(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5966432
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】直流電磁接触器
(51)【国際特許分類】
H01H 50/00 20060101AFI20160728BHJP
H01H 50/38 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
H01H50/00 D
H01H50/38
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-41794(P2012-41794)
(22)【出願日】2012年2月28日
(65)【公開番号】特開2013-178930(P2013-178930A)
(43)【公開日】2013年9月9日
【審査請求日】2015年2月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】508296738
【氏名又は名称】富士電機機器制御株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161562
【弁理士】
【氏名又は名称】阪本 朗
(72)【発明者】
【氏名】代島 英樹
【審査官】
岡崎 克彦
(56)【参考文献】
【文献】
特許第4483130(JP,B2)
【文献】
実開昭60−087426(JP,U)
【文献】
実開昭52−043669(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 45/00−45/14
H01H 50/00−59/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作用電磁石、両端に可動接点を備えた橋絡形可動接触子を嵌挿保持して操作用電磁石の可動鉄心に連結した接触子ホルダ、および前記可動接触子に対向する一対の固定接触子を搭載した外郭フレームに対し、その頂部に消弧室ユニットを組み付けた構成になる直流電磁接触器であって、前記消弧室ユニットには電磁接触器の釈放動作で固定接点/可動接点間に発生したアークを消弧空間内で伸張させるように磁気駆動する永久磁石,およびその磁極板を装備したものにおいて、
前記消弧室ユニットの外郭ケースが各極に対応する可動接触子,固定接触子の接点周域を包囲する箱形の消弧ケースと、各極の消弧ケースの頂面を一括して覆う共通な消弧カバーからなり、かつ消弧ケース内の上部一角には前記永久磁石を収容保持する凹状の磁石受け部を一体成形するとともに、該磁石受け部の底部に磁性体である鉄材の条片からなるアークホーンを布設し、該アークホーンの一端を前記磁石受け部に形成した係合溝部に圧入支持した上で、エッジ状の先端部を磁石受け部の底壁に貫通させ、該アークホーンの先端部を可動接触子の先端から離間した位置で消弧室内の空間に突き出して配置したことを特徴とする直流電磁接触器。
【請求項2】
請求項1に記載の直流電磁接触器において、消弧室ユニットの消弧ケースは高耐熱性の硬質樹脂ケースになり、可動接触子の先端側に対峙する外側壁面の上部にガス放出口を開口した上で、該消弧ケースを消弧カバーの裏面にスナップフィット結合したことを特徴とする直流電磁接触器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電磁接触器に関し、詳しくはその消弧室ユニットの構造に係わる。
【背景技術】
【0002】
まず、直流電磁接触器について、現行製品の組立構造を
図6に示す。図において、1は上部フレーム1aと下部ベース1bの分割構造になる電磁接触器の外郭フレーム(ハウジング)、1cは上部フレーム1aに形成した極間バリア、2は固定鉄心2a,可動鉄心2b,電磁コイル2bからなる操作用電磁石、3は前記可動鉄心2bに連結した各極に共通な接触子ホルダ、4は接触子ホルダ3に接圧ばねを介して嵌挿保持した橋絡形の可動接触子、4aは可動接触子4の両端部に配した可動接点、4bは可動接点4aの位置から左右に向けて斜め上方に延在する可動接触子4のアークホーン、5は可動接触子4に対向して上部フレーム1aの上面に布設した左右一対の固定接触子、5aは固定接点、6は接触子ホルダ3,固定接触子4,固定接触子5の周域を包囲して消弧空間を画成するように上部フレーム1aの頂部に設置した消弧室ユニットである。
【0003】
ここで、消弧室ユニット6は耐アーク性に優れた耐熱性の高い樹脂材(硬質樹脂)で作られた箱形ケースで、その消弧室内の上部には橋絡形可動接触子4の各可動接点4aに対応するアーク駆動用の永久磁石7が消弧室ユニット6の天井壁部に組み付けた磁石受け部材8に保持されている。また、可動接触子4の先端側に対向して消弧室ユニット6の外壁面にはガス放出口6aが開口している。なお、図示してないが永久磁石7の両端に配した磁極板が可動接触子4の開極経路に沿ってその側方に布設されている。
【0004】
上記構成になる電磁接触器の開閉動作は周知であり、次に開極動作に伴い可動接触子4と固定接触子5の接点間に発生したアーク(arc)が消滅に至る経緯を
図7(a)〜(c)で簡単に説明する。
【0005】
