【実施例1】
【0010】
まず、構成を説明する。
実施例1のインホイールモータ(駆動ユニットの一例)のブリーザ構造の構成を、「インホイールモータ構成」、「サスペンションユニット構成」、「ブリーザユニット構成」に分けて説明する。
【0011】
[インホイールモータ構成]
図1は、実施例1のブリーザ構造が適用されたインホイールモータの縦断側面図である。
図2は、
図1のA−A部における断面を示す断面図である。以下、
図1,2に基づいて、インホイールモータの構成を説明する。
【0012】
実施例1のインホイールモータIWMは、タイヤTを支持するホイール17の内側に設けられ、タイヤTを回転駆動するモータである。このインホイールモータIWMは、
図1に示すごとく、ホイール17の近傍に位置するユニットケース1を備えている。前記ユニットケース1は、
図1において右側から順にモータ側ケース部分2と、減速機側ケース部分3と、出力軸側ケース部分4とを有し、各ケース部分2,3,4を相互に合体させて構成する。
【0013】
モータ側ケース部分2には、電動モータ(駆動ユニット)5を収容し、この電動モータ5を環状のステータ6内に同心に配置したロータ7により構成する。
前記ステータ6は、コイル6aを巻線して具え、ステータ6の外周をモータ側ケース部分2の内周に圧入嵌着して固定する。
前記ロータ7は、積層鋼板7aと、その外周に埋設した永久磁石7bと、ロータ回転軸7cとよりなり、ロータ回転軸7cに設定したフランジ部7dの外周に積層鋼板7aを固設して構成する。そしてこのロータ7は、積層鋼板7aの外周に埋設した永久磁石7bがステータ6の内周面と正対する軸線方向位置に配置し、この位置に保ってロータ7(ロータ回転軸7c)を回転自在に支持する。
【0014】
上記フランジ部7dと減速機側ケース部分3との間には、ロータ7の回転を減速して出力する減速機(駆動ユニット)8を設ける。
前記減速機8は、ロータ回転軸7cに形成したサンギヤ9と、減速機側ケース部分3内に固定したリングギヤ10と、サンギヤ9に噛合する大径ピニオン部分およびリングギヤ10に噛合する小径ピニオン部分の一体成形になる3個の段付きピニオン11と、これら段付きピニオン11を回転自在に支持したキャリア12とより成る遊星歯車組で構成する。
【0015】
前記キャリア12は、3個の段付きピニオン11を円周方向等間隔に配置して回転自在に支持するもので、相互に対向するキャリアプレート12a,12bを具え、これらキャリアプレート12a,12bは、キャリアプレート12aからキャリアプレート12bまで軸線方向に延在する橋絡部12cを介してボルト12dにより相互に結合する。
そして、キャリアプレート12a,12b間に3個のピニオンシャフト12eを架設し、これらピニオンシャフト12eにそれぞれ段付きピニオン11を回転自在に支持する。
【0016】
さらに、ロータ回転軸7cには、同軸に配した出力軸13を設け、この出力軸13を出力軸側ケース部分4に貫通させると共に、出力軸側ケース部分4に対し軸線方向位置決めされた複列軸受14を介して出力軸側ケース部分4に回転自在に支持する。
出力軸側ケース部分4から突出する出力軸13の先端には、ブレーキドラム15をセレーション嵌合し、このブレーキドラム15を複列軸受14に突き当てる。さらに、出力軸13の先端に螺合させたローディングナット16によりブレーキドラム15を抜け止めし、ローディングナット16の緊締力により複列軸受14に予圧を付与する。
【0017】
以上により、出力軸13はブレーキドラム15とともに、出力軸側ケース部分4(ユニットケース1)に対し軸線方向に位置決めされた状態で回転自在に支持され、ブレーキドラム15にホイール17を取り付ける。
なお18は、ブレーキドラム15の内側開口を塞ぐよう配置して出力軸側ケース部分4に取り付けたバックプレート、19は、このバックプレート18に取り付けたホイールシリンダで、ホイールシリンダ19の液圧作動によりブレーキドラム15を制動し得るようにする。
【0018】
キャリア12を構成するキャリアプレート12a,12bのうち、出力軸13に近い側におけるキャリアプレート12bを出力軸13に一体成形し、これによりキャリア12を減速機8の出力要素として出力軸13に結合すると共にこれに支持する。
【0019】
