特許第5966560号(P5966560)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5966560-免疫測定用標準品 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5966560
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】免疫測定用標準品
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/531 20060101AFI20160728BHJP
   C07K 14/47 20060101ALI20160728BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
   G01N33/531 A
   C07K14/47
   C12N15/00 AZNA
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-96938(P2012-96938)
(22)【出願日】2012年4月20日
(65)【公開番号】特開2013-224863(P2013-224863A)
(43)【公開日】2013年10月31日
【審査請求日】2015年2月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】306008724
【氏名又は名称】富士レビオ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】特許業務法人谷川国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100088546
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 英次郎
(72)【発明者】
【氏名】藤井 信之
(72)【発明者】
【氏名】内田 好昭
【審査官】 大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/100292(WO,A1)
【文献】 特開2003−111592(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/093415(WO,A1)
【文献】 特許第3440852(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48 − 33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アポリポタンパク質B-48の少なくとも1つの部分領域で構成されたポリペプチドであって、免疫測定で用いられるアポリポタンパク質B-48に結合する抗体のエピトープを含み、かつ、アポリポタンパク質B-48のaa531-539の領域及びaa641-650の領域のいずれも含まないポリペプチドを含む、アポリポタンパク質B-48の免疫測定用の標準品。
【請求項2】
サンドイッチ法による免疫測定用の標準品であって、前記ポリペプチドは、免疫測定に用いられる2種類の抗体のエピトープを含む、請求項1記載の標準品。
【請求項3】
前記ポリペプチドが、アポリポタンパク質B-48のaa600-630の領域及びaa2174-2179の領域を含む、請求項1又は2記載の標準品。
【請求項4】
前記ポリペプチドが、アポリポタンパク質B-48に由来する領域として、配列番号3に示されるアミノ酸配列中のaa5-192の領域又は配列番号4に示されるアミノ酸配列中のaa5-186の領域を含む、請求項記載の標準品。
【請求項5】
請求項1ないしのいずれか1項に記載の標準品を含有する、アポリポタンパク質B-48の免疫測定用の標準液。
【請求項6】
請求項1ないしのいずれか1項に記載の標準品、又は請求項記載の標準液を含む、アポリポタンパク質B-48の免疫測定キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫測定用の標準品に関する。
【背景技術】
【0002】
アポリポタンパク質B-48(ApoB-48)は、小腸から分泌されるアポリポタンパク質Bの一種で、カイロミクロン及びカイロミクロンレムナント中に存在している。カイロミクロンレムナント代謝異常と冠動脈疾患(非特許文献1)、食後高脂血症(非特許文献2〜3)との関連性が数多く報告され、血中ApoB-48がレムナント代謝異常の指標として注目されている。ApoB-48を測定するための測定キットも市販されている。
【0003】
