特許第5966531号(P5966531)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5966531通信システム、端末装置、再生制御方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5966531
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】通信システム、端末装置、再生制御方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G10K 15/04 20060101AFI20160728BHJP
   G10K 15/02 20060101ALI20160728BHJP
   H04N 7/173 20110101ALI20160728BHJP
【FI】
   G10K15/04 302D
   G10K15/02
   H04N7/173 630
【請求項の数】13
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-84128(P2012-84128)
(22)【出願日】2012年4月2日
(65)【公開番号】特開2013-213931(P2013-213931A)
(43)【公開日】2013年10月17日
【審査請求日】2015年2月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125689
【弁理士】
【氏名又は名称】大林 章
(74)【代理人】
【識別番号】100121108
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 太朗
(72)【発明者】
【氏名】畑 紀行
【審査官】 下林 義明
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−202275(JP,A)
【文献】 特開平01−071392(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 15/00 − 15/06
H04N 7/10
H04N 7/14 − 7/173
H04N 7/20 − 7/56
H04N 21/00 − 21/858
G10H 1/00 − 7/00
H04R 3/00 − 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1空間に設置された第1端末装置と第2空間に設置された第2端末装置とが相互に通信することで、前記第1空間および前記第2空間の各々で収録された音響を他方の空間で再生する通信システムであって、
前記第1空間のうち第1収録範囲について収録された音響を優先的に前記第2空間内で再生させる再生信号を生成する第1動作と、前記第1空間のうち前記第1収録範囲と比較して広い第2収録範囲について収録された音響を優先的に前記第2空間内で再生させる再生信号を生成する第2動作とを実行する再生制御部
を具備する通信システム。
【請求項2】
前記再生制御部は、前記第1動作では、前記第1収録範囲内の音響を示す第1音響信号を選択して前記再生信号を生成し、前記第2動作では、前記第2収録範囲内の音響を示す第2音響信号を選択して前記再生信号を生成する
請求項1の通信システム。
【請求項3】
前記再生制御部は、前記第1動作では、前記第1収録範囲内の音響を示す第1音響信号のゲインが、前記第2収録範囲内の音響を示す第2音響信号のゲインを上回るように前記第1音響信号と前記第2音響信号とを混合して前記再生信号を生成し、前記第2動作では、前記第2音響信号のゲインが前記第1音響信号のゲインを上回るように前記第1音響信号と前記第2音響信号とを混合して前記再生信号を生成する
請求項1の通信システム。
【請求項4】
前記再生制御部は、前記第1動作において、前記第2収録範囲内の音響を示す第2音響信号の強度が閾値を上回る場合に、前記第1収録範囲内の音響を示す第1音響信号のゲインが前記第2音響信号のゲインを上回るように前記第1音響信号と前記第2音響信号とを混合して前記再生信号を生成し、前記第2音響信号の強度が前記閾値を下回る場合に、前記第1音響信号を選択して前記再生信号を生成する
請求項1の通信システム。
【請求項5】
第1空間に設置された第1端末装置と第2空間に設置された第2端末装置とが相互に通信することで、前記第1空間および前記第2空間の各々で収録された画像を他方の空間で再生する通信システムであって、
前記第1空間のうち第1収録範囲について収録された画像を優先的に前記第2空間内で再生させる再生信号を生成する第1動作と、前記第1空間のうち前記第1収録範囲と比較して広い第2収録範囲について収録された画像を優先的に前記第2空間内で再生させる再生信号を生成する第2動作とを実行する再生制御部を具備し、
前記再生制御部は、前記第1動作では、前記第2収録範囲内の画像を示す第2画像信号の画像の表示サイズが、前記第1収録範囲内の画像を示す第1画像信号の画像の表示サイズを下回るように前記第1画像信号と前記第2画像信号とを合成して前記再生信号を生成し、前記第2動作では、前記第1画像信号の画像の表示サイズが前記第2画像信号の画像の表示サイズを下回るように前記第1画像信号と前記第2画像信号とを合成して前記再生信号を生成する
通信システム。
【請求項6】
第1空間に設置された第1端末装置と第2空間に設置された第2端末装置とが相互に通信することで、前記第1空間および前記第2空間の各々で収録された音響または画像を他方の空間で再生する通信システムであって、
前記第1空間のうち第1収録範囲について収録された音響または画像を優先的に前記第2空間内で再生させる再生信号を生成する第1動作と、前記第1空間のうち前記第1収録範囲と比較して広い第2収録範囲について収録された音響または画像を優先的に前記第2空間内で再生させる再生信号を生成する第2動作とを実行する再生制御部を具備し、
前記再生制御部は、前記第1端末装置および前記第2端末装置が再生する楽曲の演奏の開始に対応した時点で前記第1動作を開始し、前記楽曲の終了に対応した時点で前記第2動作を開始する
通信システム。
【請求項7】
第1空間に設置された第1端末装置と第2空間に設置された第2端末装置とが相互に通信することで、前記第1空間および前記第2空間の各々で収録された音響または画像を他方の空間で再生する通信システムであって、
前記第1空間のうち第1収録範囲について収録された音響または画像を優先的に前記第2空間内で再生させる再生信号を生成する第1動作と、前記第1空間のうち前記第1収録範囲と比較して広い第2収録範囲について収録された音響または画像を優先的に前記第2空間内で再生させる再生信号を生成する第2動作とを実行する再生制御部を具備し、
前記再生制御部は、前記第1端末装置および前記第2端末装置が再生する楽曲のうち歌唱区間内で前記第1動作を開始し、前記楽曲のうち前記歌唱区間外で前記第2動作を開始する
通信システム。
【請求項8】
第1空間に設置され、第2空間に設置された他端末と通信可能な端末装置であって、
