(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記固定部材は、前記固定部材の径方向外側に前記ロータコアの回転軸と平行な方向に伸びる溝部を設け、前記溝部の径方向外側が広いことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のブラシレスモータ。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0020】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係るブラシレスモータを備える電動パワーステアリングの構成図である。まず、
図1を用いて、本実施形態に係るブラシレスモータを備える電動パワーステアリング装置の概要を説明する。
【0021】
<電動パワーステアリング装置>
電動パワーステアリング装置100は、操舵者から与えられる力が伝達する順に、ステアリングホイール101と、ステアリングシャフト102と、操舵力アシスト機構(補助操舵機構)103と、ユニバーサルジョイント104と、ロアシャフト105と、ユニバーサルジョイント106と、ピニオンシャフト107と、ステアリングギヤ108と、タイロッド109とを備える。また、電動パワーステアリング装置100は、ECU(Electronic Control Unit)50と、トルクセンサ110とを備える。車速センサ116は、車両に備えられ、CAN(Controller Area Network)通信により車速信号VをECU50に入力する。
【0022】
図1に示すように、電動パワーステアリング装置100は、ステアリングホイール101の操作によりステアリングシャフト102に発生する操舵トルクをトルク検出手段であるトルクセンサ110で検出し、その検出信号に基づいて、ECU50がブラシレスモータ(以下、必要に応じてモータという)1を駆動制御し、ブラシレスモータ1が補助操舵トルクを発生して、ステアリングホイール101の操舵力を補助する。
【0023】
ステアリングホイール101に連結されたステアリングシャフト102は、運転者の操舵力が入力される入力軸102aと、入力された操舵力を出力する出力軸102bとを有する。本実施形態において、入力軸102a及び出力軸102bは、鉄等の磁性材料から形成されている。入力軸102aと出力軸102bとの間には、トルクセンサ110及び減速装置111が設けられる。
【0024】
ステアリングシャフト102の出力軸102bに伝達された運転者の操舵力は、操舵機構に伝達される。具体的には、出力軸102bに伝達された運転者の操舵力は、ユニバーサルジョイント104を介してロアシャフト105に伝達され、さらにユニバーサルジョイント106を介してピニオンシャフト107に伝達される。ピニオンシャフト107に伝達された前記操舵力は、ステアリングギヤ108を介してタイロッド109に伝達され、操舵輪を転舵させる。
【0025】
ステアリングギヤ108は、ピニオンシャフト107に連結されたピニオン108aと、ピニオン108aに噛み合うラック108bとを有するラックアンドピニオン形式として構成される。このようなステアリングギヤ108によって、ピニオン108aに伝達された回転運動をラック108bで直進運動に変換している。
【0026】
ステアリングシャフト102の出力軸102bには、補助操舵トルクを出力軸102bに伝達する操舵力アシスト機構103が連結されている。操舵力アシスト機構103は、出力軸102bに連結された減速装置111と、減速装置111に連結されかつ補助操舵トルクを発生させるモータ1とを有している。なお、ステアリングシャフト102及びトルクセンサ110及び減速装置111によりステアリングコラムが構成されており、モータ1は、前記ステアリングコラムの出力軸102bに補助操舵トルクを与える。すなわち、本実施形態における電動パワーステアリング装置100は、コラムアシスト方式となっている。
【0027】
トルクセンサ110は、ステアリングホイール101を介して入力軸102aに伝達された運転者の操舵力を操舵トルクとして検出するものである。モータ1の駆動を制御するECU50には、電源(例えば車載のバッテリ)115から電力が供給される。なお、イグニッションスイッチ114がオンの状態で、電源115からECU50へ電力が供給される。ECU50は、トルクセンサ110で検出された操舵トルクT及び車速センサ116で検出された車速信号Vに基づいてアシスト指令の補助操舵指令値を算出し、その算出された補助操舵指令値に基づいてモータ1への供給電流値を制御する。
【0028】
図2は、本実施形態に係る電動パワーステアリング装置が備える減速装置の一例を説明する正面図である。
