(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記特定部は、前記入力装置から入力された情報を、その情報源に基づいて分類し、分類毎の情報の数と分類毎に予め設定された信頼度とに基づいて、津波到達予測時刻及び津波予測波高を特定する請求項8に記載のエレベーター装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
添付の図面を参照して、本発明を詳細に説明する。各図において、同一又は相当する部分には、同一の符号を付している。重複する説明については、適宜簡略化或いは省略している。
【0010】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1におけるエレベーター装置を示す側面図である。
図1において、1はエレベーターの昇降路、2はエレベーターの乗場、3はエレベーターのかごである。
図1には、4階建てのビルにエレベーターが設置されている場合を一例として示している。昇降路1は、ビルの各階(1階から4階)を貫通するように形成される。乗場2は、ビルの各階に備えられる。各乗場2に、乗場ドア4が設けられる。乗場ドア4は、エレベーターの乗場出入口を開閉する。かご3は、昇降路1内を昇降する。かご3に、かごドア5が設けられる。かごドア5は、エレベーターのかご出入口を開閉する。
【0011】
6はビルに備えられた階段、7は屋上出口室である。最上階の階段6は、屋上出口室7に通じている。ビル内の人は、屋上出口室7からビルの屋上8に出ることができる。屋上出口室7から屋上8に出るための扉9には、電磁錠10が備えられる。扉9は、平常時、電磁錠10によって施錠される。電磁錠10は、例えば、後述の制御盤13からの解錠指令によって解錠される。
【0012】
11は屋上出口室7に設置されたキーボックスである。扉9に、電磁錠10ではなく機械式の錠装置が備えられている場合、錠装置を解錠するためのキーをキーボックス11に収納する。また、キーボックス11の扉に、電磁錠を設ける。電磁錠は、制御盤13からの解錠指令によって解錠される。
【0013】
ビルの屋上8に、エレベーターの機械室12が備えられる。機械室12は、昇降路1の上方に配置される。機械室12に、エレベーターの制御盤13、充電確認盤14が設けられる。機械室12の外壁面に、支え15が設けられる。
【0014】
制御盤13は、エレベーターの運行を制御する。例えば、制御盤13は、各種入力情報に基づいて、エレベーターの平常運転や管制運転を制御する。各種運転におけるかご3の走行制御や戸開閉制御は、制御盤13によって行われる。
【0015】
かご3は、制御ケーブル16によって制御盤13に接続される。制御ケーブル16は、例えば、電源線や伝送線からなる。他の機器は、配線17によって制御盤13に接続される。例えば、上記電磁錠10や充電確認盤14は、配線17によって制御盤13に接続される。
【0016】
エレベーター及びビルに、複数の冠水センサー18a乃至18dが備えられる。
以下においては、冠水センサーを個別に特定する必要がない場合、単に、冠水センサー18と表記する。
【0017】
冠水センサー18a及び18bは、かご3に設けられる。冠水センサー18aは、例えば、かご3の床面高さの冠水(浸水)を検出することができるように配置される。冠水センサー18bは、かご3において、冠水センサー18aよりも高い位置に配置される。冠水センサー18bは、冠水センサー18aが冠水を検出する位置よりも高い位置(所定高さ)での冠水(浸水)を検出する。冠水センサー18a及び18bは、制御ケーブル16によって制御盤13に接続される。
【0018】
冠水センサー18cは、昇降路1のピット部に設けられる。冠水センサー18cは、最下階の乗場2よりも低い位置での冠水(浸水)を検出することができるように配置される。冠水センサー18cは、例えば、ピット部の底面高さの冠水を検出する。
【0019】
冠水センサー18dは、ビルの各階床の乗場2に設けられる。冠水センサー18dは、例えば、乗場2の床面高さの冠水(浸水)を検出することができるように配置される。冠水センサー18dを個別に特定する必要がある場合、符号の後に階床数を示す数字を更に付す。例えば、1階の乗場2に設置された冠水センサーは、18d−1と表記する。N階の乗場2に設置された冠水センサーは、18d−Nと表記する。また、以下においては、他の機器についても、必要に応じて、符号の後に階床数を示す数字を付して個別に特定する。冠水センサー18c及び18dは、配線17によって制御盤13に接続される。
【0020】
19は気象庁、20はエレベーターの情報センターである。制御盤13は、公衆回線21を介して、気象庁19で発せられた津波警報(津波注意報)を受信する。制御盤13は、公衆回線21を介して情報センター20から津波に関する情報(以下、「通信情報」という)を受信する。津波警報、通信情報には、津波が到達すると予測される時刻(津波到達予測時刻)の情報と、予測される津波の高さ(津波予測波高)の情報とが含まれる。
【0021】
制御盤13は、津波による被害を最小限にするための管制運転(津波避難管制運転)を実施する機能を有する。
図2はこの発明の実施の形態1におけるエレベーター装置の制御盤の構成を示す図である。上記機能を実現するため、制御盤13は、記憶部22、演算部23、制御部24、情報取得部25を備える。
【0022】
情報取得部25は、外部から取得した情報に基づいて、記憶部22に、津波到達予測時刻と津波予測波高とを記憶させる。制御盤13が、気象庁19から津波警報、或いは、情報センター20から通信情報を受信した場合、情報取得部25は、受信した津波警報・通信情報に基づいて、記憶部22に、津波到達予測時刻と津波予測波高とを記憶させる。演算部23は、記憶部22に記憶された津波到達予測時刻及び津波予測波高に基づいて、所定の演算を行う。制御部24は、演算部23の演算結果や他の入力情報に基づいて、津波避難管制運転を適切に制御する。
【0023】
情報取得部25は、特定部25aを備える。特定部25aは、気象庁19や情報センター20から情報を受信できないエレベーターのために、情報取得部25に備えられたものである。特定部25aは、津波警報及び通信情報以外の情報に基づいて、津波到達予測時刻と津波予測波高とを特定する。
【0024】