ロータ回転軸7cは、サンギヤ9が形成された端部を出力軸13まで延在させ、段付きピニオン11よりも電動モータ5から遠い軸線方向位置においてロータ回転軸7cおよび出力軸13を相互に突き合わせ嵌合させる。
そして、この突き合わせ嵌合部においてロータ回転軸7cおよび出力軸13間にロータ軸受20を設け、ロータ回転軸7cを出力軸13に対し相対回転可能に支持する。
【0020】
減速機8から遠いロータ回転軸7cの端部は、別のロータ軸受21によりモータ側ケース部分2に回転自在に支持する。
当該別のロータ軸受21は、モータ側ケース部分2に貫通させて形成した開口内に嵌着し、この開口内には更に、スペーサ22、オイルキャッチャー23、およびプラグ24を順次挿置して、ロータ回転軸7cの対応端部に形成した盲孔型式の潤滑油孔25より減速機8に向け潤滑油を供給可能とする。
【0021】
ロータ回転軸7cおよびモータ側ケース部分2との間には、ロータ7の回転位置を検出して電動モータ5の駆動制御に資するレゾルバ26を設ける。このレゾルバ26は、ロータ回転軸7cと共に回転するようこれに取着した回転子26a、および、モータ側ケース部分2に取着した固定子26bにより構成する。
【0022】
なお、減速機8を構成する歯車をはすば歯車とした場合は、ロータ軸受20,21をアンギュラボ−ルベアリング等のスラスト荷重を支え得る軸受とするのが望ましい。また、ユニットケース1内には電動モータ5の冷却及び減速機8の潤滑を行うためのオイル(図示せず)を貯留する。
【0023】
[サスペンションユニット構成]
実施例1のサスペンションユニットSUSは、インホイールモータIWM及びタイヤTを車体側部材(図示せず)に揺動可能に支持する車輪支持装置であり、サスペンションメンバ30と、サスペンションアッパーアーム31と、サスペンションロアアーム32と、を備えている。
【0024】
前記サスペンションメンバ30は、例えばサイドメンバ等の車体側部材(図示せず)に固定され、サスペンションアッパーアーム31及びサスペンションロアアーム32を介してインホイールモータIWMを支持する。つまり、このサスペンションメンバ30は、車体に相当する。
【0025】
前記サスペンションアッパーアーム31は、インホイールモータIWMの上部を支持するサスペンションアームであり、アーム本体31aと、アーム本体31aの一端に設けられたモータ取付部(アーム側支持部)31bと、アーム本体31aの他端に設けられたメンバ取付部31cと、を有している。
前記アーム本体31aは、上下面及び左右面がすべて閉鎖された閉断面を有する中空鋼材から構成されている。また、このアーム本体31aは、モータ取付部31bの端部は閉鎖され、メンバ取付部31c側の端部は開放している。そして、アーム本体31aは、両端が上方にむかって湾曲した弓なり形状を呈しており、最も下方に位置する中間部には排油孔33が形成されている。この排油孔33は、アーム本体31a内に流入したオイルを排出する開口であり、排油パイプ(油流れ規制手段)34が設けられている。排油パイプ34は、可撓性を有するゴムにより形成され、先端34aがサスペンションメンバ30の下部に固定されている。
前記モータ取付部31bは、インホイールモータIWMのユニットケース1の外側面に設けられた上側ブラケット(ユニット側ブラケット部)1Aを貫通する軸部を有し、上側ブラケット1Aを回動可能に支持する。
前記メンバ取付部31cは、サスペンションメンバ30に設けられた軸部が貫通し、このサスペンションメンバ30に対して回動可能に支持される。
【0026】
前記サスペンションロアアーム32は、インホイールモータIWMの下部を支持するサスペンションアームであり、アーム本体32aと、アーム本体32aの一端に設けられたモータ取付部32bと、アーム本体32aの他端に設けられたメンバ取付部32cと、を有している。
前記アーム本体32aは、上下面及び左右面がすべて閉鎖された閉断面を有する中空鋼材から構成されている。
前記モータ取付部32bは、インホイールモータIWMのユニットケース1の外側面に設けられた下側ブラケット1Bを貫通する軸部を有し、下側ブラケット1Bを回動可能に支持する。
前記メンバ取付部32cは、サスペンションメンバ30に設けられた軸部が貫通し、サスペンションメンバ30に対して回動可能に支持される。
【0027】
