特許第5966485号(P5966485)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5966485
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】エンジンの暖機装置
(51)【国際特許分類】
   F01P 3/20 20060101AFI20160728BHJP
   F28D 20/02 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
   F01P3/20 E
   F28D20/02 D
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-65756(P2012-65756)
(22)【出願日】2012年3月22日
(65)【公開番号】特開2013-194699(P2013-194699A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2015年2月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100066865
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 信一
(74)【代理人】
【識別番号】100066854
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 賢照
(74)【代理人】
【識別番号】100117938
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 謙二
(74)【代理人】
【識別番号】100138287
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 功
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(74)【代理人】
【識別番号】100068685
【弁理士】
【氏名又は名称】斎下 和彦
(72)【発明者】
【氏名】石橋 直樹
(72)【発明者】
【氏名】飯島 章
【審査官】 安井 寿儀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−100649(JP,A)
【文献】 特開平11−182393(JP,A)
【文献】 実開昭61−132407(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01P 3/20
F28D 20/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側容器と外側容器との間に充填された潜熱蓄熱材と、前記内側容器内の圧力をエンジンの始動に連動して減少させる圧力調整手段とを備えたエンジンの暖機装置において、
前記内側容器は、筒型の本体の両開口部に外側へ湾曲する可撓性の板材からなる側壁を取り付けた構造を有し、該内側容器の圧力が減少したときに前記側壁が内側に湾曲するようにしたことを特徴とするエンジンの暖機装置。
【請求項2】
前記側壁の中央部に平滑面を形成した請求項1に記載のエンジンの暖機装置。
【請求項3】
前記圧力調整手段が、前記内側容器と前記エンジンの吸気管とを接続し、かつ逆止弁が介設された連通管からなる請求項1又は2に記載のエンジンの暖機装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエンジンの暖機装置に関し、更に詳しくは、エンジンの始動時において、潜熱蓄熱材から放出される潜熱によりエンジンの暖機を確実に行うことができるエンジンの暖機装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に車両の走行前に行われる暖機運転については、燃費向上及び環境保護の観点から、なるべく短縮することが求められている。そのため近年では、潜熱蓄熱材から放出される潜熱を利用して、エンジンの始動時にエンジン本体などを加温することが提案されている。
【0003】
例えば、シリンダブロック内に形成されたウォータージャケット内に、潜熱蓄熱材を充填した容器を配置して、エンジンの始動時に吸気管に発生する負圧で収縮変形する発核装置で潜熱蓄熱材を発核させることにより、潜熱蓄熱材から潜熱を放出させるエンジンの始動促進装置が提案されている(特許文献1を参照)。
【0004】
このエンジンの始動促進装置では、発核装置をラグビーボール状の中空体から構成しているが、その中空体を潜熱蓄熱材が発核する程度に収縮変形させるには、内部のエアーを抜く速度を相当に速くする必要がある。しかしながら、エンジンの仕様や運転状態によっては、吸気管に発生する負圧が不足する場合があるため、潜熱蓄熱材を発核させることができないおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−100649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、エンジンの始動時において、潜熱蓄熱材から放出される潜熱によりエンジンの暖機を確実に行うことができるエンジンの暖機装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成する本発明のエンジンの暖機装置は、内側容器と外側容器との間に充填された潜熱蓄熱材と、前記内側容器内の圧力をエンジンの始動に連動して減少させる圧力調整手段とを備えたエンジンの暖機装置において、前記内側容器は、筒型の本体の両開口部に外側へ湾曲する可撓性の板材からなる側壁を取り付けた構造を有し、該内側容器の圧力が減少したときに前記側壁が内側に湾曲するようにしたことを特徴とするものである。
【0008】
上記のエンジンの暖機装置においては、側壁の中央部に平滑面を形成する。また、圧力調整手段を、内側容器とエンジンの吸気管とを接続し、かつ逆止弁が介設された連通管から構成する。
【発明の効果】
【0009】
本発明のエンジンの暖機装置によれば、内側容器内の圧力減少が小さい場合でも側壁の形状変化が大きくなるので、発核に必要な刺激が潜熱蓄熱材に付与されて潜熱が放出されるため、エンジン始動時の暖機を従来よりも確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態からなるエンジンの暖機装置をディーゼルエンジンのシリンダブロックに配置したときの断面図である。
図2】エンジンの暖機装置の断面図である。