表1は、準通信情報の一例を示している。準通信情報は、特定部25aが津波到達予測時刻及び津波予測波高を特定するために必要な情報である。
【0026】
表1に示す例では、津波避難管制運転を開始する際のトリガーとなり得る情報に対して、予め信頼度を設定している。例えば、気象庁19からの津波警報や情報センター20からの通信情報に対して、最も高い信頼度(例えば、10点)を付与する。制御盤13が気象庁19や情報センター20から情報を受信できない場合、この欄を考慮する必要はない。また、制御盤13が気象庁19や情報センター20から情報を受信できる場合、情報取得部25は、他の情報の有無に関わらず、受信した津波警報・通信情報に基づいて、記憶部22に、津波到達予測時刻と津波予測波高とを記憶させても良い。
【0027】
ビル内の避難者から得られる情報に対しては、津波警報や通信情報よりも低い信頼度が設定される。例えば、避難時の誘導責任者等、いわゆる避難指導者から得られる情報に対して、次に高い信頼度(例えば、5点)を付与する。一方、一般避難者から得られる情報に対して、低い信頼度を付与する。例えば、一般避難者から得られる情報のうち、情報源がTVやラジオ等、公共性が高いものに対し、信頼度として1点を付与する。一般避難者から得られる情報のうち、情報源が他の避難者等、公共性が低いものに対し、信頼度として0.5点を付与する。
【0028】
特定部25aによる上記機能を実現するため、乗場2やかご3等に、ビル内の避難者が、津波に関する所定の情報を入力するための装置(入力装置:
図1及び
図2では図示せず)が設けられる。入力装置の詳細については、後述する。特定部25aは、入力装置から入力された情報に基づいて、津波到達予測時刻及び津波予測波高を特定する。
【0029】
図3はこの発明の実施の形態1におけるエレベーター装置の1階の乗場を示す正面図である。他階の乗場2も、
図3に示す構成と同様の構成を有している。
1階の乗場2には、乗場出入口に隣接する壁面に、乗場操作盤26、表示器27、判別機28が設けられる。
【0030】
乗場操作盤26は、乗場2において利用者が操作するためのものである。乗場操作盤26は、例えば、乗場呼びを登録するためのUP釦やDOWN釦、呼びの登録方向を示すUP灯やDOWN灯を備える。
表示器27は、乗場2にいる利用者に情報を提供するためのものである。表示器27は、文字や図柄等を表示する。
【0031】
判別機28は、種々の判別を行うために使用される装置である。判別機28は、利用者の顔を撮影するためのカメラ、利用者の声を聞くためのマイク、メッセージを流すためのスピーカー等を備える。判別機28が取得した画像情報や音声情報は、制御盤13に送信される。判別機28を、上記入力装置として利用しても良い。
【0032】
例えば、特定部25aは、判別機28から入力された情報を、その情報源に基づいて分類する。特定部25aは、分類毎の情報の数と分類毎の信頼度とに基づいて、津波到達予測時刻及び津波予測波高を特定する。
【0033】
例えば、特定部25aは、情報の数と信頼度とを分類毎に掛け合わせて、得られた点数を記憶部22に記憶させる。表1に示す例であれば、避難指導者から12回の音声データ入力があれば、分類I2の点数は、12×5=60となる。同様に、分類I3の情報数が50であれば分類I3の点数は50、分類I4の情報数が80であれば、分類I4の点数は40となる。特定部25aは、点数の最も高い分類の情報を、津波到達予測時刻及び津波予測波高を特定するための情報として採用する。
【0034】
次に、津波到達予測時刻に基づく津波避難管制運転の基本動作について、説明する。
演算部23は、記憶部22に記憶された津波到達予測時刻に基づいて、津波避難管制運転に関する基本時刻を計算する。演算部23によって計算された基本時刻は、記憶部22に記憶される。
表2は、演算部23が設定する基本時刻の一例を示している。
【0036】
表2は、演算部23が4種類の基本時刻(時刻の早い順に、時刻t1、時刻t2、時刻t3、時刻t4)を設定する場合を示している。
時刻t1は、津波警報や津波注意報が発令された時刻である。時刻t1は、記憶部22に記憶された情報に基づいて設定される。時刻t4は、記憶部22に記憶された津波到達予測時刻である。
【0037】
時刻t3は、エレベーターの使用リミット時刻である。津波避難管制運転時、エレベーターの使用は、時刻t3までに制限される。時刻t3になると、その後のエレベーターの使用は許可されない。即ち、制御部24は、時刻t3になると、エレベーターを強制的に休止させる。時刻t3は、例えば、時刻t4よりも所定時間前の時刻に設定される。
【0038】
時刻t2は、避難優先者の避難開始リミット時刻である。避難優先者は、避難時にエレベーターを優先して使用できる人のことである。車椅子利用者等が、避難優先者に該当する。時刻t2は、例えば、時刻t3よりも所定時間前の時刻に設定される。例えば、記憶部22に、ビル内の避難優先者に関する所定の情報が記憶される。演算部23は、記憶部22に記憶された情報に基づいて、ビル内の避難優先者全員がエレベーターを利用して避難するために必要な避難時間を演算する。例えば、(避難優先者数)×(避難に要する時間)を避難時間とする。演算部23は、時刻t3より上記避難時間(或いは、上記避難時間に所定の余裕時間を足した時間)前の時刻を、時刻t2に設定する。
【0039】
時刻t1の直後は、津波到着予測時刻(時刻t4)まで少し余裕がある。制御部24は、時刻t1から時刻t2までの間、ビル内の避難優先者を優先的に上方階に避難させる運転(優先運転)を行う。即ち、現在の時刻が時刻t1になると(或いは、現在の時刻が時刻t1を過ぎていれば)、制御部24は、優先運転を制御する。優先運転では、エレベーターを使用した避難は、避難優先者が優先される。優先運転では、一般避難者(避難優先者以外の避難者)がエレベーターを使用して避難することも許可される。
【0040】
時刻t2は、ビル内の避難優先者全員がエレベーター休止までに避難できる最終時刻である。現在の時刻が時刻t2になると、優先運転が終了され、専用運転が開始される。制御部24は、時刻t2から時刻t3までの間、ビル内の避難優先者を上方階に避難させる専用運転を制御する。専用運転は、避難優先者のための運転である。専用運転では、エレベーターを使用した避難は、避難優先者に制限される。一般避難者がエレベーターを使用して避難することは、許可されない。一般避難者は、階段6を利用して避難することになる。
