(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態について
図1〜
図9を参照しながら説明する。以下の説明では図面に記載した矢線で示すように、カメラ10の左右方向をX方向、上下方向をY方向、前後方向をZ方向と定義する。
まずはカメラ10及び像振補正装置20の基本構造について説明する。
図1に示すように、カメラ10のレンズ鏡筒11内には、複数のレンズ群L1、L2、L3からなる光学系が配設してあり、レンズ鏡筒11を着脱可能なカメラボディ12の内部には、レンズ群L3の直後に位置する像振補正装置20が配設してある。
【0020】
図2から
図9に示すように像振補正装置20は、軟鉄等の磁性体からなる正面視略横長方形でかつ中央部には長方形の窓孔28を穿設してある平板形状の前側ヨーク21と、正面視横向きコ字形状で軟鉄等の磁性体からなる平板形状の後側ヨーク22(固定支持基板)と、を備えている。ただし後側ヨーク22は、隣り合うもの(辺)どうしが略直交する三辺からなる形状であれば他の形状(例えばU字形状)であってもよい。
前側ヨーク21の後面の5カ所には後方に向かって延出する連結支柱23が突設してあり、各連結支柱23の後端面には雌ねじ孔24が形成してある。後側ヨーク22の左側縁部には、右側に向かって凹みながら後側ヨーク22を板厚方向(Z方向)に貫通するフレキ逃げ用凹部22aが形成してある(中央部が「中央貫通孔」を構成し、左側部が中央貫通孔と連続する「側方受容部」を構成している)。後側ヨーク22の各連結支柱23と対応する位置には貫通孔25が穿設してある。
図2、
図3、
図7に示すように、各貫通孔25に後方からボルト26を挿入し、各ボルト26を対応する連結支柱23の雌ねじ孔24に螺合することにより、前側ヨーク21と後側ヨーク22を互いに平行をなすように固定状態で連結している。後側ヨーク22は、図示を省略した3つの固定ねじによってカメラボディ12の内面に固定してある。
前側ヨーク21の左右の上端角部近傍と下端部の左右方向の中央部にはそれぞれ正面視円形の取付孔31が穿設してあり、各取付孔31にはリテーナ32が後方から嵌合固定してある。各リテーナ32の後端面には円形のボール支持用凹部33が凹設してある。さらに後側ヨーク22の前面の左右の上端角部近傍と下端部の左右方向の中央部には、正面形状が取付孔31と略同一のボール支持用凹部34が凹設してある。
【0021】
前側ヨーク21の後面には窓孔28の右側に位置する態様で(後側ヨーク22におけるフレキ逃げ用凹部22aの開口端部と反対側の部分と前後方向に対向する部分)、左右一対の磁石からなるX用磁石MX(磁力発生装置)が上下一対として固定してある。上下のX用磁石MXは互いに同一仕様であり、共に左側の磁石の後半部がN極(前半部はS極)であり、右側の磁石の後半部がS極(前半部はN極)である。これら上下のX用磁石MXは、後述するステージ板40(ステージ部材)が
図4及び
図5の位置(後述する初期位置)に位置するときに、Y方向に延びる一直線上に位置する(両者のX方向位置が一致する)。そして、各X用磁石MXが発生した磁力が前側ヨーク21及び後側ヨーク22に及ぶので(前側ヨーク21及び後側ヨーク22が上下のX用磁石MXの磁束を通すので)、上側のX用磁石MXと後側ヨーク22の対向部の間、及び、下側のX用磁石MXと後側ヨーク22の対向部の間には、同じ磁束密度のX用磁気回路がそれぞれ形成されている。
また、前側ヨーク21の後面には窓孔28の下方に位置する態様で、共に上下一対の磁石からなるY用磁石MYA(磁力発生装置)とY用磁石MYB(磁力発生装置)が一直線上に並べて設けてある。Y用磁石MYAとY用磁石MYBは、ステージ板40が
図4及び
