(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のリチウムイオン電池用外装材の一例を
図1に基づいて説明する。
本実施形態のリチウムイオン電池用外装材1(以下、「外装材1」という。)は、
図1に示すように、基材層11の一方の面側に、第1接着層12、金属箔層13、腐食防止処理層14、第2接着層15及びシーラント層16が順次積層された積層体である。外装材1は、基材層11が最外層、シーラント層16が最内層となるように使用される。
【0013】
[基材層11]
基材層11は、金属箔層13上に第1接着層12を介して形成される。基材層11は、電池を製造する際のシール工程における耐熱性を付与し、成型加工や流通の際に起こりうるピンホールの発生を抑制する役割を果たす。また、冷間成型時の金属箔層13の破断を抑制したり、金属箔層13と他の金属部材との絶縁性を高めたりする役割を果たす。
基材層11としては、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂等の延伸又は無延伸フィルム等が挙げられる。なかでも、成型性、耐熱性、耐突き刺し性、絶縁性に優れる点から、二軸延伸ポリアミドフィルム、二軸延伸ポリエステルフィルムが好ましい。
【0014】
基材層11を形成するフィルムは、単一の樹脂層を有する単層フィルムであってもよく、2つ以上の樹脂層を有する多層フィルムであってもよく、2枚以上のフィルムをドライラミネート接着剤で貼り合わせた複合フィルムであってもよい。
前記単層フィルムとしては、二軸延伸ポリアミドフィルム又は二軸延伸ポリエステルフィルムが好ましい。前記多層フィルムとしては、ポリアミド樹脂/ポリエステル系熱可塑性エラストマー/ポリエステル樹脂の多層構成を有する二軸延伸共押出フィルムが好ましい。前記複合フィルムとしては、二軸延伸ポリアミドフィルムと二軸延伸ポリエステルフィルムをポリウレタン系接着剤で貼り合わせた複合フィルムが好ましい。
【0015】
また、ポリエステル系熱可塑性エラストマーは、ポリウレタン系接着剤に比べてフッ化水素や電解液に対する耐性が高く、電池製造工程等においてそれらの薬品によってより劣化し難い点から、前記複合フィルムよりも前記二軸延伸共押出フィルムの方がより好ましい。
ポリエステル系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、三菱化学社製のプリマロイ等が挙げられる。
【0016】
基材層11は、難燃剤、滑剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤、帯電防止剤等の添加剤が内部に分散されるか、又は表面に塗布されていてもよい。
滑剤としては、例えば、脂肪酸アミド(例えば、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘニン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド等。)等が挙げられる。
アンチブロッキング剤としては、例えば、シリカ等の各種フィラー系のアンチブロッキング剤が挙げられる。添加剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0017】
基材層11の厚さは、耐突き刺し性、絶縁性、成型性等の点から、6〜50μmが好ましく、10〜40μmがより好ましい。
基材層11の表面には、耐擦傷性、滑り性を改善する等のために、凹凸形状を形成してもよい。
【0018】
[第1接着層12]
第1接着層12は、基材層11と金属箔層13間に形成される。第1接着層12は、基材層11と金属箔層13を強固に接着するのに必要な密着力を有するだけでなく、冷間成型時の金属箔層13の破断を保護するために追随性が求められる。
第1接着層12の材料としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、ポリオレフィンポリオール等の主剤に、硬化剤として芳香族系又は脂肪族系のイソシアネートを作用させる2液硬化型のポリウレタン系接着剤が好ましい。前記ポリウレタン系接着剤の主剤の水酸基に対する硬化剤のイソシアネート基のモル比(NCO/OH)は、1〜10が好ましく、2〜5がより好ましい。