すなわち、電磁接触器の閉極状態では、操作用電磁石2の可動鉄心2aが固定鉄心2bに吸着されていて、可動接触子4の可動接点4aが固定接触子5の接点5aに当接して主回路を形成している。この通電状態で操作用電磁石2を釈放すると、接触子ホルダ3に保持されている可動接触子4が開極位置に移動し、可動接点4aと固定接点5aの間に直流アーク(arc)が発生する(
図7(a)参照)。この発生アークarcは永久磁石7による磁気駆動力Fを受けてアーク発弧点が可動接点4a,固定接点5aから可動,固定接触子の先端側に転移し(
図7(b)参照)し、さらにアーク長を引き伸ばすように外方に駆動されて消弧室ユニット6の外壁面に到達する(
図7(c)参照)。これによりアーク電圧が高まるとともに、壁面との接触による冷却作用を受けてアークが消滅するに至る。
【0006】
上記のように直流回路に適用する直流電磁接触器では、可動/固定接点間に発生したアークにはゼロクロス点がなくてアークが消滅し難いことから、図示の現行製品では消弧能力を高めて電流遮断時間を早めるために、消弧室ユニット6にアーク駆動用の永久磁石7を設け、さらに可動接触子4の先端側にはアークホーン4bを一体に形成して発生アークの発弧点を接点の表面から転移させてアークの伸張を助勢するようにしている。
【0007】
一方、前記のように可動接触子4にアークホーン4bを形成する代わりに、消弧室ユニット6に配した永久磁石7に添わせて導電性非磁性金属材料からなる独立部品のアークホーンを磁石受け部材8に設け、可動接点/固定接点間に発生したアークが前記アークホーンを介して分断,伸張するようにした直流電磁接触器も知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4483130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、
図6に示した現行製品の直流電磁接触器に搭載した可動接触子4は、通常の交流電磁接触器に標準装備されている可動接触子の形状とは異なり、接触子の先端側にアークホーン4bを一体形成して可動/固定接点間に発生したアークを引き伸ばすようにしている。このために、可動接触子4が特殊な形状部品となってコスト高となる。
【0010】
かかる点、特許文献1のようにアークホーンを可動接触子から分離した独立部品として消弧室ユニット側に配置すれば、通常の交流電磁接触器に標準装備されている可動接触子と同じ仕様の可動接触子をそのまま直流電磁接触器に採用してコストダウンが期待できるものの、その実施に当たっては必要な消弧性能の確保のほかに、組立性,省スペースなどの面にも十分な配慮が必要である。
【0011】
そこで、本発明の目的は低コストで高い消弧性能,組立性,省スペース化が図れるように消弧室ユニットの組立構造を改良した直流電磁接触器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明によれば、操作用電磁石、両端に可動接点を備えた橋絡形可動接触子を嵌挿保持して操作用電磁石の可動鉄心
に連結した接触子ホルダ、および前記可動接触子に対向する一対の固定接触子を搭載した外郭フレームに対し、その頂部に消弧室ユニットを組み付けた構成になる直流電磁接触器であって、前記消弧室ユニットには電磁接触器の釈放動作で固定接点/可動接点間に発生したアークを消弧空間内で伸張させるように磁気駆動する永久磁石,およびその磁極板を装備したものにおいて、前記消弧室ユニットの外郭ケースが各極に対応する可動接触子,固定接触子の接点周域を包囲する箱形の消弧ケースと、各極の消弧ケースの頂面を一括して覆う共通な消弧カバーからなり、かつ消弧ケース内の上部一角には前記永久磁石を収容保持する凹状の磁石受け部を一体成形するとともに、該磁石受け部の底部に磁性体
である鉄材の条片からなるアークホーンを布設し、
該アークホーンの一端を前記磁石受け部に形成した係合溝部に圧入支持した上で、エッジ状の先端部を磁石受け部の底壁に貫通させ、該アークホーンの先端
部を可動接触子の先端から離間した位置で消弧室内の空間に突き出して配置する
ようにする。
上記直流電磁接触器において、消弧室ユニットの消弧ケースは高耐熱性の硬質樹脂ケースになり、可動接触子の先端側に対峙する外側壁面の上部にガス放出口を開口した上で、該消弧ケースを消弧カバーの裏面にスナップフィット結合する
ようにしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
上記構成によれば、開極動作時に可動接点/固定接点間に発生したアークを引き伸ばすアークホーンを可動接触子から分離して消弧室ユニット側に配置したことで、通常の交流電磁接触器に採用されている標準形の可動接触子と同じ形状の可動接触子をそのまま採用することができ、これにより電磁接触器の可動接触子を共用化して製品のコストダウンが図れる。
【0014】
また、消弧室ユニットに組み込んだアークホーンについては、その材質を銅材(導電性非磁性材)よりも融点,耐アーク性が高い鉄材としたので、アークホーンの信頼性,耐久製が向上し、かつ材料費も安価となる。
【0015】
