【文献】
KATAOKA K, et al.,Structure and Function of the Engineered Multicopper Oxidase CueO from Escherichia coli-Deletion of the Methionine-Rich Helical Region Covering the Substrate-Binding Site.,Journal of Molecular Biology,2007年,373(1),pp.141-152
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明において、ケラチン繊維とは毛髪、羊毛等のケラチンを主成分とする繊維が含まれ、また、前記毛髪には頭髪の他、毛髪からなるウイッグ等も含まれる。以下の記載において、ケラチン繊維として毛髪(頭髪)を例に挙げて説明する。
本発明のマルチ銅オキシダーゼは、カルボキシル末端に塩基性アミノ酸を所定数付加するか、あるいは特定の酸性アミノ酸残基を塩基性アミノ酸に置換したことを特徴とする。
また、本発明のケラチン繊維用染色剤は上記のマルチ銅オキシダーゼが配合されることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る等電点が高いオキシダーゼを得るには、オキシダーゼの表面に塩基性を示す官能基を付加する方法が挙げられる。具体的には、所定の箇所に塩基性アミノ酸を付加するか、あるいはオキシダーゼを構成するアミノ酸残基のうち特定のものを塩基性アミノ酸に置き換える方法が例示できる。アミノ酸を付加する場合には、折り畳まれて立体構造が形成されたときに表面にでる場所であって、付加しても立体構造に大きな変化がない場所(例えばアミノ末端またはカルボキシ末端等)を選択して付加する。アミノ酸残基を塩基性アミノ酸に置き換える場合は、折り畳まれて立体構造が形成されたときに表面に出るものであって、且つ塩基性アミノ酸でなく(好ましくは酸性アミノ酸)、さらに置き換えても立体構造に大きな変化がないアミノ酸残基(酸化染料を酸化する機能に影響が出ないもの)を選択して置き換える。
【0016】
更に具体的には、上記のようなオキシダーゼは、配列番号1のrCueOのカルボキシ末端側に塩基性アミノ酸残基を4残基以上、好ましくは7残基以上付加することにより得られる。なお、配列番号1のrCueOはEscherichia coli由来のCueOからヘリックス5、ヘリックス6及びヘリックス7を除去し、かわりにスペーサを挿入してなる組換えタンパク質である。配列番号1のアミノ酸配列をコードするDNAの塩基配列の例を配列番号2に示す。
なお、配列番号1に示したrCueOは成熟タンパク質のものであるが、ベースになるアミノ酸配列は未成熟タンパク質のものであってもよいし、その他、当該アミノ酸配列のアミノ末端側やカルボキシ末端側には、酵素活性や本願発明の効果が損なわれない限り、ヒスチジンタグ等のアフィニティタグやシグナルペプチその他の構造が付加されていてもよい。
未成熟タンパク質のアミノ酸配列であってヒスチジンタグが付されたものを配列番号3に、そのDNAの塩基配列の例を配列番号4に示す。
【0017】
付加するアミノ酸残基の数について詳述すれば、塩基性アミノ酸残基の中でも最も塩基性が高いアルギニンを使用すれば付加する残基が少なくて済み、最も塩基性が低いヒスチジンを使用すれば付加する残基を多くする必要が生じ、リシンはその中間となる傾向がある。具体的には、塩基性アミノ酸残基がアルギニンのみからなる場合は4残基以上、好ましくは6残基以上であり、リシンのみからなる場合は6残基以上、好ましくは8残基以上であり(リシン及びアルギニンからなる場合も同様)、ヒスチジンのみからなる場合は7残基以上、好ましくは10残基以上(ヒスチジン、リシン、アルギニンの混合である場合も同様)である。
【0018】
付加するアミノ酸の数については、本発明の原理からいえば上限は特に無いが、酵素が失活するpH以上に等電点を高くしても効果は薄いため、現実的には20残基以下、又は30残基以下である。また、同じアミノ酸残基を連続して付加した場合、翻訳効率が低下し発現量が低下する恐れがある。これを防ぐため、2種又は3種の塩基性アミノ酸残基を交互に配列したり、同じアミノ酸残基が隣り合わせになる場合でも使用するコドンを変える等の方法により、同じコドンが連続して多数配列されるのを防ぐほうが好ましい。
【0019】
