特許第5966469号(P5966469)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5966469
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】封止接点装置
(51)【国際特許分類】
   H01H 50/42 20060101AFI20160728BHJP
   H01H 9/44 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
   H01H50/42 A
   H01H9/44 A
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-59296(P2012-59296)
(22)【出願日】2012年3月15日
(65)【公開番号】特開2013-196783(P2013-196783A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2015年2月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084146
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100100170
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 厚司
(74)【代理人】
【識別番号】100103012
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 隆宣
(72)【発明者】
【氏名】矢野 啓介
(72)【発明者】
【氏名】林田 靖雄
(72)【発明者】
【氏名】橋本 竜一
(72)【発明者】
【氏名】森 真吾
(72)【発明者】
【氏名】岡本 拓真
【審査官】 片岡 弘之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/115049(WO,A1)
【文献】 特開2003−197053(JP,A)
【文献】 国際公開第01/027950(WO,A1)
【文献】 実開昭55−029045(JP,U)
【文献】 特開2005−285547(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 50/42
H01H 9/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジング内に対向させて配置した固定接点および可動接点と、
前記固定接点および前記可動接点を間にして対向するように配置し、かつ、前記固定接点および前記可動接点の間に生じたアークを磁力誘引する一対の永久磁石と、を備えた封止接点装置であって、
板状の連結体と、前記連結体の両端部から垂直にそれぞれ起立し、かつ、前記固定接点および前記可動接点を間にして対向する一対の腕部と、を有する金属製のアーク用シールド部材を備え、
前記永久磁石の対向面が前記可動接点の往復移動方向に沿っている一方、
前記アーク用シールド部材の連結体が、前記永久磁石の対向面に沿うように配置されているとともに、一対の前記腕部が、前記可動接点の往復移動方向に沿うように起立し、
前記ハウジング内のうち、前記アークが前記固定接点と前記可動接点との間に流れる電流、および、前記永久磁石の磁力によって誘引される位置に、前記アーク用シールド部材を配置したことを特徴とする封止接点装置。
【請求項2】
前記アーク用シールド部材が、少なくとも1つのアーク受け片を有することを特徴とする請求項1に記載の封止接点装置。
【請求項3】
前記アーク用シールド部材が、断面略コ字形状を有し、かつ、前記ハウジング内に設けられたことを特徴とする請求項1または2に記載の封止接点装置。
【請求項4】
前記アーク用シールド部材が、断面略コ字形状を有し、かつ、前記ハウジング内の底面に設けられたことを特徴とする請求項3に記載の封止接点装置。
【請求項5】
前記アーク用シールド部材が、板状の連結体と、前記連結体の両端から略垂直にそれぞれ起立した腕部と、からなり、
前記連結体または前記腕部の少なくとも一方に、少なくとも1つのアーク受け片を設けたことを特徴とする請求項2ないし4のいずれか1項に記載の封止接点装置。
【請求項6】
前記連結体の縁部に、少なくとも1つの前記アーク受け片を設けたことを特徴とする請求項5に記載の封止接点装置。
【請求項7】