[ブリーザユニット構成]
実施例1のブリーザユニットBRは、インホイールモータIWMのユニットケース1の内部空間を大気空間に連通させ、ケース内圧と大気圧とを均衡させるブリーザ手段である。
このブリーザユニットBRは、ユニットケース1に形成されたケース側ブリーザ開口41と、サスペンションアッパーアーム31のアーム本体31aに形成されたアーム側ブリーザ開口42と、ケース側ブリーザ開口41とアーム側ブリーザ開口42を連通するブリーザパイプ43と、を有している。
【0028】
前記ケース側ブリーザ開口41は、ユニットケース1の上部に形成された開口である。ここでは、上側ブラケット(ユニット側ブラケット部)1Aの近傍に形成されている。
【0029】
前記アーム側ブリーザ開口42は、アーム本体31aの一端に設けられたモータ取付部31bの近傍に形成された開口である。
【0030】
前記ブリーザパイプ43は、ゴム製のパイプ本体43aと、パイプ本体43aの両端に固定された金属製のパイプ接続コネクタ43b,43bと、を有し、ユニットケース1の内部空間をサスペンションアッパーアーム31の内側に連通させる。
なお、前記パイプ本体43aは、サスペンションユニットSUSの揺動を吸収可能な可撓性を有しており、サスペンションアッパーアーム31及びサスペンションロアアーム32と、ユニットケース1との間の相対移動に応じて変形可能となっている。また、前記パイプ接続コネクタ43b,43bは、外周面にネジ溝が形成され、それぞれケース側ブリーザ開口41とアーム側ブリーザ開口42に固定される。
【0031】
次に、実施例1の駆動ユニットのブリーザ構造の作用を、[排気作用]、[排油作用]に分けて説明する。
【0032】
[排気作用]
実施例1の駆動ユニットのブリーザ構造が適用されたインホイールモータIWMにおいて、電動モータ5及び減速機8の駆動に伴ってオイル温が上昇すると、ユニットケース1内の圧力が上昇する。
【0033】
このとき、ユニットケース1内の空気は、ケース側ブリーザ開口41からケース外部へ流れ出て、ブリーザパイプ43、アーム側ブリーザ開口42を順に介してサスペンションアッパーアーム31のアーム本体31aの内側に流れ込む。
【0034】
ここで、アーム本体31aは、メンバ取付部31c側の端部が開放しており、大気空間と連通している。そのため、アーム本体31a内に流れ込んだユニットケース1内の空気は、このアーム本体31aのメンバ取付部31c側の端部から大気空間へと放出される。これにより、ユニットケース1の内部空間と大気空間とが連通し、ユニットケース1内の圧力が大気圧と均衡してケース内圧力が上昇することが防止される。
【0035】
一方、アーム本体31aは、上下面及び左右面がすべて閉鎖された閉断面を有する中空鋼材から構成されている。そのため、アーム側ブリーザ開口42は、
図2に示すように、アーム本体31aによって囲まれた空間に開放することになり、このアーム側ブリーザ開口42が大気空間に直接露出することはない。
これにより、水や泥といった異物が飛散してきても、アーム本体31aによってアーム側ブリーザ開口42は保護され、アーム側ブリーザ開口42に異物が入り込むことが防止される。すなわち、アーム側ブリーザ開口42は、水や泥等の異物の影響を受けない位置に設けられ、この結果、ユニットケース1内に異物が浸入することを防止できる。また、異物によってアーム側ブリーザ開口42やブリーザパイプ43が閉鎖されることを防止し、ブリーザユニットBRの機能損失を防止することができる。
【0036】
特に、実施例1のアーム側ブリーザ開口42は、大気空間に開放しているメンバ取付部31c側の端部から離間し、閉鎖しているモータ取付部31b側の端部近傍に形成されている。そのため、アーム側ブリーザ開口42の周囲が大気空間から遮断された空間となり、さらに異物の侵入防止性能を向上することができる。
【0037】
さらに、実施例1のブリーザユニットBRは、サスペンションロアアーム32よりも路面から高い位置にあるサスペンションアッパーアーム31に設けられている。そのため、さらに高い異物の侵入防止性能を有することができる。
【0038】
