(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5966626
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】ラインドライバの保護回路及びモータシステム
(51)【国際特許分類】
H03K 19/003 20060101AFI20160728BHJP
【FI】
H03K19/003 E
【請求項の数】9
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-123547(P2012-123547)
(22)【出願日】2012年5月30日
(65)【公開番号】特開2013-251636(P2013-251636A)
(43)【公開日】2013年12月12日
【審査請求日】2015年4月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】三浦 祥太
(72)【発明者】
【氏名】渡部 芳幸
【審査官】
白井 亮
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−191242(JP,A)
【文献】
特開昭52−123182(JP,A)
【文献】
特開2006−340266(JP,A)
【文献】
実開平02−091357(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K 19/003
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部に開放された1対の外部出力端子に接続されたラインドライバの1対の出力信号線に、それぞれ並列に接続されたツェナーダイオードを備え、
前記ツェナーダイオードの前記出力信号線に接続された端子とは反対側の端子が、グランドに接続されており、
前記ツェナーダイオードと前記出力信号線との間のパターン幅と、前記ツェナーダイオードとグランドとの間のパターン幅とが、前記出力信号線のパターン幅の2倍以上となっていることを特徴とするラインドライバの保護回路。
【請求項2】
前記ツェナーダイオードとグランドとの間のパターン長さが、前記ツェナーダイオードと前記出力信号線との間のパターン長さの1/2以下となっていることを特徴とする請求項1に記載のラインドライバの保護回路。
【請求項3】
外部に開放された1対の外部出力端子に接続されたラインドライバの1対の出力信号線に、それぞれ並列に接続されたツェナーダイオードを備え、
前記ツェナーダイオードの前記出力信号線に接続された端子とは反対側の端子が、グランドに接続されており、
前記ツェナーダイオードとグランドとの間のパターン長さが、前記ツェナーダイオードと前記出力信号線との間のパターン長さの1/2以下となっていることを特徴とするラインドライバの保護回路。
【請求項4】
前記ツェナーダイオードの前記出力信号線側の端子がアノード端子、前記ツェナーダイオードの前記グランド側の端子がカソード端子であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のラインドライバの保護回路。
【請求項5】
前記1対の出力信号線が複数存在する場合、すべての前記出力信号線にそれぞれ前記ツェナーダイオードを接続することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のラインドライバの保護回路。
【請求項6】
前記ツェナーダイオードは、前記ラインドライバに近接配置されていることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載のラインドライバの保護回路。
【請求項7】
前記ツェナーダイオードは、チップ部品により構成されていることを特徴とする請求項6に記載のラインドライバの保護回路。
【請求項8】
前記ツェナーダイオードの降伏電圧は、前記ラインドライバの出力電圧以上かつ静電破壊電圧未満であることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載のラインドライバの保護回路。
【請求項9】
前記請求項1〜8の何れか1項に記載のラインドライバの保護回路を備えるモータシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータのドライブユニット等に組み込まれて使用されるラインドライバを、静電気等のサージ電圧から保護するラインドライバの保護回路、及びそれを備えるモータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
帯電した人体や金属製の装置の接触等により、集積回路に静電気によるサージ電圧が印加されると、酸化膜破壊、接合破壊、配線破壊の破壊モードによって集積回路が破壊されるおそれがある。また、このサージ電圧が他の信号ラインに伝播することにより、誤作動の原因にもなり得る。
そこで、従来、サージ電圧に対する耐性を強化するために、集積回路にはサージ電圧から内部回路を保護する静電破壊保護回路が設けられている。
【0003】
このような静電破壊保護回路としては、例えば特許文献1に記載の技術がある。この技術は、ソースが接地され、ドレインが内部回路と入出力端子とを繋ぐ配線に接続され、ゲートとソースとが所謂ダイオード接続されたNチャネル型MOSトランジスタを備えるMOSトランジスタ型保護回路である。