図5の位置(初期位置)に位置するときに、X方向に延びる一直線上に位置する(両者のY方向位置が一致する)。Y用磁石MYAとY用磁石MYBは互いに同一仕様であり、共に上側の磁石の後半部がN極(前半部はS極)であり、下側の磁石の後半部がS極(前半部はN極)である。そして、Y用磁石MYAとY用磁石MYBが発生した磁力が前側ヨーク21及び後側ヨーク22に及ぶので(前側ヨーク21及び後側ヨーク22がY用磁石MYAとY用磁石MYBの磁束を通すので)、Y用磁石MYAと後側ヨーク22の対向部との間、及び、Y用磁石MYBと後側ヨーク22の対向部との間には同じ磁束密度のY用磁気回路が形成されている。
【0022】
前側ヨーク21と後側ヨーク22の間には金属平板からなるステージ板40が位置している。ステージ板40の左右の上端角部にはそれぞれ方形の移動範囲規制孔41が穿設してあり、ステージ板40の下縁部には逃げ用凹部42が凹設してある。各移動範囲規制孔41を前側ヨーク21の左右の上端角部から突出する2本の連結支柱23がZ方向に貫通しており、逃げ用凹部42を前側ヨーク21の下端部から突出する連結支柱23がZ方向に貫通している。
各リテーナ32のボール支持用凹部33にはステージ板40の前方に位置する3つのボールBが回転可能に挿入してあり、後側ヨーク22の各ボール支持用凹部34にはステージ板40の後方に位置する3つのボールBが回転可能に挿入してある。各ボールBは、リテーナ32のボール支持用凹部33の底面とステージ板40の前面の対向面間距離(前後方向距離)、及び、後側ヨーク22のボール支持用凹部34の底面とステージ板40の後面の対向面間距離(前後方向距離)より僅かに小径である。そのため各ボールBは、リテーナ32のボール支持用凹部33の底面とステージ板40の前面、及び、後側ヨーク22のボール支持用凹部34の底面とステージ板40の後面に対して回転接触可能である。
このように6つのボールBが3つのリテーナ32(ボール支持用凹部33)及び後側ヨーク22(ボール支持用凹部34)とステージ板40に接触しているので、ステージ板40は
図4及び
図5に示す初期位置から前側ヨーク21及び後側ヨーク22に対してX方向とY方向に直線的に相対移動できるだけでなく、X方向及びY方向と平行な(光軸OAに直交する)XY平面上を回転可能である。
さらに、ステージ板40の移動範囲規制孔41には前側ヨーク21から突出する2本の連結支柱23がそれぞれ遊嵌しているので、ステージ板40のスライド範囲は連結支柱23と移動範囲規制孔41によって一定範囲に制限されている。
【0023】
ステージ板40の中央部には正面視長方形の中央孔43が貫通孔として穿設してあり(
図3、
図7参照)、ステージ板40の前面には中央孔43と対向する態様で撮像素子44(ブレ補正手段)が固定してある。撮像素子44は正面視長方形であり(
図4、
図6参照)、その前面は撮像面46となっている。撮像素子44は、ステージ板40が
図4及び
図5の位置(初期位置)に位置するときにX方向と平行をなす上下一対のX方向側辺44Xと、ステージ板40が初期位置に位置するときY方向と平行な左右一対のY方向側辺44Yとを具備している。さらに撮像素子44(撮像面46)の直前には、正面視長方形のカバーガラス47が固着してある。撮像素子44の撮像面46は、レンズ群L1〜L3及びカバーガラス47を透過した像が結像する結像面であり、ステージ板40が初期位置に位置するとき(
図4及び
図5の状態のとき)、撮像素子44の撮像面46の中心はレンズ群L1〜L3の光軸OA上(撮影光路上)に位置する。
また、ステージ板40の直後には撮像素子用FPC48(フレキシブルプリント基板)の右半部が位置しており、撮像素子用FPC48の右半部の前面に撮像素子44から後方に延びる多数のリードが半田付けしてある。さらに撮像素子用FPC48の左右方向の中央部よりやや左側に位置する部分は平面視でU字形をなすように曲折された(曲げ癖がつけられた)変形部49となっており、撮像素子用FPC48の左端部は変形部49の左側片49bの後縁部から左側に延びかつ撮像素子用FPC48の右半部より一段後方に位置している。
図8に示すように、撮像素子用FPC48の変形部49より右側に位置する部分はフレキ逃げ用凹部22a内に位置しており(後側ヨーク22と同一平面上に位置している)、ステージ板40が初期位置にあるとき変形部49の右側片49aと左側片49bは互いに略平行になる。