ApoB-48測定系の標準品としては、nativeまたはラット細胞培養法で調製された全長リコンビナントタンパク質が使用されている。脂質フリーのnative ApoB-48は非常に不安定なため、精製後直ちに分解してしまうことが取扱い上の難点である。全長リコンビナントタンパク質は、高分子量(243KDa)でかつ脂質と結合しリポタンパクを形成しているが、ラット細胞での産生量が低く、検量線の作成には数10μg/mL濃度が必要となるため、細胞培養法では高コストとなる。また高分子量のためプロテアーゼ分解を受け易く、標準液調製後の安定性にも問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3440852号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Mayer, et al., Atherosclerosis. 124(2): 221-35, 1996
【非特許文献2】Simpson HS, et al., Atherosclerosis. 85(2-3): 193-202, 1990
【非特許文献3】Karpe F, et al., Atherosclerosis. 106(1): 83-97, 1994
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、安定性に優れ、低コストで製造可能な免疫測定用の標準品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者らは、サンドイッチ免疫測定によるApoB-48測定系の標準品について鋭意研究した結果、免疫測定で用いる抗体のエピトープを融合させた組換えタンパク質が、全長タンパク質と同様に検量線の作成に有用であり、標準品として利用可能であること、分解が生じやすい領域を欠失させることで安定性に優れた標準品となることを見出し、本願発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、アポリポタンパク質B-48の少なくとも1つの部分領域で構成されたポリペプチドであって、免疫測定で用いられるアポリポタンパク質B-48に結合する抗体のエピトープを含み、かつ、アポリポタンパク質B-48のaa531-539の領域及びaa641-650の領域のいずれも含まないポリペプチドを含む、アポリポタンパク質B-48の免疫測定用の標準品を提供する。また、本発明は、上記本発明の標準品を含有する、アポリポタンパク質B-48の免疫測定用の標準液を提供する。さらに、本発明は、上記本発明の標準品又は標準液を含む、アポリポタンパク質B-48の免疫測定キットを提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、分解が生じにくく安定性に優れ、かつ安価に大量合成が可能な免疫測定用標準品及び標準液が新たに提供された。本発明の標準品は、凍結融解や低温保存下の安定性にも優れ、取扱い性に優れている。また、全長タンパク質よりも遥かに低分子量で調製でき、大腸菌による大量合成も可能であり、低コストで大量生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例で作製した各種組換えタンパク質の構造の模式図である。
図2】サンドイッチELISAにより全長ApoB-48タンパク質及び組換えタンパク質B48D22をそれぞれ測定した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明において、アポリポタンパク質B-48の免疫測定用の標準品とは、免疫測定法によりアポリポタンパク質B-48を定量する際に、検量線の作成又は測定装置のキャリブレーションのために用いられる標準物質をいう。
【0012】
本発明の標準品は、公知のあらゆる免疫測定系のための標準品として使用することができる。免疫測定を反応様式で分類すると、サンドイッチ法、競合法、凝集法、イムノクロマト法、ウエスタンブロット法等があり、標識で分類すると、放射免疫測定、蛍光免疫測定、酵素免疫測定(EIA)、ビオチン免疫測定等がある。また、臨床検査として実用されている測定系としては、EIA(ELISA、CLEIA(化学発光酵素免疫測定法)、ウエスタンブロット等)、凝集法(ラテックス凝集法等)、補体結合反応(CF)等が挙げられる。本発明における「免疫測定」には、こうした公知の各種免疫測定が包含される。
【0013】
本発明の標準品に用いられるポリペプチドは、アポリポタンパク質B-48の少なくとも1つの部分領域で構成される。「少なくとも1つの部分領域で構成される」とは、1つの部分領域で構成されるか、又は2以上の部分領域を融合させた構造を有することを意味し、もとのアポリポタンパク質B-48の全長からなるポリペプチドは包含されない。特に限定されないが、本発明で標準品として用いるポリペプチドは、通常、測定対象のアポリポタンパク質B-48よりもはるかに低分子量(例えば半分程度以下)である。