また、電源ラインとグランド間のサージ電圧から集積回路装置の内部回路を保護するものとしては、例えば特許文献2に記載の技術がある。この技術は、電源ラインとグランド間にツェナーダイオードを設けるようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−21735号公報
【特許文献2】特開平6−140576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術にあっては、MOSトランジスタのゲートにサージ電圧が印加されると破壊されるおそれがあるため、MOSトランジスタのゲートに過電圧が印加されないための保護が必要となり、部品点数が多くなってしまう。
また、上記特許文献2に記載の技術にあっては、電源ラインに印加されるサージ電圧の対策しか講じていない。サージ電圧は、信号ライン、特に外部に開放された出力端子からも印加される可能性があり、このような場合には、内部回路を適切に保護することができない。
そこで、本発明は、ラインドライバの外部出力端子から印加されるサージ電圧からラインドライバを保護することができるラインドライバの保護回路、及びそれを備えるモータシステムを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係るラインドライバの保護回路は、外部に開放された1対の外部出力端子に接続されたラインドライバの1対の出力信号線に、それぞれ並列に接続されたツェナーダイオードを備えることを特徴としている。
これにより、外部出力端子からサージ電圧が印加された場合には、ツェナーダイオードに電流を流し、ラインドライバが破壊されるのを防ぐことができる。
【0007】
また、上記において、前記ツェナーダイオードの前記出力信号線に接続された端子とは反対側の端子が、グランドに接続されていることを特徴としている。
これにより、外部出力端子からサージ電圧が印加された場合には、ツェナーダイオードを介して電流をグランドに流すことができるので、ラインドライバが破壊されるのを適切に防ぐことができる。
【0008】
さらに、上記において、前記ツェナーダイオードと前記出力信号線との間のパターン幅と、前記ツェナーダイオードとグランドとの間のパターン幅とが、前記入力信号線のパターン幅の2倍以上となっていることを特徴としている。また、前記ツェナーダイオードとグランドとの間のパターン長さが、前記ツェナーダイオードと前記出力信号線との間のパターン長さの1/2以下となっていることを特徴としている。
これにより、外部出力端子からサージ電圧が印加された場合に、ツェナーダイオードを介して電流を適切にグランドに流すことができる。
【0009】
さらに、上記において、前記ツェナーダイオードの前記出力信号線側の端子がアノード端子、前記ツェナーダイオードの前記グランド側の端子がカソード端子であることを特徴としている。
これにより、サージ電圧による破壊からラインドライバを適切に保護することができる。
また、上記において、前記1対の出力信号線が複数存在する場合、すべての前記出力信号線にそれぞれ前記ツェナーダイオードを接続することを特徴としている。
これにより、複数の外部出力端子のうち何れからサージ電圧が印加された場合であっても、適切にラインドライバを保護することができる。
【0010】
さらにまた、上記において、前記ツェナーダイオードは、前記ラインドライバに近接配置されていることを特徴としている。
これにより、ツェナーダイオードとラインドライバとの間に、ラインドライバの静電破壊を引き起こす可能性のあるノイズが印加されるのを抑制することができる。
また、上記において、前記ツェナーダイオードは、チップ部品により構成されていることを特徴としている。
これにより、ツェナーダイオードを確実にラインドライバの近傍に配置することができる。
【0011】
また、上記において、前記ツェナーダイオードの降伏電圧は、前記ラインドライバの出力電圧以上かつ静電破壊電圧未満であることを特徴としている。
これにより、ラインドライバの出力電圧を確保しつつ、ラインドライバに静電破壊電圧以上の電圧が印加されるのを防止することができる。
さらに、本発明に係るモータシステムは、上記の何れかのラインドライバの保護回路を備えることを特徴としている。
これにより、外部出力端子から印加されるサージ電圧によってラインドライバが破壊されることに起因するシステム異常を回避することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ラインドライバの外部出力端子間にツェナーダイオードを接続することにより、外部出力端子から印加されるサージ電圧及び放射ノイズによってラインドライバが破壊されるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態に係るラインドライバの保護回路の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係るラインドライバの保護回路の回路図である。
図中、符号1はラインドライバである。ここでは、ラインドライバ1をダイレクトドライブモータのドライブユニットに適用した場合(モータシステム)について示している。
ラインドライバ1は、入力信号として、例えばエンコーダから出力される3相のインクリメンタル信号(A,B,Z)を、入力信号線2a,2b,2cを介してそれぞれ入力する。そして、ラインドライバ1は、出力信号として、位相の異なるインクリメンタル信号(A,Aバー、B,Bバー、Z,Zバー)を、1対の出力信号線3a,3b,3cを介して外部に開放された外部出力端子4a,4b,4cから出力する。
