特許第5966522号(P5966522)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5966522多孔質フィルム及びこれを用いたリチウムイオン二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5966522
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】多孔質フィルム及びこれを用いたリチウムイオン二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/18 20060101AFI20160728BHJP
   H01M 10/058 20100101ALI20160728BHJP
【FI】
   H01M2/18 Z
   H01M10/058
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-81411(P2012-81411)
(22)【出願日】2012年3月30日
(65)【公開番号】特開2013-211192(P2013-211192A)
(43)【公開日】2013年10月10日
【審査請求日】2014年7月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(72)【発明者】
【氏名】里見 倫明
(72)【発明者】
【氏名】南 孝将
(72)【発明者】
【氏名】桜井 文吾
【審査官】 赤樫 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−155159(JP,A)
【文献】 特開平08−227707(JP,A)
【文献】 特開2006−196207(JP,A)
【文献】 特開2000−212323(JP,A)
【文献】 特開2011−080078(JP,A)
【文献】 特開2004−178834(JP,A)
【文献】 特開2010−059436(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/158335(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/14− 2/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超高分子量ポリオレフィン樹脂からなり多数の空孔を有する多孔質フィルムからなるリチウムイオン二次電池用セパレータであって、前記多孔質フィルムの膜面上に平均開孔径0.05μm〜0.3μmである微細孔と、前記微細孔の平均開孔径の10倍よりも大きな電解液拡散穴と、が存在し、
前記多孔質フィルムの膜面に対する前記電解液拡散穴の占有面積は5.1%以上12.2%以下であることを特徴とするリチウムイオン二次電池用セパレータ。
【請求項2】
前記電解液拡散穴はすり鉢状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用セパレータ。
【請求項3】
前記電解液拡散穴の開口形状が楕円状であることを特徴とする請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池用セパレータ。
【請求項4】
正極と、負極と、電解質と、を含み、前記正極と前記負極との間に請求項1乃至3のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用セパレータを有し、
前記正極及び前記負極は、その一端で電極端子と電気的に接続し、
前記正極又は前記負極の少なくとも一方の電極の前記電極端子の近傍において対向する前記リチウムイオン二次電池用セパレータに前記電解液拡散穴が多数偏在していることを特徴とするリチウムイオン二次電池。
【請求項5】
前記電解液拡散穴の開口が負極に近接して対向していることを特徴とする請求項4のリチウムイオン二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質フィルム及びこれを用いたリチウムイオン二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の携帯機器の発展は目覚ましく、その原動力として高エネルギー電池によるところが大きい。特に、リチウムイオン二次電池は、次世代電池の主力として期待されている。このようなリチウムイオン二次電池の開発では、より高性能化を図るため、正極、負極、及び電解液等の構成要素の改良が進められている。特に、負極表面での電解質の分解による特性の劣化を抑制するため、種々の改良が進められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、電解液溶媒としてエチレンカーボネート(EC)のような環状カーボネートを用いた電解液中に、添加剤として1,3−プロパンスルトンを含有させることにより、初期充電時のEC還元分解前に負極炭素材料表面にて1,3−プロパンスルトンを還元させ、炭素材料表面を不動態皮膜で被覆する技術が開示されている。ここで、不動態皮膜は、電解液中に添加された添加剤の分解に起因して、負極表面を被覆するように形成される膜であって、リチウムイオンの透過性が良好で、負極おける電解液の分解反応を抑制する作用を有する膜である。これにより、電解液の分解やこれに伴う負極の劣化を抑制しようとしている。
【0004】
また、例えば特許文献2や特許文献3には、電解液溶媒として低温特性を向上させるために好適なプロピレンカーボネート(PC)に、添加剤としてビニレンカーボネート(VC)を含有させることにより、初期充電時のPC還元分解前に負極炭素材料表面にてVCを還元分解させ、炭素材料表面を不動態皮膜で被覆する技術が開示されている。これにより、電解液の分解やこれ伴う負極の劣化を抑制しようとしている。
【0005】