そして、ユニットケース1に対して、サスペンションアッパーアーム31は近接した位置に設けられため、ブリーザユニットBRのブリーザパイプ43の短縮化を図ることができる。つまり、ブリーザパイプ43によって連通するユニットケース1とサスペンションアッパーアーム31が、そもそも近接した位置にあるため、ブリーザパイプ43の全長も長くなることはない。
これにより、飛散した小石等や雪付き・氷結等によるブリーザパイプ43の損傷を受ける範囲を小さくでき、損傷防止性能を向上することができる。
【0039】
また、実施例1のブリーザユニットBRでは、ケース側ブリーザ開口41は、ユニットケース1の上側ブラケット1A近傍に形成され、アーム側ブリーザ開口42は、モータ取付部31b近傍に形成されている。このため、ブリーザパイプ43は、ユニットケース1の揺動点近傍に配置されることになる。つまり、上側ブラケット1Aとモータ取付部31bの連結部分が、ユニットケース1の揺動点となる。これに対し、ブリーザパイプ43の両端は、この揺動点の近傍に固定されることとなる。
これにより、サスペンションユニットSUSの揺動時、ブリーザパイプ43の両端のパイプ接続コネクタ43b,43bの間隔が相対的に変動することを抑制できる。すなわち、ブリーザパイプ43の変形を抑制できる。このため、ブリーザパイプ43の耐破損性能を向上することができる。
【0040】
さらに、ブリーザユニットBRのブリーザパイプ43では、水や泥といった異物の飛散に対し、アーム側ブリーザ開口42を既存のアーム本体31aによって保護する。このため、新たな部品の追加が不要であり、コストや重量の増加を抑制することができる。その上、既存のサスペンションアッパーアーム31を利用することで、ブリーザユニットBRの設置に必要なスペースが極めて少なくなり、配置性能を良好とすることができる。
【0041】
[排油作用]
実施例1の駆動ユニットのブリーザ構造において、例えば極端な路面入力等によってユニットケース1内のオイルが激しく攪拌されると、ケース側ブリーザ開口41からオイルが漏れ出す、いわゆるブリーザ吹きが生じることがある。
【0042】
このとき、ケース側ブリーザ開口41からユニットケース1外に漏れ出たオイルは、ブリーザパイプ43を通り、アーム側ブリーザ開口42を介してサスペンションアッパーアーム31内へと浸入する。ここで、サスペンションアッパーアーム31のアーム本体31aには、排油孔33が設けられている。このため、アーム本体31a内へ浸入したオイルは、この排油孔33から大気空間へと排出される。
【0043】
また、排油孔33をサスペンションアッパーアーム31に設けることで、オイルが付着することで不具合が生じるおそれがあるデバイス(例えば、ブレーキドラム15等;以下「機能損失デバイス」という)から離れた位置から漏れ出たオイルを排出することができる。そのため、ブリーザ吹きが生じた際に、機能損失デバイスへの油付着を防止し、この機能損失デバイスに不具合が発生することを防止できる。
【0044】
さらに、ここでは、排油孔33に排油パイプ34が設けられると共に、この排油パイプ34の先端34aをサスペンションメンバ30の下部に固定している。そのため、排油孔33から排出されたオイルを、飛散させることなくサスペンションメンバ30の下方に流下させることができる。これにより、機能損失デバイスからさらに離間した位置に、漏れ出たオイルを案内することができ、オイルの排出方向が規制されて機能損失デバイスへの油付着防止効果をさらに高めることができる。
【0045】
次に、効果を説明する。
実施例1の駆動ユニットのブリーザ構造にあっては、下記に挙げる効果を得ることができる。
【0046】
(1) 駆動ユニット(電動モータ,減速機)5,8を収容すると共に、ホイール17の近傍に位置するユニットケース1と、
前記ユニットケース1を車体(サスペンションメンバ)30に揺動可能に支持するサスペンションアーム(サスペンションアッパーアーム)31と、
前記ユニットケース1の内部空間を前記サスペンションアーム31の内側に連通させるブリーザ手段(ブリーザユニット)BRと、
を備えた構成とした。
これにより、ユニットケース1に設けたブリーザ手段(ブリーザユニット)BRからの異物の浸入を防止することができる。
【0047】
(2) 前記サスペンションアームは、前記ユニットケース1の上部を支持するアッパーアーム(サスペンションアッパーアーム)31と、前記ユニットケース1の下部を支持するロアアーム(サスペンションロアアーム)32と、を有し、