【0015】
ラインドライバ1の入力側には、ラインドライバ1への入力信号に印加されるサージノイズや誘導ノイズ等のスパイク状のノイズ(入力ノイズ)を除去するための入力ノイズ除去回路10が挿入されている。
入力ノイズ除去回路10は、抵抗とコンデンサとからなるローパスフィルタによって構成されている。このローパスフィルタは、ノイズ除去対象である入力信号が入力される入力信号線に直列接続された抵抗(11a〜11c)と、当該入力信号線に並列接続されたコンデンサ(12a〜12c)とを有する。なお、入力ノイズ除去回路10としては、上述した入力ノイズを除去できればよく、他の回路構成を適用することもできる。
【0016】
また、出力信号線3a〜3cには、外部出力端子4a〜4cから印加される静電気や雷により発生するサージ電圧及び放射ノイズによってラインドライバ1が破壊されるのを防ぐための保護回路20が挿入されている。保護回路20は、1組の外部出力端子に接続された出力信号線に、それぞれ並列に接続されたツェナーダイオードによって構成されている。
【0017】
すなわち、保護回路20は、1対の出力信号線3aに接続されたツェナーダイオード21aと、1対の出力信号線3bに接続されたツェナーダイオード21bと、1対の出力信号線3cに接続されたツェナーダイオード21cとを備える。このように、本実施形態では、出力信号線3a〜3cの全てにラインドライバ保護用のツェナーダイオードを接続する。
ここで、ツェナーダイオード21a〜21cは、それぞれ出力信号線3a〜3cに接続されている側(外部出力端子4a〜4c側)にアノード端子、出力信号線3a〜3cに接続されていない側にカソード端子が接続されている。当該カソード端子は、グランドに接続されている。
【0018】
また、ツェナーダイオード21a〜21cと出力信号線3a〜3cとの間のパターン幅と、ツェナーダイオード21a〜21cとグランドとの間のパターン幅とを、出力信号線3a〜3cのパターン幅の2倍以上とする。
さらに、ツェナーダイオード21a〜21cとグランドとの間のパターン長さは、ツェナーダイオード21a〜21cと出力信号線3a〜3cとの間のパターン長さの1/2以下とする。
【0019】
また、ツェナーダイオード21a〜21cとラインドライバ1とは、それぞれ近接配置、すなわち極力短い配線で接続する。ツェナーダイオード21a〜21cは、ラインドライバ1の近傍に配置するために、チップ部品を使用する。
そして、ツェナーダイオード21a〜21cの降伏電圧は、ラインドライバ1の出力電圧以上かつ静電破壊電圧未満に設定する。
以上の構成により、外部出力端子4a〜4cからサージ電圧が印加されると、ツェナーダイオード21a〜21cに電流が流れ、当該サージ電圧による破壊からラインドライバ1を保護することができる。
【0020】
従来、静電破壊保護回路としては、保護対象である内部回路の出力信号線とグランドとの間に、ソースが接地され、ドレインが出力信号線に接続され、ゲートとソースとが所謂ダイオード接続されたNチャネル型MOSトランジスタを挿入したMOSトランジスタ型保護回路が知られている。
しかしながら、このようなMOSトランジスタ型保護回路では、MOSトランジスタのゲートに過電圧が印加されないようにするために、ツェナーダイオードを使用してMOSトランジスタのゲートに印加される電圧を制限するなどの保護が必要となり、部品点数が多くなってしまう。
【0021】
これに対して、本実施形態では、出力信号線とグランドとの間にツェナーダイオードを挿入するだけでラインドライバの保護回路を実現することができるので、より少ない部品点数でサージ電圧に対する保護が可能となる。このように、省部品化により不具合を少なくし信頼性を向上させることができる。
また、外部に開放された出力端子に接続された出力信号線にラインドライバの保護回路を挿入するので、コネクタ抜差し時の人体の接触や外部からの放射など、サージ電圧が発生しやすい状況下に置かれた回路において、適切にラインドライバを保護することができる。
さらに、保護対象である内部回路と出力する信号の電圧が固定であるため、ツェナーダイオードのクランプ電圧を内部回路の耐圧に応じて変更するなどの工夫を必要としない。したがって、一般的なツェナーダイオードを使用することができ、回路設計が容易である。
【0022】
また、すべての出力信号線にそれぞれツェナーダイオードを挿入するので、複数の外部出力端子のうち何れの端子からサージ電圧が印加された場合であっても、適切に当該サージ電圧からラインドライバを保護することができる。
さらにまた、ツェナーダイオードとラインドライバとをなるべく短い配線で接続するので、ツェナーダイオードとラインドライバとの間の信号ラインに外部から放射ノイズ等が伝播しラインドライバが破壊されるのを抑制することができる。
【0023】
また、ツェナーダイオードの降伏電圧が、ラインドライバの出力電圧以上かつ静電破壊電圧未満となるように設定するので、ラインドライバの出力電圧を確保しつつ、ラインドライバに静電破壊電圧以上の電圧が印加されるのを防止することができる。
なお、上記実施形態においては、ダイレクトドライブモータのドライブユニットに適用する場合について説明したが、ラインドライバの出力信号線が外部に開放された端子に接続されている回路であれば、本発明を適用可能である。
【符号の説明】
【0024】
1…ラインドライバ、2a〜2c…入力信号線、3a〜3c…出力信号線、4a〜4c…外部出力端子、10…入力ノイズ除去回路、11a〜11c…抵抗、12a〜12c…コンデンサ、21a〜21c…ツェナーダイオード