特許第5966477号(P5966477)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電気株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5966477-受光モジュール 図000002
  • 特許5966477-受光モジュール 図000003
  • 特許5966477-受光モジュール 図000004
  • 特許5966477-受光モジュール 図000005
  • 特許5966477-受光モジュール 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5966477
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】受光モジュール
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/42 20060101AFI20160728BHJP
   H01L 31/0232 20140101ALI20160728BHJP
【FI】
   G02B6/42
   H01L31/02 C
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-63584(P2012-63584)
(22)【出願日】2012年3月21日
(65)【公開番号】特開2013-195773(P2013-195773A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2015年2月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100124154
【弁理士】
【氏名又は名称】下坂 直樹
(72)【発明者】
【氏名】冨田 功
【審査官】 奥村 政人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−085913(JP,A)
【文献】 特開2006−106361(JP,A)
【文献】 特開2009−230031(JP,A)
【文献】 特開2011−164143(JP,A)
【文献】 特表2012−521570(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/26− 6/27
G02B 6/30− 6/34
G02B 6/42− 6/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリア基板と、
前記キャリア基板上に実装された光導波路基板と、
前記キャリア基板上に実装されたサブキャリアとを備え、
前記サブキャリアは、
前記光導波路基板からの出射光の方向を前記キャリア基板上面に対して垂直方向に変換する方向変換器と、
前記方向が変換された光を受光する受光素子とを含み、
前記キャリア基板は、
前記サブキャリアの前記キャリア基板上面に対して垂直方向の搭載位置を選択可能に形成された位置選択部を含み、
前記位置選択部は、前記光導波路基板からの水平方向の距離に応じて高さが低くなる段差が設けられている、
ことを特徴とした受光モジュール
【請求項2】
前記位置選択部は、前記キャリア基板と一体に形成されてなることを特徴とした、
請求項1に記載の受光モジュール。
【請求項3】
前記光導波路基板から出力される光をコリメート光にして前記方向変換器に出射するコリメートレンズを備えることを特徴とした、
請求項1又は2に記載の受光モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
受光モジュールでは、キャリア基板上に、受信光を導波や分岐などさせる光導波路素子や、PD(Photo Diode)素子などを集積し、小型、低コスト化を図る構造が多く用いられる。例えば、光導波路素子からの出射光を折り曲げ、TIA(TransImpedance Amplifier)やセラミック配線基板と同一のキャリア上に実装されたPDへ光を入射する構成が知られている。このような構成は、多チャネルの受光モジュールの小型化に特に有効である。近年では、デジタルコヒーレントレシーバに代表されるような、超高速の光通信の受光モジュールに適用されている。
【0003】
図5は、光通信用の受光に用いられる一般的な受光モジュールの構成を示す図である。同モジュールは、キャリア基板1000上に光導波路基板2000とサブキャリア基板7000とを搭載する。サブキャリア基板7000は、台座5000が支持するプリズム4000とPD6000とを搭載する。コリメートレンズ3000は光導波路基板1000からの出力光をコリメート光とし、プリズム4000はコリメート光を90度折り曲げる構造となっている。なお、プリズム1000にはレンズとプリズムとの機能を一体にしたものを用いることで、部品点数を少なくし光軸調整をし易くすることが可能である。