付加する残基はリシン、アルギニン、ヒスチジンのいずれでも良いが、塩基性が最も高いアルギニンが好ましく、次にリシンが好ましい。なお、カルボキシ末端側に付加するアミノ酸残基の中に塩基性でないアミノ酸残基が混入してもよいが、塩基性アミノ酸だけを連続して付加したほうが好ましい。塩基性でないアミノ酸を混入させる場合は、その分塩基性アミノ酸残基の数を増やす(好ましくは7残基以上)、または特に塩基性の高いアルギニン残基を付加することにより、全体として等電点が高く保たれるようにする。
【0020】
上記の方法による好ましいmCueOのアミノ酸配列を配列番号5に示す。この例は配列番号1のrCueOのカルボキシ末端側に6個のアルギニン残基を付加したものである。なお、配列番号5のアミノ酸配列をコードするDNA配列の例を配列番号6に示す。また、配列番号5のmCueOの未成熟タンパク質のアミノ酸配列を配列番号7に、そのDNA配列の例を配列番号8に示す。
【0021】
等電点が高いオキシダーゼの別例としては、配列番号1に示したrCueOのアミノ酸残基のうち、69番目のグルタミン酸、82番目のグルタミン酸、328番目のアスパラギン酸、340番目のアスパラギン酸の4つのうち少なくとも2つを塩基性アミノ酸に置き換えたものが例示できる。これらのアミノ酸残基は配列番号1のrCueOにおいて、置き換えたときに等電点が特に顕著に上昇するアミノ酸残基であり、これらのうち少なくとも2つを塩基性アミノ酸(アルギニン)に置き換えたときに等電点が7.6を超えることが実験により明らかになった。なお、上記4つのアミノ酸残基は、配列番号3に示した未成熟タンパク質のアミノ酸配列では、97番目のグルタミン酸、110番目のグルタミン酸、356番目のアスパラギン酸、368番目のアスパラギン酸に相当する。
上記の例と同様、本例のmCueOも未成熟タンパク質のアミノ酸配列であってよく、その他、アミノ酸配列のアミノ末端側やカルボキシ末端側には、酵素活性や本願発明の効果が損なわれない限り、ヒスチジンタグ等のアフィニティタグやシグナルペプチその他の構造を付加することができる。
【0022】
なお、上記の4残基(69番目、82番目、328番目、340番目)すべてをアルギニンに置換した例を配列番号9に、そのアミノ酸配列をコードするDNA配列の例を配列番号10に示す。また、上記配列番号9に示したmCueOの未成熟タンパク質であってヒスチジンタグを付したもののアミノ酸配列を配列番号11に、そのアミノ酸配列をコードするDNA配列の例を配列番号12に示す。
【0023】
等電点が高いオキシダーゼのさらなる別例としては、配列番号13に示したwtBODのアミノ酸配列のうち、242番目のアスパラギン酸、245番目のアスパラギン酸、261番目のグルタミン酸、265番目のアスパラギン酸、285番目のアスパラギン酸、310番目のアスパラギン酸、322番目のアスパラギン酸、323番目のアスパラギン酸、328番目のアスパラギン酸、338番目のアスパラギン酸の10個のうち少なくとも4つを塩基性アミノ酸に置き換えたものが例示できる。なお、配列番号13のwtBODはMyrothecium verrucaria由来の野生型BODである。
上記10個のアミノ酸残基は配列番号13のwtBODにおいて、塩基性アミノ酸残基に置換すれば等電点が特に顕著に上昇するアミノ酸残基であり、これらのうち4つを塩基性アミノ酸(アルギニン)に置き換えたときの等電点が4.9になることが実験により明らかになった。また、置換するアミノ酸残基が多いほど等電点が高くなる。配列番号13のアミノ酸配列をコードするDNAの塩基配列の例を配列番号14に示す。
【0024】
なお、配列番号13に示したwtBODは成熟タンパク質のものであるが、ベースになるアミノ酸配列は未成熟タンパク質のものであってもよいし、その他、アミノ酸配列のアミノ末端側やカルボキシ末端側に、酵素活性や本願発明の効果が損なわれない限り、ヒスチジンタグ等のアフィニティタグやシグナルペプチその他の構造が付加されたものであってもよい。
配列番号13に示したwtBODの未成熟タンパク質のアミノ酸配列を配列番号15に、DNAの塩基配列の例を配列番号16に示す。配列番号15に示した未成熟タンパク質のアミノ酸配列では上記10個のアミノ酸残基は、それぞれ280番目のアスパラギン酸、283番目のアスパラギン酸、299番目のグルタミン酸、303番目のアスパラギン酸、323番目のアスパラギン酸、348番目のアスパラギン酸、360番目のアスパラギン酸、361番目のアスパラギン酸、366番目のアスパラギン酸、376番目のアスパラギン酸に相当する。
【0025】