前記腕部の縁部に、少なくとも1つの前記アーク受け片を設けるとともに、前記腕部の内向面に突き出し部を設けたことを特徴とする請求項5または6に記載の封止接点装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は封止接点装置、特に、発生したアークを迅速に消失させることができるパワー負荷用電磁継電器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、封止接点装置に用いるアークの消失装置として、例えば、特許文献1において、可動接触子の接点から固定接触子の接点が離間するときに、可動接触子と固定接触子との間に発生するアークを、アークバリアの左右側壁間で絞り込んで消失させる装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−285547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述の消失装置では、その図1に示すように、接点間に生じるアークがアークバリア5に当たる場合にはアークを消失できるが、当たらない場合には迅速、かつ確実に消失できないという問題点があった。
【0005】
本発明は、前記従来の問題点に鑑みてなされたもので、発生したアークを誘引して迅速、かつ確実に消失させることができる封止接点装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明に係る封止接点装置は、
ハウジングと、
前記ハウジング内に対向させて配置した固定接点および可動接点と、
前記固定接点および前記可動接点を間にして対向するように配置し、かつ、前記固定接点および前記可動接点の間に生じたアークを磁力誘引する一対の永久磁石と、を備えた封止接点装置であって、
板状の連結体と、前記連結体の両端部から垂直にそれぞれ起立し、かつ、前記固定接点および前記可動接点を間にして対向する一対の腕部と、を有する金属製のアーク用シールド部材を備え、
前記永久磁石の対向面が前記可動接点の往復移動方向に沿っている一方、
前記アーク用シールド部材の連結体が、前記永久磁石の対向面に沿うように配置されているとともに、一対の前記腕部が、前記可動接点の往復移動方向に沿うように起立し、
前記ハウジング内のうち、前記アークが前記固定接点と前記可動接点との間に流れる電流、および、前記永久磁石の磁力によって誘引される位置に、前記アーク用シールド部材を配置したものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、アークが任意の方向に発生しても、電流および磁力で所望の方向に誘引してアーク用シールド部材に当てることで、アークを消失できる。
また、電流や磁性が変化することによって、アークの発生する方向が変わっても、接点のいずれか一方の側でアークをアーク用シールド部材に当てて、消失できる。
さらに、アーク用シールド部材に当たるアークを冷却し、アークを消失する能力を高めることができる。
【0008】
本発明の実施形態としては、
前記アーク用シールド部材が、少なくとも1つのアーク受け片を有してもよい。
【0009】
これにより、アーク用シールド部材の表面積を大きくしてアークが当たりやすくなり、アークを消失する能力を高めることができる。
【0010】
本発明の他の実施形態としては、前記アーク用シールド部材が、断面略コ字形状を有し、かつ、前記ハウジング内に設けられてもよい。
板状のアーク用シールド部材に比べて断面を略コ字型に形成することで、アーク用シールド部材を把持しやすくなり、密封空間への取付け作業性が良くなる。
【0011】
本発明の別の実施形態としては、前記アーク用シールド部材が、断面略コ字形状を有し、かつ、前記ハウジング内の底面に設けられてもよい。
【0012】
これにより、固定接点と可動接点との動きを邪魔せず、アーク用シールド部材のハウジング内への載置性を確保できる。
【0013】
本発明の異なる実施形態としては、前記アーク用シールド部材が、板状の連結体と、前記連結体の両端から略垂直にそれぞれ起立した腕部と、からなり、
前記連結体または前記腕部の少なくとも一方に、少なくとも1つのアーク受け片を設けてもよい。
【0014】
本発明の別の実施形態としては、前記連結体の縁部に、少なくとも1つの前記アーク受け片を設けてもよい。
【0015】
本発明の他の実施形態としては、前記腕部の縁部に、少なくとも1つの前記アーク受け片を設けるとともに、前記腕部の内向面に突き出し部を設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る封止接点装置の実施形態を示す全体斜視図である。
