【文献】
Ranveer Chandar,Paramvir Bahl,PradeepBahl,MultiNet: connecting to multiple IEEE 802.11 networks using a single wireless card,INFOCOM 2004. Twenty-third AnnualJoint Conference of the IEEE Computer and Communications Societies,2004年 3月,第885頁左欄最終行-右欄第3行
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照し、この発明の実施形態について説明する。
(A:第1実施形態)
図1は、本発明に係る無線中継装置の第1実施形態である無線中継装置1Aのハードウェア構成例を示す図である。この無線中継装置1Aは、2.4GHz帯と5GHz帯の両方に対応した所謂デュアルバンド対応の中継装置(スイッチングハブ)である。この無線中継装置1Aは、2.4GHz帯の1つの無線通信チャネル(以下、CH(A))と5GHz帯の1つの無線通信チャネル(以下、CH(B))を巡回的に選択し、選択中の無線通信チャネルを介して、各々の周波数帯域に対応した無線端末装置と通信するように構成されている。なお、以下では、本実施形態のCH(A)およびCH(B)のように、無線端末装置との通信に実際に使用される無線通信チャネルのことを「通信対象チャネル」と呼ぶ。
【0017】
アンテナ101とRF部103は2.4GHz帯対応の無線通信部を構成し、アンテナ102とRF部104は5GHz帯対応の無線通信部を構成する。アンテナ101は2.4GHz帯の通信電波の送受信を行い、アンテナ102は5GHz帯の通信電波の送受信を行う。RF部103はアンテナ101により送受信される通信電波と内部信号との変換を行い、RF部104はアンテナ102により送受信する通信電波と内部信号との変換を行う。
【0018】
RF選択部105は、チャネル選択制御部123から与えられる選択指示に応じてRF部103とRF部104のいずれかを選択して送受信信号の帯域(チャネル)を切り替える。RF選択部105は、変調・符号化部126から与えられる内部信号を、RF部103とRF部104のうち上記選択指示に応じて選択した方へ与える。また、RF選択部105は、RF部103およびRF部104の各々から出力される内部信号(すなわち、各帯域の無線区間を介して受信したデータを表す信号)のうち、上記選択指示に応じて選択した方から出力される内部信号をキャリア信号検出部130に引き渡す。
【0019】
キャリア信号検出部130は、RF選択部105から与えられる信号(すなわち、受信信号)の周波数成分を解析し、チャネル選択制御部123により指示された無線通信チャネルのキャリア信号を取り出す。キャリア信号検出部130は、取り出したキャリア信号の信号強度が一定値以上であった場合に、当該キャリア信号を復調・復号化部106に与える。復調・復号化部106は、キャリア信号検出部130から与えられたキャリア信号の復調および復号化を行い、当該キャリア信号に重畳されているフレーム(より正確には、MACフレーム)を取り出す。そして、復調・復号化部106は、キャリア信号から取り出したMACフレームをフレーム振り分け部107に与える。
【0020】
フレーム振り分け部107は、復調・復号化部106から与えられるMACフレーム(以下、受信MACフレーム)の各々についてコントロールフレームとデータフレームの何れであるかを判別し、コントロールフレームについては無線制御部108に、データフレームについてはブリッジ機能部116に与える。ここで、コントロールフレームとは、相手装置との間の通信の制御に関わるフレームのことをいい、データフレームとは相手装置との間で送受信されるデータを伝送するためのフレームをいう。コントロールフレームであるのか、それともデータフレームであるのかの判別については、受信MACフレームのヘッダ部に含まれているフレーム種別情報を参照して行えば良い。
【0021】
無線制御部108は、無線MACレイヤ(すなわち、データリンク層)の通信制御を行う無線通信コントローラである。
図1に示すように、本実施形態の無線中継装置1Aは、2.4GHz帯および5GHz帯の各々に対応する2種類の無線通信部を有しているものの、無線MACレイヤの通信制御を行う無線通信コントローラについては無線制御部108を1つだけ有している。従来のデュアルバンド対応の無線中継装置(例えば、特許文献2に開示された無線中継装置)では、各通信規格に対応する無線通信部毎に専用の無線通信コントローラが設けられていることが一般的であった。本実施形態の無線中継装置1Aによれば、無線コントローラの数を削減できる分だけ、従来のデュアルバンド対応無線中継装置に比較して製造コストを低く抑えることができる。
【0022】
無線制御部108は、フレーム振り分け部107から与えられるコントロールフレームを解析し、無線MACレイヤの通信制御に用いるコンテキスト情報を抽出する。このようにして抽出されたコンテキスト情報は、RAMなどの制御情報保持手段に通信対象チャネル毎に保持される。より詳細に説明すると、CH(A)のコンテキスト情報はCH(A)制御情報保持手段109に保持され、CH(B)のコンテキスト情報はCH(B)制御情報保持手段110に保持される。また、MACレイヤの通信制御においては、無線中継装置1AのBSSを報知するためのビーコンの周期的な送信やCSMA/CA上のタイミング制御を行うために、各種制御タイミングを生成する手段が必要になる。CSMA/CAとは、無線LANにおける通信電波の衝突を回避するための仕組みであり、その詳細はIEEE802.11において定められている。このCSMA/CAの詳細についてはIEEE802.11を参照されたい。本実施形態では、各種制御タイミングを生成する手段も通信対象チャネル毎に設けられている。CH(A)タイミング生成手段111はCH(A)に関する制御タイミングを生成し、CH(B)タイミング生成手段112はCH(B)に関する制御タイミングを生成する。