【0004】
サブキャリア上に集積化することで、プリズムとPDとの位置関係の精度は実用上十分担保することが可能である。一方、キャリア基板やサブキャリア基板の加工精度は、光軸ずれの許容値に対して十分には担保されない。したがって、導波路基板からの出射光を精度よく受光素子に受光させるためには、搭載位置の精度を十分に高めるため、サブキャリア基板7000搭載時のアライメントに工夫を要する。
【0005】
特許文献1に、基板上に載置された光素子アレイに光導波路アレイを接近させ、光路変換ミラーを介して出力される光信号をモニタしながら光導波路アレイと光素子アレイとの光軸を調芯し、光信号の出力が所望の値となる位置で光導波路アレイを基板上に固定する方法が記載されている。
【0006】
しかしながら、光信号をモニタしながら水平方向、垂直方向、素子角度を調整して固定することは、製造コストの面で問題がある。一方、特許文献2には、半導体レーザに素子マーカを、石英系基板上に実装マーカを形成し、素子マーカと実装マーカが同一直線上にくるように位置合わせを行いつつ、半導体レーザを石英系基板上に搭載する方法が記載されている。このような方法は、光信号をモニタしなくても実装できるため、コスト面で有利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−288614号公報
【特許文献2】特開2002−062447号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1、2に記載の方法は、基板上に光素子を実装する方法であり、加工精度をより担保しにくいサブキャリア基板のキャリア基板上への搭載に、そのまま適用できるものではない。加えて、特許文献2記載の発明は、高さ方向の位置精度を担保することが考慮されていないため、実用上十分な位置精度を担保することが必ずしもできていなかった。
【0009】
本発明の目的は、上記の課題を解消した受光モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、キャリア基板と、
前記キャリア基板上に実装された光導波路基板と、
前記キャリア基板上に実装されたサブキャリアとを備え、
前記サブキャリアは、
前記光導波路基板からの出射光の方向を前記キャリア基板上面に対して垂直方向に変換する方向変換器と、
前記方向が変換された光を受光する受光素子とを含み、
前記キャリア基板は、
前記サブキャリアの前記キャリア基板上面に対して垂直方向の搭載位置を選択可能に形成された位置選択部を含むことを特徴とした受光モジュールが提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、受光素子を有するサブキャリアのキャリア基板上への搭載位置の精度をより向上させた受光モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1の実施形態に係る受光モジュールの構成を示す図である。
図2】第2の実施形態に係る受光モジュールの構成を示す図である。
図3】第2の実施形態に係る受光モジュールの構成の具体的な例を示す(a)平面図及び(b)側面断面図である。
図4】第3の実施形態に係る受光モジュールの構成を示す図である。
図5】光通信用の受光に用いられる一般的な受光モジュールの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1の実施形態)
次に、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る受光モジュールの構成を示す図である。図1の受光モジュールは、キャリア基板1、キャリア基板1上に実装された光導波路基板2及びキャリア基板1上に実装されたサブキャリア3を備える。サブキャリア3は、方向変換器4及び受光素子5を含む。方向変換器4は、光導波路基板2から出射された光をキャリア基板1に搭載されているサブキャリア3の搭載面に対して垂直下方向に反射する。受光素子5は、方向変換器4が反射した光を受光する。また、キャリア基板1は、位置選択部6を含む。位置選択部6は、サブキャリア3のキャリア基板1の基板上面に対して垂直方向の搭載位置を選択することが可能である。
【0014】
