(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記疎水性粒子は、ジメチルシリル、トリメチルシリル、ジメチルポリシロキサン、ジメチルシロキサン、アミノアルキルシリル、アルキルシリル、メタクリルシリルのいずれかの官能基で疎水化表面処理された、酸化珪素または酸化アルミニウムであることを特徴とする請求項1に記載の撥水性積層体。
前記金属アルコキシドあるいは該金属アルコキシドの加水分解物中の金属は、珪素、アルミニウム、チタニウムから選択される1種類以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の撥水性積層体。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載された蓋材は、撥水性微粒子層を形成する塗布液自体にバインダーを使用していないため、微粒子層が熱接着層に十分に固着できず、微粒子が脱落しやすいという問題がある。このため食品などの内容物に微粒子が異物として入り込んでしまうため、特に食品の場合、安全性が十分に担保できないという問題がある。
【0008】
また、特許文献1に記載された蓋材は、微粒子層自体の撥水性はあるものの、水以外の食品などの実際の内容物では、弾き性が不十分であるという問題もあった。
【0009】
本発明の解決しようとする課題は、実際の食品などに対しても十分な弾き性を有し、撥液層が脱落して内容物に混入することがない撥水性積層体を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、基材層とヒートシール樹脂層を有する積層体であって、
ヒートシール樹脂層は表面に凹凸を有し、凹凸のピッチは、50μm以上2000μm以下であり、凹凸の高さは、5μm以上1000μm以下であり、
ヒートシール樹脂層の表面には、
平均一次粒子径が5nm以上1000nm以下の疎水性粒子と、
M(OR)n(Mは金属元素、Oは酸素、Rは有機基を表す。
また、nは金属元素Mの配位数を示す)で表される金属アルコキシドあるいは該金属アルコキシドの加水分解物と、
を含む複合物からなる撥水層を有することを特徴とする撥水性積層体である。
【0011】
本発明に係る撥水性積層体は、撥水層として、平均一次粒子径が5nm以上1000nm以下の疎水性粒子を、金属アルコキシドあるいは金属アルコキシドの加水分解物中に分散させた複合物からなる層を用い、この撥水層を、凹凸を有するヒートシール樹脂層上に形成したので、撥水層の層内凝集力が強く、またヒートシール樹脂層に強固に付着しているため、脱落して内容物に混入することがない。また表面には、ヒートシール樹脂層の凹凸に起因するμmオーダーの凹凸と疎水性粒子に起因するnmオーダーの凹凸が混在するため、表面積が大きくなる。このため、十分な撥水性が発揮され、粘度の高い食品など実際の内容物に対しても高い撥水性を示す。
【0012】
また、請求項2に記載の発明は、前記疎水性粒子が、ジメチルシリル、トリメチルシリル、ジメチルポリシロキサン、ジメチルシロキサン、アミノアルキルシリル、アルキルシリル、メタクリルシリルのいずれかの官能基で疎水化表面処理された、酸化珪素または酸化アルミニウムであることを特徴とする請求項1に記載の撥水性積層体である。
【0013】
また、請求項3に記載の発明は、前記金属アルコキシドあるいは該金属アルコキシドの加水分解物中の金属が、珪素、アルミニウム、チタニウムから選択される1種類以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の撥水性積層体である。
【0014】
また、請求項4に記載の発明は、基材層とヒートシール樹脂層を有する積層体の製造方法であって、
ヒートシール樹脂層は表面に凹凸を有し、凹凸のピッチは、50μm以上2000μm以下であり、凹凸の高さは、5μm以上1000μm以下であり、
ヒートシール樹脂層の表面には、
平均一次粒子径が5nm以上1000nm以下の疎水性粒子と、
M(OR)n(Mは金属元素、Oは酸素、Rは有機基を表す。
また、nは金属元素Mの配位数を示す)で表される金属アルコキシドあるいは該金属アルコキシドの加水分解物と、