【0041】
現在の時刻が時刻t3になると、専用運転が終了され、エレベーターが休止される。これにより、例えば、津波到達予測時刻の数分前にはエレベーターが休止状態となる。エレベーターの休止は、時刻t3から時刻t4までの間、継続される。
以上が、時刻t1を起点とした津波避難管制運転の基本動作である。
【0042】
次に、津波予測波高に基づく津波避難管制運転の基本動作について説明する。
制御部24は、記憶部22に記憶された津波予測波高に基づいて、津波避難管制運転において行う動作を決定する。例えば、制御部24は、津波予測波高に基づいて、優先運転や専用運転の実施の有無を決定する。更に、制御部24は、津波予測波高に基づいて、必要な避難動作を制御する。
表3は、津波避難管制運転において行われる動作の一例を示している。
【0044】
表3は、4種類の基本高さ(波高の低い順に、高さh0、h1、h2、h3)に応じて、津波避難管制運転における動作を変更する場合を示している。
【0045】
津波予測波高が、例えば、1階の(乗場2の)床面以下(高さh0)の場合、制御部24は、津波による危険はほぼ無いものと判断する。かかる場合、制御部24は、時刻t1が経過した後も時刻t3になるまで、平常運転を継続する。即ち、優先運転及び専用運転は、実施されない。時刻t3になると、制御部24は、平常運転を終了し、エレベーターを休止させる。エレベーターを休止状態で待機させる時間(時刻t3から時刻t4までの時間)は、所定の短い時間に設定される。
【0046】
津波予測波高が、例えば、1階の床面より高く(高さh0以上)、1階の床上15cm以下(高さh1)の場合、制御部24は、時刻t1になると、優先運転を開始する。制御部24は、時刻t2になると、優先運転を終了して、専用運転を開始する。制御部24は、時刻t3になると、エレベーターを休止させる。エレベーターの休止待機時間は、所定の短い時間に設定される。
【0047】
津波予測波高が、例えば、1階の床上15cmより高く(高さh1以上)、(最上−1)階の床面以下(高さh3以下)の場合、制御部24は、時刻t1になっても優先運転を行わない。制御部24は、時刻t2になると、専用運転を開始する。制御部24は、時刻t3になると、エレベーターを休止させる。エレベーターの休止待機時間は、所定の長い時間に設定される。
【0048】
更に、津波予測波高が、(最上−2)階の床面(高さh2)に達する場合、制御部24は、エレベーターを休止させた後、エレベーターの電源を遮断する。津波予測波高が、(最上−1)階の床面(高さh3)に達する場合、制御部24は、電磁錠10を解錠して、屋上8への避難路を確保する。
以上が、基本高さに対応した津波避難管制運転の基本動作である。
【0049】
記憶部22に記憶される津波到達予測時刻及び津波予測波高は、あくまで予測値である。実際の津波は、津波到達予測時刻よりも早くビルに到達することがある。専用運転時に津波がビルに到達した場合は、冠水に起因する種々の障害が発生し得る。本エレベーター装置は、上記障害を回避するための手段として、機器の電気的な接続を遮断する機能(遮断機能)を備える。
【0050】
実際の津波の波高は、津波予測波高よりも高いことがある。例えば、津波の波高が、ビルよりも高い場合もあり得る。本エレベーター装置は、津波の波高がビルより高い時に避難者を支援するための機能(避難支援機能)も備える。
以下に、
図4乃至
図11も参照し、上記遮断機能、避難支援機能を実現するための構成について具体的に説明する。
【0051】
図4はこの発明の実施の形態1におけるエレベーター装置の要部を示す側面図である。
図4は、機械室12とビルの1階とを側方から見た状態を示している。
【0052】
29は1階の乗場ドア4に対応して設けられたドアスイッチである。ドアスイッチ29は、乗場ドア4が完全に閉まっていることを検出するためのスイッチである。ドアスイッチ29は、冠水センサー18d−1、乗場操作盤26、表示器27、判別機28と同様に、配線17によって制御盤13に接続される。
他階の乗場2においても、同様に、冠水センサー18d、乗場操作盤26、表示器27、判別機28、ドアスイッチ29は、配線17によって制御盤13に接続される。
【0053】
図5及び
図6はこの発明の実施の形態1におけるエレベーター装置の乗場機器に関する回路構成を示す図である。
図5及び
図6において、符号+、−は、制御盤13内に形成されるエレベーターの制御電源線を示す。
図5及び
図6では、制御盤13の内部の回路を実線で、制御盤13の外部の回路を破線で示している。
【0054】
30は冠水センサー18dの接点である。接点30は、B接点である。1階の冠水センサー18d−1の接点30−1は、冠水センサー18d−1が冠水を検出すると不通になる。31はB接点からなる切離接点である。1階の切離接点31−1は、1階の乗場2の配線17を事前に切離す時に不通になる。Sは消勢時時限付リレー(以下、単に「時限リレーS」という)、SAは時限リレーSの接点(A接点)である。SNは消勢時時限無リレー(以下、単に「リレーSN」という)、SNBはリレーSNの接点(B接点)である。
【0055】
乗場機器回路32は、対応の乗場2(及び、その周辺部)に設置された機器(乗場機器)のための回路である。冠水センサー18dや乗場操作盤26、表示器27、判別機28、ドアスイッチ29は、乗場機器回路32(及び、配線17)を介して制御盤13に接続される。乗場機器回路32は、接点SAを介して電源線+に接続される。乗場機器回路32は、他の接点SAを介して電源線−に接続される。
【0056】
平常時、接点30−1及び切離接点31−1は閉じており、時限リレーS−1は付勢される。時限リレーS−1が付勢されていれば、接点SA−1は閉じている。電源線+及び−間には、所定の電圧が供給され、1階の乗場機器は、制御盤13に電気的に接続される。
【0057】
接点30−1又は切離接点31−1が不通になると、時限リレーS−1及びリレーSN−1が消勢される。これにより、電源線+に接続された接点SA−1と、電源線−に接続された接点SA−1とが不通になる。乗場機器回路32−1に対して電力が供給されなくなり、1階の乗場機器は、制御盤13から電気的に切断される。
【0058】