【0023】
無線制御部108は、ビーコンフレームやMACレイヤの通信制御に関わるコントロールフレームを生成し、コントロールフレームキュー120に与える。コントロールフレームの生成は、その時点において選択されている通信対象チャネルに対してのみ行われる。このため、コントロールフレームキュー120は通信対象チャネル毎には設けられていない。フレーム振り分け部107から与えられたコントロールフレームが無線端末装置から送信された認証要求フレームである場合には、無線制御部108は、当該無線端末装置を受け入れ可能か否かを認証制御部113に問い合わせる。この問い合わせの際には、無線制御部108は、認証要求フレームを受信した通信対象チャネルを示すチャネル情報を選択チャネル保持手段125から取得し、当該チャネル情報を認証制御部113に与える。なお、認証要求フレームとは、無線中継装置1Aの利用(すなわち、無線中継装置1Aを介してデータ通信を行うこと)の許可を求める通信メッセージが書き込まれたフレームのことである。
【0024】
認証制御部113は、認証要求フレームを受信した無線通信チャネルに同認証要求フレームの送信元の無線端末装置を収容することが可能であるか否かの認証を行う。例えば、認証要求フレームを受信した無線通信チャネルが通信対象チャネルではない場合には上記認証は成功せず、また、当該無線通信チャネルが通信対象チャネルである場合であっても、認証要求フレームの送信元の無線端末装置が予め登録されたものではない場合には上記認証は成功しない。そして、認証制御部113は、上記認証に成功すると、認証に成功した旨の回答を無線制御部108に与えるとともに、その無線端末装置を示す情報(本実施形態では、MACアドレス)を認証リストに追加する。
図1に示すように、認証リストは通信対象チャネル毎に設けられており、認証制御部113は問い合わせを受けた際に与えられたチャネル情報に応じて、CH(A)認証リスト114またはCH(B)認証リスト115の何れかに認証に成功した無線端末装置を示す端末識別子(例えば、当該無線端末装置のMACアドレスなど)を追加する。これにより、CH(A)認証リスト114には、CH(A)を使用して無線中継装置1Aを介したデータ通信を行うことを許可された無線端末装置の端末識別子が格納され、CH(B)認証リスト115には、CH(B)を使用して無線中継装置1Aを介したデータ通信を行うことを許可された無線端末装置の端末識別子が格納される。CH(A)認証リスト114およびCH(B)認証リスト115は、後述するCH(A)データフレームキュー118、CH(B)データフレームキュー119およびコントロールフレームキュー120とともに、RAMなどにより構成された記憶手段(
図1では図示略)に格納されている。そして、無線制御部108は、上記問い合わせに対する回答(すなわち、認証の可否)を認証制御部113から受け取ると、その回答結果に対応するコントロールフレーム(認証応答フレーム)を生成し、コントロールフレームキュー120に与える。
【0025】
ブリッジ機能部116は、フレーム振り分け部107から与えられるデータフレームのブリッジ(転送制御)を行う。例えばCH(A)を介して受信したデータフレームをCH(B)を介して送信する(或いはその逆)制御を行う、といった具合である。また、無線中継装置1Aが有線LANI/Fを備え、有線LANにも接続されている場合には、ブリッジ機能部116は有線LANと無線LANの間のブリッジも行う。
【0026】
ブリッジ機能部116から出力されるフレーム(すなわち、無線区間に送出するデータフレーム:以下、送信データフレーム)は、データフレームキュー選択部117に与えられる。本実施形態では、送信データフレームを蓄積するためのキューは、通信対象チャネル毎に、CH(A)データフレームキュー118とCH(B)データフレームキュー119の2種類が設けられている。データフレームキュー選択部117は、送信データフレームのヘッダ部の送信先MACアドレスをキーとして各通信対象チャネルの認証リストを検索して何れの認証リストに登録されているのかを特定し、該当する認証リストに対応する通信対象チャネルのデータフレームキューに当該送信データフレームを与える。なお、送信データフレームがブロードキャストフレームである場合には、両方の送信データキューに与えるようにすれば良い。また、送信データフレームの送信先MACアドレスが何れの認証リストのMACアドレスとも一致しない場合には、データフレームキュー選択部117は、当該送信データフレームを破棄し、いずれのキューにも渡さない。
【0027】
送信フレーム選択部121は、CH(A)データフレームキュー118、CH(B)データフレームキュー119、およびコントロールフレームキュー120の各々からフレームを取り出し、変調・符号化部126に与える。ここで、各キューからのフレームの取り出しタイミングは無線制御部108によって指示される。また、何れのキューからフレームを取り出すのかについては以下の要領で定められる。まず、コントロールフレームキュー120に保持されているフレームは、CH(A)データフレームキュー118およびCH(B)データフレームキュー119に保持されているフレームよりも優先して取り出される。つまり、CH(A)データフレームキュー118およびCH(B)データフレームキュー119の各々に格納されているフレームは、無線制御部108によって指示される取り出しタイミングにおいてコントロールフレームキュー120が空である場合にのみ、取り出される。このように、コントロールフレームの取り出しを優先するのは、MACレイヤの通信制御に支障が生じないようにするためである。
【0028】
