特許第5966449号(P5966449)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5966449バンプ用はんだ合金粉末、バンプ用はんだペースト及びはんだバンプ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5966449
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】バンプ用はんだ合金粉末、バンプ用はんだペースト及びはんだバンプ
(51)【国際特許分類】
   B23K 35/26 20060101AFI20160728BHJP
   C22C 13/00 20060101ALI20160728BHJP
   B23K 35/22 20060101ALI20160728BHJP
   B23K 1/00 20060101ALI20160728BHJP
   H05K 3/34 20060101ALI20160728BHJP
   B23K 101/40 20060101ALN20160728BHJP
【FI】
   B23K35/26 310A
   C22C13/00
   B23K35/22 310A
   B23K1/00 330E
   H05K3/34 512C
   B23K101:40
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-48893(P2012-48893)
(22)【出願日】2012年3月6日
(65)【公開番号】特開2013-184169(P2013-184169A)
(43)【公開日】2013年9月19日
【審査請求日】2014年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120396
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】石川 雅之
(72)【発明者】
【氏名】山路 貴司
(72)【発明者】
【氏名】宇野 浩規
【審査官】 静野 朋季
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/004394(WO,A1)
【文献】 特開2003−334688(JP,A)
【文献】 特開2009−233686(JP,A)
【文献】 特開2009−154170(JP,A)
【文献】 特開2010−075934(JP,A)
【文献】 特開2002−361475(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 35/00−35/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Ag:2.8〜4.2重量%、Cu:0.4〜0.6重量%を含有し、残部がSn及び不可避不純物からなる成分組成を有し、
前記不可避不純物のうちFeが8ppm以下、Niが5ppm以下、Asが20ppm以下であり、
前記不可避不純物のうちAl,Zn,Pb,Bi,In及びSbの合計が15ppm以上かつ23ppm未満であることを特徴とするバンプ用はんだ合金粉末。
【請求項2】
請求項1に記載のバンプ用はんだ合金粉末と、フラックスとを混合したことを特徴とするバンプ用はんだペースト。
【請求項3】
請求項1に記載のバンプ用はんだ合金粉末を用いて形成されたことを特徴とするはんだバンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バンプ形成時にバンプ表面に生じる突起を抑制することができるバンプ用はんだ合金粉末、バンプ用はんだペースト及びはんだバンプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体の高密度実装技術としてはんだバンプによる接合技術が一般に用いられている。このはんだバンプに用いるはんだ合金粉末としては、例えば特許文献1に記載のPb−Snはんだ合金粉末などが知られている。また、近年の環境上の配慮等に対応して鉛フリーのはんだ合金の開発が進んでおり、この鉛フリーのはんだ合金としては、SnAg系やSnAgCu系の合金はんだが知られている。
【0003】
例えば、従来、特許文献2には、SnAgCu系の鉛フリーはんだが提案されている。この鉛フリーはんだは、Agを3.0〜5.0重量%,Cuを0.5〜3.0重量%、及び残部Snから成る組成を有するはんだ合金である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−233686号公報
【特許文献2】特許第3027441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の技術には、以下の課題が残されている。
すなわち、鉛フリーはんだとして代表的なSnAgCu系はんだ合金粉末を用いてペースト化後、印刷・リフロー処理を行い、はんだバンプを形成すると、はんだバンプにニードル状の突起が発生してバンプ形状不良となる場合があった。このニードル状の突起は、隣接する他のはんだバンプに接触してショートを引き起こすおそれがあり、特に、近年のファインピッチのはんだバンプでは、隣接するバンプ同士が近接しており、ニードル状の突起の発生が大きな問題となる。また、ニードル状の突起が生じるとバンプ高さの均一性が悪くなり、フリップチップ接合時のアッセンブリの際に接合ができなくなる不都合もあった。
