【実施例】
【0029】
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0030】
[ApoB-48標準液用組換えタンパク質の開発]
ApoB-48のaa600-630を認識する抗ApoBモノクローナル抗体(B100-228)と、ApoB-48のaa2174-2179を認識する抗ApoB-48モノクローナル抗体(B48-151)とを用いたサンドイッチ測定系において、抗体エピトープを含むApoB-48部分領域を融合させた組換えタンパク質が標準液として利用可能かどうかを検討した。
【0031】
1.組換えタンパク質の作製
ApoB-48の部分領域を組み合わせた様々な融合タンパク質を作製した。B48D1からB48D22は同じ方法を用いて作製した。常法により、Apo-B48全長をコードするcDNA(McA-RH7777細胞:Arteriosclerosis, Thrombosis, and Vascular Biology, 15, 485(1995)により調製)から遺伝子全長をPCRにより増幅し、ベクター(pcDNA3.1(-), Invitrogen)にクローニングした。次に、このプラスミドDNAを鋳型とし、第6481番塩基(第2161番アミノ酸)からのsense primerおよび第2250番塩基(第750番アミノ酸)からのanti-sense primerを用いてPCRを行った。該PCR産物をT4 DNA ポリメラーゼで完全な平滑末端とした後、T4 ポリヌクレオチドキナーゼで5'末端側をリン酸化しセルフライゲーションを行い、大腸菌DH5αに形質転換し、ApoB-48遺伝子cDNAの第2251塩基〜第6480番塩基が除かれたプラスミドを得た。続いて、該プラスミドDNAを鋳型とし、制限酵素認識部位を付加したプライマーを用いたPCRにより、5'末端側および3'末端側にそれぞれEcoRIサイトおよび NotIサイトを付加したインサート増幅断片を得て、この増幅断片を、pW6AベクターにGST遺伝子を挿入したpWG6A(Journal of Clinical Laboratory Analysis, 11, 315-322 (1993))ベクターにクローニングした。この操作によりApoB-48全長遺伝子からaa751〜2160領域を除いた。同様に、第1348番塩基(第450番アミノ酸)からのsense primerおよび第1番塩基(第1番アミノ酸)からのanti-sense primerを使用して、さらにaa1〜449領域を除去し、これをB48D1とした。B48D21およびB48D22は、B48D1プラスミドDNAを鋳型として同様の方法で段階的(B48D1→B48D5→B48D7→B48D8→B48D13→B48D18)に作製したB48D18を基に作製した。B48D18プラスミドDNAを鋳型としてsense primer:CTGCAGACATATATGATATAAGCGGCCGCATG(配列番号5)およびanti-sense primer:GTAGAGTTGATAGTTCCGAGAGAATTTTCTGAAGTC(配列番号6)でPCRを行い、aa641〜650領域を除いてB48D21:aa450-530 + aa540-640 + aa2174-2179を作製した。B48D22:aa450-530 + aa540-634 + aa2174-2179は、B48D18プラスミドDNAを鋳型とし、sense primer:CTGCAGACATATATGATATAAGCGGCCGCATG(配列番号5)およびanti-sense primer:AGAGAATTTTCTGAAGTCCATGACAGTTGGAAGTTG(配列番号7)でPCRを行い、aa635〜650領域を除いてB48D22を作製した。作製した各発現ベクターを大腸菌(BL21)に導入し、常法により組換えタンパク質を発現させた(表1、
図1)。
【0032】
【表1】
【0033】
発現を確認した各組換えタンパク質について、常法により回収・精製し、ウエスタンブロッティング(WB)法による分解産物の評価を実施した。タンパク質の回収・精製は次の通りに行なった。
(1) ベクターを導入した大腸菌を20mL LAP培地で一晩培養
(2) 0.01mM IPTG、200mL LAP培地で37℃、2hrインキュベートし、タンパク質を発現
(3) Glutathione Sepharose 4Bカラムで精製
(4) 15% SDS-PAGEにてタンパク質を泳動
(5) WBを実施。検出にはモノクローナル抗体B48-100及びB100-228のいずれかを使用(2μg/mL)。室温で1.5hr反応後、洗浄してanti-MIg-PODと反応(x1000希釈、室温1hr)。発色は4-クロロ-1-ナフトール + H