上記の方法による好ましいmBODのアミノ酸配列を配列番号17に示す。この例は配列番号13のwtBODの上記10残基(242番目、245番目、261番目、265番目、285番目、310番目、322番目、323番目酸、328番目、338番目)の全てをアルギニン残基に変更したものである。なお、配列番号17のアミノ酸配列をコードするDNA配列の例を配列番号18に示す。また、配列番号17のmBODの未成熟タンパク質のアミノ酸配列を配列番号19に、そのDNA配列の例を配列番号20に示す。
【0026】
カルボキシ末端に塩基性アミノ酸残基を付加されたオキシダーゼや、特定のアミノ酸残基が塩基性アミノ酸に置き換えられたオキシダーゼを得る方法は特に限定されないが、例えば所望のアミノ酸配列をコードする塩基配列(遺伝子)を発現ベクターに組み込み、適当な宿主に導入して培養し、しかる後、得られた粗酵素液を精製する定法が全て好適に採用できる。
【0027】
カルボキシ末端に塩基性アミノ酸残基が付加されたオキシダーゼの塩基配列(遺伝子)は定法により得ることができるが、その方法を配列番号1に示したrCueOのカルボキシ末端にアルギニン残基を付加する場合に基づいて例示すれば、配列番号21の塩基配列(配列番号4のDNA配列に終止コドンを加えたもの)における終始コドンの前側に直接塩基性アミノ酸のコドンを所定数だけ付加(配列番号22)してもよいし、配列番号23のように終止コドンの前に制限酵素切断部位(配列番号23の場合はSplI切断部位)のみを付加して、既に確立された塩基配列であるポリアルギニンリンカー(配列番号24)を制限酵素切断部位に挿入してもよい。
【0028】
配列番号22のように直接塩基性アミノ酸のコドンを所定数(配列番号22の例ではアルギニン6残基分)付加したり、配列番号23のように制限酵素切断部位を付加する方法は特に限定されないが、例えばPCR法を応用した方法で製造することができる。
具体的には、基礎となるオキシダーゼをコードする塩基配列をPCR法で増幅する際に、3’側プライマーとして終止コドンの前に付加したい塩基配列が挿入されたものを用いればよい。
PCR法の反応条件は特に限定されないが、96℃で30秒の変性、55℃で1分間のアニーリング、72℃で1分間の伸長からなる単位を1サイクルとし、このサイクルを25回繰り返す条件を例示することができる。
【0029】
また、特定のアミノ酸残基が塩基性アミノ酸に置き換えられたオキシダーゼの塩基配列を得る方法も特に限定されず、周知の方法に従い、通常のオキシダーゼをコードする遺伝子に部位特異的変異を導入すればよい。このような部位特異的変異は、市販のキットを用いて容易に行うことができる。なお、使用できる市販のキットとしては、例えば、QuikChange(商品名) Site−Directed Mutagenesis Kit(STRATAGENE社製)、Transformer(商品名) Site−Directed Mutagenesis Kit(CONETECH社製)が例示できる。
【0030】
上記のように作成した塩基配列は適切な発現ベクターに組み込まれる。使用可能な発現ベクターは特に限定されないが、大腸菌用の発現ベクターとして使用できるプラスミドとしては、例えば、pBR322、pBluescript、pUC19、pUC18、pUC119等を挙げることができる。この中でもpUC18が好ましい。
また、酵母用の発現ベクターとして使用できるプラスミドとしては、pPIC9K、pPIC3.5K、pPIC6、pAO815、pGAPZ等を挙げることができる。このなかでもpPIC9Kが好ましい。
【0031】
所望のオキシダーゼをコードする塩基配列を上記の発現ベクターに組み込む方法は特に限定されず、周知の方法を用いることができる。その一例を示せば、Takara Ligation Kit Ver.2.1(商品名:タカラバイオ社製)を用い、16℃で一晩反応させることにより行うことができる。
【0032】
所望の塩基配列が組み込まれた発現ベクター(組換えベクター)は適切な宿主に導入される。用いられる宿主としては特に限定されず、微生物、動物細胞、植物細胞のいずれでもよいが、取り扱い性の点で微生物を用いるのが好ましく、特に大腸菌(Escherichia coli)やメタノール資化酵母(Pichia pastoris)が好ましい。
菌株も特に限定されないが、大腸菌を使用する場合は、XL1−Blue、BL21、JM109、NM522、DH5α、HB101、DH10Bが例示でき、このなかでもBL21が好ましい。メタノール資化酵母を使用する場合は、GS115、KM71、SMD1168が例示でき、このなかでもGS115が好ましい。