を含む複合物からなる撥水層を有しており、
前記ヒートシール樹脂層は、低密度ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂から選択される1種以上の樹脂からなり、
前記ヒートシール樹脂層表面の凹凸を、スタンパーによる圧着加工によって形成することを特徴とする撥水性積層体の製造方法である。
【0015】
また、請求項5に記載の発明は、基材層とヒートシール樹脂層を有する積層体の製造方法であって、
ヒートシール樹脂層は表面に凹凸を有し、凹凸のピッチは、50μm以上2000μm以下であり、凹凸の高さは、5μm以上1000μm以下であり、
ヒートシール樹脂層の表面には、
平均一次粒子径が5nm以上1000nm以下の疎水性粒子と、
M(OR)n(Mは金属元素、Oは酸素、Rは有機基を表す。
また、nは金属元素Mの配位数を示す)で表される金属アルコキシドあるいは該金属アルコキシドの加水分解物と、
を含む複合物からなる撥水層を有しており、
前記ヒートシール樹脂層は、ポリアクリル樹脂、EVA樹脂、ポリエチレン樹脂、SBR、変性オレフィン樹脂から選択される1種以上の樹脂を主成分とするヒートシール性ニスからなり、
前記表面の凹凸を、スタンパーによる圧着加工によって形成することを特徴とする撥水性積層体の製造方法である。
【0016】
また、請求項6に記載の発明は、基材層とヒートシール樹脂層を有する積層体の製造方法であって、
ヒートシール樹脂層は表面に凹凸を有し、凹凸のピッチは、50μm以上2000μm以下であり、凹凸の高さは、5μm以上1000μm以下であり、
ヒートシール樹脂層の表面には、
平均一次粒子径が5nm以上1000nm以下の疎水性粒子と、
M(OR)n(Mは金属元素、Oは酸素、Rは有機基を表す。
また、nは金属元素Mの配位数を示す)で表される金属アルコキシドあるいは該金属アルコキシドの加水分解物と、
を含む複合物からなる撥水層を有しており、
前記ヒートシール樹脂層は、エチレン−酢酸ビニル共重合体またはポリオレフィン樹脂と、ワックスと、タッキファイヤーと、を含むホットメルト樹脂であり、
塗工用の凹版に由来する版目で、前記ヒートシール樹脂層表面の凹凸を形成することを特徴とする撥水性積層体の製造方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る疎水性積層体は、基材層とヒートシール樹脂層を有する積層体であって、ヒートシール樹脂層は表面に凹凸を有し、凹凸のピッチは、50μm以上2000μm以下であり、凹凸の高さは、5μm以上1000μm以下であり、ヒートシール樹脂層の表面には、平均一次粒子径が5nm以上1000nm以下の疎水性粒子と、M(OR)n(Mは金属元素、Oは酸素、Rは有機基を表す)で表される金属アルコキシドあるいは該金属アルコキシドの加水分解物と、を含む複合物からなる撥水層を設けたので、疎水層の表面は、疎水性粒子に起因するnmオーダーの微細な凹凸と、ヒートシール樹脂層の凹凸に起因するμmオーダーの凹凸が重なる結果、自然界におけるフラクタル構造に類似した表面形状となり、その結果内容物に対して十分な撥水性を発揮すると共に、撥水層の凝集力が高まり、容易に脱落しない撥水層とすることができる。
【0018】
また、請求項2に記載の発明のように、前記ナノ粒子が、ジメチルシリル、トリメチルシリル、ジメチルポリシロキサン、ジメチルシロキサン、アミノアルキルシリル、アルキルシリル、メタクリルシリルのいずれかの官能基で疎水化表面処理された酸化珪素または酸化アルミニウムである場合には、撥水層に対してより優れた撥水性を付与することができる。
【0019】
また、請求項3に記載の発明のように、前記金属アルコキシドあるいは金属アルコキシドの加水分解物中の金属が、珪素、アルミニウム、チタニウムから選択される1種類以上である場合には、撥水層のヒートシール樹脂層に対する接着性や撥水層内の凝集力が高まり、より強固な膜とすることができる。
【0020】
また、請求項4に記載の発明のように、前記ヒートシール樹脂層が、低密度ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂から選択される1種以上の樹脂からなり、前記ヒートシール樹脂層表面の凹凸が、スタンパーによる圧着加工によって形成されたものである場合においては、ヒートシール樹脂層の表面に適度な凹凸を能率良く賦与することができる。
