特許第5966634号(P5966634)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5966634
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】マリンホース
(51)【国際特許分類】
   F16L 11/08 20060101AFI20160728BHJP
【FI】
   F16L11/08 A
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-126845(P2012-126845)
(22)【出願日】2012年6月4日
(65)【公開番号】特開2013-249932(P2013-249932A)
(43)【公開日】2013年12月12日
【審査請求日】2014年12月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100066865
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 信一
(74)【代理人】
【識別番号】100066854
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 賢照
(74)【代理人】
【識別番号】100117938
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 謙二
(74)【代理人】
【識別番号】100138287
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 功
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(74)【代理人】
【識別番号】100068685
【弁理士】
【氏名又は名称】斎下 和彦
(72)【発明者】
【氏名】玉田 義典
(72)【発明者】
【氏名】小野 俊一
【審査官】 西田 侑以
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/074126(WO,A1)
【文献】 特開平02−011989(JP,A)
【文献】 特開2000−018444(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 11/08
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(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内面ゴム層とカバーゴム層との間に内側カーカス層群および外側カーカス層群を含む複数の補強層が積層されたダブルカーカスタイプのマリンホースにおいて、前記外側カーカス層群を構成するカーカスコードとして、諸撚り構造のナイロン66コードを使用し、このカーカスコードの切断伸度が30%以上、強度が5.9cN/dtex以上であり、コード繊度D(dtex)、コードの上撚り数T(回/10cm)とした際に下記(1)式による算出される上撚り係数Kが1000以上3100以下であることを特徴とするマリンホース。
K=T×D1/2・・・(1)
【請求項2】
前記カバーゴム層の外表面にホース軸方向に延びる目視可能な表示部が設けられ、このカバーゴム層の内部にカバーゴム層のゴムよりも伸度が小さい拘束層が、このゴムに接着してホース周方向に延設され、この拘束層のホース周方向端部近傍に相当する位置に前記表示部が配置されている請求項1に記載のマリンホース。
【請求項3】
前記表示部が設けられている範囲の少なくとも一部分のカバーゴム層の内部に、少なくとも外周面が前記カバーゴム層に対して非接着性である滑面層が埋設されるとともに、この滑面層の外周側の一部分の範囲に前記拘束層がホース周方向に延設されている請求項2に記載のマリンホース。
【請求項4】
前記拘束層が螺旋状に前記カバーゴム層に埋設されている請求項2または3に記載のマリンホース。
【請求項5】
前記内側カーカス層群の外周面に外側カーカス層群の内周面が当接された構成である請求項1〜4のいずれかに記載のマリンホース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マリンホースに関し、さらに詳しくは、外側カーカス層群の衝撃吸収性能を大幅に向上させて、軽量化および低コスト化を図ることができるダブルカーカスタイプのマリンホースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
内面ゴム層とカバーゴム層との間に、内側カーカス層群および外側カーカス層群を含む複数の補強層が積層された、所謂、ダブルカーカスタイプのマリンホースが多用されている(例えば、特許文献1参照)。内側カーカス層群および外側カーカス層群は、有機繊維コード等で形成されたカーカス層が複数積層されて構成されている。ダブルカーカスタイプのマリンホースでは、内側カーカス層群が破損しても、外側カーカス層群が健全であれば、内側カーカス層群から流出した流体を外側カーカス層群によってホース外部へ漏洩するのを防止できる。