前記第1空間のうち第1収録範囲について収録された音響を優先的に前記第2空間内で再生させる再生信号を生成する第1動作と、前記第1空間のうち前記第1収録範囲と比較して広い第2収録範囲について収録された音響を優先的に前記第2空間内で再生させる再生信号を生成する第2動作とを実行する再生制御部
を具備する端末装置。
【請求項9】
第1空間に設置され、第2空間に設置された他端末と通信可能な端末装置であって、
前記第1空間のうち第1収録範囲について収録された画像を優先的に前記第2空間内で再生させる再生信号を生成する第1動作と、前記第1空間のうち前記第1収録範囲と比較して広い第2収録範囲について収録された画像を優先的に前記第2空間内で再生させる再生信号を生成する第2動作とを実行する再生制御部を具備し、
前記再生制御部は、前記第1動作では、前記第2収録範囲内の画像を示す第2画像信号の画像の表示サイズが、前記第1収録範囲内の画像を示す第1画像信号の画像の表示サイズを下回るように前記第1画像信号と前記第2画像信号とを合成して前記再生信号を生成し、前記第2動作では、前記第1画像信号の画像の表示サイズが前記第2画像信号の画像の表示サイズを下回るように前記第1画像信号と前記第2画像信号とを合成して前記再生信号を生成する
端末装置。
【請求項10】
第1空間に設置された第1端末装置と第2空間に設置された第2端末装置とが相互に通信することで、前記第1空間および前記第2空間の各々で収録された音響を他方の空間で再生する通信システムの再生制御部が、
前記第1空間のうち第1収録範囲について収録された音響を優先的に前記第2空間内で再生させる再生信号を生成する第1動作と、前記第1空間のうち前記第1収録範囲と比較して広い第2収録範囲について収録された音響を優先的に前記第2空間内で再生させる再生信号を生成する第2動作とを実行する
再生制御方法。
【請求項11】
第1空間に設置された第1端末装置と第2空間に設置された第2端末装置とが相互に通信することで、前記第1空間および前記第2空間の各々で収録された画像を他方の空間で再生する通信システムの再生制御部が、
前記第1空間のうち第1収録範囲について収録された画像を優先的に前記第2空間内で再生させる再生信号を生成する第1動作と、前記第1空間のうち前記第1収録範囲と比較して広い第2収録範囲について収録された画像を優先的に前記第2空間内で再生させる再生信号を生成する第2動作とを実行し、
前記第1動作では、前記第2収録範囲内の画像を示す第2画像信号の画像の表示サイズが、前記第1収録範囲内の画像を示す第1画像信号の画像の表示サイズを下回るように前記第1画像信号と前記第2画像信号とを合成して前記再生信号を生成し、前記第2動作では、前記第1画像信号の画像の表示サイズが前記第2画像信号の画像の表示サイズを下回るように前記第1画像信号と前記第2画像信号とを合成して前記再生信号を生成する
再生制御方法。
【請求項12】
第1空間に設置され、第2空間に設置された他端末と通信可能なコンピュータを、
前記第1空間のうち第1収録範囲について収録された音響を優先的に前記第2空間内で再生させる再生信号を生成する第1動作と、前記第1空間のうち前記第1収録範囲と比較して広い第2収録範囲について収録された音響を優先的に前記第2空間内で再生させる再生信号を生成する第2動作とを実行する再生制御部
として機能させるプログラム。
【請求項13】
第1空間に設置され、第2空間に設置された他端末と通信可能なコンピュータを、
前記第1空間のうち第1収録範囲について収録された画像を優先的に前記第2空間内で再生させる再生信号を生成する第1動作と、前記第1空間のうち前記第1収録範囲と比較して広い第2収録範囲について収録された画像を優先的に前記第2空間内で再生させる再生信号を生成する第2動作とを実行する再生制御部として機能させるプログラムであって、
前記再生制御部は、前記第1動作では、前記第2収録範囲内の画像を示す第2画像信号の画像の表示サイズが、前記第1収録範囲内の画像を示す第1画像信号の画像の表示サイズを下回るように前記第1画像信号と前記第2画像信号とを合成して前記再生信号を生成し、前記第2動作では、前記第1画像信号の画像の表示サイズが前記第2画像信号の画像の表示サイズを下回るように前記第1画像信号と前記第2画像信号とを合成して前記再生信号を生成する
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の端末装置の間で音声や画像を相互に授受する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
地理的に離間した各空間に設置された複数の端末装置が音響や画像を相互に送受信することで遠隔地の利用者間のデュエットや利用者のオーディションを実現する通信システムが例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−366169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術のように、空間内で歌唱している1人の利用者の音声や画像を他の端末装置に送信するだけでは、空間内の他の利用者(歌唱の受聴者)の音声や画像が他の空間内の利用者に伝達されないから、各空間内の利用者が他の空間内の雰囲気を把握し難いという問題がある。空間内の広範囲にわたる音響を収音する収音装置や広範囲を撮像する撮像装置を利用すれば、空間内の広範囲にわたる雰囲気を他の空間内の利用者に伝達することも可能であるが、今度は歌唱中の特定の利用者の音声や画像を各空間にて明確に把握することが困難となる。以上の事情を考慮して、本発明は、空間内の広範囲にわたる様子と特定の範囲内の様子とを他の空間にて把握できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するために本発明が採用する手段を説明する。なお、本発明の理解を容易にするために、以下の説明では、本発明の各要素と後述の各実施形態の要素との対応を括弧書で付記するが、本発明の範囲を実施形態の例示に限定する趣旨ではない。
【0006】
本発明の通信システムは、第1空間(例えば空間RA)に設置された第1端末装置(例えば端末装置10A)と第2空間(例えば空間RB)に設置された第2端末装置(例えば端末装置10B)とが相互に通信することで、第1空間および第2空間の各々で収録された音響または画像を他方の空間で再生する通信システムであって、第1空間のうち第1収録範囲について収録された音響または画像を優先的に第2空間内で再生させる再生信号(例えば再生信号Y[A],再生信号Z[A])を生成する第1動作と、第1空間のうち第1収録範囲と比較して広い第2収録範囲について収録された音響または画像を優先的に第2空間内で再生させる再生信号を生成する第2動作とを実行する再生制御部(例えば音響処理部62および制御処理部46,画像処理部82および制御処理部46)を具備する。以上の構成では、第1空間内の第1収録範囲について収録された音響または画像を優先的に第2空間内で再生させる第1動作と、第1収録範囲と比較して広い第2収録範囲について第1空間内で収録された音響または画像を優先的に第2空間内で再生させる第2動作とが実行されるから、第1空間内の第1収録範囲内の音響または画像(例えば特定の歌唱者の音響や画像)と第2収録範囲内の音響または画像(例えば複数の受聴者の音響や画像)とを第2空間にて把握することが可能である。
