【課題を解決するための手段】
【0011】
上記のような目的を達成するための本発明の接合構造は、ボルトと、前記ボルトを螺合する金属製のナット部材と、前記ナット部材の外周端から外側方向外周に樹脂により形成された
樹脂部材と、前記ナット部材がボルト締結用の雌ネジ穴のある受圧面で接触している第2接合部材と、を備え、前記ボルトが前記ナット部材と螺合すると共に前記ボルトと前記ナット部材とにより第2接合部材が挟持された状態で、
前記樹脂部材が前記第2接合部材と非接触となるように前記ナット部材に接合している。
また、上記の接合構造において、
前記樹脂部材の外周側の樹脂の部分に段落ち部を設けている。
また、上記の接合構造において、前記ナット部材の中央部の外径が、前記ナット部材の端部の外径よりも大きく、
前記樹脂部材は、前記ナット部材の外径の大きい中央部を覆うように形成されている。
さらに、上記の接合構造において、
前記第2接合部材の前記ナット部材の受圧面と接触する第1面と、この第1面と対向する
前記樹脂部材の第2面と、の間には、樹脂が熱変形により反り返った時に前記第1面と前記第2面とが接触しない間隔が
あいている。
そして、インサート用ナット部材は、
樹脂部材に一体的に鋳込まれ、かつ、押圧面を有する雄ネジ部材が貫通する雌ネジ穴と、該雌ネジ穴に前記雄ネジ部材をネジ込んだときに面圧を受ける受圧面と、
前記樹脂部材に保持される保持部を備えた金属製のインサート用ナット部材であって、前記雄ネジ部材を前記雌ネジ穴にネジ込んだときに前記雄ネジ部材の軸方向から見て前記雄ネジ部材の前記押圧面を内側に含むように前記受圧面の外周部分を形成する。
【0012】
この構成によれば、雌ネジ穴にボルト等の雄ネジ部材をネジ込んだときに発生する締結力(軸力)の多くを、金属製のインサート用ナット部材の受圧面で受けることができるので、受圧面の周囲の
樹脂部材の部分による影響を少なくすることができ、雄ネジ部材の緩みの発生を防止できる。
【0013】
また、上記のインサート用ナット部材において、前記受圧面の外周部分を円形で形成し、前記保持部を前記雄ネジ部材の軸方向から見て前記受圧面の外周部分を内側に含むように多角形形状に形成し、前記雌ネジ穴のネジ径をD1、前記受圧面の直径をD2、前記多角形の外接円の直径をD3、前記受圧面を有する部分の厚みをt1、前記保持部の厚みをt2としたときに、1.4≦D2/D1≦3.0、1.8≦D3/D1≦4.0、0.2≦t2/t1≦0.7にして形成する。この構成によると、制作し易い上に、雄ネジ部材の緩みの発生を十分防止できる。
【0014】
D2/D1を1.4より小さくすると、受圧面が小さくなり、雄ネジ部材の締結力を十分に受けることができなくなり、3.0より大きくすると受圧面が不必要に大きくなり、その分重くなり、
樹脂部材との一体化するメリットが低下する。また、D3/D1を1.8より小さくすると、
樹脂部材によるインサート用ナット部材の保持力が低下し、インサート用ナット部材が
樹脂部材から外れ易くなり、4.0より大きくすると保持部が不必要に大きくなり、その分重くなり、
樹脂部材との一体化するメリットが低下する。
【0015】
また、t2/t1を0.2より小さくすると、受圧面を有する部分と保持部との間の強度が不足し、取り扱いに注意が必要になり、0.7より大きくすると、保持部を支える合成樹脂の部分の厚さが不十分になり、インサート用ナット部材を保持する合成樹脂の部分が破損し易くなる。なお、保持部の多角形としては、通常正六角形が用いられるが、これに限定することなく、インサート用ナット部材を保持する接合部材の形状に合わせて適宜多角形の形状を変化させても良い。