【0019】
第1接着層12には、第2接着層15で説明する熱可塑性エラストマー、粘着付与剤、フィラー、顔料、染料等を添加してもよい。
第1接着層12の厚さは、接着強度や、追随性、加工性の点から、1〜10μmが好ましく、2〜6μmがより好ましい。
【0020】
[金属箔層13]
金属箔層13は、リチウムイオン電池内に水分が浸入することを防止するために設けられる。また、金属箔層13には、冷間成型のために延展性に優れ、深絞りが可能なことが求められる。
金属箔層13としては、アルミニウム、ステンレス綱等の各種金属箔を使用することができ、質量(比重)、防湿性、延展性等の加工性、コストの面から、アルミニウム箔が好ましい。
【0021】
アルミニウム箔としては、例えば、公知の軟質アルミニウム箔が使用でき、耐ピンホール性、及び成型時の延展性の点から、鉄を含むアルミニウム箔が好ましい。アルミニウム箔(100質量%)中の鉄の含有量は、0.1〜9.0質量%が好ましく、0.5〜2.0質量%がより好ましい。鉄の含有量が下限値以上であれば耐ピンホール性、延展性が向上する。鉄の含有量が上限値以下であれば、柔軟性が向上する。
金属箔層13の厚さは、バリア性、耐ピンホール性、加工性の点から、10〜100μmが好ましく、15〜80μmがより好ましい。
【0022】
金属箔層13には、未処理のアルミニウム箔を使用してもよいが、脱脂処理を施したアルミニウム箔が好ましい。脱脂処理としては、大きく区分するとウェットタイプとドライタイプに分けられる。
ウェットタイプの脱脂処理としては、例えば、酸脱脂やアルカリ脱脂等が挙げられる。酸脱脂に使用する酸としては、例えば、硫酸、硝酸、塩酸、フッ酸等の無機酸が挙げられる。これらの酸は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、アルミニウム箔のエッチング効果が向上する点から、必要に応じて鉄(III)イオンやセリウム(III)イオン等の供給源となる各種金属塩を配合してもよい。アルカリ脱脂に使用するアルカリとしては、例えば、エッチング効果が高いものとして水酸化ナトリウム等が挙げられる。また、弱アルカリ系や界面活性剤を配合したものが挙げられる。ウェットタイプの脱脂処理は、浸漬法やスプレー法で行われる。
ドライタイプの脱脂処理としては、例えば、アルミニウム箔を焼鈍処理する工程において、その処理時間を長くすることで脱脂処理を行う方法が挙げられる。また、該脱脂処理の他にも、フレーム処理、コロナ処理等が挙げられる。さらに、特定波長の紫外線を照射して発生する活性酸素により、汚染物質を酸化分解及び除去する脱脂処理を採用してもよい。
【0023】
[腐食防止処理層14]
腐食防止処理層14は、金属箔層13のシーラント層16側に形成される。腐食防止処理層14は、電解質と水分の反応により発生するフッ化水素による金属箔層13表面の腐食を防止する役割を果たす。また、アンカーとしての機能で金属箔層13と第2接着層15を強固に密着させる役割も果たす。
腐食防止処理層14としては、例えば、クロム酸塩、リン酸塩、フッ化物と、各種熱硬化性樹脂からなる腐食防止処理剤によるクロメート処理、希土類元素である酸化物(例えば酸化セリウム、酸化ジルコン等。)とリン酸塩と各種熱硬化性樹脂からなる腐食防止処理剤によるセリアゾル処理等により形成された層が挙げられる。また、腐食防止処理層14は、金属箔層13の耐食性が充分に得られる層であればよく、例えば、リン酸塩処理、ベーマイト処理等により形成された層であってもよい。
腐食防止処理層14としては、6価クロムの使用が環境破壊に繋がることから、クロムを使用しない非クロム系処理によって形成された層であることが好ましい。
【0024】
腐食防止処理層14は、単層であってもよく、複数層であってもよい。
腐食防止処理層14の厚さは、腐食防止機能とアンカーとしての機能の点から、5nm〜1μmが好ましく、10nm〜200nmがより好ましい。
【0025】