図2図1で示した封止接点装置の分解斜視図である。
図3】(A)は図1で示した封止接点装置の動作前の側面断面図,(B)はその正面断面図である。
図4】(A)は本発明に係る第1実施形態のアーク用シールド部材の斜視図、(B)はその側面図である。
図5】(A)は本発明に係る第2実施形態のアーク用シールド部材の斜視図、(B)はその側面図である。
図6】(A)は本発明に係る第3実施形態のアーク用シールド部材の斜視図、(B)はその側面図である。
図7】(A)は本発明に係る第4実施形態のアーク用シールド部材の斜視図、(B)はその側面図である。
図8】(A)は本発明に係る第5実施形態のアーク用シールド部材の斜視図、(B)はその側面図である。
図9】(A)は本発明に係る第6実施形態のアーク用シールド部材の斜視図、(B)はその側面図である。
図10】(A)は本発明に係る第7実施形態のアーク用シールド部材の斜視図、(B)はその側面図である。
図11】(A)は本発明に係る第8実施形態のアーク用シールド部材の斜視図、(B)はその側面図である。
図12】アーク用シールド部材がある場合とない場合における接点間の遮断回数に対する封止接点装置の絶縁抵抗を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る封止接点装置を密封型電磁継電器に適用した一実施形態を、図1ないし図12の添付図面に従って説明する。
本実施形態に係る密封型電磁継電器は、図2に示すように、ケース10にカバー20を組み付けて形成したハウジング内に、接点機構部30と、この接点機構部30を密封空間43外から駆動する電磁石部50と、を収納してある。接点機構部30は、セラミックプレート31、金属製筒状フランジ32、板状第1ヨーク37および有底筒体41からなる密封空間43内に組み込まれている。
【0018】
前記ケース10は、略箱型形状の樹脂成形品であり、外側面の下方角部に取付孔11を設ける一方、その側面隅部に図示しないリード線を引き出すための膨出部12を形成してあるとともに、対向する側面の開口縁部に係止孔13を設けてある。
【0019】
前記カバー20は、前記ケース10の開口部を被覆可能な平面形状を有するとともに、その上面中央に突設した仕切り壁21の両側に端子孔22,22をそれぞれ設けてある。また、前記カバー20は、その片側側面に、前記ケース10の膨出部12に挿入することにより、図示しないリード線のいわゆるバタツキを防止できる突出部23を設けてある。さらに、前記カバー20は、対向する側面の開口縁部に前記ケース10の係止孔13に係止可能な係止用爪部24を設けてある。
【0020】
前記接点機構部30は、前述したようにセラミックプレート31、金属製筒状フランジ32、板状第1ヨーク37および有底筒体41で形成された密封空間43(図3(A)参照)内に配置され、磁石ホルダー35、筒状固定鉄芯38、可動鉄芯42、可動軸45および可動接触片48にて構成されている。
【0021】
前記セラミックプレート31は、後述する金属製筒状フランジ32の上方開口縁部にロウ付け可能な平面形状を有し、一対の端子孔31a,31aを設け、補助プレート31cと組み合わせて使用される。また、前記セラミックプレート31は、その上面の外周縁部および前記端子孔31aの開口縁部に図示しない金属層をそれぞれ形成してある。そして、図3(B)に示すように、前記セラミックプレート31の端子孔31aに、下端部に固定接点33aを固着した固定接点端子33をロウ付けする。
【0022】
前記セラミックプレート31の上面外周縁部にロウ付けされる金属製筒状フランジ32は、図2に示すように、金属板をプレス加工で形成した略筒形状を有するものである。そして、前記金属製筒状フランジ32は、その下方側の外周縁部を後述する板状第1ヨーク37に溶接一体化してある。
【0023】
前記金属製筒状フランジ32内に収納される磁石ホルダー35は、箱形状を有する耐熱性の絶縁材からなり、その対向する両側外側面に永久磁石36を保持できるポケット溝35aをそれぞれ形成してある。また、前記磁石ホルダー35は、その底面中央に環状受け台35c(図3(B)参照)を一段低く設けるとともに、前記環状受け台35cの中心から筒状絶縁部35bを下方側に突設してある。前記筒状絶縁部35bは、アークが発生し、金属製筒状フランジ32、板状第1ヨーク37および筒状固定鉄芯38の経路で高電圧になっても、筒状固定鉄芯38と可動軸45とを絶縁することにより、両者の溶着一体化を防止する。更に、磁石ホルダー35の内部に対向するように配置される位置決め用プレート26が可動接触片48に当接するように配置され、前記可動接触片48を回り止めして位置決めしている。そして、磁石ホルダー35と板状第1ヨーク37との間には、ゴム板27が配置され、固定接点33aと可動接点48aとが離間する際に、磁石ホルダー35と環状鍔部45aとの間に生じる衝撃を緩衝している。