【0021】
また、請求項5に記載の発明のように、前記ヒートシール樹脂層が、ポリアクリル樹脂、EVA樹脂、ポリエチレン樹脂、SBR、変性オレフィン樹脂から選択される1種以上の樹脂を主成分とするヒートシール性ニスからなり、前記表面の凹凸は、スタンパーによる圧着加工によって形成されたものである場合には、ヒートシール樹脂層を印刷機で形成することも可能となり、コスト面において有利である。
【0022】
また、請求項6に記載の発明のように、前記ヒートシール樹脂層が、エチレン−酢酸ビニル共重合体またはポリオレフィン樹脂と、ワックスと、タッキファイヤーと、を含むホットメルト樹脂であり、塗工用の凹版に由来する版目が、前記表面の凹凸を形成したものである場合には、ヒートシール樹脂層の形成と同時に凹凸を賦与することが出来るため、ヒートシール樹脂層の表面に適度な凹凸を能率良く賦与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下図面を参照しながら、本発明に係る撥水性積層体について詳細に説明する。
図1は、本発明に係る撥水性積層体の基本的な実施態様における断面構造を示した断面模式図である。また、
図2は、本発明に係る撥水性積層体におけるヒートシール樹脂層の断面説明図である。
図3は、本発明に係る撥水性積層体の他の実施態様における断面構造を示した断面模式図である。
【0025】
本発明に係る撥水性積層体(1)は、基材層(2)とヒートシール樹脂層(3)を有する積層体であって、ヒートシール樹脂層(3)は表面に凹凸を有し、凹凸のピッチ(P)は、50μm以上2000μm以下であり、凹凸の高さ(H)は、5μm以上1000μm以下であり、ヒートシール樹脂層(3)の表面には、平均一次粒子径が5nm以上1000nm以下の疎水性粒子(6)と、M(OR)n(Mは金属元素、Oは酸素、Rは有機基を表す)で表される金属アルコキシドあるいは該金属アルコキシドの加水分解物と、を含む複合物からなる撥水層(4)を有する。
【0026】
撥水層(4)に含まれる疎水性粒子(6)と、金属アルコキシドあるいは該金属アルコキシドの加水分解物を金属酸化物に換算した時の重量比は、5:95〜95:5の範囲であることが望ましい。また、撥水層(4)の膜厚は、100nm以上5000nm以下であることが望ましい。
【0027】
本発明に係る撥水性積層体(1)は、粒径の小さい疎水性粒子(6)を、バインダーとしての金属アルコキシド(またはその加水分解物)(7)中に分散した撥水層(4)を、凹凸を有するヒートシール樹脂層(3)の表面に形成したので、撥水層(4)の表面積が大きくなり、撥水性に優れる。また撥水層(4)の層内凝集力が高いため、撥水層(4)が脱落して、内容物に混入するようなことがない。
【0028】
またさらに、撥水層(4)の膜厚を100nm以上5000nm以下としたことにより、ヒートシール樹脂層(3)のヒートシール性を妨げることがない。
【0029】
基材層(2)としては、紙、プラスチックフィルム、アルミニウム箔、アルミニウム蒸着フィルム、無機酸化物蒸着フィルムなど、及びこれらを適宜組み合わせて積層したものを使用することができる。
【0030】
基材層(2)の表面には、商品を示す印刷が施されていてもよい。基材層(2)の材質、厚さ、構成などは、目的とする積層体の要求品質や加工適性によって適宜選択される。
【0031】
図3に示した実施態様においては、基材層(2)とヒートシール樹脂層(3)との間にバリア層(8)を設けてある。バリア層(8)としては、アルミニウム箔、アルミニウム蒸着フィルム、無機酸化物蒸着フィルムなどのガスバリア性の材料を用いる。なおこれらのガスバリア性材料は、前述の通り、単体で基材層(2)として用いることもできる。
【0032】
ヒートシール樹脂層(3)は、積層体の用途が蓋材であれば被着体となる容器の材質や、内容物、必要とされるヒートシール強度などによって、また積層体の用途が包装袋であれば、包装袋の大きさ、形状、内容物、必要とされるヒートシール強度などによって決定される。