【0024】
図2、
図6に示すように、ステージ板40には撮像素子44の右側に位置させて互いに同一形状(縦長長方形状)である2つのコイル取付孔50がY方向側辺44Yと平行な方向(
図2、
図6ではY方向)に並べて穿設してあり、撮像素子44の下方には互いに同一形状(横長長方形状)であるコイル取付孔51がX方向側辺44X(
図2、
図6ではX方向)と平行な方向に並べて穿設してある。
ステージ板40に上下に並べて形成した2つのコイル取付孔50には、互いに同一仕様(同じ巻き数)のX方向駆動用コイルCXA(第1コイル)(駆動部材)(第1駆動部材)とX方向駆動用コイルCXB(第2コイル)(駆動部材)(第1駆動部材)が嵌合固定してある。上下のX方向駆動用コイルCXA、CXBはコイル線が百回以上渦巻き状に巻かれた(ステージ板40と平行な方向にもステージ板40の板厚方向にも巻かれている)XY平面と平行なコイルである。上下のX方向駆動用コイルCXA、CXBはステージ板40がいずれの位置に位置するときも、上下の上記X用磁気回路中(磁界中)にそれぞれ位置する(上下のX用磁石MXと常にそれぞれZ方向に対向する)。X方向駆動用コイルCXAとX方向駆動用コイルCXBに対して一方向の電流を流すと、X方向駆動用コイルCXAとX方向駆動用コイルCXBは
図6に示すFX1方向(X方向側辺44Xと平行な方向)の直線的な駆動力を発生し、X方向駆動用コイルCXAとX方向駆動用コイルCXBに対して反対方向の電流を流すと、X方向駆動用コイルCXAとX方向駆動用コイルCXBは
図6に示すFX2方向(X方向側辺44Xと平行な方向)の直線的な駆動力を発生する。
【0025】
ステージ板40の左右のコイル取付孔51には、互いに同一仕様(同じ巻き数)のY方向駆動用コイルCYA(駆動部材)(第2駆動部材)とY方向駆動用コイルCYB(駆動部材)(第2駆動部材)が嵌合固定してある。Y方向駆動用コイルCYAとY方向駆動用コイルCYBは共にコイル線が百回以上渦巻き状に巻かれた(ステージ板40と平行な方向にもステージ板40の板厚方向にも巻かれている)XY平面と平行なコイルである。Y方向駆動用コイルCYAとY方向駆動用コイルCYBはステージ板40がいずれの位置に位置するときも、左右の上記Y用磁気回路中(磁界中)にそれぞれ位置する(Y用磁石MYAとY用磁石MYBと常にそれぞれZ方向に対向する)。Y方向駆動用コイルCYAとY方向駆動用コイルCYBに対して一方向の電流を流すと、Y方向駆動用コイルCYAとY方向駆動用コイルCYBは
図6に示すFY1方向(Y方向側辺44Yと平行な方向)の直線的な駆動力を発生し、Y方向駆動用コイルCYAとCYBに対して反対方向の電流を流すと、Y方向駆動用コイルCYAとY方向駆動用コイルCYBは
図6に示すFY2方向(Y方向側辺44Yと平行な方向)の直線的な駆動力を発生する。
【0026】
さらにステージ板40の後面にはコイル通電用FPC53(フレキシブルプリント基板)の右半部が固着してある。コイル通電用FPC53の右半部はL字形状であり、X方向駆動用コイルCXA、CXBとY方向駆動用コイルCYA、CYBの両端はいずれもコイル通電用FPC53の右半部に接続している。またコイル通電用FPC53の左右方向の中央部よりやや左側に位置する部分は平面視でU字形をなすように曲折された(曲げ癖がつけられた)変形部54となっており、コイル通電用FPC53の左端部は変形部54の左側片54bの後縁部から左側に延びかつコイル通電用FPC53の右半部より一段後方に位置している。
図8に示すようにステージ板40が初期位置にあるとき、変形部54の右側片54aと左側片54bは互いに略平行になる。
【0027】
さらに、
図2、
図6に示すように、コイル通電用FPC53の前面には、上側のX方向駆動用コイルCXAの内部に位置する一つのX用ホール素子HXと、Y方向駆動用コイルCYAとY方向駆動用コイルCYBの内部にそれぞれ位置する二つのY用ホール素子HYとが、それぞれ半田付けしてある。