図2は、一部を断面として示してある。減速装置111はウォーム減速装置である。モータ1の入出力シャフト1Sにスプライン結合したウォーム121は、玉軸受122と、ホルダ125に保持された玉軸受123とで回転自在に減速装置ハウジング120に保持されている。ウォーム121の一部に形成されたウォーム歯121aは、減速装置ハウジング120に回転自在に保持されたウォームホイール124に形成されているウォームホイール歯124aに噛み合っている。モータ1の回転力は、ウォーム121を介してウォームホイール124に伝達され、ウォームホイール124を回転させる。ウォーム121及びウォームホイール124によって、モータ1のトルクが増加され、
図1に示すステアリングコラムの出力軸102bに補助操舵トルクが与えられる。次に、モータ1の構成を説明する。
【0029】
<ブラシレスモータ>
図3は、本実施形態に係るブラシレスモータの構成を模式的に示す断面図である。
図4は、
図3のX−X断面を模式的に示す断面図である。
図3に示すように、ブラシレスモータ1は、筐体である略円筒形のハウジング2Aと、このハウジング2Aの一方の開口端部を閉塞する略円板状のフロントブラケット2Bとを有している。ハウジング2Aのフロントブラケット2Bが設けられた側とは反対側の端部には、この端部を閉塞するように、ハウジング2Aと一体に底部2Abが形成されている。なお、ハウジング2Aを形成する磁性材料としては、例えばSPCC(Steel Plate Cold Commercial)等の一般的な鋼材や、電磁軟鉄等が適用できる。また、フロントブラケット2Bは、ブラシレスモータ1を所望の機器に取り付ける際のフランジの役割を果たしている。
【0030】
ハウジング2Aの内側であって、フロントブラケット2Bの略中央部分には軸受3が、底部2Abの略中央部分には軸受4が、それぞれ設けられている。軸受3は、ハウジング2Aの内側に配置された入出力シャフト1Sの一端を回転可能に支持し、軸受4は、入出力シャフト1Sの他端を回転可能に支持している。入出力シャフト1Sの回転中心は、
図3に示すZrであり、入出力シャフト1Sの中心軸に相当する。以下、入出力シャフト1Sの回転中心及び中心軸をZrで表す。なお、入出力シャフト1Sは、軸受3、4に支持されるので、軸受3、4の回転中心もZrとなる。
【0031】
入出力シャフト1Sの周囲には、円柱形状のロータコア6が配置されている。ロータコア6は、完全な円柱には限られず、マグネット5を配置するための溝があってもよい。また、ロータコア6の側面にマグネット5の底面を沿わせるための面が形成されて、ロータコア6の底面が多角形であってもよい。
【0032】
ロータコア6は、電磁鋼板、冷間圧延鋼板などの薄板を、接着、ボス、カシメなどの手段により積層して製造されている。ロータコア6は、順次金型の型内において積層され、金型から排出される。入出力シャフト1Sは、ロータコア6と一体で成型してもよいし、入出力シャフト1Sをロータコア6に圧入してもよい。ロータコア6の外周部には、モータ駆動用の複数(2×n個、nは整数)のマグネット5が設けられる。マグネット5は、ロータコア6の外周部に取り付けられ、
図4に示すように、S極及びN極がロータコア6の周方向に交互に、かつ等間隔に着磁された永久磁石である。本実施形態において、マグネット5は、分割形状(セグメント構造)である。
【0033】
マグネット5は、円柱をその軸方向を含む平面と平行な平面で切断したときに生じる、底面が略半円形の柱であるが、これには限られない。例えば、マグネット5は、円管をその軸方向を含む平面で切断したときに生じる曲板であってもよい。マグネット5の長手方向は、ロータコア6の中心軸Zr方向と平行である。本実施形態では、8本のマグネット5がロータコア6の外周部に等間隔で配列されている。隣接するマグネット5の間には、ロータコア6の側面が表れている。なお、ロータコア6の側面とは、柱形状であるロータコア6が、ステータ9のコア7と対向する面である。
【0034】
図4に示すように、ハウジング2Aの内周面には、コア7がその全体が包囲された状態で固定されている。このコア7には、ロータコア6の周方向に配列されたマグネット5を包囲するように、例えば3相の励磁コイル8がインシュレータ11を介して集中巻きされている。これらのコア7及び励磁コイル8によってブラシレスモータ1のステータ9が構成されている。ステータ9は、ロータ(ブラシレスモータ用ロータ)10の外側に所定の間隔を有して環状に配置される。
【0035】