しかしながら、これら特許文献1〜3に開示の技術では、電解液に添加剤を加えることで炭素材料表面の不動態皮膜形成の観点からであり、添加剤が供給されない部分があれば、不動態皮膜が形成されない。特に大型電池はセルのサイズが大きい分、電解液の循環に時間がかかり、電解液の局所的な劣化の影響が顕著になりやすい。セル構造全体として、電解液中の添加剤の濃度分布については考慮されていないため、電解液起因の特性劣化に対する対策としてはまだ不十分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−3724号公報
【特許文献2】特開平8−45545号公報
【特許文献3】特開2001−167797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記課題に鑑み、電解液の組成劣化を抑制する多孔質フィルムを提供することを目的とし、ついてはリチウムイオン二次電池のサイクル寿命の向上を図ろうとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する為に後述する以下の発明に至った。
【0009】
本発明に係る多孔質フィルムは、多数の空孔を有し、前記多孔質フィルムの膜面上に前記空孔よりも大きな電解液拡散穴が存在することを特徴とする。この様な構造によれば、セパレータである多孔質フィルムと隣接する電極界面において電解液の拡散が良好なるため。このため電極表面で生じた劣化した電解液は拡散が容易となりリチウムイオン二次電池のサイクル寿命が向上可能になる。
【0010】
例えば、電解液中に添加剤が含有されているとき、電解液中の添加剤の供給が追いつかず、ひいては電解液の還元分解反応が進行してしまう可能性がある。この様な場合でも電極界面近傍のみならず、多孔質フィルムの内部に存在する電解液からも添加剤が十分に供給される必要があるため、より良好な循環を行うためには、前記電解液拡散穴がすり鉢状に形成されていることが好ましい。
【0011】
さらに、拡散される電解液の流路が広がることから、電解液拡散穴の開口形状は楕円状が好ましい。その開口から前記多孔質フィルムの内部に入り込んだ凹みを有するすり鉢形状を取ることが特に好ましい。
【0012】
また、電解液の組成劣化は特に電極端子部付近で著しい。電極自身にも内部抵抗が存在するため、端子からの距離によって電解液の還元分解反応の状態は異なる。つまり、電極端子近傍での分解反応が活発である電極端子近傍への電解液拡散穴を配置すれば、効果的に電解液を拡散でき、より効率よく反応に必要な添加剤を供給できる。
【0013】
したがって、正極と、負極と、電解質とを有し、前記正極と前記負極との間に前記多孔質フィルムを備えたリチウムイオン二次電池においては、前記正極又は前記負極の一端で電極端子と電気的に接続するその近傍で、電極端子と接続する一方の電極と対向する前記多孔質フィルムに前記電解液拡散穴が多数偏在していることが好ましい。
【0014】
したがって、二次電池の構造として、電解液拡散穴部は負極側に対向していることが好ましい。
【0015】
また、体積変化の大きい負極側に電解液拡散穴を配置して電解液と添加剤の拡散をよりスムーズにすることで、負極としての劣化を大幅に抑制することが可能となる。特に体積膨張が大きい負極側では電解液移動量が多くなれば、一時的に多孔質フィルム側の電解液の供給量が追いつかなくなる。電解液拡散穴が配置されれば、電解液の出入りが激しい負極の反応を均一化することもでき、二次電池の長期の連続使用においても急激な電解液の劣化や安全性の低下等の品質劣化を抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、多孔質フィルムに電解液拡散穴を有することにより、電極表面で生じる電解液の組成劣化を抑制することができ、これを用いたリチウムイオン二次電池はサイクル寿命を向上するとができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態における電解液拡散穴を膜面上に有する多孔質フィルムの断面模式図である。
図2】本実施形態における正極と多孔質フィルムと負極とを積層させたときの積層体の構成を示す断面模式図である。
図3】本実施形態の多孔質フィルムを用いたリチウムイオン二次電池の概略断面図である。
図4】実施例1の電解液拡散穴を膜面上に有する多孔質フィルムの電子顕微鏡写真(10,000倍)である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の多孔質フィルム1について、好適な実施形態を詳細に説明する。図1は、本実施形態に用いられる多孔質フィルムの模式的な断面図である。この図に示すように、本実施形態の多孔質フィルム1はその主面上に電解液拡散穴2を有している。たとえば多孔質フィルム1は、ポリエチレンを主体とした平均空孔サイズ0.05μm〜0.3μm、空孔率が20〜70%であって、多孔質フィルム1の主面上には、そのフィルム内部に存在する空孔よりもサイズの大きい電解液拡散穴2を有するのが好ましい。なお、図1においては多孔質フィルム1内部にある多数の空孔は図示していない。電解液拡散穴2が、周辺の空孔内部に滞留した劣化した電解液と劣化のない電解液とを置換容易にするため、電解液の劣化を防止でき、電池の長寿命化をはかることができる。
【0019】
本実施形態で用いる多孔質フィルム1のための素材は、上述した材料に特に限定されるわけではないが、熱可塑性樹が好ましく用いることができる。更に重量平均分子量が3×10以上の超高分子量ポリオレフィン樹脂か、又はこの超高分子量ポリオレフィン樹脂を少なくとも15重量%と重量平均分子量が5×10未満のポリオレフィン樹脂とからなる超高分子量ポリオレフィン樹脂組成物が好ましい。
【0020】
本明細書において、簡単のため、上記超高分子量ポリオレフィン樹脂とこれを含む組成物を超高分子量ポリオレフィン樹脂(組成物)と総称することとする。
【0021】
本実施形態において、超高分子量ポリオレフィン樹脂は、重量平均分子量が3×10〜20×10の範囲にあり、好ましくは、1×10〜15×10の範囲にある。このような超高分子量ポリオレフィン樹脂としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン等の単独重合体、共重合体又はこれらの混合物を挙げることができる。しかし、なかでも、本実施形態においては、超高分子量ポリエチレン樹脂が好ましく用いられる。
