a)は、水上障害装置100と本船艇102との上面視における図であり、
図1(b)は、水上障害装置100と本船艇102との側面視における図であり、
図1(c)は、曳航母体130を備えない水上障害装置を説明するための図である。以下では、
図1に示す矢印R方向を本船艇102の右側とし、矢印L方向を本船艇102の左側として説明し、
図1に示す矢印X、Y方向を水平方向とし、矢印Z方向を鉛直下方向とする。
【0025】
図1に示すように、水上障害装置100(
図1中、100a、100b、100cで示す)は、本船艇102に接続され、本船艇102に接近する他の船艇(例えば、海賊船104)の停船を促す。
図1に示す例において、本船艇102は
図1中X軸方向に航行し、水上障害装置100aは本船艇102の右舷に、水上障害装置100bは本船艇102の左舷に、水上障害装置100cは本船艇102の船尾に接続される。
【0026】
水上障害装置100は、防護索110と、第
2の曳航体としての曳航体120(
図1中、120a、120bで示す)と、第
1の曳航体としての曳航母体130(
図1中、130a、130b、130cで示す)と、1または複数の補助浮体150と、支索170とを含んで構成される。水上障害装置100a、100b、100cを個々に説明すると、水上障害装置100aは、防護索110と、曳航体120aと、曳航母体130aと、補助浮体150と、支索170とを含んで構成され、水上障害装置100bは、防護索110と、曳航体120bと、曳航母体130bと、補助浮体150と、支索170とを含んで構成され、水上障害装置100cは、防護索110と、曳航体120a、120bと、曳航母体130cと、補助浮体150と、末端浮体160と、支索170とを含んで構成される。
【0027】
防護索110は、紐状に形成されており、一端側が本船艇102に接続され、他端側に曳航体120が接続されている。
図1(c)に示すように、防護索110の一端側を本船艇102に直接接続すると、防護索110が本船艇102と海面で張架され、防護索110が海面に位置していない部分が生じるので、本船艇102の側壁と防護索110との間を海賊船104がすり抜けてしまうおそれがある。そこで、
図1(a)、(b)に示すように、防護索110は、海に投入されたときに海面上に位置する曳航母体130を介して本船艇102に接続される。曳航母体130が海に投入されたときに海面上に位置する構成については後に詳述する。
【0028】
詳細は後に説明するが、水上障害装置100a、100b、100cを接続した状態で、本船艇102が航行すると、
図1(a)に示すように、水上障害装置100aの曳航体120aは、本船艇102の右舷に接続された防護索110を張架しつつ、本船艇102の右側方に位置することになる。また、水上障害装置100bの曳航体120bは、本船艇102の左舷に接続された防護索110を張架しつつ、本船艇102の左側方に位置することになる。さらに、水上障害装置100cの曳航体120aは、本船艇102の船尾に接続された防護索110を張架しつつ、本船艇102の右後方に位置することになり、曳航体120bは、本船艇102の船尾に接続された防護索110を張架しつつ、本船艇102の左後方に位置することになり、海面に浮揚する末端浮体160は、本船艇102の船尾に接続された防護索110を張架しつつ、本船艇102の後方に位置することになる。
【0029】
このように水上障害装置100を本船艇102に接続することにより、防護索110および支索170を本船艇102の周囲に張り巡らせることができる。したがって、海賊船104が、水上障害装置100が接続された本船艇102に接近を試みると、海賊船104のスクリュー、シャフト、舵等に、防護索110や支索170が絡みつき、海賊船104を停船させることが可能となる。
【0030】
また、水上障害装置100の防護索110および支索170には、後述する切断機構が設けられている。そして、防護索110および支索170は、切断機構によって、予め定められた閾値以上の張力が架かると本船艇102と切り離された状態になる。これにより、海賊船104のスクリュー等に防護索110または支索170が絡まった場合、海賊船104とともに防護索110または支索170を水上障害装置100から切り離すことができる。
【0031】
以下、水上障害装置100を構成する曳航体120、曳航母体130、補助浮体150、支索170、切断機構200の具体的な構成について説明する。
【0032】
(曳航体120)
図2は、曳航体120の具体的な構成を説明するための図であり、
図2(a)〜(e)は曳航体120aの構成を、
図2(f)〜(j)は曳航体120bの構成を示す。また、
図2(a)、(f)は上面図、
図2(b)、(g)は左側面図、
図2(c)、(h)は底面図、
図2(d)は
図2(b)におけるII(d)−II(d)線断面図、