[第2接着層15]
第2接着層15は、シーラント層16と腐食防止処理層14の間に形成される。外装材1は、第2接着層15を形成する接着成分によって、熱ラミネート構成とドライラミネート構成に大きく分けられる。
熱ラミネート構成の第2接着層15を形成する接着成分としては、酸変性ポリオレフィン樹脂等の熱可塑性接着剤が挙げられる。酸変性ポリオレフィン樹脂は、シーラント層16と腐食防止処理層14の両方に強固に密着することができる。また、耐薬品性に優れるので、電解液と水分との反応によって発生したフッ化水素や電解液が存在しても、第2接着層15が分解劣化して密着性が低下することを抑制できる。
【0026】
酸変性ポリオレフィン樹脂は、ポリオレフィン樹脂を酸でグラフト変性した樹脂である。酸変性ポリオレフィン樹脂としては、ポリオレフィン樹脂を無水マレイン酸でグラフト変性した無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂が好ましい。
ポリオレフィン樹脂としては、低密度、中密度、高密度のポリエチレン;ホモ、ブロック又はランダムポリプロピレン等が挙げられる。また、前記のものにアクリル酸、メタクリル酸等の極性分子を共重合した共重合体、架橋ポリオレフィン等のポリマー等が挙げられ、分散、共重合等を実施した樹脂を採用できる。これらポリオレフィン樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
酸変性ポリオレフィン樹脂としては、耐熱性の点から、無水マレイン酸変性ポリエチレンよりも無水マレイン酸変性ポリプロピレンがより好ましい。
【0027】
無水マレイン酸変性ポリプロピレンにおける無水マレイン酸の変性率は、0.01〜10質量%が好ましく、0.1〜5質量%がより好ましい。前記変性率は、無水マレイン酸変性ポリプロピレン中の無水マレイン酸に由来する部分の質量割合である。
熱ラミネート構成の第2接着層15は、1種の酸変性ポリオレフィン樹脂を単独で使用してもよく、2種以上の酸変性ポリオレフィン樹脂を併用してもよい。
熱可塑性接着剤の市販品としては、例えば、三井化学社製のアドマー、三菱化学社製のモディック等が挙げられる。
【0028】
熱ラミネート構成の第2接着層15には、軟質樹脂を配合してもよい。これにより、冷間成型時のクラックによる延伸白化耐性が向上するうえ、濡れ性改善により密着力が向上し、異方性の低減により製膜性等の特性も向上する。該軟質樹脂は、均一に分散していることが好ましい。
【0029】
軟質樹脂としては、熱可塑性エラストマーが挙げられ、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマーが好ましい。
オレフィン系エラストマーとしては、例えば、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・α−オレフィン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体、1−ブテン・α−オレフィン共重合体、プロピレン・1−ブテン・エチレン共重合体、プロピレン・α−オレフィン・エチレン共重合体、プロピレン・α−オレフィン・1−ブテン共重合体、1−ブテン・α−オレフィン・エチレン共重合体等が挙げられる。
スチレン系エラストマーとしては、例えば、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレン共重合体、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレン共重合体等が挙げられる。
これらオレフィン系エラストマーやオレフィン系エラストマーは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
軟質樹脂を使用する場合、第2接着層15中の軟質樹脂の含有量は、1〜35質量%が好ましく、5〜30質量%がより好ましい。
また、第2接着層15中の軟質樹脂の分散径は、1nm〜20μmが好ましく、10nm〜10μmがより好ましい。なお、本発明において、分散径とは、分散相を形成している楕円体の最長軸を意味する。