コア7は、例えば、等分割された複数(本実施形態では12個)の分割コア7Aから構成されている。それぞれの分割コア7Aは、組み立てられてコア7を構成した際に、円筒形のヨーク部となる円弧状の分割ヨーク17と、この分割ヨーク17の内周面からロータ10に向かって延びる1本のティース18とを備えている。各々の分割コア7Aのティース18には、励磁コイル8がそれぞれ集中巻きされている。そして、複数の分割コア7Aが組み合わされてハウジング2A内に圧入されて、環状のコア7を構成する。このように、分割コア7Aは、ハウジング2A内に圧入されて、ハウジング2Aに締結されて、コア7を構成する。なお、コア7とハウジング2Aとは、圧入の他に接着や焼きばめ等によって固定されてもよい。
【0036】
本実施形態において、コア7は、分割コア7Aを組み合わせて構成されるが、これに限定されるものではない。例えば、コア7を一体で構成したり、焼結で構成したりしてもよい。励磁コイル8は、コア7にインシュレータ11を取り付けた後に、インシュレータ11が取り付けられたコア7に巻き付けられる。ステータ9の片側端部には端子台が設けられる。端子台に挿入又はインサートモールドされたバスバー(パワーハーネスでもよい)と各層の励磁コイル8とは、ヒュージングや抵抗溶接等で電気的に接続される。
【0037】
入出力シャフト1Sのフロントブラケット2B側の端部は外部に突出しており、この外部に突出した端部に所望の軸等を接続することで、ブラシレスモータ1の回転出力を取り出せるようになっている。本実施形態では、入出力シャフト1Sのフロントブラケット2B側に突出した端部が、
図2に示す減速装置111のウォーム121にスプライン結合される。なお、入出力シャフト1Sとウォーム121とは弾性カップリングでもよい。また、入出力シャフト1Sのフロントブラケット2B側には、ロータ10の回転位置を検出するレゾルバ14と、レゾルバ14を支持する端子台15が設けられている。このレゾルバ14は、入出力シャフト1Sの円周面に圧入等で取り付けられるレゾルバロータ12と、このレゾルバロータ12に所定間隔の空隙を介して対向配置されるレゾルバステータ13とを備えている。次に、ブラシレスモータ1を構成するロータ10及び、ロータ10の変形例について、より詳細に説明する。
【0038】
図5は、実施形態1に係るブラシレスモータのロータの構成を示す斜視図である。
図6は、
図5に示すロータのロータコアを示す正面図である。
図7は、実施形態1に係るブラシレスモータのロータの製造方法を説明する説明図である。
図8は、
図5に示すロータを示す正面図である。
図9は、
図5に示すロータのマグネットを覆う飛散防止カバーを示す正面図である。ロータ10は、ロータユニット10Uを備え、ロータユニット10Uは、ロータコア6と、マグネット5と、基準突起21と、固定部材23とを含む。ロータコア6の外周部である側面には、複数のマグネット5がロータコア6の周方向に向かって配列されている。
【0039】
ロータコア6には、その外周部26である側面の隣り合うマグネット5の間に基準突起21と、固定部材23を装着するための装着突起22とがロータコア6の周方向に交互に配置されている。そして、基準突起21は、マグネット5の半数である。これにより、固定部材23と基準突起21とは、隣合うマグネット5の間の外周部26のそれぞれに交互に配置することができ、マグネットの周方向の位置決め精度がより向上する。
【0040】
図6に示すように、基準突起21及び装着突起22は、ロータコア6と一体となっており、ロータコア6のマグネット5を取り付けるマグネット取り付け面6aよりも中心軸Zrから離れる方向(径方向外側方向)に突出している。基準突起21及び装着突起22をロータコア6の一部分として構成すると、ロータ10を構成する部品数を少なくすることができるので、製造コストを低減でき、製造管理を容易とすることができる。また、基準突起21及び装着突起22をロータコア6の一部分として構成すると、固定部材23の取付基準のばらつきが小さくなる。
【0041】
基準突起21は、中心軸Zrの軸方向を含む平面でみて、ロータコア6の外周部である側面の隣り合うマグネット5の間を起点として中心軸Zrから離れる方向に突出する基準突起基部21bと、基準突起基部21bよりも周方向に延伸する基準突起頂部21tと、マグネット5の少なくとも一部が挿入可能な挿入部21hと、を含む。基準突起21は、基準突起基部21bを中心軸Zrの軸方向と平行な方向に貫通する空隙部21cを有していることがより好ましい。空隙部21cは、基準突起21の基準突起頂部21t及び基準突起基部21bに撓みを生じやすくなり、基準突起21は、マグネット5の周方向の端部が挿入された場合、マグネット5に対して弾性力により、圧力を加えることができる。挿入部21hは、マグネット取り付け面6a、基準突起基部21b及び基準突起頂部21tで構成する周方向の一面が開口する凹部である。
【0042】
本実施形態において、
