(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車体前面を構成するフロントバンパに形成された取付孔に取り付けられるラジエータグリルと、該ラジエータグリルの背面側に取り付けられるラジエータグリルカバーとを備える車体前部構造であって、
下方に延びるホーンハーネスを有し前記フロントバンパの後方で前記取付孔の近傍に配置され警笛音を出力するホーンをさらに備え、
前記ラジエータグリルは、
前記フロントバンパの取付孔の形状に対応した形状を有し該ラジエータグリルの外周を構成するグリル外周枠と、
前記グリル外周枠の上壁と下壁との間に縦方向に延びて該グリル外周枠内の空間を分割する複数のグリル縦壁とを有し、
前記ラジエータグリルカバーは、
車幅方向では前記グリル外周枠と等しい幅を有し該ラジエータグリルカバーの外周を構成するカバー外周枠と、
車幅方向において前記グリル縦壁と同じ位置に配置され前記カバー外周枠の上壁と下壁との間に縦方向に延びて該カバー外周枠内の空間を分割する複数のカバー縦壁とを有し、
前記カバー外周枠の両側壁のうち、前記ホーンの近傍側の側壁は、水平方向の断面視において、該ホーンの近傍側の側壁に隣接するカバー縦壁と車幅方向で同じ位置に配置されているグリル縦壁の前端と、前記ホーンハーネスとを結ぶ直線に交わりさらに後方まで延びていることを特徴とする車体前部構造。
車体前面を構成するフロントバンパに形成された取付孔に取り付けられるラジエータグリルと、該ラジエータグリルの背面側に取り付けられるラジエータグリルカバーとを備える車体前部構造であって、
前記フロントバンパの後方で前記取付孔の下方に配置され車体前部において車幅方向の骨格を構成する車体構造部材をさらに備え、
前記ラジエータグリルは、
前記フロントバンパの取付孔の形状に対応した形状を有し該ラジエータグリルの外周を構成するグリル外周枠と、
前記グリル外周枠の両側壁間に横方向に延びて該グリル外周枠内の空間を分割する複数のグリル横壁とを有し、
前記ラジエータグリルカバーは、車幅方向では前記グリル外周枠と等しい幅を有し該ラジエータグリルカバーの外周を構成するカバー外周枠を有し、
前記カバー外周枠の下壁は、
車体高さ方向において前記グリル外周枠の下壁と同じ位置または該グリル外周枠の下壁より下方に配置され、
車体側方での垂直方向の断面視において、前端が、前記グリル外周枠の下壁の後端と前記車体構造部材の上部の前端とを結ぶ直線と交わる位置より前方まで延びていて、後端が、該グリル外周枠の下壁に隣接するグリル横壁の前端と前記車体構造部材の上部の後端とを結ぶ直線に交わりさらに後方まで延びていることを特徴とする車体前部構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、一般に車体前部には、フロントバンパの背面側にホーン(クラクションとも称される)が配置される。このホーンからの警笛音は、ラジエータグリルに外気取入口として形成された開口部を通じて車外に伝播される。かかるホーンは車両の盗難防止用の警報装置としての機能を兼ねている場合があり、この場合、ラジエータグリルの開口部から刃物を差し込むことにより、ホーンに接続されているホーンハーネス(以下、ハーネスと称する)が切断され、ホーンの警報装置としての機能が失われることがある。
【0005】
上記課題を解決する手段としては、ラジエータグリルにおいて、ホーン近傍の開口部を封止することが考えられる。しかし、この方法であると、ラジエータを冷却するための空気を取り入れる外気取入口の面積が減少してしまうため、ラジエータの冷却性能を低下させるおそれがある。他の方法としては、ホーンを増設したり、高出力のホーンに変更したりする方法が考えられるが、この方法であるとコストの著しい増大を招いてしまう。
【0006】