【0014】
該ポリペプチドは、免疫測定によるアポリポタンパク質B-48の測定に使用される抗体のエピトープを含む。サンドイッチ免疫測定のように、アポリポタンパク質B-48に結合する抗体を複数使用する測定系の場合には、ポリペプチドにはそれら複数の抗体のエピトープが全て含まれる。
【0015】
市販の免疫測定キットなど、公知の免疫測定系で用いられる抗体は、エピトープが同定済みのものもあれば未同定のものもある。エピトープが未同定の抗体については、常法により同定することができる。具体的には、例えば、抗体の対応抗原であるタンパク質の部分領域からなる断片を各種調製し、抗体がこれら部分断片のいずれと結合するかを調べればよい。結合が認められた断片について、さらに細かく部分断片を調製し、抗体と結合する最小の断片を特定してもよい。もっとも、本発明で用いるポリペプチドの調製に際しては、最小エピトープまで特定する必要はなく、ポリペプチドの製造を低コストで実施できる程度のサイズにまでエピトープを絞り込めれば良い。
【0016】
また、該ポリペプチドは、切断分解を受けやすい領域を含まないように、該領域を除外して作製する。ApoB-48のように分解しやすく不安定なタンパク質の場合、切断分解が生じやすい領域を欠失させることで、安定性に優れた標準品とすることができる。この「切断分解を受けやすい領域」は、全長タンパク質において公知となっている切断分解(例えばプロテアーゼによる切断)が生じやすい領域でもよいし、あるいは、エピトープを含むポリペプチドを複数種類作製し、どの領域を欠失させると切断分解が生じにくくなるかを特定してもよい。ApoB-48の場合、部分領域で構成されるポリペプチドにaa531-539(第531番〜第539番アミノ酸の意)及びaa641-650の2領域のいずれかが含まれると切断分解が生じやすくなることが確認されている。従って、ApoB-48免疫測定系のための標準品として用いるポリペプチドとしては、ApoB-48のaa531-539及びaa641-650の2領域のいずれも含まないものを用いる
【0017】
本発明で用いるポリペプチドは、例えば、公知の遺伝子工学的手法を用いて以下のように製造することができる。
【0018】
ポリペプチドに含ませるべき部分領域をコードするポリヌクレオチドは、次のようにして得ることができる。すなわち、アポリポタンパク質B-48を発現している組織や細胞からmRNAを抽出し、RT-PCRによりcDNAを合成し、このcDNAを鋳型としたPCRにより、所望の部分領域をコードするポリヌクレオチドを調製することができる。PCRに用いるプライマーは、GenBank等のデータベースに登録されているアポリポタンパク質B-48のmRNAの配列情報に基づいて適宜設計することができる。あるいは、所望の部分領域をコードするポリヌクレオチドは、市販の核酸合成機を用いた常法により調製することもできる。各アミノ酸をコードするコドンが公知であるから、アミノ酸配列さえ特定できれば、そのアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドの塩基配列も決定できる。
【0019】
部分領域をコードするポリヌクレオチドを適当な発現ベクターに組み込み(用いる部分領域が複数の場合は各ポリヌクレオチドを順次発現ベクターに組み込む)、適当な宿主細胞に導入してポリペプチドを発現させ、これを回収・精製することにより、目的とするポリペプチドを組換えポリペプチドとして得ることができる。一旦発現ベクターを調製した後は、大腸菌等の宿主細胞で容易に大量合成することができる。mRNAの抽出、RT-PCR、ベクターへのDNAの組み込み、宿主細胞への導入等の手法自体は周知の常法である。用いるベクターや宿主細胞も周知であり、種々の市販品が存在するため、当業者であれば適宜選択して使用することができる。また、各種タグや他のタンパク質を融合させた融合タンパク質の調製方法も周知の常法である。
【0020】
使用する宿主細胞の種類に応じて、組換えポリペプチドは各種の翻訳後修飾(N末端メチオニンの脱離、N末端アセチル化、糖鎖付加、細胞内プロテアーゼによる限定分解、ミリストイル化、イソプレニル化、リン酸化など)を受け得るが、そのような翻訳後修飾された形態のポリペプチドも、免疫測定で用いる抗体との反応性が全長タンパク質と同等である限り、標準品として使用可能である。
【0021】