【0033】
組換えベクターを宿主に導入する方法は特に限定されず、リポフェクション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、パーティクルガンのような公知の方法が全て好適に使用できる。
【0034】
上記のように組換えベクターが導入された宿主(形質転換体)は定法に従い培養される。使用される培地は特に限定されず、具体的には宿主が大腸菌である場合にはLB培地やM9−glucose培地等の周知のものが例示できる。また、培地には必要に応じ、塩化銅、イソプロピル チオ−β−D−ガラクシド(IPTG)、アンピシリン等の薬剤を添加してもよい。培養条件も特に限定されないが、28〜37℃で1〜24時間培養すればよい。また、必要に応じ、通気や攪拌を行ってもよい。
宿主がメタノール資化酵母の場合、使用できる培地としてはYPD培地、MD培地、MBB培地等の周知のものが例示できる。また、培地には塩化銅、メタノール、G418等の薬剤を添加してもよい。培養条件も特に限定されないが、20〜32℃、好ましくは30℃で2〜7日培養すればよい。また、必要に応じ、通気や攪拌を行ってもよい。
【0035】
本発明のマルチ銅オキシダーゼは、上記した宿主を培養した培地から得ることができる。培地から所望のオキシダーゼを得る方法は特に限定されないが、培養液の上澄みから得られたタンパク質や、オスモティックショック法により宿主を破壊して得られたタンパク質を精製する方法が例示できる。
精製方法も特に限定されないが、塩析、溶媒沈殿、透析法、限外濾過法、ポリアクリルアミド電気泳動法、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、逆相高速液体クロマトグラフィー、等電点電気泳動法等、公知の方法が全て好適に利用できる。
【0036】
上記のように作成したマルチ銅オキシダーゼはケラチン繊維用染色剤における酸化剤として有用である。
本発明のケラチン繊維用染色剤に用いられる酸化染料としては、上記のマルチ銅オキシダーゼにより酸化できるものであればどのようなものでも使用できる。具体的には、パラフェニレンジアミン、5−アミノオルトクレゾール、オルトアミノフェノール、メタアミノフェノール、パラアミノフェノール、2,4−ジアミノフェノール、2,6−ジアミノピリジン、5−(2−ヒドロキシエチルアミノ)−2−メチルフェノール、N,N−ビス(β−ヒドロキシ)−パラフェニレンジアミン硫酸塩、パラニトロ−オルトフェニレンジアミン、パラニトロ−2′,4′−ジアミノアゾベンゼン硫酸ナトリウム、トルエン−2,5−ジアミン、5−アミノオルトクレゾール硫酸塩、パラアミノフェノール硫酸塩、オルトクロロ−パラフェニレンジアミン硫酸塩、4,4′−ジアミノジフェニルアミン硫酸塩、パラメチルアミノフェノール硫酸塩、パラフェニレンジアミン硫酸塩、メタフェニレンジアミン硫酸塩、トルエン−2,5−ジアミン硫酸塩、2,4−ジアミノフェノキシエタノール塩酸塩、トルエン−2,5−ジアミン塩酸塩、メタフェニレンジアミン塩酸塩、2,4−ジアミノフェノール塩酸塩、3,3′−イミノジフェノール、パラフェニレンジアミン塩酸塩、N−フェニル−パラフェニレンジアミン塩酸塩、N−フェニル−パラフェニレンジアミン酢酸塩、1,5−ジヒドロキシナフタレン、トリレン−3,4−ジアミン、パラメチルアミノフェノール、N,N′−ビス(4−アミノフェニル)−2,5−ジアミノ−1,4−キノンジイミン、オルトアミノフェノール硫酸塩、2,4−ジアミノフェノール硫酸塩、メタアミノフェノール硫酸塩が挙げられるが、基質特異性の関係でこの中でも特にパラフェニレンジアミン、パラアミノフェノール、オルトアミノフェノール、2,4−ジアミノフェノール、トルエン−2,5−ジアミンおよびこれらの塩等が好ましい。これらは単独で又は必要に応じ2種以上組み合わせて用いられる。
【0037】
本発明においては、染料として、インドリン化合物や、インドール化合物を用いることもできる。