【0022】
上記超高分子量ポリオレフィン樹脂組成物は、上記超高分子量ポリオレフィン樹脂と共に、それ以外のポリオレフィン樹脂を含んでいてもよい。この超高分子量ポリオレフィン樹脂以外のポリオレフィン樹脂は、重量平均分子量が1×10 以上、5×10 未満の範囲にあり、好ましくは、1×10〜3×10 の範囲にある。このようなポリオレフィン樹脂としても、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン等の単独重合体、共重合体又はこれらの混合物を挙げることができる。しかし、なかでも、本実施形態においては、高密度ポリエチレン樹脂が好ましく用いられる。
【0023】
本実施形態において、超高分子量ポリオレフィン樹脂組成物を用いるとき、この組成物は、超高分子量ポリオレフィン樹脂を少なくとも15重量%含むことが必要である。
【0024】
本実施形態による多孔質フィルムの製造には、先ず、上記超高分子量ポリオレフィン樹脂(組成物)5〜30重量%、好ましくは、8〜20重量%と、凝固点が−10℃以下である溶媒95〜70重量%、好ましくは、92〜80重量%と、拡散穴形成材5〜30重量%、好ましくは、8〜15重量%を均一なスラリー状に混合し、これを加熱攪拌して、上記超高分子量ポリオレフィン樹脂(組成物)を上記溶媒中に溶解させ、得られた溶液状混合物を115〜185℃の範囲の温度で混練りして、混練り物を調製する。
【0025】
上記溶媒としては、上記超高分子量ポリオレフィン樹脂(組成物)をよく溶解すると共に、凝固点が−10℃以下のものであれば、特に、限定されるものではないが、特に、本実施形態においては、凝固点が−10℃から−45℃の範囲のものが好ましく用いられる。そのような溶媒の好ましい具体例として、例えば、デカン、デカリン、流動パラフィン等の脂肪族又は環式炭化水素や、凝固点がこれらに対応する鉱油留分を挙げることができる。しかし、なかでも、流動パラフィンのような不揮発性溶媒が好ましく、特に、凝固点が−15℃以下であり、40℃における動粘度が65cSt以下の不揮発性溶媒が好ましく用いられる。
【0026】
上記、空孔膜よりもサイズの大きな拡散穴形成を促進させる材料としては、上記超高分子量ポリオレフィン樹脂(組成物)と非相溶なオリゴマーであり、後述する洗浄溶媒に可溶であれば特に、限定されるものではないが、特に、本実施形態においては、重量平均分子量が1000以下のポリアクリロニトリルやポリアクリロニトリルの共重合体も用いることができる。ポリアクリロニトリルの共重合体の共重合モノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、イタコン酸、水素化メチルアクリレート、水素化エチルアクリレート、アクリルアミド、塩化ビニル、フッ化ビニリデン、塩化ビニリデン等を用いることができる。さらに、アクリロニトリルブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、アクリロニトリル塩化ポリエチレンプロピレンジエンスチレン樹脂、アクリロニトリル塩化ビニル樹脂、アクリロニトリルメチルアクリレート樹脂、アクリロニトリルアクリレート樹脂等を用いることができる。混合のエントロピーを考えると、重量平均分子量が低いものほど選択的に膜表面に集まり、電解液拡散穴が形成され易い。
【0027】
超高分子量ポリオレフィン樹脂(組成物)と上記溶媒と拡散穴形成材の溶液状混合物において、上記超高分子量ポリオレフィン樹脂(組成物)が30重量%を越えるときは、特に、超高分子量ポリオレフィン樹脂の溶媒に対する溶解性が不十分であって、混練り時に超高分子量ポリオレフィン樹脂が延び切り状態近くに解されず、ポリマー鎖の十分な絡み合いを得ることが困難である。更に、後述するように、混練り物を冷却しながら、シートに成形して、樹脂を結晶化させた後、延伸処理して、延伸フィルムとする際に、延伸倍率が比較的低いとき、空孔を有する特性を備えた多孔質フィルムを得ることが困難であり、他方、上記超高分子量ポリオレフィン樹脂(組成物)が5重量%を下回るときは、得られる多孔質フィルムが強度に劣る。
【0028】
本実施形態においては、上記超高分子量ポリオレフィン樹脂(組成物)を溶媒に溶解させてなる溶液を混練りするに際して、185℃を越える温度で混練りするときは、溶液の粘度が低すぎて、混練り物に十分なせん断力を作用させることができず、他方、混練温度が115℃よりも低いときは、上記混合物を効果的に混練することができず、かくして、上記混合物の混練りにおいて、上述したような超高分子量ポリオレフィン樹脂のポリマー鎖の十分な絡み合いを得ることが困難である。
【0029】
本実施形態においては、このような超高分子量ポリオレフィン樹脂のポリマー鎖の十分な絡み合いを得るために、上記超高分子量ポリオレフィン樹脂(組成物)と溶媒と拡散穴形成材との溶液状混合物に高いせん断力を作用させつつ、混練りすることが好ましい。混練り時に、十分なせん断力を作用させることができないときは、超高分子量ポリオレフィン樹脂のポリマー鎖の十分な絡み合いを得ることができず、また拡散穴形成材が分散されずに適切なサイズの電解液拡散穴ができないことがある。従って、本実施形態によれば、超高分子量ポリオレフィン樹脂(組成物)と溶媒との溶液状混合物の混練りには、通常、混合物に強いせん断力を与えることができるニーダや二軸押出機等が好ましく用いられる。
【0030】
次いで、本実施形態によれば、このようにして得られた超高分子量ポリオレフィン樹脂(組成物)と溶媒と拡散穴形成材との溶液状の混練り物を用いた溶媒の凝固点以下の温度、好ましくは、−10℃から−45℃の範囲の温度、好ましくは、−15℃〜−40℃の範囲の温度に冷却しながら、ゲル状シートに成形して、超高分子量ポリオレフィン樹脂(と高密度ポリエチレン樹脂)を結晶化させる。ゲル状シートの厚みは、通常、0.1〜5.0mmの範囲が適当である。