従来の標準液に用いられている全長タンパク質と本発明に従い調製されたポリペプチドとで所定濃度の標準液を調製し、採用する免疫測定系を用いてそれぞれの標準液を測定し、両者の測定値の相関を求めた時に、相関係数が0.90≦R2≦1.10、好ましくは0.95≦R2≦1.05であれば、抗体との反応性が全長タンパク質と同等ということができる。
【0022】
あるいは、本発明で用いるポリペプチドは、化学合成により製造することもできる。化学合成法の具体例としては、例えばFmoc法(フルオレニルメチルオキシカルボニル法)、tBoc法(t-ブチルオキシカルボニル法)等を挙げることができる。また、各種の市販のペプチド合成機を利用して常法により合成することもできる。化学合成の場合は、アミノ酸配列のみに基づいて所望のポリペプチドを合成できる。もっとも、ポリペプチドを安価に大量生産するためには、遺伝子工学的手法による製造が有利である。
【0023】
下記実施例では、ApoB-48の異なる部位を認識する2種類の抗体B100-228及びB48-151(特許文献1)を用いたApoB-48サンドイッチ免疫測定系で標準品として使用可能なポリペプチドを作製している。ApoB-48はApoB-100(GenBank NM_000384; GenPept NP_000375)の一部と同一のアミノ酸配列を有するタンパク質であり、いずれも配列は公知である。ApoB-48をコードするcDNAの配列を配列番号1に、ApoB-48のアミノ酸配列を配列番号2に示す。配列番号1中のaa1-27の領域はシグナル配列である。
【0024】
B100-228抗体のエピトープはaa600-630であり、B48-151抗体のエピトープはaa2174-2179であるから、これらの抗体を用いたApoB-48サンドイッチ測定系のための本発明による標準品としては、aa600-630とaa2174-2179の2つの部分領域を含むポリペプチドを用いることができる。
【0025】
また、上述した通り、ApoB-48の部分領域で構成されるポリペプチドにおいて、ApoB-48のaa531-539及びaa641-650の2領域のいずれかを含む場合に切断分解が生じやすくなることが確認されていることから、ApoB-48の免疫測定のための標準品としては、これら2領域のいずれも含まないポリペプチドが用いられる

【0026】
すなわち、2種類の抗体B100-228及びB48-151を用いたApoB-48サンドイッチ測定系のための標準品として用いるポリペプチドは、ApoB-48のaa600-630及びaa2174-2179の2領域を含み、かつ、ApoB-48のaa531-539及びaa641-650の2領域のいずれも含まないポリペプチドであり得る。このようなポリペプチドの具体例が下記実施例に記載のB48D21及びB48D22であり、それらのアミノ酸配列を配列番号3及び4にそれぞれ示す。もっとも、上記2抗体を用いたApoB-48測定系のための標準品は、これらの具体例には限定されず、ApoB-48のaa600-630及びaa2174-2179の2領域を含み、かつ、ApoB-48のaa531-539及びaa641-650の2領域のいずれも含まない限り、ApoB-48の他の部分領域をさらに含んでいても又は含んでいなくともよい。
【0027】
ポリペプチドB48D21(配列番号3)は、ApoB-48の部分領域aa450-530、aa540-640、及びaa2174-2179を融合させた構造を有するポリペプチドである。ポリペプチドB48D22(配列番号4)は、ApoB-48の部分領域aa450-530、aa540-634、及びaa2174-2179を融合させた構造を有するポリペプチドである。このようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチドも、上述したように遺伝子工学的手法により又は化学合成により製造することができる。遺伝子工学的手法の場合、各部分領域を増幅するプライマーは、配列番号1に示したApoB-48をコードするcDNAの塩基配列に基づき適宜設計することができる。なお、配列番号3及び4のうちのN末端の4残基(aa1-4)はクローニングの際に用いたベクターに由来する配列であり、ApoB-48の各部分領域に由来する配列は、配列番号3ではaa5-192、配列番号4ではaa5-186である。
【0028】
本発明の標準品は、ポリペプチドを凍結乾燥させた形態であってもよいし、適当な緩衝液に一定以上の濃度で溶解させた形態であってもよい。この標準品は、数段階の濃度で適当な溶液(例えば、免疫測定系で検体処理液ないし希釈液として用いる溶液)に溶解させ、検量線の作成又は測定装置のキャリブレーションのための標準液として使用することができる。本発明の標準品又は標準液は、免疫測定キットに含めて提供することもできる。数段階の濃度に調整された標準液としてキットに含める場合、標準液の濃度範囲は、その免疫測定系の検出感度に応じて適宜選択することができる。