図7に示すマグネット5は、円柱をその軸方向を含む平面と平行な平面で切断したときに生じる、曲面5a及び曲面5bを有する。このため、マグネット取り付け面6aは、マグネット5の底面の曲面5aに沿った曲率を有している。この構成により、ロータコア6とマグネット5との間に生じる漏れ磁界が抑制される。また、挿入部21hに挿入されたマグネット5は、マグネット取り付け面6aと基準突起頂部21tとにより挟まれ、位置決めされる。挿入部21hは、マグネット5の外周の曲面5bの曲率に沿っていることがより好ましい。この構成により、マグネット5の位置決めが確実になる。
【0043】
図8に示すように、固定部材23は、ロータコア6の外周部である側面の隣り合うマグネット5の間の装着突起22に取り付け、マグネット5を基準突起21側及びマグネット取り付け面6a側に押圧する押圧部材である。固定部材23は、
図8に示すように、マグネット5を押圧する押圧部23aと、ロータコア6に固定するため、装着突起22を周方向両側から弾性力で挟む挟持部23bと、とを含む。押圧部23aは、挟持部23bの両側に伸びる一対の板状部材であり、回転軸Zrの軸方向を含む平面と平行な平面で切断したときに生じる、板状部材の断面が、マグネット5の上面の曲面5bに沿っている。
【0044】
中心軸Zrの軸方向を含む平面でみて中心軸Zrから離れる方向の力では解除不能なように挟持部23bが装着突起22を挟み込む固定構造となり、固定部材23は、ロータコア6に固定される。
【0045】
上記構成により、固定部材23をロータ10の中心軸Zrの軸方向から組み付ける必要がないので、製造が容易である。ロータ10と一体の基準突起21は、変形する必要がないので、ロータコア6の変形のための加圧力の管理に高額な設備も不用である。
【0046】
固定部材23は、挟持部23bが装着突起22を挟み込むと、押圧部23aが弾性力によりマグネット5を押圧する。固定部材23は、ロータコア6の外周よりも径方向外側から、隣合うマグネット5の間に挿入し、マグネット5をロータコア6の周方向及びロータコア6の径方向内側へ押圧する。そして、固定部材23は、接着剤を必要とせずにマグネット5を位置決めすることができる。
【0047】
上述したように、ロータコア6には、その外周部26である側面の隣り合うマグネット5の間に基準突起21と、固定部材23を装着するための装着突起22とがロータコア6の周方向に交互に配置されている。そして、基準突起21は、マグネット5の半数である。仮に、基準突起21を全て固定部材23で置き換える場合、固定部材がマグネット5を押圧する基準がなくなってしまう。これに対して、ブラシレスモータ1は、固定部材23が、ロータコア6と一体となった基準突起21に対して弾性力により常にマグネット5を予圧することができるため、マグネット5の周方向の位置決め精度がより向上する。
【0048】
また、上記構成により、ロータコア6が回転したときに、遠心力によりマグネット5がロータコア6の側面から離れることを抑制し、マグネット5をロータコア6に確実に固定することができる。また、固定部材23は、マグネット5をロータコア6の周方向及びロータコアの径方向内側へ押圧することから、公差の基準が基準突起21となり、後から挿入するマグネット5に対しての組み付け寸法の公差が累積する恐れを低減できる。その結果、ブラシレスモータ1は、ロータ10の組み立てに時間を短縮することができる。なお、押圧部23aは、マグネット5の外周の曲面5bの曲率に沿っていることがより好ましい。この構成により、マグネット5の位置決めが確実になる。
【0049】
固定部材23は、例えば、ステンレス鋼等のばね性を有した非磁性金属、合成樹脂製またはゴムなどの弾性体の非磁性材料で構成されている。例えば、固定部材23が、ばね性を有した非磁性金属または合成樹脂で構成されていると、マグネット5に対して組み付け時に弾性変形して挟持部23bが装着突起22を挟み込むため、組み付け性が向上する。また、合成樹脂は金属に比較して比重が軽いので、ブラシレスモータ1は、ロータ10の慣性(イナーシャ)の影響を低減することができる。合成樹脂は、例えば、ポリブチレンテレフタレート(polybutylene terephthalate:PBT)、ポリエチレンテレフタレート(Polyethylene terephthalate:PET)、ポリフェニレンサルファイド(Polyphenylene Sulfide:PPS)、ポリエーテルサルフォン(Polyether Sulphone:PES)等がある。
【0050】