インドリン化合物としては特に限定されないが、例えば、インドリン、5,6−ジヒドロキシインドリン、N−メチル−5,6−ジヒドロキシインドリン、N−エチル−5,6−ジヒドロキシインドリン、N−ブチル−5,6−ジヒドロキシインドリン、4−ヒドロキシ−5−メトキシインドリン、6−ヒドロキシ−7−メトキシインドリン、6,7−ジヒドロキシインドリン、4,5−ジヒドロキシインドリン、4−メトキシ−6−ヒドロキシインドリン、N−ヘキシル−5,6−ジヒドロキシインドリン、2−メチル−5,6−ジヒドロキシインドリン、3−メチル−5,6−ジヒドロキシインドリン、4−ヒドロキシインドリン、2,3−ジメチル−5,6−ジヒドロキシインドリン、2−メチル−5−エチル−6−ヒドロキシインドリン、2−メチル−5−ヒドロキシ−6−β−ヒドロキシエチルインドリン、4−ヒドロキシプロピルインドリン、2−ヒドロキシ−3−メトキシインドリン、6−ヒドロキシ−5−メトキシインドリン、6−ヒドロキシインドリン、5−ヒドロキシインドリン、7−ヒドロキシインドリン、7−アミノインドリン、5−アミノインドリン、4−アミノインドリン、5,6−ジヒドロキシインドリンカルボン酸、1−メチル−5,6−ジヒドロキシインドリン、これらの塩類等を挙げることができる。これらは単独で又は必要に応じ2種以上組み合わせて用いられる。
【0038】
インドール化合物としては特に限定されないが、例えば、4,5−ジヒドロキシインドール、5,6−ジヒドロキシインドール、6,7−ジヒドロキシインドール、N−メチル−5,6−ジヒドロキシインドール、N−エチル−5,6−ジヒドロキシインドール、N−ヘキシル−5,6−ジヒドロキシインドール、2−メチル−5,6−ジヒドロキシインドール、3−メチル−5,6−ジヒドロキシインドール、4−ヒドロキシインドール、2,3−ジメチル−5,6−ジヒドロキシインドール、2−メチル−5−エチル−6−ヒドロキシインドール、2−メチル−5−ヒドロキシ−6−β−ヒドロキシエチルインドール、4−ヒドロキシプロピルインドール、2−ヒドロキシ−3−メトキシインドール、4−ヒドロキシ−5−メトキシインドール、6−ヒドロキシ−7−メトキシインドール、6−ヒドロキシ−5−メトキシインドール、6−ヒドロキシインドール、5−ヒドロキシインドール、7−ヒドロキシインドール、7−アミノインドール、5−アミノインドール、4−アミノインドール、5,6−ジヒドロキシインド−ルカルボン酸、1−メチル−5,6−ジヒドロキシインドール、およびこれらの塩等を挙げることができる。これらは単独で又は必要に応じ2種以上組み合わせて用いられる。
【0039】
本発明のケラチン繊維用染色剤には、必要に応じ、酸化染料以外の染料や色素を含有させることもできる。これらの色素や染料としては、タール色素、HC染料、塩基性染料、直接染料等が例示でき、これらは単独で又は必要に応じ2種以上組み合わせて用いられる。これらの色素や染料を含有させることにより、多彩な色調に染毛することが可能である。
このようなタール色素としては、昭和41年8月31日公布の厚生省令第30号「医薬品等に使用することができるタール色素を定める省令」によって指定されている色素が挙げられる。また、HC染料としては、HC青2、HC橙1、HC赤1、HC赤3、HC黄2、HC黄4等が挙げられ、塩基性染料としては、塩基性青99、塩基性茶16、塩基性茶17、塩基性赤51、塩基性赤76、塩基性黄57等が挙げられ、直接染料としては、2−アミノ−6−クロロ−4−ニトロフェノール、3−メチルアミノ−4−ニトロフェノキシエタノール、2−アミノ−3−ニトロフェノール、4−ヒドロキシプロピルアミノ−3−ニトロフェノール等が挙げられる。これらは単独で又は必要に応じ2種以上組み合わせて用いられる。
【0040】
本発明のケラチン繊維用染色剤には、本発明の効果を損なわない範囲で、通常、化粧品やケラチン繊維用染色剤に常用される各種成分を含有させることができる。
例えば、界面活性剤としては、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム等のカチオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ステアリン酸ソルビタン等のノニオン性界面活性剤;セチルアルコール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、ワセリン、パラフィン、流動パラフィン、パルミチン酸セチル、パルミチン酸オクチル等の油剤;キサンタンガム、サクシノグルカン、ヒドロキシプロピルグァーガム、カチオン化グァーガム等のグァーガム類、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カチオン化セルロース等のセルロース類等の増粘剤;1,3−BG、PG、DPG、グリセリン等の保湿剤;EDTA、EDTA−2Na、EDTA−4Na、ヒドロキシエタンジホスホン酸等のキレート剤:パラベン、メチルイソチアゾリノン等の防腐剤;エタノール、イソプロピルアルコール等の溶剤;香料等で、これらは必要に応じ、任意に組み合わせて適宜配合することができる。