【実施例】
【0029】
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0030】
[ApoB-48標準液用組換えタンパク質の開発]
ApoB-48のaa600-630を認識する抗ApoBモノクローナル抗体(B100-228)と、ApoB-48のaa2174-2179を認識する抗ApoB-48モノクローナル抗体(B48-151)とを用いたサンドイッチ測定系において、抗体エピトープを含むApoB-48部分領域を融合させた組換えタンパク質が標準液として利用可能かどうかを検討した。
【0031】
1.組換えタンパク質の作製
ApoB-48の部分領域を組み合わせた様々な融合タンパク質を作製した。B48D1からB48D22は同じ方法を用いて作製した。常法により、Apo-B48全長をコードするcDNA(McA-RH7777細胞:Arteriosclerosis, Thrombosis, and Vascular Biology, 15, 485(1995)により調製)から遺伝子全長をPCRにより増幅し、ベクター(pcDNA3.1(-), Invitrogen)にクローニングした。次に、このプラスミドDNAを鋳型とし、第6481番塩基(第2161番アミノ酸)からのsense primerおよび第2250番塩基(第750番アミノ酸)からのanti-sense primerを用いてPCRを行った。該PCR産物をT4 DNA ポリメラーゼで完全な平滑末端とした後、T4 ポリヌクレオチドキナーゼで5'末端側をリン酸化しセルフライゲーションを行い、大腸菌DH5αに形質転換し、ApoB-48遺伝子cDNAの第2251塩基〜第6480番塩基が除かれたプラスミドを得た。続いて、該プラスミドDNAを鋳型とし、制限酵素認識部位を付加したプライマーを用いたPCRにより、5'末端側および3'末端側にそれぞれEcoRIサイトおよび NotIサイトを付加したインサート増幅断片を得て、この増幅断片を、pW6AベクターにGST遺伝子を挿入したpWG6A(Journal of Clinical Laboratory Analysis, 11, 315-322 (1993))ベクターにクローニングした。この操作によりApoB-48全長遺伝子からaa751〜2160領域を除いた。同様に、第1348番塩基(第450番アミノ酸)からのsense primerおよび第1番塩基(第1番アミノ酸)からのanti-sense primerを使用して、さらにaa1〜449領域を除去し、これをB48D1とした。B48D21およびB48D22は、B48D1プラスミドDNAを鋳型として同様の方法で段階的(B48D1→B48D5→B48D7→B48D8→B48D13→B48D18)に作製したB48D18を基に作製した。B48D18プラスミドDNAを鋳型としてsense primer:CTGCAGACATATATGATATAAGCGGCCGCATG(配列番号5)およびanti-sense primer:GTAGAGTTGATAGTTCCGAGAGAATTTTCTGAAGTC(配列番号6)でPCRを行い、aa641〜650領域を除いてB48D21:aa450-530 + aa540-640 + aa2174-2179を作製した。B48D22:aa450-530 + aa540-634 + aa2174-2179は、B48D18プラスミドDNAを鋳型とし、sense primer:CTGCAGACATATATGATATAAGCGGCCGCATG(配列番号5)およびanti-sense primer:AGAGAATTTTCTGAAGTCCATGACAGTTGGAAGTTG(配列番号7)でPCRを行い、aa635〜650領域を除いてB48D22を作製した。作製した各発現ベクターを大腸菌(BL21)に導入し、常法により組換えタンパク質を発現させた(表1、図1)。
【0032】
【表1】
【0033】
発現を確認した各組換えタンパク質について、常法により回収・精製し、ウエスタンブロッティング(WB)法による分解産物の評価を実施した。タンパク質の回収・精製は次の通りに行なった。
(1) ベクターを導入した大腸菌を20mL LAP培地で一晩培養
(2) 0.01mM IPTG、200mL LAP培地で37℃、2hrインキュベートし、タンパク質を発現
(3) Glutathione Sepharose 4Bカラムで精製
(4) 15% SDS-PAGEにてタンパク質を泳動
(5) WBを実施。検出にはモノクローナル抗体B48-100及びB100-228のいずれかを使用(2μg/mL)。室温で1.5hr反応後、洗浄してanti-MIg-PODと反応(x1000希釈、室温1hr)。発色は4-クロロ-1-ナフトール + H2O2で実施した。