送信フレーム選択部121は、CH(A)データフレームキュー118またはCH(B)データフレームキュー119の何れかからフレームを取り出す際には、選択チャネル保持手段125に保持されている情報に応じて、その時点において選択されている通信対象チャネルに対応するデータフレームキューからフレームを取り出す。変調・符号化部126は、送信フレーム選択部121から与えられるフレームを、暗号化含め無線フレームとして符号化し、チャネル選択制御部123により指定された通信対象チャネルのキャリアに重畳する。そして、変調・符号化部126は、その重畳結果に対応する内部信号をRF選択部105に与える。
【0029】
図1のチャネル切り替えタイミング生成手段122は、例えば10ms(ミリ秒)周期のインターバルタイマー等であり、50ms或いは100ms、150ms間隔などの周期的なタイミングを生成し当該タイミングを示すタイミング信号を出力する。チャネル選択制御部123は、チャネル切り替えタイミング生成手段122から出力されるタイミング信号の表すタイミングを基本タイミングとして通信対象チャネルを切り替えるタイミングを決定し、RF選択部105に選択指示を与える。例えばビーコン周期が150msである場合には、チャネル切り替えの周期(以下、チャネル切り替え周期)を50msなどにすれば良い。チャネル選択制御部123は、このタイミング信号を受け取る毎に、CH(A)→CH(B)→CH(A)・・・といった具合に巡回的に通信対象チャネルを切り替える。つまり、本実施形態の無線中継装置1Aにおいて、RF選択部105と、チャネル切り替えタイミング生成手段122と、チャネル選択制御部123は、CH(A)とCH(B)の各々を巡回的に通信対象チャネルとして選択する選択手段の役割を果たす。
【0030】
より詳細に説明すると、上記タイミング信号を受け取ったチャネル選択制御部123は、まず、CTS(Clear To Send)フレーム送信制御部124に対してCTSフレームの送信指示を与える。ここで、CTSフレームとは、無線LANにおける隠れ端末問題を回避するためにIEEE802.11において定められたCTSメッセージを伝送するためのフレームである。CTSメッセージは、BSS内の無線通信装置のうちの1つにデータの送信許可を与え、他の無線通信装置に対しては通信の開始の差し止めを指示する通信メッセージである。このCTSメッセージには、アドレスフィールドとデュレーションフィールドが設けられており、アドレスフィールドにはデータの送信許可を与える無線通信装置の通信アドレスがセットされ、デュレーションフィールドには他の無線通信装置による通信の開始を差し止める期間の長さを示すデータがセットされる。CTSメッセージの詳細およびCTSメッセージを利用して隠れ端末問題を回避する仕組みであるRTS(Request to Send)/CTSの詳細についてはIEEE802.11を参照されたい。
【0031】
CTSフレーム送信制御部124は、アドレスフィールドには当該無線中継装置1AのMACアドレスを、デュレーションフィールドにはチャネル切り替え周期に応じた時間を各々設定したCTSフレームを生成し、コントロールフレームキュー120へ渡す。コントロールフレームキュー120は、送信フレーム選択部121によって当該CTSフレームが取り出されると、その時点キューイングされている他のコントロールフレームを全て破棄する。通信対象チャネルの切り替えが発生すると、その切り替え前の通信対象チャネルを介した通信の制御に関するコントロールフレームは最早無効だからである。チャネル選択制御部123は、CTSフレーム送信制御部124からCTSフレームの送信完了を通知されると、一定のガード時間を設けた後に、RF選択部105、復調・復号化部106および変調・符号化部126に対して新たな通信対象チャネルを指示する。ここで、ガード時間は、例えば10msなど、通信対象チャネルの切り替えに要する時間に応じて適切な値を選択するようにすれば良い。このようにして通信対象チャネルの切り替えが完了すると、選択チャネル保持手段125は、現在選択されている通信対象チャネルのチャネル番号を保持する。
以上が無線中継装置1Aの構成である。
【0032】
次いで、
図2を参照しつつ本実施形態の効果を説明する。
図2(A)は無線中継装置1AにおいてCH(A)が選択されている場合の無線LANの様子を示し、
図2(B)は無線中継装置1AにおいてCH(B)が選択されている場合の無線LANの様子を示す図である。
図2(A)および
図2(B)の各々において、無線端末装置aおよび無線端末装置cは2.4GHz帯に対応した装置であり、CH(A)を介して無線中継装置1Aとフレームの送受信を行う。一方、無線端末装置bおよび無線端末装置dは5GHz帯に対応した装置であり、CH(B)を介して無線中継装置1Aとフレームの送受信を行う。また、以下では、CH(A)およびCH(B)の両無線通信チャネルともにビーコン周期は100msであり、チャネル切り替え周期は50msであるとする。
【0033】
図2(A)に示すようにCH(A)が選択されている状況下で、無線端末装置aおよび無線端末装置cの各々が認証を要求し、その認証に成功すると、無線中継装置1AのCH(A)認証リスト114には、無線端末装置aおよび無線端末装置cの各々のMACアドレスが登録される。このように、無線中継装置1Aによる認証に成功すると、無線端末装置aおよび無線端末装置cの各々は、CH(A)を介して無線中継装置1Aにフレームを送信することができる。例えば、無線端末装置aから無線端末装置cへ宛てて送信されたデータフレームは、無線中継装置1Aによりブリッジされ、CH(A)データフレームキュー118を経由してその宛先の無線端末装置(すなわち、無線端末装置c)へと転送される。
【0034】
通信対象チャネルとしてCH(A)が選択されてからチャネル切り替え周期(本動作例では、50ms)が経過すると、無線中継装置1AはCTSフレームを送信してCH(A)における無線端末装置の通信を差し止める。この差し止め期間は、
図2(C)に示すように、次にCH(A)が選択されるまでの時間(50ms)にガード時間(10ms)を加えた期間(すなわち、60ms)となる。この差し止め期間においては、無線端末装置aおよび無線端末装置cの各々は、無線区間へ送信するフレームがあっても当該フレームをキューイングし、差し止め期間が終了するまでその送信を留保する。