【0031】
このように、超高分子量ポリオレフィン樹脂(組成物)と溶媒との溶液状の混練り物を用いた溶媒の凝固点以下の温度に冷却するには、特に、限定されるものではないが、例えば、予め2枚の金属板をドライアイスにて冷却しておき、これら金属板の間に上記混練り物を挟み、混練り物を加圧して、シートに成形すればよい。
【0032】
本実施形態によれば、混練り物を冷却しながら、シートに成形する際、得られるシートの表面層のみならず、シートの中心部まで、樹脂を微細に結晶化させるために、混練り物を急冷することが好ましく、従って、その冷却速度は平均で50℃/分以上が好ましい。溶液状態、即ち、混練り物からシートへの成形時の冷却速度が遅いときは、混練りによって、引き伸ばされ、絡み合っているフィブリルが毛毬状に戻って、太い繊維を形成するので、細く、且つ、均一なフィブリルからなる多孔質膜構造が形成されにくく、大きな貫通孔を有する多孔質膜構造が部分的に形成されてしまう。
【0033】
また、この冷却速度は電解液拡散穴の大きさとも密接に関係している。シートを冷却とともに電解液拡散穴部分に相当するポリアクリロニトリルドメインのサイズは成長を始める。したがって、電解液拡散穴のサイズを制御するには適正な冷却速度を選択する必要があり、上記空孔部分の結晶化させる速度とのバランスが必要となる。
【0034】
即ち、一般に、結晶性高分子量樹脂を結晶化させると、ラメラ結晶が生成し、このラメラ結晶の厚みは、結晶化温度に大きく依存し、融点と結晶化温度との差が大きいほど、ラメラ結晶の厚みは小さくなる。本実施形態によれば、超高分子量ポリオレフィン樹脂(組成物)と溶媒と拡散穴形成材との混練り物を115〜185℃の高い温度から、用いた溶媒の凝固点以下の温度、即ち、−10℃以下の温度に冷却しながら、好ましくは、急冷しながら、ゲル状シートに成形するので、ラメラ結晶の厚みは非常に小さく、従って、ゲル状シートを延伸して、延伸フィルムを得る際に、ラメラ結晶が微結晶に分割される結果、繊維径が小さく、且つ、均一であるフィブリルからなり、膜厚に対する貫通経路の比率である曲路率が非常に大きく、かつ表面に空孔径よりも大きなサイズの電解液拡散穴が存在する、ミクロフィブリル構造を有する多孔質フィルムを得ることができるとみられる。
【0035】
本実施形態に従って、混練り物を溶液状態から急冷しながら、ゲル状シートに成形して、樹脂を結晶化させても、このようなゲル状シートにおける樹脂の結晶構造は、用いた溶媒の凝固点以上の温度でこのゲル状シートを保存するときは、上記冷却速度が遅いときと同様、混練りによって、引き伸ばされ、絡み合っているフィブリルが毛毬状に戻って、太い繊維を形成して、微細で均一な多孔構造が形成され難く、大きな貫通孔が部分的に形成される。従って、超高分子量ポリオレフィン樹脂組成物と溶媒との混練り物を急冷しながら、ゲル状シートに成形し、かくして、結晶構造を有せしめたゲル状シートを直ちに延伸するか、又は保存するとすれば、得られたゲル状シートを溶媒の凝固点以下の温度に保存することが望ましい。
【0036】
このように、混練り物のシートへの成形時の冷却速度が遅い場合や、得られたシートを用いた溶媒の凝固点以上の温度で保存した場合には、上述したような現象を生じ、得られる多孔質フィルムは、空孔部分の構造の微細性と均一性に欠けるものとなって、比較的大きい空孔ができるので、強度、特に、突刺し強度において劣るようになる。
【0037】
本実施形態によれば、次いで、上記超高分子量ポリオレフィン樹脂の融点をMとするとき、上記ゲル状シートを(M+5)℃から(M−30)℃の範囲の温度、好ましくは、M℃から(M−25)℃の範囲の温度にて、二軸延伸する。この二軸延伸は、逐次又は同時二軸延伸のいずれによってもよいが、好ましくは、同時二軸延伸する。本実施形態において、ゲル状シートの延伸倍率は、一方向に3〜32倍であり、面積延伸倍率は9〜1024倍の範囲が適当であり、好ましくは、一方向に3〜20倍であり、面積延伸倍率は9〜400倍の範囲である。
【0038】
本実施形態において、同時二軸延伸は、TD方向(Transverse Direction)とMD方向(Machine Direction)に延伸され、このTD方向とMD方向の速度比を変えることにより、縦横比の異なる電解液拡散穴が形成される。膜表面に存在しているポリアクリロニトリルやポリアクリロニトリルの共重合体ドメインは分子量が低いため、その形状は膜歪に対して顕著に影響を受ける。したがって、延伸速度比での拡散穴径コントロールが可能となる。
【0039】
次いで、このように得られた二軸延伸フィルムを適宜の溶剤で洗浄して、フィルム中に残留する溶媒を除去して、多孔質フィルムとし、好ましくは、この後、このフィルムの熱収縮を防止するために、加熱して、ヒートセット(熱固定)する。上記脱溶媒処理に用いる溶剤としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素、塩化メチレン、四塩化炭素等の塩素化炭化水素、ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類等の易揮発性のものが好ましく用いられる。これらの溶剤は、超高分子量ポリオレフィン樹脂(組成物)の溶液の調製に用いた溶媒に応じて適宜に選ばれる。シート中に残留する溶媒を除去するには、例えば、シートを溶剤に浸漬すればよい。
【0040】
形成された拡散穴のサイズは空孔部の5倍以上が好ましく、より好ましくは10倍以上である。また、経験的には、膜厚方向へ孔径は好ましくは空孔部の5倍以上必要で、より好ましくは10倍以上あればより効果的に電解液を拡散する。
【0041】
拡散される電解液の流路を考えると、電解液拡散穴の形状は角形より円状、あるいは楕円状の方が効果的である。楕円形とは、孔形状の長軸径/短軸径が例えば1.5以上が好ましい。拡散穴の形状としては面方向へは楕円状、深さ方向へはすり鉢状が好ましい。また、同じ面積であれば電解液拡散穴は円形のものが複数あるより、楕円形の方が効果的に電解液の循環が行われていた。これは電解液の面内方向の拡散が膜厚方向のそれと比較して早いためと考えられる。