前記ブリーザ手段(ブリーザユニット)BRは、前記アッパーアーム31に設けられた構成とした。
これにより、路面から比較的高い位置にブリーザ手段(ブリーザユニット)BRを設けることになり、異物浸入防止性能をさらに向上することができる。
【0048】
(3) 前記サスペンションアーム(サスペンションアッパーアーム)31は、前記ブリーザ手段(ブリーザユニット)BRを介して流入したオイルを外部空間(大気空間)に排出する排油孔33を有する構成とした。
これにより、ユニットケース1からのオイル吹きが生じた場合であっても、サスペンションアーム(サスペンションアッパーアーム)31内に浸入したオイルを排出することができる。
【0049】
(4) 前記排油孔33は、オイルの排出方向を規制する油流れ規制手段(排油パイプ)34を有する構成とした。
これにより、オイルが付着することで不具合が生じるおそれがあるデバイスから離間した位置に、排出されたオイルを案内することができ、機能損失デバイスへの油付着防止効果を高めることができる。
【実施例2】
【0050】
実施例2の駆動ユニットのブリーザ構造は、ブリーザユニットを露出させない例である。
【0051】
図3は、実施例2のブリーザ構造を示す要部側面図である。
図4は、実施例2のブリーザ構造におけるブリーザユニットを示す要部断面図である。なお、実施例1と同等の構成については、実施例1と同じ符号を使用し、詳細な説明を省略する。
【0052】
実施例2のブリーザユニットBR2は、
図3及び
図4に示すように、ケース側連通路51と、アーム側連通路52と、を有し、ユニットケース1の内部空間をサスペンションアッパーアーム31の内側に連通している。
【0053】
前記ケース側連通路51は、ユニットケース1の上側ブラケット(ユニット側ブラケット部)1Aを貫通する連通路であり、一方の端部51aはユニットケース1の内部空間に開放し、他方の端部51bは上側ブラケット1Aに形成された軸貫通孔1Aaの内側に開放している。ここで、軸貫通孔1Aaは、モータ取付部31bに形成された軸31dが貫通する孔である。
【0054】
前記アーム側連通路52は、サスペンションアッパーアーム31のモータ取付部31bを貫通する連通路であり、一方の端部52aは軸31dの外表面に開放し、他方の端部52bはアーム本体31aの内側に開放している。
【0055】
そして、ケース側連通路51の軸貫通孔1Aaの内側に開放した他方の端部51bと、アーム側連通路52の軸31dの外表面に開放した一方の端部52aは、互いに対向するように配置されている。
【0056】
そして、ユニットケース1内の圧力が上昇すると、ユニットケース1内の空気は、一方の端部51aからケース側連通路51へ流れ込み、他方の端部51bから排出される。ここで、この他方の端部51bには、アーム側連通路52一方の端部52aが対向している。そのため、ユニットケース1内の空気は、この一方の端部52aからアーム側連通路52へと流れ込んで他方の端部52bを介してアーム本体31aの内側へと流れる。
これにより、ユニットケース1の内部空間と大気空間とが連通し、ユニットケース1内の圧力が大気圧と均衡してケース内圧力が上昇することが防止される。
【0057】
また、この実施例2のブリーザユニットBR2は、ユニットケース1の上側ブラケット1Aを貫通するケース側連通路51と、サスペンションアッパーアーム31のモータ取付部31bを貫通するアーム側連通路52から構成されている。そのため、このブリーザユニットBR2が上側ブラケット1A及びモータ取付部31bの内側に配置されることになり、外部に露出することがない。
そのため、このブリーザユニットBR2が飛散した小石等や雪付き・氷結等による損傷を受けにくくなり、耐破損性能の向上を図ることができる。
【0058】
また、互いに対向するケース側連通路51の他方の端部51bと、アーム側連通路52の一方の端部52aのうちの一方を、上側ブラケット1Aの回動方向に延びる長孔形状とすることで、ユニットケース1が揺動しても端部同士を常時対向させることができる。これにより、ブリーザユニットBR2における通気性能の低下を防止し、ブリーザユニットBR2における機能損失を防止することができる。
【0059】