本実施形態によれば、位置選択部6により、基板モジュール及びキャリア基板の形成後に高さ方向の搭載位置を選択することできるため、サブキャリアのキャリア基板上への搭載位置の精度をより向上することが可能となる。また、搭載位置を選択することで調整可能であるため、サブキャリアのキャリア基板上への搭載位置を容易に調整可能である。
【0015】
(第2の実施形態)
次に本発明の第2の実施形態について説明する。図2は、第2の実施形態に係る光モジュールの構成を示す図である。図2の受光モジュールは、キャリア基板40と、コリメートレンズアレイ90−1、2と、キャリア基板40上に実装されたPLC80及びサブキャリア基板140とを備える。ここで、PLC80は、図1における光導波路基板2に相当する。サブキャリア基板140は台座150に支持されたプリズム100、PDアレイ110を搭載する。ここで、キャリア基板40、サブキャリア基板140は、例えば、金属やセラミック等を加工した基板である。また、サブキャリア基板140は、図1におけるサブキャリア3に相当する。PDアレイ110は、受光素子5に相当する。プリズム100は、方向変換器4に相当する。キャリア基板40は、サブキャリア基板140を搭載する部分において階段構造160を有する。ここで、階段構造160は、図1における位置選択部6に相当する。
【0016】
プリズム100、台座150、PDアレイ110は、サブキャリア基板140にあらかじめ搭載しておき、これらを搭載したサブキャリア基盤140をキャリア基板40に搭載する。ここで、サブキャリア基板140をキャリア基板40に搭載するとき、階段構造160の各段のいずれかを選択して搭載する。階段構造160の各段は、前述した加工公差により生じる誤差程度の僅かな高さの差を有している。従って、階段構造160のいずれかの段を選択してサブキャリア基板140を搭載することにより、搭載高さ位置の微調整を行うことができる。具体的には、コリメートレンズアレイ90−1、2からの光出力の光軸200とプリズム100の入力部が一致するような段を選択する。なお、選択する段によって、コリメートレンズアレイ90−1、2とプリズム100の間の距離が異なるが、コリメートレンズアレイ90−1、2から出力される光はコリメート光であるため、特性への影響は軽微である。
【0017】
図3は、本実施形態に係る受光モジュールの具体的な例を示す(a)平面図及び(b)側面断面図である。本実施形態における受光モジュールは、一例として、偏波多重4相位相変調(Dual Polarization Quadrature Phase Shift Keying:DP−QPSK)に対応したデジタルコヒーレントレシーバに用いられる受光モジュールについて説明する。
【0018】
図3に示すように、本実施形態における受光モジュールにおいては、パッケージ10に信号光をパッケージ10内に入力する光ファイバ20−1と局発光をパッケージ10内に入力する光ファイバ20−2がそれぞれ固定されている。ここで、パッケージ10は、例えば、金属やセラミック等の材料を加工したものである。パッケージ10の入力部には、コリメートレンズ30−1、2が設置されている。
【0019】
パッケージ10の内部において、キャリア基板40は、タッププリズム50、PD60、集光レンズ70−1、2、PLC80、サブキャリア基板140を搭載している。サブキャリア基板140は、PDアレイ110、TIA120−1〜4、配線基板130、台座150に支持されたプリズム100を搭載している。
【0020】
コリメートレンズ30−1、2は、各光ファイバ20−1、2からの入力光をコリメート光としてパッケージ内の集光レンズ70−1、2に出力する。タッププリズム50は、コリメートレンズ30−1から出力されるコリメート光の一部をPD60に分岐し、PD60はタッププリズム50によって分岐されたコリメート光を受光し、信号光の光パワーをモニタする。集光レンズ70−1、70−2は、コリメートレンズ30−1、30−2から入力されたコリメート光をPLC80の入力部に集光する。
【0021】
PLC80は、90°ハイブリッド干渉計によって構成されるコヒーレントミキサーである。デジタルコヒーレント受光モジュールでは、信号光のTE偏波、TM偏波成分を分岐し、局発光と干渉させることで、各偏波4ポートずつ、計8ポートの出力となっている。コリメートレンズアレイ90−1、2は、それぞれ4個ずつのコリメートレンズから構成されており、PLC80の8個の出力ポートから出力される光をコリメート光としてプリズム100に出力する。プリズム100は、コリメートレンズアレイ90−1、2から入力された複数のコリメート光を、パッケージ10の底面方向に反射する。PDアレイ110は、8個のPDから構成され、プリズム100から反射された光を上面にて受光する。
【0022】