【0042】
また、膜面上に電解液拡散穴が存在しない多孔質フィルムにおいては、拡散穴を有する空孔層を積層して形成した多層フィルムとしても良い。その場合、前記電解液拡散層(電解液拡散穴を付与する機能層)の厚さが0.1〜1μmであることが望ましい。電解液拡散層の厚さが0.1μm以上であれば、その形成を技術的に容易に行い得る範囲となるし、電池の高容量化を妨げない程度の薄膜としておくことができる。
【0043】
前記電解液拡散層がポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、及びポリフェニレンスルフィドからなる樹脂系の材料群から選択される少なくとも1種で構成される多孔質層であることが好ましい。電解液拡散層が上記樹脂系の材料群から選択される少なくとも1種で構成される多孔質層であれば、電解液の浸透、拡散パスとして機能する空隙を形成しやすい。また、上記樹脂系は、機械的強度や熱安定性に優れるため、電池内で変質しにくい多孔質層を形成することができる。
【0044】
前記電解液拡散層の形成には上記樹脂材料とこれら樹脂の可溶な溶剤とポリアクリロニトリルやポリアクリロニトリルの共重合体などの拡散穴形成材とを混合してスラリーを作製し、このスラリーを負極の表面に塗布することにより形成することができる。溶媒としては、例えば、極性アミド系溶媒、または極性尿素系溶媒が挙げられる。該極性アミド系溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。また該極性尿素系溶媒としては、N,N,N’,N’−テトラメチルウレア等が挙げられる。これらの中でも、化学的安定性の面で、N−メチル−2−ピロリドンが好ましい。
【0045】
前記電解液拡散層の形成方法としては、例えばナイフ、ブレード、バー、グラビア、ダイ等の塗工方法があげられる。バー、ナイフ等の塗工が簡便であるが、工業的には、溶液が外気と接触しない構造のダイ塗工が好ましい。
【0046】
また前記電解液拡散層の機械的強度や熱安定性を向上させるため、無機粒子を混合してもよい。無機粒子の構成材料の具体例としては、例えば、酸化鉄、Al(アルミナ)、SiO(シリカ)、TiO、BaTiO、ZrOなどの無機酸化物;窒化アルミニウム、窒化ケイ素などの無機窒化物;フッ化カルシウム、フッ化バリウム、硫酸バリウムなどの難溶性のイオン結晶;シリコン、ダイヤモンドなどの共有結合性結晶;モンモリロナイトなどの粘土;などが挙げられる。ここで、前記無機酸化物は、ベーマイト、ゼオライト、アパタイト、カオリン、ムライト、スピネル、オリビン、マイカなどの鉱物資源由来物質またはこれらの人造物などであってもよい。
【0047】
(リチウムイオン二次電池)
続いて、上述の多孔質フィルムを用いた二次電池に関して、特にリチウムイオン二次電池を例に挙げて説明する。
【0048】
図3は、上述の多孔質フィルム18を用いたリチウムイオン二次電池100の一例の模式断面図である。
【0049】
リチウムイオン二次電池100は、主として、積層体30、積層体30を密閉した状態で収容するケース50、積層体30に接続された一対のリード60、62、及び、積層体30に含浸される電解液を備えている。
【0050】
積層体30は、一対の正極10、負極20が多孔質フィルム18を挟んで対向配置されたものである。正極10は、板状(膜状)の正極集電体12上に正極活物質層14が設けられたものである。負極20は、板状(膜状)の負極集電体22上に負極活物質層24が設けられたものである。正極活物質層14及び負極活物質層24が多孔質フィルム18の両側にそれぞれ接触している。正極集電体12及び負極集電体22の端部には、それぞれリード62、60が接続されており、リード60、62の端部はケース50の外部にまで延びている。
【0051】
以下、正極10及び負極20を総称して、電極10、20といい、正極集電体12及び負極集電体22を総称して集電体12、22といい、正極活物質層14及び負極活物質層24を総称して活物質層14、24という。
【0052】
(正極)
まず正極から順に説明していく。
正極集電体12は、導電性の板材であればよく、例えば、アルミ、銅、ニッケル箔の金属薄板を用いることができる。
【0053】
正極活物質層14は、本実施形態に係る活物質、結合剤、必要に応じた量の導電材を含むものである。
正極活物質としては、例えば、コバルト酸リチウム(LiCoO)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、層状マンガン酸リチウム(LiMnO)又は複数の遷移金属を配合した複合酸化物であるLiMnNiCo(x、y及びzは、x+y+z=1、0≦y<1、0≦z<1、0≦x<1の式を満たす)などの層状化合物、これらの化合物において1種以上の遷移金属元素を置換したもの、マンガン酸リチウム(Li1+xMn2−x(ただし、xは0〜0.33の数を示す)、Li1+xMn2−x−y(ただし、MはNi、Co、Cr、Cu、Fe、Al、Mgからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を含み、xは0〜0.33の数を示し、yは0〜1.0の数を示し、かつ、x及びyは、2−x−y>0の式を満たす)、LiMnO、LiMn、LiMnO、LiMn2−x(ただし、MはCo、Ni、Fe、Cr、Zn、Taからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を含み、xは、0.01〜0.1の数を示す)、LiMnMO(ただし、MはFe、Co、Ni、Cu、Znからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を示す)、銅−リチウム酸化物(LiCuO)、鉄−リチウム酸化物(LiFe)、LiFePO、LiV、V、Cu等のバナジウム酸化物、ジスルフィド化合物、Fe(MoOが挙げられる。
【0054】