【0007】
本発明の好適な態様において、第1端末装置は、第1収録範囲内の音響または画像を示す第1収録信号(例えば音響信号S1,画像信号V1)と、第2収録範囲内の音響または画像を示す第2収録信号(例えば音響信号S2,画像信号V2)とを、第1空間内の収録装置から取得する信号取得部(例えば音響取得部52,画像取得部54)を具備し、再生制御部は、第1動作では、第1収録信号を選択して再生信号を生成し、第2動作では、第2収録信号を選択して再生信号を生成する。以上の態様では、第1収録信号が第1動作にて選択され、第2収録信号が第2動作にて選択されるから、制御処理部の動作が簡素化されるとともに、第1収録範囲内の音響および画像と第2収録範囲内の音響および画像とを明確に把握できるという利点がある。なお、以上の態様の具体例は、例えば第1実施形態や第4実施形態として後述される。
【0008】
本発明の好適な態様において、第1端末装置は、第1収録範囲内の音響を示す第1音響信号(例えば音響信号S1)と、第2収録範囲内の音響を示す第2音響信号(例えば音響信号S2)とを、第1空間内の収音装置から取得する音響取得部(例えば音響取得部52)を具備し、再生制御部は、第1動作では、第1音響信号のゲイン(例えば調整値GA1)が第2音響信号のゲイン(例えば調整値GA2)を上回るように第1音響信号と第2音響信号とを混合して再生信号を生成し、第2動作では、第2音響信号のゲインが第1音響信号のゲインを上回るように第1音響信号と第2音響信号とを混合して再生信号を生成する。以上の態様では、第1音響信号と第2音響信号との混合で再生信号が生成されるから、第1音響信号および第2音響信号の何れかを選択して再生信号を生成する構成と比較して、第1空間の全体的な音響を反映した聴感的に自然な印象の音響を第2空間にて再生することが可能である。なお、以上の態様の具体例は、例えば第2実施形態として後述される。
【0009】
本発明の好適な態様において、第1端末装置は、第1収録範囲内の音響を示す第1音響信号(例えば音響信号S1)と、第2収録範囲内の音響を示す第2音響信号(例えば音響信号S2)とを、第1空間内の収音装置から取得する音響取得部(例えば音響取得部52)を具備し、再生制御部は、第1動作において、第2音響信号の強度(例えば強度P)が閾値を上回る場合に、第1音響信号のゲインが第2音響信号のゲインを上回るように第1音響信号と第2音響信号とを混合して再生信号を生成し、第2音響信号の強度が閾値を下回る場合に、第1音響信号を選択して再生信号を生成する。以上の態様では、第2音響信号の強度が閾値を下回る場合には第1音響信号の選択で再生信号が生成され、第2音響信号の強度が閾値を上回る場合には第1音響信号と第2音響信号との混合で再生信号が生成される。すなわち、第2音響信号の強度が増加した場合には第2収録範囲内の音響が第2空間内での再生音に反映される。したがって、例えば第2収録範囲内の利用者の音響が増大した場合に、その雰囲気を第2空間に適切に伝達することが可能である。なお、以上の態様の具体例は、例えば第3実施形態として後述される。
【0010】
本発明の好適な態様において、第1端末装置は、第1収録範囲内の画像を示す第1画像信号(例えば画像信号V1)と、第2収録範囲内の画像を示す第2画像信号(例えば画像信号V2)とを、第1空間内の撮像装置から取得する画像取得部(例えば画像取得部54)を具備し、再生制御部は、第1動作では、第2画像信号の画像(例えば画像FU2)の表示サイズが第1画像信号の画像(例えば画像FU1)の表示サイズを下回るように第1画像信号と第2画像信号とを合成して再生信号を生成し、第2動作では、第1画像信号の画像の表示サイズが第2画像信号の画像の表示サイズを下回るように第1画像信号と第2画像信号とを合成して再生信号を生成する。以上の態様では、第1画像信号と第2画像信号との合成で再生信号が生成されるから、第1画像信号および第2画像信号の何れかを選択して再生信号を生成する構成と比較して、第1収録範囲および第2収録範囲の双方の画像を第2空間内の利用者が視認できるという利点がある。なお、以上の態様の具体例は、例えば第5実施形態として後述される。
【0011】
なお、以上の各態様において、第1動作と第2動作との切替の契機は任意である。例えば、第1端末装置および第2端末装置が同一の楽曲を再生する構成では、楽曲の演奏の開始に対応した時点で第1動作を開始し、楽曲の終了に対応した時点で第2動作を開始する構成や、楽曲のうち歌唱区間内で第1動作を実行し、楽曲のうち歌唱区間外で第2動作を実行する構成が好適である。
【0012】
本発明は、前述の各形態に係る通信システムに利用される端末装置としても特定される。本発明の端末装置は、第1空間に設置され、第2空間に設置された他端末と通信可能な端末装置であって、第1空間のうち第1収録範囲について収録された音響または画像を優先的に第2空間内で再生させる再生信号を生成する第1動作と、第1空間のうち第1収録範囲と比較して広い第2収録範囲について収録された音響または画像を優先的に第2空間内で再生させる再生信号を生成する第2動作とを実行する再生制御部を具備する。以上の端末装置によれば、本発明に係る通信システムと同様の作用および効果が実現される。
【0013】
以上の各態様に係る構成は、専用のDSP(Digital Signal Processor)等のハードウェア(電子回路)によって実現されるほか、CPU(Central Processing Unit)などの汎用の演算処理装置とプログラムとの協働によっても実現される。本発明のプログラムは、第1空間に設置され、第2空間に設置された第2端末装置と通信可能なコンピュータを、第1空間および第2空間の各々で収録された音響または画像を他方の空間で再生するために、第1空間のうち第1収録範囲について収録された音響または画像を優先的に第2空間内で再生させる再生信号を生成する第1動作と、第1空間のうち第1収録範囲と比較して広い第2収録範囲について収録された音響または画像を優先的に第2空間内で再生させる再生信号を生成する第2動作とを実行する再生制御部として機能させる。以上のプログラムによれば、本発明に係る通信システムと同様の作用および効果が実現される。なお、本発明のプログラムは、コンピュータが読取可能な記録媒体に格納された形態で提供されてコンピュータにインストールされるほか、通信網を介した配信の形態で提供されてコンピュータにインストールされる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態に係る通信システムのブロック図である。
図2】第1実施形態における端末装置のブロック図である。
図3】端末装置の機能的な構成を示すブロック図である。
図4】制御処理部の動作のフローチャートである。
図5】第3実施形態における制御処理部の動作のフローチャートである。
図6】第4実施形態における端末装置のブロック図である。