【0006】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、ニードル状の突起の発生を抑制可能なバンプ用はんだ合金粉末、バンプ用はんだペースト及びはんだバンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、SnAgCu系のはんだ合金材料について鋭意検討の結果、含有される特定の不純物元素がニードル状の突起の発生要因となっていることを突き止めた。
【0008】
したがって、本発明は、上記知見から得られたものであり、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、第1の発明に係るバンプ用はんだ合金材料は、Ag:2.8〜4.2重量%、Cu:0.4〜0.6重量%を含有し、残部がSn及び不可避不純物からなる成分組成を有し、前記不可避不純物のうちFeが8ppm以下、Niが5ppm以下、Asが20ppm以下であることを特徴とする。
【0009】
すなわち、このバンプ用はんだ合金粉末では、不可避不純物のうちFeが8ppm以下、Niが5ppm以下、Asが20ppm以下であるので、ニードル状の突起発生の核となる金属間化合物を造りやすいFe,Ni,Asを上記含有量以内に制限することで、リフロー処理等ではんだバンプを形成した際にニードル状の突起の発生を抑制し、良好なバンプ形状を得ることができる。
【0010】
なお、Fe,Ni及びAsは、上述したようにニードル状の突起の発生を助長させる元素であり、それぞれが上記含有量を超えると、ニードル状の突起の発生率が大幅に高くなる。
また、Ag及びCuの含有量を上記範囲とした理由は、業界において、Ag含有量が多い鉛フリー合金の主成分としては、Sn3Ag0.5Cu,Sn4Ag0.5Cu合金が一般的であるためである。
【0011】
第2の発明に係るバンプ用はんだペーストは、第1の発明のバンプ用はんだ合金粉末と、フラックスとを混合したことを特徴とする。
【0012】
第3の発明に係るはんだバンプは、上記第1の発明のバンプ用はんだ合金粉末を用いて形成されたことを特徴とする。
すなわち、このはんだバンプでは、上記第1の発明のバンプ用はんだ合金粉末を用いて形成されているので、ニードル状の突起が生じず、良好なバンプ形状を有しており、ファインピッチのフリップチップであっても良好な接合が可能である。
なお、従来、ニードル状の突起は約25μm程度のものが発生しうるが、150μm以下のファインピッチでは、バンプ端部の間の距離が約50μmとなり、25μmの突起によってショートが発生する。このため、特に150μm以下のファインピッチ用途において、ニードル状の突起の発生を抑えた本発明の利用価値は極めて高いものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、本発明に係るバンプ用はんだ合金粉末、バンプ用はんだペースト及びはんだバンプによれば、不可避不純物のうちFeが8ppm以下、Niが5ppm以下、Asが20ppm以下であるので、ニードル状の突起の発生を抑制し、良好なバンプ形状を得ることができる。したがって、本発明によれば、ファインピッチの高密度フリップチップであっても良好な接合ができ、信頼性の高い高密度実装が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係るバンプ用はんだ合金粉末、バンプ用はんだペースト及びはんだバンプの一実施形態において、はんだペースト印刷時の状態を示す簡易的な断面図である。
図2】本実施形態において、リフロー処理のプロファイルを示すグラフである。
図3】本発明に係るバンプ用はんだ合金粉末、バンプ用はんだペースト及びはんだバンプの実施例において、良好なはんだバンプを示すSEM写真である。
図4】本発明に係るバンプ用はんだ合金粉末、バンプ用はんだペースト及びはんだバンプの比較例において、ニードル状の突起が生じたはんだバンプを示すSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るバンプ用はんだ合金粉末、バンプ用はんだペースト及びはんだバンプの一実施形態について、図1及び図2を参照して説明する。
【0016】
本実施形態におけるバンプ用はんだ合金粉末は、Ag:2.8〜4.2重量%、Cu:0.4〜0.6重量%を含有し、残部がSn及び不可避不純物からなる成分組成を有し、上記不可避不純物のうちFeが8ppm以下、Niが5ppm以下、Asが20ppm以下である。このバンプ用はんだ合金粉末の粒径は、例えば5〜15μmであり、平均粒径は、10.0〜11.0μmである。なお、この粒径は、レーザー回折・散乱式粒度分析計(Nikkiso社製MT3300)により測定している。また、上記不純物含有量の分析は、高周波誘導結合プラズマ発光分析装置(日本ジャーレル・アッシュ社製ICAP−577)を用いて行っている。
【0017】