【0031】
軟質樹脂の市販品としては、例えば、旭化成社製のタフテック、クラレ社製のセプトン、三井化学社製のノティオ、タフマー、三菱化学社製のゼラス、サーモラン、住友化学社製のタフセレン、エクセレン、エスプレン、エスポレックス、日本ポリプロ社製のウェルネクス、ニューコン、プライムポリマー社製のプライムTPO、サンアロマー社製のキャタロイ、クオリア等が挙げられる。
【0032】
熱ラミネート構成の第2接着層15を形成する材料のメルトフローレート(MFR)は、温度230℃、荷重2.16kgfの条件において、3〜30g/10分が好ましい。
熱ラミネート構成の第2接着層15の厚さは、2〜50μmが好ましい。
【0033】
ドライラミネート構成の第2接着層15の接着成分としては、例えば、第1接着層12で挙げたものと同様の2液硬化型のポリウレタン系接着剤が挙げられる。
ドライラミネート構成の第2接着層15は、エステル基やウレタン基等の加水分解され得る結合部を有しているので、より高い信頼性が求められる用途には熱ラミネート構成の第2接着層15が好ましい。
【0034】
[シーラント層16]
シーラント層16は、腐食防止処理層14上に第2接着層15を介して形成される。第2接着層15上にシーラント層16が積層されることで、2枚の外装材のシーラント層16同士を向かい合わせにし、シーラント層16の融解温度以上でヒートシールすることにより、リチウムイオン電池を封止できる。また、シーラント層16の結晶性を制御することで、ヒートシールした縁部分の側端面から電池内部に浸入してくる水分量を低減することができる。また、溶融粘度を調節することで、ヒートシール時に縁部分から押し出された樹脂の流動性を調節することができる。
【0035】
シーラント層16を形成する材料としては、メルトフローレート(MFR、温度230℃、荷重2.16kgf)が20〜30g/10分、融解温度が135〜140℃、引張弾性率が500〜700MPa、荷重たわみ温度(0.45MPa)が70〜80℃、ロックウェル硬さ(Rスケール)が60〜70であるランダムポリプロピレン(以下、「ランダムポリプロピレン(A)」という。)が挙げられる。シーラント層16が柔軟な材質であるランダムポリプロピレン(A)を含有することで、優れた成型性が得られ、冷間成型においてシーラント層16にクラックが生じることが抑制される。そのため、冷間成型における延伸部分に白化が生じたり、クラックがリチウムイオンの移動路となって電池特性が低下したりすることが抑制される。
なお、本発明において、MFRはJIS K7210で規定される値である。融解温度は、示差走査熱量計により、20℃から200℃に10℃/分で昇温し、その後50℃/分で20℃まで冷却した後、再度200℃まで10℃/分で昇温したときのピーク温度として測定される値である。引張弾性率はJIS K7161で規定される値である。荷重たわみ温度(0.45MPa)は、JIS K7191で規定される値である。ロックウェル硬さ(Rスケール)は、JIS K7202で規定される値である。
【0036】
ランダムポリプロピレン(A)のMFRは、20〜30g/10分であり、シーラント層16によりクラックが生じ難くなる点から、22〜28g/10分が好ましい。
ランダムポリプロピレン(A)の引張弾性率は、500〜700MPaであり、シーラント層16によりクラックが生じ難くなる点から、550〜650MPaが好ましい。
ランダムポリプロピレン(A)の具体例としては、例えば、プライムポリマー社製のプライムポリプロF329RAが挙げられる。
【0037】
シーラント層16には、本発明の効果を損なわない範囲であれば、ランダムポリプロピレン(A)に加えて、ホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、ランダムポリプロピレン(A)以外のランダムポリプロピレンが含有されていてもよい。また、ポリエチレンが含有されていてもよい。
【0038】
シーラント層16(100質量%)中のランダムポリプロピレン(A)の含有量は、10〜95質量%が好ましく、15〜90質量%がより好ましく、20〜85質量%がさらに好ましい。