図2(e)は曳航体120aの垂直翼体126のXY断面を拡大した図、
図2(i)は
図2(g)におけるII(i)−II(i)線断面図、
図2(j)は曳航体120bの垂直翼体126のXY断面を拡大した図である。
【0033】
図2に示すように、曳航体120は、浮体122と、錘124と、垂直翼体126とを含んで構成される。
【0034】
浮体122は、海に投入された状態で、海面に浮揚する。浮体122は、後述する垂直翼体126の一端側に接続される。浮体122は、垂直翼体126との接続位置を基準として、本船艇102の航行方向(
図2中X軸方向)側よりも航行方向と逆方向側の方が長く形成され、
図2中X軸方向の姿勢を維持する方向維持機構として機能する。これにより、水流(外乱)に対して、曳航体120の安定性を向上させることが可能となる。
【0035】
錘124は、垂直翼体126における浮体122が接続される端と逆の端側に接続される。そして、浮体122、錘124、浮体122および錘124を離隔する垂直翼体126は、姿勢維持機構を構成する。すなわち、曳航体120を海に投入すると、浮体122にかかる浮力と、錘124にかかる重力とによって垂直翼体126の姿勢が鉛直方向(
図2中Z軸方向)に維持されることになる。
【0036】
垂直翼体126は、同一平面上における本船艇102の航行方向に交差する方向に揚力を生じさせる。具体的に説明すると、
図2(e)に示すように、曳航体120aの垂直翼体126は、前縁126aと後縁126bとを面の端線とする垂直翼体126の側面に相当する面126c、126dが
図2中Y軸方向に凸となるように湾曲しており、
図2中X軸方向に本船艇102が航行すると、航行方向と逆方向(
図2(e)中−X軸方向)に抗力(
図2(e)中矢印Aで示す)が生じる。そうすると、曳航体120aの垂直翼体126は、
図2(e)中Y軸方向に揚力(
図2(e)中矢印Bで示す)を生じさせる。
【0037】
垂直翼体126の前縁126aを航行方向に臨ませるように水上障害装置100を接続して本船艇102が
図2(e)中X軸方向に航行すると、曳航体120aは、
図2(e)中Y軸方向に移動する。したがって、本船艇102が
図2(e)中X軸方向に航行する場合、曳航体120aを備えた水上障害装置100aを右舷に接続して、曳航体120aを本船艇102の右側に離隔する方向に移動させる。
【0038】
ここで、曳航体120aの垂直翼体126は、防護索110が接続される牽引部128を備えているため、垂直翼体126は、牽引部128、防護索110、曳航母体130を通じて本船艇102によって、
図2(e)中矢印Cで示す方向に牽引される。そうすると、曳航体120aは、曳航母体130に接続された防護索110を張架しつつ、本船艇102の右側方に位置することになる。
【0039】
一方、
図2(j)に示すように、曳航体120bの垂直翼体126は、前縁126aと後縁126bとを面の端線とする垂直翼体126の側面に相当する面126c、126dが
図2中−Y軸方向に凸となるように湾曲しており、
図2中X軸方向に本船艇102が航行すると、
図2(j)中−Y軸方向に揚力(
図2(j)中矢印Dで示す)を生じさせる。したがって、本船艇102が
図2(j)中X軸方向に航行する場合、曳航体120bを備えた水上障害装置100bを左舷に接続して、曳航体120bを本船艇102の左側に離隔する方向に移動させる。なお、上述した曳航体120aの垂直翼体126と同様に、曳航体120bの垂直翼体126は、牽引部128を備えているため、
図2(j)中矢印Eで示す方向に牽引される。したがって、曳航体120bは、曳航母体130に接続された防護索110を張架しつつ、本船艇102の左側方に位置することになる。
【0040】
このように、曳航体120aを備えた水上障害装置100aを本船艇102の右舷に、曳航体120bを備えた水上障害装置100bを本船艇102の左舷に接続することにより、本船艇102の両側方に防護索110を張り巡らせることが可能となる。また、本船艇102のスクリューや、舵、シャフト等に防護索110が絡まってしまう事態を回避することができる。
【0041】
さらに、上述したように、水上障害装置100cは、2つの曳航体120a、120bを備えている。したがって、曳航体120a、120bを備えた水上障害装置100cを本船艇102の船尾に接続することにより、本船艇102の右後方、および左後方に防護索110を張り巡らせることが可能となる。また、本船艇102のスクリューや、舵、シャフト等に防護索110が絡まってしまう事態を回避することができる。
【0042】
(曳航母体130a、130b)
図3は、曳航母体130a、130bの具体的な構成を説明するための図であり、
図3(a)は曳航母体130a、130bの上面図、
図3(b)は左側面図、
図3(c)は底面図、
図3(d)は曳航母体130aの垂直翼体136のXY断面図を拡大した図、