図3】内側容器の構成を示す斜視図である。
図4】内部が負圧になったときの内側容器の構成を示す斜視図である。
図5】内側容器内が負圧になったときのエンジンの暖機装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施形態からなるエンジンの暖機装置をディーゼルエンジンのシリンダブロックに配置した例を示す。この図1は、シリンダブロックの長手方向に垂直な断面である。
【0013】
シリンダブロック1の長手方向に複数形成されたシリンダボア2内には、ピストンリング3が外嵌されたピストン4が摺動可能に配置されている。ピストン4には、シリンダブロック1の軸受面5で支持されたクランクシャフト(図示せず)に接続するコンロッド6が、ピストンピン7により回動自在に取り付けられている。また、シリンダブロック1の上面には、吸排気バルブ等が取り付けられたシリンダヘッド(図示せず)が、ヘッドボルト穴8に螺合するヘッドボルトにより固定され、ピストン4の上方に燃焼室を形成するようになっている。
【0014】
燃焼室内での燃料の燃焼圧力によるピストン4の直線往復運動は、コンロッド6を通じてクランクシャフトの回転運動に変換される。この燃料の燃焼によるシリンダブロック1の温度上昇を抑制するために、シリンダボア2の周囲のシリンダブロック1内には、内部を冷却水が流れるウォータージャケット9が形成されており、その内部には本発明のエンジンの暖機装置の一部である収納容器10が配置される。
【0015】
収納容器10は、図2に示すように、外側容器11と内側容器12とからなる二重構造を有し、それらの容器11、12の間には潜熱蓄熱材13が充填されている。潜熱蓄熱材13は、固相−液相間の相変化に伴う潜熱を利用する蓄熱材であり、過冷却状態で潜熱を蓄熱し、その蓄熱した潜熱を過冷却状態の解除により放出する性質を有している。過冷却状態の解除は、液相の潜熱蓄熱材13に局所的な圧荷重(刺激)を付与して結晶化(発核)を促進させることにより行なわれ、液相から固相への相転移に伴って潜熱が放出される。このような潜熱蓄熱材13としては、酢酸ナトリウム三水和物、チオ硫酸ナトリウム五水和物又は硫酸ナトリウム十水和物などが例示される。
【0016】
外側容器11は、潜熱蓄熱材13への耐食性が高い材料から形成され、例えばポリエチレン、フッ素樹脂、ステンレス鋼又は酸化アルミニウムなどから形成することができる。この外側容器11の形状は、内側容器12を収納できる容積を確保できるものであれば、特に限定するものではないが、後述する潜熱蓄熱材13の放熱を促す観点からは複雑な形状とすることが好ましい。
【0017】
内側容器12は、図3に示すように、短尺円筒形の本体14の両開口部に外側へ湾曲する可撓性の薄板からなる側壁16を取り付けた略太鼓状の構造を有している。側壁16の中央部16aは平らな円形になっており、その周縁部から本体14との接合部17にかけて外側へ凸状の形状となっている。薄板の材料としては、バネ鋼などが好ましく用いられる。本体14と側壁16との接合部17は、溶接、ろう付け、拡散結合又はかしめなどにより固定される。
【0018】
内側容器12の本体14から下方へ延びるフランジ15Aは、外側容器11の底面に固定具18を介して固定されるとともに、上方へ延びる他方のフランジ15Bは外側容器11を貫通し、圧力調整手段である逆止弁19が介設された連通管20を通じて、ディーゼルエンジンの吸気管(図示せず)の途中に連通している。この逆止弁19は、内側容器12から吸気管へ向けて気体が流れるように取り付けられる。
【0019】
このエンジンの暖機装置の動作は次のようになる。ディーゼルエンジンの運転中は、燃料の燃焼熱によりシリンダブロック1が潜熱蓄熱材13の融点以上(例えば、60℃以上)の温度に加熱されるため、潜熱蓄熱材13は融解して液相の状態になっている。その後、ディーゼルエンジンが停止すると、シリンダブロック1が潜熱蓄熱材13の融点以下に冷却されるのに伴って、潜熱蓄熱材13は過冷却状態になって液相を保ちながら潜熱を蓄熱する。
【0020】
そして、ディーゼルエンジンが始動すると、吸気管から燃焼室内へ流れる空気によって連通管20内に発生する負圧により、内側容器12内の空気が排出されて圧力が減少する。このとき、内側容器12の側壁16は、周縁が本体14に拘束された比較的面積の大きな可撓性の薄板から構成されているため、内側容器12内の圧力減少が小さい場合でも、複雑に屈曲する不安定な形状を経て、図4に示すように、中央部16aが内側へ移動して全体が凹状となる形状へと大きく変化する。このような側壁16の大きな変形により、図5に示すように、過冷却状態の潜熱蓄熱材13に刺激が確実に付与されて、液相が発核して結晶核が生じる。発生した結晶核は、周囲の液相に刺激を与えて発核を促進し、過冷却状態が順に解除されて固相へ相転移するのに伴って、蓄えられている潜熱がウォータージャケット9内に放出されシリンダブロック1を加温する。
【0021】
このようにエンジンの暖機装置を構成することで、エンジンの始動時において内側容器12内の圧力減少が小さい場合でも側壁16の形状変化が大きくなるので、発核に必要な刺激が潜熱蓄熱材13に確実に付与されることになる。それにより、潜熱蓄熱材13から潜熱が放出されてシリンダブロック1を加温するので、エンジン始動時の暖機を従来よりも確実に行うことができる。
【0022】
また、内側容器12の構造が簡易であるため、エンジンの暖機装置の製造コストを従来に比べて低減することができる。
【0023】
なお、上記の実施形態では、吸気管から燃焼室内へ流れる空気を利用して連通管20内に負圧を発生させているが、ディーゼルエンジンに搭載されているバキュームポンプにより負圧を発生させるようにしてもよい。
【0024】
また、連通管20内の負圧を断続的に発生させるなどして、上述した内側容器12の側壁16の変形を数回繰り返させることで、より確実に潜熱蓄熱材13の発核を促すようにすることができる。
【0025】
本発明のエンジンの暖機装置を配置する箇所は、上述したようなシリンダブロックに限るものではなく、例えばオイルパン内に配置することで、エンジンオイルをすばやく加温してエンジンを円滑に始動させることができる。
【符号の説明】
【0026】
1 シリンダブロック
2 シリンダボア
3 ピストンリング
4 ピストン
5 軸受面
6 コンロッド
7 ピストンピン
8 ヘッドボルト穴
9 ウォータージャケット
10 収納容器
11 外側容器
12 内側容器
13 潜熱蓄熱材
14 本体
15A、15B フランジ
16 側壁
16a (側壁の)中央部
17 接合部
18 固定具
19 逆止弁
20 連通管
図1
図2
図3
図4
図5