このバンプ用はんだ合金粉末の作製方法は、まず、所定含有量になるように秤量したSn,Ag,Cuの各原料をルツボ内で溶解させて合金の溶湯とし、さらにこの合金を、ガスアトマイズ法などの手法を用いて造粒することにより、例えばSn−3重量%Ag−0.5重量%Cuのはんだ合金粉末(固相線温度:217℃、液相線温度:217℃)とする。
なお、不可避不純物のうちFeを8ppm以下、Niを5ppm以下、Asを20ppm以下とするため、上記製法中において、Sn,Ag,Cu原料(特にSn)の不純物を管理し、不純物量の低いものを選定している。
【0018】
また、このバンプ用はんだ合金粉末を用いてはんだバンプを作製するには、まず上記バンプ用はんだ合金粉末とフラックスとを、例えばフラックス比率:11質量%で混合してバンプ用はんだペーストとする。このはんだペーストの粘度は、約150Pa・sである。次に、図1に示すように、例えばバンプ形成用孔Hを設けたドライフィルムFをSiウエハWに貼り付け、該SiウエハW上のバンプ形成用孔H内に配したアンダーバンプメタルUBM上に上記はんだペーストPを印刷する。さらに、このはんだペーストPに対して2回のリフロー処理(1stリフロー及び2ndリフロー)を行ってはんだバンプBを作製する。
【0019】
上記フラックスは、一般的なフラックスを用いることができ、このフラックスには、通常、ロジン、活性剤、溶剤および増粘剤等が含まれる。また、フラックスとしては、ペーストの濡れ性の観点からRAやRMAフラックス等が好ましい。
なお、1stリフローの後に、バンプ形状を整えるため、ドライフィルムFを除去後、RMAポストフラックスを塗布し、再度2ndリフローを行ってはんだバンプBを得ている。
また、上記アンダーバンプメタルUBMは、Cu又はCuにOSP(有機膜処理)を施したもの、Au/Niメッキ処理やSnメッキ処理を施したものである。
【0020】
上記2回のリフロー処理(1stリフロー及び2ndリフロー)は、例えば図2に示すプロファイルにより行う。また、リフロー処理は、ベルト炉を使用し、窒素雰囲気中で行う。
このように作製したはんだバンプは、例えば直径約100μm、約高さ70μmである。また、バンプピッチは、例えば150μmである。
【0021】
このように本実施形態のバンプ用はんだ合金粉末では、不可避不純物のうちFeが8ppm以下、Niが5ppm以下、Asが20ppm以下であるので、ニードル状の突起発生の核となる金属間化合物を造りやすいFe,Ni,Asを上記含有量以内に制限することで、リフロー処理ではんだバンプを形成した際にニードル状の突起の発生を抑制し、良好なバンプ形状を得ることができる。
【0022】
また、本実施形態のはんだバンプでは、このバンプ用はんだ合金粉末を用いて形成されているので、ニードル状の突起が生じず、良好なバンプ形状を有しており、ファインピッチのフリップチップであっても良好な接合が可能である。
【実施例】
【0023】
次に、上記実施形態におけるバンプ用はんだ合金粉末、バンプ用はんだペースト及びはんだバンプに基づいて、はんだバンプを作製した実施例について、ニードル状の突起発生の有無に関して評価した結果を説明する。
【0024】
まず、本発明の実施例として、表1に示す成分組成及び不可避不純物のはんだ合金粉末を作製し、RAフラックスを表1に示すフラックス比率で混ぜてはんだペーストとした。すなわち、本発明の実施例1〜9は、すべて不可避不純物のうちFeが8ppm以下、Niが5ppm以下、Asが20ppm以下である。本実施例の各はんだペーストを用いて、上述したリフロー処理によってはんだバンプを形成した。そして、作製したはんだバンプを、SEM及び光学顕微鏡で観察することで、ニードル状の突起について発生の有無を調べ、その発生率(以下、ニードル発生率と称す)を算出した。
【0025】
なお、比較例として、本発明の範囲から外れる不可避不純物の含有量としたものを複数作製し、はんだバンプを作製して、同様にニードル発生率を求めた。これらの結果も併せて表1に示す。なお、比較例1〜3は、Feが本発明の範囲よりも多く含有され、比較例4〜6は、Niが本発明の範囲よりも多く含有されている。また、比較例7,8は、Asが本発明の範囲よりも多く含有されている。
なお、各実施例及び比較例において、測定したバンプ数はそれぞれ756個とした。
【0026】
【表1】
【0027】
この結果からわかるように、上記比較例は、いずれもニードル発生率が1%を超えているのに対し、本発明の実施例は、いずれもニードル発生率が1%未満であり、ニードル状の突起の発生が抑制されて良好なバンプ形状が得られている。
なお、本実施例のバンプ用はんだ合金粉末をペースト化して、印刷・リフローで形成したバンプで、良好なバンプ形状の例について、SEM写真を図3に示す。また、比較例について、ニードル状の突起が発生している例について、SEM写真を図4に示す。
【0028】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態及び上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0029】
B…はんだバンプ、F…ドライフィルム、P…はんだペースト、UBM…アンダーバンプメタル、W…Siウエハ
図1
図2
図3
図4