図3(e)は曳航母体130bの垂直翼体136のXY断面図を拡大した図、
図3(f)は曳航母体130a、130bの水平翼体138のXZ断面図を拡大した図、
図3(g)、
図3(h)は曳航母体130a、130bの背面図である。
【0043】
図3に示すように、曳航母体130a、130bは、浮体132と、錘134と、垂直翼体136と、水平翼体138と、巻回部142とを含んで構成される。
【0044】
なお、浮体132は浮体122と、錘134は錘124と、曳航母体130aの垂直翼体136は曳航体120aの垂直翼体126と、曳航母体130bの垂直翼体136は曳航体120bの垂直翼体126と、牽引部140は牽引部128と、実質的に機能が等しいので詳細な説明は省略する。
【0045】
浮体132、錘134、浮体132および錘134を離隔する垂直翼体136は、姿勢維持機構を構成する。すなわち、曳航母体130a、130bを海に投入すると、浮体132にかかる浮力と、錘134にかかる重力とによって垂直翼体136の姿勢が鉛直方向(
図3中Z軸方向)に維持されることになる。また、曳航母体130aは、本船艇102に接続された防護索110aを張架しつつ、本船艇102の右側方に位置することになり、曳航母体130bは、本船艇102に接続された防護索110aを張架しつつ、本船艇102の左側方に位置することになる。これにより、曳航母体130a、130bが本船艇102に衝突してしまう事態を回避することができる。
【0046】
続いて、曳航母体130a、130bに特徴的な水平翼体138および巻回部142について説明する。
【0047】
水平翼体138は、垂直翼体136に接続されており、鉛直下方向(
図3中Z軸方向)に揚力を生じさせる。具体的に説明すると、
図3(f)に示すように、水平翼体138は、前縁138aと後縁138bとを面の端線とする水平翼体138の側面に相当する面138c、138dが鉛直下方向(
図3中Z軸方向)に凸となるように湾曲しており、
図3中X軸方向に本船艇102が航行すると、航行方向と逆方向(
図3(f)中−X軸方向)に抗力(
図3(f)中矢印Aで示す)が生じる。そうすると、曳航母体130a、130bの水平翼体138は、鉛直下方向(
図3中Z軸方向)に揚力(
図3(f)中矢印Gで示す)を生じさせる。
【0048】
曳航母体130a、130bが水平翼体138を備えることにより、抗力による曳航母体130a、130bの鉛直上方への浮き上がりを防止することができる。これにより、本船艇102の側壁と防護索110aとの間を最小限に抑えることができ、本船艇102の側壁と防護索110aとの間を海賊船104がすり抜けてしまう事態を回避することが可能となる。
【0049】
巻回部142は、曳航母体130a、130bに回転自在に軸支され、1本の防護索110の一端側(曳航体120が接続されていない側)が接続されており、1本の防護索110を巻き回す(巻回する)。本実施形態において巻回部142の回転軸は水平方向(
図3中Y軸方向)である。
【0050】
図3(h)に示すように、水上障害装置100a、100bの初期状態において、巻回部142によって防護索110が巻き回されており、曳航母体130の背面に曳航体120が収容されている。そして、曳航母体130の牽引部140に接続された防護索110aを本船艇102に接続して、本船艇102の航行中に、曳航母体130ごと曳航体120を海に投入すると、曳航体120は投入時における海上の位置を維持し、本船艇102が航行するため、防護索110は曳航体120によって航行方向の逆方向へ引っ張られることになる。ここで、巻回部142は、曳航母体130に回転自在に軸支されているため、別途の駆動装置を要さずに防護索110を海上に引き出すことが可能となる。こうして、曳航母体130から防護索110、曳航体120が自動的に海上に引き出されることになる。
【0051】
また、海賊懸念海域を脱した場合等、水上障害装置100a、100bにおいて、曳航体120を曳航母体130に収容する場合、巻回部142を別途の回転駆動装置または手動で回転させる。そうすると、巻回部142によって防護索110が巻き回され、初期状態に戻すことができる。
【0052】
(曳航母体130c)
図4は、曳航母体130cの具体的な構成を説明するための図であり、
図4(a)は、曳航母体130cの上面図、
図4(b)は左側面図、
図4(c)は底面図、
図4(d)は垂直体144のXY断面図を拡大した図、
図4(e)、
図4(f)は、曳航母体130cの背面図である。
【0053】
図4に示すように、曳航母体130cは、浮体132と、錘134と、水平翼体138と、垂直体144と、巻回部146とを含んで構成される。なお、浮体132、錘134、水平翼体138については、上述した曳航母体130a、130bの浮体132、錘134、水平翼体138と、実質的に機能が等しいので、同一の符号を付して重複説明を省略し、構成の異なる垂直体144と、巻回部146とを詳述する。