【0035】
CTSフレームの送信後、無線中継装置1AはCH(B)に通信対象チャネルを切り替える。
図2(B)に示すようにCH(B)が選択されている状況下で、無線端末装置bおよび無線端末装置dの各々が認証を要求し、その認証に成功すると、無線中継装置1AのCH(B)認証リスト115には、無線端末装置bおよび無線端末装置dの各々のMACアドレスが登録される。このように、無線中継装置1Aによる認証に成功すると、無線端末装置bおよび無線端末装置dの各々はCH(B)を使用して無線中継装置1Aにフレームを送信することができる。例えば、無線端末装置bから無線端末装置dへ宛てて送信されたデータフレームは、無線中継装置1Aによりブリッジされ、CH(B)データフレームキュー119を経由してその宛先の無線端末装置(すなわち、無線端末装置d)へと転送される。また、CH(B)が選択されている期間に、例えば有線LANから無線端末装置aまたは無線端末装置c(すなわち、選択されていない通信対象チャネルを使用する端末)宛てのフレームが送信されてきた場合には、それらのフレームはCH(A)認証リスト114に基づきCH(A)データフレームキュー118にキューイングされ、送信が保留される。
【0036】
CH(B)を選択してからチャネル切り替え周期が経過すると、無線中継装置1AはCTSフレームを送信してCH(B)における無線端末装置の通信を差し止め、CTSフレームの送信後、CH(A)へ通信対象チャネルを切り替える。CH(A)の差し止め期間が終了すると、無線中継装置1Aは、CH(B)選択中にCH(A)データフレームキュー118にキューイングしたフレームがある場合には、まず、当該フレームの送信を行う。同様に、無線端末装置aおよび無線端末装置cの各々も、通信の差し止め期間中に送信を留保していたフレームがあった場合には、それらを順次送信する。なお、差し止め期間終了直後は、送信を留保されていたフレームの送信が殺到する可能性があるが、CSMA/CAの仕組みに従ってそれらフレームの送信制御を行えば良い。
【0037】
このように本実施形態の無線中継装置1Aによれば、1つの無線中継装置で2.4GHz帯に対応した無線端末装置と5GHz帯に対応した無線端末装置の各々と並行して通信することができ、複数の無線通信チャネルを有効に利用することが可能になり、無線LANの利便性が向上する。
【0038】
(B:第2実施形態)
次いで本発明の第2実施形態の無線中継装置1Bについて説明する。この無線中継装置1Bは、2.4GHz帯に属する複数の無線通信チャネル(本実施形態では、CH(A)、CH(C)およびCH(D))を巡回的に1つずつ選択し、選択した無線通信チャネルを用いて無線端末装置との通信またはその無線通信チャネルの電界強度の検出(すなわち、サイトサーベイ)の少なくとも一方を実行する。より詳細に説明すると、本実施形態では、CH(A)に関しては当該チャネルを介した通信と電界強度のモニタとを行い、CH(C)およびCH(D)の各々については電界強度のモニタのみを行う。ここで、通信対象チャネルであるCH(A)についての電界強度の測定を行うのは、当該チャネルにおける干渉の有無を検出するためである。なお、CH(C)およびCH(D)の各々については、5GHz帯の無線通信チャネルであっても良い。CH(C)およびCH(D)の各々が5GHz帯の無線通信チャネルであれば、5GHz帯については電界強度のモニタのみが行われる。
【0039】
本実施形態における無線通信チャネルの選択順としては、CH(A)、CH(C)およびCH(D)の各々をこの順に選択することが考えられる。しかし、電界強度のモニタのみを行う無線通信チャネル(以下、モニタ対象チャネル)が選択されている間は、通信対象チャネルを介した通信は差し止められるので、その差し止め期間が極力短くなるように、モニタ対象チャネルを連続して選択しない方が望ましい。例えば、本実施形態では、CH(A)→CH(C)→CH(A)→CH(D)→CH(A)→CH(C)・・・といった具合にチャネル選択を行うようにすれば良い。CH(A)を選択している状態では、まず、この無線通信チャネルを介した通信が行われ、その後、当該チャネルについてのモニタが行われる。
【0040】
図3は、本発明の第2実施形態の無線中継装置1Bの構成例を示す図である。
図3では
図1と同一の構成要素には同一の符号が付されている。
図3と
図1とを対比すれば明らかなように、無線中継装置1Bの構成は、電界強度測定手段127、電界強度測定制御部128および測定結果保持手段129を有する点が無線中継装置1Aの構成と異なる。なお、本実施形態においてCH(C)およびCH(D)は何れも2.4GHzに属する無線通信チャネルであるから、これらCH(C)およびCH(D)についての各種制御タイミングの生成にはCH(A)タイミング生成手段111を用いるようにすれば良い。
【0041】
図3のチャネル選択制御部123は、CTSフレームの送信指示をCTSフレーム送信制御部124に与える際に、切り替え先のチャネルがモニタ対象チャネル(或いは、モニタ対象かつ通信対象のチャネル)である場合には、電界強度測定制御部128に当該チャネルのチャネル番号を通知し、モニタリングの開始を指示する。モニタリングの開始を指示された電界強度測定制御部128は、電界強度測定手段127を使って電界強度を測定し、その測定結果は、測定結果保持手段129に保持される。無線中継装置1Bの運用管理者は、測定結果保持手段129に蓄積された測定結果を参照することで、より電波状況のよい無線通信チャネルの有無を把握したり、より電波状況のよい無線通信チャネルがある場合には通信対象チャネルを当該無線通信チャネルに変更するか否かなどの検討を行うことが可能になる。
以上が無線中継装置1Bの構成である。
【0042】