TIA120−1〜4は、PDアレイ110の8個のPDが出力した電流を電圧に変換し、配線基板140に出力する。PDアレイ110において近接する2個のPDが出力する差動信号を1つのTIAによって電圧変換するため、TIAは4個となっている。また、PDとTIAの間の距離が長くなると受信特性が劣化するため、PDアレイ110、TIA120−1〜4は可能な限り接近させることが好ましい。なお、配線基板140とパッケージ10は、ワイヤボンディング技術等により電気的に配線され、電気信号はパッケージ外部に出力される。
【0023】
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果に加え、キャリア基板40の階段構造160のいずれかの段を選択するだけで、部品の加工交差により生じる誤差を吸収できるため、搭載高さ方向のアライメントを容易にすることができる。
【0024】
(第3の実施形態)
次に本発明の第3の実施形態について説明する。図4は、本実施形態による光モジュールの構成の要部を示す拡大図である。本実施形態において、図4の他の構成は第2の実施形態における図2の構成と同様であるため、説明を省略する。
【0025】
本実施形態における光モジュールは、図4のように、サブキャリア基板140とキャリア基板40の間にスペーサ170を有している。ここで、スペーサ170は金属やセラミック等の材料を加工した基板であり、図1における位置選択部6に相当する。
【0026】
サブキャリア140をキャリア基板40に搭載する際、スペーサ170はコリメートレンズアレイ90−1、2からの光出力の光軸200とプリズム100の入力部が一致するような高さを持つものを選択する。
【0027】
本実施形態によれば、第1、2の実施形態と同様の効果に加え、キャリア基板40をあらかじめ加工する必要がなく単純な部品構成で実現することができるため、低コストにて位置精度補償することが可能である。
【0028】
スペーサ170は、前述した加工公差により生じる誤差程度の僅かな高さの差を有する複数種類をあらかじめ用意しても良い。また、スペーサ170は、1つのみ使用してもよいし、異なる種類又は同じ種類の複数を併せて使用しても良い。
【0029】
なお、本実施形態におけるスペーサ170に代えて、熱硬化樹脂のような樹脂をサブキャリア基板140とキャリア基板40の間に挿入してもよい。
【0030】
以上に記載の実施形態は、本発明の例示であって、本発明においては実施形態に示す以外の様々な構成をとり得る。
【0031】
(実施形態の他の表現)
以上に記載の実施形態の一部又は全部は、以下の付記の様にも記載され得るが、以下には限られない。
【0032】
(付記)
(付記1)
キャリア基板と、
前記キャリア基板上に実装された光導波路基板と、
前記キャリア基板上に実装されたサブキャリアとを備え、
前記サブキャリアは、
前記光導波路基板からの出射光の方向を前記キャリア基板上面に対して垂直方向に変換する方向変換器と、
前記方向が変換された光を受光する受光素子とを含み、
前記キャリア基板は、
前記サブキャリアの前記キャリア基板上面に対して垂直方向の搭載位置を選択可能に形成された位置選択部を含むことを特徴とした受光モジュール。
(付記2)
前記位置選択部は、前記キャリア基板と一体に形成されてなることを特徴とした、
付記1に記載の受光モジュール。
(付記3)
前記位置選択部は、前記光導波路基板からの水平方向の距離に応じて高さが低くなる段差が設けられていることを特徴とした、
付記1又は2に記載の受光モジュール。
(付記4)
前記光導波路基板から出力される光をコリメート光にして前記方向変換器に出射するコリメートレンズを備えることを特徴とした、
付記1〜3いずれかに記載の受光モジュール。
(付記5)
前記位置選択部は、1又は2以上のスペーサであることを特徴とした、
付記1に記載の受光モジュール。
(付記6)
前記位置調整部は、硬化樹脂であることを特徴とした、
付記1に記載の受光モジュール。
【符号の説明】
【0033】
1 キャリア基板
2 光導波路基板
3 サブキャリア
4 方向変換器
5 受光素子
6 位置選択部
10 パッケージ
20−1、2 光ファイバ
30−1、2 コリメートレンズ
40 キャリア基板
50 タッププリズム
60 PD
70−1、2 集光レンズ
80 PLC
90−1、2 コリメートレンズアレイ
100 プリズム
110 PDアレイ
120−1〜4 TIA
130 配線基板
140 サブキャリア基板
150 台座
160 階段構造
170 スペーサ
200 光軸
1000 キャリア基板
2000 光導波路基板
3000 コリメートレンズ
4000 プリズム
5000 台座
6000 PD
7000 サブキャリア基板
図1
図2
図3
図4
図5