【0024】
また、磁石ホルダー35の内部には、本発明の第1実施形態に係るアーク用シールド部材61が配設されている。このアーク用シールド部材61は、例えばステンレスなど金属製であり、図4(A)および図4(B)に示すように、断面略コの字型に形成されている。
【0025】
すなわち、アーク用シールド部材61は、板状の連結体62と、前記連結体62の両端部を上方に折り曲げて形成した腕部63とを備えている。連結体62の対向する縁部にはそれぞれ、上方に切り起こした舌片(アーク受け片)64が形成されている。腕部63は、上端を内方に折り曲げて形成した上方リブ(アーク受け片)65と、対向する側縁から内方に折り曲げた一対の側縁リブ(アーク受け片)66と、内向面から内方に突出するスノコ状の突き出し部(アーク受け片)67とを有している。
そして、アーク用シールド部材61は、連結体62が磁石ホルダー35の底壁に載置され、腕部63が磁石ホルダー35の対向する側壁に固定されている。
【0026】
前記板状第1ヨーク37は、図2に示すように、前記ケース10の開口縁部に嵌合可能な平面形状を有し、その上面に弾性プレート37aを固定するともに、その中心にカシメ孔37bを設けてある。そして、前記板状第1ヨーク37は、そのカシメ孔37bに筒状固定鉄芯38の上端部をカシメ固定してある一方、金属製筒状フランジ32の下方開口部を嵌合し、外側方から溶接一体化してある。
【0027】
前記筒状固定鉄芯38は、その貫通孔に、前記磁石ホルダー35の筒状絶縁部35bを介し、環状鍔部45aを備えた可動軸45をスライド移動可能に挿入してある。前記可動軸45は、復帰バネ39を挿入するとともに、その下端部に可動鉄芯42を溶接にて固定してある。
【0028】
前記可動鉄芯42を収納する有底筒体41は、その開口縁部を前記板状第1ヨーク37に設けたカシメ孔37bの下面縁部に気密接合される。そして、ガス抜きパイプ34から内部空気を吸引して封止することにより、密封空間43が形成される。
【0029】
前記可動軸45は、図3(B)に示すように、その中間部に設けた環状鍔部45aに皿状受け具46を係止し、挿通した接点バネ47および可動接触片48の脱落を防止するとともに、その上端部に抜け止めリング49を固定してある。そして、前記可動接触片48の上面両端部に設けた可動接点48aは、前記金属製筒状フランジ32内に配置された固定接点端子33の固定接点33aに接離可能に対向している。
【0030】
前記電磁石部50は、図2に示すように、コイル51を巻回したスプール52の鍔部52aにコイル端子53,54を圧入,固定するとともに、前記コイル端子53,54を介して前記コイル51と図示しないリード線とを接続してある。そして、前記スプール52の貫通孔52bに前記有底筒体41を挿通するとともに、第2ヨーク56の嵌合孔56aに嵌合する。ついで、前記第2ヨーク56の両側部57,57の上端部を前記板状第1ヨーク37の両端部にそれぞれ係合し、カシメ,圧入あるいは溶接などの手段にて固定することにより、前記電磁石部50と接点機構部30とが一体化される。
【0031】
次に、前述の構成からなる密封型電磁継電器の動作について説明する。
まず、図3に示すように、コイル51に電圧が印加されていない場合には、復帰バネ39のバネ力で可動鉄芯42が下方側に付勢され、可動軸45が下方側に押し下げられ、可動接触片48が下方側に引き下げられている。このとき、可動軸45の環状鍔部45aが磁石ホルダー35の環状受け台35cに係合し、可動接点48aが固定接点33aから開離しているが、可動鉄芯42は有底筒体41の底面に当接していない。
【0032】
ついで、前記コイル51に電圧を印加して励磁すると、筒状固定鉄芯38に可動鉄芯42が吸引され、可動軸45が復帰バネ39のバネ力に抗して上方にスライド移動する。そして、可動接点48aが固定接点33aに接触した後も、復帰バネ39及び接点バネ47のバネ力に抗して可動軸45が押し上げられ、可動軸45の上端部が可動接触片48の軸孔48bから突出し、可動鉄芯42が筒状固定鉄芯38に吸着する。
【0033】
そして、前記コイル51への電圧の印加を停止して励磁を解くと、接点バネ47及び復帰バネ39のバネ力に基づき、可動鉄芯42が筒状固定鉄芯38から離れる。このため、可動軸45が下方側にスライド移動し、可動接点48aが固定接点33aから開離した後、可動軸45の環状鍔部45aが磁石ホルダー35の環状受け台35cに係合し、元の状態に復帰する。