例えば、1階の冠水センサー18d−1が冠水を検出すると、1階の乗場機器が制御盤13から電気的に切り離される。なお、1階の乗場2における切離手段は、接点30−1、時限リレーS−1、接点SA−1によって構成される。この時、2階の冠水センサー18d−2が冠水を検出していなければ、2階の乗場機器は、制御盤13に対して電気的に接続されたままである。その後、水面が上昇して2階の冠水センサー18d−2が冠水を検出すると、2階の乗場機器が制御盤13から電気的に切り離される。この時、3階の冠水センサー18d−3が冠水を検出していなければ、3階の乗場機器は、制御盤13に対して電気的に接続されたままである。
【0059】
このように、冠水の状況に応じて、下方に設置されている乗場機器から順番に、電気的な切り離しを行うことができる。なお、N階の乗場2における切離手段は、接点30−N、時限リレーS−N、接点SA−Nによって構成される。
【0060】
図6に示すDSは、ドアスイッチ29の接点である。制御盤13内の時限リレーSは、1階の乗場機器を有効にする時に付勢される。1階のドアスイッチ29−1の接点DS−1は、接点SA−1の間に接続される。この直列に接続された接点SA−1、接点DS−1、接点SA−1は、リレーSN−1の接点SNB−1に並列に接続される。同様に、2階のドアスイッチ29−2の接点DS−2は、接点SA−2の間に接続される。この直列に接続された接点SA−2、接点DS−2、接点SA−2は、リレーSN−2の接点SNB−2に並列に接続される。また、直列に接続された接点SA−2、接点DS−2、接点SA−2は、接点SA−1、接点DS−1、接点SA−1に対して直列に接続される。即ち、各階のドアスイッチ29の接点DSは、直列に接続される。
【0061】
DSLは、全てのドアスイッチ29の接点DSが閉じている(通じている)時に付勢されるリレーである。即ち、平常時、リレーDSLは、全ての乗場ドア4が完全に閉じていれば付勢される。
【0062】
例えば、1階の冠水センサー18d−1によって冠水が検出された場合を考える。
冠水センサー18d−1が冠水を検出すると、接点30−1が不通になる。接点30−1が不通になると、時限リレーS−1の接点SA−1は、通状態を一定時間維持した後、不通になる。また、接点30−1が不通になると、リレーSN−1の接点SNBは、瞬時に閉じて通状態になる。このため、冠水の恐れがある1階のドアスイッチ29の接点DS−1を切り離した上で、リレーDSLを通状態に保持することができる。リレーDSLを使用している他の回路が、冠水の影響を受けることはない。即ち、制御盤13内の回路が、冠水した階の影響(感電、漏電、短絡等)を受ける恐れはない。
【0063】
次に、かご3に設置された機器(かご機器)に対する電気遮断機能について説明する。
図7はこの発明の実施の形態1におけるエレベーター装置のかご示す正面図である。かご3は、前述の冠水センサー18a及び18bの他にも、種々のかご機器を備える。例えば、かご3は、かご操作盤33、秤装置34、光電装置35、多軸ビーム装置36、かご下照明37、SDEスイッチ38を備える。
【0064】
かご操作盤33は、かご3内の利用者が操作するためのものである。かご操作盤33は、例えば、かごドア5を開閉するための開釦及び閉釦、各行先階に対応した行先階釦、表示器の他に、インターホン39を備える。
秤装置34は、かご3の積載荷重を検出する。かご3への乗り過ぎの検知は、秤装置34が検出した荷重に基づいて行われる。
【0065】
光電装置35及び多軸ビーム装置36は、利用者がかご3に出入りする際に、かごドア5(及び、乗場ドア4)を開状態で保持するためのものである。
かご下照明37は、かご3の下部を照らすためのものである。かご下照明37は、エレベーターの保守時等に使用される。
【0066】
SDEスイッチ38は、利用者がかごドア5に衝突することを防止するためのものである。安全棒40は、かごドア5の戸当り端部から突出するように、リンク41を介してかごドア5に設けられる。安全棒40がかごドア5に対して戸閉方向に移動すると、リンク41がSDEスイッチ38を動作させる。SDEスイッチ38が動作すると、かごドア5が反転して戸開動作を行う。
【0067】
かご3の上部に、かご上ボックス42が設けられる。制御ケーブル16は、かご3の側方を通過し、端部がかご上ボックス42に接続される。かご上ボックス42と各かご機器との間に、配線43が接続される。即ち、冠水センサー18a及び18b、かご操作盤33、秤装置34、光電装置35、多軸ビーム装置36、かご下照明37、SDEスイッチ38は、配線43、かご上ボックス42、制御ケーブル16を介して制御盤13に接続される。
【0068】
かご3に設置された機器に対しては、
図5及び
図6を用いて説明した方法と同様の方法により、所定のかご機器を制御盤13から電気的に遮断する。例えば、冠水センサー18aによって冠水が検出されると、冠水センサー18aの接点(図示せず)を不通にして、所定のかご機器を、制御盤13から電気的に切り離す。上記冠水センサー18aの接点は、かご3における切離手段の一部を構成する。
【0069】
かご機器のうち、かご操作盤33は、津波避難管制運転を実施する上で必要な装置である。消防運転を行う非常用エレベーターでは、かご操作盤33に防水対策が施されている。このため、かご操作盤33は、少し水が掛かった程度では故障することはない。しかし、このようなかご操作盤33であっても、水没に耐えることはできない。冠水センサー18bは、かご操作盤33より下方であって、かご操作盤33の下端部近傍に設置される。冠水センサー18bは、かご操作盤33が冠水する前に、かご操作盤33より下方位置での冠水を検出することができるように配置される。
【0070】
かご機器のうち、SDEスイッチ38は、津波避難管制運転を実施する際に安全上必要な装置である。SDEスイッチ38は、冠水センサー18bよりも上方、例えば、かご3の上部に配置される。
【0071】
なお、上記高さh1は、津波避難管制運転においてかご3を正常に動作させるための水面の限界高さである。上述したように、かご3の床面が冠水すると、かご操作盤33及びSDEスイッチ38以外のかご機器は、制御盤13との電気的接続が遮断される。このため、かご3の床面が冠水しても、かご3は正常に動作する。水面がかご操作盤33の下端(例えば、かご3の床面から50cm程度の高さ)より低ければ、かご操作盤33からの指令によってかご3を動作させることができる。また、かご3の床面から20cm程度の冠水であれば、戸開閉動作を正常に行うことができる。本実施の形態では、安全を考慮し、1階の床上15cm以下を高さh1に設定している。