【0039】
シーラント層16には、滑剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、造核剤等の各種添加剤が含有されていてもよい。これらの添加剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
シーラント層16の厚さは、10〜80μmが好ましい。
【0040】
シーラント層16には、第2接着層15と同様に、軟質樹脂を配合してもよい。これにより、冷間成型時のクラックによる延伸白化耐性が向上するうえ、濡れ性改善により密着力が向上し、異方性の低減により製膜性等の特性も向上する。該軟質樹脂は、均一に分散していることが好ましい。
シーラント層16に配合する軟質樹脂としては、例えば、第2接着層15で挙げたものと同じものが挙げられ、好ましい態様も同じである。
【0041】
軟質樹脂を使用する場合、シーラント層16中の軟質樹脂の含有量は、1〜35質量%が好ましく、5〜30質量%がより好ましい。
また、シーラント層16中の軟質樹脂の分散径は、1nm〜20μmが好ましく、10nm〜10μmがより好ましい。
【0042】
[製造方法]
以下、外装材1の製造方法について説明する。外装材1の製造方法は、下記工程(X1)〜(X3)を有する。
(X1)金属箔層13上に腐食防止処理層14を形成する工程。
(X2)金属箔層13の腐食防止処理層14と反対側に、第1接着層12を介して基材層11を積層する工程。
(X3)腐食防止処理層14上に、第2接着層15を介してシーラント層16を積層する工程。
【0043】
(工程(X1))
例えば、金属箔層13の一方の面に、腐食防止処理剤を塗工し、焼付けを行って腐食防止処理層14を形成する。
腐食防止処理剤の塗工方法は特に限定されず、例えば、グラビアコート、グラビアリバースコート、ロールコート、リバースロールコート、ダイコート、バーコート、キスコート、コンマコート等が挙げられる。
【0044】
(工程(X2))
金属箔層13における腐食防止処理層14を形成した側と反対側に、第1接着層12を形成する接着剤を用いて基材層11を貼り合わせる。接着剤の塗工方法は、例えば、前記工程(X1)で挙げた方法と同じ方法が挙げられる。
基材層11を貼り合わせる方法としては、ドライラミネーション、ノンソルベントラミネーション、ウェットラミネーション等が挙げられる。
工程(X2)では、接着性の促進のため、室温〜100℃の範囲でエージング処理を行ってもよい。
【0045】
(工程(X3))
熱ラミネート構成の場合、例えば、基材層11、第1接着層12、金属箔層13及び腐食防止処理層14がこの順に積層された積層体の腐食防止処理層14上に、押出ラミネート法によって第2接着層15を形成し、シーラント層16を形成する樹脂フィルムをサンドイッチラミネーションにより貼り合わせる方法が挙げられる。また、前記積層体の腐食防止処理層14上に、第2接着層15とシーラント層16を共押出ラミネート法により積層してもよく、第2接着層15とシーラント層16を逐次押出ラミネート法により積層してもよい。いずれの積層方法においても、腐食防止処理層14と第2接着層15の密着性を高めるために、第2接着層15とシーラント層16を積層した後、第2接着層15とシーラント層16を、第2接着層15及びシーラント層16の融解温度以上で加熱し、第2接着層15及びシーラント層16の結晶化温度以下の温度で冷却する熱処理を実施する。
【0046】
ドライラミネート構成の場合は、例えば、前記したポリウレタン系接着剤を使用し、前記積層体の腐食防止処理層14側に、ドライラミネーション、ノンソルベントラミネーション、ウエットラミネーション等の手法で、第2接着層15を介してシーラント層16を形成する樹脂フィルムを積層する。
【0047】
以上説明した工程(X1)〜(X3)により、外装材1が得られる。
なお、外装材1の製造方法は、前記工程(X1)〜(X3)を順次実施する方法に限定されない。例えば、工程(X2)を行ってから工程(X1)を行ってもよい。