以上説明したように、本実施形態の無線中継装置1Bでは、通信対象チャネルとモニタ対象チャネルとを巡回的に選択するとともに、通信対象チャネルが選択されている間はその通信対象チャネルによる無線端末装置との通信が実行され、モニタ対象チャネルが選択されている間はそのモニタ対象チャネルについての電界強度の測定が行われる。モニタ対象チャネルの選択中は、無線中継装置1Bに収容される無線端末装置の通信が一斉に差し止められるが、モニタ対象チャネルを連続して選択しないようにしたり、単位時間当たりにおける通信対象チャネルの選択頻度に比べてモニタ対象チャネルの選択頻度を低く抑えるようにすれば、無線LANの利便性を大きく低下させることなく、無線中継装置1Bの運用中にモニタ対象チャネルの使用状況の計測を行うことが可能になる。
【0043】
なお、本実施形態では、2.4GHz帯に属するCH(A)を通信対象チャネルとし、同じく2.4GHz帯に属するCH(C)およびCH(D)をモニタ対象チャネルとした。しかし、第1実施形態と同様に2.4GHz帯に属するCH(A)と5GHz帯に属するCH(B)を通信対象チャネルとし、一方のチャネルについては無線端末装置とのデータ通信と電界強度のモニタの両方を行い、他方のチャネルについては無線端末装置とのデータ通信のみを行うようにしても良い。例えば、CH(A)については無線端末装置とのデータ通信と電界強度のモニタの両方を行い、CH(B)については無線端末装置とのデータ通信のみを行う場合には、
図4に示すように、CH(A)を介したデータ通信→CH(B)を介したデータ通信→CH(A)の電界強度のモニタ→CH(A)を介したデータ通信、といった具合にチャネル切り替えを行えば良い。また、CH(A)とCH(B)の両者について無線端末装置とのデータ通信と電界強度のモニタの両方を行うようにしても良く、この場合は、CH(A)を介したデータ通信→CH(A)の電界強度のモニタ→CH(B)を介したデータ通信→CH(B)の電界強度のモニタ→CH(A)を介したデータ通信、といった具合にチャネル切り替えを行えば良い。さらに、2.4GHz帯に属するCH(A)および5GHz帯に属するCH(B)の各々を通信対象チャネルとしてデータ通信にのみ使用し、2.4GHz帯に属するCH(C)をモニタ対象チャネルとして電界強度のモニタのみを行うとしても良い。この場合は、
図5に示すように、CH(A)を介したデータ通信→CH(B)を介したデータ通信→CH(C)の電界強度のモニタ→CH(A)を介したデータ通信、といった具合にチャネル切り替えを行えば良い。要は、複数の無線通信チャネルの各々を巡回的に選択し、選択された無線通信チャネルの少なくとも1つを介して無線端末装置と通信するとともに、選択された無線通信チャネルの各々について当該チャネルを介した通信と当該チャネルの電波状態の計測の少なくとも一方を実行する態様であれば良い。
【0044】
また、帯域毎にデータ通信に使用するのか、それとも電界強度の測定を行うのかを予め定めておいても良い。例えば、2.4GHz帯に属するチャネル(例えば、CH(A))については通信対象チャネルとしてデータ通信に使用し、5GHz帯に属するチャネル(例えば、CH(B))については電界強度の測定のみを行う、といった具合である。このような態様によれば、例えば現時点の無線LANでは2.4GHz帯を使用しているものの、将来的には5GHz帯への移行を検討している場合に、当該無線LANを稼動させつつ、5GHz帯における電波状況を把握することが可能になり、移行の可否の決定や移行先の5GHz帯にて使用するチャネルの選定を行う際の参考にすることができる。
【0045】
(C:第3実施形態)
次いで、本発明の第3実施形態について説明する。
図6は、本実施形態の無線中継装置1Cの構成例を示す図である。
図6では、
図1と同一の構成要素には同一の符号が付されている。
図6と
図1を比較すれば明らかなように、無線中継装置1Cの構成は、チャネル負荷率測定部131を設けた点が無線中継装置1Aの構成と異なる。
図6の無線中継装置1Cは、複数の無線通信チャネル(本実施形態では、CH(A)およびCH(B))のうちの1つを巡回的に選択して無線端末装置とのデータ通信を行う点は第1実施形態の無線中継装置1Aと同一である。しかし、無線中継装置1Cは、各チャネルが選択されている期間(以下、選択期間)において、その無線通信チャネルの負荷率をチャネル負荷率測定部131により測定し、チャネル切り替えのタイミング毎に各無線通信チャネルのチャネル負荷率に基づいて、当該チャネルについての選択期間(換言すれば、チャネル切り替え周期)の長さを動的に変更する点が無線中継装置1Aと異なる。
【0046】
より詳細に説明すると、本実施形態の無線中継装置1Cにおける変調・符号化部126は、送信フレームを表す内部信号をRF選択部105に与える毎に、その旨をチャネル負荷率測定部131へ通知する。同様に、キャリア信号検出部130は、受信信号を解析して取り出したキャリア信号を復調・復号化部106に与える際に、そのキャリア信号が検出されている旨をチャネル負荷率測定部131へ通知する。チャネル負荷率測定部131は、変調・符号化部126から通知を受けたことを契機として、通信フレームを送信していた時間を計測する。また、チャネル負荷率測定部131は、キャリア信号検出部130から通知を受けたことを契機として、受信キャリア信号の検出されていた時間を計測する。そして、チャネル負荷率測定部131は、通信フレームを送信していた時間と受信キャリア信号の検出されていた時間の合計が当該チャネルの選択期間に占める割合を、その時点において選択されている無線通信チャネルのチャネル負荷率としてチャネル選択制御部123へ通知する。チャネル選択制御部123は、チャネル負荷率測定部131から通知されたチャネル負荷率を、チャネル毎に設けられたリングバッファ(たとえば、直近の5つの選択期間についてのチャネル負荷率を記憶するリングバッファ:
図6では図示略)に書き込む。
【0047】
無線中継装置1Aのチャネル選択制御部123は、50ms間隔でCH(A)とCH(B)を交互に切り替えた(すなわち、CH(A)およびCH(B)の各々の選択期間の長さは固定であり、その長さは50ms)。これに対して、無線中継装置1Cのチャネル選択制御部123は、基本的には50ms間隔でCH(A)とCH(B)を交互に切り替るものの、チャネル切り替えのタイミング毎にチャネル負荷率測定部131から通知されるチャネル負荷率およびチャネル毎にリングバッファに格納されているチャネル負荷率に基づいて、各チャネルの選択期間を変更する必要があるか否かを判定し、必要ありと判定した場合には当該期間を動的に変更する。より詳細に説明すると、無線中継装置1Cのチャネル選択制御部123は、