【0072】
優先運転や専用運転時に冠水センサー18bによって冠水が検出されると、制御部24は、例えば、冠水センサー18bによって冠水が検出されなくなるように、かご3を上方に移動させる。このような動作を行うことにより、津波避難管制運転の一連の動作が完了するまで、かご操作盤33とSDEスイッチ38との双方を活かしておくことができる。
【0073】
次に、エレベーターの電源を遮断する機能について説明する。
図8はこの発明の実施の形態1におけるエレベーター装置の要部を示す側面図である。
図8は機械室12とビルの最上階より1階下の階(以下においては、本実施の形態に合わせて3階という)とを側方から見た状態を示している。
【0074】
制御盤13は、盤正面に、ブレーカーレバー44を備える。例えば、ブレーカーレバー44が下方に移動されると、エレベーター(制御盤13)の電源が遮断される。電源遮断手段45は、制御盤13より下方の所定高さまで冠水した際に、エレベーターの電源を強制的に遮断するためのものである。例えば、電源遮断手段45は、ビルの3階まで冠水すると、ブレーカーレバー44を落として電源を遮断する。
【0075】
電源遮断手段45は、例えば、滑車46a乃至46f、歯車47、おもり48、ワイヤ49a及び49b、爪部50、ロック装置51、フロートケース52、フロート53を備える。
【0076】
滑車46a乃至46fは、回転軸が水平に設けられる。
滑車46a、滑車46b、滑車46cは、制御盤13の盤側面に回転自在に設けられる。滑車46aは盤前面側に、滑車46bは盤背面側に配置される。滑車46a及び滑車46bは、ほぼ同じ高さに配置される。滑車46cは、滑車46bの上方に配置される。歯車47は、滑車46bに一体的に設けられる。即ち、歯車47は、滑車46bと共に回転し、停止する。
【0077】
おもり48は、ワイヤ49aの一端部に設けられる。ワイヤ49aは、一端部側から、滑車46b、滑車46aに巻き掛けられる。ワイヤ49aの他端部に、爪部50が設けられる。爪部50は、ブレーカーレバー44を下方に移動させるためのものである。ワイヤ49aが所定位置よりも一端部側に移動すると、爪部50が、ブレーカーレバー44を引き下げる。
【0078】
ロック装置51は、滑車46bの回転を阻止するための装置である。ロック装置51が歯車47に上方から接触して歯車47に噛み合うと、歯車47の回転、即ち、滑車46bの回転が阻止される。平常時、ロック装置51は、歯車47に噛み合う。このため、ワイヤ49aは上記所定位置に保持され、爪部50がブレーカーレバー44を引き下げることはない。
【0079】
滑車46dは、機械室12の固定体に回転自在に設けられる。滑車46d及び滑車46cは、ほぼ同じ高さに配置される。滑車46e及び46fは、昇降路1の固定体に回転自在に設けられる。滑車46e及び46fは、3階の乗場2の床面よりも下方に配置される。滑車46eは、滑車46dの直下部に配置される。滑車46e及び46fは、ほぼ同じ高さに配置される。
【0080】
フロートケース52は、滑車46fの上方に設けられる。フロートケース52の内部に、フロート53が配置される。ワイヤ49bは、一端部がロック装置51に接続される。ワイヤ49bは、一端部側から、滑車46c、滑車46d、滑車46e、滑車46fに順次巻き掛けられる。ワイヤ49bの他端部は、フロート53に接続される。
【0081】
大きな津波がビルに到達した際に、かご3が最上階に避難することを考慮し、電源遮断手段45は、ビルが3階まで冠水すると、ブレーカーレバー44を落として電源を遮断する。即ち、水が昇降路1に進入して水面が3階付近に達すると、フロート53が浮き、フロート53がワイヤ49bを他端部側に引っ張る。水面が3階の乗場2の床面に達し、3階の乗場2が冠水すると、ワイヤ49bがロック装置51を持ち上げ、ロック装置51が歯車47から外れる。これにより、おもり48による負荷がワイヤ49aに作用し、爪部50がブレーカーレバー44を引き下げる。
【0082】
ロック装置51は、ワイヤ49bによって噛み合いの解除が行われるとともに、制御盤13からの電気信号によっても解除が行われる。
【0083】
次に、避難支援機能について説明する。
図9はこの発明の実施の形態1におけるエレベーター装置が備えられたビルの屋上を示す図である。ビルの屋上8には、機械室12を形成する壁体54が設けられる。支え15は、壁体54に固定される。
【0084】
55は壁体54に設けられた避難具ボックス、56は避難具ボックス55の扉を施錠するための電磁錠である。避難具ボックス55の扉は、通常時、電磁錠56によって施錠される。電磁錠56は、例えば、制御盤13からの解錠指令によって解錠される。これにより、避難具ボックス55の扉を開けることができる。
【0085】
図10は避難具ボックスの内部を示す図である。
図11は避難具ボックスの収納物を示す図である。
避難具ボックス55の内部は、棚57で区切られ、多数の救命着58が収納される。救命着58は、それぞれのポケットに、GPS機能及び防水機能が備えられた携帯電話59が入れられている。携帯電話59には、制御盤13からAC100Vの電源が常に供給される。このため、避難具ボックス55に収納されていれば、携帯電話59は、基本的に満充電状態である。携帯電話59の充電状態を示す信号は、充電確認盤14に送信される。充電確認盤14は、受信情報に基づいて、各携帯電話59の充電状態を表示する。エレベーターの保守員は、充電確認盤14の表示を見て、各携帯電話59の充電状態を確認することができる。
【0086】
図11は、救命着58を棚57から出して、広げた状態を示している。60は救命着58を着た時に、緩みがないように締めて固定するためのベルトである。ベルト60に、リール61が設けられる。リール61に、ワイヤ62が巻き付けられる。ワイヤ62を先端側に引っ張れば、ワイヤ62をリール61から繰り出すことができる。ワイヤ62は、先端に、フック63が設けられる。フック63は、リール64の一部に掛けられ、リール64に接続される。リール64に、ワイヤ65が巻き付けられる。ワイヤ65を先端側に引っ張れば、ワイヤ65をリール64から繰り出すことができる。ワイヤ65は、先端に、フック66が設けられる。このように、ベルト60に、2段重ねのリール付きフックが接続される。