さらに、実施例2では、ケース側連通路51を上側ブラケット1Aに形成し、アーム側連通路52をモータ取付部31bに形成している。このため、サスペンションアッパーアーム31に対してユニットケース1が揺動したときに、ケース側連通路51とアーム側連通路52が相対変位しても、この相対変位によってケース側連通路51やアーム側連通路52が損傷を受けることはない。そのため、このブリーザユニットBR2の耐破損性能をさらに向上することができる。
【0060】
したがって、この実施例2の駆動ユニットのブリーザ構造にあっては、下記に挙げる効果を得ることができる。
【0061】
(5) 前記ユニットケース1は、前記サスペンションアーム(サスペンションアッパーアーム)31と接続するユニット側ブラケット部(上側ブラケット)1Aを有し、
前記サスペンションアーム31は、前記ユニット側ブラケット部1Aを支持するアーム側支持部(モータ取付部)31bを有し、
前記ブリーザ手段(ブリーザユニット)BR2は、前記ユニット側ブラケット部1A及び前記アーム側支持部31bの内側に配置された構成とした。
これにより、ブリーザ手段BR2が外部に露出することがなくなり、飛散した小石等や雪付き・氷結等による損傷を受けにくくなって、耐破損性能の向上を図ることができる。
【0062】
以上、本発明の駆動ユニットのブリーザ構造を実施例1及び実施例2に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0063】
実施例2では、ブリーザユニットBR2を、上側ブラケット1Aを貫通するケース側連通路51と、モータ取付部31bを貫通するアーム側連通路52から構成しているが、例えば、
図5に示すようなブリーザユニットBR3であってもよい。
すなわち、この場合、上側ブラケット1Aは一対のブラケットプレート1Ab,1Abから構成されている。そして、ブリーザユニットBR3は、ケース側ブリーザ開口61と、アーム側ブリーザ開口62と、ブリーザパイプ63と、有している。前記ケース側ブリーザ開口61は、一対のブラケットプレート1Ab,1Ab間に設けられる。また、前記アーム側ブリーザ開口62は、アーム本体31aのモータ取付部31b側の端部を閉鎖する閉鎖面31eに設けられる。さらに、前記ブリーザパイプ63は、一対のブラケットプレート1Ab,1Ab間に配設されると共に、モータ取付部31bの軸31dの下側を迂回するように配設される。
これにより、ブリーザユニットBR3は、上側ブラケット1A及びモータ取付部31bの内側に配置されることになり、外部に露出することがなくなって、耐破損性能の向上を図ることができる。
【0064】
また、実施例1では、サスペンションアッパーアーム31のアーム本体31aが、上下面及び左右面をすべて閉鎖された閉断面を有する中空鋼材から構成されているが、これに限らない。
図6の(a)〜(e)に示すように、アーム本体31aを、例えば下方に開放したり、側方に開放したいわゆるC型鋼や、上下面の幅方向中心部を連結したいわゆるI型鋼、また左右面の幅方向中心部を連結したいわゆるH型鋼、さらにはアングル鋼によって形成してもよい。
この場合であっても、
図6においてB部で示すアーム本体31aの内側に開放するアーム側ブリーザ開口42を設けることで、このアーム側ブリーザ開口42が大気空間に露出することを防止でき、異物の侵入防止効果を奏することができる。
【0065】
さらに、実施例1では、排油孔33に油流れ規制手段として排油パイプ34を設けているが、これに限らず、板状のオイルガイドプレートであってもよい。排油孔33から排出したオイルの流れ方向を規制し、オイル飛散を防止するものであればよい。なお、排油孔33に対して油流れ規制手段を設けていなくてもよい。
また、排油孔33とユニットケース1とを連通させ、排油孔33から排出されたオイルを再度ユニットケース1内に戻すような油流れ規制手段であってもよい。
【0066】
そして、上記各実施例では、本発明の駆動ユニットのブリーザ構造を、インホイールモータIWMに適用する例を示した。しかし、本発明の駆動ユニットのブリーザ構造は、ホイールの近傍に位置し、サスペンションアームによって支持されるユニットケースを備えた駆動ユニットであれば適用することができる。つまり、駆動ユニットは、電動モータのみから構成してもよいし、変速機或いは減速機のみから構成してもよい。