図7に示すフローチャートにしたがって各チャネルの選択期間を決定する。
【0048】
図7に示すように、無線中継装置1Cのチャネル選択制御部123は、まず、チャネル負荷率測定部131から通知されたチャネル負荷率を取得し(ステップSA100)、CH(A)のチャネル負荷率と、直前の選択期間(すなわち、CH(B)についての直近の選択期間)におけるCH(B)のチャネル負荷率とを比較し、前者が後者の2倍以上であるか否かを判定する(ステップSA110)。ステップSA110の判定結果が“Yes”である場合には、チャネル選択制御部123は、さらに、CH(A)についての直近の5つの選択期間に亘って、チャネル負荷率がCH(B)のチャネル負荷率の2倍以上となっている状態が継続しているか否かを判定する(ステップSA120)。ステップSA120の判定結果が“Yes”の場合には、チャネル選択制御部123は、CH(A)についての選択期間を1.2倍にし、CH(B)についての選択期間を0.8倍にする(ステップSA130)。逆に、ステップSA120の判定結果が“No”の場合には、チャネル選択制御部123は、各チャネルの選択期間を初期値(例えば、50ms)に戻して当該処理を終了する。
【0049】
これに対してステップSA110の判定結果が“No”の場合には、無線中継装置1Cのチャネル選択制御部123は、CH(B)のチャネル負荷率がCH(A)のチャネル負荷率の2倍以上であるか否かを判定する(ステップSA140)。ステップSA140の判定結果が“Yes”である場合には、チャネル選択制御部123は、さらに、CH(B)について、そのチャネル負荷率がCH(A)のチャネル負荷率の2倍以上になっている状態が直近の5つの選択期間に亘って継続しているか否かを判定し(ステップSA150)、その判定結果が“Yes”の場合には、CH(B)の選択期間を1.2倍にし、CH(A)の選択期間を0.8倍にする(ステップSA160)。逆に、ステップSA150の判定結果が“No”の場合には、チャネル選択制御部123は、各チャネルの選択期間を初期値(50ms)に戻して当該処理を終了する。
【0050】
つまり、本実施形態では、チャネル間の負荷率の差が2倍以上になり、負荷の重い方のチャネルについてその状態が直近の5つの選択期間に亘って継続していた場合に、負荷の軽い方のチャネルの選択期間を80%に減らし、代わりに負荷の重い方のチャネルの選択期間を120%に増やす処理が負荷率の差が2倍未満になるまで繰り返し実行される。例えば、チャネル切り替え周期が50msである場合、CH(A)の負荷率が20%以上、CH(B)の負荷率が10%未満の状態がCH(A)についての直近の5つの選択期間に亘って継続すると、両チャネルの負荷率の差が2倍未満になるまで各チャネルの選択期間を変更する処理が実行される。すなわち、CH(A)の選択期間は50ms×1.2=60msとされ、CH(B)の選択期間は50ms×0.8=40msとされる。その結果、
図8に示すように、CTSによる通信差し止め期間は、CH(A)についてはCH(B)の選択期間である40msにガード時間10msを加えた50msとなり、同様にCH(B)については70msとなる。
【0051】
以上説明したように本実施形態の無線中継装置1Cによれば、第1実施形態と同様の効果に加えて、チャネル負荷率の軽い無線通信チャネル(すなわち、使用率の低い無線通信チャネル)の選択期間を短くし、逆にチャネル負荷率の重い無線通信チャネル(すなわち、利用率の高い無線通信チャネル)の選択期間を長くすることで、より効率的に各無線通信チャネルを使用することが可能になる。
【0052】
(D:第4実施形態)
図9は、本発明の第4実施形態の無線中継装置1Dの構成例を示す図である。
図9では
図3と同一の構成要素には同一の符号が付されている。
図9と
図3とを比較すれば明らかなように、無線中継装置1Dの構成は、CH(A)フレーム誤り率保持手段132、CH(B)フレーム誤り率保持手段133、モニタ結果反映部134、モニタ結果反映タイミング生成手段135、および通信速度切り替えパターン保持手段136を有する点が無線中継装置1Bの構成と異なる。
【0053】
無線中継装置1Dにおいては、復調・復号化部106は、受信信号からMACフレームを取り出す際にMACフレームの正当性をチェックする。より詳細に説明すると、復調・復号化部106は、受信フレームのペイロード部を参照してCRC値を算出し、当該受信フレームのヘッダ部のCRCフィールドに格納されているCRC値と一致するか否かを判定する。そして、両CRC値が不一致となった場合には、復調・復号化部106は当該フレームをデータ誤りを含むものとみなして破棄する。復調・復号化部106は、CRCエラー(すなわち、上記CRC値の不一致)の検出されたフレーム数と受信フレーム数の比を無線通信チャネル毎に算出し、各無線通信チャネルのフレーム誤り率として出力する。CH(A)のフレーム誤り率はCH(A)フレーム誤り率保持手段132に保持され、CH(B)のフレーム誤り率はCH(B)フレーム誤り率保持手段133に保持される。
【0054】
モニタ結果反映タイミング生成手段135は、定期的な電界強度のモニタ結果を通信パラメータ(無線通信チャネル、通信速度の切り替えパターン、送信電力)に反映するための基本タイミング(例えば1時間に1回のタイミング)を生成する。この基本タイミングにおいてモニタ結果反映部134が起動され、上記通信パラメータへの上記モニタ結果の反映が実現される。モニタ結果反映部134は、定期的な電界強度のモニタ結果から、通信状況をより改善するための調整を行う。以下、前述した第2実施形態と同様に、2.4GHz帯に属するCH(A)を通信対象チャネルとし、CH(C)およびCH(D)をモニタ対象チャネルとする場合を例にとって、2.4GHz帯の通信状況の改善を試みる場合について説明する。