【0087】
次に、
図12乃至
図28も参照し、上記構成を有するエレベーター装置の動作及び機能について、具体的に説明する。
図12はこの発明の実施の形態1におけるエレベーター装置の動作を示すフローチャートである。
【0088】
制御盤13は、津波警報、津波注意報、通信情報の何れかを受信したか否かを判定する(S101)。制御盤13が、例えば、津波警報を受信すると、記憶部22に、津波到達予測時刻と津波予測波高とが記憶される(S102のYes)。
【0089】
気象庁19や情報センター20から情報を受信できないエレベーター装置では、例えば、制御盤13は、乗場2に設置された判別機28を利用して、準通信情報を取得する。
図13はこの発明の実施の形態1におけるエレベーター装置の動作を説明するための図である。
図13は、避難者が判別機28のマイクに向かって津波が来る旨を発声している様子を示している。
【0090】
判別機28のマイクが取得した音声情報は、制御盤13に送信される。特定部25aは、判別機28から入力された音声情報に基づいて、津波がビルに到達する恐れがあることを検出する。かかる場合、制御盤13は、各乗場2の表示器27に、準通信情報を取得するための情報を表示する。
図14乃至
図16は準通信情報を取得するための動作を説明するための図である。
図14乃至
図16は、乗場2に設置された表示器27と判別機28とを示している。
【0091】
図14は、情報源に関する情報を取得するための表示器27の表示例である。
図15は、津波到達予測時刻に関する情報を取得するための表示器27の表示例である。
図16は、津波予測波高に関する情報を取得するための表示器27の表示例である。表示器27の表示を見た避難者は、判別機28のマイクから、情報源、津波の到達時刻、津波の波高等に関する情報を入力する。特定部25aは、判別機28から入力された音声情報に基づいて、津波到達予測時刻と津波予測波高とを特定し、その特定した内容を記憶部22に記憶させる(S102のYes)。
【0092】
図17はエレベーター乗場の他の構成例を示す図である。
図17に示すように、乗場2にテンキー67(テンキー付表示器27)を設置し、避難者に、情報源や津波の到達時刻、津波の波高等に関する情報を、テンキー67から入力してもらっても良い。
【0093】
記憶部22に津波到達予測時刻及び津波予測波高が記憶されると、演算部23は、記憶部22の記憶内容に基づいて、時刻t2、時刻t3を計算する。また、演算部23は、記憶部22の記憶内容に基づいて、津波が到達した時に水没してしまう階(水没階)を演算する。演算部23によって計算された時刻t2、時刻t3、水没階に関する情報は、各乗場2の表示器27に表示される(S103)。
【0094】
図18及び
図19は避難者に提供する情報を説明するための図である。
図18及び
図19は、S103において各乗場2の表示器27に表示される内容の例を示している。
【0095】
演算部23による演算を行った結果、ビルの全階が水没しないと判定された場合(例えば、津波予測波高が高さh0の場合)(S104)、制御部24は、時刻t3になるまで、平常運転を継続する(S105)。
【0096】
ビルの一部が水没すると判定された場合(例えば、津波予測波高が高さh1乃至h3の場合)(S106)、制御部24は、状況に応じて優先運転及び専用運転を行う(S107)。
例えば、津波予測波高が高さh1の時、制御部24は、時刻t1になると、優先運転を開始する。優先運転では、水没階よりも上の階に避難者を避難させる。津波予測波高が高さh1以上h3以下の時、制御部24は、時刻t2になると、専用運転を開始する。専用運転では、水没階よりも上の階に避難者を避難させる。
図20は避難者に提供する情報を説明するための図である。
図20は、専用運転が行われている時に、各乗場2の表示器27に表示される内容の例を示している。
【0097】
ビルの全部が水没すると判定された場合(例えば、津波予測波高が高さh3以上の場合)(S108)、制御部24は、優先運転を実施しない。制御部24は、時刻t2になると、専用運転を開始する。専用運転では、最上階に避難者を避難させる。また、制御部24は、屋上出口室7に設けられた扉9の電磁錠10を解錠する。これにより、避難者は、屋上出口室7から屋上8に避難することができるようになる。更に、制御部24は、屋上8に設けられた避難具ボックス55の扉の電磁錠56を解錠する(S109)。
【0098】
時刻t3になると(S110のYes)、津波の到達に備え、制御部24は、エレベーターを全休止させる(S111)。時刻t3が経過した後、かご3は、走行及び戸開閉を行わず、ビルの最上階で待機する。水没階の乗場機器は、制御盤13に対する電気的な接続が遮断される。
【0099】
津波がビルに到達した際に、演算部23によって演算された水没階よりも上方の階が水没した場合、上述したように、乗場2の冠水センサー18dが冠水を検出することにより、その乗場2の乗場機器は、制御盤13から電気的に切り離される。津波がビルに到達した際に、ビルの最上階より1階下の階が水没した場合、電源遮断手段45により、エレベーター(制御盤13)の電源が遮断される。
【0100】
図21はこの発明の実施の形態1におけるエレベーター装置の動作を示すフローチャートである。
図21は、優先運転時の動作を示している。
【0101】
優先運転時、制御部24は、避難優先者がいるか否か、即ち、避難優先者がエレベーターを利用して避難しようとしているか否かを判定する(S201)。避難優先者は、個人を特定するための情報(個人情報)を記憶部22に予め登録している。避難優先者は、エレベーターを利用して避難する場合、乗場2において個人情報を入力する。例えば、避難優先者は、判別機28から顔画像や指紋情報を入力する。或いは、避難優先者は、テンキー付表示器27からパスワードを入力する。
【0102】
避難優先者が乗場2で入力した個人情報は、制御盤13に送信される。制御部24は、入力された個人情報と予め登録されている個人情報とを比較し、既登録情報の中に入力された個人情報が存在すれば、避難優先者がいる旨を判定する(S201のYes)。
【0103】
制御部24は、避難優先者の存在を確認すると、表示器27に所定の表示を行い、「避難優先者がかご3に乗り、一般の避難者は、階段6を使用して避難する」旨を報知する(S202)。更に、制御部24は、避難優先者の存在を確認すると、戸開閉速度を落とす等して、車椅子利用モードで運転を行う(S203)。