またコイル通電用FPC53の前面には、X方向駆動用コイルCXBの内部に位置する電気抵抗56(駆動力低減手段)が半田付けしてある。
【0028】
図2、
図6、
図8に示すようにステージ板40の前面の左側縁部には断面形状が略クランク形状をなすFPCカバー部材58の右端部が固着してある。FPCカバー部材58は薄肉の金属板を曲折加工したものであり、その右端部を構成しかつステージ板40に対して固着される取付片59と、変形部49の前端部を保護する(該前端部の直前に位置する)前側保護片61と、取付片59の左縁部と前側保護片61の右縁部を接続し、変形部49の右側片49aを保護する(右側片49aの右側に位置する)右側保護片60と、を有している。なお、FPCカバー部材58を銅製とすれば、ステージ板40の熱を効率よく放熱でき、さらに軽量化を図ることが可能になる。図示するように撮像素子用FPC48の変形部49とコイル通電用FPC53の変形部54はステージ板40の左側縁部と制御基板63の右側縁部の間の隙間に位置しており、変形部49及び変形部54の直前には前側保護片61が位置している。
以上説明したようにステージ板40には、撮像素子44、撮像素子用FPC48、コイル通電用FPC53、電気抵抗56、FPCカバー部材58、X方向駆動用コイルCXA、CXB、Y方向駆動用コイルCYA、CYB、X用ホール素子HX、及び、Y用ホール素子HYが固定してあるため、ステージ板40、撮像素子44、カバーガラス47、撮像素子用FPC48(後述する制御基板63の後面に固定された左端部を除く部分)、コイル通電用FPC53(後述する制御基板63の後面に固定された左端部を除く部分)、電気抵抗56、FPCカバー部材58、X方向駆動用コイルCXA、CXB、Y方向駆動用コイルCYA、CYB、X用ホール素子HX、及び、Y用ホール素子HYを備える一体型可動体62が、前側ヨーク21及び後側ヨーク22に対して相対スライドすることになる。一体型可動体62の重心Gを通ってX方向側辺44Xと平行な方向に延びる基準直線SLXからX方向駆動用コイルCXAの駆動力中心位置(X方向駆動用コイルCXAの駆動力のY方向の中心位置)までのY方向側辺44Y方向の距離より、X方向駆動用コイルCXBの駆動力中心位置(X方向駆動用コイルCXBの駆動力のY方向の中心位置)までのY方向側辺44Y方向の距離の方が長い。一方、一体型可動体62の重心Gを通ってY方向側辺44Yと平行な方向に延びる基準直線SLYからY方向駆動用コイルCYAの駆動力中心位置までのX方向側辺44X方向の距離と、Y方向駆動用コイルCYBの駆動力中心位置までのX方向側辺44X方向の距離は互いに同一である。
【0029】
図4、
図5に示すように前側ヨーク21、後側ヨーク22、及び、ステージ板40の左側にはステージ板40と平行なリジッド基板である制御基板63(電力供給手段)が設けてある。この制御基板63は図示を省略した固定ねじによって、後側ヨーク22及びステージ板40と略同一平面上に位置する態様でカメラボディ12の内面に固定してある。
図示するように制御基板63の後面には撮像素子用FPC48及びコイル通電用FPC53の左端部が固定状態で接続している。制御基板63には、Y方向駆動用コイルCYAを制御する(電流を流す)ためのY用駆動ドライバDYA、Y方向駆動用コイルCYBを制御するためのY用駆動ドライバDYB、及び、X方向駆動用コイルCXA、CXBを同時に制御する一つのX用駆動ドライバDX(第1ドライバ)が設けてある(
図9参照)。
図9(a)に示すように、Y用駆動ドライバDYA(第2ドライバ)とY方向駆動用コイルCYAはコイル通電用FPC53及び制御基板63に形成された電気回路上で互いに直列状態で接続しており、Y用駆動ドライバDYB(第2ドライバ)とY方向駆動用コイルCYBも該電気回路上で互いに直列状態で接続している。一方、