【0016】
接合部材は、上記のインサート用ナット部材を
樹脂部材に鋳込んで形成される。この構成によれば、雌ネジ穴に雄ネジ部材をネジ込んだときに発生する締結力(軸力)の多くを、金属製のインサート用ナット部材の受圧面で受けることができると共に
樹脂部材で受けないので、雄ネジ部材の緩みの発生を防止できる。
【0017】
上記のような目的を達成するための本発明の
接合構造によれば、雌ネジ穴に雄ネジ部材をネジ込んだときに発生する締結力(軸力)の多くを、金属製のインサート用ナット部材の受圧面で受けることができるので、受圧面の周囲の
樹脂部材の部分による影響を少なくすることができ、雄ネジ部材の緩みの発生を防止できる。
【0018】
上記の接合構造において、前記押圧面と前記受圧面と間に配置される前記第2接合部材の厚みをt3とし、θ1を5度、θ2を50度としたときに、前記雄ネジ部材の軸方向から見て、前記受圧面の外周部分が、前記押圧面よりも前記雌ネジ穴の中心から放射方向に、t3×sin(θ1)以上かつt3×sin(θ2)以下の距離の分だけ拡大しているように形成される。この構成によれば、雌ネジ穴に雄ネジ部材をネジ込んだときに発生する締結力(軸力)の多くを、金属製のインサート用ナット部材の受圧面で確実に受けることができるので、受圧面の周囲の合成樹脂の部分による影響を少なくすることができ、雄ネジ部材の緩みの発生を防止できる。
【0019】
このθ1とθ2の範囲に関しては、θ1を5度よりも小さくすると、受圧面が小さくなり、雄ネジ部材の締結力を十分に受けることができなくなり、θ2を50度より大きくすると受圧面が必要以上に大きくなり、その分重くなるので、合成樹脂との一体化するメリットが低下する。なお、より好ましくは、θ1を10.5度、θ2を12度とする。これにより、雄ネジ部材の締結力を受けるのに十分で、かつ、大き過ぎず、軽量化と緩み防止の適切なバランスが取れた大きさの受圧面とすることができる。
【0020】
上記の接合構造において、前記受圧面の周囲の
樹脂部材の部分に段落ち部を設ける。この構成によれば、第2接合部材が第1接合部材の受圧面の周囲の
樹脂部材に接触することを防止できるので、より確実に、締結力(軸力)の多くを受圧面で確実に受けることができ、受圧面の周囲の
樹脂部材の部分による影響を少なくすることができ、雄ネジ部材の緩みの発生を防止できる。
【0021】
上記の接合構造において、前記段落ち部の外周側の
樹脂部材の部分を更に段落ちさせて構成する。この構成によれば、受圧面の外側の
樹脂部材の部分が熱変形等により反り返っても、第2接合部材に接触することを防止できるので、より確実に、締結力(軸力)の多くを受圧面で確実に受けることができ、受圧面の周囲の
樹脂部材の部分による影響を少なくすることができ、雄ネジ部材の緩みの発生を防止できる。
【0022】
上記の接合構造を有して構成される自動車用部品によれば、雌ネジ穴に雄ネジ部材をネジ込んだときに発生する締結力(軸力)の多くを、金属製のインサート用ナット部材の受圧面で受けることができるので、受圧面の周囲の
樹脂部材の部分による影響を少なくすることができ、雄ネジ部材の緩みの発生を防止できる。
【0023】
なお、上記のインサート用ナット部材は、インサート用ナット部材の厚みt1が雌ネジ穴の径D1の0.5倍から2倍程度のときに効果がある。つまり、厚みt1が小さいと、雌ネジ穴の深さが浅く、ネジ部の長さが短くなり、雄ネジと雌ネジの当接する部分で締結力の多くを吸収できないので、受圧面で締結力(押圧力)に抵抗する必要があるからである。