【0033】
積層体の用途が蓋材である場合のヒートシール樹脂層(3)の材質としては、容器の材質がポリエチレン樹脂であれば、ポリエチレン樹脂(PE)、エチレン−酢酸ビニル樹脂(EVA)等が使用できる。容器の材質がポリプロピレン樹脂であれば、PE、EVA、変性オレフィン樹脂等が使用できる。また容器の材質がポリスチレン樹脂であれば、アクリル樹脂、EVA、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体(塩酢ビ)、PE、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)等が使用できる。
【0034】
積層体の用途が包装袋である場合のヒートシール樹脂層(3)の材質としては、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、EVA、エチレン−αオレフィン共重合体、エチレン−メタアクリル酸樹脂共重合体などのエチレン系樹脂や、ポリエチレンとポリブテンのブレンド樹脂や、ホモポリプロピレン樹脂、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体、プロピレン−αオレフィン共重合体などのポリプロピレン系樹脂等が使用できる。
【0035】
ヒートシール樹脂層(3)と、基材となる紙またはプラスチックフィルムとの密着性を高めるために、基材層(2)の表面にプライマー層を設けてもよい。プライマー層の樹脂系としては、EVA、アクリルアミン、ポリエステル、ウレタンエステル、塩酢ビ、変性オレフィン、イミン、ポリブタジエン、ポリアクリル酸エチル(EAA)等が用いられる。
【0036】
ヒートシール樹脂層(3)の表面は、凹凸を有し、
図2で示したように、凹凸のピッチ(P)は、50μm以上2000μm以下が好ましく、凹凸の高さ(H)は、5μm以上1000μm以下であることが好ましい。
【0037】
凹凸のピッチ(P)が2000μm以上になると大きな凹凸の効果が薄れ、油脂分を少量含む水滴などが表面に付着しやすくなる傾向にある。凹凸の高さが5μmより低くなると、液適の転落効果が低下する。また高さが1000μm以上では谷間に付着した液適が引っ掛かりやすくなり、転落性が悪くなる。
【0038】
ヒートシール樹脂層(3)の表面に凹凸を賦与する方法としては、いくつかの方法が挙げられる。ヒートシール樹脂層(3)を構成する樹脂をTダイから押し出して、基材層(2)表面にラミネートする押出同時ラミネート法による場合には、スタンパーとして、冷却ロールの表面に予め逆形状の凹凸を形成しておき、冷却と同時に凹凸を賦与する方法がある。
【0039】
また別工程によって作成された、ヒートシール樹脂層(3)を構成するフィルムを、基材層(2)に貼り合せた後、ヒートシール樹脂層面にスタンパーとしてエンボスロールなどを用いて凹凸を賦与する方法もある。この場合、貼り合せと同時に凹凸を賦型してもよい。
【0040】
ヒートシール樹脂層(3)は、ポリアクリル樹脂、EVA樹脂、ポリエチレン樹脂、SBR、変性オレフィン樹脂から選択される1種以上の樹脂を主成分とするヒートシール性ニスを印刷機やコーター機によって塗工してもよい。表面の凹凸は、スタンパーによる圧着加工によって形成する。
【0041】
また、ヒートシール樹脂層(3)として、ホットメルト系シーラントを用いて、基材(2)の表面にホットメルト塗工する時に、表面に凹凸を持った凹版を用いて塗工することにより、凹版の版目に由来する凹凸を持ったヒートシール樹脂層(3)を塗工と同時に形成する方法がある。
【0042】
この方法に適したホットメルト型シーラントとしては、エチレン−酢酸ビニル共重合体またはポリオレフィン樹脂と、ワックスと、タッキファイヤーと、を含むホットメルト樹脂である。
【0043】
ヒートシール樹脂層(3)の表面に形成する凹凸の形状としては、特に制約はなく、ピ
ラミッド型格子状、台形型格子状、ライン状、針状、円錐状、亀甲状、半球状など任意である。ホットメルト型シーラントを用いた場合は、若干ランダムな形状となるが、問題ない。
【0044】
各層の厚さと、凹凸の高さ(H)との関係によって、積層体の断面形状は異なってくる。