【0041】
本発明のケラチン繊維用染色剤は一剤式でも多剤式でもよいが、本発明の場合、染料と酵素を混合しても酸素がなければ発色しないので、嫌気的条件化で保存すれば一剤式の染色剤として特に好適である。
剤型も液状、乳液状、クリーム状、ジェル状、泡状、エアロゾル状等、任意の剤型とすることができ、容器も袋入り、瓶入り、ポンプ式容器入り、チューブ入り、噴霧缶入り等、どのようなものでも採用できる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら制限されないことは云うまでもない。なお、以下の記載において、%は重量%を意味する。
【0043】
実施例1
以下の手順により、本発明の改変されたマルチ銅オキシダーゼを調製した。
(1)6XArg付加型mCueO遺伝子の作製
rCueO発現プラスミドpUCCueO Δα5−7(特許文献3に記載されたpUC18−CueO Δα5−7と同じ。製造方法については同[0076]〜[0096]を参照)を鋳型に、配列番号25のCueO F(+)プライマーと、配列番号26の6XArgタグ導入プライマーを用いて、PCR法により配列番号8に記載された6XArg付加型mCueOの後半約0.7kbpの遺伝子断片を増幅した。
【0044】
なお、rCueO発現プラスミドpUCCueO Δα5−7とは、rCueOのカルボキシ末端アミノ酸Valの後にヒスチジンタグ(6XHisタグ)を付加したタンパク質(配列番号3)をコードする遺伝子(配列番号4)に対し、開始コドンの前に制限酵素EcoRI切断配列を、終止コドンの後に制限酵素BamHI切断配列を導入し、クローニングベクターpUC18のEcoRI−BamHI切断部位に挿入したものである。
配列番号25のCueO F(+)プライマーは、rCueOのORF(配列番号4 )において748〜768番目の塩基配列に相当する。
配列番号26の6XArgタグ導入プライマー塩基配列に於いて、5 ’末端から側から3〜8番目の塩基(ggatcc)はBamHI切断部位、9〜11番目の塩基(tta)は終止コドンに対するアンチコドン、12〜29番目の塩基(acgacgacgacgacgacg)がArgのアンチコドンを6回繰り返したもの、30番目以降はCueOのカルボキシ末端領域コード配列の相補配列である。
【0045】
PCR反応は以下に示すPCR反応液を用い、以下の反応サイクルで行なった。
(2)PCR反応液
Pwo Super Yield PCR Buffer 5.0μl
pUCCueO Δα5−7(10ng/μl) 1.0μl
CueO F(+)プライマー(10pmol/μl) 1.0μl
6XArgタグ導入プライマー(10pmol/μl) 1.0μl
dNTP mix. (2mM,東洋紡社製) 5.0μl
滅菌蒸留水 36.5μl
Pwo Super Yield DNA Polymerase 0.5μl
合計 50.0μl
【0046】
(3)PCR反応サイクル
1)95℃,5min予熱
2)95℃,1min変性
3)52℃,1minアニーリング
4)72℃,1min伸長
→2)に戻る(25サイクル)
5)72℃,5min伸長
【0047】
(4)PCR増幅断片の精製
上記反応終了後、反応液を1%アガロースゲル電気泳動に供して増幅断片を分離し、キアゲン社製QIAEXII Gel Extraction Kitを用いて増幅断片をゲルから抽出・精製した。操作はキアゲン社の説明書に従って行なった。
【0048】
(5)PCR増幅断片のTAクローニング
精製した増幅断片をプロメガ社のpGEM−T Easy Vectorと連結した。連結操作はプロメガ社の説明書に従って行なった。連結反応終了後,反応液5μlを用いて、E. coli XL10−Goldコンピテントセルを形質転換した。形質転換菌はアンピシリンを含むLB寒天培地を用いて37℃で一晩インキュベートした。
【0049】
(6)制限酵素消化
生育したコロニーからアルカリSDS法によってプラスミドを単離し、制限酵素NcoIとBamHIで消化した後、1%アガロースゲル電気泳動に供して消化断片を分離した。次いで、QIAEXII Gel Extraction Kitを用いて約0.7kbpの消化断片をゲルから抽出・精製した。
これとは別に、pUCCueO Δα5−7を制限酵素NcoIとBamHIで消化し、同様の操作で約3.4kbpの断片を精製した。
【0050】
(7)6XArg付加型mCueO発現プラスミドの製造