【0055】
図10は、モニタ結果反映部134が実行するモニタ結果反映処理の流れを示すフローチャートである。
図10に示すように、モニタ結果反映部134は、まず、通信対象チャネル(本実施形態では、CH(A))において自BSS以外の電波が検出されたか否かを判定する(ステップSB100)。ステップSB100の判定結果が“No”であれば、モニタ結果反映部134はモニタ結果反映処理を即座に終了する。自BSS以外の電波が検出されていない(すなわち、干渉がない)のであれば、通信状況の改善を行う必要はないからである。逆に、ステップSB100の判定結果が“Yes”である場合には、モニタ結果反映部134は、CH(C)が空きチャネルであるか否かを判定する(ステップSB110)。より詳細に説明すると、モニタ結果反映部134は、CH(C)についてのモニタ結果において、過去24時間に渡って他の電波が検出されていなければ、空きチャネルであると判定する。
【0056】
ステップSB110の判定結果が“Yes”であれば、モニタ結果反映部134は通信対象チャネルをCH(C)に変更し(ステップSB120)、モニタ結果反映処理を終了する。通信対象チャネルの変更を行う際には、モニタ結果反映部134は、同じ2.4GHz帯のCH(A)の認証リストをクリアするとともに、チャネル選択制御部123にチャネル変更を指示する。ステップSB110の判定結果が“No”である場合には、モニタ結果反映部134は、CH(D)が空きチャネルであるか否かを判定する(ステップSB130)。そして、ステップSB130の判定結果が“Yes”であれば、モニタ結果反映部134は通信対象チャネルをCH(D)に変更し(ステップSB140)、モニタ結果反映処理を終了する。ステップSB130の判定結果が“No”である場合には、モニタ結果反映部134は、ステップSB150以降の処理を実行する。
【0057】
ステップSB130の判定結果が“No”である場合(すなわち、CH(C)およびCH(D)の何れも空きチャネルではない場合)に実行されるステップSB150では、モニタ結果反映部134はCH(A)フレーム誤り率保持手段132からフレーム誤り率を取得し、当該フレーム誤り率が所定のしきい値以上であるか否かを判定する。ここで、フレーム誤り率が所定のしきい値以上であるか否かを判定する理由は以下の通りである。干渉源が同じIEEE802.11無線LANであり、相手側の電波が充分な強度で到達している場合には、互いにCSMA/CAに従って動作するので、通信速度は低下するもののフレーム誤り率は低くなる。一方、干渉源がIEEE802.11無線LANではない場合やIEEE802.11無線LANであっても相手側の電波が充分な強度で到達していない場合には、通信媒体上で電波の衝突が起こりフレームが破壊され、フレーム誤り率は高くなる。つまり、干渉源がIEEE802.11無線LANであって相手側の電波が充分な強度で到達しているのか、それとも、干渉源がIEEE802.11無線LANではない(或いは、IEEE802.11無線LANであるものの当該無線LANの電波が充分な強度で到達していない)のかを判別するために、フレーム誤り率と所定のしきい値との大小比較を行うのである。
【0058】
ステップSB150の判定結果が“No”の場合には、モニタ結果反映部134は、干渉源がIEEE802.11無線LANであって相手の電波が充分な強度で到達している旨を通知するメールを生成し、メール送信手段137によってシステム管理者へ送信する(ステップSB160)。この場合、自力では改善が望めないからである。このメールを受けたシステム管理者は、周囲のシステムも含めたチャネルの再配置など改善措置をとれば良い。
【0059】
逆に、ステップSB150の判定結果が“Yes”である場合には、モニタ結果反映部134は、現在選択している通信速度が最も低い通信速度であるか否かを判定し(ステップSB170)、その判定結果が“No”である場合には、通信速度のさらに低く切り替えることを変調・符号化部126に指示する(ステップSB180)。通信媒体上の通信速度(リンク速度)は通信状況に合わせて随時変更されることが一般的であり、電波状況の良い状態ではより高速な通信速度が選択されるといった具合である。本実施形態では、予め複数の通信速度のパターンが用意されており、これら各パターンは通信速度切り替えパターン保持手段136に保持されている。変調・符号化部126は、通信速度切り替えパターン保持手段136に保持されている通信速度パターンに従って変調時の通信速度を決定する。ステップSB150の判定結果が“Yes”である場合に、通信速度をさらに低くするのは、一般的に、電波妨害を受けてもフレームを再生できる可能性が高まるからである。
【0060】
ステップSB170の判定結果が“Yes”である場合(すなわち、通信速度が下限いっぱいまで引き下げられていても、電波状況が改善されていない場合)は、モニタ結果反映部134は、現在の送信電力がその上限値に達しているか否かを判定し(ステップSB190)、その判定結果が“No”である場合には、送信電力を上げる(ステップSB200)。干渉源がIEEE802.11無線LANであれば、送信電力を上げることで干渉源側におけるCSMA/CA競合制御に従うようになると期待されるからである。なお、ステップSB190の判定結果が“Yes”である場合には、モニタ結果反映部134は自力では改善が望めないため、システムの管理者へ改善要請のためのメールをメール送信手段137によって送信する(ステップSB210)。
【0061】