固定部材23は、磁性材料で構成されていてもよい。磁性材料で構成された固定部材23は、マグネット5の間に固定部材23の外周(ロータコアの径方向外側)に生じる磁気的凹凸を生じさせる。この磁気的凹凸はリラクタンストルクを生じさせ、ブラシレスモータ1は、トルクを向上することができる。リラクタンストルクを作用させる場合、固定部材23(または装着突起22)及び基準突起21は、マグネット5の中心軸Zrの軸方向に延在する方向に沿って延在することが好ましい。リラクタンストルクを作用させる場合、固定部材23(または装着突起22)及び基準突起21は、マグネット5の中心軸Zrの軸方向の長さの全長と同程度であることがより好ましい。ここで同程度とは、同じ長さに加え、公差、誤差を含む。また、固定部材23は、ロータコア6と同様の磁性材料である電磁鋼板、冷間圧延鋼板などの薄板で構成されていてもよい。この構成により、固定部材23と、ロータコア6とを同じ材料から製造できるので、材料コストを低減し、または、製造工程を短縮することで製造コストを低減できる。
【0051】
このような構成により、マグネット5をロータコア6に確実に固定することができるので、ロータコア6を覆うロータカバー25を設ける必要がなく、ロータ10をモータ1内のスペースが狭い場合にも適用することができる。そのため、モータ1を小型化できる。また、
図9に示すように、マグネット5の割れや欠けが発生した場合、この飛散を防止するために、マグネット5を覆うロータカバー25を設けてもよい。
【0052】
固定部材23をロータコア6とは別部材としているため、固定部材23をロータコア6から軸方向にとり外すことができ、固定部材23又はマグネット5を修理・交換することが容易となる。
【0053】
次に、実施形態1に係るロータ10の製造方法について
図6から
図9を用いて説明する。先ず、製造装置は、
図6に示すロータコア6を準備する手順を行う。基準突起21及び装着突起22は、ロータコア6と同じ材料で、ロータコア6の型抜き加工と同時加工で形成され、ロータコア6と一体となる。これにより、基準突起21の位置精度を高めることができるため、基準突起21が固定部材23の取付時の基準となることができる。
【0054】
次に、
図7に示すように、製造装置は、ロータコア6のマグネット取り付け面6aに、マグネット5の底面の曲面5aを合わせ、マグネット5の周方向の端部を挿入部21hに挿入していく手順を行う。
【0055】
次に、
図8に示すように、製造装置は、ロータコア6の外周よりも径方向外側から、隣合うマグネット5の間に固定部材23を挿入し、挟持部23bを装着突起22に取り付けて、マグネット5をロータコア6の周方向及びロータコア6の径方向内側へ押圧する手順を行う。固定部材23が、ロータコア6と一体となった基準突起21に対して弾性力によりマグネット5を常に予圧する。このためマグネット5の周方向の位置決め精度がより向上する。また、ロータ10の製造方法は、固定部材23がロータコア6の径方向内側へ押圧するため接着剤を使用しなくてもよく、接着剤が硬化する時間分の製造時間を短縮することができる。
【0056】
ここで、
図8に示すように、マグネット5の周方向の端部をロータコア6の全ての挿入部21hに挿入してから、固定部材23をロータコア6に固定してもよいし、1つの装着突起22の周方向両側のマグネット5をロータコア6の挿入部21hに挿入してから、挿入したマグネット5毎に、固定部材23をロータコア6に固定してもよい。以上の手順により、
図5に示すロータ10が製造できる。また、このロータ10のマグネット5を覆うように、
図9に示すロータカバー25を設けてもよい。
【0057】
本実施形態の製造方法は、ロータコア6の外周部の基準突起21の挿入部21hに、ロータコア6の周方向に向かって複数のマグネット5を挿入し、かつマグネット5を配列して設けるマグネット配列手順と、マグネット5に対して固定部材23をロータコア6に固定する固定手順と、を含み、マグネット配列手順と固定手順と繰り返してブラシレスモータ用のロータ10を製造する。以上説明した製造方法によれば、接着剤を必要とせず、低コストかつ確実にマグネット5をロータコア6に固定することができる。これにより、マグネット5をロータコア6の外周部に配置する作業が容易になる。
【0058】
(変形例)
図10は、実施形態1に係るブラシレスモータのロータの変形例の構成を示す側面図である。ロータ10aにおいては、マグネット5は、マグネット5の中心軸Zrの軸方向の長さの一部の長さを有する基準突起21及び固定部材23によりロータコア6の側面に固定されている。固定部材23は、上述したように、装着突起22に装着され固定されている。本変形例では、基準突起21及び固定部材23がマグネット保持部20A、20Bとして、ロータコア6の側面に固定されて複数のマグネット5の中心軸Zrの軸方向に離れて複数配置されている。マグネット5の中心軸Zrの軸方向に離れて複数のマグネット保持部20A、20Bを配置することにより、ロータコア6の外周のマグネット5の固定を安定させることができる。また、基準突起21及び固定部材23の体積が抑制されるので、製造原価を低減し、ロータ10を安価とすることが容易となる。