図7】第4実施形態における端末装置の機能的な構成を示すブロック図である。
図8】第5実施形態の動作の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る通信システム100のブロック図である。図1に示すように、第1実施形態の通信システム100は、地理的に相互に離間した各空間R(RA,RB)内に設置された複数の端末装置10(10A,10B)を含んで構成される。各端末装置10は、通信網200を介して相互に通信する。通信網200は、例えば伝送遅延が充分に小さい広帯域通信網である。なお、空間RA内の端末装置10Aと空間RB内の端末装置10Bとを図1では便宜的に図示したが、実際には多数の端末装置10が通信網200に接続されて相互に通信する。
【0016】
第1実施形態の通信システム100は、各端末装置10がカラオケ装置として機能するカラオケシステムである。端末装置10が設置された各空間R(RA,RB)には、楽曲を歌唱する歌唱者U1と歌唱者U1の歌唱を聴取する複数の受聴者(聴衆)U2とが存在する。端末装置10Aと端末装置10Bとは同一の楽曲を再生し、端末装置10Aと端末装置10Bとが相互に通信することで、空間RAおよび空間RBの各々で収録された音響および画像が他方の空間R内で再生される。したがって、空間RA内の歌唱者U1と空間RB内の歌唱者U1とは遠隔地に所在しながら例えばデュエットすることが可能である。
【0017】
図2は、各端末装置10のブロック図である。図2に示すように、各端末装置10は、演算処理装置20と記憶装置22と入力装置24と信号処理回路26と通信装置28とを具備するコンピュータシステムで実現される。なお、相互に別体の複数の装置として端末装置10を実現することも可能である。例えば、通信装置28は、端末装置10の他の要素とは別体の装置として構成され得る。
【0018】
演算処理装置20は、記憶装置22に記憶されたプログラムの実行で各種の制御処理および演算処理を実行する。記憶装置22は、演算処理装置20が実行するプログラムや演算処理装置20が使用する各種のデータを記憶する。例えば記憶装置22は、楽曲の伴奏音や歌詞を指定する楽曲データを楽曲毎に記憶する。半導体記録媒体や磁気記録媒体等の公知の記録媒体または複数種の記録媒体の組合せが記憶装置22として任意に採用される。
【0019】
入力装置24は、端末装置10に対する利用者(歌唱者U1や受聴者U2)からの指示を受付ける操作機器であり、例えば利用者が操作可能な複数の操作子を含んで構成される。例えば端末装置10の筐体に設置された操作パネルや端末装置10とは別体のリモコン装置が入力装置24として採用される。
【0020】
信号処理回路26は、音響の波形を示す音響信号SOUTおよび再生信号Yと、画像(動画像)を示す画像信号VOUTおよび再生信号Zとを生成する。なお、信号処理回路26の具体的な構成については後述する。通信装置28は、通信網200を介して他の端末装置10と通信する。具体的には、通信装置28は、信号処理回路26が生成した再生信号Yおよび再生信号Zを他の端末装置10との間で授受する。例えば、空間RA内の端末装置10Aと空間RB内の端末装置10Bとの通信を想定すると、図2に示すように、端末装置10Aの信号処理回路26が生成した再生信号Y[A]および再生信号Z[A]を端末装置10Aの通信装置28が端末装置10Bに送信し、端末装置10Bの信号処理回路26が生成した再生信号Y[B]および再生信号Z[B]を端末装置10Aの通信装置28が端末装置10Bから受信する。
【0021】
図1および図2に示すように、収録装置12と再生装置14とが各端末装置10に接続される。収録装置12は、空間R内の音響および画像を収録する機器であり、収音装置32-1と収音装置32-2と撮像装置34とを含んで構成される。撮像装置34は、空間R内を撮像した画像(動画像)の画像信号Vを端末装置10に供給する。第1実施形態の撮像装置34は、空間R内の歌唱者U1の画像を撮像する。
【0022】
収音装置32-1は、周囲の音響を収音した音響信号S1を端末装置10に供給し、収音装置32-2は、周囲の音響を収音した音響信号S2を端末装置10に供給する。収音装置32-1と収音装置32-2とは、空間R内の収音範囲(収録範囲)が相違する。具体的には、収音装置32-2は、収音装置32-1と比較して広範囲にわたる音響を収音する。例えば、指向性(典型的には単一指向性)のマイクが収音装置32-1として採用され、無指向性のマイク(例えばバウンダリーマイク)が収音装置32-2として採用される。収音装置32-1は、空間R内の歌唱者U1の歌唱音の収音に利用され、収音装置32-2は、空間R内の全体的な音響(以下では「背景音」と表記する)の収音に利用される。空間R内の背景音は、例えば各受聴者U2の発声音(会話音や掛け声)または拍手音等の音響である。以上に説明した通り、収音装置32-1が生成する音響信号S1は歌唱者U1の歌唱音に対応し、収音装置32-2が生成する音響信号S2は空間R内の背景音(すなわち空間R内の全体的な雰囲気)に対応する。
【0023】
再生装置14は、音響および画像を空間R内に再生する要素であり、放音装置142と表示装置144とを含んで構成される。放音装置142(スピーカ)は、信号処理回路26が生成した音響信号SOUTに応じた音響を再生する。なお、音響信号SOUTをデジタルからアナログに変換するD/A変換器の図示は便宜的に省略した。表示装置144(例えば液晶表示パネル)は、信号処理回路26が生成した画像信号VOUTに応じた画像を表示する。
【0024】
図3は、第1実施形態の端末装置10の機能的な構成を示すブロック図である。なお、以下の説明では、空間RA内の端末装置10Aの構成を説明するが、通信システム100内の各端末装置10(端末装置10B)の構成も同様である。端末装置10Aと端末装置10Bとが相互に通信する場合、端末装置10Aおよび端末装置10Bの一方が主端末(マスター)に指定されて他方が副端末(スレーブ)に指定される。
【0025】
図3に示すように、端末装置10Aの演算処理装置20は、記憶装置22に記憶されたプログラムを実行することで複数の要素(伴奏再生部42,歌詞再生部44,制御処理部46)として機能する。また、端末装置10Aの信号処理回路26は、音響取得部52と画像取得部54と音響処理部62と音響処理部64と画像処理部84とを含んで構成される。なお、演算処理装置20の機能の一部または全部を信号処理回路26で実現する構成や信号処理回路26の機能の一部または全部を演算処理装置20で実現する構成も採用され得る。また、信号処理回路26の各機能を複数の集積回路に分散させることも可能である。
【0026】
音響取得部52は、収音装置32-1が生成した音響信号S1と収音装置32-2が生成した音響信号S2とを取得する。また、音響取得部52は、音響信号S1および音響信号S2をアナログからデジタルに変換するA/D変換器や、音響信号S1および音響信号S2の強度を所定の範囲に制限するリミッタを包含し得る。音響信号S1や音響信号S2に発生するエコーを除去するエコーキャンセラを音響取得部52に搭載することも可能である。画像取得部54は、撮像装置34が生成した画像信号Vを取得する。画像取得部54が取得した画像信号Vは再生信号Z[A]として通信装置28から端末装置10Bに送信される。また、端末装置10Aの通信装置28は、端末装置10Bから送信された再生信号Z[B]を受信する。