【0034】
WBでメインの発現産物より低分子量に一定以上の反応が認められた場合に「分解あり」と判定した。
【0035】
その結果、B48D21(配列番号3)、B48D22(配列番号4)の2種類の組換えタンパク質では分解が認められなかった(表2)。各組換えタンパク質に含まれる部分領域を対比して分解領域を探索したところ、aa531-539及びaa641-650の2領域のいずれかを含む組換えタンパク質で分解が生じると考えられた。
【0036】
【表2】
【0037】
2.B48D22の大腸菌での発現と精製
B48D22をGST融合型で大腸菌内で発現させ、不溶性画分を透析後、グルタチオンカラムで精製した。続いて、トロンビンでGSTを除き、再度、グルタチオンカラムによりB48D22を回収した。
【0038】
B48D22は、大腸菌発現系を利用して1mg/L以上の精製タンパク質を得ることができた。精製B48D22と抗体との反応性をWBにより確認したところ、2種の抗体(Mab B48-151及びMab B100-228)はB48D22に同等の反応性を示した。
【0039】
3.全長タンパク質との反応性の比較
全長タンパク質として、富士レビオ株式会社から市販されている標準アポ蛋白B-48(凍結乾燥)を用いた。この全長タンパク質と上記で精製したB48D22を用いて、ELISAを下記の通り実施した。
(1) 抗体固相プレートの調製:B48-151抗体(5μg/mL)をウェルに加え4℃でO/N後、プレート洗浄。
(2) 抗体固相プレートのブロッキング:1% skim milk-PBS(200μL/well)をウェルに加え、37℃で1hrインキュベート後、プレート洗浄。
(3) ApoB-48測定キットに添付の処理液で段階希釈した全長タンパク質又はB48D22(7.31〜0.23μg/mL)を固相プレートと反応(37℃、1hr)させ、プレート洗浄。
(4) 標識抗体の反応:Biotin-B100-228(1% BSA-PBSで×2000希釈、1μg/mL)をウェルに加え、37℃で1hrインキュベート後、プレート洗浄。
(5) 検出:ストレプトアビジン-アルカリフォスファターゼ(PBSTで×2000希釈)をウェルに加え、37℃で1hrインキュベート。洗浄後、基質(pNPP)を添加し、室温で20minインキュベート。
【0040】
結果を図2に示す。検討した7.31〜0.23μg/mLの濃度範囲において、従来の標準品である全長タンパク質とB48D22との間で良好な相関関係が認められた。
【0041】
4.凍結融解に対する安定性の検討
ApoB-48全長タンパク質及び上記で精製したB48D22を最大6回の凍結融解処理(-80℃→室温)に付し、B48-151抗体を用いたELISAにて測定を行なった。ELISAは下記の通り実施した。
(1) 抗体固相プレートの調整:B48-151抗体(5μg/mL)をウェルに加え4℃でO/N後、プレート洗浄。
(2) 抗体固相プレートのブロッキング:1 % skim milk-PBS(200μL/well)をウェルに加え、37℃で1hrインキュベート後、プレート洗浄。
(3) 全長タンパク質及びB48D22を1mg/mLに調整し、凍結融解を繰り返した(0, 1, 2, 3, 4, 6回)各サンプルを固相プレートと反応(37℃、1hr)させ、プレート洗浄。
(4) 標識抗体の反応:Biotin-B100-228(1% BSA-PBSで×2000希釈、1μg/mL)をウェルに加え、37℃で1hrインキュベート後、プレート洗浄。
(5) 検出:ストレプトアビジン-アルカリフォスファターゼ(PBSTで×2000希釈)をウェルに加え、37℃で1hrインキュベート。洗浄後、基質(pNPP)を添加し、室温で20minインキュベート。
【0042】
各タンパク質の測定値を表3に示す(凍結融解なし(0回)を100%として表示)。全長ApoB-48の測定値は−17%超の低下傾向を示した。一方、B48D22は、6回の凍結融解後でも測定値は−8%以内であった。全長タンパク質の測定値と比較してB48D22の測定値は凍結融解を繰り返しても安定であることが確認された。
【0043】
【表3】
【0044】
5.4℃保存に対する安定性の検討
ApoB-48全長タンパク質及び上記で精製したB48D22を1mg/mlの濃度で4℃にて0〜14日間保存し、これをサンプルとして上記と同様にELISAを行なった。この場合も、B48D22の測定値は安定していることが確認された。
図1
図2
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]