またラジエータグリルでは、外気取入口である開口部から、車体色に塗装されてエンジンルーム内に配置された車体構造部材が観察されてしまい、外観品質を損なうことが課題となっていた。これを解決する方法としては、車体構造部材において、ラジエータグリルの開口部から観察されうる領域を黒く塗装することが挙げられる。しかし、この方法であると、工程数が増えるため製造コストが増大してしまう。他の方法としては、車体構造部材において、ラジエータグリルの開口部から観察されうる領域に黒色の艤装部品を設置することが考えられるが、この方法であると、コストの増大を招く上に、ラジエータグリルの意匠(形状)によって艤装部品の組付けの要否が分かれる。すなわち部品の組み分ける必要が生じるため、製造ラインでの作業者の負担が増え、誤組付けを招く原因となる。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑み、製造上および性能面での不具合やコストの増大を招くことなく、ハーネスの切断や外観品質の低下を防ぐことが可能な車体前部構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明にかかる車体前部構造の代表的な構成は、車体前面を構成するフロントバンパに形成された取付孔に取り付けられるラジエータグリルと、ラジエータグリルの背面側に取り付けられるラジエータグリルカバーとを備える車体前部構造であって、下方に延びるホーンハーネスを有しフロントバンパの後方で取付孔の近傍に配置され警笛音を出力するホーンをさらに備え、ラジエータグリルは、フロントバンパの取付孔の形状に対応した形状を有しラジエータグリルの外周を構成するグリル外周枠と、グリル外周枠の上壁と下壁との間に縦方向に延びてグリル外周枠内の空間を分割する複数のグリル縦壁とを有し、ラジエータグリルカバーは、車幅方向ではグリル外周枠と等しい幅を有し該ラジエータグリルカバーの外周を構成するカバー外周枠と、車幅方向においてグリル縦壁と同じ位置に配置されカバー外周枠の上壁と下壁との間に縦方向に延びてカバー外周枠内の空間を分割する複数のカバー縦壁とを有し、カバー外周枠の両側壁のうち、ホーンの近傍側の側壁は、水平方向の断面視において、ホーンの近傍側の側壁に隣接するカバー縦壁と車幅方向で同じ位置に配置されているグリル縦壁の前端と、ホーンハーネスとを結ぶ直線に交わりさらに後方まで延びていることを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、グリル外周枠内の空間、すなわち外気取入口である開口部からホーンハーネスまでの経路が、ホーンハーネスの近傍に配置されるカバー縦壁によって遮られる。これにより、グリル外周枠内の空間(開口部)から刃物が差し込まれても、かかる刃物のホーンハーネスへの到達を防ぎ、ホーンハーネスの切断を防止することができる。
【0010】
また上記構成であれば、グリル外周枠内においてホーンハーネスの近傍の空間(開口部)が塞がれないため、外気取入口の面積を減少させることがない。したがって、ラジエータの冷却性能の低下を防ぎ、性能面での不具合の発生を回避することが可能である。更にホーンからの警笛音の車外への伝播を妨げることもないため、ホーンの増設や、高出力のホーンへの変更のようなコストの増大を招くことなく、低コストでホーンハーネスの切断を防止することが可能である。
【0011】
上記課題を解決するために、本発明にかかる車体前部構造の他の構成は、車体前面を構成するフロントバンパに形成された取付孔に取り付けられるラジエータグリルと、ラジエータグリルの背面側に取り付けられるラジエータグリルカバーとを備える車体前部構造であって、フロントバンパの後方で取付孔の下方に配置され車体前部において車幅方向の骨格を構成する車体構造部材をさらに備え、ラジエータグリルは、フロントバンパの取付孔の形状に対応した形状を有しラジエータグリルの外周を構成するグリル外周枠と、グリル外周枠の両側壁間に横方向に延びてグリル外周枠内の空間を分割する複数のグリル横壁とを有し、ラジエータグリルカバーは、車幅方向ではグリル外周枠と等しい幅を有しラジエータグリルカバーの外周を構成するカバー外周枠を有し、カバー外周枠の下壁は、車体高さ方向においてグリル外周枠の下壁と同じ位置またはグリル外周枠の下壁より下方に配置され、車体側方での垂直方向の断面視において、前端が、グリル外周枠の下壁の後端と車体構造部材の上部の前端とを結ぶ直線と交わる位置より前方まで延びていて、後端が、グリル外周枠の下壁に隣接するグリル横壁の前端と車体構造部材の上部の後端とを結ぶ直線に交わりさらに後方まで延びていることを特徴とする。