図3に示した例では、凹凸の高さ(H)よりもヒートシール樹脂層(3)の厚さの方が大きいため、凹凸はバリア層(8)に影響を及ぼしていない。しかし
図4に示した実施態様においては、ヒートシール樹脂層(3)の厚さに比較して凹凸の高さ(H)が大きいため、凹凸の影響がバリア層(8)と基材層(2)の表面まで及んでいる。基材層(2)が紙のように圧縮変形可能な材料であるとこのような状態になる。なお厚さ方向のスケールは他の図と必ずしも一定ではない。
【0045】
図5に示した実施態様においては、凹凸の影響が基材層(2)の裏面にまで及んでいる。これは、凹凸の大きさが、ヒートシール樹脂層(3)の厚さに比較して大きく、またバリア層(8)や基材層(2)が圧縮変形しないようなたとえば単体フィルムのような場合には、このように凹凸の影響が基材層(2)の裏面にまで及ぶいわゆるエンボスの裏抜けという現象が生じる。
【0046】
各層の状態がどのようになっていても、撥水層(4)の撥水性に影響を及ぼすのは、撥水層(4)の形状すなわちヒートシール樹脂層(3)の表面形状であって、この凹凸のピッチ(P)と高さ(H)とによって、撥水性が決定される。
【0047】
疎水性粒子(6)としては、疎水官能基で表面処理した無機酸化物粒子が良く、コアとなる粒子が酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化チタンなどの酸化物であり、コアとなる粒子の表面をシランカップリング剤で処理して、疎水性の官能基を付与したものが良い。
【0048】
疎水官能基としては、ジメチルシリル(CH
3)
2Si(O−R)
2、トリメチルシリル(CH
3)
3SiO−R、ジメチルポリシロキサン(CH
3)
2−Si−O−Si(O−R)
3、ジメチルシロキサン、アミノアルキルシリル、アルキルシリル、メタクリルシリルなどが好ましいが、より好ましくはメチル基(CH
3)が多いトリメチルシリル官能基が良い。
【0049】
疎水性粒子(6)の平均一次粒子径は、5nm以上1000nm以下が好ましく、10nm以上500nm以下がより好ましく、加工適性、弾き性の観点から、10nm以上200nm以下が更に好ましい。
【0050】
疎水性粒子(6)をヒートシール樹脂層(3)に強固に接着させたり、撥水層(4)の層内凝集力を高めるために、バインダーとして金属アルコキシドまたは金属アルコキシドの加水分解物(7)を添加することは、非常に有効である。
【0051】
金属アルコキシドは、テトラエチルオルソシリケート(Si(OC
2H
5)
4)(TEOS)、トリイソプロピルアルミニウム(Al(OC
3H
7)
3)などの、一般式M(OR)n(Mは珪素、チタニウム、アルミニウム、ジルコニウムなどの金属、Oは酸素、Rはメチル基、エチル基などのアルキル基)で表されるものである。その中でも、Mが珪素、アルミニウム、チタニウムである金属アルコキシドの特性が優れている。
【0052】
撥水層(4)に含まれる粒子分とバインダーの比率については、疎水性粒子(6)と前記金属アルコキシドあるいは該金属アルコキシドの加水分解物を金属酸化物に換算した時の重量比が、5:95〜95:5の範囲であることが好ましい。
【0053】
撥水層(4)の膜厚については、100nm以上5000nm以下であることが好ましい。100nm未満では、十分な撥水性が期待できない。また5000nm以上であると、ヒートシール樹脂層(3)のヒートシール性を低下させる恐れがある。
【0054】
ヒートシール樹脂層(3)の表面に撥水層(4)を形成する方法としては、公知のロールコート法、グラビアコート法、ディッピングコート法、スプレーコート法などを用いることができる。実験室的にはスピンコート法も使用できる。
以下実施例に基づいて、本発明に係る撥水性積層体について更に具体的に説明する。
【実施例1】
【0055】
基材層(2)として坪量52.3g/m
2の模造紙と厚さ7μmのアルミニウム箔を貼り合せたものを使用した。アルミニウム箔面にプライマー層を介して、ヒートシール樹脂層(3)としてLDPEを30の厚さに押し出し、押し出しと同時に冷却ロールに貼り付けたスタンパーによって凹凸を賦与した。
・ヒートシール樹脂層:LDPE、密度0.92、厚さ30μm