【0034】
このとき、高電圧の固定接点33aと可動接点48aとの間にアークが発生する場合がある。このアークは、図3(B)の中で、固定接点33aと可動接点48aとの間に流れる電流、および、対向する永久磁石36の間で水平方向に生じる磁力により、図中、紙面に対して直交方向に吸引され、誘引される。そして、このアークが誘引される方向にアーク用シールド部材61の腕部63を設置している。このため、アークが任意の方向に発生しても、まず、固定接点33aと可動接点48aとの間に流れる電流、および対向する永久磁石36の間で水平方向に生じる磁力でアークを所望の方向に誘引し、アーク用シールド部材61に当てて消失させる。
【0035】
特に、アーク用シールド部材61が、複数の突き出し部67を有しているので、アーク用シールド部材61の内向面の表面積が大きく、アークを迅速に冷却できるので、アークを効率よく消失させる。
【0036】
また、アーク用シールド部材61の断面を略コの字型に形成し、密封空間43(磁石ホルダー35)内に連結体(基部)62を磁石ホルダー35内の底面に載置している。このため、単なる板状に形成した場合と比べて、アーク用シールド部材61を把持しやすくなり、密封空間43(磁石ホルダー35)への取付け作業性が良くなる。また、固定接点33aと可動接点48aとの動きを邪魔せず、アーク用シールド部材61の密封空間43内への載置性を確保できる。
【0037】
更に、アーク用シールド部材61の腕部63を固定接点33aと可動接点48aの両側に、かつ、永久磁石36の対向面に沿って配置してある。このため、電流や磁束の方向が変化することによって、アークの発生方向が変わっても、いずれか一方の腕部63にアークを当てて、消失させることができる。
【0038】
そして、アーク用シールド部材61が金属製であるので、アーク用シールド部材61に当たるアークを効率的に冷却し、アークを消失する能力を高めることができる。
【0039】
(第2実施形態)
図5(A)および図5(B)に本発明の第2実施形態に係るアーク用シールド部材71を示す。
第1実施形態に係るアーク用シールド部材61の腕部63には、突き出し部67を設けたがこれに限定されず、第2実施形態に係るアーク用シールド部材71のように、単なる平板からなる腕部72を採用してもよい。これにより、アークが腕部63を通過するのを確実に防止できる。他は、前述の第1実施形態と同様であるので、同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0040】
(第3実施形態)
図6(A)および図6(B)に本発明の第3実施形態に係るアーク用シールド部材73を示す。
第1実施形態に係るアーク用シールド部材61の腕部63には、突き出し部67を設けたがこれに限定されない。例えば、第3実施形態に係るアーク用シールド部材73の腕部74のように、折り曲げ板75に並設した開口76の上縁および下縁から内方に突出する突片(アーク受け片)77を切り出してもよい。これにより、材料の保溜まりが良いアーク用シールド部材61が得られる。他は、前述の第1実施形態と同様であるので、同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0041】
(第4実施形態)
図7(A)および図7(B)に本発明の第4実施形態に係るアーク用シールド部材80を示す。
第1実施形態に係るアーク用シールド部材61の腕部63には、側縁リブ66を設けたがこれに限定されない。例えば、第4実施形態に係るアーク用シールド部材80の腕部81のように、折り曲げ板82の対向する両側縁部からそれぞれ内方に折り曲げられ、かつ、折り曲げ板82の内向面に沿って延在する複数本の屈曲部(アーク受け片)83を有してもよい。これにより、腕部63の表面積を大きくしアークを当たりやすくすると共に、アークが背面側に通過するのを確実に防止できる。他は、前述の第1実施形態と同様であるので、同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0042】
(第5実施形態)
図8(A)および図8(B)に本発明の第5実施形態に係るアーク用シールド部材85を示す。
第5実施形態に係るアーク用シールド部材85の腕部86は、前述の第4実施形態の屈曲部83,83の端部に、各屈曲部83,83を連結する線状の補強部87を有している。これにより、屈曲部83の強度が向上すると共に、折り曲げ精度が向上する。他は、前述の第1実施形態と同様であるので、同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0043】