2O
2で実施した。
【0034】
WBでメインの発現産物より低分子量に一定以上の反応が認められた場合に「分解あり」と判定した。
【0035】
その結果、B48D21(配列番号3)、B48D22(配列番号4)の2種類の組換えタンパク質では分解が認められなかった(表2)。各組換えタンパク質に含まれる部分領域を対比して分解領域を探索したところ、aa531-539及びaa641-650の2領域のいずれかを含む組換えタンパク質で分解が生じると考えられた。
【0036】
【表2】
【0037】
2.B48D22の大腸菌での発現と精製
B48D22をGST融合型で大腸菌内で発現させ、不溶性画分を透析後、グルタチオンカラムで精製した。続いて、トロンビンでGSTを除き、再度、グルタチオンカラムによりB48D22を回収した。
【0038】
B48D22は、大腸菌発現系を利用して1mg/L以上の精製タンパク質を得ることができた。精製B48D22と抗体との反応性をWBにより確認したところ、2種の抗体(Mab B48-151及びMab B100-228)はB48D22に同等の反応性を示した。
【0039】
3.全長タンパク質との反応性の比較
全長タンパク質として、富士レビオ株式会社から市販されている標準アポ蛋白B-48(凍結乾燥)を用いた。この全長タンパク質と上記で精製したB48D22を用いて、ELISAを下記の通り実施した。
(1) 抗体固相プレートの調製:B48-151抗体(5μg/mL)をウェルに加え4℃でO/N後、プレート洗浄。
(2) 抗体固相プレートのブロッキング:1% skim milk-PBS(200μL/well)をウェルに加え、37℃で1hrインキュベート後、プレート洗浄。
(3) ApoB-48測定キットに添付の処理液で段階希釈した全長タンパク質又はB48D22(7.31〜0.23μg/mL)を固相プレートと反応(37℃、1hr)させ、プレート洗浄。
(4) 標識抗体の反応:Biotin-B100-228(1% BSA-PBSで×2000希釈、1μg/mL)をウェルに加え、37℃で1hrインキュベート後、プレート洗浄。
(5) 検出:ストレプトアビジン-アルカリフォスファターゼ(PBSTで×2000希釈)をウェルに加え、37℃で1hrインキュベート。洗浄後、基質(pNPP)を添加し、室温で20minインキュベート。
【0040】
結果を
図2に示す。検討した7.31〜0.23μg/mLの濃度範囲において、従来の標準品である全長タンパク質とB48D22との間で良好な相関関係が認められた。
【0041】
4.凍結融解に対する安定性の検討
ApoB-48全長タンパク質及び上記で精製したB48D22を最大6回の凍結融解処理(-80℃→室温)に付し、B48-151抗体を用いたELISAにて測定を行なった。ELISAは下記の通り実施した。
(1) 抗体固相プレートの調整:B48-151抗体(5μg/mL)をウェルに加え4℃でO/N後、プレート洗浄。
(2) 抗体固相プレートのブロッキング:1 % skim milk-PBS(200μL/well)をウェルに加え、37℃で1hrインキュベート後、プレート洗浄。
(3) 全長タンパク質及びB48D22を1mg/mLに調整し、凍結融解を繰り返した(0, 1, 2, 3, 4, 6回)各サンプルを固相プレートと反応(37℃、1hr)させ、プレート洗浄。
(4) 標識抗体の反応:Biotin-B100-228(1% BSA-PBSで×2000希釈、1μg/mL)をウェルに加え、37℃で1hrインキュベート後、プレート洗浄。
(5) 検出:ストレプトアビジン-アルカリフォスファターゼ(PBSTで×2000希釈)をウェルに加え、37℃で1hrインキュベート。洗浄後、基質(pNPP)を添加し、室温で20minインキュベート。
【0042】
各タンパク質の測定値を表3に示す(凍結融解なし(0回)を100%として表示)。全長ApoB-48の測定値は−17%超の低下傾向を示した。一方、B48D22は、6回の凍結融解後でも測定値は−8%以内であった。全長タンパク質の測定値と比較してB48D22の測定値は凍結融解を繰り返しても安定であることが確認された。
【0043】
【表3】
【0044】
5.4℃保存に対する安定性の検討
ApoB-48全長タンパク質及び上記で精製したB48D22を1mg/mlの濃度で4℃にて0〜14日間保存し、これをサンプルとして上記と同様にELISAを行なった。この場合も、B48D22の測定値は安定していることが確認された。