【0012】
上記構成によれば、ラジエータグリル上方からの視界が、カバー外周枠の下壁によって遮られ、車体構造部材を外部から観察できなくなる。したがって、工程数やコストの増大を招くことなく、良好な外観品質を維持することが可能である。また上記構成では、ラジエータグリルカバーはラジエータグリルに取り付けられる。したがって、従来のように車体側に艤装部品を取り付けていた場合に生じていた誤組付けを防ぐことができる。
【0013】
更に、上述したようにカバー外周枠の下壁が車体前後方向に向かって延びていることにより、ラジエータグリルの開口部から車体前部に流入した空気が整流される。これにより、車体前部に流入した空気を効率的にラジエータに送風することができ、冷却性能の向上を図ることが可能である。
【0014】
上記ラジエータグリルは、エンブレムが取り付けられるエンブレム取付部を前面に有し、ラジエータグリルカバーは、少なくともエンブレム取付部の裏側においてラジエータグリルに取り付けられるとよい。かかる構成によれば、ラジエータグリルにおいてエンブレム取付部の剛性を向上させることができる。これにより、エンブレムへの接触によるラジエータグリルの変形を抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、製造上および性能面での不具合やコストの増大を招くことなく、ハーネスの切断や外観品質の低下を防ぐことが可能な車体前部構造を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0018】
図1は、本実施形態にかかる車体前部構造100の分解斜視図である。
図1に示すように、本実施形態の車体前部構造100では、フロントバンパ110によって車体前面を構成されている。このフロントバンパ110の後方には、複数の車体構造部材が接合されることにより、車体前部構造100の骨格が形成されている。なお、以下に詳述する車体前部構造100の骨格については、理解を容易にするための例示にすぎず、これに限定するものではない。
【0019】
車体前部構造100において、車幅方向の上方の骨格はフードロックメンバ122によって構成され、かかるフードロックメンバ122の下方には、車幅方向の下方の骨格を構成するラジエータサポートロアメンバ(不図示)が配置されている。フードロックメンバ122とラジエータサポートロアメンバは、車幅方向の中央近傍では、フードロックブレース124によって接合されている。またフードロックメンバ122とラジエータサポートロアメンバは、車幅方向の両端ではランプサポートブレース126a・126bによって接合されている。
【0020】
上記のランプサポートブレース126a・126bの前面には、ランプサポートメンバ128a・128bの後端が接合されている。またランプサポートメンバ128a・128bの下方では、エプロンサイドメンバ130a・130bの後端がランプサポートブレース126a・126bの前面に接合されている。ランプサポートメンバ128a・128bの前端にはフロントロアクロスメンバ132の両端が接合され、エプロンサイドメンバ130a・130bの前端にはフロントバンパメンバ134が接合される。これらの部材により、車体前部構造100の骨格が形成される。
【0021】
また車体前部構造100には、エンジン(不図示)を冷却するためのラジエータ140が配置されている。かかるラジエータ140は、上述したフードロックメンバ122およびラジエータサポートロアメンバに固定される。更に本実施形態では、上述した複数の車体構造部材により形成される骨格と、かかる骨格の前方に配置されるフロントバンパ110との間、すなわちフロントバンパ110の後方に、警笛音を出力するホーン142が配置されている。このホーン142には、それに電力を供給するホーンハーネス(以下、ハーネス142aと称する)が接続され、かかるハーネス142aが下方に延びている。
【0022】
図2は、本実施形態にかかる車体前部構造100の拡大斜視図であり、