【0003】
内側カーカス層群が破損すると、外側カーカス層群に作用する内圧が急激に上昇することがあるので、外側カーカス層群は、その際の衝撃に耐え得る仕様にしなければならない。そこで、従来、外側カーカス層群は相応数のカーカス層を積層して構成されていて、その積層数を低減させることは難しかった。このことが、マリンホースの軽量化および低コスト化を進める上での障害の一因になっていた。
【0004】
或いは、内側カーカス層群の破損によって生じる衝撃を吸収するために、内側カーカス層群と外側カーカス層群の間に、スポンジ等の発泡材により構成された緩衝層が設けられることもある。この仕様の場合は緩衝層を設けるので、マリンホースの軽量化および低コスト化には不利になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−82844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、外側カーカス層群の衝撃吸収性能を大幅に向上させて、軽量化および低コスト化を図ることができるダブルカーカスタイプのマリンホースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明のマリンホースは、内面ゴム層とカバーゴム層との間に内側カーカス層群および外側カーカス層群を含む複数の補強層が積層されたダブルカーカスタイプのマリンホースにおいて、前記外側カーカス層群を構成するカーカスコードとして、諸撚り構造のナイロン66コードを使用し、このカーカスコードの切断伸度が30%以上、強度が5.9cN/dtex以上であり、コード繊度D(dtex)、コードの上撚り数T(回/10cm)とした際に下記(1)式による算出される上撚り係数Kが1000以上3100以下であることを特徴とするマリンホース。
K=T×D1/2・・・(1)
【発明の効果】
【0008】
本発明のマリンホースによれば、外側カーカス層群を構成するカーカスコードとして、諸撚り構造のナイロン66コードを使用し、このカーカスコードの切断伸度が30%以上、強度が5.9cN/dtex以上であり、コード繊度D(dtex)、コードの上撚り数T(回/10cm)とした際の上撚り係数K=T×D1/2が1000以上3100以下に設定されている。即ち、高伸度および高強度のナイロン66をカーカスコードとして使用することにより、外側カーカス層群の衝撃吸収性能を大幅に向上させることができる。
【0009】
それ故、外側カーカス層群を構成するカーカス層の積層数を低減させることが可能になる。或いは、緩衝層を設けない仕様や緩衝層を従来に比して薄くした仕様にできる。これによって、マリンホースの軽量化および低コスト化を図ることができる。
【0010】
また、カーカスコードを耐挫屈性が良好な諸撚り構造にするとともに、上撚り係数 Kを適正な範囲(K=1000〜3100)に設定したので、外側カーカス層群の強度低下を抑制しつつ、更に耐挫屈性を向上させることができる。それ故、過酷な条件においても外側カーカス層群は十分、実用に耐え得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明のマリンホースの実施形態を例示する全体概要図である。
図2図1のマリンホースの外側カーカス層群のカーカス層を例示する切欠き図である。
図3図1のマリンホースの内部構造を例示する一部断面図である。
図4図1のマリンホースの内部構造の変形例を示す一部断面図である。
図5】カバーゴム層の内部構造を例示する一部断面図である。
図6】拘束層の配置を例示するカバーゴム層の斜視図である。
図7】表面に表示部を設けた図5のカバーゴム層の斜視図である。
図8図7の表示部の変形状態を例示するカバーゴム層の斜視図である。
図9】拘束層の配置を例示するカバーゴム層の斜視図である。
図10】表面に表示部を設けた図9のカバーゴム層の斜視図である。
図11図10の表示部の変形状態を例示するカバーゴム層の正面図である。
図12】拘束層の配置を例示するカバーゴム層の斜視図である。
図13】表面に表示部を設けた図12のカバーゴム層の斜視図である。
図14図13の表示部の変形状態を例示するカバーゴム層の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のマリンホースを図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0013】
図1図3に例示するように、本発明のマリンホース1は、内面ゴム層3とカバーゴム層10との間に内側カーカス層群(第1内側カーカス層群5および第2内側カーカス層群7)と外側カーカス層群9を含む複数の補強層が積層されたダブルカーカスタイプである。内面ゴム層3の内周側は原油等の流体の流路4となる。