【0048】
以上説明した本発明の外装材は、シーラント層がランダムポリプロピレン(A)を含有するため、成型性に優れ、冷間成型においてもシーラント層にクラックが生じ難い。そのため、冷間成型における延伸部分に白化が生じたり、クラックがリチウムイオンの移動路となって電池特性が低下したりすることが抑制される。
なお、本発明の外装材は、前記した外装材1には限定されない。例えば、本発明の外装材は、金属箔層の両面に腐食防止処理層を形成してもよい。
【0049】
また、
図2に例示したリチウムイオン電池用外装材2(以下、「外装材2」という。)であってもよい。外装材2における外装材1と同じ部分は同じ符号を付して説明を省略する。
外装材2は、
図2に示すように、基材層11の一方の面側に、第1接着層12、金属箔層13、腐食防止処理層14、第2接着層15及びシーラント層16が順次積層され、基材層11の他方の面側に外側コーティング層17が積層された積層体である。すなわち、外装材2は、基材層11の外側に外側コーティング層17が形成されている以外は外装材1と同じである。
【0050】
外側コーティング層17は、基材層11における金属箔層13の反対側の表面に、所望の特性に応じて形成される。外側コーティング層17を形成することで、基材層11に傷等が生じることを抑制する耐擦傷性や、電解液等によって基材層11が溶解することを抑制する耐薬品性を付与することができる。また、最外面の滑り性を高めたり、表面を賦形したりすることによって成型性を高めることもできる。
【0051】
外側コーティング層17としては、例えば、オレフィン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エステル樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂、アルキド樹脂、メラミン樹脂、シロキサン樹脂、アミド樹脂、イミド樹脂、セルロース樹脂、及び酢酸ビニル樹脂からなる群から選ばれる1種以上を含む塗液を塗工して形成される層等が挙げられる。
また、外側コーティング層17には、フィラー、顔料、染料、難燃剤、滑剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤、帯電防止剤等の添加剤を分散させるか、又は表面に塗布してもよい。
外側コーティング層17の厚さは、追随性、加工性等の点から、0.01〜50μmが好ましく、0.1〜30μmがより好ましい。
【0052】
外装材2の製造方法としては、例えば、工程(X2)において金属箔層13の外側に第1接着層12を介して基材層11を積層した後に、基材層11上に、外側コーティング層17を形成する樹脂材料を含む塗液を塗工し、焼き付ける方法が挙げられる。
塗工方法としては、例えば、工程(X1)で挙げた方法と同じ方法が挙げられる。
【0053】
本発明の外装材は、様々な形態のリチウムイオン電池に採用できる。例えば、本発明の外装材を用いたリチウムイオン電池としては、
図3に例示したリチウムイオン電池100が挙げられる。リチウムイオン電池100は、外装材1により形成される封止された容器体110と、容器体110内にタブ114の一部が外部に出るようにして収容される電池部材112を有する。
容器体110は、矩形状の外装材1がシーラント層16を内側にして二つ折りにされた第1容器部110aと第2容器部110bとを有しており、第1容器部110aに、冷間成型によって、シーラント層16側から基材層11側に突き出すような凹状の電池部材収容部116が設けられることで容器形状となっている。第1容器部110aと第2容器部110bにおける折り返し部110cの反対側に位置するシーラント層16同士が接触している先端縁部分118は、タブ114の一部を挟み込んだ状態でヒートシールされている。また、電池部材収容部116の両側の各々の側縁部分120,122もヒートシールされている。容器体110は、このように先端縁部分118と両方の側縁部分120,122がヒートシールされていることで封止されている。また、容器体110は、電池部材収容部116内に電池部材112と共に電解液が収容された状態で封止される。