図2(a)は
図1に示す各部材を組み付けた状態の斜視図であり、
図2(b)は
図2(a)の正面図である。
図1に示すように、車体前部構造100では、フロントバンパ110に取付孔110aが形成されていて、この取付孔110aに、後述するラジエータグリルカバー160が背面側に取り付けられたラジエータグリル150が取り付けられる。これにより、車体前部構造100は
図2に示す状態となる。
【0023】
図3は、
図1に示すラジエータグリル150およびラジエータグリルカバー160の詳細図であり、
図3(a)は
図1のラジエータグリル150およびラジエータグリルカバー160の拡大斜視図であり、
図3(b)は
図3(a)のラジエータグリルカバー160の背面斜視図である。
【0024】
図3(a)に示すように、ラジエータグリル150は、フロントバンパの取付孔110a(
図1参照)の形状に対応した形状のグリル外周枠152によって外周が構成される。本実施形態では、ラジエータグリル150においてグリル外周枠152の上壁152aと下壁152bの間には、縦方向に複数(本実施形態では9つ)のグリル縦壁154a〜154iが延設されている。これにより、グリル外周枠152内の空間(開口部)が車幅方向で10列に分割される。またラジエータグリル150においてグリル外周枠152の側壁152c・152d(両側壁)の間には、横方向に複数(本実施形態では2つ)のグリル横壁156a・156bが延設されている。これにより、グリル外周枠152内の空間が車体高さ方向で3行に分割される。
【0025】
すなわち本実施形態のラジエータグリル150では、グリル縦壁154a〜154iおよびグリル横壁156a・156bによってグリル外周枠152内の空間が30個の小さい空間に分割されている。そして、この30個の小さい空間が、外気取入口となる開口部として機能し、ラジエータ140を冷却するための空気がエンジンルーム(不図示)に取り入れられる。
【0026】
またラジエータグリル150の前面にはエンブレム取付部158が設けられていて、このエンブレム取付部158にエンブレム170が取り付けられることにより、
図2(a)に示す状態となる。一方、ラジエータグリル150の背面には、上述したようにラジエータグリルカバー160が取り付けられる。
【0027】
図3(a)に示すように、ラジエータグリルカバー160は、車幅方向でグリル外周枠152と等しい幅を有するカバー外周枠162によって外周が構成される。かかるカバー外周枠162の車体高さ方向では、上壁162aが、グリル外周枠152のグリル横壁156bと同じ高さに位置し、下壁162bが、グリル外周枠152の下壁152bと同じ高さに位置する。すなわちラジエータグリルカバー160は、車体高さ方向ではラジエータグリル150のグリル横壁156bから下壁152bまでとほぼ同じ高さを有する。
【0028】
本実施形態において、ラジエータグリルカバー160は、車幅方向において、複数のグリル縦壁154a〜154iのうち、グリル縦壁154b・154c・154g・154hと同じ位置に、カバー外周枠162の上壁162aと下壁162bの間で縦方向に延びる複数(本実施形態では4つ)のカバー縦壁164a〜164dを有する。これにより、カバー外周枠162内の空間が車幅方向で6列に分割される。
【0029】
なお、本実施形態では、ラジエータグリル150において9つのグリル縦壁および2つのグリル横壁、ラジエータグリルカバー160において4つのカバー縦壁を有する構造を例示したが、これに限定するものではない。ラジエータグリル150のグリル縦壁およびグリル横壁、ならびにラジエータグリルカバー160のカバー縦壁の数については適宜変更することが可能である。
【0030】
図4は、
図2(b)の模式的な断面図であり、
図4(a)は
図2(b)のB−B断面図であり、
図4(b)は
図2(b)のC−C断面図であり、
図4(c)はラジエータグリルカバー160を備えない比較例としての従来の構成を例示するC´−C´断面図である。ここで、上述したように本実施形態の車体前部構造100にはホーン142が設置されている(
図1参照)。このホーン142が、