【0027】
記憶装置22に記憶された楽曲データは、伴奏データDM1と歌詞データDM2とを含んで構成される。伴奏データDM1は、楽曲の伴奏音を時系列に指定する。歌詞データDM2は、楽曲の歌詞を時系列に指定する。伴奏データDM1および歌詞データDM2は、例えばMIDI(Musical Instrument Digital Interface)規格に準拠した形式で記述された時系列データである。図3の伴奏再生部42は、利用者が選択した楽曲(以下「選択曲」という)の伴奏音を生成する。具体的には、伴奏再生部42は、選択曲の伴奏データDM1を順次に処理することで伴奏音の音響信号SXを生成する。なお、伴奏再生部42による伴奏音の生成は、端末装置10Aが主端末に指定された場合に実行される。端末装置10Aが副端末に指定された場合には、端末装置10Bの伴奏再生部42が生成した音響信号SXに応じて空間RA内で選択曲の伴奏音が再生される。歌詞再生部44は、選択曲の歌詞データDM2を順次に処理することで画像信号VXを生成する。画像信号VXは、選択曲の歌詞の画像(歌詞の文字列が経時的にワイプされる画像)を示す。伴奏再生部42による音響信号SXの生成(伴奏音の再生)や歌詞再生部44による画像信号VXの生成(歌詞の再生)には公知の技術が任意に採用される。
【0028】
画像処理部84は、通信装置28が端末装置10Bから受信した再生信号Z[B]と、歌詞再生部44が生成した画像信号VXとの合成で画像信号VOUTを生成する。画像処理部84が生成した画像信号VOUTが表示装置144に供給されることで、空間RB内の画像に選択曲の歌詞を合成した画像が空間RA内の表示装置144に表示される。したがって、空間RA内の歌唱者U1や受聴者U2は、空間RB内の様子を視覚的に確認することが可能である。
【0029】
音響処理部62は、空間RB内での音響の再生を制御する再生信号Y[A]を生成する。具体的には、音響処理部62は、音響取得部52が取得した音響信号S1および音響信号S2に応じた再生信号Y[A]を生成する。第1実施形態の音響処理部62は、端末装置10Aが主端末に指定された場合(伴奏再生部42が音響信号SXを生成した場合)には音響信号SXを再生信号Y[A]に混合する。
【0030】
第1実施形態の音響処理部62は、音響信号S1と音響信号S2と音響信号SXとを可変の混合比で混合する混合器であり、3個の調整部72(72-1〜72-3)と加算部74とを含んで構成される。調整部72-1は音響信号S1の強度を調整値(ゲイン)GA1に応じて調整する。同様に、調整部72-2は音響信号S2の強度を調整値GA2に応じて調整し、調整部72-3は音響信号SXの強度を調整値GA3に応じて調整する。加算部74は、各調整部72による調整後の信号の加算で再生信号Y[A]を生成する。音響処理部62が生成した再生信号Y[A]が通信装置28から端末装置10Bに送信される。
【0031】
音響処理部64は、空間RA内で再生される音響の音響信号SOUTを生成する。第1実施形態の音響処理部64は、音響取得部52が取得した音響信号S1および音響信号S2と、通信装置28が端末装置10Bから受信した再生信号Y[B]と、伴奏再生部42が生成した音響信号SXとを可変の混合比で混合する混合器であり、4個の調整部76(76-1〜76-4)と加算部78とを含んで構成される。調整部76-1は音響信号S1の強度を調整値GB1に応じて調整する。同様に、調整部76-2は音響信号S2の強度を調整値GB2に応じて調整し、調整部76-3は音響信号SXの強度を調整値GB3に応じて調整し、調整部76-4は再生信号Y[B]の強度を調整値GB4に応じて調整する。加算部78は、各調整部76による調整後の信号の加算で音響信号SOUTを生成する。音響処理部64が生成した音響信号SOUTに応じた音響が放音装置142から空間RA内に再生される。以上の説明から理解されるように、空間RAおよび空間RBの各々において、空間RA内の音響と空間RB内の音響と伴奏音との混合音が再生される。したがって、空間RAおよび空間RBの各々の歌唱者U1は、他方の空間Rの歌唱者U1の歌唱音を聴取しながら選択曲を歌唱する(すなわちデュエットする)ことが可能である。
【0032】
図3の制御処理部46は、音響処理部62および音響処理部64に適用される各調整値G(GA1〜GA3,GB1〜GB4)を可変に制御する。具体的には、制御処理部46は、音響信号SOUTの生成(音響処理部64)に適用される各調整値GB(GB1〜GB4)を、例えば入力装置24に対する利用者からの指示に応じて制御する。また、制御処理部46は、選択曲が演奏される期間(以下「楽曲演奏期間」という)内では、収音装置32-1が空間RA内で収音した歌唱者U1の歌唱音(音響信号S1)が空間RA内の受聴者U2の音響と比較して優先的に空間RB内で再生され、楽曲演奏期間外では、収音装置32-2が空間RA内で収音した背景音(音響信号S2)が空間RA内の歌唱者U1の歌唱音と比較して優先的に空間RB内で再生されるように、再生信号Y[A]の生成(音響処理部62)に適用される各調整値GA(GA1,GA2)を調整する。なお、調整値GA3は例えば利用者からの指示に応じて設定される。
【0033】
図4は、再生信号Y[A]の生成に関連して制御処理部46が実行する動作のフローチャートである。端末装置10Aの作動中の所定の時間毎に図4の処理が実行される。図4の処理を開始すると、制御処理部46は、現時点が楽曲演奏期間内であるか否かを判定する(QA1)。具体的には、制御処理部46は、選択曲の演奏の開始に対応した時点(例えば演奏の開始点や演奏の開始点の前後の時点)から選択曲の演奏の終了に対応した時点(例えば演奏の終了点や演奏の終了点の前後の時点)までの期間を楽曲演奏期間としてステップQA1の判定を実行する。
【0034】
現時点が楽曲演奏期間内である場合(QA1:YES)、制御処理部46は、調整値GA1を1(すなわち、調整部72-1が音響信号S1を通過させる数値)に設定するとともに調整値GA2を0(すなわち、調整部72-2が音響信号S2を阻止する数値)に設定する(QA2)。すなわち、空間RA内の歌唱者U1の歌唱音を収音した音響信号S1が選択的に再生信号Y[A]の生成に適用され、空間RA内の背景音を収音した音響信号S2は再生信号Y[A]の生成に適用されない。したがって、端末装置10Bの音響処理部64が再生信号Y[A]から生成する音響信号SOUTに応じて空間RB内に再生される音響は、空間RA内の背景音を包含せず、空間RA内の歌唱者U1の歌唱音を明確に聴取可能な音響となる。
【0035】