なお、専用運転時であれば、表示器27に「一般の避難者は、かご3に乗ることはできない」旨の情報が表示される。
【0104】
次に、
図22も参照し、時刻t2以降の詳細な動作について説明する。
図22はこの発明の実施の形態1におけるエレベーター装置の動作を示すフローチャートである。
【0105】
時刻t2になると、エレベーターによる避難を避難優先者に制限した専用運転が行われる。専用運転は、例えば、避難指導者を運転手とした運転手付き運転である。運転手がいれば、万一、専用運転中に津波がビルに到達した場合であっても、その緊急事態に適切に対応し、避難優先者を助けることができる。
【0106】
時刻t2以降、制御部24では、かご3が1階の乗場2に停止すると、かごドア5(及び、乗場ドア4)を開放した後の経過時間(戸開時間)を記憶部22に記憶する(S301)。また、制御部24では、津波到達予測時刻より前に、津波がビルに到達したか否かを判定する(S302)。
【0107】
津波の到達予測が外れ、津波到達予測時刻より前に津波がビルに到達すると(S302のYes)、制御部24は、その時の状況に合わせてエレベーターの運転を適切に制御する。
【0108】
専用運転中に津波がビルに到達したことが検出されると、制御部24は、先ず、エレベーターのかご3が走行中であるか否かを判定する(S303)。かご3が停止中であれば(S303のNo)、制御部24は、次に、かご3が1階(最下階)に停止しているか否かを判定する(S304)。
【0109】
かご3が1階以外の階で停止中の場合(S304のNo)は、かご3に備えられた機器は、冠水していない。かかる場合、制御部24は、かご3を所定の避難階(例えば、水没階以上の所定の階、最上階等)に走行させる。制御部24は、避難階にかご3を停止させると、戸開(閉)動作後、エレベーターを休止させる(S305)。
【0110】
かご3が1階で停止中の場合(S304のYes)は、避難者をかご3に乗せようとしている状態である。かご3が1階に停止している時に津波がビルに到達すると、かご3の冠水センサー18aが冠水をいち早く検出する。冠水センサー18aが冠水を検出すると、所定のかご機器(例えば、かご3の下部に設置されている機器(かご操作盤33、SDEスイッチ38以外のかご機器))が、制御盤13から電気的に遮断される。また、1階の乗場2の冠水センサー18d−1が冠水を検出すると、1階の乗場機器が制御盤13から電気的に遮断される。
【0111】
かご3が1階で停止している場合、制御部24は、次に、波高が高さh1で、且つ、かごドア5を開放してから3秒以上経過しているか否かを判定する(S306)。制御部24は、例えば、かご3の冠水センサー18aが冠水を検出し、冠水センサー18bが冠水を検出していなければ、波高が高さh1であることを判定する。制御部24は、記憶部22の記憶内容に基づいて、1階での戸開時間を判定する。
【0112】
波高が高さh1で、且つ、かごドア5の開放時間が3秒以上である場合(S306のYes)、制御部24は、かご操作盤33が水没しておらず、避難優先者のかご3への乗り込みが完了していると判断する。かかる場合、制御部24は、かごドア5を閉じて、かご3を避難階に直行させる。制御部24は、避難階にかご3を停止させると、戸開(閉)動作後、エレベーターを休止させる(S307)。制御部24は、エレベーターを休止させる際に、ロック装置51に電気信号を送信する。これにより、ロック装置51が歯車47から外れ、電源遮断手段45の機能により、エレベーター(制御盤13)の電源が遮断される。
【0113】
専用運転では、運転手がかご3内にいる。避難優先者がかご3に乗り込んでいる時にかごドア5が閉じられても、運転手が、避難優先者の手助けを行うことができる。
運転手に対して1階でのかごドア5の開放時間が3秒を経過したことを報知するため、上記3秒が経過すると、かご操作盤33の閉釦を点滅(点灯→点滅)させても良い。
【0114】
かご3の下部が冠水した状態からかご3を走行(上昇)させると、途中の乗場2に備えられた機器が、かご3から落ちる水によって濡れてしまう恐れがある。このため、S307においてかご3を避難階に直行させる時、避難階よりも下方の階床の乗場機器を、制御盤13から電気的に切り離しても良い。
【0115】
S306において、波高が高さh1より大きい場合、或いは、かごドア5の開放時間が3秒より短い場合(S306のNo)、制御部24は、避難優先者をかご3内に乗り込ませてから避難階に走行する余裕はないと判断する。即ち、かご3を出発させる前にかご操作盤33が水没する可能性が高い。かかる場合、制御部24は、かご3を1階に停止させたままで、エレベーターを即休止させる(S308)。制御部24は、エレベーターを休止させる際に、ロック装置51に電気信号を送信する。これにより、ロック装置51が歯車47から外れ、電源遮断手段45の機能により、エレベーター(制御盤13)の電源が遮断される。避難優先者及び運転手は、階段6を使用して避難することになる。
【0116】
S303においてかご3が走行中の場合、制御部24は、次に、かご3が上昇中(かご3の走行方向が上向き)か否かを判定する(S309)。
【0117】
かご3の走行方向が上向きの場合(S309のYes)は、かご3が避難階に向けて走行している時である。かかる場合、制御部24は、短時間でかご3を避難階に到着させるため、そのまま走行を継続させる。制御部24は、避難階にかご3を停止させると、戸開(閉)動作後、エレベーターを休止させる(S305)。
【0118】
かご3の走行方向が下向きの場合(S309のNo)、かご3を避難階に停止させるためには、かご3を一旦停止させた後、走行方向を反転させて、かご3を再び走行させなければならない。上記動作中に、かご操作盤33が水没する可能性がある。このため、かご3の走行方向が下向きの場合(S309のNo)、制御部24は、かご3を最寄り階に停止させて戸開(閉)動作を行い、その後、エレベーターを休止させる(S310)。
【0119】
次に、
図23乃至
図26も参照し、屋上8に避難した後の避難者の動作について具体的に説明する。
図23乃至
図26は屋上に避難した後の避難者の動作を説明するための図である。
【0120】