DNA Ligation Kit Ver. 2.1(タカラバイオ社製)を用い、タカラバイオ社の説明書に従って、上記生育したコロニーから得た約0.7kbpの消化断片とpUCCueO Δα5−7から得た約3.4kbpの断片を連結した。連結反応終了後、反応液5μlを用いて,E. coliXL10−Goldコンピテントセルを形質転換した。形質転換菌はアンピシリンを含むLB寒天培地に塗布し37℃で一晩インキュベートした。
【0051】
(8)6XArg付加型mCueO発現プラスミドの確認
生育したコロニーから,アルカリSDS法によってプラスミドを単離し,得られたプラスミドの中に変異型遺伝子の配列を確認した。確認を終えたプラスミドをpUCCueO Δα5−7 6Rとする。pUCCueO Δα5−7 6Rのコードする6XArg付加型mCueOのアミノ酸配列を配列番号7に、成熟6XArg付加型mCueOのアミノ酸配列を配列番号5に示す。
【0052】
(9)6XArg付加型mCueOの製造及び精製
(i)形質転換体の培養
E.coli BL21(DE3)コンピテントセルをpUCCueO Δα5−7 6Rで形質転換し、形質転換菌はアンピシリンを含むLB寒天培地に塗布し37℃で一晩インキュベートした。生じたコロニーを以下の二段階で培養し、6XArg付加型mCueOを発現させた。
前培養(試験管):0.1mg/mlアンピシリンを含むLB培地4ml中、37℃で一晩震盪培養を行なった。
本培養(2Lバッフル付き三角フラスコ):1mM CuCl
2 、0.5mM IPTGを添加した400mlの上記培地中、32℃で12時間震盪培養を行なった。
培養終了後、遠心分離により集菌し、0.85%の塩化ナトリウム水溶液で洗浄後、直ちに以下の浸透圧ショックを行なった。
【0053】
(ii)浸透圧ショック
菌体を氷冷した20%ショ糖、10mM EDTAを含む100mM Tris−H
2 SO
4 緩衝液(pH7.5)に懸濁し氷水中で10分間静置後、遠心分離によって菌体を回収した。次に、プロテアーゼ阻害剤を含む氷冷蒸留水に懸濁し、氷水中で10分間静置後、遠心分離によって上清を回収した。得られた上清を、さらに90,000Xg、30分の超遠心分離に供し、その上清を粗酵素液とした。
【0054】
(iii) 陽イオン交換クロマトグラフィー
上記粗酵素液に、終濃度が20mMとなるようにリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)を加え、同緩衝液で平衡化したTOYOPEARL SP−650M(東ソー社製)カラム(100ml)に重層し、同緩衝液で洗浄した。その後、0→500mMのNaCl直線濃度勾配(400ml)により吸着したタンパク質を容出させた。活性画分を集めて濃縮し,100mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)に透析した後、mCueOの精製標品とした。
【0055】
実施例2
以下の手順により、本発明の改変されたマルチ銅オキシダーゼの別例を調製した。
まず、特許第4437652号公報の[0022]及び[0023]に記載の方法により成熟BODをコードするDNA断片を得て、QuikChange法を用いて、配列番号13番における265番目、285番目、323番目、338番目のアミノ酸残基に相当するコドンをアルギニンのコドンagaに置換した。
その後、同公報[0024]〜[0031]の方法に準じて4残基置換型mBODの精製標品を得た。
【0056】
比較例1
特許文献3(再公表特許2007/063614号公報)の[0076]〜[0101]に記載されたmCueO(1)と同じ方法でrCueOの精製標品を得た。なお、得られたrCueOのアミノ酸配列は配列番号27に示されている。
【0057】
比較例2
特許第4437652号公報の[0022]〜[0031]に記載された方法により得られたBODを比較例2のwtBODとした。なお、得られたwtBODのアミノ酸配列は配列番号13に示されている。
【0058】
実施例3
染料中間体としてパラフェニレンジアミンを含む第1剤と、オキシダーゼを含む第2剤からなる2剤式のケラチン繊維用染色剤を作成した。
表1に示すように、第1剤はポリオキシエチレン硬化ひまし油2g、乳酸1g、ヒドロキシエチルセルロース1g、モノエタノールアミン0.9g、パラフェニレンジアミン1g、及び合計25gになるように精製水を加えて混合して調製した。なお、第1剤のpHは9.8である。