【0054】
垂直体144は、
図4(d)に示すように、XY断面(水平断面)が流線型状である。垂直体144が流線形状であることにより、海水の水流から受ける抵抗を最小限にすることができる。
【0055】
巻回部146は、巻回部142と同様に、曳航母体130cに回転自在に軸支され、3本の防護索110を巻き回す。巻回部146には、回転軸の方向に位置を異にして、3本の防護索110(曳航体120aが接続された防護索110、曳航体120bが接続された防護索110、末端浮体160が接続された防護索110)が接続されている。
【0056】
巻回部146は、曳航母体130に回転自在に軸支されているため、別途の回転駆動装置を要さずに防護索110を海上に引き出すことが可能となる。また、末端浮体160が接続された防護索110も巻回部146に接続されているため、曳航体120a、120bが引っ張られることに伴って、末端浮体160も海上に導かれ、末端浮体160に接続された防護索110も海上に引き出されることになる。こうして、曳航母体130cから防護索110、曳航体120a、120b、末端浮体160が自動的に海上に引き出されることになる。
【0057】
また、海賊懸念海域を脱した場合等、水上障害装置100cにおいて、曳航体120a、120bを曳航母体130cに収容する場合、巻回部146を別途の回転駆動装置または手動で回転させる。そうすると、巻回部146によって防護索110が巻き回され、初期状態に戻すことができる。
【0058】
(補助浮体150および支索170)
補助浮体150は、防護索110における曳航体120と曳航母体130との間の予め定められた位置に接続され、海面に浮揚する。補助浮体150を備える構成により、防護索110を海面近傍に維持することができる。これにより、防護索110上を海賊船104が通過しようとしたとき、海賊船104を停船させる確率を向上することが可能となる。
【0059】
支索170は、防護索110と接続位置を異にして補助浮体150に接続され、紐状に形成されている。支索170を備えることにより、防護索110のみの場合と比較して、より広範囲に索を張り巡らせることができ、海賊船104を停船させる確率を向上することが可能となる。
【0060】
(切断機構200)
図5は、水上障害装置100aにおける切断機構200の設置位置を説明するための図であり、
図6は、切断機構200の具体的な構成を説明するための図である。なお、
図6(a)、
図6(b)は、切断機構200の平面図、
図6(c)は、
図6(b)のVI(c)−VI(c)線断面図、
図6(d)は、変形後の切断機構を説明するための図であり、
図6(e)は、切断機構200の調整例を説明するための図である。ここでは、水上障害装置100aを例に挙げて説明する。
【0061】
図5に示すように、水上障害装置100aの防護索110は、本船艇102と曳航母体130aに接続された防護索110aと、曳航母体130aと補助浮体150とに接続された防護索110bと、2つの補助浮体150に接続された防護索110cと、補助浮体150と曳航体120aとに接続された防護索110dとを含んで構成される。切断機構200は、例えば、補助浮体150と、防護索110cにおける補助浮体150と接続される端部112cや、防護索110dにおける補助浮体150と接続される端部112dと、に設けられる。例えば、海賊船104のスクリューに防護索110dが絡みついた場合、切断機構200(
図5中、200a、200bで示す)によって、補助浮体150と防護索110c、または、補助浮体150と防護索110dが切断される。
【0062】
具体的に説明すると、
図6(a)に示すように、切断機構200(
図6では、切断機構200aを例に挙げて説明する)は、係止部210と、付勢部220とを含んで構成される。係止部210は、防護索110dの端部112dに接続されており、複数の(ここでは、4つ)の突起部212を予め定められた間隔で備えている。
【0063】
付勢部220は、補助浮体150に設けられており、基端側220aが締結部材220bによって補助浮体150に接続され、付勢側220cが補助浮体150に付勢する。また、付勢部220は、係止部210の突起部212をそれぞれ嵌合する切り欠き222を備えている。
【0064】
切断機構200を機能させる場合、まず、防護索110dの端部112dに係止部210を接続する。続いて、係止部210を補助浮体150に形成された溝部152にはめ込んだ後、付勢部220で、係止部210を補助浮体150に付勢する。ここで、切り欠き222は、突起部212が嵌合される寸法関係を維持しているので、切り欠き222に突起部212が嵌合する。こうして、切断機構200を介して、防護索110dと補助浮体150が接続される。
【0065】