他方、現時点が楽曲演奏期間外である場合(QA1:NO)、制御処理部46は、調整値GA1を0に設定するとともに調整値GA2を1に設定する(QA3)。すなわち、空間RA内の背景音を収音した音響信号S2が選択的に再生信号Y[A]の生成に適用され、空間RA内の歌唱者U1の歌唱音を収音した音響信号S1は再生信号Y[A]の生成に適用されない。したがって、端末装置10Bの音響処理部64が再生信号Y[A]から生成する音響信号SOUTに応じて空間RB内に再生される音響は、空間RA内の歌唱者U1の歌唱音を包含せず、空間RA内の背景音を充分に聴取可能な音響となる。以上の説明から理解されるように、第1実施形態の音響処理部62および制御処理部46は、収音装置32-1が収音した空間RA内の音響(歌唱音)を優先的に空間RB内で再生させる再生信号Y[A]を生成する第1動作(QA2)と、収音装置32-2が収音した空間RA内の音響(背景音)を優先的に空間RB内で再生させる再生信号Y[A]を生成する第2動作(QA3)とを実行する要素(再生制御部)として機能する。
【0036】
以上に説明した通り、第1実施形態では、空間RA内の歌唱音を背景音に対して優先的に空間RB内で再生させる第1動作(QA2)と、空間RA内の背景音を歌唱音に対して優先的に空間RB内で再生させる第2動作(QA3)とが選択的に実行される。したがって、空間RA内の歌唱者U1の歌唱音と空間RA内の広範囲にわたる雰囲気(背景音)との双方を空間RB内の歌唱者U1や受聴者U2が把握できるという利点がある。また、楽曲演奏期間内で第1動作が実行されるとともに楽曲演奏期間外で第2動作が実行されるから、楽曲演奏期間内では選択曲の歌唱音を確実に充分に聴取しながら、楽曲演奏期間外では受聴者U2の発声音(例えば掛け声や会話音)や拍手音を聴取することが可能である。
【0037】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態を以下に説明する。第1実施形態では、音響信号S1および音響信号S2の一方を選択して再生信号Y[A]を生成した。第2実施形態では、音響信号S1および音響信号S2を混合することで再生信号Y[A]を生成する。なお、以下に例示する各形態において作用や機能が第1実施形態と同等である要素については、第1実施形態の説明で参照した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0038】
第2実施形態の制御処理部46は、図4のステップQA2(第1動作)において、調整値GA1を第1実施形態と同様に1に設定する一方、調整値GA2を所定値Cに設定する。所定値Cは、調整値GA1を下回る正数(1未満の正数)に設定される。例えば所定値Cは0.25に設定される。以上の制御の結果、音響処理部62は、音響信号S1のゲイン(GA1)が音響信号S2のゲイン(GA2)を上回るように音響信号S1と音響信号S2とを混合する(音響信号S1と音響信号S2とを4:1の混合比で混合する)ことで再生信号Y[A]を生成する。したがって、空間RB内では、空間RA内の背景音が小音量で空間RA内の歌唱者U1の歌唱音とともに再生される。以上の説明から理解されるように、第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、空間RA内の歌唱音を背景音に対して優先的に空間RB内で再生させる第1動作(QA2)が実行される。
【0039】
また、第2実施形態の制御処理部46は、図4のステップQA3(第2動作)において、調整値GA2を第1実施形態と同様に1に設定する一方、調整値GA1を所定値Cに設定する。所定値Cは、調整値GA2を下回る正数(例えば0.25)に設定される。以上の制御の結果、音響処理部62は、音響信号S2のゲイン(GA2)が音響信号S1のゲイン(GA1)を上回るように音響信号S1と音響信号S2とを混合する(音響信号S2と音響信号S1とを4:1の混合比で混合する)ことで再生信号Y[A]を生成する。したがって、空間RB内では、空間RA内の歌唱者U1の歌唱音が小音量で空間RA内の背景音とともに再生される。以上の説明から理解されるように、第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、空間RA内の背景音を歌唱音に対して優先的に空間RB内で再生させる第2動作(QA3)が実行される。
【0040】
以上に説明した第2実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。また、第2実施形態では、第1動作の実行時に背景音が小音量で歌唱音に混合され、第2動作の実行時に歌唱音が小音量で背景音に混合される。したがって、空間RA内の全体的な音響を反映した聴感的に自然な印象の音響を空間RB内で再生できるという利点がある。
【0041】
<第3実施形態>
本発明の第3実施形態を説明する。第3実施形態の制御処理部46は、図4の処理に代えて図5の処理を所定の時間毎に実行する。図5の処理を開始すると、制御処理部46は、第1実施形態と同様に、現時点が楽曲演奏期間内であるか否かを判定する(QA1)。現時点が楽曲演奏期間内である場合(QA1:YES)、制御処理部46は、音響取得部52が収音装置32-2から取得した音響信号S2の強度(例えばパワーの平均値)Pを算定する(QA4)。そして、制御処理部46は、ステップQA4で算定した強度Pが所定の閾値PTHを上回るか否かを判定する(QA5)。
【0042】
音響信号S2の強度Pが閾値PTHを上回る場合(QA5:YES)、制御処理部46は、音響処理部62の調整値GA1を1に設定するとともに調整値GA2を所定値Cに設定する(QA6)。所定値Cは、第2実施形態と同様に、1未満の正数(例えば0.25)に設定される。すなわち、音響処理部62は、音響信号S1のゲイン(GA1)が音響信号S2のゲイン(GA2)を上回るように音響信号S1と音響信号S2とを混合することで再生信号Y[A]を生成する。以上の条件で生成された再生信号Y[A]に応じた音響信号SOUTが空間RB内で再生されるから、空間RA内の背景音が小音量で空間RA内の歌唱者U1の歌唱音とともに空間RB内で再生される。
【0043】
他方、音響信号S2の強度Pが閾値PTHを下回る場合(QA5:NO)、制御処理部46は、第1実施形態と同様のステップQA2を実行する。以上に説明した通り、第3実施形態では、音響信号S2の強度Pが閾値PTHを上回る場合には音響信号S1と音響信号S2との混合で再生信号Y[A]が生成され(QA6)、強度Pが閾値PTHを下回る場合には音響信号S1の選択により再生信号Y[A]が生成される(QA2)。なお、現時点が楽曲演奏期間外である場合(QA1:NO)、第1実施形態と同様に、音響信号S2の選択により再生信号Y[A]が生成される(QA3)。
【0044】
第3実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。また、第3実施形態では、空間RA内の背景音を収録した音響信号S2の強度Pが閾値PTHを上回る場合(例えば各受聴者U2の雰囲気が盛上がった場合)には、楽曲演奏期間内でも背景音が空間RB内に再生されるから、例えば楽曲演奏期間内に空間RAで発生する受聴者U2の音声(例えば掛け声や拍手音)を空間RB内の歌唱者U1や受聴者U2も聴取できる。したがって、空間RA内の雰囲気を空間RB内の歌唱者U1や受聴者U2が把握できるという効果は格別に顕著である。他方、背景音は小音量で再生されるから、空間RA内の歌唱者U1の歌唱音を空間RB内で聴取することは阻害されない。