(第6実施形態)
図9(A)および図9(B)に本発明の第6実施形態に係るアーク用シールド部材90を示す。
第6実施形態に係るアーク用シールド部材90の腕部91は、矩形の拡張板(アーク受け片)93と、被覆板(アーク受け片)94とを備えている。拡張板93は、折り曲げ板92の一方の側縁から外方に広がるように延在している。被覆板94は、折り曲げ板92の他方の側縁から外方に広がり、前記拡張板93に向かって延在し、かつ、折り曲げ板92に沿って延在している。これにより、腕部91を幅広にし、アークをより一層消失できる。なお、被覆板94には、複数の開口95が並設され表面積を増大させてある。他は、前述の第1実施形態と同様であるので、同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0044】
(第7実施形態)
図10(A)および図10(B)に本発明の第7実施形態に係るアーク用シールド部材97を示す。
第7実施形態に係るアーク用シールド部材97の腕部98は、折り曲げ板99の片側縁部から外方に広がるように延在した幅狭の第1リブ100と、この第1リブ100の端部から外方に延在して屈曲する第2リブ101と、この第2リブ101の端部から背面側に屈曲して折り曲げ板99に向かって延在する板状の第3リブ102と、からなる延在部(アーク受け片)103を有している。延在部103を固定接点33a及び可動接点48aに近づけているので、側方に広がったアークを捕捉しやすくなる。他は、前述の第1実施形態と同様であるので、同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0045】
(第8実施形態)
図11(A)および図11(B)に本発明の第8実施形態に係るアーク用シールド部材105を示す。
第8実施形態に係るアーク用シールド部材105の腕部106は、折り曲げ板107の上端から延在した板状の被覆板108を内方に屈曲し、折り曲げ板107に沿うように下方に折り曲げ、その先端の両側縁部が側縁リブ66の下端に係止している。このため、腕部106の背面側にアークが通過することを防止できる。なお、この被覆板108には複数の開口109が並設され、表面積を増大させてある。他は、前述の第1実施形態と同様であるので、同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【実施例】
【0046】
本願発明者らは、本発明のアーク用シールド部材61を用いた封止接点装置の耐久性について実験を行った。具体的には、固定接点33a,33aと可動接点48a,48aとの間に直流電圧400Vで500Aの電流を流した状態で、コイル51への電圧の印加を解除(遮断)し、固定接点33a,33aと可動接点48a,48aとを離間させる実験を繰り返した。このとき、図12に示すように、アーク用シールド部材61を設置した封止接点装置では実線で示すように、20回繰り返しても、アークによる固定接点33aと可動接点48aとの劣化を阻止し、封止接点装置の絶縁抵抗値が急激に低下するのを防止できることが分かった。一方、アーク用シールド部材61を設置していない封止接点装置では点線で示すように、5回繰り返すと、発生するアークにより固定接点33aと可動接点48aとが劣化し、封止接点装置の絶縁抵抗値が急激に低下することが分かった。
【0047】
また、本願発明者らは、固定接点33aと可動接点48aとを離間させる際に発生するアークの継続時間を測定した。アーク用シールド部材61を設置していない封止接点装置に対し、アーク用シールド部材61を設置した封止接点装置は、12.5%、アーク継続時間が短くなることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明に係る封止接点装置は、前述の密封型電磁継電器に限らず、他の電磁開閉器に適用してもよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0049】
10 ケース(ハウジング)
20 カバー(ハウジング)
33a 固定接点
36 永久磁石
43 密封空間
48a 可動接点
61 アーク用シールド部材
62 連結体(基部)
63 腕部
64 舌片(アーク受け片)
65 上方リブ(アーク受け片)
66 側縁リブ(アーク受け片)
67 突き出し部(アーク受け片)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12