このように、本実施形態の無線中継装置1Dによれば、通信対象チャネルの電界強度のモニタ結果から干渉が発見された場合に、通信対象チャネルの切り替えや通信パラメータの調整など、通信状況をより改善するためのアクションが自動的に実行される。なお、本実施形態では、フレーム誤り率が所定のしきい値を超えている場合(ステップSB150の判定結果が“Yes”である場合)には、まず、通信速度の切り替えが可能であるか否かの判定(ステップSB170)を行い、通信速度の切り替えができない場合(ステップSB170の判定結果が“No”である場合)に送信電力の引き上げが可能であるか否かの判定(ステップSB190)を行った。しかし、フレーム誤り率が所定のしきい値を超えている場合には、まず、送信電力の引き上げが可能であるか否かの判定を行い、送信電力の引き上げを行えない場合に通信速度の切り替えが可能であるか否かの判定を行うようにしても良い(すなわち、
図10においてステップSB170とステップSB190とを入れ換えても良い)。
【0062】
また、本実施形態では、干渉が発見された場合(ステップSB100の判定結果が“Yes”である場合)には、まず、空チャネルへの変更を試みる処理(ステップSB110からステップSB140の処理)を行ったが、ステップSB110からステップSB140の処理を省略し、干渉が発見された場合には即座にステップSB150の処理を実行するようにしても良い。また、ステップSB110からステップSB140の処理を省略するのではなく、通信速度の引き下げを試みる処理(ステップSB170およびSB180の処理)と送信電力の引き上げを試みる処理(ステップSB190およびSB200の処理)の何れか一方、或いは両方を省略しても良い。なお、通信速度の引き下げを試みる処理と送信電力の引き上げを試みる処理の両方を省略する場合には、ステップSB150およびSB160の処理も省略可能である。この場合は、空きチャネルがない場合には管理者へのメール送信(ステップSB210)が即座に実行されることになる。
【0063】
(E:変形)
以上本発明の各実施形態について説明したが、これら実施形態に以下に述べる変形を加えて勿論良い。
(1)上記各実施形態では、2.4GHz帯と5GHz帯の両方に対応したデュアルバンド対応の無線中継装置への本発明の適用例を説明したが、何れか1つの周波数帯域内の複数の無線通信チャネルの各々を巡回的に選択し、選択した無線通信チャネルの各々において電波状態の計測と当該無線通信チャネルの電波を使用した無線端末装置との通信の少なくとも一方を実行する無線中継装置に本発明を適用しても勿論良い。また、3つ以上の周波数帯域に対応した無線中継装置に本発明を適用しても良い。現時点では、無線LANにおける通信電波の周波数帯域は2.4GHz帯と5GHz帯の2種類であるが、将来、さらに別の周波数帯域が利用される可能性もあるからである。また、上記各実施形態では、無線端末装置を収容しスイッチングハブとして機能する無線中継装置への本発明の適用例を説明した。しかし、無線端末装置を収容しルータとして機能する無線中継装置に本発明を適用しても良く、この場合は、無線端末装置を識別する端末識別子としてMACアドレスに換えてIPアドレスを用いるようにすれば良い。
【0064】
(2)上記各実施形態では、チャネル切り替えを行う際にCTSメッセージを送信し、切り替え前の無線通信チャネルを使用して通信を行っていた無線端末装置に一定期間(すなわち、次に当該無線通信チャネルが選択されるまでの期間)通信を差し止めることを指示したが、CTSメッセージと同一の役割を果たす新たなメッセージ(例えば、アプリケーション層のメッセージ)を定義し、CTSメッセージの送信に換えて当該新たなメッセージのブロードキャストを無線中継装置1A、1B、1Cおよび1Dの各々に実行させても良い。また、上記のような通信の差し止めを行うことで、無線端末装置との通信に使用されていた無線通信チャネルが選択されていない期間において、その無線端末装置が無駄なデータ送信を行うことが回避される、といった効果が奏されるのであるが、無駄なデータ送信の発生が問題とならない場合には、上記のような通信の差し止め(すなわち、CTSメッセージの送信)を行わなくても良い。
【0065】
(3)上記各実施形態では、他の無線通信チャネルが選択されている期間に当該無線通信チャネルを使用する無線端末装置宛のフレームが送信されてきた場合には当該フレームをキューに蓄積し、当該無線通信チャネルが再度選択された時点でその無線端末装置へ送信する場合について説明した。しかし、各無線端末装置が実行する通信がWebページの閲覧のように状態の保存を要しない通信であれば、上記のようなキューイングを行う必要はない。
【0066】
(4)上記各実施形態では、複数の無線通信チャネルの各々を巡回的に選択する選択手段(各実施形態におけるRF選択部105、チャネル切り替えタイミング生成手段122、およびチャネル選択制御部123)と、選択手段により選択された無線通信チャネルの少なくとも1つを介して無線端末装置と通信するとともに、選択手段により選択された無線通信チャネルの各々について、当該チャネルを介した通信と当該チャネルの電波状態の計測の少なくとも一方を実行する通信制御手段(第1および第3実施形態にあっては送信フレーム選択部121およびCTSフレーム送信制御部124(なお、CTSフレームの送信を行わない態様であれば、CTSフレーム送信制御部124は不要)、第2および第4実施形態にあってはさらに電界強度測定手段127、電界強度測定制御部128および測定結果保持手段129)の各々をハードウェアで構成し、これらハードウェアを組み合わせて上記各実施形態の無線中継装置を実現した。しかし、複数の無線通信チャネルの各々を巡回的に選択するステップと、選択した無線通信チャネルの少なくとも1つを介して無線端末装置と通信するとともに、選択した無線通信チャネルの各々について当該チャネルを介した通信と当該チャネルの電波状態の計測の少なくとも一方を実行するステップとからなる通信制御方法をコンピュータに実行させるプログラムを提供し、このプログラムにしたがって無線中継装置の制御部を作動させるようにしても良い。なお、このようなプログラムの提供態様としては、CD−ROMなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体に書き込んで配布する態様や、インターネットなどの電気通信回線経由のダウンロードにより配布する態様が考えられる。