さらに、消弧室ユニットの消弧ケースに磁石受け部を一体成形した上で、この磁石受け部にアーク駆動用の永久磁石,およびアークホーンを収容保持したことにより、小形コンパクトな構成で消弧室ユニットの省スペース化が図れるほか、各極の消弧ケースを一括して共通な消弧カバーにスナップフィット結合して電磁接触器の外郭フレームに装着するようにしたことで組立性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施例による直流電磁接触器の組立構造を表す側視断面図である。
【
図2】
図1における消弧室ユニットの分解図である。
【
図3】
図2における消弧室ユニットの詳細構造図であって、(a)は消弧ケース,永久磁石,磁極板,アークホーンの分解斜視図、(b)はアークホーンの拡大斜視図である。
【
図4】
図3の消弧室ユニットの機能説明図であって、(a),(b)はそれぞれ接点の閉極,開極状態に対応した状態図である。
【
図5】
図1の実施例による電磁接触器の接点開極動作で可動接点/固定接点間に発生したアークが消滅に至る経過を表す図である。
【
図6】直流電磁接触器の従来製品の組立構成図である。
【
図7】
図6の接点開極動作に伴い可動接点/固定接点間に発生したアークが消滅に至る経過を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を
図1〜
図5に示す実施例に基づいて説明する。なお、実施例の図中で
図6,
図7に対応する部材には同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
図示実施例の直流電磁接触器においては、接触子ホルダ3に嵌挿保持した橋絡形の可動接触子4が
図6に示した現行製品の形状と異なり、接触子の両端にアークホーン4b(
図6参照)が形成されてない標準形の可動接触子と同じ仕様の可動接触子を採用している。
【0018】
一方、可動接触子4,固定接触子5の周域を包囲して電磁接触器の外郭フレーム1の頂部には次記構造になる消弧室ユニット6が装備されており、この消弧室ユニット6の内部には
図6で述べたアーク駆動用の永久磁石7に加えて、アークホーン11が内蔵されている。
【0019】
すなわち、この消弧室ユニット6は、各極の可動接触子4,固定接触子5と個々に対応してその周域を包囲する箱形の消弧ケ-ス9と、該消弧ケ-ス9の頂面を覆う各極に共通な消弧カバー10とからなる。ここで、消弧ケース9は耐熱性の高い硬質樹脂の成形品であって、
図2,
図3で示すようにその上部一角には永久磁石7を収容保持する凹溝形状の磁石受け部9aが一体に形成されており、さらに可動接触子4の先端側に対向する外壁の上部側にはガス放出口9bが開口している。一方、消弧カバー10は熱可塑性樹脂で作られておりその裏面側には前記消弧ケース9の磁石受け部9aの側壁,係合段付部9cが嵌合してスナップフィット結合する係合脚部10aが形成されている。
【0020】
そして、前記磁石受け部9aには永久磁石7と並置して
図3(b)で示すような形状のアークホーン11が次記のようにして布設されている。すなわち、このアークホーン11は磁性体である鉄材の条片をアーチ状に曲げ加工したもので、その一端に形成した楔状の圧入脚部11aを磁石受け部9aの内側に形成した係合溝9dに圧入して所定位置に係合保持する。また、アークホーン11の先端はエッジ形状を呈しており、この先端部が磁石受け部9aの底壁を貫通し、図示のように可動接触子4の先端から外方側へ離間した位置で消弧室内の空間に突き出すように配置している。さらに、消弧ケース9の両側面には永久磁石7の磁極面に吸着した一対の磁極板12が下方に向けて延在するように布設されている(
図3(a),
図4参照)。
【0021】
上記構成により、
図4(a),(b)で示すように、消弧ケ-ス9で囲まれた接点の消弧空間には永久磁石7の磁極から磁極板12を経由して磁束φが可動接触子4,固定接触子5の開極経路と直交するように分布している。
【0022】
ここで、電磁接触器の釈放動作により、
図5(a)のように可動接触子4が固定接触子5から開極して可動接点4a/固定接点5a間にアーク(arc)が発生すると、このアークは前記磁束φによる磁気駆動力を受けてアーク発弧点が
図5(b)のように可動接点4a,固定接点5aから接触子の先端側に移動して引き伸ばされる。また、磁石受け部9aの底壁を貫通して消弧空間に突き出したアークホーン11のエッジ状先端に集中する電界の付勢も加わってアーク(arc)は
図5(c)のようにアークホーン11に転移し、さらにガス放出口9bに向けて消弧ケース9の室内に流れる高温ガスの流も加わって消弧ケ-ス9の外壁面に向け引き伸ばされて遂には消滅に至る。
【0023】
この場合に、前記のアークホーン11は、銅材などより融点の高い鉄材条片(磁性体)としたことで高い耐アーク性と長寿命を確保できる。また、このアークホーン11は消弧空間に突出したエッジ状の先端部を除いて磁石受け部9aの内側に布設したので、可動/固定接点間に発生したアークを磁気駆動する永久磁石7の磁束範囲に影響を及ぼすおそれはなく、高い遮断性能を発揮できることが確認されている。
【符号の説明】
【0024】
1 電磁接触器の外郭フレーム
2 操作用電磁石
3 接触子ホルダ
4 可動接触子
4a 可動接点
5 固定接触子
5a 固定接点
6 消弧室ユニット
7 永久磁石
9 消弧ケース
9a 磁石受け部
9b ガス放出口
10 消弧カバー
11 アークホーン
12 磁極板