図9(b)に示すように、X方向駆動用コイルCXB及び電気抵抗56と、X方向駆動用コイルCXAとは、該電気回路上で一つのX用駆動ドライバDXに対して並列状態で接続している。
さらに制御基板63には、共にカメラボディ12の内部に設けたバッテリ(図示略)とジャイロセンサGS(
図1参照)が接続している。
以上説明した符号21〜63の各構成が像振補正装置20の構成要素である。
【0030】
上記構成の像振補正装置20は、制御基板63がコイル通電用FPC53を介してX方向駆動用コイルCXA、CXB、及び、Y方向駆動用コイルCYA、CYBに電流を流すことにより像振れ補正動作を行う。
例えば、カメラ10にX方向の像振が生じたときに、カメラボディ12に設けた像振補正スイッチSW(
図1参照)を押し込むと、カメラ10に内蔵したジャイロセンサGSがカメラボディ12の角速度を検出する。すると制御基板63のX用駆動ドライバDXがこの角速度情報に基づいてカメラボディ12のX方向の移動距離(像振れ量)を演算し、さらにX方向駆動用コイルCXAと電気抵抗56に対して同じ大きさの電流を流す。電気抵抗56に流れた電流は電気抵抗56によって電流値を減じられた後にX方向駆動用コイルCXBに流れるので、X方向駆動用コイルCXBに流れる電流はX方向駆動用コイルCXAに流れる電流より小さい大きさとなり、その結果、X方向駆動用コイルCXBが発生するFX1(FX2)方向の駆動力はX方向駆動用コイルCXAが発生するFX1(FX2)方向の駆動力より小さい大きさとなる。電気抵抗56の抵抗値は、基準直線SLXからX方向駆動用コイルCXAの駆動力中心位置までのY方向側辺44Y方向距離(LA。
図6参照)と基準直線SLXからX方向駆動用コイルCXBの駆動力中心位置までのY方向側辺44Y方向の距離(LB。
図6参照)との差が、X方向駆動用コイルCXAに流れる電流値(IA)とX方向駆動用コイルCXBに流れる電流値(IB)の差によって相殺されるように、その大きさを(適正値となるように)設定してある。即ち、LA:LB=IB:IAの関係が成立するように、電気抵抗56の抵抗値を設定している。そのため、一体型可動体62の重心Gを通ってX方向側辺44Xと平行な方向に延びる基準直線SLXからX方向駆動用コイルCXAまでのY方向側辺44Y方向の距離よりX方向駆動用コイルCXBまでのY方向側辺44Y方向の距離が長い(X方向駆動用コイルCXAとX方向駆動用コイルCXBが基準直線SLXに関して対称でない)にも拘わらず、一体型可動体62(ステージ板40)をFX1、FX2方向に直線移動させることが可能である。従って、撮像素子44(一体型可動体62)をカメラボディ12に対して像振れ方向と反対方向にこの像振れ量と同じ距離だけFX1方向またはFX2方向に直線移動させれば(一体型可動体62のX方向のスライド量はX用ホール素子HXで検出する)、撮像素子44の像振れが補正される。
【0031】
一方、カメラ10にY方向の像振が生じたときに像振補正スイッチSWを押し込むと、ジャイロセンサGSがカメラボディ12の角速度を検出し、制御基板63のY用駆動ドライバDYAとY用駆動ドライバDYBがこの角速度情報に基づいてカメラボディ12のY方向の移動距離(像振れ量)を演算し、さらにY方向駆動用コイルCYAとY方向駆動用コイルCYBに対して同じ大きさの電流を流すので、Y方向駆動用コイルCYAとY方向駆動用コイルCYBが同じ大きさのFY1(FY2)方向の駆動力を発生する。上記のように一体型可動体62の重心Gを通ってY方向側辺44Yと平行な方向に延びる基準直線SLYからY方向駆動用コイルCYAまでのX方向側辺44X方向の距離とY方向駆動用コイルCYBまでのX方向側辺44X方向は同一なので、Y方向駆動用コイルCYAとY方向駆動用コイルCYBに同じ大きさの電流を流すと、一体型可動体62(ステージ板40)はFY1、FY2(Y方向側辺44Y)と平行な方向に直線移動する。そのため撮像素子44(一体型可動体62)をカメラボディ12に対して像振れ方向と反対方向にこの像振れ量と同じ距離だけFY1方向またはFY2方向に直線移動させれば(一体型可動体62のY方向のスライド量はY用ホール素子HYで検出する)、撮像素子44の像振れが補正される。