【0045】
<第4実施形態>
図6は、第4実施形態における各端末装置10(端末装置10A)のブロック図である。図6に示すように、第4実施形態の端末装置10に接続される収録装置12は、収音装置32と撮像装置34-1と撮像装置34-2とを含んで構成される。撮像装置34-1は、空間RA内を撮像した画像信号V1を生成し、撮像装置34-2は、空間RA内を撮像した画像信号V2を生成する。撮像装置34-1と撮像装置34-2とは、空間R内の撮像範囲(収録範囲)が相違する。具体的には、撮像装置34-2は、撮像装置34-1と比較して広い範囲を撮像する。以下の説明では、撮像装置34-1が空間R内の歌唱者U1を撮像し、撮像装置34-2が空間R内の複数の受聴者U2を撮像する場合を想定する。収音装置32は、第1実施形態の収音装置32-1と同様に、空間RA内の歌唱者U1の歌唱音を収音して音響信号Sを生成する。
【0046】
図7は、第4実施形態における端末装置10(端末装置10A)の機能的な構成のブロック図である。図7に示すように、第4実施形態の信号処理回路26は、音響取得部52と画像取得部54と音響処理部62と音響処理部64と画像処理部82と画像処理部84とを含んで構成される。なお、信号処理回路26の機能の一部または全部を演算処理装置20で実現することも可能である。音響取得部52は、第1実施形態と同様に、収音装置32が生成した音響信号Sを取得する。画像取得部54は、撮像装置34-1が生成した画像信号V1と撮像装置34-2が生成した画像信号V2とを取得する。
【0047】
音響処理部62は、空間RB内での音響の再生を制御する再生信号Y[A]を生成する。具体的には、音響処理部62は、端末装置10Aが主端末に指定された場合には、音響取得部52が取得した音響信号Sと伴奏再生部42が生成した音響信号SXとを混合することで再生信号Y[A]を生成し、端末装置10Aが副端末に指定された場合には、音響取得部52が取得した音響信号Sを再生信号Y[A]として出力する。音響処理部62が生成した再生信号Y[A]が通信装置28から端末装置10Bに送信される。
【0048】
音響処理部64は、空間RA内で再生される音響の音響信号SOUTを生成する。具体的には、端末装置10Aが主端末に指定された場合、音響処理部64は、音響取得部52が取得した音響信号Sと通信装置28が端末装置10Bから受信した再生信号Y[B]と伴奏再生部42が生成した音響信号SXとを混合することで音響信号SOUTを生成する。また、端末装置10Aが副端末に指定された場合、音響処理部64は、音響取得部52が取得した音響信号Sと通信装置28が端末装置10Bから受信した再生信号Y[B]とを混合することで音響信号SOUTを生成する。音響処理部64が生成した音響信号SOUTに応じた音響が放音装置142から空間RA内に再生される。したがって、空間RAおよび空間RBの双方において、空間RA内の歌唱者U1の歌唱音と空間RB内の歌唱者U1の歌唱音と選択曲の伴奏音との混合音が再生される。
【0049】
図7の画像処理部82は、空間RB内の画像の再生を制御する再生信号Z[A]を生成する。第1実施形態の画像処理部82は、画像取得部54が取得した画像信号V1および画像信号V2の一方を再生信号Z[A]として選択する。また、画像処理部84は、空間RA内の画像の再生を制御する画像信号VOUTを生成する。具体的には、画像処理部84は、通信装置28が端末装置10Bから受信した再生信号Z[B]と、歌詞再生部44が生成した画像信号VXとの合成で画像信号VOUTを生成する。画像処理部84が生成した画像信号VOUTが表示装置144に供給されることで、空間RB内の画像に選択曲の歌詞を合成した画像が空間RA内の表示装置144に表示される。
【0050】
図7の制御処理部46は、画像処理部82の動作(画像信号V1または画像信号V2の選択)を制御する。具体的には、制御処理部46は、楽曲演奏期間内では画像信号V1を選択するように画像処理部82を制御し、楽曲演奏期間外では画像信号V2を選択するように画像処理部82を制御する。以上の説明から理解されるように、第4実施形態の画像処理部82および制御処理部46は、撮像装置34-1が撮像した空間RA内の歌唱者U1の画像を優先的に空間RB内で再生させる第1動作(画像信号V1の選択)と、撮像装置34-2が撮像した空間RA内の複数の受聴者U2の画像を優先的に空間RB内で再生させる第2動作(画像信号V2の選択)とを実行する要素(再生制御部)として機能する。
【0051】
以上に説明した通り、第4実施形態では、空間RA内の歌唱者U1の画像を優先的に空間RB内で再生させる第1動作と、空間RA内の各受聴者U2の画像を優先的に空間RB内で再生させる第2動作とが実行される。したがって、空間RA内の歌唱者U1の画像と空間RA内の受聴者U2(空間RA内の全体的な雰囲気)との双方を空間RB内の歌唱者U1や受聴者U2が把握できるという利点がある。また、楽曲演奏期間内で第1動作が実行されるとともに楽曲演奏期間外で第2動作が実行されるから、楽曲演奏期間内では歌唱者U1が歌唱する様子を視認しながら、楽曲演奏期間外では例えば受聴者U2が盛上がる様子を視認することが可能である。
【0052】
<第5実施形態>
第4実施形態の画像処理部82は、画像信号V1および画像信号V2の一方を再生信号Z[A]として選択した。第5実施形態の画像処理部82は、画像信号V1と画像信号V2とを合成することで再生信号Z[A]を生成する。第4実施形態と同様に、端末装置10Aにて生成された再生信号Z[A]に応じた画像が空間RB内で表示され、端末装置10Bにて生成された再生信号Z[B]に応じた画像が空間RA内で表示される。
【0053】
図8は、第5実施形態における画像処理部82および制御処理部46の動作の説明図である。図8に示すように、画像処理部82は、画像FAおよび画像FBの一方を示す再生信号Z[A]を画像信号V1と画像信号V2との合成により生成する。画像FAおよび画像FBの各々は、画像信号V1が示す歌唱者U1の画像FU1と画像信号V2が示す受聴者U2の画像FU2とを合成した画像(ピクチャーインピクチャー)である。画像FAでは、画像FU2の表示サイズが画像FU1の表示サイズを下回る。すなわち、歌唱者U1の画像FU1が受聴者U2の画像FU2と比較して優先的に表示される。他方、画像FBでは、画像FU1の表示サイズが画像FU2の表示サイズを下回る。すなわち、受聴者U2の画像FU2が歌唱者U1の画像FU1と比較して優先的に表示される。制御処理部46は、第1動作の実行時(例えば楽曲演奏期間内)に画像FAの再生信号Z[A]が生成され、第2動作の実行時(例えば楽曲演奏期間外)に画像FBの再生信号Z[A]が生成されるように画像処理部82を制御する。
【0054】
第5実施形態においても第4実施形態と同様の効果が実現される。また、第4実施形態では、空間RA内の歌唱者U1の画像FU1と空間RA内の受聴者U2の画像FU2とを合成した画像(FA,FB)が空間RB内で表示されるから、空間RA内の歌唱者U1および受聴者U2の全体的な様子を空間RB内で確認できるという利点がある。