(導電助剤)導電助剤としては、例えば、ニッケル、アルミ、銅、銀等の金属及び導電性炭素材料が挙げられる。上記導電性炭素材料としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック、黒鉛、カーボンナノファイバー等の炭素繊維が挙げられる。導電助剤としては、特にカーボンブラックが好ましい。なお、導電助剤は含有しなくてもよい。
【0055】
(結着剤)結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−塩化3フッ化エチレン(CTFE)共重合体〔PVDF−CTFE)〕、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレンフッ素ゴム、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレンフッ素ゴム〔PVDF−TFE−HFP)〕、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテルフッ素ゴム等のフッ素系高分子などが好ましい。フッ化ビニリデン系ポリマーとしては、フッ化ビニリデンが50重量%以上、特に70重量%以上であるものが好ましく、特に、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレン(HFP)との共重合体、フッ化ビニリデンと塩化3フッ化エチレンとの共重合体〔PVDF−CTFE)〕が好ましい。
【0056】
(負極)
次に負極を説明する。
負極集電体22は、導電性の板材であればよく、例えば、アルミ、銅、ニッケル箔の金属薄板を用いることができる。
【0057】
負極活物質としては、例えば、黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、炭素繊維などの、リチウムを吸蔵、放出可能な炭素系材料の1種または2種以上の混合物が用いられる。また、Si、Sn、Ge、Bi、Sb、Inなどの元素およびその合金、リチウム含有窒化物、もしくは酸化物などのリチウム金属に近い低電圧で充放電できる化合物、またはリチウム金属やリチウム/アルミニウム合金も負極活物質として用いることができる。そして、これらの負極活物質に導電助剤(カーボンブラックなどの炭素材料など)やPVDFなどの結着剤などを適宜添加した負極合剤を、集電体を芯材として成形体に仕上げることで、集電体表面に負極合剤層を形成することができる。
【0058】
(電解質)
電解質は、図示されていないが、積層体30の内部に含有させるものである。電解質としては、特に限定されず、例えば、本実施形態では、リチウム塩を含む電解質溶液(電解質水溶液、有機溶媒を使用する電解質溶液)を使用することができる。ただし、電解質水溶液は電気化学的に分解電圧が低いことにより、充電時の耐用電圧が低く制限されるので、有機溶媒を使用する電解質溶液(非水電解質溶液)であることが好ましい。電解質溶液としては、リチウム塩を非水溶媒(有機溶媒)に溶解したものが好適に使用される。例えば、非水溶媒としては、メチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、プロピオン酸メチル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、エチレングリコールサルファイト、1,2−ジメトキシエタン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2−メチル−テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルなどの1種のみからなる有機溶媒、あるいはこれらの2種以上の混合溶媒が挙げられる。
【0059】
リチウム塩としては、例えば、LiClO、LiPF、LiBF、LiAsF、LiSbF、LiCFSO、LiCFCO、Li(SO、LiN(CFSO、LiC(CFSO、LiC2n+1SO(n≧2)、LiN(RfOSO〔ここでRfはフルオロアルキル基〕などから選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0060】
リチウム塩の電解液中の濃度としては、0.5〜1.5mol/Lとすることが好ましく、0.9〜1.25mol/Lとすることがより好ましい。
【0061】
更に、非水電解液には、電池のサイクル寿命や負荷特性の向上を目的として、ビニレンカーボネートなどの二重結合を有するエステルや、プロパンスルトンなどのイオウ含有有機化合物や、フルオロベンゼンなどのフッ素含有芳香族化合物などの添加剤を添加することが好ましい。
【0062】
なお、本実施形態において、電解質は液状以外にゲル化剤を添加することにより得られるゲル状電解質であってもよい。また、電解質溶液に代えて、固体電解質(固体高分子電解質又はイオン伝導性無機材料からなる電解質)が含有されていてもよい。
【0063】
ケース50は、その内部に積層体30及び電解質溶液を密封するものである。ケース50は、電解液の外部への漏出や、外部からのリチウムイオン二次電池100内部への水分等の侵入等を抑止できる物であれば特に限定されない。例えば、ケース50として、図3に示すように、金属箔52を高分子膜54で両側からコーティングした金属ラミネートフィルムを利用できる。金属箔52としては例えばアルミ箔を、高分子膜54としてはポリプロピレン等の膜を利用できる。例えば、外側の高分子膜54の材料としては融点の高い高分子例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド等が好ましく、内側の高分子膜54の材料としてはポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等が好ましい。
【0064】
リード60、62は、アルミ等の導電材料から形成されている。
【0065】
ケースの材料には、特に制限はなく、従来公知のリチウムイオン二次電池に採用されている筒形(角筒形や円筒形など)のスチール缶やアルミニウム缶などが挙げられる。また、樹脂フィルムに金属を蒸着したラミネートフィルムを外装体に用いることもできる。