【0032】
またカメラ10に回転方向の像振が生じたときに像振補正スイッチSWを押し込むと、ジャイロセンサGSがカメラボディ12の角速度を検出し、制御基板63のX用駆動ドライバDXとY用駆動ドライバDYA、DYBがこの角速度情報に基づいてカメラボディ12のX方向とY方向の移動距離(像振れ量)を演算し、X方向駆動用コイルCXAと電気抵抗56に対して同じ大きさの電流を流しつつ、Y方向駆動用コイルCYAとY方向駆動用コイルCYBに異なる大きさの電流を流す。するとY方向駆動用コイルCYAとY方向駆動用コイルCYBが異なる大きさの駆動力を発生するので、X方向駆動用コイルCXA、CXBによるFX1(FX2)方向の駆動力とY方向駆動用コイルCYAとY方向駆動用コイルCYBによるFY1(FY2)方向の駆動力の合力によって、撮像素子44(一体型可動体62)が像振れ方向と反対方向にこの像振れ量と同じ距離だけ回転し、撮像素子44の像振れ(回転振れ)を補正する。
【0033】
そして像振れが補正された状態でカメラボディ12に設けたシャッターボタン(図示略)を押すと、制御基板63から撮像素子用FPC48を介して撮像素子44に撮像信号(電気信号)が送られるので、撮像素子44が撮像動作を行う。さらに撮像素子44から撮像素子用FPC48を介して制御基板63に送られた撮像データ(電気信号)が、カメラボディ12の背面に設けられたディスプレイ(図示略)に表示される。
【0034】
さらに本実施形態では制御基板63を後側ヨーク22の直後に配置せずに前側ヨーク21及び後側ヨーク22の左側に配置している。そのため像振補正装置20をZ方向に薄型化できるので、カメラボディ12をZ方向に薄型化することが可能である。
またステージ板40(一体型可動体62)が前側ヨーク21及び後側ヨーク22に対してX方向にスライドしたときに、撮像素子用FPC48の変形部49及びコイル通電用FPC53の変形部54が左右方向に伸縮(変形)するので、撮像素子用FPC48及びコイル通電用FPC53によってステージ板40(一体型可動体62)のスライド動作が妨げられることがない。そのためステージ板40(一体型可動体62)はX方向に円滑にスライド可能である。同様にステージ板40(一体型可動体62)が前側ヨーク21及び後側ヨーク22に対してY方向にスライドしたとき及び相対回転したときは、変形部49及び変形部54が自身の右側片49a、54aと左側片49b、54bを非平行にしながら変形するので、ステージ板40(一体型可動体62)はY方向及び回転方向に円滑にスライド可能である。
さらに変形部49及び変形部54の直前にFPCカバー部材58の前側保護片61が位置し、かつ右側片49a、54aの右側に右側保護片60が位置しているため、カメラボディ12をZ方向に薄型化した場合に、カメラボディ12の内部に設けた像振補正装置20以外の部品(例えば、図示を省略したシャッター)がFPCカバー部材58の前方に位置することになっても、変形部49(撮像素子用FPC48)と変形部54(コイル通電用FPC53)が当該部品に接触することはない。さらに変形部49及び変形部54の右側片49a、54aが前側ヨーク21や後側ヨーク22の左端部に接触することもない。従って、カメラボディ12をZ方向に薄型化した場合であっても、撮像素子用FPC48及びコイル通電用FPC53の摩耗や損傷を防止できる。
さらに撮像素子用FPC48の変形部49より右側に位置する部分がフレキ逃げ用凹部22a内に位置している。そのためカメラボディ12をZ方向に薄型化するために前側ヨーク21と後側ヨーク22のZ方向距離を短くした場合においても、撮像素子用FPC48の変形部49より右側に位置する部分が後側ヨーク22に接触することはなく、撮像素子用FPC48の摩耗や損傷を防止できる。
【0035】