【0014】
この実施形態では、カバーゴム層10の外表面にホース軸方向に延びる目視可能な表示部13が設けられている。表示部13は白色や蛍光色などの目立つ色にする。表示部13は1本に限らず複数本設けることもできる。
【0015】
第1内側カーカス層群5と第2内側カーカス層群7との間には、スパイラルワイヤ層6が設けられている。スパイラルワイヤ層6は、ワイヤを第1内側カーカス層群5の外周面に螺旋状に巻き付けることにより構成されている。第1内側カーカス層群5、第2内側カーカス層群7、スパイラルワイヤ層6および外側カーカス層群9が補強層となる。内側カーカス層群は1つでもよく、スパイラルワイヤ層6は、任意に設けることができる。
【0016】
外側カーカス層群9は複数のカーカス層9aが積層されて構成されている。その積層数は例えば、4〜20程度である。それぞれのカーカス層9aは、多数のカーカスコード9bを並列にひき揃えて形成されていて、ホース軸方向に対して所定の角度で傾斜して配置されている。積層されて隣り合うカーカス層9aでは、互いのカーカスコード9bが交差する配置になっている。
【0017】
それぞれのカーカス層9aの表面は接着用の薄いゴム層で被覆されていて、隣り合うカーカス層9aどうしが、この薄いゴム層を介して接着している。また、外側カーカス層群9の外周面とカバーゴム層10の内周面とが当接して接着されている。また、外側カーカス層群9の内周面と第2内側カーカス層群7の外周面とが接着用の薄いゴム層を介して当接して接着されている。
【0018】
第1内側カーカス層群5および第2内側カーカス層群7はそれぞれ、複数のカーカス層5a、7aが積層されて構成されている。その積層数は例えば、4〜30程度である。それぞれのカーカス層5a、7aは、多数のカーカスコードを並列にひき揃えて形成されていて、ホース軸方向に対して所定の角度で傾斜して配置されている。積層されて隣り合うカーカス層5a、7aでは、互いのカーカスコードが交差する配置になっている。これらカーカス層5a、7aを形成するカーカスコードとしては、マリンホースでおいて通常使用されているポリエステル、ポリケトン、アラミド、ビニロン、ナイロン等からなるコードが用いられる。
【0019】
それぞれのカーカス層5a、7aの表面は接着用の薄いゴム層で被覆されていて、隣り合うカーカス層どうしが接着用の薄いゴム層を介して接着している。第1内側カーカス層群5の内周面と内面ゴム層3の外周面とが当接して接着されている。
【0020】
この実施形態では緩衝層が設けられていないが、図4に例示する実施形態のように、第2内側カーカス層群7と外側カーカス層群9との間に緩衝層8を設けることもできる。緩衝層8はスポンジ等の発泡材により構成される。緩衝層8の内周面、外周面はそれぞれ、第2内側カーカス層群7の外周面、外側カーカス層群9の内周面と薄い接着用のゴム層を介して当接して接着されている。その他の仕様は、先の実施形態と同じである。
【0021】
本発明では外側カーカス層群9を構成するカーカスコード9bを特別な仕様にしている。このカーカスコード9bには諸撚り構造のナイロン66コードを使用している。そして、カーカスコード9bの切断伸度は30%以上、切断強度は5.9cN/dtex以上になっている。切断伸度の上限値は40%程度、切断強度の上限値は7.1cN/dtex程度である。
【0022】
また、コード繊度D(dtex)、コードの上撚り数T(回/10cm)とした際に下記(1)式による算出される上撚り係数Kは1000以上3100以下に設定されている。
K=T×D1/2・・・(1)
【0023】
カーカスコード9bは、複数のナイロン66製のフィラメント糸をそれぞれ1本ずつ同一方向に下撚りし、次いで、これら下撚りしたフィラメント糸を合わせて逆方向に上撚りした諸撚り構造になっている。下撚りするフィラメント糸は1本に限らず、複数本ずつ同一方向に下撚りするようにしてもよい。また、上撚りする糸は複数本であればよい。カーカスコード9bの好ましい構造は、2100dtex/1/2の撚り数30回/cm程度である。
【0024】
諸撚り構造のカーカスコード9bは、1本または複数のフィラメント糸を引き揃え、一方向に撚っただけの片撚り構造に比べて、良好な耐挫屈性を得ることができる。下撚りと上撚りは、異なる撚り数にすることもできるが、安定性を得るために同数、或いは略同数とすることが好ましい。
【0025】
上撚り係数Kが大きくなる程、カーカスコード9bの引張り強度は低下し、耐挫屈性は向上する。そこで、本発明では、上撚り係数Kを1000以上3100以下に設定して、外側カーカス層群9の強度低下を抑制しつつ、更に耐挫屈性を向上させることができる。それ故、過酷な条件においても外側カーカス層群9は十分、実用に耐え得ることができる。
【0026】