【0066】
以上、本実施形態の多孔質フィルム、その製造方法、多孔質フィルムを用いたリチウムイオン二次電池の一例を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の多孔質フィルム等は、用途等に応じて適宜設定することができる。
【0067】
例えば、本発明の多孔質フィルムは、リチウムイオン二次電池以外の電気化学素子にも用いることができる。電気化学素子としては、金属リチウム二次電池(カソードとして本発明の活物質を用い、アノードに金属リチウムを用いたもの)等のリチウムイオン二次電池以外の二次電池や、リチウムキャパシタ等の電気化学キャパシタ等が挙げられる。これらの電気化学素子は、自走式のマイクロマシン、ICカードなどの電源や、プリント基板上又はプリント基板内に配置される分散電源の用途に使用することが可能である。
【実施例】
【0068】
(実施例1)
重量平均分子量200万の超高分子量ポリエチレン樹脂(融点134℃)15重量%と流動パラフィン(凝固点−15℃、40℃における動粘度59cSt)83.5重量%とポリアクリロニトリル1.5重量%をスラリー状に均一に混合し、これを小型ニーダに仕込み、160℃の温度で約50分間、加熱し、溶解させ、混練りして、超高分子量ポリエチレン樹脂と溶媒との混練り物を得た。この後、この混練り物を−15℃まで急冷しながら、厚み0.5mmのシートに成形して、超高分子量ポリエチレン樹脂を結晶化させた。
【0069】
次いで、このシートを約115℃の温度で縦横4×4倍に同時二軸延伸した後、塩化メチレンに浸漬して脱溶媒した。このようにして得られた多孔質フィルムを更に120℃で10秒間ヒートセットして、厚み25μm、空孔率40%の多孔質フィルムを得た。
【0070】
(実施例2)
重量平均分子量200万の超高分子量ポリエチレン樹脂(融点134℃)15重量%と流動パラフィン(凝固点−15℃、40℃における動粘度59cst)83重量%とポリアクリロニトリル2重量%をスラリー状に均一に混合し、これを小型ニーダに仕込み、160℃の温度で約50分間、加熱し、溶解させ、混練りして、超高分子量ポリエチレン樹脂と溶媒との混練り物を得た。この後、この混練り物を−15℃まで急冷しながら、厚み0.5mmのシートに成形して、超高分子量ポリエチレン樹脂を結晶化させた。
【0071】
次いで、このシートを約115℃の温度で縦横4×4倍に同時二軸延伸した後、塩化メチレンに浸漬して脱溶媒した。このようにして得られた多孔質フィルムを更に120℃で10秒間ヒートセットして、厚み25μm、空孔率40%の多孔質フィルムを得た。
【0072】
(実施例3)
重量平均分子量200万の超高分子量ポリエチレン樹脂(融点134℃)15重量%と流動パラフィン(凝固点−15℃、40℃における動粘度59cst)83.5重量%とポリアクリロニトリル1.5重量%をスラリー状に均一に混合し、これを小型ニーダに仕込み、160℃の温度で約50分間、加熱し、溶解させ、混練りして、超高分子量ポリエチレン樹脂と溶媒との混練り物を得た。この後、この混練り物を−15℃まで急冷しながら、厚み0.5mmのシートに成形して、超高分子量ポリエチレン樹脂を結晶化させた。
【0073】
次いで、このシートを約115℃の温度で縦4×横4.4倍に同時二軸延伸した後、塩化メチレンに浸漬して脱溶媒した。このようにして得られた多孔質フィルムを更に120℃で10秒間ヒートセットして、厚み25μm、空孔率40%の多孔質フィルムを得た。
【0074】
(実施例4)
実施例1で得た多孔質フィルムにポリアミドイミド(PAI)多孔層をコーティングした。以下にその手順を示す。
【0075】
ポリアミドイミド溶液(日立化成製HPC−5000−30)50重量%、ポリエチレングリコール(第一工業製薬製PEG4000)15重量%、ポリアクリロニトリル5重量%、N−メチル−2−ピロリドン30重量%をハイブリッドミキサーで1h混合した。その後、実施例1で得た多孔質フィルム上に、4μmの耐熱樹脂溶液の層をブレードコーターを使用して形成した。すぐに水浴中で液の層を水洗(温度40℃)すると、ポリアミドイミド(PAI)樹脂が析出し、実施例1で得た多孔質フィルム上に黄白濁した膜状物が形成された。得られた耐熱層が形成された多孔質膜を5分間湯浴中に浸漬した後、イオン交換水に浸漬し洗浄した。イオン交換水を流しながら12時間以上水洗した後、水中より湿潤した膜状物を取り出し、エアーにより水をふき飛ばした。その後、全体を熱オーブンに入れ60℃で減圧しながら膜状物を乾燥し、ポリエチレン製多孔質フィルムと、その一方の面のみに形成された総厚み0.5μmのポリアミドイミド多孔質多孔質フィルムを得た。
【0076】
(実施例5)
ポリアミドイミド溶液(日立化成製HPC−5000−30)50重量%、ポリエチレングリコール(第一工業製薬製PEG4000)15重量%、ポリアクリロニトリル7.5重量%、N−メチル−2−ピロリドン27.5重量%をハイブリッドミキサーで1h混合した。その後、実施例1で得た多孔質フィルム上に、4μmの耐熱樹脂溶液の層をブレードコーターを使用して形成した。すぐに水浴中で液の層を水洗(温度40℃)すると、ポリアミドイミド樹脂が析出し、実施例1で得た多孔質フィルム上に黄白濁した膜状物が形成された。得られた耐熱層が形成された多孔質膜を5分間湯浴中に浸漬した後、イオン交換水に浸漬し洗浄した。イオン交換水を流しながら12時間以上水洗した後、水中より湿潤した膜状物を取り出し、エアーにより水をふき飛ばした。その後、全体を熱オーブンに入れ60℃で減圧しながら膜状物を乾燥し、ポリエチレン製多孔質フィルムと、その一方の面のみに形成された総厚み0.5μmのポリアミドイミド多孔質多孔質フィルムを得た。
【0077】
(比較例1)
重量平均分子量200万の超高分子量ポリエチレン樹脂(融点134℃)15重量%と流動パラフィン(凝固点−15℃、40℃における動粘度59cst)85重量%とをスラリー状に均一に混合し、これを小型ニーダに仕込み、160℃の温度で約50分間、加熱し、溶解させ、混練りして、超高分子量ポリエチレン樹脂と溶媒との混練り物を得た。この後、この混練り物を−15℃まで急冷しながら、厚み0.5mmのシートに成形して、超高分子量ポリエチレン樹脂を結晶化させた。