図12のS109に示す処理が行われると、避難者は、屋上8に出ることができる。屋上8に出た避難者は、先ず、避難具ボックス55から救命着58を取り出し、身に付ける。次に、避難者は、フック66を支え15に掛け、救命着58を支え15に接続する(
図23参照)。
【0121】
実際の津波の波高がビルよりも高い場合、避難者は、救命着58の浮力によって浮き、水面を漂うことになる。避難者がビルの屋上8から離れると、リール64からワイヤ65が繰り出される。フック66が支え15に掛けられているため、避難者は、ビルに繋ぎ止められた状態になる(
図24参照)
【0122】
大きな浮遊物が避難者に当たるような場合、避難者は、フック63をリール64から外す。かかる場合、避難者は、一時的に津波に流されることになる(
図25参照)。津波に流された後、他のビルにたどり着いた場合、避難者は、フック63をそのビルの柵等に掛けて、自分をビルに固定する(
図26参照)。救命着58のポケットに、携帯電話59が入っている。携帯電話59は、位置情報を発信し続ける。また、避難者は、携帯電話59を使用して、会話を行うことができる。このため、避難者が行方不明になることを防止できる。
【0123】
次に、
図27も参照し、津波警報が解除された後の動作について具体的に説明する。
図27はこの発明の実施の形態1におけるエレベーター装置の動作を示すフローチャートである。
【0124】
制御部24は、時刻t3でエレベーターを休止させた後、津波警報が解除されたか否かを判定する(S401)。津波警報が解除された旨の情報を、例えば、気象庁19や情報センター20から受信し、津波の終息を検出すると、制御部24は、次に、乗場2が冠水したか否かを判定する(S402)。津波によって乗場2が冠水すると、冠水センサー18dによって冠水が検出される。何れの乗場2も冠水していなければ、制御部24は、エレベーターを平常運転に復帰させる(S403)。
【0125】
何れかの乗場2が冠水した場合(S402)、制御部24は、次に、かご3が冠水したか否かを判定する(S404)。津波によってかご3が冠水すると、冠水センサー18aによって冠水が検出される。津波到達時にかご3が冠水していれば、制御部24は、エレベーターの運転休止を継続させる(S405)。
【0126】
何れかの乗場2が冠水したものの、かご3が冠水していない場合(S404のNo)、制御部24は、エレベーターの運転(かご3の走行)は禁止するが、かご3内を避難場所として提供する(S406)。かかる場合、制御部24は、かごドア5(及び、乗場ドア4)を開放させる。また、制御部24は、乗場2の表示器27に、かご3内に避難できる旨を表示する。
図28は避難者に提供する情報を説明するための図である。
図28は、S406における表示器27の表示例を示している。表示器27の表示を見た避難者は、かご3内に一時的に避難する。避難者は、インターホン39を利用して、情報センター20に連絡を取ることができる。
【0127】
上記構成を有するエレベーター装置であれば、津波の発生が予想される場合に、津波到達予測時刻及び津波予測波高に応じて、エレベーターを適切に制御することができる。制御盤13が気象庁19や情報センター20と通信を行うことができる場合は、津波警報や通信情報に基づいて、適切な制御が実施できる。制御盤13が気象庁19や情報センター20と通信を行うことができない場合であっても、避難者等から準通信情報を取得して、津波到達予測時刻及び津波予測波高を適切に特定することができる。
【0128】
津波避難管制運転では、専用運転、優先運転が行われるため、避難優先者を優先的に避難させることができる。優先運転では、一般避難者もエレベーターを利用して避難を行うことができる。
【0129】
本エレベーター装置であれば、津波到達予測時刻よりも早く津波がビルに到達した場合に、機器類の保護よりも避難を優先した適切な制御を行うことができる。
なお、乗場2やかご3が冠水した場合は、乗場機器やかご機器が、制御盤13から切り離される。津波がビルに到達しても、制御盤13内の回路が、冠水した階の影響(感電、漏電、短絡等)を受ける恐れはない。水面が3階付近に達すると、フロート53が浮き、制御盤13の電源を、物理的な作用によって確実に遮断できる。
【0130】
屋上8に、救命着58が収納された避難具ボックス55が備えられているため、万一ビルより高い津波が来ても、避難者は水面を漂うことができる。避難者は、携帯電話59やリール61等を利用して、救助を待つことができる。
【0131】
津波が終息した後、かご3が冠水していなければ、かご3が避難場所として提供される。避難者は、かご3内のインターホン39を利用して、情報センター20に連絡を取ることができる。
【0132】
実施の形態2.
図29はこの発明の実施の形態2におけるエレベーター装置を示す側面図である。
図30はこの発明の実施の形態2におけるエレベーター装置の最上階の乗場を示す正面図である。
【0133】
図29に示すエレベーター装置では、制御盤13及び充電確認盤14が、昇降路1のピット部に設けられる。昇降路1の上方に機械室12を設置する必要がないため、避難具ボックス55は、例えば、最上階の乗場2に設けられる。最上階以外の階床の乗場2は、
図3に示す構成と同様である。
その他の構成は、実施の形態1で開示した構成と同様である。
【0134】
次に、
図31も参照し、上記構成を有するエレベーター装置の動作について説明する。
図31はこの発明の実施の形態1におけるエレベーター装置の動作を示すフローチャートである。
【0135】
図31のS501及びS502に示す動作は、
図12のS101及びS102に示す動作と同じである。記憶部22に津波到達予測時刻及び津波予測波高が記憶されると、演算部23は、記憶部22の記憶内容に基づいて、津波が到達した時に水没してしまう階(水没階)を演算する。演算部23によって計算された水没階に関する情報は、各乗場2の表示器27に表示される(S503)。
【0136】
演算部23による演算を行った結果、ビルの一部或いは全部が水没すると判定された場合、制御部24は、直ぐに専用運転を開始し、可能な限り早くエレベーターを休止させる。専用運転では、水没階よりも上の階に避難者を避難させる。
【0137】
上記構成を有するエレベーター装置であれば、制御盤13が昇降路1のピット部に配置された場合であっても、最適な津波避難管制運転を行うことができる。
本実施の形態で説明しなかった事項については、実施の形態1と同様である。