【0055】
<変形例>
前述の各形態は多様に変形され得る。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は適宜に併合され得る。
【0056】
(1)第1実施形態から第3実施形態では、収録装置12が収音装置32-1と収音装置32-2とを含む構成を例示したが、単体の収音装置32の収音範囲(指向性)を可変に制御することで、相異なる収音範囲に対応する音響信号S1および音響信号S2を生成することも可能である。また、第4実施形態および第5実施形態では、収録装置12が撮像装置34-1と撮像装置34-2とを含む構成を例示したが、単体の撮像装置34の撮像範囲を可変に制御する(例えば撮像レンズの焦点距離を制御する)ことで、相異なる撮像範囲に対応する画像信号V1および画像信号V2を生成することも可能である。
【0057】
(2)前述の各形態では、再生信号Y[A]を生成する再生制御部(音響処理部62および制御処理部46)や再生信号Z[A]を生成する再生制御部(画像処理部82および制御処理部46)を端末装置10A内に設置したが、再生制御部の位置は適宜に変更される。例えば、端末装置10Aや端末装置10Bとは別個に通信網200に接続された管理装置(例えばサーバ装置)に再生制御部を設置することも可能である。例えば音響信号S1および音響信号S2を端末装置10Aから管理装置に送信し、管理装置内の再生制御部が再生信号Y[A]を生成して端末装置10Bに送信する構成や、画像信号V1および画像信号V2を端末装置10Aから管理装置に送信し、管理装置内の再生制御部が再生信号Z[A]を生成して端末装置10Bに送信する構成が採用される。以上の説明から理解されるように、再生制御部は、通信システム100内に設置された要素として包括され、通信システム100内での具体的な位置は任意である。
【0058】
(3)前述の各形態では、楽曲演奏期間内に第1動作を実行するとともに楽曲演奏期間外に第2動作を実行したが、第1動作と第2動作とを切替える条件は以上の例示に限定されない。例えば、選択曲のうち歌唱パートが存在する歌唱区間内で第1動作を実行するとともに歌唱区間外(例えば前奏や間奏や後奏の区間内)で第2動作を実行する構成も採用され得る。以上の構成によれば、例えば選択曲のうち前奏や間奏や後奏の区間で空間RA内に発生する受聴者U2の拍手音等の音響を空間RB内でも受聴することが可能である。また、第1動作と第2動作との切替の時点を時系列に指定する動作指定データ(例えば動作切替を指示するイベントデータを時系列に配列したMIDIデータ)を各楽曲の楽曲データに内包し、動作指定データで指定される時点で第1動作および第2動作の一方から他方に切替えることも可能である。以上の構成によれば、歌唱者U1の音響や画像に注目すべき期間と各受聴者U2の音響や画像に注目すべき期間とを楽曲毎に個別に設定できるという利点がある。また、入力装置24に対する利用者からの指示に応じて第1動作と第2動作とを切替える構成も採用される。
【0059】
(4)第1動作および第2動作の何れを実行中であるかを各空間R内の歌唱者U1や受聴者U2に報知する構成も好適である。例えば、第1動作の実行中には、空間RA内の歌唱者U1の音声または画像が優先的に空間RB内で再生されていることが空間RA内の表示装置144に表示され、第2動作の実行中には、空間RA内の背景音または各受聴者U2の画像が優先的に空間RB内で再生されていることが空間RA内の表示装置144に表示される。
【0060】
(5)前述の各形態では、音響信号S1や音響信号S2のエコーを除去するエコーキャンセラを音響取得部52に搭載した構成を例示したが、端末装置10Aと端末装置10Bとの間の伝送遅延が充分に小さい場合には、音響信号S1や音響信号S2にエコーは発生し難いから、エコーキャンセラを省略することが可能である。
【0061】
(6)第1実施形態から第3実施形態では、調整値GA1や調整値GA2を不連続に変更すると再生音に雑音が発生して音質が低下する可能性がある。そこで、調整値GA1や調整値GA2をクロスフェードさせる構成が好適である。例えば、第1動作から第2動作に変更する場合、所定長の期間内で調整値GA1を1から0に経時的に変化させるとともに調整値GA2を0から1に経時的に変化させる。また、第2動作から第1動作に変更する場合、所定長の期間内で調整値GA2を1から0に経時的に変化させるとともに調整値GA1を0から1に経時的に変化させる。以上の構成によれば、調整値GA1や調整値GA2の不連続な変化に起因した音質の低下が抑制されるという利点がある。
【0062】
(7)前述の各形態では、端末装置10をカラオケ装置として利用したカラオケシステムを例示したが、通信システム100の用途はカラオケに限定されない。例えば、空間RA内の利用者と空間RB内の利用者とが楽器の合奏(セッション)を実行する場合にも、以上の各形態と同様の通信システム100を利用できる。すなわち、前述の各形態のうちカラオケに特有の伴奏再生部42や歌詞再生部44は省略され得る。空間RA内の利用者と空間RB内の利用者とが合奏する場合には、例えば、各空間R内の利用者が入力装置24を操作して第1動作と第2動作とを切替える構成が採用される。また、各利用者による合奏の開始が検知された場合に第2動作を第1動作に切替えることも可能である。例えば、特定の楽器(例えば楽曲の冒頭に登場し易い打楽器音)の音量が閾値を上回った場合に合奏の開始と判定する構成や、特定のリズムや旋律の演奏音が発生した場合(例えば楽曲の冒頭における打楽器でのカウントが発生した場合)に合奏の開始と判定する構成が採用される。
【0063】
(8)第1実施形態から第3実施形態に例示した音響の制御と第4実施形態および第5実施形態に例示した画像の制御とは併合され得る。また、前述の各形態では、端末装置10Aと端末装置10Bとの通信に着目したが、相異なる空間Rに設置された3個以上の端末装置10が相互に通信する場合にも前述の各形態と同様の構成が採用される。例えば、端末装置10Aが生成した再生信号Y[A]および再生信号Z[A]は、端末装置10Aの通信相手となる2個以上の端末装置10に送信される。
【符号の説明】
【0064】
100……通信システム、200……通信網、10(10A,10B)……端末装置、12……収録装置、14……再生装置、20……演算処理装置、22……記憶装置、24……入力装置、26……信号処理回路、28……通信装置、32(32-1,32-2)……収音装置、34(34-1,34-2)……撮像装置、42……伴奏再生部、44……歌詞再生部、46……制御処理部、52……音響取得部、54……画像取得部、62,64……音響処理部、82,84……画像処理部、142……放音装置、144……表示装置。
図1
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図5
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図8