【0078】
次いで、このシートを約115℃の温度で縦横4×4倍に同時二軸延伸した後、塩化メチレンに浸漬して脱溶媒した。このようにして得られた多孔質フィルムを更に120℃で10秒間ヒートセットして、厚み25μm、空孔率40%の多孔質フィルムを得た。
【0079】
(比較例2)
ポリアミドイミド溶液(日立化成製HPC−5000−30)50重量%、N−メチル−2−ピロリドン250重量%をハイブリッドミキサーで1h混合した。その後、実施例1で得た多孔質フィルム上に、4μmの耐熱樹脂溶液の層をブレードコーターを使用して形成した。すぐに水浴中で液の層を水洗(温度40℃)すると、ポリアミドイミド樹脂が析出し、実施例1で得た多孔質フィルム上に黄白濁した膜状物が形成された。得られた耐熱層が形成された多孔質膜を5分間湯浴中に浸漬した後、イオン交換水に浸漬し洗浄した。イオン交換水を流しながら12時間以上水洗した後、水中より湿潤した膜状物を取り出し、エアーにより水をふき飛ばした。その後、全体を熱オーブンに入れ60℃で減圧しながら膜状物を乾燥し、ポリエチレン製多孔質フィルムと、その一方の面のみに形成された総厚み0.5μmのポリアミドイミド多孔質多孔質フィルムを得た。
【0080】
(電池作製)
「正極」
正極活物質としてLiMn、導電助剤としてカーボンブラック、結着剤として(PVDF−CTFE)を準備した。これらを、重量比で正極活物質:導電助剤:結着剤=90:5:5となるように混合した。得られた混合物とNMP(N−メチル−2−ピロリドン)溶媒を、重量比で1:1.3となるように混合して、室温下で分散させカソード用スラリーを調製した。得られたカソード用スラリーをドクターブレード法により塗膜化して乾燥し、カソードを作製した。
【0081】
「負極」
負極活物質として易黒鉛化炭素材料、導電助剤としてカーボンブラック、結着剤として(PVDF−CTFE)を準備した。これらを、重量比で負極活物質:導電助剤:結着剤=90:5:5となるように混合した。得られた混合物とNMP(N−メチル−2−ピロリドン)溶媒を、重量比で1:1となるように混合して、室温下で分散させアノード用スラリーを調製した。得られたアノード用スラリーをドクターブレード法により塗膜化して乾燥し、アノードを作製した。
【0082】
「電解液」
EC(エチレンカーボネート)/DEC(ジエチルカーボネート)=30/70(重量比)である非水溶媒へLiPFを1mol/cmの濃度となるように溶解したものを電解液とした。
【0083】
「電池」
上記の正極(直径14mm)、負極(直径15mm)を、実施例で作製した多孔質フィルム(直径16mm)を介して積層し、電解液と共に容器に封入し、容量が4.2mAhのボタン電池(2032型)を得た。
【0084】
使用した材料、製膜した多孔質フィルムの特性及びそれを用いた二次電池の特性については、次のようにして評価した。
【0085】
(重量平均分子量)
ゲル浸透クロマトグラフ(ウォーターズ社製、GPC−150C)を用い、溶媒にo−ジクロロベンゼンを、また、カラムとしてShodex−80M(昭和電工製)を用いて温度135℃で測定した。データ処理は、TRC社製データ処理システムを用いて行なった。分子量はポリスチレンを基準として算出した。
【0086】
(厚み)
1/10000mmシックネスゲージにより、及び多孔質フィルムの断面の1万倍走査電子顕微鏡写真から測定する。
【0087】
(空孔率)
水銀ポロシメーター(オートスキャン33、ユアサアイオニクス社製)を使用し、細孔容積(ml/g)を求め、樹脂組成物の密度を0.95(g/ml)とし、以下の式1に基づき算出した。
(式1)
空孔率(%)=(細孔容積)/(1/密度+細孔容積)×100
【0088】
(透気度)
JIS P8117に準拠する方法で測定する。
【0089】
(多孔質フィルムの表面観察:電解液拡散穴の形状観察)
適当な大きさに切り取った多孔質フィルムを導電性両面テープにより試料台に固定し、厚み10nm程度のオスミウムプラズマコーティングを施して検鏡用試料とした。次の超高分解能走査型電子顕微鏡装置(UHRSEM:日立製作所製超高分解能走査型電子顕微鏡S−900型)を用いて、加速電圧1.0kV、撮影速度40秒/フレームの条件下にて、所定倍率で多孔質フィルムの表面構造観察を行った。図4に、実施例1で得られた多孔質フィルムの主面を走査型電子顕微鏡にて撮影した写真(500倍)を示す。この写真をもとに画像解析により、電解液拡散穴の開口面積を算出した。なお、電解液拡散穴がすり鉢状等の形態か否かの判断は、多孔質フィルムの主面に垂直な断面を走査型電子顕微鏡にて確認すればわかる。
【0090】
(放電試験とサイクル寿命)
リチウムイオン二次電池を、最高電圧4.2V、電流密度0.068mA/cm、最終電流密度0.034mA/cmの条件で、定電流定電圧充電を行った。その後、最終電圧2.75V、電流密度を0.068、0.341、1.361mA/cmの条件でそれぞれ放電させたときの容量を、0.1C、0.5C、2.0C容量として求めた。容量は、実施例1の0.1Cの放電容量を100として相対値(単位:%)で記載した。また、放電レート0.1C、0.5C、2.0Cでの500サイクル充放電試験後の放電容量も測定しサイクル寿命の評価をした。2000サイクル終了後、セルを開封し、負極の状態を目視にて確認した。各条件及び結果を表1に示す。
【0091】
なお、実施例の多孔質フィルムを走査型電子顕微鏡で観察したところ実施例のものはすべて、図4に示されるような状態で微細な空孔にその空孔径の10倍以上の孔径の電解液拡散穴が確認できた。一方、比較例は、電解液拡散穴はなかった。
【0092】
【表1】
【0093】
表1の結果から、実施例は比較例に比して組成劣化が抑制されることに起因するサイクル寿命に優れたリチウムイオン二次電池であることがわかった。
図1
図2
図3
図4