図2(b)に示すようにフロントバンパ110の後方において取付孔110aの近傍に配置されている場合、グリル縦壁154aおよび154bの間から刃物(不図示)が差し込まれ、ハーネス142a(
図1参照)を切断されるおそれがあった。
【0031】
そこで本実施形態では、上述したハーネス142aの切断を防ぐために、カバー外周枠162の側壁162c・162d(両側壁)のうち、ホーン142(
図2(b)参照)の近傍側の側壁162cを車体後方に向かって延長している。詳細には、カバー外周枠162においてホーン142の近傍側の側壁162cは、
図4(a)に示すように、水平方向の断面視において、かかる側壁162cに隣接するカバー縦壁164aと車幅方向で同じ位置に配置されているグリル縦壁154bの前端と、ハーネス142aとを結ぶ直線200a(
図4(a)に破線にて図示)と交わる位置P1より後方まで延びている。すなわちホーン142の近傍側の側壁162cは、ラジエータグリル150(厳密にはグリル外周枠152)のグリル縦壁154aおよび154bの間(開口部)からハーネス142aが見えない長さに設定されている。
【0032】
上記構成によれば、ホーン142の近傍側の側壁162cが邪魔板となり、グリル外周枠152のグリル縦壁154aおよび154bの間(開口部)からハーネス142aまでの経路が遮られる。したがって、仮にグリル縦壁154aおよび154bの間(開口部)から矢印D1方向(
図4(a)に一点鎖線にて図示)に刃物が差し込まれても、かかる刃物がハーネス142aに到達できず、その切断を防ぐことができる。
【0033】
また、ハーネス142aの切断防止対策として従来設置されていた遮蔽板192(
図4(a)に二点鎖線にて図示)であると、グリル外周枠152のグリル縦壁154aおよび154bの間(開口部)が塞がれてしまっていたが、本実施形態の構成であれば、そこが塞がれることがない。したがって、外気取入口の面積を減少させることがないため、ラジエータ140の冷却性能の低下を防ぐことができ、性能面での不具合の発生を回避することができる。またホーン142からの警笛音の車外への伝播を妨げることもないため、ホーン142の増設や、高出力のホーンへの変更を要することなく、低コストでハーネス142aの切断を防止することが可能である。
【0034】
ここで、上述したように、車体前部構造100では、フロントバンパ110の後方に、複数の車体構造部材(フードロックメンバ122、フードロックブレース124、ランプサポートブレース126a・126b、ランプサポートメンバ128a・128b、エプロンサイドメンバ130a・130b、フロントロアクロスメンバ132、フロントバンパメンバ134)からなる骨格が形成されている(
図1参照)。これらの複数の車体構造部材のうち、フロントバンパ110の後方且つ取付孔110aの下方に配置される車体構造部材であるフロントロアクロスメンバ132は車体色に塗装されることがあり、このフロントロアクロスメンバ132が外部、すなわちラジエータグリル150の開口部から観察される(視認される)ことによる外観品質の低下が課題となっていた。
【0035】
そこで本実施形態では、上述したラジエータグリル150の開口部、特にグリル外周枠152のグリル横壁156bと下壁152bとの間の開口部からのフロントロアクロスメンバ132の視認を防ぐために、カバー外周枠162の下壁162bを車体前後方向に向かって延ばしている。
【0036】
詳細には、カバー外周枠162においてその下壁162bの前端は、
図4(b)に示すように、車体側方での垂直方向の断面視において、グリル外周枠152の下壁152bの後端とフロントロアクロスメンバ132(車体構造部材)の上部の前端とを結ぶ直線200b(
図4(b)に破線にて図示)と交わる位置P2より前方まで延びている。一方、カバー外周枠162においてその下壁162bの後端は、
図4(b)に示すように、車体側方での垂直方向の断面視において、グリル外周枠152の下壁152bに隣接するグリル横壁156bの前端とフロントロアクロスメンバ132(車体構造部材)の上部の後端とを結ぶ直線200c(