【0059】
実施形態1及び変形例に係るブラシレスモータ1は、ロータ10又はロータ10aと、ロータ10の外側に所定の間隔を有して環状に配置されるステータ9と、ステータ9を保持する筐体であるハウジング2Aと、を含む。そして、ロータ10又はロータ10aは、ロータコア6と、ロータコア6の外周部26に設けられて、ロータコア6の周方向に向かって配列される複数のマグネット5と、基準突起21と、固定部材23とを含む。
【0060】
基準突起21は、ロータコア6と一体であって、かつ隣合うマグネット5の間の外周部から、ロータコア6の径方向外側に突出すると共に、一方のマグネット5の端部と接する。基準突起21は、マグネット5の半数である。そして、固定部材23は、基準突起21のない、隣合うマグネット5の間のロータコア6の外周部26に配置し、接するマグネット5の端部をロータコア6の周方向及びロータコア6の径方向内側へ押圧する。
【0061】
これにより、実施形態1に係るロータ10又は変形例に係るロータ10aを備えるブラシレスモータ1は、マグネット5の取付精度を高めることができる。つまり、固定部材23がマグネット5をロータコア6の周方向及び径方向内側に圧力を加えて固定する。そして、基準突起21にマグネット5が押しつけられて、マグネット5の周方向の位置決め精度が向上する。このため、マグネット5の位置ずれにより、実施形態1に係るロータ10又は変形例に係るロータ10aが振動するおそれを低減できる。その結果、ブラシレスモータ1は、トルクリップルまたはコギングトルクを抑制することができる。
【0062】
また、ロータ10またはロータ10aが回転したときに、遠心力によりマグネット5がロータコア6の側面から離れることを抑制し、マグネット5をロータコア6に確実に固定することができる。また、ロータ10またはロータ10aの組み立てには、接着剤を必要とせず、低コストかつ確実にマグネット5をロータコア6に固定することができる。これにより、マグネット5をロータコア6の外周部に配置する作業が容易になる。
【0063】
本実施形態の電動パワーステアリング装置100は、車両のステアリング機構に補助操舵力を付与するブラシレスモータ1を含み、ステアリング機構に対する操舵トルクと車速とを少なくとも用いて演算した操舵補助指令値に基づいてブラシレスモータ1を駆動制御する。
【0064】
上記構成により、電動パワーステアリング装置100は、ブラシレスモータ1が備えるマグネット5の取付精度を高めることができる。そして、ブラシレスモータ1は、作動音や振動を低減できる。このため、電動パワーステアリング装置100は、ブラシレスモータ1の作動音または振動に伴い減速装置111など他の部材と共振することを抑制することができる。その結果、操舵者は、違和感なく電動パワーステアリング装置100を操舵することができる。
【0065】
(実施形態2)
図11から
図13を用いて、実施形態2に係るロータの構成を説明する。
図11は、実施形態2に係るブラシレスモータのロータの構成を説明するための説明図である。
図12は、
図11に示すロータの固定部材を示す正面図である。
図13は、実施形態2に係るブラシレスモータのロータのマグネットを覆う飛散防止カバーを示す正面図である。
図11に示すように、ロータ10bは、固定部材23Aがロータコア6A内に楔状の凹部24に挿入され固定される。なお、上述した実施形態で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0066】
図11に示すように、基準突起21Aは、中心軸Zrの軸方向を含む平面でみて、ロータコア6の外周部である側面の隣り合うマグネット5の間を起点として中心軸Zrから離れる方向に突出する基準突起基部21bと、基準突起基部21bよりも周方向に延伸する基準突起頂部21tと、マグネット5の少なくとも一部が挿入可能な挿入部21hと、を含む。
【0067】
また、固定部材23Aは、ロータコア6の外周部である側面の隣り合うマグネット5の間に取り付け、マグネット5を基準突起21A側及びマグネット取り付け面6a側に押圧する押圧部材である。固定部材23Aは、
図12に示すように、マグネット5を押圧する押圧部23tと、一対の押圧部23tを支持する固定基部23dと、固定基部23dの一部であって、ロータコア6の楔状の凹部24に挿入して固定する固定部23fと、を含む。挿入部23hは、固定基部23d及び押圧部23tで構成する周方向の一面が開口する凹部である。押圧部23tは、固定基部23dの両側に伸びる一対の部材であり、回転軸Zrの軸方向を含む平面と平行な平面で切断したときに生じる、挿入部23hの断面が、マグネット5の上面の曲面5bに沿っている。