・スタンパー:ピッチ400μm、深さ50μm、台形型格子形状
このスタンパーによって賦型されたヒートシール樹脂層の凹凸は、ピッチ400μm、深さ45μmであった。
【0056】
プライマー層は、ポリエステル樹脂とイソシアネート硬化剤を混合し、乾燥後の塗布量で1g/m
2となるようにバーコーターで塗布し、80℃1分の熱風乾燥を行った。
【0057】
撥液層(4)を形成するための塗工液を以下の処方に基づいて調製した。
・疎水性粒子:トリメチルシリル基を付与したシリカ(SiO
2)粒子(平均一次粒子径15nm)を用いた。
・金属アルコキシド加水分解液:TEOS 2部に、塩酸でpHを1に調整した水1部を加えて撹拌し、加水分解液を作成した後、水を加えてSiO
2分として固形分濃度が5%となるように調整した。
・撥液層塗工液:金属アルコキシド加水分解液に、疎水性粒子を固形分重量比(アルコキシドはSiO
2換算)で50/50となるように混合、分散して塗工液を作成した。
【0058】
上記基材のヒートシール樹脂層面に、バーコーターを用いて、上記塗工液を固形分塗布量2g/m
2となるように塗工し、100℃10分の熱風乾燥を行い、目的とする撥液性積層体を作成した。
【0059】
評価方法としては、以下の評価を実施した。
撥水性評価:水の転落角を測定。60°>:○、60°≦:×、水とヨーグルトで実施。粒子密着性:セロファン粘着テープ剥離。粒子の取られなし:○、取られあり:×
【実施例2】
【0060】
スタンパー:ピッチ400μm、深さ50μm、ピラミッド型形状とした。それ以外は実施例1と同様にして、積層体を作成した。
【実施例3】
【0061】
スタンパー:ピッチ400μm、深さ50μm、モスアイ形状とした。それ以外は実施例1と同様にして、積層体を作成した。なおモスアイ形状とは、蛾の複眼のように、微細な半球が配列した形状をいう。
【実施例4】
【0062】
スタンパー:ピッチ800μm、深さ100μm、台形型格子形状とした。それ以外は
実施例1と同様にして、積層体を作成した。
【実施例5】
【0063】
スタンパー:ピッチ1500μm、深さ200μm、台形型格子形状とした。それ以外は実施例1と同様にして、積層体を作成した。
【実施例6】
【0064】
スタンパー:ピッチ200μm、深さ20μm、台形型格子形状とした。それ以外は実施例1と同様にして、積層体を作成した。
【実施例7】
【0065】
疎水性粒子:トリメチルシリル基を付与したシリカ(SiO
2)粒子(平均一次粒子径50nm)を用いた。それ以外は実施例1と同様にして、積層体を作成した。
【実施例8】
【0066】
疎水性粒子:トリメチルシリル基を付与したシリカ(SiO
2)粒子(平均一次粒子径100nm)を用いた。それ以外は実施例1と同様にして、積層体を作成した。
【実施例9】
【0067】
疎水性粒子:トリメチルシリル基を付与したシリカ(SiO
2)粒子(平均一次粒子径200nm)を用いた。それ以外は実施例1と同様にして、積層体を作成した。
【実施例10】
【0068】
疎水性粒子:トリメチルシリル基を付与したアルミナ粒子(平均一次粒子径15nm)を用いた。それ以外は実施例1と同様にして、積層体を作成した。
【実施例11】
【0069】
疎水性粒子:ジメチルポリシロキサンを付与したシリカ(SiO
2)粒子(平均一次粒子径15nm)を用いた。それ以外は実施例1と同様にして、積層体を作成した。
【実施例12】
【0070】
撥液層塗工液:金属アルコキシド加水分解液に、疎水性粒子を固形分重量比(アルコキシドはSiO
2換算)で10/90となるように混合、分散して塗工液を作成した。それ以外は実施例1と同様にして、積層体を作成した。
【実施例13】
【0071】
撥液層塗工液:金属アルコキシド加水分解液に、疎水性粒子を固形分重量比(アルコキシドはSiO
2換算)で90/10となるように混合、分散して塗工液を作成した。それ以外は実施例1と同様にして、積層体を作成した。
【実施例14】
【0072】
ヒートシール樹脂層:LLDPE、密度0.92、厚さ30μmのフィルムを使用した。それ以外は実施例1と同様にして、積層体を作成した。
【実施例15】
【0073】