図4(b)に破線にて図示)と交わる位置P3より後方まで延びている。すなわちカバー外周枠162の下壁162bは、車体構造部材であるフロントロアクロスメンバ132がラジエータグリル150(厳密にはグリル外周枠152)の開口部から見えない長さに設定されている。
【0037】
上記構成によれば、カバー外周枠162の下壁162bが邪魔板となり、ラジエータグリル150のグリル外周枠152のグリル横壁156bと下壁152bとの間の開口部からの矢印D2方向(
図4(b)および(c)に一点鎖線にて図示)の視界が遮られる。したがって、フロントロアクロスメンバ132を外部から観察できなくなり、良好な外観品質を維持することが可能となる。
【0038】
また、フロントロアクロスメンバ132の視認防止対策として従来設置されていた遮蔽板194(
図4(c)に二点鎖線にて図示)であると、グリル外周枠152のグリル横壁156bと下壁152bとの間(開口部)が塞がれてしまっていたが、本実施形態の構成であれば、そこが塞がれることがない。したがって、上述したように外気取入口の面積の減少を防ぎ、ラジエータ140の冷却性能の低下ひいては性能面での不具合の発生を回避することが可能である。
【0039】
更に本実施形態の構成によれば、フロントロアクロスメンバ132の視認を防ぐために、従来行われていたフロントロアクロスメンバ132の上面132a(
図4(c)参照)の塗装や、フロントロアクロスメンバ132の上面132aへの艤装部品196(
図4(c)参照)の設置が不要である。したがって、部品数や工程数の増加、ひいてはそれに纏わるコストの増大を招くことなく、低コストでフロントロアクロスメンバ132の視認を防ぐことが可能である。
【0040】
また上記のようにカバー外周枠162の下壁162bが車体前後方向に向かって延びていることにより、
図4(b)に示すように、グリル外周枠152(ラジエータグリル150)の開口部から流入した空気202a〜202c(実線にて図示)のうち、特に下層の空気202cが整流され、ラジエータグリル150内部での下方への空気の拡散が防がれる。また同じく
図4(b)に示すように、ラジエータグリル150の後方にラジエータグリルカバー160が配置されていることで、特に上層の空気202aがカバー外周枠162の上壁162aによって整流され、ラジエータグリル150内部での上方への空気の拡散も防がれる。
【0041】
したがって、本実施形態のようにラジエータグリル150(グリル外周枠152)の後方にラジエータグリルカバー160(カバー外周枠162)を備えることにより、
図4(c)に示すようにラジエータグリルカバー160を備えない場合に生じるラジエータグリル150通過後の空気202a・202cの上方および下方への拡散を防ぎ、ラジエータグリル150内(車体前部)に流入した空気を効率的にラジエータ140(
図1参照)に送風することができる。したがって、ラジエータ140の冷却性能の向上を図ることが可能である。
【0042】
なお、本実施形態では、カバー外周枠162の下壁162bがグリル外周枠152の下壁152bとほぼ同じ高さに位置する構成を例示したが、これに限定するものではなく、グリル外周枠152の下壁152bより下方に位置してもよい。ただし、カバー外周枠162の下壁162bがグリル外周枠152の下壁152bよりも上方にある構成は、上述したフロントロアクロスメンバ132の視認防止効果を得難いため、望ましくは避けるべきである。
【0043】
図5は、
図2(a)の模式的な断面図であり、
図5(a)は
図2(a)のA−A断面図であり、
図5(b)はラジエータグリルカバー160を備えない比較例としての従来の構成を例示するA´−A´断面図である。
図5(a)に示すように、本実施形態のラジエータグリル150では、グリル外周枠152において側壁152c・152dの背面側にそれぞれ凹部159a・159bが形成されていて、エンブレム取付部158の背面側に凹部159cが形成されている。一方、同じく
図5(a)に示すように、ラジエータグリルカバー160では、カバー外周枠162において、グリル外周枠152の凹部159a〜159cに対応する位置に、挿入孔169a・169b・169cが形成されている。