カーカス層5a、7a、9aを構成するカーカスコードは、表面に接着処理を施すために、接着液を塗布した後、コード長手方向に所定の張力を負荷しつつ、ドライゾーン、ヒートセットゾーン、ノルマライジングゾーンを順に通過させる。カーカス層5a、7aを構成するカーカスコードについては、マリンホース用カーカス層の接着処理で通常適用されている条件に設定される。カーカス層9aを構成するカーカスコード9bの接着処理については、ノルマライジングゾーンの張力だけが特別な条件に設定される。
【0027】
即ち、ノルマライジングゾーンでは、カーカス層9aを構成するカーカスコード9bには0.063g/dtex以上0.200g/dtex以下の張力が負荷される。通常負荷される張力は0.86g/dtex〜1.43g/dtex程度なので、本発明では、通常よりも著しく低い張力が負荷される。
【0028】
ノルマライジングゾーンの張力は、接着処理工程のその他の条件に比して、接着処理後のコードの伸度に多大な影響を与える。本発明ではこの張力を適切に設定することで、切断伸度30%以上、強度5.9cN/dtex以上のナイロン66コード(カーカスコード9b)を得ている。
【0029】
カーカス層9aを構成するカーカスコード9bの接着処理の条件は例えば次のとおりである。ドライゾーンでは、張力は0.15g/dtex〜0.35g/dtex、温度は120℃〜150℃、処理時間は1分30秒〜3分。ヒートセットゾーンでは、張力は0.07g/dtex〜0.59g/dtex、温度は200℃〜230℃、処理時間は30秒〜1分。ノルマライジングゾーンでは、張力は0.063g/dtex〜0.200g/dtex、温度は200℃〜230℃、処理時間は30秒〜1分。
【0030】
本発明では外側カーカス層群9を構成するカーカスコード9bとして、上述したように、従来に比して高伸度および高強度の特別仕様のナイロン66コードを使用しているので、外側カーカス層群9の衝撃吸収性能が大幅に向上する。それ故、内側カーカス層群5、7が破損し流体が流出して外側カーカス層群9に作用する内圧が急激に上昇しても、外側カーカス層群9は、その際の衝撃に耐え得ることが可能になる。したがって、外側カーカス層群9を構成するカーカス層9aの積層数を低減させることが可能になる。或いは、図4に例示した実施形態にように緩衝層8を設けた仕様にする場合であっても、緩衝層8を従来に比して薄くした仕様にすることができる。それ故、マリンホース1の軽量化および低コスト化を図ることが可能になる。
【0031】
また、カーカスコード9bを耐挫屈性が良好な諸撚り構造にするとともに、上撚り係数Kを適正な範囲(K=1000〜3100)に設定することにより、外側カーカス層群9の強度低下を抑制しつつ、更に耐挫屈性を向上させることができる。それ故、過酷な条件においても外側カーカス層群9は十分、実用に耐え得ることができる。
【0032】
カバーゴム層10の外表面にホース軸方向に延びる目視可能な表示部13を設けるとともに、図5に例示するように、カバーゴム層10の内部にカバーゴム層10のゴムよりも伸度が小さい拘束層12を、カバーゴム層10のゴムに接着してホース周方向に延設することもできる。この拘束層12のホース周方向端部近傍に相当する位置に表示部13が配置される仕様にする。
【0033】
図5では、表示部13が設けられている範囲の少なくとも一部分のカバーゴム層10の内部に、少なくとも外周面がカバーゴム層10に対して非接着性である滑面層11が埋設されている。さらに、この滑面層11の外周側の一部分の範囲に拘束層12がホース周方向に延設されている。
【0034】
滑面層11には例えば、ポリエステルフィルム等を用いることができる。滑面層11は、外周面のみがカバーゴム層10に対して非接着性である仕様にしてもよく、内周面および外周面がカバーゴム層10に対して非接着性である仕様にしてもよい。
【0035】
拘束層12には例えば、アラミド繊維、ポリケトン繊維、ポリフェニレルサルファイド繊維等の有機繊維コードを用いることができる。そして、複数本のコードを並列にひき揃えてホース周方向に延設する。拘束層12は例えば、図6図7に例示するように螺旋状にカバーゴム層10に埋設する。
【0036】
内側カーカス層群5、7が破損して流体が流出した場合に外側カーカス層群9に作用する内圧が急激に上昇する。本発明では、外側カーカス層群9のカーカスコード9bが低い内圧であっても従来に比して大きく伸びる。そのため、内圧の上昇が僅かであっても(内側カーカス層群5、7から流出する流体が少量であっても)カバーゴム層10を大きく変動させることができる。その際に、拘束層12が埋設された部分はカバーゴム層10のホース周方向の伸びが規制される。一方、拘束層12が埋設されていない部分はカバーゴム層10のホース周方向の伸びが規制されない。
【0037】
したがって、拘束層12のホース周方向端部近傍は、カバーゴム層10の伸びに差異が生じる。そのため、拘束層12のホース周方向端部近傍に相当する位置に配置されている表示部13は、図8に例示するようにカバーゴム層10の伸びの差異に起因して変化が生じる。この表示部13の目視することで、外側カーカス層群9に作用する内圧の上昇が僅かであっても内側カーカス層群5、7の破損を把握することができる。