ここで、防護索110が海賊船104のスクリューに絡まる等して、防護索110に予め定められた閾値以上の力がかかると、
図6(d)に示すように付勢部220が変形し、付勢部220は、係止部210との嵌合を解除する状態になる。すなわち、係止部210が防護索110とともに、付勢部220から脱落する。こうして、防護索110が補助浮体150から切り離される。
【0066】
このような切断機構200を設けることで、海賊船104のスクリューに防護索110が絡まる等した場合、海賊船104と水上障害装置100とを切り離すことができ、海賊船104を停船させた状態で、海賊船104を残して本船艇102を航行させることが可能となる。また、水上障害装置100における、切断機構200によって切断された後に残った他の部分を再利用することも可能である。
【0067】
また、
図6(e)に示すように、突起部212と切り欠き222とを嵌合させる個数を変化させること(例えば、2個)で、本船艇102の速度や、防護索110の太さ、防護索110の伸縮率等に合せて、防護索110が補助浮体150から切断される力を調整することもできる。
【0068】
(防護索110、支索170の材質)
防護索110および支索170のいずれか一方または両方の比重(または、質量密度(kg/m
3))は、海水の比重(または、質量密度)よりも小さい部材で構成されている。かかる構成により、防護索110および支索170を海面近傍に維持することができ、海賊船104を停船させる確率を向上することが可能となる。
【0069】
(浮体122、132、補助浮体150、末端浮体160の外観)
浮体122、132、補助浮体150、および末端浮体160の群から選択される1または複数は、透明または半透明の部材で構成される。かかる構成により、水上障害装置100を海に設置したときに、海賊船104から水上障害装置100の存在を見つけにくくすることができる。したがって、海賊船104が水上障害装置100を回避して本船艇102に接近する事態を抑制することが可能となる。
【0070】
以上説明したように、本実施形態にかかる水上障害装置100によれば、本船艇102に接続して、曳航体120および曳航母体130を海上に投入するだけといった簡易な構成で、本船艇102の周囲に防護索110や支索170を張り巡らせることができ、航空機や火薬を用いることなく、本船艇102に接近する海賊船104等の他の船艇の停船を促すことが可能となる。
【0071】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0072】
例えば、上述した実施形態では、曳航母体130を備えた水上障害装置100を例に挙げて説明したが、海面から本船艇102の甲板までの高さが低い等、本船艇102の側壁と防護索110との間の空間が、海賊船104がすり抜けできない程度に小さい場合、必ずしも曳航母体130を備える必要はない。この場合、
図1(c)に示したように、本船艇102に防護索110を直接接続するとしてもよい。
【0073】
また、上述した実施形態では、係止部210と付勢部220とを備えた切断構造200を例に挙げて説明したが、防護索110が、予め定められた閾値以上の張力が架かると本船艇102と切り離された状態になれば、どのような構成でもよい。例えば、防護索110の一部を他の部分と比較して細く形成してもよい。また、
図7に示すように、予め定められた閾値以上の張力が架かると、防護索110が金具300から引き抜けるように、防護索110を金具300で補助浮体150に締め付けておいてもよい。また、防護索110のみならず、支索170に係止部210を接続し、支索170を、係止部210を介して補助浮体150に接続する等して、支索170が、予め定められた閾値以上の張力が架かると本船艇102と切り離された状態になるようにしてもよい。さらに付勢部220が曳航母体130に設けられてもよい。
【0074】
さらに、本船艇102が甲板から水上障害装置100を海に投入しているところを、海賊船104から見られた場合、海賊船104は、水上障害装置100を回避しようとして本船艇102の前方から回り込む可能性がある。そこで、本船艇102の側壁に水上障害装置100の投入機構を設けておき、海賊船104に水上障害装置100の存在がわからないように、水上障害装置100を海に投入してもよい。
【0075】
また、上述した実施形態では、水上障害装置100は、補助浮体150や支索170を備えているが、防護索110のみであってもよい。
【0076】
さらに、浮体122、132、補助浮体150、末端浮体160は、必ずしも透明の材質である必要はなく、海に投入した場合に、海賊船104から見て気づかれない程度の目立たない色や材質であればどのような色(例えば、海水の色)や材質であってもよい。また、防護索110や支索170も透明の材質や目立たない材質で構成されるとよい。