【0044】
そして、凹部159cおよび169cに締結部材190cを挿入することにより、ラジエータグリルカバー160をラジエータグリル150に取り付ける。その後、凹部159a・159bおよび挿入孔169a・169bに締結部材190a・190bを挿入することにより、
図2に示すように、ラジエータグリルカバー160が取り付けられたラジエータグリル150がフロントバンパ110に取り付けられる。すなわち本実施形態の車体前部構造100では、ラジエータグリルカバー160が背面側に取り付けられたラジエータグリル150を、フロントバンパ110の取付孔110aに取り付ける構成としている。
【0045】
ここで、従来のようにフロントロアクロスメンバ132の上面132aすなわち車体側に艤装部品196を設置する構成であると(
図4(c)参照)、ラジエータグリル150の意匠(形状)によって艤装部品196の組付けの要否が分かれたとき(部品を組み分ける必要が生じたとき)に、製造ラインで作業を行う作業者がラジエータグリル150の形状に応じて艤装部品196の組付けの要否を判断しなければならない。すると、作業者の負担が増え、誤組付けを招くおそれがある。
【0046】
これに対し本実施形態では、上述したようにグリル外周枠152およびカバー外周枠162に設けられた凹部159cおよび挿入孔169c、すなわちラジエータグリル150およびラジエータグリルカバー160に設けられた取付構造によりラジエータグリルカバー160が背面側に取り付けられたラジエータグリル150を、フロントバンパ110の取付孔110aに取り付ける構成である。このような構成により、作業者は、ラジエータグリル150のグリル外周枠152に凹部159cが形成されていることで、かかるラジエータグリル150にはラジエータグリルカバー160を取り付ける必要があることを即座に認識可能である。したがって、作業者がラジエータグリルカバー160の組付けの要否を容易に判断することができるため、作業者の負担を軽減することができ、従来のように車体側(フロントロアクロスメンバ132)に艤装部品196を取り付けていた場合に生じていた誤組付けを防ぐことができる。
【0047】
特に本実施形態では、
図5(a)に示すグリル外周枠152の凹部159cおよびカバー外周枠162の169cによって、ラジエータグリルカバー160が、ラジエータグリル150においてエンブレム取付部158の裏側に取り付けられる。これにより、ラジエータグリル150においてエンブレム取付部158の剛性を向上させることができる。したがって、
図5(b)に示すようにラジエータグリルカバー160を備えない構成において、エンブレム170への接触によりラジエータグリル150を車体後方へ押す力204がかかった場合に生じていたラジエータグリルカバー160の撓みによる変形(
図5(b)に破線にて図示)を抑制することが可能となる。
【0048】
更に本実施形態においては、
図3(b)に示すように、カバー外周枠162において挿入孔169c近傍の下方にリブ180を形成している。これにより、挿入孔169c近傍の立設壁182a・182bが矢印206a・206b方向に、すなわち立設壁182a・182bが離れる方向に変形することを防ぐことができ、カバー外周枠162ひいてはラジエータグリルカバー160の強度向上を図ることが可能である。
【0049】
上記説明したように、本実施形態にかかる車体前部構造100によれば、カバー外周枠162の側壁162c・162d(両側壁)のうち、ホーン142の近傍側の側壁162cを車体後方に向かって延長することにより、それを邪魔板として機能させ、ハーネス142aの切断を防ぐことができる。またカバー外周枠162の下壁162bを車体前後方向に向かって延ばすことにより、フロントバンパ110の後方且つ取付孔110aの下方に配置される車体構造部材であるフロントロアクロスメンバ132の視認を防ぐことができ、良好な外観品質を維持することが可能である。
【0050】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。