ヒートシール樹脂層:CPP、密度0.90、厚さ30μmのフィルムを使用した。それ以外は実施例1と同様にして、積層体を作成した。
【実施例16】
【0074】
ヒートシール樹脂層:ポリアクリレート樹脂系のヒートシールニスをバーコートで塗布
し、80℃1分乾燥した。乾燥後の塗布量は、3g/m
2であった。
スタンパー:ピッチ400μm、深さ50μm、台形型格子形状、エンボス条件100℃、1分、圧力0.49MPaとした。実際のヒートシール樹脂層の凹凸の高さは、45μmであった。それ以外は実施例1と同様にして、積層体を作成した。
【実施例17】
【0075】
ヒートシール樹脂層:EVA樹脂系のヒートシールニスをバーコートで塗布し、80℃1分乾燥した。乾燥後の塗布量は、3g/m
2であった。
スタンパー:ピッチ400μm、深さ150μm、台形型格子形状、エンボス条件100℃、1分、圧力0.49MPaとした。実際のヒートシール樹脂層の凹凸の高さは、45μmであった。それ以外は実施例1と同様にして、積層体を作成した。
【実施例18】
【0076】
ヒートシール樹脂層:ホットメルトシーラント(EVA+ワックス+タッキファイヤ)密度0.95、版:ピッチ400μm、深さ150μm、台形型格子形状、平均塗工厚さ20μm
実際のヒートシール樹脂層の凹凸の高さは、200μmであった。それ以外は実施例1と同様にして、積層体を作成した。
【0077】
<比較例1>
実施例1において、スタンパーを用いなかった以外は実施例1と同様にして、積層体を作成した。
【0078】
<比較例2>
スタンパー:ピッチ30μm、深さ20μm、台形型格子形状を使用した。
このスタンパーによって賦型されたヒートシール樹脂層の凹凸は、ピッチ30μm、深さ18μmであった。それ以外は実施例1と同様にして、積層体を作成した。
【0079】
<比較例3>
スタンパー:ピッチ3000μm、深さ500μm、台形型格子形状を使用した。
このスタンパーによって賦型されたヒートシール樹脂層の凹凸は、ピッチ3000μm、深さ450μmであった。それ以外は実施例1と同様にして、積層体を作成した。
【0080】
<比較例4>
スタンパー:ピッチ1μm、深さ1μm、台形型格子形状を使用した。
このスタンパーによって賦型されたヒートシール樹脂層の凹凸は、ピッチ1μm、深さ0.9μmであった。それ以外は実施例1と同様にして、積層体を作成した。
【0081】
<比較例5>
スタンパー:ピッチ2000μm、深さ1500μm、台形型格子形状を使用した。
このスタンパーによって賦型されたヒートシール樹脂層の凹凸は、ピッチ2000μm、深さ1350μmであった。それ以外は実施例1と同様にして、積層体を作成した。
【0082】
<比較例6>
スタンパー:ピッチ30μm、深さ20μm、台形型格子形状を使用した。
それ以外は、実施例15と同様にして、積層体を作成した。
【0083】
<比較例7>
スタンパーを用いなかった以外は、実施例16と同様にして、積層体を作成した。
【0084】
<比較例8>
スタンパーを用いなかった以外は、実施例17と同様にして、積層体を作成した。
【0085】
<比較例9>
実施例18において、ホットメルトシーラントの塗工版をリバース回転とし、版目が生じないようにした。それ以外は実施例18と同様にして、積層体を作成した。
【0086】
<比較例10>
疎水性粒子を用いなかった以外は、実施例1と同様にして、積層体を作成した。
【0087】
<比較例11>
実施例1において、TEOSを配合しない塗工液を作成した。それ以外は実施例1と同様にして、積層体を作成した。
【0088】
以上で得られた積層体について、評価を行った結果を表1に示す。なお表中でバインダーと記したのは、金属アルコキシドまたは金属アルコキシドの加水分解物の意味である。
【表1】
【0089】
スタンパーによるヒートシール樹脂層の凹凸がないか、適当でない比較例1〜9では、ヨーグルトの弾き性が不十分であった。疎水性粒子がない比較例11では撥水性においても十分でなく、バインダーを用いなかった比較例11では、密着性に問題が生じた。
【0090】
これに対して、本発明に係る積層体である実施例1〜18の積層体は、いずれも弾き性、密着性とも良好な結果が得られた。