【0068】
固定部23fは、スリット23sで切り欠きを備えていることが好ましい。この構成により、固定部23fは、ロータコア6の楔状の凹部24に挿入される場合、スリット23sの間隔が縮む変形をすることで幅の狭い凹部24の入り口を通過できる。そして、幅の狭い凹部24の入り口を通過した固定部23fの変形が戻り、固定部23fが凹部24から抜けにくくなる。このため、固定部23f及びロータコア6の楔状の凹部24は、固定部材23Aをロータコア6に固定する固定機構となる。凹部24内部には、固定部材23Aを凹部24内に挿入する位置を案内する案内突起22Aを備えていることがより好ましい。案内突起22Aは、固定部材23Aを凹部24内に挿入する場合、スリット23s内部に挿入することで、挿入位置を規制することができる。なお、案内突起22Aは、ロータコア6の一部分として構成すると、固定部材23Aの取付基準のばらつきが小さくなる。
【0069】
そして、固定部23fは、凹部24に挿入されると、中心軸Zrの軸方向を含む平面でみて、中心軸Zrから離れる方向の力では解除不能なように固定部23fが凹部24と嵌め合わされる。この場合、固定部材23Aの押圧部23tは、ロータコア6に固定した場合にマグネット5の曲面5bの一部を覆う。また、
図12に示す固定部材23Aの径方向外側の表面23rは、固定部材23Aをロータコア6Aに固定した場合、中心軸Zrの軸方向を含む平面でみて、中心軸Zrから円弧を描いた曲率と同じ曲率とすることが寄り好ましい。
図13に示すように、基準突起21Aの径方向外側の表面21rも、中心軸Zrの軸方向を含む平面でみて、中心軸Zrから円弧を描いた曲率と同じ曲率とすれば、ロータ10bの外周部が円弧に近くなり回転が滑らかとなる。その結果、ブラシレスモータ1は、トルクリップルまたはコギングトルクを抑制することができる。
【0070】
固定部材23Aは、磁性材料で構成されていてもよい。磁性材料で構成された固定部材23Aは、マグネット5の間に固定部材23Aの外周(ロータコア6Aの径方向外側)に生じる磁気的凹凸を生じさせる。この磁気的凹凸はリラクタンストルクを生じさせ、ブラシレスモータ1は、トルクを向上することができる。リラクタンストルクを作用させる場合、固定部材23A及び基準突起21Aは、マグネット5の中心軸Zrの軸方向に延在する方向に沿って延在することが好ましい。リラクタンストルクを作用させる場合、固定部材23A及び基準突起21Aは、マグネット5の中心軸Zrの軸方向の長さの全長と同程度であることがより好ましい。ここで同程度とは、同じ長さに加え、公差、誤差を含む。また、固定部材23Aは、ロータコア6Aと同様の磁性材料である電磁鋼板、冷間圧延鋼板などの薄板で構成されていてもよい。固定部材23Aがロータコア6と同様の磁性材料である電磁鋼板、冷間圧延鋼板などの同じ材料である場合、製造装置はロータコア6Aと共に固定部材23Aを製造することができる。これにより、ロータ10bの製造方法は、製造工程を短縮することで製造コストを低減できる。なお、固定部材23Aは、例えば、ステンレス鋼等のばね性を有した非磁性金属、合成樹脂製またはゴムなどの弾性体の非磁性材料で構成されていてもよい。
【0071】
図13に示すように、マグネット5の割れや欠けが発生した場合、この飛散を防止するために、マグネット5を覆うロータカバー25を設けてもよい。ロータカバー25は、例えば、熱収縮チューブなどである場合、マグネット5を覆うロータカバー25を設けても固定部材23Aがロータカバー25の熱収縮による変形を抑制し、ロータカバー25の外周の凹凸を低減することができる。このため、ロータカバー25の外周の凹凸に異物等を含むおそれが低減し、故障のおそれを低減することができる。
【0072】
(実施形態3)
図14及び
図15を用いて、実施形態3に係るロータ10cの構成を説明する。
図14は、実施形態3に係るブラシレスモータのロータコアの構成を示す正面図である。
図15は、
図14に示すロータのマグネットを覆う飛散防止カバーを示す正面図である。
図14に示すように、固定部材23Bは、固定部材23Bの径方向外側にロータコア6Bの回転軸Zrと平行な方向に伸びる溝部23mを設け、溝部23mの径方向外側が広げられるように変形している。なお、上述した実施形態で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0073】
固定部材23Bは、ロータコア6の外周部である側面の隣り合うマグネット5の間に一体となっていて、マグネット5を基準突起21A側及びマグネット取り付け面6a側に押圧する押圧部材である。固定部材23Bは、