両方の側縁部分120,122は、
図4に示すように、電池部材収容部116側に折り返される。
【0054】
電池部材112は、
図3に示すように、正極、セパレータ及び負極を有する電池部材本体部124と、電池部材本体部124が有する正極と負極にそれぞれ接続されるタブ114,114とを有する。タブ114,114は、正極と負極にそれぞれ接合されたリード126,126と、リード126,126に巻き付けられ、先端縁部分118のシーラント層16と溶着されるタブシーラント128,128を有する。タブ114,114は、リード126の基端側が正極及び負極にそれぞれ接合され、先端側が容器体110の外部に出るように設置される。
【0055】
リチウムイオン電池100は、下記の工程(Y1)〜(Y4)を有する製造方法により得ることができる。
(Y1)
図5に示すように、矩形状の外装材1における第1容器部110aとなる部分に電池部材収容部116を形成する工程。
(Y2)第1容器部110aの電池部材収容部116内に電池部材112を配置し、外装材1の第2容器部110bとなる部分を折り返し、折り返し部110cと反対側の先端縁部分118をタブ114の一部が外部に出るようにしてヒートシールする工程。
(Y3)電池部材収容部116の一方の側の側縁部分120をヒートシールし、残る側縁部分122側の開口から電池部材収容部116内に電解液を注入した後、真空状態で残る側縁部分122をヒートシールして封止する工程。
(Y4)側縁部分120,122の側端側の一部を切除して折り返す工程。
【0056】
(工程(Y1))
外装材1のシーラント層16側から基材層11側に、リバウンド量を考慮して所望の成型深さになるように金型で冷間成型し、第1容器部110aとなる部分に電池部材収容部116を形成する。
冷間成型時には、例えば滑剤等を利用して外装材1の表面の摩擦係数を低くしておくことで、金型と外装材1間の摩擦が低下し、金型のフィルム押さえから成型部分に外装材1が流れ込みやすくなる。これにより、クラックやピンホールを生じさせずに、より深い電池部材収容部116を形成することができる。
【0057】
(工程(Y2))
工程(Y1)で形成した電池部材収容部116内に電池部材112を収容し、外装材1の第2容器部110bとなる部分を折り返し、折り返し部110cの反対側の先端縁部分118を、タブ114を挟んでその一部が外部に出るようにしてヒートシールする。このとき、タブ114のタブシーラント128は、外装材1における第1容器部110a側のシーラント層16と第2容器部110b側のシーラント層16の両方に溶着させる。
ヒートシールは、ヒートシールバーの温度、シール時の面圧、シール時間の3条件を調節することで制御でき、第2接着層15とシーラント層16の融解温度以上の温度、かつ適度な圧力で、ポリ球と呼ばれる溶融樹脂溜り部が縁部分の側端面に形成されないように行う。
【0058】
(工程(Y3))
電池部材収容部116の一方の側の側縁部分120をヒートシールし、残る側縁部分122側の開口から、電解質を溶解させた電解液を電池部材収容部116内に注入する。その後、エージングでのデガス工程を経た後、空気が電池内部に入らないように、真空状態で残る側縁部分122をヒートシールして封止することで、リチウムイオン電池100を得る。
【0059】
(工程(Y4))
多くの場合、側縁部分120,122の側端面には、ヒートシール時に溶融したシーラント層16を形成する樹脂がはみ出しているので、側縁部分120,122の側端面側の一部を所定の幅を残して切除する。その後、側縁部分120,122を電池部材収容部116側に折り返す。
【実施例】
【0060】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。
[使用材料]
本実施例で使用した材料を以下に示す。
(基材層11)
フィルムA−1:ポリアミド樹脂(ナイロン6)/ポリエステル系熱可塑性エラストマー(商品名「プリマロイAP」、三菱化学社製)/ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート)からなる二軸延伸共押出フィルム(厚さ25μm)。