以上、上記実施形態を利用して本発明を説明したが、本発明は本実施形態に限定されるものではなく、様々な変更を施しながら実施可能である。
例えば、
図10に示す第一の変形例のように基準直線SLXからX方向駆動用コイルCXAの駆動力中心位置までのY方向側辺44Y方向の距離よりX方向駆動用コイルCXBの駆動力中心位置までのY方向側辺44Y方向の距離を長くしつつ、X方向駆動用コイルCXBを撮像素子44の左側に配置(ステージ板40に固定)し、
図9(b)と同じ態様で電気抵抗56をコイル通電用FPC53及び制御基板63に形成された電気回路上に配置してもよい。この変形例の場合も上記実施形態と同様の作用効果を発揮可能である。
【0036】
図11に示す第二の変形例は、撮像素子44の左側に配置したX方向駆動用コイルCXBの上部と撮像素子44の右側に配置したX方向駆動用コイルCXAの下部のY方向側辺44Y方向位置を一部一致させた変形例である。この場合も、基準直線SLXからX方向駆動用コイルCXAの駆動力中心位置までのY方向側辺44Y方向の距離よりX方向駆動用コイルCXBの駆動力中心位置までのY方向側辺44Y方向の距離を長くしており、さらに
図9(b)と同じ態様で電気抵抗56をコイル通電用FPC53及び制御基板63に形成された電気回路上に配置している。そのためこの場合も上記実施形態と同様の作用効果を発揮可能である。
【0037】
また、前側ヨーク21側ではなく後側ヨーク22側に、X用磁石MX、及び、Y用磁石MYを固定してもよい。
【0038】
また電気抵抗56を省略した上で、前側ヨーク21やステージ板40にX方向駆動用コイルCXBと対向するX用磁石MXが発生する磁界の強さ(磁束密度)を、X方向駆動用コイルCXAと対向するX用磁石MXに比べて低減させる磁束低減手段(例えば、X方向駆動用コイルCXBと対向するX用磁石MXの一部を覆う被覆材や、X方向駆動用コイルCXBと対向するX用磁石MXの磁界に対して磁力を及ぼすことにより、該X用磁石MXの磁界の磁束密度を低減させる永久磁石などの駆動力低減手段)を設けても良い。この場合はX方向駆動用コイルCXAとX方向駆動用コイルCXBに同じ大きさの電流が流れるものの、X方向駆動用コイルCXBがX方向駆動用コイルCXAに比べて磁束密度が小さい磁界中に位置することになるので、結果的にX方向駆動用コイルCXBが発生する駆動力はX方向駆動用コイルCXAが発生する駆動力より小さくなる。そのため上記実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0039】
また基準直線SLXからX方向駆動用コイルCXAの駆動力中心位置までのY方向側辺44Y方向の距離よりX方向駆動用コイルCXBの駆動力中心位置までのY方向側辺44Y方向の距離を短くした上で、電気抵抗56を利用することによりX方向駆動用コイルCXAに流れる電流の大きさをX方向駆動用コイルCXBに比べて小さくしたり、又は、磁束低減手段を利用してX方向駆動用コイルCXAと対向するX用磁石MXが発生する磁界の磁束密度をX方向駆動用コイルCXBと対向するX用磁石MXが発生する磁界の磁束密度より小さくしてもよい。
【0040】
さらに、基準直線SLYからY方向駆動用コイルCYAまでのX方向側辺44X方向の距離と基準直線SLYからY方向駆動用コイルCYBまでのX方向側辺44X方向が互いに異なる場合は、Y用駆動ドライバDYAからY方向駆動用コイルCYAに流す電流の大きさと、Y用駆動ドライバDYBからY方向駆動用コイルCYBに流す電流の大きさを互いに異ならせることにより、Y方向の像振れを補正する。例えば、基準直線SLYからY方向駆動用コイルCYAまでの距離がY方向駆動用コイルCYBまでの距離より長い場合は、Y方向駆動用コイルCYBに流す電流の大きさをY方向駆動用コイルCYAに流す電流の大きさより小さくすることによりY方向の像振れを補正する(一体型可動体62をFY1方向またはFY2方向に直線移動させる)。
【0041】