図14に示すように、マグネット5を押圧する押圧部23tと、一対の押圧部23tを支持する固定基部23eと、固定基部23eの一部であって、径方向外側の表面に設けられ、かつロータコア6の回転軸と平行な方向に伸びる溝部23mとを含む。挿入部23hは、固定基部23e及び押圧部23tで構成する周方向の一面が開口する凹部である。押圧部23tは、固定基部23eの両側に伸びる一対の部材であり、回転軸Zrの軸方向を含む平面と平行な平面で切断したときに生じる、挿入部23hの断面が、マグネット5の上面の曲面5bに沿っている。
【0074】
固定部材23Bは、ロータコア6と同様の磁性材料である電磁鋼板、冷間圧延鋼板などの磁性材料で構成されている。磁性材料で構成された固定部材23Bは、マグネット5の間に固定部材23Bの外周(ロータコアの径方向外側)に生じる磁気的凹凸を生じさせる。この磁気的凹凸はリラクタンストルクを生じさせ、ブラシレスモータ1は、トルクを向上することができる。リラクタンストルクを作用させる場合、固定部材23B及び基準突起21Aは、マグネット5の中心軸Zrの軸方向に延在する方向に沿って延在することが好ましい。リラクタンストルクを作用させる場合、固定部材23B及び基準突起21Aは、マグネット5の中心軸Zrの軸方向の長さの全長と同程度であることがより好ましい。ここで同程度とは、同じ長さに加え、公差、誤差を含む。
【0075】
実施形態3に係るブラシレスモータ1は、ロータ10cが基準突起21Aと、固定部材23Bとを含む。基準突起21Aは、ロータコア6と一体であって、かつ隣合うマグネット5の間の外周部から、ロータコア6の径方向外側に突出すると共に、一方のマグネット5の端部と接する。基準突起21Aは、マグネット5の半数である。そして、固定部材23Bは、基準突起21Aのない、隣合うマグネット5の間のロータコア6の外周部に配置する。固定部材23Bの溝部23mに対して圧力を加え溝部23mの径方向外側の端部間距離Δmを広げるカシメ加工を行う。カシメ加工により変形した固定部材23Bの固定基部23eは周方向に広がり、押圧部23tが接するマグネット5の端部をロータコア6の周方向及びロータコア6の径方向内側へ押圧する。
【0076】
特許文献1に記載した技術では、マグネットホルダはロータコア6の周方向にしか押圧できないため、接着剤が必要であった。これに対し、実施形態3に係るブラシレスモータ1は、押圧部23tが接するマグネット5の端部をロータコア6の周方向及びロータコア6の径方向内側へ押圧することができる。
【0077】
実施形態3に係るロータ10cは、上述したカシメ加工の前に、ロータコア6のマグネット取り付け面6aに、マグネット5の底面の曲面5aを合わせて取り付けるために、挿入部21hと挿入部23hの間の空間に対してロータコア6の中心軸Zrと平行な軸方向にマグネット5を挿入する。
【0078】
図14に示すように、固定部材23Bは、ロータコア6の外周部である側面の隣り合うマグネット5の間に取り付けられ、マグネット5を基準突起21A側及びマグネット取り付け面6a側に押圧することができる。また、
図15に示すように、マグネット5の割れや欠けが発生した場合、この飛散を防止するために、マグネット5を覆うロータカバー25を設けてもよい。
【0079】
以上説明した実施形態1から実施形態3に係る変形例として、ロータコア6の中心軸Zrの軸方向と平行である対称軸が、ロータコア6の周方向のうち決まった一方向に少しずつずれるようにして各ロータユニットが積み重ねられているようにしてもよい。すなわち、複数のマグネット5Aは、ロータコア6の中心軸と平行な方向に向かってロータコア6の外周上に階段状に配置されている。このようなマグネットの配列を、スキュー配列という。マグネット5Aをスキュー配列することによって、トルク変動を少なくすることができる。
【0080】
以上説明した実施形態1から実施形態3に係る他の変形例として、マグネット5が、円柱をその軸方向を含む平面と平行な平面で切断したときに生じる、底面の曲面5aが直線状であってもよい。この場合、上述したマグネット取り付け面6aは、マグネット5の底面に沿って直線状である。この変形例によれば、ロータコア6とマグネット5との間に生じる漏れ磁界が抑制される。
【0081】
なお、以上説明した実施形態では、ブラシレスモータ1を電動パワーステアリング装置100に適用した例を説明するが、適用対象は電動パワーステアリング装置に限定されるものではない。また、ブラシレスモータ1を電動パワーステアリング装置100に適用する場合でも、その方式は問わない。すなわち、電動パワーステアリング装置100は、コラムアシスト方式を例にして説明しているが、ピニオンアシスト方式及びラックアシスト方式についても上述したブラシレスモータ1を適用することができる。