(第1接着層12)
接着剤B−1:2液硬化型ポリウレタン系接着剤(厚さ5μm)。
(金属箔層13)
金属箔C−1:軟質アルミニウム箔(O8079材、厚さ40μm)。
(腐食防止処理層14)
処理剤D−1:溶媒として蒸留水を使用し、固形分濃度10質量%に調整した「ポリリン酸ナトリウム安定化酸化セリウムゾル」。酸化セリウム100質量部に対して、リン酸塩は10質量部とした。
処理剤D−2:溶媒として蒸留水を使用し、固形分濃度5質量%に調整した、「ポリアクリル酸アンモニウム塩(東亞合成製)」90質量%と、「アクリル−イソプロペニルオキサゾリン共重合体(日本触媒製)」10質量%からなる組成物。
(第2接着層15)
接着樹脂E−1:無水マレイン酸変性ポリプロピレン80質量%と、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレン共重合体(商品名「タフテックH1221」、旭化成社製)20質量%を含む接着樹脂。
(シーラント層16)
シーラント樹脂F−1:ランダムポリプロピレン(商品名「プライムポリプロF329RA」、プライムポリマー社製、MFR(温度230℃、荷重2.16kgf):25g/10分、融解温度:137℃、引張弾性率:600MPa、荷重たわみ温度(0.45MPa):75℃、ロックウェル硬さ(Rスケール):65)。
シーラント樹脂F−2:ブロックポリプロピレン(MFR(温度230℃、荷重2.16kgf):7.5g/10分、融解温度:160℃、引張弾性率:1100MPa、荷重たわみ温度(0.45MPa):98℃、ロックウェル硬さ(Rスケール):81)。
【0061】
[実施例1]
金属箔C−1上に、処理剤D−1をバーコーターにより塗工し、乾燥ユニットにおいて200℃で焼付け処理を施し、乾燥厚さ50μmの酸化セリウム層を形成した。さらに、該酸化セリウム層上に処理剤D−2をバーコーターにより塗工し、乾燥ユニットにおいて150℃で焼付け処理を施し、乾燥厚さ50nmのアクリル樹脂層を形成し、酸化セリウム層とアクリル樹脂層が積層された腐食防止処理層14を得た。次いで、金属箔層13における腐食防止処理層14と反対側に、接着剤B−1を用いたドライラミネート法によりフィルムA−1を貼り合わせた後、40℃7日間のエージング処理を行って熱架橋させ、第1接着層12(乾燥厚さ5μm)を介して基材層11を積層した。フィルムA−1は、ポリアミド樹脂側が金属箔層13側に向くように貼り合わせた。
次に、腐食防止処理層14上に、接着樹脂E−1を用いた押出ラミネートにより厚さ40μmの第2接着層15を形成し、さらにシーラント樹脂F−1を用いた押出ラミネートにより厚さ40μmのシーラント層16を形成した。次に、熱オーブンによって、第2接着層15及びシーラント層16を190℃で加熱した後、20℃で冷却することで外装材1を得た。
【0062】
[比較例1]
シーラント樹脂F−1をシーラント樹脂F−2に変更した以外は、実施例1と同様にして外装材を得た。
【0063】
[成型性の評価]
各例で得られた外装材を200mm×100mmのサイズに切り出し、そのサンプルの中央に、冷間成型用装置によって、ヘッドスピード10mm/秒の条件で、縦100mm×横50mmの矩形状で深さ5mmの冷間成型を行い、白化の有無を評価した。成型性の評価は以下の基準で行った。
「○(良好)」:成型で延伸された部分に白化が見られない。
「×(不良)」:成型で延伸された部分に白化が見られる。
実施例1及び比較例1における成型性の評価結果を表1に示す。なお、表1における「F−1」、「F−2」は、それぞれシーラント樹脂F−1とシーラント樹脂F−2を示す。
【0064】
【表1】
【0065】
表1に示すように、シーラント層にランダムポリプロピレン(A)を用いた実施例1の外装材は、成型で延伸された部分に白化が見られず、優れた成型性が得られた。
一方、シーラント層にランダムポリプロピレン(A)を用いず、ブロックポリプロピレンを用いた比較例1の外装材は、成型で延伸された部分に白化が見られ、充分な成型性が得られなかった。