第2剤は実施例1で作られたmCueOの希釈液(使用時の濃度は0.5units/g)である。なお、本実施例に使用したmCueOの等電点(pI)は8.1である。
【0059】
実施例4
表1に示すように、第1剤にカップラーとしてレゾルシン0.5gが含まれる他は実施例3と同様にしてケラチン繊維用染色剤を作成した。
【0060】
実施例5
表1に示すように、第1剤に染料中間体としてパラアミノフェノール0.3gが含まれる他は実施例3と同様にしてケラチン繊維用染色剤を作成した。
【0061】
実施例6
表1に示すように、第1剤にカップラーとしてメタアミノフェノール0.3gが含まれる他は実施例3と同様にしてケラチン繊維用染色剤を作成した。
【0062】
実施例7
表1に示すように、第1剤にカップラーとして塩酸2,4ジアミノフェノキシエタノール0.2gが含まれる他は実施例3と同様にしてケラチン繊維用染色剤を作成した。
【0063】
実施例8
表1に示すように、第1剤にカップラーとしてpAOC(パラアミノオルトクレゾール)0.3gが含まれる他は実施例3と同様にしてケラチン繊維用染色剤を作成した。
【0064】
実施例9
表1に示すように、モノエタノールアミンに代えて28%アンモニア水3g用いた他は実施例8と同様にしてケラチン繊維用染色剤を作成した。
【0065】
【表1】
【0066】
「染毛試験」
上記した実施例3〜9のケラチン繊維用染色剤を用い、ビューラックス製白髪毛の1g毛束に対して染毛試験を行った。
まず、前処理として、毛束を38℃の流水で30秒間水洗いして、1%SDS液で1分間もみ洗いし、再び38℃の流水で30秒間水洗いしてSDS液を洗い流した後、風乾した。
次に、第1剤0.5g及び第2剤1.5gを秤量してカップに入れて刷毛で混合し、混合液を刷毛で毛束に塗布した。毛束は扇状になるように広げ、できるだけ均一に塗布できるようにした。
塗布後、室温(26.5℃)で15分後放置した後、毛束を裏返して混合液を刷毛で均一に広げ、さらに室温で15分間放置した。
その後、毛束を38℃の流水で30秒間水洗いしてケラチン繊維用染色剤を洗い流し、1%SDS液を塗布してコームで20回櫛通しして泡立てた後、38℃の流水で流しながらコームで20回櫛通しして1%SDS液を洗い流した。洗浄後、水分をタオルで拭き取り、乾燥させた。
乾燥後、分光測色計(コニカミノルタ製、CM−2600d)でLab値を測定するとともに、未処理の白髪毛を基準とした色差ΔEを算出した。結果を表2に示す。
表2に示すとおり、毛束は様々な色に染め上げられ、使用者が求める所望の色に頭髪を染色可能であることがわかる。
【0067】
【表2】
【0068】
実施例10及び比較例3
第1剤のpHが9.0になるようにモノエタノールアミンの量を変更し、第2剤として、実施例1及び比較例1で得られた酵素の希釈液(使用時の濃度は0.25units/g)を用いた他は、実施例3と同様にして、実施例10及び比較例3のケラチン繊維用染色剤を作成した。
【0069】
実施例11 比較例4
第1剤として、パラフェニレンジアミン(PPD)に代えて、5,6−ジヒドロキシインドール(5,6−DHI)0.3g配合したものを用い、第2剤として実施例2及び比較例2で得られた酵素の希釈液(使用時の濃度は0.25units/g)を用いた他は、実施例10と同様にして、実施例11及び比較例4のケラチン繊維用染色剤を作成した。
【0070】
上記した実施例10、11及び比較例3、4のケラチン繊維用染色剤を用い、上記染色試験と同様の方法で染色試験を行った。酵素の等電点(pI)及び試験結果を表3に示す。
表3に示されるとおり、等電点が高いマルチ銅オキシダーゼを用いれば等電点が低い場合と比較して、染色性が優れていることがわかる。
【0071】
【表3】
【0072】
なお、上記実施例、比較例、参考例において、各酵素の濃度は以下の条件で測定し、調製した。
キュベット(1.5mL UVディスポセル、Top社製)中で、200mM酢酸緩衝液(pH5.5)0.875mL、各酵素(rCueO、mCueO、wtBOD、rBOD)水溶液(0.5mg/mL)0.025mL、及び、各基質溶液0.1mLを混合し、分光光度計(UV−2459、SHIMADZU社製)を用いて、各測定波長での吸光度の変化量を測定した(測定波長はパラフェニレンジアミンは470nm、5,6−ジヒドロキシインドールは300nm)。
そして、既に判っている目標濃度(0.5及び0.25units/g)におけるwtCueO及びwtBODの吸光度の変化量と比較し、この吸光度の変化量と同じになるように各酵素水溶液を希釈して目標濃度の酵素液とみなした。