さらにX方向駆動用コイルCXA、CXBとY方向駆動用コイルCYA、CYBの機能を入れ替えても良い。即ち、X方向駆動用コイルCXAとX方向駆動用コイルCXBが異なる大きさの駆動力を発生することを可能にした上で、Y方向駆動用コイルCYA、CYBが常に同じ大きさの駆動力を発生するように、Y方向駆動用コイルCYAとY方向駆動用コイルCYBの一方側に駆動力低減手段(例えば、Y方向駆動用コイルCYAとY方向駆動用コイルCYBの一方に接続する電気抵抗56や、Y方向駆動用コイルCYAと対向するY用磁石MYとY方向駆動用コイルCYBと対向するY用磁石MYの一方の磁界の磁束密度を他方に比べて低減させる磁束低減手段)を設けても良い。
なお、X方向駆動用コイルとY方向駆動用コイルのうち回転制御を行う側のものを、3つ以上のコイルによって構成してもよい。
【0042】
また
図12に示す第三の変形例のように、FPCカバー部材58の代わりに、取付片59、右側保護片60、前側保護片61、及び、前側保護片61の左縁部から後方に延びる左側防護片66を備える構造のFPCカバー部材65(の取付片59)をステージ板40に固定してもよい。このようにすれば撮像素子用FPC48の変形部49とコイル通電用FPC53の変形部54の前部と右側部だけでなく、左側部をも左側防護片66によって保護できる。
さらに、
図13に示す第四の変形例のように、前側保護片61に相当する部分のみを有する構造のFPCカバー部材67を採用し、FPCカバー部材67の右端部をステージ板40に固定してもよい。
【0043】
また
図14に示す第五の変形例の形状で実施してもよい。
この変形例の後側ヨーク70は、X方向に延びる二辺とY方向に延びる二辺からなる矩形枠形状であり、その中央部には中央貫通孔71が形成してある。さらに後側ヨーク70の左側部には側方貫通孔72が、中央貫通孔71とは非連通の長孔として形成してある。
図示するように、撮像素子用FPC48の右側片49a及びコイル通電用FPC53の右側片54aは、後側ヨーク70の後方から側方貫通孔72に挿入してある(後側ヨーク70の左側部にはカバー部材58(65、67)の取付片59が固定してあるが、カバー部材の図示は省略してある)。
この変形例の後側ヨーク70はX方向に延びる上下の二片の左端部をY方向に延びる左側の辺部で連結しているので、後側ヨーク22に比べて機械的強度が高い。
【0044】
さらに、ステージ装置をレンズ鏡筒11内に設けた上で、ステージ板40に、撮像素子44の代わりに(撮像素子44と同じ位置に)補正レンズ(ブレ補正手段)を固定してもよい。
撮影光路中に位置する補正レンズはレンズ群L1〜L3と共に撮像光学系を構成するレンズである。ステージ板40がスライドすると、補正レンズがレンズ光軸OAに対して直交する面内を移動するので、補正レンズによって像振れが補正される。
【0045】
さらにステージ板40の直後に配置したステージ板40と平行なリジッド基板(回路基板)に撮像素子44のリードを半田付けし、該リジッド基板に撮像素子用FPC48の右側端部を接続してもよい。
【0046】
また、ステージ板40に、2つのX用磁石MX(駆動部材)(第1駆動部材)をY方向側辺44Y方向に並べて固定すると共に2つのY用磁石MY(駆動部材)(第2駆動部材)をX方向側辺44X方向に並べて固定し、かつ、前側ヨーク21(又は後側ヨーク22)にX方向駆動用コイルCXA、CXBをY方向側辺44Y方向に並べて固定すると共にY方向駆動用コイルCYA、CYBをX方向側辺44X方向に並べて固定してもよい(この場合は、2つのX用磁石MXの中で基準直線
SLXからの
Y方向側辺
44Y方向の距離が長いものに、当該X用磁石MXの磁界の磁束密度を低減させる駆動力低減手段を設ける)。
【0047】
さらに、上記実施形態では本発明をステージ板40が回転可能な像振補正装置20に適用したが、ステージ板40がX方向とY方向にのみ直線移動する公知の像振補正装置に適用することや、像振補正装置とは用途が異なるステージ装置(特定の部材がX方向やY方向への直線移動や回転が可能な装置)に適用することも可能である。