【0038】
図5に例示するように滑動面11を設けると、滑動面11の外周面とこの外周面に対向する部分は分離した状態になる。内側カーカス層群5、7が破損して流体が流出し外側カーカス層群9に作用する内圧が急激に上昇すると、滑動面11の外周側の部分は滑動面11の外周面上を滑って移動が規制されない。そして、拘束層12が埋設された部分は、滑動面11の外周面上を滑って移動しつつ、カバーゴム層10のホース周方向の伸びが規制される。一方、拘束層12が埋設されていない部分は、滑動面11の外周面上を滑って移動しつつ、カバーゴム層10のホース周方向の伸びが規制されない。それ故、拘束層12のホース周方向端部近傍では、滑動面11を設けない場合に比して、カバーゴム層10の伸びに一段と大きな差異が生じる。これに伴って、表示部13の変化を大きくすることができる。
【0039】
拘束層12は図9図10に例示するように、その長さをマリンホース1の外周の約半分の周長にして、ホース軸方向に間隔をあけて複数配置することもできる。隣り合う拘束層12は、互いに反対側の円周部分に配置し、拘束層12のホース周方向端部近傍に相当する位置に表示部13が配置される仕様にする。この仕様の場合、内側カーカス層群5、7が破損して流体が流出して外側カーカス層群9に作用する内圧が急激に上昇すると、図11に例示するように表示部13に変化が生じる。
【0040】
拘束層12は図12図13に例示するように、ホース周方向に複数に分割して配置することもできる。拘束層12のホース周方向端部近傍に相当する位置に表示部13が配置される仕様にする。この仕様の場合、内側カーカス層群5、7が破損して流体が流出し、外側カーカス層群9に作用する内圧が急激に上昇すると、図14に例示するように表示部13に変化が生じる。
【実施例】
【0041】
図3に例示した内部構造のマリンホースを、表1のように外側カーカス層群のカーカスコードのノルマライジングゾーン(Nゾーン)の張力条件のみを異ならせてカーカスコード特性が相違する8種類(実施例1〜3、比較例1〜5)製造した。外側カーカス層群のカーカスコードの撚り構造は、複数のナイロン66製のフィラメント糸をそれぞれ1本ずつ同一方向に下撚りし、次いで、これら下撚りしたフィラメント糸を合わせて逆方向に下撚りコードとほぼ同数の撚り数(回/m)にて上撚りした諸撚り構造であり、その撚り数の範囲は15〜42回/mである。外側カーカス層群のカーカス層を構成するカーカスコードの接着処理条件は、ドライゾーンでは張力0.18g/dtex、温度140℃、処理時間86秒、ヒートセットゾーンでは張力0.07g/dtex〜0.59g/dtex、温度230℃、処理時間43秒、ノルマライジングゾーンでは温度225℃、処理時間43秒とした。
【0042】
それぞれのマリンホースには、カバーゴム層の外表面にホース軸方向に延びる目視可能な表示部を設け、図5に示すようにカバーゴム層の内部に、外周面がカバーゴム層に対して非接着性である滑面層を埋設するとともに、この滑面層の外周側の一部分の範囲に拘束層をホース周方向に延設した。拘束層は図6図7に示すようにホース周方向端部近傍に相当する位置に表示部が配置されるようにした。それぞれのマリンホースについて、表示部の変化の状態および衝撃吸収性を評価し、その結果を表1に示す。
【0043】
[表示部の変化の状態]
外側カーカス層群に内圧0.39MPaを作用させた時の表示部の変化の有無が目視によって確認できたか否かを確認した。確認できた場合を「変化あり」、確認できなかった場合を「変化なし」と記載している。
【0044】
[衝撃吸収性]
外側カーカス層群に内圧を作用させて実用上問題ない程度の状態を維持できる内圧の上限値を測定した。その内圧の上限値が3.9MPa〜4.9MPaの場合を優れているとして「○」、4.9MPa超の場合を特に優れているとして「◎」を記載している。表中の×は、内圧を3.9MPaにする前に外側カーカス層群が破損したことを示している。
【0045】
【表1】
【0046】
表1の結果より、実施例1〜3は、比較例1〜3および5に比して、外側カーカス層群の衝撃吸収性能に優れていることが分かる。また、実施例1〜3では、わずかな内圧(0.39MPa)が作用しただけで表示部の変化が目視できることが分かる。
【符号の説明】
【0047】
1 マリンホース
2 接続金具
3 内面ゴム層
4 流路
5 第1内側カーカス層群
5a カーカス層
6 スパイラルワイヤ層
7 第2内側カーカス層群
7a カーカス層
8 緩衝層
9 外側カーカス層群
9a カーカス層
9b カーカスコード
10 カバーゴム層
11 滑面層
12 拘束層
13 表示部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14